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シナリオが心の余裕を生む

 その次が「撤退のシナリオ」だ。最悪の事態が起きて、「復活のシナリオ」に進んだものの、最低限の目標も達成できない、あるいは、「復活のシナリオ」には進まないと判断した場合のシナリオだ。つまり、プロジェクトを中止したり、会社を廃業したり、といった判断だ。「標準のシナリオ」を進んでいたはずが、目標を達成しても目的は果たされないと気づいた場合なども、このシナリオになる。  撤退など想定したくないと思うかもしれないが、それでは、残された従業員や顧客はどうなるだろうか。全くの一文無しになるまで走り続ける社長がたまにいるが、それでは経営者としての責任を果たしたと言えない。  会社として、ビジネスとしてのリスク許容度に応じて、「ここまで行ったら撤退する」というラインを事前に設定しておくことで、目的を果たせないとわかっているのに走り続ける……という事態を防ぎ、かつ、次なるチャンスに向かうことができる。  撤退のシナリオを用意せず、あるいは、適切なタイミングで撤退のシナリオに進むことができずに、無理を続けてその先まで突き進んでしまうと、どうなるか。廃業や倒産の先には、もっと悲しいシナリオが待っている。  それは、家庭の崩壊だったり、多くの友人を失うことであったり、あるいは、健康を害してしまうことだったりする。なかには、再起不能なまでに信頼を失墜させ、自己破産し、長年住み慣れた街からも出ていくことを選ばなければならなかった人もいる。そうしたケースは、決して稀なことではない。  それに対して、最後に考える「最高のシナリオ」は、「標準のシナリオ」よりも高い成果が望めることを想定したシナリオだ。つまり、チャンスをつかむためのシナリオと言える。  ビジネスでは、予想以上にうまくいくことも往々にしてあるが、準備をしておかなかったばかりに、せっかくのチャンスをふいにする社長が多い。  例えば、突然、大きな案件が舞い込んできたらどうするのか。自分の知らないうちに SNSでバズって、注文数が爆発的に増えたらどうするのか。事前に思い描いて対策を想定しておけば、どんなチャンスでも確実につかむことができる。  いわゆる「幸運に恵まれて」大きな成功を収めた人は世の中にたくさんいるが、彼らは「幸運をつかむ準備」をしていたから、その幸運をしっかりつかんで離さず、自分のものにできたのだ。「こういう場合には、こう対処する」「こうなったら、あれをこうする」「こうなったら……」と可能な限りの仮説を立てて、あらかじめシナリオとして思い描いておくことで、あらゆる状況に手が打てるようになる。  すると、良くないことが起きても被害は少なくて済み、反対に、うまくいったときのリターンは大きくなる。もちろん、ただ想定するだけでなく、可能な限り準備しておくことが重要だ。  また、実際にその状況に立たされたとき、それを想定できていたか、準備をしていたかは、精神面にも大きな違いを生む。「標準シナリオ」以外は、いわば非常事態だ。そこでの判断はより重要性が増すため、気持ちに余裕を持って判断できることが望ましい。そのためにも、事前に想定してシナリオを立てておく必要があるのだ。

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