はじめに「はじめてプロジェクトリーダーになって部下を持ったがコミュニケーションが上手くできない」「自分が仕事をするのであれば完璧にやり遂げる自信があるが部下にやらせようとすると上手くできない」「話が下手で、部下に何かをわかりやすく説明できない」「やる気のない部下にどのように教えたらよいのかわからない」など、本書は、こうした人を対象に上司が部下を教えるコツについて取り上げています。筆者は、県立高等学校教諭、県立教育センター指導主事、短期大学、大学の教壇に立ってきました。教える環境や教える対象が変われば教え方を工夫しなければいけないというのが実感です。これまで上手くいった教え方が今年の学生には通用しないといった苦い経験も何度も味わいました。日々、どうしたらわかりやすい授業ができるだろうかと試行錯誤をしているというのが正直なところです。全国大学・短期大学実務教育協会主催〝協賛日本ビジネス実務学会〟ベスト・エデュケーター・オブ・ザ・イヤー賞全国大会優秀賞を受賞(2003年5月)をきっかけに全国各地から講演依頼をいただくことが多くなりました。講演会では、上手な教え方に関心を持っておられる方々と出会って、ご意見をいただいたり、時には励ましのお言葉をいただくこともありました。また、私の友人(地元企業の経営者や出版社、新聞社の方)から常々、人材育成の必要性と重要性についてお話を伺うことがあります。どの分野の方とお話をしても、「いかに人材を育成するか」という問題にぶつかります。人材が育たない理由のひとつは本人の意識や能力の欠如もありますが、一方で、人材を育てられない上司にも問題があります。筆者は、自信を持って部下を教えることができないでいる上司、萎縮し悩んでいる上司の方々に〝部下を教えるためのスキルについて羅針盤になるような本〟を作りたいと考えておりました。このたび、明日香出版社から「絶妙な教え方の技術」という書名で上司の教え方のコツについて出版させていただくことになりました。本書の特徴は、第1に、部下の教え方の幹になる部分を大切にしながら、より実践的なケースを多く掲載しています。具体的な部下の教え方を多く載せています。しかも、実際に仕事の上でよく見かけることやありえることをそのまま取り上げていますので、リアリティーに富んだ内容になっています。第2に、読者対象をビジネスマンを中心にしています。とりわけ、はじめて部下を持って悩み試行錯誤をしている方々に対しての応援メッセージになるような内容です。第3に、筆者が高等学校、教育センター、短大、大学での教える経験とこれまでの講演活動などの多彩な経験をベースにしていますので、読者に親近感を持ってもらえる内容です。第4に、章を追うごとに基礎から応用へとステップアップするように構成されています
ので、入社まもないサラリーマンから部下を持った上司の方々まで、幅広い層のビジネスマンに読んでいただけるように構成しています。第5に、理論的な内容は極力省き、実践に役立つ技術のみを取り上げていますのでポイントがはっきりしています。「なるほど…。そうか…。」と納得しながら安心して読み進むことができます。さて、具体的な内容について概要をご説明します。第1章では、「上司と部下のコミュニケーションの前提条件」というテーマで、上司は部下との信頼関係や心が通い合う状態をつくり出すことが大切、自分も相手も得する関係づくりが良好なコミュニケーションの前提条件、上司と部下が〝お互いによく知り合うこと〟がはじめの一歩について解説しました。いずれも上司が部下を教える場合の基盤をつくる大事な内容です。第2章では、「部下を教えるためのコミュニケーションの基本」というテーマで、反射と言い換えの方法を身につけることの大切さ、素質を見抜くことの大切さ、積極的傾聴の大切さ、受容することの大切さ、共感することの大切さ、質問することの大切さ、質問する際の注意点、ボディーランゲージの使い方、間を効果的に使うことによって相手に意思決定をさせることができるなどコミュニケーションの基本を説明しました。第3章では、「部下を教えるときの守るべき原則」というテーマで、教える準備を成功させるためには、2W1Gを明確にする、教える中身は5W2Hで考える、部下を正しく評価することは難しい、部下に達成目標を明確に教える、部下に問題意識を持たせる、失敗と成功を体験させることで教えるという観点から解説しました。第4章では、「部下を教える基本を身につける」というテーマで、アイコンタクトの重要性、立ち振る舞いで好印象を与える、名前で呼ぶにはコツがある、上手なほめ方、上手なしかり方、自分なりのストレス管理の方法を身につける、部下を教えるための7つのステップがある、について部下を教える基本という観点から解説しました。第5章では、「部下の仕事能力アップを図る教え方」というテーマで、バカのひとつ覚えを直させる教え方、選択肢の考え方と作り方を教える、仕事に失敗して落ち込んだ部下の教え方、仕事にやる気をもてない部下の教え方、仕事のやり方がわからない部下の教え方、仕事の優先順位がわからない部下の教え方、お客様の目を持つことの大切さを教える、ヒントを見つける方法を教えるなど、部下の仕事能力をどのようにアップしたらよいのか解説しています。第6章では、「部下の人間関係をさらによくする教え方」というテーマで、ポジティブなエネルギー源に気づかせる、口だけ達者な部下の教え方、こびる部下の教え方、年上の
部下の教え方など、対応に困った部下の教え方についてタイプ別に解説しています。なお、本書をお読みいただくに際のガイドになるように、〝絶妙な教え方の技術ロードマップ〟を掲載しました。また、教え方の上手な上司になっていただくための羅針盤としてご活用いただくための〝骨のある上司になるための30箇条〟を巻末資料として掲載しました。ご活用いただければと思います。本書が部下を教える上司の皆様を元気づける応援歌になればと思っています。最後に編集の労をとってくださった明日香出版社、古川創一氏に厚くお礼申し上げます。
目次はじめに第1章例の方法上司と部下のコミュニケーションの前提条件上司は部下との信頼関係や心が通い合う状態をつくり出すことが大切自分も相手も得する関係づくりが良好なコミュニケーションの前提条件上司と部下が〝お互いによく知り合う〟ことがはじめの一歩第2章例の方法部下を教えるためのコミュニケーションの基本反射と言い換えの方法を身につけることの大切さ素質を見抜くことの大切さ積極的傾聴の大切さ受容することの大切さ共感することの大切さ質問することの大切さ質問する際の注意点ボディーランゲージの使い方間を効果的に使うことによって相手に意思決定をさせることができる第3章例の方法部下を教えるときの守るべき原則教える準備を成功させるためには、2W1Gを明確にする教える中身は5W2Hで考える部下を正しく評価することは難しい部下に達成目標を教える部下に問題意識を持たせる部下に問題点を発見することを教える失敗と成功を体験させることで教える第4章例の方法部下を教える基本を身につけるアイコンタクトの重要性立ち振る舞いで好印象を与える名前を呼ぶにもコツがある上手なほめ方上手なしかり方自分なりのストレス管理の方法を身につける部下を教えるためには7つのステップがある第5章例の方法部下の仕事能力アップを図る教え方バカのひとつ覚えを直させる教え方
選択肢の考え方と作り方を教える仕事に失敗して落ち込んだ部下の教え方仕事にやる気を持てない部下の教え方仕事のやり方がわからない部下の教え方仕事の優先順位がわからない部下の教え方お客様の目を持つことの大切さを教えるヒントを見つける方法を教える第6章例の方法部下の人間関係をさらによくする教え方ポジティブなエネルギー源に気がつかせる口だけ達者な部下の教え方こびる部下の教え方年上の部下の教え方「絶妙な教え方の技術」ロードマップ(巻末)骨のある上司になるための30箇条(巻末)●著者略歴
第1章例の方法上司と部下のコミュニケーションの前提条件
上司は部下との信頼関係や心が通い合う状態をつくり出すことが大切ラポール(rapport)という言葉をご存じでしょうか。ラポールとは、フランス語で「橋を架ける」という意味です。人との信頼関係や心が通い合う状態のことを「ラポールがかかっている」と、言います。「リレーションがとれている」とほぼ同じ意味です。共にいる安心感や信頼感をつくり出し、本音のつき合いができていることです。これはある企業の人事担当者から聞いた話ですが、採用活動の中で就職活動に熱心に取り組む学生との間に信頼関係が生まれることがあるそうです。そのような学生に対しては、「○○君、就職活動、熱心にがんばってきたね。あなたとなら、一緒に仕事をしたいと思います。最後まであきらめずにがんばってください」と、激励の言葉をかけることがあるそうです。これは、企業の採用担当者と就職活動を熱心にする学生との間に信頼関係ができあがったことを示すケースです。
上司と部下の関係の基本においても、お互いの信頼関係や心が通い合う状態ができていることが大切です。上司と部下の間に信頼関係や心が通い合う状態をつくるためにはどうしたらよいのでしょうか。部下との接し方としては、「部下の言葉に耳を傾ける」「いつも冷静に接する」「いつも笑顔で接する」「積極的に雑談に入る」などのコミュニケーションを第一に考えましょう。職場では、「部下に気軽に声をかける」「ユーモアが職場の潤滑油だと思っている」「職場に笑いが絶えない」「職場のイベントには積極的に参加する」などの雰囲気づくりが大切です。仕事に関しては、「肝心なところは厳しく指導する」「自分のことより部下の成果や成功をほめる」「自分の失敗は素直に認める」「部下を成長させることに積極的」「部下との約束は絶対に守る」など公平に接し、よいところは認める姿勢をとりましょう。また、部下の悩みはとことん聴くことや部下の健康状態を常に把握しているなど、部下思いの上司であることが求められます。
自分も相手も得する関係づくりが良好なコミュニケーションの前提条件良好なコミュニケーションをつくる前提条件のひとつに「WinWin」があります。これは、コミュニケーションの当事者同士の関係をあらわしたものです。「WinWin」は、自分も勝ち、相手も勝つ状態のことです。「WinLose」は、相手を負かして自分だけ勝つ状態、「LoseWin」は、自分が引いて相手を勝たせる状態、「LoseLose」は、自分も相手も道連れで損をする状態です。この場合、「WinWin」だけが長続きする良好なコミュニケーションをつくる前提条件になります。「WinWin」以外の組み合わせは、一時的に成立しても良好なコミュニケーションは維持できないというわけです。現在は地元のコンピュータ会社で経営者として活躍しているAさんは、若い頃に出会った上司の言葉が今でも忘れられないそうです。当時、企業にネットワークシステムの営業をする仕事をしていました。連日、取引先を訪問して、新製品の性能がアップしたことや導入した場合の経費削減効果が大きいことばかりを強調しましたが、思ったように契約がとれませんでした。
それを見ていた上司から、一方的な説得だけでなく、先方の業務処理の課題や新製品を導入する場合の要望をお聞きするようにアドバイスを受けました。早速、先方にお伺いすると、さまざまな業務処理の課題があることがわかりました。導入にあたってはそれらの課題を全て解決することを約束して新製品の導入が決まりました。コミュニケーションでは、〝自分も勝ち、相手も勝つ状態〟、「WinWin」の関係をつくることが大切です。Aさんは、何とか契約をとりたいと思うあまり、取引先の業務処理の課題に目を向けないで、売上をあげることだけを考えて営業活動をしているように映ってしまったのです。つまり、相手を負かして自分だけ勝つ状態、「WinLose」の関係をつくろうとしていると思われたのです。上司と部下のコミュニケーションの場合にもこの考え方は当てはまります。よく耳にする部下からの上司批判の中に、「部下の昇進をえさにして無理な仕事をやらせる」「部下の成果を自分の成果にしてしまう」などがあります。これらは、「WinLose」の関係をつくろうとしているように思えます。上司は、部下が成長することによって上司自身も成長するという「WinWin」の関係が良好なコミュニケーションをつくる前提条件になることを理解しなければいけません。
上司と部下が〝お互いによく知り合う〟ことがはじめの一歩上司が部下にうまく教えるためには、お互いのコミュニケーションがうまくいっていなければいけません。ところが、上司は「部下は私のことを理解していない」、部下は「上司の考え方は理解できない」などと誤解やトラブルがつきものです。そんなときに限って、お互いに理解しあえないことを主張します。コミュニケーションを円滑にすすめるための考え方として提案されたモデルに〝ジョハリの窓〟があります。ジョハリ(Johari)とは、この考え方を提案した2人の心理学者ジョセフ・ルフト(JosephLuft)とハリー・インガム(HarryIngham)の名前を組み合わせたものです。〝ジョハリの窓〟には、〝自分が知っている自分〟と〝自分が知らない自分〟、〝まわりが知っている自分〟と〝まわりが知らない自分〟の組み合わせとして4つの組み合わせ(図1)があります。部下とのコミュニケーションをうまく成立させるためには、上司と部下が〝お互いによく知り合う〟ことが大事です。具体策について考えてみましょう。
まず、ジョハリの窓(図1)の隠された窓を開放された窓に変えていくことです。具体的には、自分のことをまわりの人に伝える努力をすることです。自分が感じたことや考えを素直な気持ちで相手に伝えていくのです。たとえば、経験の浅い部下に自分の入社当時の失敗や苦労を話しながら仕事の難しさや困難を克服した時の喜びを伝えるとよいでしょう。次に、ジョハリの窓(図1)の盲目の窓を開放された窓に変えていくことです。具体的には、周囲の人に意見を求めることです。思い切って、自分について部下がどう思っているのかを教えてもらうのです。自分では部下の成長を第一に考えていると思っていても、部下がそう感じているとは限りません。そして、ジョハリの窓(図1)の未知の窓を開放された窓に変えていくことです。具体的には、これまでに経験をしたことが無い状況に自分の身を置いてみることです。たとえば、無趣味だった上司が、ストレス管理のために生活に取り入れることができるアロマセラピーの楽しみ方の勉強を始めるなどです。部下とのコミュニケーションがうまくいかないと悩んでいる上司の皆さん、あなたから積極的に心の窓を開放する努力をしましょう。〝〟、。
第2章例の方法部下を教えるためのコミュニケーションの基本
反射と言い換えの方法を身につけることの大切さ部下を教えるときに、部下が緊張してコミュニケーションがうまくいかない場合があります。このような場面で使いたいのが反射と言い換えの方法です。反射とは、部下の目を見ながら部下の発言を判断しようとせずにストレートにとらえる方法(〝オウム返し〟と呼ばれます)のことです。相手の発言の内容にとらわれると反射することに躊躇してしまい、タイミングがずれてしまいます。ただ相手の言葉をそのまま返してあげればよいのです。不思議なもので、相手が自分の話を聴いてくれている、興味を持ってくれていると部下は上司が自分の話を聴いていてくれていると実感するというわけです。反射するタイミングは意外とむずかしいので、会話の中で出てきた単語だけでもいいので相手に返してください。たとえば、相手が京都旅行の話をした場合に、相手が「私、京都へ旅行へ行ってきました」と話したら、「京都ですね」と地名を返すといった具合です。
一方、部下の言ったことを別の表現で部下に返してあげることを言い換えといいます。言い換えは、部下の表現したいことを先取りして表現する方法です。「それは、…ということですね」「…とも言いますよね」と別の表現を使って言い換えます。また、部下の気持ちを言い換える方法として、「…のかなぁ?」「…という感じかなぁ?」「私には……のように感じられます」のように部下の気持ちを察する方法もあります。とくに、部下が同意を求めている場合には効果的な方法で、部下が仕事で壁にぶつかったときなどさまざまな悩みの相談を受けたりする場面では、部下の気持ちを受け止めてあげる方法として利用できます。部下の話の内容には伝えたい事実と自分の思いや感情が含まれています。上司は、部下の話を聴きながら、部下は何を伝えようとしているのか、部下の思いや感情は何なのかを区別して聴く必要があるのです。実際、部下は伝える事実よりも自分の思いや感情を知ってほしいと思っている場合が多いので、部下の気持ちを言い換える方法は、部下とのコミュニケーションをうまく行う方法として効果的です。部下との関係作りが十分にできない場合、コミュニケーションをスタートさせる方法として反射と言い換えの方法が役立つと覚えておきましょう。自然に使えるように身につけておきたいコミュニケーションの方法です。
素質を見抜くことの大切さ地元でフレンチレストランを経営するオーナーシェフのAさんから部下の育成についてのお話を伺いました。Aさんは高校卒業後、東京のフランス料理店に丁稚奉公に入っていたそうです。来店されたお客様の名前や注文された料理を正確に記憶し、予約が入るとそのお客様が過去に来店された時期や注文された料理を言い当てることができました。そんなやりとりを見聞きしていた当時のシェフは、必ずAさんに自分の作った料理をサービスする役目を与えました。ある日のこと、シェフはAさんに肉料理のソースの味見を命じました。これには先輩の料理人達もびっくりしました。「日本で5本の指に入るオーナーシェフの作ったソースを新米のAさんに味見させるなんて、シェフは何を考えているんだ」と思ったそうです。Aさんはお皿のスープを少しすくって、慎重になめました。そして、「シェフ、率直に言わせていただいてよろしいでしょうか。少し、塩味が足りないような気がします」「わかった。ありがとう」と言って、塩をひとつまみソースの鍋に足したのです。後で、わかったことですが、この日のシェフの体調は最悪でした。風邪をこじらせてしまっていたのです。微妙なところでの味付けに自信が持てなかったので、新米のAさんに味見をしてもらったというわけです。
実は、Aさんはお客様のお皿を片づけて食器を洗う時にお皿に残ったソースを指につけて味見していたのです。常に料理に使われている調味料の組み合わせや食材の特徴がどのようにいかされているのかを常に考えていたのです。Aさんの観察力のすばらしさは誰もが認めることですが、オーナーシェフがAさんの素質を見抜いていたことも驚きです。①一流の料理人になるにはセンスが必要です。シェフはAさんの仕事ぶりを見て、一流の料理人としての素質を持っていることを見抜きました。②Aさんを名指しで自分の作った料理をサービスする役目を与えました。Aさんが、食器を洗う時にお皿に残ったソースを指につけて味見をして、そこから何かを学んでいくと確信していたのです。③突然、ソースの味見をさせることは、Aさんの素質をAさん自身に教えることになりました。そして、もう一つのねらいは、先輩の料理人達にAさんが一流の料理人としてのセンスがあり英才教育を受けるのに値する人間であることを認識させたのです。
積極的傾聴の大切さ部下の意見に耳を傾けないで一方的に命令や指示を出す方法もありますが、部下の問題意識をふまえたさまざまな意見交換から新たな営業活動の改善をおこなう方法の方が効果的です。このような場面では、上司は部下の考えや提案を積極的に聴くように心がけましょう。上司が部下の話を積極的に聴くことによって部下はコミュニケーションがうまくいっていることを実感して、積極的に意見を出すようになるでしょう。積極的傾聴の効果は3つあります。①部下と人間関係をつくることができます部下に興味を持ち、さらに部下のことをよく知りたいと思うようになります。部下はあなたの積極的傾聴の姿勢からお互いのコミュニケーションが盛り上がっていくことを実感できるのです。②自分が知りたいと思っている情報を部下からもらうことができます部下の話す内容から情報を収集することはもちろんですが、部下の表情や素振りなどからも貴重な情報をとることができます。たとえば、部下の表情が儀礼的であれば額面通りに受け取ることはできません。積極的傾聴を通じて、部下からの生のメッセージを受け取ることの意味がここにあるのです。
③部下との〝WinWin〟の関係づくりができることです。売上や利益の拡大といった共通の組織目的のために上司と部下が力を合わせる関係づくりが必要になります。部下とのコミュニケーションを深めるためには部下の考えや意見を徹底して聴くことが必要です。多くの場合、上司は言いたいことを部下に伝えることに集中してしまって、部下の反応を観察することがおろそかになりがちです。積極的傾聴を使う場合のポイント3つを心がけましょう。①部下の発言を評価的に聴かないこと②部下に忠告しないこと③事実と感情を区別して聴く積極的傾聴は、部下にコミュニケーションがうまくいっているということを実感させます。
受容することの大切さ上司になった人は、誰でも〝部下から慕われて頼りになる上司になりたい〟と思うものです。上司ならば誰でも部下の話や気持ちを理解し、相手を受け止めることが大切なことだとわかっています。では、相手を受け止めるということはどのようなことでしょうか。このような質問をすると、上司から〝部下の話をよく聴く〟、〝部下の気持ちになって話を聴く〟、〝部下の話を親身になって聴く〟といった答えが返ってきます。逆に部下からは、〝上司に話をよく聴いてもらっている〟、〝上司が自分のことのように聴いてくれる〟、〝上司が親身になって聴いてくれる〟といった答えが返ってきます。このことからもわかるように、上司と部下のコミュニケーションの善し悪しは、部下の側が決めることです。わかりやすくいえば、部下の立場からみて、〝上司に話をよく聴いてもらっている〟、〝上司が自分のことのように聴いてくれる〟、〝上司が親身になって聴いてくれる〟という実感を部下に持たせることが大切です。ここが肝心なポイントです。自分の経験談や苦労話をしたり顔で話す上司に限って、部下の話を親身になって聴いていると思いこんでいるのではないでしょうか。上司の自己満足に終わってしまっては部下とのコミュニケーションがうまくいっているとはいえません。
部下とのコミュニケーションをうまくおこなうためには、心の底から相手を受け止めることが必要です。では、心の底から相手を受け止めるにはどうすればいいのでしょうか。①相手の立場に自分を置く相手の気持ちになってみる。部下からの情報には必ず喜びや悲しみ、苦しみの感情を伴います。これらの感情を自分のことのように受け止めることです。②相手を評価しない相手の話を「賛成」「反対」などのように評価しながら聴かないということです。評価しながら聴いてしまうと相手の気持ちになりきることはできません。相手を受け止めるとは、相手が伝えたいと思っている内容と相手の気持ちを理解することです。これは簡単なようで難しいことです。上司が自分を受け止めてくれていると実感した部下は上司を身近な存在として受け入れます。部下を教える場面のコミュニケーションでは、その都度、部下を受け止めることができているかどうかを自問自答することが大切です。
共感することの大切さ営業マンのAさんは30歳代の後半になって営業課長に出世しました。彼は部下の気持ちのわかる上司になりたいと思っていました。仕事が遅くなったときには居酒屋に誘って部下の愚痴を聞きました。赴任した最初の頃は部下達も喜んでついてきたのですが、次第に口実を作って誘いに乗ってくれなくなりました。気心の知れた部下の話では、〝課長といっしょに飲みに行っても楽しくない〟というのが返事でした。それから、一ヶ月後、「最近の課長はよく話を聴いてくれるようになった」という声が聞こえてきました。ところが、課長には心当たりがなく、ここ一ヶ月間の部下とのコミュニケーションを思い出してみました。〝そうか、そうだったんだ〟と心の中で叫びました。実は1ヶ月前から奥歯が虫歯になってしまったので歯医者に通院していたのです。仕事はなんとかこなしましたが、部下が仕事の報告や相談にやって来た時は困りました。虫歯が痛むと話に集中できなかったのです。そこで課長は、〝ほー〟という返事だけでこのピンチを乗り切ることにしました。
実は、〝ほー〟の使い方もいろいろあるのです。うなずきながら〝ほー〟と伸ばせば、〝なるほど、そうですか〟という受け止め方になります。〝ほー〟と語尾をあげるようにすれば、〝それは、本当ですか〟という受け止め方になります。〝ほー〟と普通に言えば、〝はい〟という受け止め方になります。課長が〝ほー〟とあいづちを打っている間、部下は一生懸命に話してくれました。どうやら、これが部下の評判の秘密だったのです。部下は上司に自分の気持ちが伝わっていると感じていたのです。たったひとつの〝ほー〟という魔法の返事が課長を救ったのです。うなずきやあいづちは、相手に共感していることをあらわすサインです。このサインを受け取った部下は〝自分のことをわかってくれている〟と自覚してさらに話をしたいと思うようになります。この積み重ねがあなたと部下との信頼関係をつくることに繋がるのです。さらに、アイコンタクトやボディーランゲージを使うとよいでしょう。たとえば、表情を豊かにして、目を見ながら真剣な表情で「そうですか」、手を打ちながら「なるほど」などの方法を使えば、効果を倍加することができます。うなずきやあいづちを効果的に使うことによって部下とのコミュニケーションをうまくできるように心掛けましょう。
質問することの大切さコミュニケーションをすると、〝質問することは相手との対立を際だたせることになるので、できるだけ質問をしない方がよい〟と思っている人がいます。しかし、それは違います。コミュニケーションの場面では質問のスキルを効果的に使うことによってコミュニケーションを深めることができます。教える場面でよくあるのが「ここまではご理解いただけたでしょうか」という質問です。これは相手が教える内容を理解できたかどうかを確認する効果があります。では、相手から明確に返事がない場合、部下にとっての質問の効果は何でしょう。それは「○○さん、ここまでは理解できましたか」という質問に対して自分がどれだけ理解できているのかを自分自身に問いかけることができることです。質問は〝閉じた質問〟と〝開いた質問〟の2つに分けられます。「はい」か「いいえ」のように答えが限定される質問が〝閉じた質問〟です。〝閉じた質問〟に対する答えは、答えやすいのが特徴です。「今日はお車で来られましたか」に対して「はい」、「今日はお天気がよくてよかったですね」に対して「はい」というように、お互いのコミュニケーションをスタートする時に使います。
〝閉じた質問〟は、連続して使うと答える側は相手に尋問されているような気になります。これだけでは相手の気持ちを和らげ、お互いに信頼感を持つことができないでしょう。答えが限定されていない質問が〝開いた質問〟です。相手から情報を収集したい場合や会話を盛り上げる場合に使います。「先月のプロジェクトの成功おめでとう。リーダーとしてどのようなご苦労があったのですか?」など、相手の興味や関心を引き出しながら質問します。お互いのコミュニケーションが盛り上がりますから、信頼関係を築きやすいという長所があります。〝閉じた質問〟と〝開いた質問〟を使い分けるポイントは2つあります。①相手との信頼関係が十分に築かれていない場合には、〝閉じた質問〟を使いながら相手の状況を理解するようにします。会話の中で相手の反応がよい質問を見つけて、〝開いた質問〟を使って会話を広げていきます。②会話が盛り上がっても相手が答えにくい質問をしてしまう場合があります。このような場面では、「ところで…」と話題を変えて続けて〝閉じた質問〟をするようにします。〝閉じた質問〟と〝開いた質問〟を臨機応変に使い分けることが大切です。
質問する際の注意点相手の本心を訊ねる目的で使う高度な質問があります。たとえば、「率直にお尋ねします。当社の製品と○○会社さんの製品と比べた場合の決定的な違いは何でしょうか」などと相手の懐に入る質問があります。このような質問は相手との信頼関係があることを確認してから質問しましょう。相手との信頼関係が築かれていない段階でこのような質問をすると相手から馴れ馴れしいと思われて警戒されてしまいます。また、新しい部下を教える場合は相手の趣味や職歴などを知っておくとよいでしょう。「そう言えば、君は総務課でイベントの仕事を担当していたそうですね。来月の新車発表会なんだけど、他社が真似できない斬新なキャンペーンを企画しようと考えているのだが、君の考えを聞かせてくれないか?」と質問すれば、部下は自分の経験を生かした企画や意見を出してくれます。次に質問する上での注意点について考えてみましょう。①質問にはタイミングがありますあくまでもお互いのコミュニケーションの過程で行われるものですから、相手とのコミュニケーションを妨げるようなタイミングでの質問はしてはいけません。たとえば、相手の考えがまとまっていないのに焦って結論を催促するような質問をしたり、相手がせっかく決断しようとしたのに後戻りするような質問したりする場合です。②答えにくそうな質問はしてはいけませんたとえば、部下との信頼関係をつくるために親密な関係になることが大切だと思い、まだ親しくなっていないのにプライベートや家族のことを質問するのは失礼にあたります。同様に相手の失敗や聞かれたくないような話題について質問することは避けましょう。部下が質問に対してためらったりして表情が変わったら話題の転換をして答えやすい質問をしましょう。③「なぜそうなのか」「どうしてそうなのか」と相手を追いつめるような質問をするのはやめましょうこのような質問を繰り返していると相手は尋問されているような気がしてコミュニケーションを途中で止めてしまいます。質問することは、コミュニケーションを深めるために効果があります。タイミング良く使うことが大切です。そのためには、「相手とのコミュニケーションを妨げるようなタイ
ミングでの質問はしない」「相手が答えにくそうな質問はしない」「相手を追いつめるような質問はしない」などの質問をする時のマナーを部下に教える必要があります。とくに、相手の本心を訊ねる目的で使う高度な質問は相手との信頼関係があることを確認してから質問することを教えます。
ボディーランゲージの使い方教える場合に説得力を増すためにはボディーランゲージを効果的に使うことが重要です。通常の会話の中で私たちが相手から受ける影響は、相手の話の内容よりも相手の話し方や声の抑揚といった発声に関する影響、身振り・手振りなどのボディーランゲージの影響の方が大きいといわれています。メラビアンの法則というのをご存じでしょうか。これは心理学者のメラビアン博士が発見した法則で、話し手と聞き手のコミュニケーションにおいて、何がどれくらい影響するのかを調べたものです。聞き手が話し手から受ける影響を分析すると、見た目・身だしなみ・しぐさ・表情などが55%、声の質(高低)・大きさ・テンポなどが38%、話す言葉の内容が7%であったそうです。言葉だけのコミュニケーションがいかに難しいものであるかが理解できます。もちろん、話の内容が重要ではないというわけではありません。実際、教える経験を積んで慣れている人は身振り・手振りなど、ボディーランゲージが自然にできているものです。意識しないでも身体が自然に動いているのです。
ところが、経験が浅い人の場合は人前で話すことで精一杯ですから、さらにボディーランゲージを付け加えてといっても失敗してしまいかねません。ボディーランゲージを身につける方法としては、意識して実際にやってみて点検することが効果的です。家族や友人の前で実演して意見を出してもらうのがいいのですが、自分で鏡を見ながらやってみてもよいでしょう。鏡の大きさは身長の半分があれば全身が映りますので、家庭にある三面鏡を利用してみてください。朝、出勤する前に自分の姿を鏡に映して点検し、想定されるボディーランゲージを実際にやってみることをオススメします。また、通勤途中でも点検はできます。ショウウィンドウに映った自分の姿勢や歩幅や歩き方、手の動作をそれとなくチェックするのです。通行人から〝何が起こったのだろうか〟と不思議そうに見られないようにするのがポイントです。ボディーランゲージは、身振りや手まねなどを効果的に利用することによって、部下の理解を助け、興味・注目を集め、短時間で多くの情報を伝達できるばかりか記憶に残る割合を大きくすることができます。上手に教える技術のひとつとしてマスターしておきたいものです。
間を効果的に使うことによって相手に意思決定をさせることができるコミュニケーションで間をおくことは一呼吸置くことですが、これには大きなメリットが2つあります。ひとつは、間を置くことによって冷静な自分を取り戻すことができることです。自分の考えを整理する時間を持つことで、冷静になり、感情的に言いすぎたところにも気がつき、論争している相手の言い分にも耳を傾けようという余裕が出てきます。そして、もうひとつは、間を使うことで、相手に意思決定をさせられることです。間をとれない人の特徴は、すごく早口、相手の話を聞いてもすぐに自分が話し出す、あまり重要と思えないことをとりとめもなく話す、相手の話をよく聞かないで自分のことばかり話すなど、話が一方的な人です。一方、間をとれる人の特徴は、ゆっくりと穏やかに話す、ささいなことでも親身になって聞いてくれる、相手の話を聞いても大きくうなずきながら聞いてくれる、数秒間をおいてから話すなど、話に余裕がある人です。
なお、効果的に間をとることができれば、コミュニケーションはもちろん、仕事の質を上げることができます。たとえば、〝営業は、押して、押して、押しまくれ〟と教える上司がいますが、すべてがこの考え方で通用するとは限りません。いくらおいしい料理でも次から次へ出されて、おいしいから食べろと言われたら躊躇してしまう人もいます。押したら引いてみたりなど、相手に間を与えるのが大事になってくるのです。間をとることの大切さと効果を部下に教えることが大切です。お客様と商談する時など、間をとらなかったばかりに、クレームにつながるということも十分考えられます。まずは、普段の立ち振る舞いからゆとりを持って仕事をさせることが大切です。そのためには、上司が模範を示す必要があります。間近にいる部下は上司の仕事ぶりをよく見ています。普段、ゆとりのない立ち振る舞いや話し方をしている上司が部下に間をとることの重要性を強調しても説得力がありません。
第3章例の方法部下を教えるときの守るべき原則
教える準備を成功させるためには、2W1Gを明確にする部下を教える場合に教えることが上手くいくかどうかは教える準備が成功するかどうかで決まります。教える準備として、2W1Gを紹介します。1)2W1Gの最初のW2W1Gの最初のWは、だれを教えるか(Whom?)です。教える相手について事前に調べておかなければいけないチェック項目があります。①参加する方の所属と名前、性別、年齢私は、かつて教育委員会で情報処理研修を担当していました。研修前に必ず研修生の性別と年齢を事前にチェックしました。当時は、パソコンが高等学校に普及しはじめた頃でした。学校にお勤めの女性教職員の皆さんは、パソコンの操作に不慣れな方が大半でした。また、年配の教職員の方の中には退職前にパソコンの操作を勉強しておきたいと思われて参加する方が多かったのです。
ですから、女性の参加者が多い場合や年配の方が多い場合は、講座で使うテキストの内容を基本的なものを中心にして応用的な部分をカットしました。②経歴や職歴教材を作る場合や資料を準備する場合に部下の経歴や職歴を確認しておかないと失敗することがあります。たとえば、営業マンの能力開発をテーマとした研修で基本的な営業の方法を講座で教えようと研修内容を準備したところ、当日、会場に集まった研修生が全国の各支店から選抜されたベテラン営業マンであったような場合は、参加者と講座内容のミスマッチがおこってしまいます。③参加動機ある中小企業の話ですが、今のようにパソコンが普及していなかった時代に社内の情報化に備えるための社員研修が行われました。社長はじめ会社の幹部は、情報化の波に乗り遅れるな、他社に負けるなと、すべての部下に研修に参加することを義務づけました。年配の部下の中にはパソコンの「パ」の字も知らない人もいましたが、上司は会社の命令ですから、そんな年配の部下に頭を下げて研修に参加してもらいました。
困ったのは研修を担当した講師です。一方には仕事でパソコンを使いこなしている若手の社員がいると思えば、他方にはパソコンの電源の入れ方もわからない社員がいるわけです。研修期間中は〝はやく研修が終わってほしい〟と本気で思ったそうです。2)2W1Gの次のW次のWは、なぜ教えるのか(Why?)です。教える目的とその背景を把握しておくことです。前出のパソコン研修の場合、教える目的とその背景の把握が不十分でした。〝世の中が情報化の話でもちきりになると、乗り遅れてはいけない〟と考えてパソコン研修を行うことは教える目的があいまいと言われてもしかたないと思います。たとえば、パソコンを覚えることで、仕事の効率化が図れるなど、研修の意義を具体的にイメージさせられるようにするべきです。3)2W1Gの最後のG最後のGは、目標はなにか(Goal?)です。教える時には必ず教える目的を明らかにしておきます。具体的なオペレーションが決まっていない到達目標は絵に描いた餅ですが、具体的な到達目標がないオペレーションも自己満足しか意味がありません。目標が明確だからこそ、それを達成するまでのスケジュールが立てられるのです。〝2W1G〟は、部下を教える立場になる上司が必ず、身につけておかなければならない考え方です。研修計画を立てる時に迷ったら、この〝2W1G〟をふり返って点検してみましょう。教える効果をあげるための準備を怠らないことが教える効果をもたらすのです。
教える中身は5W2Hで考える教える中身を決めるのには、原則があるある薬品会社で営業担当のリーダー研修会が企画されました。全国のベテラン営業マンが集まり、薬品業界の研究で有名な某大学の教授を講師に招きました。ところが、実際に研修が始まると、薬品業界の歴史や欧米と日本の薬品会社の比較が中心でした。研修担当者が講師との打ち合わせでお願いした〝営業力がアップするようなお話〟の部分は一般論になってしまいました。この研修が失敗した原因は、講師の選択を誤ったことにあるわけですが、もともと研修担当者が研修内容を企画するときにその目的やねらい、方法などの内容について明確にしていなかったところにあります。内容を決める時、5W2Hの考え方が役立ちます。5W2Hとは、When(いつ)、Who(誰が)、What(何を)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように)、Howmuch(Howmany)(いくら・いくつ)の頭文字をとったものです。
①When(いつ)教える(研修会の)日時や期間を決めます。②Who(誰が)研修に参加する対象者を決めます。また、対象者の決定方法(自由参加、推薦の場合は推薦方法、選考する場合は選考のための方法など)も決めます。③What(何を)研修の目的を決めます。到達目標、実行目標を具体的に決めます。④Where(どこで)研修を行う場所を決めます。⑤Why(なぜ)研修が必要となった理由を明らかにします。⑥How(どのように)どのような研修方法で研修を行うのか決めます。講義、講演、ロールプレイ、実習などをどのように組み合わせるのか決めます。⑦Howmuch(Howmany)(いくら・いくつ)研修を行うためにかかる費用を明らかにします。5W2Hの考え方は、教える内容の骨組みです。基本原則といえます。
部下を正しく評価することは難しいある百貨店の婦人服売り場のチーフをしていたBさんは気が利くことでお客様から評判が良い社員でした。職場の部下からもリーダーとして慕われていました。営業成績はトップで上得意のお客様からも信頼されていました。毎年、クリスマスのシーズンになると、クリスマスケーキの販売協力でノルマの割り当てがきます。ある年の年末、このままでは売れ残ってしまうと思われた大量のクリスマスケーキを彼が作り上げてきたお得意様のネットワークを使ってわずか3日間で売り切ってしまったことがありました。そんな彼の能力や人柄を高く評価していたAさんは、彼を外商のマネージャーに推薦しました。Bさんは、4月になって、外商のマネージャーとして仕事をはじめました。誰もが、外商でも大きな成果をあげてくれるものと信じていました。しかし、婦人服売り場でつくったお客様のネットワークを頼って営業にまわったもののお中元やお歳暮などの売上には結びつきませんでした。Bさんは、その年末になって突然、「平社員に降格してもいいので元の婦人服の売り場に戻してほしい」と人事部長に相談に来ました。
人事部長Aさんの評価には、上司が陥ってしまった失敗が3つありました。①Bさんの姿を自分の若い頃の姿とダブらせてしまったのです。②Bさんの営業マンとしての活躍ぶりや社内行事への積極的な取り組み、周りからの信頼を見て、Bさんの全てがすばらしいと評価してしまったのです。③Bさんは大量のクリスマスケーキをわずか3日間で売り切りました。Aさんに与えたインパクトが強かったのです。この記憶が判断を狂わせました。上司は部下を公平に評価できない場合の原因には、「上司が好む性格を持っていない部下は、低い評価になってしまう」「不平を言わない部下はよい部下であると評価される」「特別成績がよくなくても過去に業績をあげた部下を高く評価する」「実際の業績がよくなくても経歴が立派な部下を評価する」「口の達者な部下、上級の資格をもった部下、学校の後輩といった仕事の業績と関係のない要素で評価する」など、仕事の成果以外の要素で評価される場合が多いようです。上司は常に部下の評価を公平に行っているかどうかを自問自答しなければいけません。部下は上司の評価に敏感です。上司の評価が公平ではないと感じた部下は上司に対する信頼を失くしてしまいかねません。
部下に達成目標を教える現状の問題点を明らかにすれば、到達目標が見えてくる社員食堂で2人の社員が食事をしながら話していました。「最近、新入社員のA君だけど、出社すると必ず課長の机の前で『おはようございます』って笑顔で挨拶をしているよね。時々、何回もやり直している時もあるけれど、何かの儀式かな。君はどう思う?」数日が過ぎて、2人の社員は課長に何をやっているのか尋ねました。すると、課長が「あれはA君に頼まれたことです。笑顔ができなくて営業に自信がないというから、明るい笑顔で挨拶することを到達目標にして毎朝、練習しているんだよ。自分では笑顔ができているかどうかわからないだろう?だから、私が見て、合格なら右手で輪をつくって合図を出すんだよ」。つまり、A君が笑顔で挨拶ができるようになるのが到達目標で、そのための練習だったのです。部下を教える場合は、必ず到達目標を決めます。この到達目標が漠然としていてあいまいな状態では教えても効果がありません。上司が、「お客様の話を聴くことができる営業マンになろう」という課題を設けて研修を行うことになったとします。みなさんならどのような到達目標をあげますか。到達目標を決めるには、現状の問題点を的確に把握する必要があります。
上司は部下と話をしながら、どのような点がまずいのか観察します。たとえば、先程の例で言うと、明るい笑顔ができるようにすることが到達目標のひとつになります。本人が自覚できない場合は、普段、仕事をしている様子をビデオで撮影して本人に見せるとか、同僚の印象を聞いてみることもよいでしょう。さらに、到達目標が決まれば、細かに実行目標を決めさせます。現状の問題点の分析から到達目標が決まれば、さらに、実行目標を決めます。①実行目標は、継続可能な目標にする必要があります。②実行目標は、具体的な内容にします。「正しいお辞儀ができる」「アイコンタクトができる」「明るい挨拶ができる」など具体的にします。③実行目標はいつまでにどの段階まで達成するのか決めさせます。たとえば、次の同行指導までにできるようにするなどの期限を設けます。そうすれば、より目標が明確になります。また、到達目標を100%達成するのではなくて30%の段階、50%の段階、80%の段階、100%の段階というように段階にわけて到達目標を決めるとよいでしょう。
部下に問題意識を持たせる部下に問題意識を持たせるのは、仕事を覚えさせるうえで、避けては通れません。部下が仕事をしていくうちに、自発的にはなかなか身につきにくいものですので、やはり教える必要があります。では、部下に問題解決プロセスを教えることについて考えてみましょう。①問題を認識する問題解決のプロセスの第一歩は、問題を認識することです。そのためには、あるべき姿や目標と、現状との差(ギャップ)を明確にすることが必要となります。②問題の所在を明らかにする問題を認識したら、次に問題はどこにあるのかを特定します。たとえば、〝注文した商品が届かない〟という問題に対して、その原因を考えます。③問題はなぜ存在するのかを検討する問題の所在を明らかにします。営業マンが売買取引のデータを製造部門へ連絡するのが遅いので、製造部門への指示が遅れたのかどうかをチェックします。
④問題解決の方法を決めて実行する問題を解決するために何をすべきかを検討します。実現の可能性が高く、成功の見込みが高い解決策を選び、実行します。⑤問題解決策を検証する問題解決策の実行結果を評価します。問題が解決しない場合には、①から④のステップのどこに問題があるのかを検討して問題解決にあたります。ところで、部下に問題解決のプロセスを教えるタイミングは2つあります。到達目標が達成できそうもないことに部下が気がついているときは、「問題はどこにあると思う?」などと問いかけて、問題の所在を明らかにさせます。到達目標が達成もできそうもないことに部下が気がついていないときは、「どうですか、仕事の進み具合は順調ですか?」などと問いかけて、問題を認識させます。また、問題がなぜ存在するのかを考えさせる場合、その原因がひとつではない場合があるので様々な角度から考えさせます。
部下に問題点を発見することを教えるなかなか問題が解決しない場合、部下が問題点を発見していないことも考えられます。部下に問題点を発見することを教えるには3つのポイントがあります。・コミュニケーションの観察のスキルを使って情報を収集させます。・あるべき姿(理想)と観察した情報(現実)との食い違いを意識させます。・その食い違いが許容範囲かどうかを考えさせます。また、問題を発見する方法として、論理的に考える方法があります。たとえば、飲料メーカーが、「昨年度の実績が売上増加率10%であったので、本年度の売上増加率を10%にする」と推論し、販売促進の方法を検討する場合です。論理的に考える方法を使う場合には、次の2点に留意してみましょう。まず、前提条件を明確にして、その有効性を考えます。先ほど「昨年度の実績が売上増加率10%であったので、本年度の売上増加率を10%にする」について、根拠となった前提条件が有効性かどうかを考えます。次に、推論と結論の妥当性を考えます。推論と結論には希望的観測を入れないことが大切です。
失敗と成功を体験させることで教える部下を教える場合によく行われる方法にロールプレイがあります。ロールプレイには失敗と成功を体験させるという効果があります。営業の方法を教えることを例に考えてみましょう。〝お客様の意見を無視して一方的に売り込もうとする失敗パターン〟と〝お客様の嗜好や考えを受け止めながら商品を提案する成功パターン〟を用意します。まず、失敗パターンと成功パターンの両方を体験させて、どのように違うのかを考えさせます。両者を比較することで違いが明確になるのが利点です。はじめから成功パターンを見せてしまうよりも失敗パターンを体験させてどこが失敗なのかを考えさせてから成功パターンを導き出すことの方が教える効果があります。ロールプレイの結果をフィードバックするには7つの工夫があります。①フィードバックは、リラックスした雰囲気の中で行います。そのために机や椅子の配置、部屋の明るさ、香りなど緊張しないように配慮します。上司は、フィードバックがリラックスした雰囲気の中で行えるように気を遣います。
②部下の緊張をほぐしながら、コミュニケーションが広がるような質問を心がけます。「ロールプレイの中で提案がありました。どうして3つに絞ったのですか。何か理由があったのですか」など、質問をきっかけに話がしやすいようにします。③失敗したことばかりに質問を集中すると緊張するので避けましょう。④冷静に自分の言動を思い出すことができるように熟慮する時間をとります。⑤フィードバックをするとき、改善点は1つか2つに絞って伝えます。⑥フィードバックをするとき、できる限り具体的に伝えるよう、心がけます。このときよくあるのが、「だいたいよかったです」という指摘ですが、これは避けましょう。たとえば、「要点をはっきり伝えたのはよかったですね」と具体的に伝えます。⑦「前回よりも笑顔が多くでていましたね」とこれまでと比べてよくなった点をほめることも効果的です。上司は、失敗と成功を体験させるロールプレイを取り入れながら教えて、部下の仕事の効率があがるようにしましょう。
第4章例の方法部下を教える基本を身につける
アイコンタクトの重要性上司の話を聞く場合や来客に応対する場合にもアイコンタクトは基本になります。営業活動中に取引相手と話をしている場面で、キョロキョロしていたり、時計を気にしたりする素振りをすれば真剣さがない営業マンだと思われるでしょう。このような部下は、何となく自信がないように相手の目には映ってしまいますから、アイコンタクトの重要性と必要性を理解させましょう。もちろん日常の仕事の中で上司がアイコンタクトの模範を示すことが大切です。アイコンタクトの方法は、相手が一人の場合と相手が集団の場合、相手が大勢の場合にわけて教えます。①相手が一人の場面でのアイコンタクトは相手の目を見る方法で行います。ただし、じっと見つめられると威圧されているように感じる場合があるため、時々、視線を相手の目からはずして顔全体やのどや肩の周辺を見るように教えます。また、アイコンタクトと同時に笑顔も忘れないように教えます。
②相手が小集団(10人程度まで)の場面で話すときは、特定の人にだけにアイコンタクトをするのではなく、時々、他の人たちにも視線を送るようにします。とくに話した内容を理解しているかどうかを確かめる場面では、全体に対してアイコンタクトをすることで理解の程度を確認することができます。③相手が大勢(10人以上の場合)の場面で話すときは、会場の一定方向だけに視線を送りながら話すと、会場で聞いている相手に話す内容が伝わりません。このような場面のアイコンタクトの方法は、会場全体を後方から前方に向かってジグザグにゆっくりと眺めるようにします。また、緊張して大勢の前で話ができないと思われる方は、話しはじめると必ずうなずきながら聞いてくれる人を見つけてください。挨拶や自己紹介をしている間に会場を見渡してその人を探しましょう(3、4人絞っておくとよいでしょう)。その中の何人かに的を絞り、アイコンタクトをしながら話すようにすればいいのです。
立ち振る舞いで好印象を与える景気が回復したといっても就職難といわれる中で、依然としてフライトアテンダーをめざす希望者が多いといいます。人気の高い航空会社になると、競争倍率も高いので書類選考の段階で多くの応募者が落とされます。とある航空会社の人事担当者の人が興味深いことをおっしゃっていました。「フライトアテンダーになることは本当に大変なんです。書類審査で半数は落とされます。それだけでも難関ですが、一次面接はもっと大変です。複数の面接官が部屋に待機していて入口から入って受験番号と名前を言って、出て行くだけの試験なんです。これにパスしないと面接試験が受けられません」フライトアテンダーとしての適性は立ち振る舞いでわかるそうです。これには本当に驚きました。普段、あまり気にしていない立ち振る舞いがこんなに重要なことであったとは驚きました。ビジネスパーソンにとっても服装、歩き方、立ち方、座り方などの立ち振る舞いは大切です。服装は自分がまわりからどのように見られたいのかをあらわしています。ビジネスパーソンの服装の基本は、清潔感とさわやかさのある服装です。
相手から好感を持たれる人は、清潔感がある人です。服装よりは、ヒゲ、フケなどに気をつけた方が賢明です。とくに商談などで相手との距離が接近する場合、細かいところまで見られてしまう(目につく)ことがあります。歩き方や立ち方、座り方なども仕事に対する意欲や姿勢をあらわします。目線は平行よりも少し上に置いておいて胸をはって歩幅を少し広めにとってテンポよく歩けば、さっそうとして魅力のある人という印象を与えることができます。座り方も大切です。椅子に腰掛ける場合も椅子から立ち上がる場合も機敏に行うようにします。そうすれば、いきいきと仕事に取り組んでいる印象を与えることができます。服装がシワだらけのスーツで髪型がボサボサで歩き方や立ち方に元気がなく、背中を丸めて仕事をしている上司は、部下から見ても〝格好悪い上司〟というレッテルを貼られてしまいます。いつも下を向いた状態で肩を落としてトボトボと歩く上司が、部下の立ち振る舞いを注意しても説得力はありません。部下の立ち振る舞いを注意する上司だからこそ、自分自身の身なりや立ち振る舞いに注意をしなければいけないのです。これが、部下に立ち振る舞いを教えるポイントです。
名前を呼ぶにもコツがあるお互いに親近感を持つためには部下を名前で呼ぶと効果があります。上司から「えーっと。新入社員の君、君だよ。ちょっと手伝ってもらいたいんだが」という調子で呼ばれると、〝なーんだ。まだ私の名前を覚えてもらってないんだ〟と残念な気持ちになります。そんな時に、上司が「○○さん、ちょっと」と名前で呼べば新入社員もうれしい気持ちになることでしょう。〝名前を呼ぶ〟場合に部下をビックリさせるテクニックがあります。はじめて研修に参加した部下を「○○さん」と名字で呼び、さらに呼んだ人の職歴を言い当てるのです。たとえば、研修の参加者の中に〝斉藤〟という名字の部下が3人いたとします。事前に3人の〝斉藤〟のプロフィールをじっくり読み込んでおきます。そして、教室で「斉藤さんはいますか」と質問します。3人の斉藤さんが手を挙げます。その中のひとりに、出身地や勤務支店について質問します。「はい、出身地は北海道です。大宮支店から来ました」ここからがポイントです。〝北海道の出身〟、〝大宮支店から来た〟この2つに情報からインプットしてあるプロフィールの中から該当する〝斉藤さん〟を思い出します。斉藤さんのプロフィールをもとに話しかけます。斉藤さんを知ろうとしていることをアピールします。
これで、斉藤さんの気持ちをつかむことができたと同時に、他の参加者の気持ちをつかむことができます。このテクニックを使うためには、短期間で顔と名前、プロフィールを覚え込まなければいけませんから苦労すると思いますが、それで相手の信頼を得ることができます。それから、名前を呼ばれたら大きな声で返事をすることを習慣にさせましょう。〝はい〟と元気のよい返事をされるとうれしいものです。部下が元気のよい返事をしたら、「○○君、いい返事だな。こちらまで元気になれるよ」とほめてあげましょう。当然のことですが、教える上司も普段から呼ばれたら元気のよい返事をしていなければいけません。どこで部下が見ているのかわかりません。模範を示すという意味でも有言実行で臨みましょう。上司が親近感を増すために部下を名前で呼ぶことは、ごく普通なことですが、部下の顔と名前、プロフィールを覚え込むことでコミュニケーションをより円滑なものにすることができます。
上手なほめ方部下がやる気を持てるように、すぐれた点をほめるめったに会うことのない社長から「期待しているから」などと直接ほめられると部下は感激し、がんばろうと思うものです。仕事がうまくいったから給料があがるわけではありません。しかし、あこがれの社長から直接ほめられることは、部下にとってなによりのご褒美なのです。ほめるとは、本気になって部下のすぐれた点を評価することです。損得を考えて部下をほめるのではありません。教える場合には部下をおだてるのではなく心の底からほめるようにします。ただし、部下がやる気を持てるようにほめます。ほめる場合の工夫について考えてみましょう。①結果と同時にその過程を重視してほめる結果はもちろんですが、同時に、結果を生み出した過程を重視してほめるようにします。結果を生み出した努力、アイデア、工夫をほめるようにします。そうすれば、部下は自分の努力が認められたことを理解し満足します。そして、がんばろうという気力がわいてきます。周りで見ている同僚達の評価もあがります。
②やる気がでるようにほめる間違いを指摘するだけでは部下のやる気はでてきません。「ここまではよくできている」「さらに、ここをもう工夫したら、良くなる」とほめながらアドバイスをすれば部下がやる気をだします。③ほめる時は言葉だけでなく態度で伝える言葉だけでなく態度でほめることも大切です。「よかった。よくやった」と言葉で伝えることもほめることですが、もっと、態度で部下に気持ちが伝わるようにほめましょう。両手で部下の手を強く握って喜びを伝えるとか両手で部下の両肩を強く揺すりながら喜びの言葉を伝えるなどのボディランゲージが必要です。経験の少ない部下の場合、仕事に自信をもってほしい段階ではしかることよりもほめることを多くしてください。逆に、部下が経験を積んで職場のリーダーに成長することを期待する段階ではほめることよりもしかることを多くします。また、ほめるタイミングを逸しないことが大切です。部下の努力が成果としてあらわれたときにほめるようにします。朝礼や会議の席上はもちろんですが、時には職場の仕事を中断させて部下の成果を報告し、全員で賞賛の拍手をおくるなどの演出も効果があります。
上手なしかり方部下をしかるときには冷静にしかる部下をしかる場合に気をつけたいポイントがあります。たとえば、「こんなミスは小学生でもしないぞ」「新規契約をとってこれない営業マンに払う給料はない」「何回教えたらわかるんだ。そんなことではいつまでたっても一人前になれないぞ」のように部下に能力がないと決めつけるようなしかり方はやめましょう。また、「君は営業にむいていない」「いったい何を研修してきたんだ。アルバイトの方がましだ」のような部下の存在自体を否定するようなしかり方はやめましょう。部下をしかる場合には正しいしかり方のポイントがあります。①なぜしかるのかを考えてからしかる部下をしかるときには冷静にしかる必要があります。感情的になってしかっても部下は自分がなぜしかられているのかわかりません。ただ不信感が残るだけです。ですから部下をしかる場合は、しかる前になぜしかるのかを確認してからしかるようにします。②内容はしぼってしかるしかる内容を絞ってしかりましょう。よくないパターンは、しかりながら思いついたことを次から次へと指摘することです。しかる内容を限定しないでしかってしまうと、部下は何をしかられているのかわからなくなってしまいます。
③しかるタイミングを間違えない案外しかるタイミングは難しいものです。たとえば、時間をおいてしまうと印象が薄まってしまいます。反省する機会を逸しないようにするためにはその場でしかります。ただ、部下が動揺してしまっている場合には気持ちが落ち着くのを待ってしかるようにします。④信頼を置いている人からしかってもらうしかられるということは誰でも気分がいいものではありません。しかる内容を納得させるには部下が信頼を置いている人にしかってもらう方法もあります。部下をしかる場合のポイントは、冷静にしかれるかです。〝なぜ、しかるのか〟という自問自答に答えられない場合はやめましょう。感情的になってしかっても部下は自分がなぜしかられているのかわからず、かえってやる気をなくしてしまいます。部下を成長させるためにしかるという気持ちを忘れないでください。
自分なりのストレス管理の方法を身につける地元の中堅企業若手社員の研修会で、人当たりがよくて評判の上司(Aさん)がいるという噂をお聞きしました。彼の話によれば、部下達がどれだけ不満を言っても、深々と申し訳なさそうにお辞儀をしながら「そうですか、そうですね」と聴いてくれるというのです。前任の上司は、気が短くて、何か不満を言えば、憮然とした表情で「会社の方針だ」「文句を言わず仕事をしろ」と上から命令するばかりでした。ただし、不満を前向きな意見として取り上げて業務改善にまでたどり着いた件数はどちらの上司もそれほど差はなかったそうです。このお話で気になったのはAさんの部下に対する対処の仕方です。何か秘密があるのではないかと、Aさんを訪ねてお話をお伺いしました。「私も部下と同じように一生懸命仕事をしていますから、部下達から次から次へと不満をぶつけられれば、その場で言い返したくなることはあります。しかし、部下の気持ちも理解できます。私も若い頃は彼らと同じで会社の方針や上司のやり方に文句ばかりつけていましたから。ですから、これも彼らが周りのことがよく見えるようになるための人生儀礼だと思っています」
「…とは言っても、私も生身の人間です。部下達から次から次へと不満をぶつけられれば、それが身体にストレスとして蓄積していきます。その時に思いついたのが、お辞儀です。実は、そうするには意味があるのです。ひとつは、部下に不満を感じさせてしまっている上司としての力量不足をお詫びする意味です。もうひとつは、彼らの不満を受け続けないようにするためです。彼らの不満は私の頭上を通り過ぎていくわけです」Aさんのお辞儀にはこんな意味があったのです。帰宅途中で「ちょっと一杯」や仲間とのカラオケなどで、その時はストレスを忘れられますが、翌日からストレスだらけの日常にもどってしまいます。ストレス管理に自分なりの工夫をすることが必要なのです。その他にストレス管理に役立つ方法として、生活習慣の見直し、時間管理、深呼吸、気功、体操(ポーズ)と呼吸法、ヨーガ、女性に人気のアロマテラピーなどさまざまな方法があります。あなたが興味や関心はもてるもので、日常生活で習慣化できそうな方法に挑戦してみませんか。
部下を教えるためには7つのステップがある部下を教えるためには、教える経験を積めば教え方が上手になるとは限りません。上手に教えるには守るべきステップがあります。かの海軍大将、山本五十六はこんな言葉を残しています。〝やって見せ、言って聞かせて、やらせて見て、ほめてやらねば、人は動かず〟この言葉は、人を教える方法の核心をついています。人を動かすためには、まず自分が率先してやってみせ、そして、部下を手取り足取り教えて、その結果をほめます。ほめられた部下は納得し、行動するようになるという意味です。教えるステップ①は〝いってきかせる〟です部下に到達目標を考えさせ、それを掲げさせましょう。目標達成のために〝やってみよう〟という意思決定をするようにいってきかせることです。部下に目標を達成することによって得られるものを具体的に示すことで、〝やってみよう〟という意思決定を促すことができます。教えるステップ②は、〝やってみせる〟ことで部下に模範を示すことです説明書や言葉で理解させるよりも実際に目の前で〝やってみせる〟ことで理解させます。やってみせる場合のポイントは、むずかしい点は何度も繰り返して説明すること、相手が理解できていることを確認しながら〝やってみせる〟ことです。教えるステップ③は〝やらせてみる〟ですやってみせて部下が理解し納得しても、実際にできるようになったかどうかはわかりません。実際に部下に〝やらせてみる〟ことが大切です。やらせてみる場合にもポイントは、ロールプレイでの部下の置かれた状況を理解させること、何のためにやってみるのかを確認させることです。教えるステップ④は〝結果を伝える〟です部下にやらせてみたら、その結果がどうであったのかを伝えます。結果を伝える場合のポイントは、何がよかったのか悪かったのか、わかりやすく具体的に伝えることです。その場合、目標とする到達レベルに応じて結果の善し悪しを判断することが大切です。教えるステップ⑤は〝ほめて自信をもたせる〟です部下に結果を伝えたら、次に良かったことや進歩したことをほめて自信を持たせます。この場合のポイントは、よく観察して、少しでも良いところがあれば、そこをほめること、ほめてから欠点を指摘すること、具体的にほめることです。教えるステップ⑥は〝さらによくなる方法を示す〟です〝さらによくなる方法を示す〟ことは、部下に改善点を提示することです。部下に適切な
改善点を示すことができれば、大きな支援となります。〝さらによくなる方法を示す〟場合のポイントは、一度に多くの改善点をフィードバックしない、部下が何を改善すればよいのか理解できるようにわかりやすく説明すること、改善点をフィードバックしながら、部下にもさらによくなる方法を考えさせることです。教えるステップ⑦は〝新たな目標を設定して行動計画をつくらせる〟です〝新たな目標を設定して行動計画をつくらせる〟場合のポイントは、改善点の優先順位を決めさせる、改善目標を立案させる、改善方法を考えさせる、実行計画を立てさせることです。部下に自主的に取り組ませることが大切です。以上の教える7つのステップは、教える立場になる上司が常に押さえておく必要があります。部下を教える場面で迷ったときは、このステップのどこかに問題解決のヒントがあると思ってください。
第5章例の方法部下の仕事能力アップを図る教え方
バカのひとつ覚えを直させる教え方新入社員のA君が東京で開かれた営業力アップ研修から戻ってきました。A君が帰社してから競争力をアップするための営業戦略会議が開かれました。Bさんは最新のマーケティングの論文を引用しながら科学的な市場調査の重要性を強調しました。また、Cさんは、お得意様の意見をもっと聞くべきだと現場主義を強調しました。A君はすべての意見や提案に反論します。Bさんの発言に対しては、「ちょっといいですか。Bさんの意見は今後の営業戦略の策定には科学的な市場調査が重要だという新しい方向性を指摘された意見としてごもっともだと思います。しかし、市場調査の方法によっては恣意的な結果となることもこれまでの経験から明らかです。…以上の観点から、私は…と思います」と反論しました。また、Cさんの発言に対しては、「ちょっといいですか。Cさんの意見は現場の声を聞くことが営業の第一歩ではないかというまさに営業のイロハを再認識させられた意見としてごもっともだと思います。しかし、特定の現場の意見だけが採り上げられてそれが支店全体の営業戦略の策定に影響を与えるおそれはないでしょうか。
この点について私の考えを述べさせていただきますと…。以上の観点から、私は……と思います」と反論しました。聞いていた上司も同僚もA君の発言を高く評価しました。「さすがに我が社のホープだな。堂々と人の意見を受け止めておいて自分の意見を述べるなどはたいしたもんだ」と賞賛しました。しかし、月日が経過するうちに会議の参加者からA君に対する異なった評価が出てきました。Aの発言がすべて、「相手の意見をまず評価しておくが、不十分な点を指摘し、自分の意見を主張する」という〝Yes・But法〟であることに周りが気づいたのです。会議ではA君がいつ〝Yes・But法〟を使うのか、そればかり気にするようになりました。A君が〝Yes・But法〟を使うと他の出席者はお互いにニヤニヤしながら目配せするようになりました。上司がA君を呼んで注意しました。①〝Yes・But法〟に頼ってばかりでは実のある議論はできませんせっかく学んだテクニックも他の参加者の発言する意欲を削いでしまうのでは会議に貢献していることになりません。
②〝Yes・But法〟だけに頼るのではなく相手の意見に対して賛同する〝Yes・And法〟を使ってください。〝Yes・And法〟とは、相手の話を〝Yes〟と受け止めておいて、〝そして〟、〝ならば〟、〝ということは…〟などで繋げていく方法です。相手の意見を引き受けておいてさらに議論を深め、もう一歩進めることができます。(具体的には、131頁をご参照ください。)この後、A君は、会議の状況を見ながら〝Yes・And法〟と〝Yes・But法〟を巧みに組み合わせて使うようになったそうです。率直に周りに及ぼしている影響を考えさせ、他の方法をアドバイスするという教え方が成功した事例です。○正しいセールステクニックの使い方を理解させるのが上司の役目○悪影響を及ぼす口癖は、率直に指摘して直させる
選択肢の考え方と作り方を教える情報の提供のしかたを工夫させる入社3年目のA君が浮かぬ顔で帰社しました。業務用シュレッダーの商談が決まりそうで決まらないというのです。見かねた上司が部下から商談の様子を聞くことにしました。部下の話によれば、お客様自身が最終的に製品を購入するかどうか決めかねているというのです。お客様の製品の選択基準が明確に決まっていないことが原因ではないかというのが部下の意見でした。部下の営業方法は、お得意様を訪問してパンフレットと資料を並べて選択の意思決定を促す方法でした。しかし、今回はその方法が通用しないのです。上司は彼に質問しました。「お得意様は選択肢をどのように絞ったらいいのか迷っているのではないですか。つまり、君が熱心に商品の特徴を紹介すればするほどその中から選択肢を絞って評価することができないのです。ここはやり方を変えてみたらどうですか。選択の意思決定をしやすいように評価を一覧表にして提案するのです」そこで上司は部下に先方に提示するための選択肢の作り方を教えました。
①パンフレットを丹念に読み直してそれぞれの製品の特徴を整理する②次に、選択の意思決定を促すために比較項目を考える③比較項目ごとに評価して、これまで提案した5つの業務用シュレッダーの中から購入を考えていただけそうな候補を3つ選択する④②と③から製品の優劣が比較できるようなわかりやすい一覧表を作成する。具体的には、項目ごとに評価して全体を見比べるようにする⑤作成した比較一覧表を先方に提示する部下は、比較する項目を5つに絞りました。各項目の得点を合計して選択肢の優先順位をつけました。総合得点順に並び替えて説明することにしました。数日後、部下から契約成立の報告を受けました。取引先の担当者は、評価項目ごとに点数化されており、総合評価も〝第1順位が◎、第2順位が○、第3順位が△〟とわかりやすくまとめられていたことを評価してもらったそうです。○お客様のニーズを把握して選択基準を考える○選択基準はできるだけシンプルでわかりやすい方がよい○提案する選択肢は、わかりやすい図表にする
仕事に失敗して落ち込んだ部下の教え方ミスや間違いは仕事の厳しさを教えるチャンス仕事に失敗する原因の多くは確認を怠ったり、些細なミスや思い違いが原因で起こることが多いものです。たとえば、注文数量の間違い、伝票の数字の間違いなど、身近な仕事の中で思い当たることが沢山あります。上司の役目は、このようなミスを見つけたときに、ただ、叱責するのではなく、部下のために仕事の厳しさを教えるチャンスとしてとらえなければいけません。上司がこのような場面で部下を教える場合のポイントは3つあります。①ミスは誰にでもあると教えることミスをした部下はできれば知られたくないと思いがちです。ミスへの対処が遅れることによってお客様やお取引先に迷惑がかかり、結果として会社に大損害をもたらす恐れもあります。ミスを隠すことの方が問題であること、ミスに気がついたらすぐに上司に報告させることを徹底して教えます。一刻も早く、関係する部に連絡して、これ以上悪い状況にならないようにします。②どうしてミスがあったのかを調べて対策を考えさせることたとえば、ミスがあった売上伝票を起票した日の出来事を営業日報やシステム手帳などを調べて時間の経過をたどりながら思いださせます。単純な書き間違いなのか、数字の見方が正しくなかったのか、他の取引の数字と勘違いしてしまったのかなど、ミスをした原因を確かめます。
③ミスの原因がわかったら、二度とミスを起こさないよう対策を考えさせることたとえば、売上伝票に起票したら必ず再確認する習慣をつけさせることや営業から帰ってきたら必ず他の社員(たとえば、営業事務の同僚)といっしょに起票の確認をするなどの対策が考えられます。さらに、このようなミスが他の同僚に起こらないように簡単な報告書の形式でまとめて上司に提出させます。個々の営業マンが経験したミスの内容とその原因、対応策、対応策の効果をデータベース化して関係者が参考にできるような電子掲示板を作成することを考えてもよいでしょう。○部下のミスを叱責することだけが上司の役目ではない○ミスをそのままにしないで損害を最小限に止めるための対応や原因の追及、対策の検討と実行を教える○部下の失敗やミスも部下を教えるための貴重なチャンスになる
仕事にやる気を持てない部下の教え方行動を起こさせるためにそれを促すための刺激を与えることがあります。部下に一生懸命に仕事をさせて仕事の成果をあげさせるのにもさまざまな刺激の与え方があります。〝仕事の成果は、能力×やる気〟の等式であらわすことができます。会社の業績を伸ばすためには〝部下の能力を伸ばす〟ことが重要であると言われます。ところが、部下を教えて能力を伸ばすことは並大抵のことではありません。この算式をよく見ると〝能力×〟の部分については説明されていますが、〝×やる気〟の部分については説明がないことに気がつきませんか。実は、仕事の成果を大きくするためには、能力を伸ばすことも大切ですが、〝部下のやる気〟を大きくすることの方が効果があるのです。外部からやる気を引き起こさせるインセンティブ(ものごとに取り組む意欲を、外側から刺激して高める働き(誘因)のこと)を与える方法にはさまざまなものがあります。一過性のものとしては、モノやカネを与えるといった物質的な欲求を満たすインセンティブが効果的です。また、上司の人間的な魅力に触れることで得るものや、組織やグループに帰属する喜びから得るインセンティブの場合は、組織目的に対する貢献が持続する傾向があります。
上司は部下の仕事ぶりを観察しながら、どのインセンティブが部下のやる気を引き出すのかを考えなければいけません。これらの中で好ましいインセンティブは、組織に対する信頼感に関するインセンティブです。組織が自分の能力を伸ばしてくれるという信頼感を持つことができれば、部下は自己実現のために努力するようになります。しかも、このインセンティブは、いったん持ってしまえば、長期間にわたって働くものです。それでは、部下のインセンティブを知るにはどうしたらよいのでしょうか。上司は、部下の仕事ぶりから部下の能力や興味・関心を見極めることが大切です。日頃から部下とのコミュニケーションを図り、部下がどのような能力を伸ばしたいと考えているのか、知っておきましょう。その上で能力を伸ばすチャンスをいつどのように与えるのかを考えます。○仕事の成果をあげるためには、〝部下のやる気〟を大きくする○上司は、日頃から部下とのコミュニケーションを図り、部下がどのような能力を伸ばしたいと考えているのか知ることが大切
仕事のやり方がわからない部下の教え方「まだ企画書が書けないのかね。提出期限は先週の金曜日だったはずだ。もっと要領よく、仕事をしてくれなければ困るよ」このような社員が身近にいませんか。これは、作成した資料の数字や漢字が間違っているとか計算結果が正確でないということではなく、仕事のやり方がわからない部下といえます。仕事のやり方がわからない原因は、基本的な仕事の手順がわからない場合や思いつくままに仕事を始めてしまう場合、途中でやり方を間違えていることに気がついてもう一度初めからやり直すような場合がこれにあたります。では、仕事のやり方がわからない部下はどのように教えたらよいのでしょうか。仕事のやり方がわからない部下には、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)とAction(改善)の仕事の管理サイクルを徹底します。①Plan(計画)は、仕事の目的、目標、手段を決めさせます仕事の目的は、何のための仕事をするのかという目的意識のことです。仕事の目標とは、誰が、何を、いつまでに、どうするのかという具体的な内容です。そして、最も適した仕事の手段を決めさせます。
考えられる仕事の手段の中から最善のものを選択させます。②Do(実行)は、仕事の段取りを決めて実行する段階です仕事を進めるスケジュールを作成させます。進行状況は日報に書かせます。③Check(評価)とAction(改善)は、仕事が終わった段階で、計画どおりに実行できたかどうかを評価させ、改善点があれば改善させることです仕事の評価と改善は、業務報告書を書かせることでわかります。到達目標が達成できたか、問題点はなかったかを評価させ、改善できることはないか考えさせます。大切なことは、結果を報告させると同時に、評価と改善を次にどのように生かすのかを考えさせることです。以上のPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)とAction(改善)の仕事の管理を徹底することが部下の仕事能力を身につけるための基本となります。○部下が基本的な仕事の手順を理解しているか、思いつくままに仕事を始めていないかチェックするのが上司の役目○仕事のやり方がわからない部下には、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)とAction(改善)の仕事の管理サイクルを徹底して教える
仕事の優先順位がわからない部下の教え方仕事の優先順位がわからない部下は、会社の信用問題にかかわるような失敗を引き起こしてしまうことがあります。「△△君、お得意様のA社から週末に送られてくるはずの見積書が約束の日になっても送られてこないと苦情の電話があったぞ。君のスケジュール管理はいったいどうなっているんだね」「申し訳ありません。急に営業会議の資料作成の仕事が入ったものですから。それがすんでから見積書を作成しても間に合うと思っていましたが、時間がかかってしまって」このような上司と部下の会話を耳にしたことはありませんか。仕事の優先順位がわからない部下も仕事のやり方がわからない部下といえます。いっぺんに複数の仕事を目の前にすると、緊急の仕事とそうでない仕事をわけて仕事をしなければいけません。ところが仕事の優先順位を決められない部下は、みるみるうちに仕事がたまってしまいます。
その原因と対策を考えてみましょう。①勝手な思い込み営業会議の資料作成の仕事を引き受けてもお得意様のA社に送る見積書の作成が間に合うと勝手な思い込みがありました。営業会議の資料作成の仕事量とお得意様のA社に送る見積書の作成にかかる時間について見込み違いをしていたことが原因です。営業会議の資料作成に関しては、作成する資料のデータが準備できるか、フォーマットはあるか、最悪の場合、自宅に持ち帰って作成することができるかなどを検討しなければいけません。A社に送る見積書の作成についても見積書のデータ(品目、数量、単価、値引き率など)が揃っているか、稟議が必要な場合約束の期日に間に合うか、郵送する場合、遅くとも何日前までに投函しなければいかないかなどを確認しなければいけません。②何が大切かわからないお得意様のA社に送る見積書の作成と社内の営業会議の資料作成の仕事とどちらが大切なのかがわかっていません。約束の期日を守れないことがお得意様からの信用を失わせることになるということが十分に理解できていませんでした。
この場合は、お得意様との約束を守るということを最優先にしなければいけません。社内事情は約束の期日に間に合わないことの理由にはならないのです。上司は、勝手な思い込みをさせないために部下に仕事が重なったときの優先順位の考え方、その理由についても考えさせることが大切です。そのためには、部下がどのような仕事を担当しているのか、それぞれの進捗度についても把握していなければいけません。時々、仕事の進み具合について訊ねることも必要でしょう。もしも、部下が仕事の優先順位を間違えそうになったり、優先順位を決められない場合は状況を見ながら適切にアドバイスをします。また、日頃から、仕事の優先順位について悩んだときには必ず上司に相談しなさいと教えることも忘れないでください。それが、優先順位を間違ってしまってトラブルを起こしてしまわないようにする一番の対策です。
お客様の目を持つことの大切さを教える大手スーパーマーケットの魚売り場を任されたA主任はどのような売り場にしたらよいのか悩んでいました。上司から生鮮食料品売り場の善し悪しが集客力に影響すると言われていましたのでA主任も責任を感じていたのです。A主任は業界の雑誌を買い込んで読みあさりました。評判のお店あると聞けば、たびたび足を運びました。朝、4時起きで築地の魚市場に行って情報を集めたり、インターネットのブランドの魚を取り寄せて実際に試食もしました。結局、〝安くて新鮮!今、ブランド高級魚がお買い得!〟というキャッチフレーズで高級なブランドのお魚をPRすることにしました。売り出し期間の最初の3日間はものめずらしさもあってか多くのお客様が来店されましたが、それ以後は普段よりもわずかに多い程度でした。A主任にとっても思っても見ない結果でした。食品売り場の責任者がA主任を呼んで話をしました。「A主任、こんな結果になるとは予想外でしたね?売上の推移をみましたが、思ったような成果が出ていないようですね。高級なブランドのお魚をメインにして売ろうというアイデアはおもしろいと思いますが、現実的ではなかったようです。もう少しお客様の目線で考え直した方がいいのではないですか」
「お客様の目線で考える」とはいったいどういうことなのか、A主任は真剣に考えました。食品売り場の責任者は、「売り場づくりが売る側の都合になっていないか」「お店を利用していただくお客様の気持ちを十分に受け止めているか」とアドバイスをしていました。①自分の妻や妻の友人に協力してもらって売り場の印象を聞いてみました「高級なブランドのお魚は魅力的だけれど値段が高くて家計のことを考えると敬遠してしまうのではないか」という意見が大半でした。②来店してくださるお客様になったつもりでお店を見直してみました少し距離を置いてお客様の後について売り場を見て歩きました。お客様の歩くスピードは思ったよりも遅いことに気がつきました。商品が豊富にあるというイメージを作るためになるべくスペースを空けないで陳列していたのですが、それではじっくり見ながら買うことができないことがわかりました。
③地元で採れた新鮮なお魚に対しては需要があることがわかりました大きさは少し小さめでも地場で採れた新鮮な魚は魅力があるのです。結論、高級なブランドのお魚は数を減らして、〝地元で採れた朝採れ魚フェアー〟を企画することにしました。A主任は、お店を利用していただくお客様の気持ちを十分に受け止めているかどうかが売り場作りの基本であることを再認識しました。お客様の目線で見た現場にある生きた情報を大切にすることで問題解決のヒントが得られることがわかった事例です。くり返しますが、食品売り場の責任者は、3つの問題解決のポイントを教えました。お客様の視点をもつことを教えるのに参考になることでしょう。①第3者の助けを借りること。A主任は、妻や妻の友人の助けを借りて売り場を客観的な目で見て評価しました。②お客様の気持ちになってみること。A主任は、お客様の気持ちで売り場を歩きました。③固定観念を捨てること。A主任は、高級なブランドが喜ばれるという固定観念を捨てて、地場で採れた新鮮なお魚にも魅力があることに気がつきました。
ヒントを見つける方法を教える有名百貨店の高級婦人服の売り場チーフになった若手社員のAさんは、フランスまで出かけて行って本場の流行を勉強してくる熱心な仕事ぶりでした。強力なライバル企業の百貨店が駅前にありました。Aさんの店舗が駅から少し離れた場所にありましたのでなかなかお客様に来店していただけないという悩みがありました。勉強熱心なAさんは、高級婦人服の目利きは誰にも負けないという自信がありました。心の底では、〝お客様にご覧になっていただければ必ずご購入していただける〟と思っていたのです。いつも頭の中は、売り場作りのことでいっぱいでした。ポップを置く位置を変えてみました。度々ディスプレイを変更しました。しかし、なかなか効果がでません。イライラして焦っている様子は周りの社員もわかっています。そんな様子を見ていたフロアー責任者がAさんにアドバイスをしました。①どんなに考えてもアイデアが浮かばないこともある。②頭を空っぽにしてみると、今まで見えなかったものが見えてくることもある。③君の言動が周りの社員の仕事ぶりに影響を与えている。焦ってはいけない。
Aさんは、頭を空っぽにするために家族旅行に行くことにしました。夏休みに子供を連れて海水浴に出かけました。海の家は海水浴に来た人たちでごった返していました。海の家でかき氷を売っている老夫婦の話し声が聞こえてきました。「今年の夏は、雨が降らなくてよかったな。夏のシーズンの海の家の稼ぎが1年間の稼ぎの大半だから。なんとかこのままの晴れてくれるといいのだが」この会話を聞いたAさんは〝これでいこう〟と手をたたきました。海水浴に来る人たちがいるところに海の家をだせば、黙っていても売れます。まさに、お客様が必要としている時に、お客様がいる場所へ行って売るという単純な考え方です。結局、この考え方が相好し、昼間、仕事を持っておられるご婦人の皆様には好評でした。ご自宅まで商品をお持ちするのでご来店いただいてご覧いただくよりも、ご購入いただける確率は大変高くなりました。この方法を採用してからは売り場の売上は飛躍的に伸びたそうです。フロアー責任者がAさんにしたアドバイスは適切なものでした。Aさんにとっても貴重な経験となりました。
第6章例の方法部下の人間関係をさらによくする教え方
ポジティブなエネルギー源に気がつかせる人間にはプラス思考のタイプとマイナス思考のタイプがあります。プラス思考の人は何事でも良い方に取り、仕事でうまくいかなくても前向きな考え方で取り組みます。プラス思考のタイプが多い職場は明るく活気があります。反対にマイナス思考の人は何事も悪い方に取ってしまい、一旦、仕事につまずくと落ち込んでしまいます。このような部下に対して上司はどのように教えたらよいのでしょうか。上司がやってはいけない言動は、「結局、本人次第だから」とか「使いものにならない部下だ。あてにしないようにしよう」といった投げやりな接し方です。これでは、ますます落ち込んでしまいます。上司は部下に、基本的にはマイナス思考からプラス思考に変わるための努力をすることを教えます。つまり、〝今のままの自分ではいけない。自分は変わらなければいけない〟と自覚させ、そのための行動を後押しするのが上司の役目です。そのためには、次のような手順で教えます。
①過去の成功体験(これまで経験した仕事や学生時代の体験など)をイメージさせて、成功した時の喜びを思い出させますその時、成功させるためにどのような努力をしたのかを考えさせます。次に、自分が置かれた状況を客観的に見つめさせ、これからどんな自分になりたいのかを考えさせます。②次にポジティブなエネルギー源が必ずあることを教えます部下がポジティブなエネルギー源に気づくということは、部下に〝努力すれば困難は克服できる〟という信念を持たせることです。たとえ成果があらわれない場合でも途中までの努力をほめます。③現在の課題にどのように生かしたいか考えさせますここで上司は、部下にプラス思考を持たせるために日々の行動目標を教えます。具体的には、現状の自分を在りのままに受け入れる、直面する仕事の楽しみを見つける、仕事の結果について善し悪しを考えないようにする、今できることを精一杯やる、自分が役に立つことに喜びを見つける、他人にはない自分の良さを知るなどです。これらの行動目標の根底にあるものは、部下の存在や行動が意味のあるものであるという肯定的な考えです。
④実際に行動に移した後は、どれくらい進歩したのか、改善点は何かについて具体的に評価し、部下自身にも考えさせますたとえ思ったほどうまくいかなくても、挑戦した気持ちを評価し、このまま努力を継続することが大切であることを教えます。たとえば、部下に対して「以前とずいぶん仕事に対する取り組み方がかわってきたな。すぐに結果がでないこともある。あまり、気にするな」というように、相手を安心させてあげられるような思いやりを持って接しましょう。また、まわりの同僚の見る目も大きな影響を与えます。結果がでたら本人を評価するだけでなく、まわりの同僚にも本人の努力の過程と成果を紹介しましょう。上司とは違った意味で、同僚からの賞賛やはげましの言葉が部下を勇気づけます。チームや職場での自分の役割や自分に対する期待を感じることができます。このような行動が習慣化してくると、部下の仕事に対する取り組み姿勢も積極的で行動的になってきます。次第に部下の側から上司に対して、評価して欲しいというサインを送ってくるようになります。上司は、このサインを見逃してはいけません。タイミングよく部下を評価し、励ましつづけることが大切です。もちろん、部下の仕事経験から判断して169頁の「シート2」からはじめてもよいでしょう。「部下をプラス思考にさせるためのシート1」は、仕事経験が少ない部下に対して過去の成功体験からその時の喜びと努力したことを確認させることで仕事に対する意欲を起こさせるために使います。「部下をプラス思考にさせるためのシート2」からはじめる場合は、仕事経験がある部下に対してです。さらに能力をアップさせたいと考えている場面で現状の課題をふまえて、それをどのように改善していくのか具体的な行動目標を考えさせるために使います。○上司は部下に自分を変えようとする行動を積み重ねさせることでプラス思考を習慣化させることができる。
口だけ達者な部下の教え方上司にとってチームワークを大切にする部下を持つことは、よい職場の雰囲気を作るために大切なことです。逆にまともな仕事もしないのに口だけ達者な部下を持つと一生懸命やっている他の部下の足を引っ張ることばかりで職場の雰囲気を悪くしてしまいます。しかし、いったん部下として引き受けた以上は上司として見て見ぬふりをしてばかりではいけません。毅然とした態度で教えることが必要になります。地元のある経営者から、口だけ達者な部下にはどのように教えたらいいのかという相談を受けました。彼の話を紹介しましょう。先日、「君は会社の業績に貢献していると思っているのか。ここ半年間の営業成績をみても成約件数はゼロじゃあないか。反省してもらわなければ困るよ」と中堅の女性社員を一喝しました。彼女の返答に唖然とさせられました。「課長、お言葉ですが、ここ半年は成約件数がゼロです。でも、私が入社してからの3年間、年間成約件数は全国の支店の中でもトップクラスの成績でした。私なりに貢献してきたという自負があります。課長は否定されるのですか?」それで、「上司に向かって言っていいことと悪いことがある。〝課長は否定されるのですか?〟とはどういうことだ。せっかく君のことを思って注意しているのに、君の態度にはあきれた」と感情的になって怒鳴ってしまったのでした。私の感想は次のとおりです。①彼女が会社に貢献したことは事実です。たしかにその時は貢献したと思いますが、いつまでもそれにこだわっているのはおかしな話です。今の彼女がどれだけ会社に貢献しているのかが問われているのです。②怒りたいBさんの気持ちも十分理解できますが感情的になってしまっては火に油を注ぐようなものです。もつれた糸は元には戻りません。では、このような口だけ達者な部下にはどのように教えたらよいのでしょうか。第一に、相手の話を妨げないでじっくりと聴くことです。途中で意見が違って反論したくなってもひたすら聞き役に徹してください。第二に、十分な間をとってください。コミュニケーションにおいて間は大切なスキルです。相手に自分の言ったことや態度について熟考させる機会を与えることになるからです。間をとることで相手は冷静な気持ちを取り戻してきます。第三に、相手を心から受け止めてください。彼女の気持ちが落ち着いて冷静さを取り戻したところで、「そうだな。君の言っていることの全てが間違っているとは言っていない。君がどれだけ第一営業部の業績アップに貢
献したのか忘れた者はいないよ。後輩の社員達も君の活躍は君の同僚から聞いているはずだ。だからこそ、今、君の力が必要なんだよ。これまで君とのコミュニケーションが不足していて誤解していたことも多々あると思う。そういう意味では私も至らなかったところがあったかもしれない。これからは十分にコミュニケーションをとっていきたいと思っているから、君にも先輩としての役割を果たしてほしいと思う」と話したらよかったのではないでしょうか。○相手の話を妨げないでじっくりと聴くこと。聞き役に徹する○部下に自分の言ったことや態度について熟考させるために十分な間をとる○部下の言動を心から受け止めて、冷静になって助言する
こびる部下の教え方こびる部下がいると職場の雰囲気が悪くなる上司が教える部下にはさまざまなタイプがあります。とくにこびる部下を教えることは骨が折れます。ある上場企業の総務課長Aさんから女性社員の教え方についての相談を受けました。Aさんの部下Cさん(30歳代の独身OL)についての悩みでした。彼女は何かと同僚社員にこびて仕事をするそうです。たしかに顔立ちもよく見栄えの良い女性社員です。大学へ進学してからは学業のかたわら若い女性向けの雑誌モデルをしていました。就職試験を受けた時も第一次の筆記試験で会社の人事部長の目にとまり、すんなりと内定をもらったといいます。彼女は自分では人前では「少しも他の女性社員とかわりません」と言っていますが、内心は自分の美貌も持って生まれた能力のひとつと考えていました。彼女は巧みに男性社員に仕事をお願いし、結局、男性社員もまわりの目を気にしながら彼女の仕事を手伝うことになります。当然、まわりの女性社員から突き上げられるのは上司です。数人の女性社員に囲まれて、「Cさんだけを特別扱いしなければいけない理由は何ですか。はっきりしていただかないと私たちは彼女といっしょに仕事ができません」と詰め寄られたそうです。
AさんもCさんに仕事能力を磨いて実力を発揮してもらいたいのが本心です。女性社員間の問題となると話が複雑になってしまうので、苦慮していたのです。数ヶ月後、Aさんから〝問題が解決した〟と伺いました。どのような方法で問題が解決したのか尋ねてみました。Aさんによれば部内に販路開拓のためのプロジェクトチームが発足し、そのリーダーとして営業畑一筋で男性顔負けの営業成績をあげている敏腕女性Dさんがプロジェクトの責任者になったそうです。Dさんがリーダーになった途端、Cさんのやり方は通用しなくなりました。「○○さん、…についてお願いしてよろしいですか」、「△△さん…これでよろしいでしょうか」と男性社員の顔色をうかがってもリーダーから「あなたはもう立派な中堅社員ですよ。自分で考えればできます。そんなことばかり言っていると若い社員達から笑われますよ。あなたほどのキャリアがあれば実力で十分に立派な仕事ができますよ」と釘を刺されたのです。彼女のまわりの雰囲気は変わりました。彼女にとりあってくれる同僚は一人もいなくなっていました。
そんなことがあった後、連休明けに出社した彼女を見て、社員一同、ビックリしました。ヘヤースタイルをショートカットにしてパンツルックに変わっていました。「おはようございます」と元気に挨拶して、早速、メールをチェックして、お得意様へ電話を掛けはじめたのです。これは、甘えられる環境からそれが通用しない環境に変えてやることによって、〝周りから愛されているかわいい女性だけでは仕事はできない〟という自覚のあらわれでした。こびて仕事をするやり方は若いうちは通用するかもしれませんが、中堅社員になってからは通用しません。責任のある仕事ができないダメ社員としてお荷物扱いになってしまうことを教えてください。○こびて仕事をする部下は職場の雰囲気を悪くする元凶である○こびて仕事をすることは通用しないことを毅然とした態度で教える○こびて仕事をすることを許さない職場の雰囲気をつくるのが上司の役目
年上の部下の教え方年功序列が崩れ、若い上司が年上の部下を教えることも珍しいことではなくなりました。「経験のない若い部下に上司がつとまるのか」、「なぜ、年の若い社員のもとで仕事をしなければいけないんだ」などと自分の存在を認めてくれないことに不満を持ってしまう年上の部下もいます。仕事はチームワークでするものですから年上の部下の協力がなければ困ることも多々あります。ある人材開発のコンサルティング会社での話です。ある年、〝優秀な学生を採用する〟という会社の方針で新卒採用事業の総指揮をとるプロジェクトスタッフを社内コンペで選ぶことになりました。中でも、F課長は最有力候補でした。ところが、コンペの結果、F課長の下で働いていた部下のAさんがプロジェクトリーダーに決まり、プロジェクトメンバーのひとりとしてF課長が入りました。Aさんは、経験が少ないためか仕事の詰めがうまくいきません。Aさんは思いきってF課長に相談しました。F課長は最初、遠慮ぎみでした。しかし、Aさんにとってはプロジェクトリーダーとしての責任がありますから真剣です。「F課長のおっしゃる通りです。しかし、このプロジェクトの成功は社運がかかっているのです。どうか、私を助けてください」と懇願し、これまでの経過と抱えている問題点について相談したのです。
Aさんの真剣な言葉にF課長は「わかりました。私もできる限りの支援はします。そのかわり、私を年上の部下だと思って遠慮する言動や素振りは止めてください。他のプロジェクトのメンバーに影響しますから。もし、そのような言動や素振りがあったときにはこのプロジェクトのメンバーを辞退させていただきます」と釘を刺したそうです。その後、F課長の助言もあり、プロジェクトはうまく進行しました。この事例でわかるように年上の部下を教えるにはポイントがあります。年上の部下の協力が必要ならば、率直に年上の部下の助けが必要なことを伝えましょう。年上の部下は、自分の役割が明確でないために非協力的になることがあります。組織の中でどんな役割を担ってほしいのかを明確に伝え、心の底から協力や支援をお願いすることが重要です。さらに、年上の部下に対して遠慮する言動や素振りは、他の部下に影響を与えます。仕事に関することは年上の部下に遠慮してはいけません。若い上司が年上の部下を教えることも珍しいことではなくなりました。年上の部下の教え方を身につけることが有能な上司になるための条件といえるのです。
「絶妙な教え方の技術」ロードマップ(巻末)
骨のある上司になるための30箇条(巻末)
●著者略歴戸田昭直(とだまさなお)現在浜松学院大学現代コミュニケーション学部教授全国大学・短期大学実務教育協会主催,協賛日本ビジネス実務学会,ベスト・エデュケーター・オブ・ザ・イヤー賞全国大会優秀賞を受賞(2003年5月)。大学では若者のビジネス能力の育成やキャリア支援教育に力を入れている。また、教育委員会や教育センター、企業での講演や研修指導にも積極的に取り組んでいる。著書に,「相手がわかるように教える技術」(中経出版),「上手に教えるルール100」(PHP研究所),「ビジネスワーク総論」(同文書院),「ワークで学ぶビジネス・コミュニケーション・スキル」(共著)西文社,ビデオ相手にわかりやすく「教える技術」戸田昭直監修(日本経済新聞社)がある。本電子書籍は明日香出版社より刊行された『絶妙な「教え方」の技術』(2007年)をもとに適宜編集を加え、加筆修正を行ったものである。
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