「弱者の戦略」の弱者とは、市場占有率が 2位、 3位以下で、強者の条件を満たしていない会社のことです。従業員数も、業歴の古さも、社長の学歴も、社長の個人資産もいっさい関係ありません。「弱者の戦略」の主な内容は、次のようになります。 1番目は、強いものづくりや 1位づくりを大目標にすることです。 経営で本当の価値があるのは、 1位の商品、 1位の地域、 1位の客層だけなので、まずそこを目標にするのです。 2番目は、攻撃目標と競争目標の分離の原則に従い、自社よりも強い競争相手とは直接戦わないことです。 3番目は、強い会社とは違った経営のやり方をすることです。つまり差別化です。 競争条件が不利な会社の業績がどうなるかは、「経営の大事なところ」がどれくらい差別化されているかで決まります。 4番目は、小規模 1位主義、部分 1位主義です。 限りある経営力で競争力がある強い商品をつくったり、 1位の地域をつくったり、 1位の客層をつくったりするには、市場規模が小さなものを重点目標にしなければなりません。 5番目は、細分化です。自社の経営力でも強いものや 1位になれるものを見つけ出すときは、商品や営業地域を細分化していくことで、自社にとって都合が良いものを見つけることができます。 6番目は、特徴があるもの、有利なものに力を入れ、弱いものは切り捨てることです。 7番目は、重点目標を絞って強いものづくりや 1位づくりに取り組むことです。 8番目は、経営力の分散を防ぐため、目標の範囲は思い切って狭くして、強いものづくりや 1位づくりに取り組むことです。 9番目は、商品の販売では卸会社や広告を使わず、可能な限り最終利用者に直接販売することを考えることです。こうすると強い会社から受ける 2乗作用の圧力が弱くなるので、競争条件が不利な会社でも十分やっていけるのです。 10番目は、競争力がある強い商品づくりや 1位の地域づくりに取り組むときは、物理的に見て 1位になれるだけの経営力を投入することです。 そのためには、もてる経営力を、目標に対して集中して投入しなければなりません。そうやっても強くなれないときは、目標の定め方が間違っているので、目標の定め方を変える必要があります。 11番目は、運営に当たっては軽装備を重視し、資金をかけずに動きを速くすることになります。 12番目は、強いものづくりや 1位づくりに取り組むとき、目標が達成されるまでは決して諦めず、忍耐強く続けることです。 13番目は、自社の経営目標や経営方針が強者に知られないよう、情報の管理には十分注意することです。 ここまで説明した「弱者の戦略」を実行し続ければ、業績が良くなります。こうなると中には社長の心に緩みが出、調子に乗って本業以外の業種に手を出したり、生活が派手になる人が出てきます。その結果、思わぬ損失が出て、会社が危なくなることがあります。 だから弱者は決して調子に乗らず、小さな成功で生活内容を変えてはいけないのです。 以上、「強者の戦略」と「弱者の戦略」の大事なところについて説明しました。 読んでわかるとおり、2つの内容は全くアベコベの正反対になっています。「強者の戦略」が実行できるのは 1000社中 5社くらいしかなく、残りの 995社は「弱者の戦略」で経営をしなければなりません。さらにこの中の 400社は競争条件が特別不利な「番外弱者」になるので、より厳密に「弱者の戦略」で経営をしなければならないのです。
ところが社長の中には「弱者というのが気に入らない」とか、「自分も一国一城の主であるから思いどおりの経営をするのだ」と言って、この原則を守らない人がいます。 本来「弱者の戦略」で経営すべき会社が間違って「強者の戦略」で経営をすると、根本的に間違った仕事を全員で実行することになるので効率が悪くなり、従業員 1人当たりの粗利益が 1年間に、「 100万円 ~ 200万円」も少なくなってしまいます。これでは経常利益が出てもほんの少しで、たいがいは赤字になるでしょう。 従業員が 20人いるなら、この損失額は 1年に 2000万円 ~ 4000万円になり、この状態が 5年間続くなら損失額は 1億円 ~ 2億円と、恐ろしいばかりの金額になってしまいます。これではほどなく危ない会社になるのは間違いないでしょう。 街かどにある自動販売機で、缶コーヒーを買うために 1000円札を取り出したところ、手元が狂って 1000円札が風に飛ばされたら、誰だってあわてて拾いに行きます。それが 1万円札なら、目の色が変わるはずです。 ところが、戦略の取り違いから出る損失は、お札のように目に見えませんし、いくら経営分析をしてもわからないので、毎月毎月多額の損失が出ていてもこれに気づかず、のん気な顔をしている社長が多いのは不思議な気がします。「働けど働けどわが社の経営は良くならず、じっと資金繰り表を見る」というときは、本来は「弱者の戦略」で経営システムをつくり、「弱者の戦略」で運営すべきなのに、間違って「強者の戦略」で経営システムをつくり、「強者の戦略」で運営していることに原因があるケースがたくさんあります。 そんなふうにならないために、社長はランチェスター法則を研究して戦略実力を高めなければならないのです。
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