もし判断を誤ったら ここまで何度も説明してきたように、フレームワークを活用して多面的な判断を心がけるのも、5つのシナリオを描いてあらゆる事態に対処できるよう
にするのも、すべては会社の目的を果たすためだ。 社長は、会社が目指すべきゴールにたどり着くために存在しているのであって、その任務を確実に遂行するために、あらゆる立場のあらゆる視点から、あらゆるリスクを想定し、あらゆる展開を考慮しておかなければならない。 私は、誤った判断によって顧客や従業員に迷惑をかけたり、誰かに損失を負わせたり、その結果としてビジネスが回らなくなり、会社の未来が絶たれてしまったりする事態を何としても避けるために、可能な限りの努力を惜しまず、最善の判断を下すことを心に刻んでいる。 だが……常に正しい判断ができればいいが、判断を誤ることも、当然ある。私自身も、判断を見誤ったと感じる場合はあるし、悔やまれる判断もある。 判断の失敗には、外的要因と内的要因がある。 外的要因とは、例えば、震災が起きたとか、サーバーがダウンしてしまった、株価が急落した、といったものだ。これらについては、「最悪のシナリオ」として事前に想定しておけば、臨機応変な対応が可能になる。 ひとつの判断によって過去最大のピンチを招いたとしても、それが想定の範囲内であり、きちんと対応できるのであれば、それは判断ミスではない。しかし、想定できたはずのリスクを見逃し、それによって会社が危機に陥ったとすれば、それは失敗と言わざるを得ないだろう。 一方、内的要因としては、資源が足りなかったり、仕組みを準備できていなかったり、それがうまく活用できなかったり、従業員のモチベーションが続かなかったり、コミュニケーションが十分でなかったり……などが考えられる。 これも本来は、事前に想定できることなので、その場合の対応策が用意されているのが理想だ。特に、外的要因よりも管理しやすいため、そういう事態を引き起こさないような体制作りが必要になるだろう。 その上で、どんな判断にも失敗が付き物だと認識しておくことも、また重要だ。それによって、失敗から学び、次に生かすことができるようになるからだ。 何が原因で失敗につながったのか、判断のどの部分が甘かったのか、何を見誤ったのか。それらを確認し、次の判断を下す。その繰り返しによって、判断の精度は高まっていく。 もし判断を誤ったとしても、それによってデータの蓄積ができる。次の判断に生かすことのできる材料が増える。そして、対策を講じられる。つまり、判断を失敗することで、さらにリスクの想定範囲を広げ、対策できるようになることでリスク許容度を高められるのだ。 もしも、自分が下した判断が正解だったのか失敗だったのかわからない場合には、その判断によって目的に近づいたかどうかを確認すればいい。もし目的に近づいていれば、その判断はおおよそ正しかったと言える。 反対に、目的に近づいていなかったり、目的のほうに向かってはいるものの望む結果を十分に得られなかったりした場合には、良い判断を下すための材料が足りていなかったということだ。 そのときは、環境分析を見直し、資源リストを見直し、改めて判断を見直してみるといいだろう。そうすれば、どこに落とし穴があったのかが見えてくる。情報やデータが足りないのであれば環境分析をやり直し、資源が足りないのであれば補充すればいい。 だがそもそも、判断できる材料が揃っていない状態で、判断を下してはいけない。言い換えれば、二者択一のどちらを選べば「勝てる」のかはっきりするまでは、環境分析と資源出しを繰り返す必要がある。そうして十分な準備ができてはじめて、適切な判断を下すことができるのだ。 判断は、数をこなすことで質も上がっていく。もしあなたがビジネスを始めたばかりであれば、大きな判断をする場面はあまり多くないかもしれない。そんなときは意識して、小さな判断を積み重ねることも大切だ。 環境分析も、資源出しも、5つのシナリオ作りも、最初は地道なプロセスと感じるだろうが、それらをすっ飛ばして簡単にうまくいく魔法などない。小さな判断を下せない人間に、大きな判断は下せないのだ。
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