MENU

ステップ 7 コミュニケーション ~会話と連絡が円満のもと ~

目次

1 コミュニケーションがすべての土台

コミュニケーション不足が「早期離婚」の引き金に

人と人との関係は、会話をしなくなったり、目を合わせなくなると、急速に疎遠になっていくものです。

家庭の場合も同様です。会話がないと、二人の間にだんだんすき間が生じます。関係を維持していくには、忙しければ忙しいほど意識して、会話をしていかなければなりません。

職場でも、店長や上司である正社員がパート・アルバイトに話しかけなかったり、コミュニケーションが不足すると、両者の間に目に見えない溝ができてしまいます。

「忙しいから」「話しかけられても相手をする時間がないから」など理由はいくらでもあるでしょうが、コミュニケーションをないがしろにしてはいけません。

特にパート・アルバイトに定着してもらい、戦力化したい場合、コミュニケーションはさらに重要性を増してきます。

というのは、パートにとって職場の人間関係は、正社員以上に「そこで働き続けるか否か」を決定する、大事な要素となっているからです。

すでに述べたとおり、パート・アルバイトにとって「人間関係に我慢してまでその職場で働き続ける」メリットは、正社員に比べ薄いことが多いのです。

また、職場間の異動が少ないので「この人間関係から逃れるには、自分が辞めるしかない」という結論に至りがちです。

アンケートでも「どんなときに辞めようと思うか」という質問に対し、回答者の四五・五%が「職場の人間関係が良くないとき」を挙げ、最も多くなっています。

また、上手なシフト管理は相思相愛の要で紹介したように、「働きやすいと感じる職場環境」について、回答者の四〇・八%が「職場の人間関係が良好である」としています(いずれも平成二〇年版パートタイマー白書)。

定着なくして、「戦力化」はありえません。

「気持ちよく働いてもらえる」か「否か」の大違い

お金をもらっている以上、その日の気分や上司への感情で、仕事の中味に差が生じてはならない――正論ですが、実際にはなかなかそうはいきません。正社員であっても、日々寸分のブレもなく人に接したり、仕事を遂行できる人は稀でしょう。

パート・アルバイトの中には、正社員以上に「きっちり業務遂行していく」人も実際いますが、多くの場合、仕事に不慣れだったり、仕事の一部だけを担っていたりという理由から、気分や感情による差が大きくなりがちなのが実情です。

だからこそ、気持ちよく働いてもらうための、コミュニケーションの工夫が求められます。それには、まずはあいさつです。あいさつは、最も簡単で、かつ劇的に効果のある対応策です。それも、パート・アルバイトからのあいさつを待っていてはいけません。

店長や上司の方から、率先して「おはようございます」「お疲れさま」と、声をかけていくのです。これは、相手がパート・アルバイトだろうが、正社員だろうが、派遣社員や、あるいは業務請負の清掃スタッフであっても同じです。

ポイントは「分け隔てなく」「先手必勝」です。これを心がけることで、あいさつが習慣化されます。良い癖は、財産です。

2 二つのコミュニケーションを意識する

「交流」と「仕事上の情報伝達・情報共有」

職場のコミュニケーションは、二つあります。一つは「交流」、もう一つは「仕事上の情報伝達・情報共有」です。

職場のコミュニケーションというと、仲間との「交流」を思い浮かべがちです。「和気あいあいとしたおしゃべり」や、「仕事との関連性の有無にかかわらない情報交換」「親睦会や食事会などの(仕事を離れた)付き合い」といったものです。もちろん、これらもとても大事です。

しかし、そもそも職場の仲間とは、「仕事の遂行のため」に集められた集団です。ホウ・レン・ソウに代表される「仕事上の情報伝達・情報共有」の方が、より重要な役割を担っています。

その際、伝達・共有する情報は、小さな単位でとらえることが大切です。ささいなことでも「聞いてない!」と感情的にとらえられ、それがしこりとなってしまいます。

家庭なら、例えば夕食が要るのか要らないのか、次の週末の予定は、といった日々の連絡です。歓送迎会や出張等で夕食が要らないのなら、それがわかったときにちゃんと連絡する。もちろん、当日の突発的な飲み会の場合でも、できるだけ早く伝えることが大事。――それと同じです。

パート・アルバイト「だからこそ」大切な理由

もっとも、「情報伝達」「情報共有」の重要性は、多くの人が認識しているところです。特に経営理念や経営戦略、具体的な数値目標、目標遂行のための戦術などは、きちんと「伝達」され「共有」されてこそ、会社の発展に結び付きます。

それは相手がパート・アルバイトであっても同じです。いえ、むしろ相手がパート・アルバイトだからこそ、より意識すべきだとさえいえます。

というのは、パート・アルバイトの場合、週三日、一日五時間など、限られた時間しか職場にいない人が多いからです。

要するに、物理的に情報伝達が難しい状況にあるわけです。立場が弱く、自分からは聞きづらい場合も多いため、その分意識的に行わなければなりません。

パート・アルバイトを戦力化したいのなら、なおのことです。パート・アルバイトの気持ちの上でも重要です。

例えば「どのようなことで、職場で自分が軽く扱われていると感じるか」複数回答で聞いたアンケート結果を見てみると、「業務上必要な情報が知らされない」が三一・一%でトップです。

ちなみに、二位は「何年経っても時給が上がらない(二一・一%)」でした(平成二〇年版パートタイマー白書)。

存在感を感じさせる

パート・アルバイトは、毎日職場にいないせいか「私は聞いてない」「私には教えてくれなかった」などを理由に、疎外感を抱きがちです。

これは、派遣社員も同じです。組織の一員でありながら、メンバーになり切れない。そんな心理状態では、やる気になどなれないどころか、だんだん萎縮していってしまいます。

だから重要なのは、彼らに存在感を感じさせてあげることです。「交流」も、「情報伝達・情報共有」も、いずれもこれに役立ちます。

なお「おはようございます」や「お疲れさま」「お先に失礼します」といった基本的なあいさつは、この二つのコミュニケーションを円滑にし、かつパート・アルバイトに存在感を感じさせてあげられる、土台の役割を果たしているといえるでしょう。

前述のとおり「気持ちよく働いてもらう」ために必須なのはもちろんです。「咳をしていたみたいだけど体は大丈夫?」「雨が降りそうだね。傘は持ってきました?」など、何気ない言葉がけも同様です。

あいさつも、こうした言葉がけも、パート・アルバイト一人ひとりをきちんと認識していればこそ出てくるものだからです。本人も、それを敏感に感じ取っています。

3 コミュニケーションを「見える化」し「仕組み化」する

「気づいたときに」の危険性

コミュニケーションは、企業組織が複数の人間で成り立っている以上、なくてはならない極めて重要なものですが、その重要度ほどには重視されていない気がします。

これは、「コミュニケーション」というものの特性によるものだと思います。第一に、その量や質を計ることが、難しいことです。例えば売上や来店客数のように「今日は昨日より多かった」「少なかった」ということが、数値として見えません。

第二に、納期など期限が定められていないことに動いていくために必要なコミュニケーションが、きちんと図れるようにするのです。

「見える化」と「仕組み化」で、個人のスキルに頼らない

プライベートであれば、「忙しいときは人との付き合いを抑える」「苦手な人とは付き合わない」という選択もかまいません。しかし、仕事の場合、これはダメ。理由は、コミュニケーションを失った組織はもろくなり、いずれ崩壊してしまうからです。では、どうするか。

第一の工夫は、コミュニケーションを「見える化」すること。パート・アルバイトとのコミュニケーションが、少なくとも量の面で、きちんと行われているか認識できるようにすることです。第二の工夫は、コミュニケーションを「仕組み化」すること。

誰がリーダーになっても、パート・アルバイトと一定のコミュニケーションが図れるシステムにするのです。コミュニケーションでは、その人の人間性が、いかんともしがたく出てきます。リーダーやマネジャーへの登用は、「人を見て」行う必要があるのは、そのためです。

組織を引っ張る力も大切ですが、上に立つ人のコミュニケーション力次第で、組織が変わり、それは仕事の成果に表れます。しかしながら、実際には「コミュニケーション上手」な社員ばかりではありません。

「コミュニケーションはいまいちだが、他のこの能力が素晴しい」という理由でリーダーに登用することもあるでしょう。あるいは、人材がおらず「コミュニケーションに難はあるが、この人を登用するしかない」といった場合も多いでしょう。

コミュニケーションを「見える化」し「仕組み化」する目的は、ここにあります。誰がリーダーであっても、あるいはどんなに忙しいときでも、組織が合目的に動いていくために必要なコミュニケーションが、きちんと図れるようにするのです。

コミュニケーションを「見える化」する方法

コミュニケーションの「見える化」は、以下の順番で行います。まずは、「コミュニケーション」 =「行動」と定義し、実行することです。

コミュニケーションを改めて辞書で引くと、伝達、連絡、意志疎通、交際……等と出てきます。つまり、双方向のものであり、であればこそ「行動で見せる」ことが必要です。行動すれば、相手に「見える」ようになります。

といっても、難しく考えることはありません。職場の仲間とその日初めて会ったら、相手の顔を見て「おはようございます」と、声に出して言うことです。

給湯室の流しがきれいになっているのに気づいたら、たとえそれが「仕事であり、やって当然」であったとしても、「きれいになったね」と声に出して、きちんと伝えてあげることです。

仮に誰がやったかわからなくても、周囲の人に「きれいになったね」と伝えることで、「気づいている」ことが、「見える化」され、組織に伝わります。

これが、大事なのです。そして、コミュニケーションを「仕組み化」し「数値化」することです。「仕組み化」は、定例ミーティングを始めたり、その回数を「毎週一回」など義務付けること。

数値化は、その回数を自分でカウントすることです。仕組み化で否応なくコミュニケーションをとることになり、数値化により、コミュニケーションの量が「見える化」できます。

上司や店長の側に、コミュニケーションに苦手感があったり、パート・アルバイトとの関係に違和感がある場合は特に、仕組み化してこれを自らに強い、数値化で量的な目標を課していくことが効果的です。

これによりコミュニケーションに馴れることで、苦手感をある程度克服できます。また、コミュニケーションを習慣化できます。

【事例】タイムカードをなくしてコミュニケーションを仕組み化 ~ファミレス ~

あるファミレスでパートを始めた三〇代後半の主婦は、職場に行ってみて驚きました。タイムカードがなかったからです。

そのファミレスでは、タイムカードの代わりに、紙の出勤簿を使って時間の管理をしていました。つまり、出勤したら、その日時を書き込んで店長のところへもって行き、承認印を押してもらう。

退勤のときも同様に、時間を書き込んで承認印をもらいます。店長が不在の場合は、正社員が承認を代行します。

ファミレスやファストフード店など数社でパート経験がある彼女は、最初は「なぜ、タイムカードを使わないんだろう」といぶかりました。

こうした職場では、たくさんの人がさまざまなシフトで働くため、タイムカードによる管理が合理的です。しかし彼女は、今では「紙の出勤簿」による管理を絶賛しています。

「最初はいちいち面倒だと思いました。でも、今では『素晴しい仕組み』だと実感しています。というのは、承認印をもらいにいくことで朝晩二回、必ず店長ときちんと目を合わせて、あいさつすることになるからです。

どんなに忙しくても『おはよう』『お疲れさま』と声をかけてもらえます。かつては、店長や社員が、私が出勤したり仕事を終えたのに気づいていないのではないかと思ってしまうことがたびたびでした。

余裕があるときは承認印をもらいながら雑談したり、何か相談ごとがある場合も、声をかけやすくなりました」 営業時間が長く、多くのパート・アルバイトが入れ替わり立ち替わり働くような職場では特に、全員とあいさつすることすら、ままならない場合があります。

このファミレスでも、以前はタイムカードで管理していたようですが、正社員とパート・アルバイトのコミュニケーションを高めるために、「紙の出勤簿に承認印」というまるで昔返りするような、アナログの仕組みに変えたのだといいます。

【事例】全員ミーティング定例化でコミュニケーションを仕組み化 ~業務請負会社 ~

ある業務請負会社の現場マネジャーは「週に一度の全員ミーティングを定例化して、職場が明るくなりました」と話します。このマネジャーがあずかる現場は、入院病棟がいくつもある大規模な病院です。

病院のなかに支店を構え、このマネジャーの指示のもと、業務請負会社のスタッフが院内の各部署で医師や看護師の補助業務を行っているのです。

「スタッフは、全部で六〇人います。早番、遅番のあるシフト勤務で、同じ病院内ではあるものの、それぞれの持ち場は外科だったり内科だったり産科だったり、ばらばらです。

つまり、同じ職場で働いている当社の社員にもかかわらず、そのコミュニケーションは極めて希薄でした。私もシフト勤務ですし、病院側との打ち合わせや、本部主催のマネジャー会議などで現場を外すことも多く、一週間、まったく顔を合わせないスタッフもいました。

そのせいか、スタッフの元気が、だんだん失われていくように感じたのです」 そこでこのマネジャーは、週に一度、六〇人のパートが一堂に集まる「全員ミーティング」を実現しました。

具体的には、早番のパートに三〇分の残業を、遅番のパートに三〇分の早出をお願いして、全員が集まる場を作ったのです。

ミーティング自体は正味二〇分間ほどのものですが、全員が顔を合わせるには、全員の協力が必要です。

「有給とはいえ、全員一律に勤務時間の変更をお願いするわけなので、提案するときは勇気がいりました。でも、全員ミーティングを始めて本当に良かったです」とマネジャーは振り返ります。

ミーティングは、マネジャーからの情報伝達、スタッフ同士の情報共有の場として機能する一方、スタッフ同士のおしゃべりの場にもなりました。

これにより、院内ですれ違ったスタッフ同士の会話も活発になり、職場の雰囲気は目に見えて明るくなりました。退職者が減るという、予想外の効果も生じています。

コミュニケーションのさまざまな手段

前述したようにパート・アルバイトへの情報伝達が徹底しづらい理由の一つは、彼らの多くがシフト勤務で、全員が集まる場面が少ないこと。これをカバーするする具体的施策、つまりコミュニケーションを「仕組み化」する手段は、他にもいろいろあります。

多くの現場で応用可能な、より一般的な手段を、以下にご紹介しておきます。

  • 朝礼・昼礼・夕礼、及びこれらの併用など(定期的な情報共有・意見交換の場)
  • 会議
  • ミーティング(不定期な情報共有・意見交換の場)
  • 社内報の配布
  • 社内イントラネットへの参加
  • 社内同報メールへの登録 ・連絡ノート
  • 上司との定期的な面談 ・雇用契約更新時の定期的な面談
  • 公式な社内行事への参加(レクリエーション大会・忘年会・新人歓迎会など)
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次