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なぜ組織が必要なのか

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まえがき

なぜ組織が必要なのか

われわれの社会は、信じられないほど短い間に組織社会になった。しかも多元的な社会になった。生産、医療、年金、福祉、教育、科学、環境にいたるまで、主な問題は、個人と家族ではなく組織の手にゆだねられた。

この変化に気づいたとき、「くたばれ組織」との声があがったのも無理はない。だが、この反応はまちがっていた。なぜなら、自立した存在として機能し成果をあげる組織に代わるものは、自由ではなく全体主義だからである。

社会には、組織が供給する財とサービスなしにやっていく意思も能力もない。しかも、組織の破壊者たる現代のラッダイト(産業革命時の機械破壊運動者)のなかで、組織を必要としているのは、声の大きな高学歴の若者である。

知識を通じて生活の資を稼ぎ、成果をあげて社会に貢献する機会が豊富に存在するのは、組織だけだからである。組織をして高度の成果をあげさせることが、自由と尊厳を守る唯一の方策である。

その組織に成果をあげさせるものがマネジメントであり、マネジャーの力である。成果をあげる責任あるマネジメントこそ全体主義に代わるものであり、われわれを全体主義から守る唯一の手立てである。

経営書のほとんどが、もっぱらマネジメントの仕事を扱っている。それらはマネジメントを内から見ている。これに対し、本書はマネジメントの使命、目的、役割から入る。

マネジメントを外から見、その課題にいかなる次元があり、それぞれの次元において何が要求されるかを見る。しかる後に、マネジメントのための組織と仕事を見る。さらにトップマネジメントと戦略を見る。マネジメントは、以前にも増して大きな成果をあげなければならない。

しかも、あらゆる分野で成果をあげなければならない。個々の組織の存続や繁栄よりもはるかに多くのことが、その成果いかんにかかっている。組織に成果をあげさせられるマネジメントこそ、全体主義に代わる唯一の存在だからである。

本書の動機と目的は、今日と明日のマネジメントをして成果をあげさせることにある。一九七三年春カリフォルニア州クレアモントにてピーター・F・ドラッカー

 

序 新たな挑戦

現代社会の命運を握るもの

今やあらゆる先進社会が組織社会になった。主な社会的課題はすべて、マネジメントによって運営される永続的存在としての組織の手にゆだねられた。

一人ひとりの命とまではいかなくとも、現代社会そのものの機能が、それら組織の仕事ぶりにかかっている。しかも今日の市民の典型は被用者である。彼らは組織を通じて働き、組織に生計の資を依存し、組織に機会を求める。自己実現とともに、社会における位置づけと役割を組織に求める。

いまや、われわれの社会は被用者社会である。二〇世紀の初めには、「お仕事は何ですか」と聞いたが、今日では「お勤めはどちらですか」と聞く。しかるにわれわれは、この組織社会のための社会理論と政治理論とを持たない。この新たな多元社会のための理論はまだない。

組織社会は、今日われわれの社会観、政治観、あるいは社会観を支配している理論では説明できない。われわれは今日にいたるも、政治と社会のモデルとして、ボーダン、ロック、ヒューム、ハリントンなど一六世紀末から一七世紀の思想家の手になるものを使っている。

中央政府以外に、いかなる権力も組織も存在しない社会をモデルにしている。現実ははるかに進んだにもかかわらず、手にしているモデルはこれのみである。新しい現実のための新しい理論が生まれるには時間がかかる。だが、新しい理論の完成を待っている余裕はない。

行動しなければならない。たとえ十分ではなくとも、すでに明らかになったものを使っていかなければならない。

マネジメントなしに組織はない

まずわれわれは、マネジメントが、企業、政府機関、大学、研究所、病院、軍などの組織に特有の機関であることを知っている。組織が機能するには、マネジメントが成果をあげなければならない。組織がなければマネジメントもない。しかし、マネジメントがなければ組織もない。

次にわれわれは、マネジメントというものが、所有権、階級、権力から独立した存在でなければならないことを知っている。マネジメントとは、成果に対する責任に由来する客観的な機能である。

マネジメントは企業だけのものではない

新左翼は、われわれの社会を企業社会という。しかしこれは、今日の新左翼の論法全体がそうであるように、時代遅れである。たしかに先進国社会は企業社会だった。企業はあらゆる組織のうちもっとも力を持ち、政府に勝ることさえあった。

だが今日、その地位は着実に低下した。それは、企業が小規模になったり弱体化したりしたからではなかった。他の組織が成長し、社会が多元化したためだった。

しかるに、企業以上にマネジメントを必要としているものが、それら企業以外の組織である。今後それらの組織において、マネジメントに対する関心が急激に高まる。

すでに、市の水道局や大学など企業以外の組織におけるマネジメントの欠如が大問題となっている。

マネジメント・ブームの終わり

「ブームの時代は終わり、実績の時代が始まった」との言葉こそ、マネジメントのスローガンとならなければならない。第二次大戦前、マネジメントの本は、すべて集めても普通の本棚に収まった。

ところが、六〇年代の後半にはアメリカだけでも年間数百点が出版された。大戦前のものを全部集めた数の四倍から五倍が一年間に出版された。かつてマネジメントを教えていたのはハーバード・ビジネス・スクールだけだったが、六〇年代の末には世界中で数百校にのぼった。

マネジメントのブームも、他のブームと同じように終わった。華々しく終わりを告げたわけではなかったために、一見したところでは何が起こったかはわからなかった。実は、マネジメントの魔力が突然消えてしまったのだ。

最大の原因は、マネジメントが万能薬ではなく、挑戦であり仕事であること、いかに洗練されようとも魔法の杖ではないことがわかったからだった。

同時に、マネジメント・ブームの基礎となっていた第二次大戦前の薄明の時代に得られた知識が、いずれも現実に合わなくなったことが明らかになったからだった。

新しい知識、アプローチ、理解が必要になっていた。せっかくのマネジメント・ブームも、それらのものを与えることができなかった。

こうしてブームは終わった。だがマネジメントは、すでに世界の経済や社会を変えていた。もはやマネジメントを知らない時代に戻ることはできない。マネジメントは、これからも一つの力、機能、責任、規範であり続ける。

このことこそ、ブームが残したもっとも重要な成果であり、唯一の成果だった。マネジメント・ブームの中心となったコンセプトは七つあった。

それは、生産性向上のための科学的管理法(サイエンティフィック・マネジメント)、組織構造としての連邦分権組織、人を組織に適合させるための人事管理、明日のためのマネジメント開発、管理会計、マーケティング、長期プランニングだった。

これら七つのコンセプトは、いずれもマネジメント・ブームの前から使われ、成功を収めていた。言い換えれば、マネジメント・ブームは洗練し、追加し、修正したが、何も創造しえなかった。

しかしそれは、それまで少数の専門家の知識だったものを広く分け与え、それまで例外だったものを一般化した。ところが今日、マネジメント・ブームの中心となっていた知識では不十分なことがはっきりした。基礎的な分野でさえ、新しい知識が必要になってきた。

新しいニーズの出現

いくつかの重要な分野で従来の知識やアプローチが陳腐化した一方、まったく新しい分野で新しいニーズが現れている。

いずれも、マネジメント・ブームが始まったころには、研究はおろか予想すらされていなかったものだった。

まず、マネジメントとは、すでに確立された事業の管理的な活動を意味していた。起業家的な活動やイノベーションは、中心となるべき重要事項とは見られていなかった。

しかしいまや、既存のものの最適化に加えて、新しいものの創造に関わらなければならなくなっている。マネジャーは起業家でなければならない。イノベーションのための組織をつくり、動かすことを学ばなければならない。

次に、マネジメント・ブームとは、企業のマネジメント・ブームだった。マネジメントに関する研究のほとんどが企業のマネジメントを扱っていた。今日われわれは、企業のみならずあらゆる組織がマネジメントを必要とすることを知っている。

マネジメントに関わる最大の問題の一つが、企業以外の組織をマネジメントし、しかも成果をあげさせることである。さらに、これからの課題は知識の生産性を高めることである。肉体労働者は過去のものである。

これからのマネジャーにとって、肉体労働に関わる闘いは搦め手の問題である。基礎的な資源、投資、コストセンターとなるものは知識労働者である。彼らは、肉体的な筋肉や技能ではなく、体系的な教育から学びとるもの、すなわちコンセプトと理論によって働く。

最後に、企業のマネジメントはグローバルに行う必要が出てきた。今日先進社会は、経済的には一つの市場を形成している。しかも途上国社会と先進社会との違いは、供給能力の差だけである。全世界は、たとえ政治的には分裂していようとも、需要、欲求、価値の観点からは一つのショッピングセンターとなっている。

したがって、国境を越え、生産資源、市場機会、人的資源を最適化すべくグローバル化することは、必然的かつ正常な対応である。そしてもっとも重大な変化が、社会の願望、価値、存続そのものが、マネジメントの成果、能力、意志、価値観に依存するようになったことである。

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