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どうやって委任すればいいのか

 ここまで判断を委任することのメリットや、多くの社長が委任できない理由について説明してきたが、では、どのようにすれば、うまく委任することができるのだろうか。  まず、判断を委任する際に重要になるのは、会社の目的や目標、特に原因的な目的・目標だ。どんな価値を、どのような形で提供するのか、また、それに伴う会社の理念やビジョン、文化や価値観はどんなものか、といった会社として目指すゴールを定める必要がある。原因があれば結果があるので、おのずと、結果的な目的・目標も設定できる。  これらが明確になることで、業務に必要なルールやマニュアルを作ることができるようになる。明確な目的と目標を踏まえて「判断基準」となるものを用意するのだ。これを共有することで、社長以外の人間でも、社長と同じ基準で判断できるようになる。  ただ、人それぞれ思考する言葉には、微妙なニュアンスの違いが生じる。特に会社の目的は、表現としては曖昧なものになる場合もある。  だからこそ、社長だけが理解していても意味はなく、従業員をはじめビジネスに関わるすべての人に、なるべく自分と同じレベルで、会社の目的を理解してもらえるところまで落とし込んだ表現にする必要がある。  定められたルールは目的や目標を達成するための基準であって、ルールはすべて価値提供という目的のためにある。そのことを共有できていれば、ただルールに従うのではなく、なぜそのルールになっているのか、何のためにそうするのか、といったことを各人が理解した上で、それをもとに適切な判断を下せるようになる。  社長自身も当然、同じ基準に従って判断を下す。したがって、基準は社長よりも上に位置することになる。すると、従業員はいちいち社長に確認する必要がなくなる。その結果、社長がすべき判断の数が減る。

よくある社長の悩みのひとつに、「うちの会社は仕組み化ができない」というものがあるが、その理由は、明瞭で共有された判断基準がないことにある。その都度、社長である自分が判断を下さなければいけないという状況は、会社に明確な判断基準がない証しだ。  仕組み化とは、言い換えれば、業務に基準を作り、マニュアルに落とし込む作業だ。それを判断の基準にする。ただ、マニュアルは誰もが理解しやすく、従いやすいという利点があるものの、あらゆるケースにおけるすべての事項を網羅するのは難しいという欠点もある。  そのため、マニュアルだけで判断を委任しようとしても、それを超える課題が生じる度に、結局は、社長自らが出ていくはめになる。  だが、マニュアル化が難しい場合でも、目的を基準として置くことで、判断を委任できるようになる。マニュアルにない状況が生じたときでも、それより上位概念である目的を共有できていれば、社長でなくとも適切な判断が下せるのだ。  また、マニュアルによって判断を委任するよりも、目的に基づいて委任するほうが、自由度が高くなるという利点もある。作業が完全にマニュアル化されていると、いくら会社の目的に適っていても、スタッフが独自の判断をすることは許されない。  だが、目的による委任であれば、スタッフには一定の裁量が与えられる。原則としてのルールはあったとしても、目的に沿って独自の判断をしてもよい、という委任がされていれば、マニュアルを超える対応が必要な場合でも、目的に沿った適切な判断を下し、それに基づいた行動を取ることができる。  それは、顧客満足度をより一層上げることにもつながるだろう(明確な目的と目標をしっかりと共有できていることが前提だ)。また、場合によっては、目標を基準にして委任することもできる。品質管理や単純明快な作業では、これはとても有効だ。  ルールやマニュアルに基づく委任、目標による委任、目的による委任。それぞれに長所と短所がある。それらを理解して、自分以外に判断できる人を増やすことは、会社にとって非常に重要だ。会社の可能性と柔軟性をより高めたいなら、目的で委任することを試してほしい。

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