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いま医療現場が危ない

はじめに

医療機関の5Sにかかわるようになって十 数年が経過しました。当初、医療機関で5S といっても誰もピンときませんでしたが、今では 多くの人が5Sに理解を示してくれるようになり ました。そして、かなりの医療機関が実際に 5Sに取り組み、成果を出しているようです。 医療機関で5Sを導入する主な目的は、医 療事故の防止にあります。必要なモノがすぐ に見つからない、見つけにくいために間違った モノを使用して事故を発生させる、連絡不十 分で間違いを引き起こしてしまう、などの状況 を発生させない職場の仕組みづくりが5Sを通 じてできるのです。これらの改善は、5Sという 視点から職場環境をスッキリさせ、わかりやす く見える化し、間違い防止を目指します。こう した改善の対象は職場環境であり、モノが対 象になります。 ところが、実際に5Sの取組みを始めても 「なかなかうまく進まない」「いつの間にか元 の状態に戻ってしまった」といった声を耳にす るのも現実です。5Sの活動は、最初は取り 組みやすいテーマなのですが、組織的に全員 を巻き込んで展開し、継続して取り組むとなる とかなり難しいものです。それは、5Sに取り 組む対象が、モノや職場環境だけに偏ってい るからです。こうした状況に陥らないために大 切なのは、人を対象として意識改革や行動改 善につなげることです。すなわち、5Sは人づ くりを目指すことが重要なのです。 そこで本書では、5Sの理論ではなく、実際 に5Sを展開するためのポイントを、導入した 医療機関の声や事例などを盛り込みながら、 人の意識改革や行動改善を実現する成功の コツについてまとめてみました。医療機関で の医療事故防止を目指し、働きやすい作業 環境を目指す人々の参考になれば幸いです。 本書に多くの事例を提供いただいた医療 機関の方々、また、編集に多大な尽力をいた だいた日本能率協会マネジメントセンターの渡 辺敏郎氏には厚くお礼を申しあげます。 2016年7月吉日 高原昭男

巻頭 インタビュー

ここまで医療現場で5Sが浸透したのは、高原昭男氏の存在抜きには語れません。 キレイな状態を守るだけでない5Sの神髄について聴きました

5Sは、PDCAを回し、業務の5Sに繋げる!

医療の5S前夜 ――近年、5Sを導入する医療機 関が増えてきました。製造現場で 培ってきた5Sが、いまなぜ医療 の世界に根付いてきたのでしよう? 高原 もともと5Sは、製造現場 の管理技術として浸透していて、 品質管理、効率向上、安全などを 目的とした改善の基本という位置 付けでした。また、5Sを通じた 管理・監督者のマネジメントカ向 上という意味で導入する企業も多 かったようです。製造業の5S活 動をお手伝いしてかれこれ30 年に なりますが、私自身が医療と5S を結びつけたことはありませんで した。 そんな中、あるメーヵlから「竹 田綜合病院(会津若松市)が目標管 理を導入したものの、テーマ設定 で困っている」との相談がありま した。業務の課題に対するテーマ 設定をして、改善をして目標を達 成する、まさに改善の基本を根付 かせたいということで、その方策 として5S活動を提案したのです。 ここから医療の5Sがスタートし ました。15 年ほど前のことで、医 療分野で5Sはまったく認知され ていなかった時代です。どうやっ て進めていくべきか、とても悩ん だことを思い出します。 ――それまで、医療で5Sはどこ もやっていなかった? 高原 少なくとも私は知りません。竹田綜合病院が医療5Sの草分 け的な存在でしょう。さて、導入 は決まったけれど、参考となるよ うな資料はまったくありません。 そこで、工場向けの書籍で5Sの 本質を学びながら、大型バスで何 回も工場見学をさせていただきま した。まず、5Sを肌で感じてほ しかったからです。 ― スタートダツシュはうまくい きましたか? 高原 製造業であれば、半年活動 すると徐々に成果が生まれてくる ものです。しかし、まったくの自 紙から手探りの状態で進めたもの ですから、成果が出始めたのは1 年半ほど経ってからでした。人の 生命に関わることでもあり、怖く て整理の思い切りができないので す。そこで最初は、整理のルール づくりに時間を割いて、じっくり と進めていきました。 ――そのような現場が、何をきつ かけに変わったのですか? 高原 あるとき、河野龍太郎先生 (自治医科大学。医療安全学)を招 いた講演会がありました。講演に 合わせて現場の視察もされた先生から一皆さんの5S活動はすばら しい。ヒューマンエラーの防止に も絶対に役に立つ」と、ほめてい ただいたのです。 そもそも、竹田綜合病院の5S は、日標管理から始まっています。 やみくもに活動をしていた現場の 人たちにとって、第二者から認め てもらったこと自体が予想外だっ たようですc第三者からほめても らう、自分たちの活動に意味があ ることを再認識できると、それが 自信につながり、人間はガラッと 変わることができます。これがき っかけとなって、活動は一気に拍 車がかかりました。 製造の5S、医療の5S II製造業の5Sとどういつた点 が違うのでしようか? 高原 まず、5Sの目的が異なり ますc製造業の場合、 品質管理、作業効率 や安全、この3つが ・   バランスよく求めら 一一一   れます。 一方、医療 現場ではまず大前提 としての安全があつ て、その次に業務効 率と接遇などが続き ます。 次に、取組み体制 です。製造業では、 トップダウンでマネ ジメントが主体とな って一気に進めます。 前工程と後工程とい うように、モノの流 れがはっきりしてい るので、日で見てわ かるし、全員が協力 することに慣れてい るので、5Sでも協力しやすくな ります。 一方、医療現場は専門職の集合 体です。他部署への回出しもしに くい雰囲気があって、相互の連携 があまりありません。それぞれの 領分があって、チームで動くのが 苦手な組織です。これが、もっと も高いハードルになっています。 ただ、病院が5Sに向いている ところもありますc医療に携わる 人は、仕事に対する誇りが常にあ って、社会貢献に対する意識も高 いのです。製造業にそれが欠けて いるとは言いませんが、たとえば 看護師さんなどは、休日に自費で 5Sの研修会に参加するなどが当 たり前の世界です。製造現場の人 が自腹で5Sを学ぶかというと、 首を傾げてしまうでしょう。こう した彼女たちの姿勢が、5Sの扉 を躊躇なく開けてしまうのです。 また、医療は女性が多い職場で す。彼女らはキメが細かくて、は まるとキッチリとやり通してくれ ます。自主的に徹底して根気よく 続けてくれる、こうした資質のよ うなものは、医療が5Sとマッチてしていると言えるでしょう。 1つ上のステージに あがるために ―15Sと改善活動とは違うもの ですか? 高原 まず整理をする、次に整頓 をする、片付けて表示をしたから 終わり。これでは、しょせん一過 性の活動でしかなく、改善にはつ ながりません。5Sは地道でつら い活動ですから、誰だって早く止 めたいのです。しかし「これでも う終わり」と思った時点で、 これまでやつてきたことは 無になって、そこで進化は 止まってしまいます。 現状に満足せずに常に見 直そうとする姿勢、結局は PDCAをどう回し続ける ということに尽きます。 PDCAに終わりはありま せん。全員がその意識を持 って仕事に取り組むうちに、 人が変わり職場が変わり、 それが医療機関の文化とし て残るようになります。5 SとPDCAが対になって こその改善です。 ――大切なのはPDCAを回すこ レ」っ・ 高原 完壁な状態などはありませ ん。しかし、そのステージに近づ くことはできます。PDCAを回 して、見直しをしながらやり抜く ことによって、5Sが当たり前と いう職場に変わってほしい。 職場は常に動いています。たと えば、表示ひとつをとっても、モ ノが変われば劣化もします。表示 を貼り換える際には、知らず知ら ずのうちに見直しをしているもの です。メンテナンスをしながら、 これは本当に必要か、もっといい 方法はないか、よリコンパクトに できないかと考える、それがある べき姿に近づく唯一無二の道なの です。 今回事例を提供してくれた5つ の医療機関は「見た目+α」の活 動が根付いている5Sのフロンテ ィア的な存在です。ここでは「こ の改善はパージョン5です」とい う言葉も聞こえます。常に見直し をするからこそ、5Sが定着して いる状態だといえるのですね。 これから5Sを 始めるひとたちヘ ――製造業でもそうですが、気を 抜くと現場はすぐに戻ってしまう と言いますね。どうすればいいの でしょう。 高原 医療現場の人たちは、少し 前まで5Sの存在を知りません でした。徐々に広がっていって、 今ではほとんどの医療機関が5S を意識し、3割くらいの医療機関 で本格的に取り組んでいるという のが実感です。ただ、維持・定着 化す

るためにどうするかは理解し てもらっていないように感じます。 5Sは、ただ片付ければいいと いうわけではありません。組織的 に、誰がやつてもできる体制こそ が大切で、ここまでやらないと定 着化したとはいえません。その神 髄を全員が理解することが難しい のです。 ――自分の職場だけでも、5Sを やつてみたいという人も多いでし よう。その人たちにひと言。 高原 もちろん医療機関全体の活 動としてトップダウンで導入する にこしたことはないのですが、そ うはいかない現場もあります。そ んな人たちにお勧めしたいやり方 があります。 医療機関の方針ではないのです から、日常業務として5S活動は できません。業務を優先するのが 当たり前ですから、遅々として、 なかなか進捗しないこともあるで しよう。しかし、そこであきらめ て、投げ出したりしないようにし てください。 とくに、5S でもっとも時間を要するのが整理です。初めての経 験で基準がないのですから、「要 る。要らない」の判断はとても難 しくなります。そこで、この打開 策としてお勧めしたいのが「限定 してやる」ことです。「まず、この 棚だけやろう」というやり方です。 本来、医療機関全体でやるので あれば、 一斉に整理を徹底します。 しかし職場だけでやる場合は、整 理と整頓までを1クールで進めま す。整頓をしていると、整理で足 りなかったこと、やりきれなかっ たことが見えていきます。そこで 整理に戻ってやり直します。限定 した範囲ならば、戻ることもさほ ど手間ではありませんc 最初は常に悩むものです。悩ん でしまうと、活動が止まってしま います。コツコツと慌てずに、話 し合って基準をつくりながらやっ ているうちに、5Sのコツがつか めようになります。モデルづくり ですね。そして限定した5Sをや り遂げたら、そのモデルやルール を次の対象に水平展開して広げて いけばいいのです。いきなり一度 に全部をやるのはムリな話です。 すべてを中途半端にやると失敗し ます。そして、やり方の悪さは反 省せずに、5Sそのものを否定し てしまうことになりかねません。 だからこそ「限定」してやること が重要なのです。 究極の姿は業務の5S IIモノの5Sの次には、業務の 5Sをやりなさいと言われていま す。その意味は? 高原 医療5Sの究極の価値とは 医療安全にあります。確かに、モ ノの5Sで医療安全は担保できま すが、それだけでは不十分です。 それは、仕事の進め方そのものに ミスが内在しているからです。た とえばコミュニケーションの不足、 手順の間違い、伝達のミスなど、 これらが元となって医療事故が発 生してしまいます。医療事故のタ ネが業務そのものにあるのですか ら、モノの5Sだけで解決しよう とするのはムリな話です。モノも 仕事も、放っておくとドンドン増 えてしまいます。定期的に整理を して減らしていかないとミスを見 逃してしまう職場となってしまい ます。 こうして考えてみると「モノの 5S」は医療サービスの提供側、 つまり医療機関の立場から見た活 動です。仕事がやりやすくなる、 コミュニケーションが良くなるな どは、医療機関側の成果ですね。 しかし、本来は患者、医療サービ スを受ける側の目で見つめるべき ではないでしょうか。患者の視点 で業務のあるべき姿を見直して、 業務そのものを変えていく、それ こそが業務の5Sであり、その視 点からPDCAを回して改善につ なげていくのです。 業務の5Sは、モノの5Sの完 成形です。竹田綜合病院では、年 間1200件もの改善提案が出さ れています。あるべき姿と現状と を比較して、顧客サービスの視点 から5Sを実践するためにも、ぜ ひ業務の5Sまで進んでいってほ しい。やってみると、たぶんこれ までにない大きな成果を実感でき るでしょう。そしてそれが、次の 糧へとつながっていくのです。

目次

1 医療現場のヒヤリ六ットの実態

医療現場のヒヤリ・ハットは、その原因のほとんどがヒューマンエラーだといわれています。 人のうっかリミスやカン違いをなくして、ミス・事故のない職場をつくるには、製造現場から生まれた5Sが有効です。

ヒヤリ・ハットの実態

日本医療機能評価機構が発表し た「医療事故情報収集等事業」の 第40 回報告書によると、2014 年10〜12月に報告された医療事故 は755件、ヒヤリ・ハット事例 は7813件となっています。ま た、医療事故のうち65件(8・6%) の患者が死亡、80 件(10・6%)は 患者に障害が残る可能性が高いと 報告されています。 事故の発生要因(複数回答)に 注目すると、医療従事者。当事者 の「確認の怠り」13 ・9%、「観察 の怠り」‐Oo7%、「判断の誤り」 10・0%などが多くなっています。 ただし、患者に事故の原因がある と判断される事故も=。9%あり ます。これは、さまざまな視点か らの幅広い対策が必要だというこ とを端的に示しています。 さらに報告書では、医療事故の 再発防止に向けた分析も行ってい ます。とくに「職場経験1年未満 の看護師・准看護師」による医療 事故やヒヤリ・ハット事例が多い 点に着目すべきだと指摘していま す。このミスの要因としては、次 のような項目を挙げ、注意喚起し ています。 ①知識(経験)不足 ②基本的な手順の不遵守 ③思い込みによる安易な実施 ④行う「目的や根拠」と「行動(実 施)」のかい離 ⑤危険性の認識不足 ⑥報告や相談ができない(しない)

ミスの原因である ヒューマンエラーと対応方向

このように、ミスのほとんどの 原因がヒューマンエラーであると いうことができます。つまり、人 間のうっかリミスやカン違いが要 因(原因)となって、ミスや間違い を引き起こしている場合が多いの です。 こうしたヒューマンエラーをな くして事故防止につなげるには、 さまざまな取組みが必要です。そ の中でも、知識や経験の不足に関 しては、適切な教育と現場経験を 積ませる人材育成が基本となりま す。当然ながら、人材育成が事故 防止の基本であり、どのようなミ スや事故の要因に対しても共通し た必須の対応策です。 ここで特筆すべきは「①知識(経 験)不足」以外のミスをなくすた めには、仕事への姿勢やしくみの 改善が必要だということです。医 療機関の職員すべてが基本的な手 順を確実に守る組織とその職場風 土づくりが求められているのです。 さらに、思い込みによる安易な 作業実施や危険性の認識不足によ る事故を防ぐためには、リスクを 感じる感性を高めることも必要で す。目的と行動のかい離を防ぐに は、仕事の本質を考えて行動する 人づくりが必要です。そして、報告や相談不足の事故はコミュニケ ーションを確実に実施できる組織 づくりが求められるのです。

5Sはミス防止の 有効な手段

このような点に対応していく際 に、製造現場から生まれた5Sが たいへん有効に機能します。5S の中心となるテーマは、モノを中 心とした職場環境の改善です。環 境改善の基本的な内容としては、 職場から不要なものをなくし、必 要なものを迅速に、正確に見つけ 出せる仕組みを構築することです。 しかしその本質は、職場環境の 改善を通じて人の行動・意識の改 革につながることです。この行 動・意識改革によって、ミスや事 故のない職場づくりが実現できる のです。

 

2 ヒューマンエラーはなぜ発生するのだろう

「人はミスを犯すもの」です。ヒューマンエラーが発生すると、発生させた人が責められがちですが、 本来は発生させてしまう職場環境が悪いのです。こうした職場を放置したまま、改善しないでいることが問題です。

ヒューマンエラーの定義

本書では、ヒューマンエラーの 定義を次のように設定しています。 「ヒューマンエラーとは人間によ る過誤で、認識の段階、判断の段 階、行動の段階で発生する失敗で あり、注意しているつもりでも、 つい失敗してしまうミスをいう」 この定義で重要なのは「人は注 意しているつもりでも、つい失敗 を犯したり、ミスを引き起こすも のだ」という点です。そして、ヒ ューマンエラーに対する考え方で 重要なのは「人はミスを犯すもの である」という前提に立ってさま ざまな対応や作業手順を設定する ことです。

ヒューマンエラーの 発生段階

では、ヒューマンエラーがどの ような状況で発生するかについて、 大まかな視点から考えてみましょ う。まずは、ヒューマンエラーの 発生を人間の行動プロセスに当て はめて検討してみます。 ヒューマンエラーが発生する段 階には、 ① 状況認識の段階 ② 判断・決定の段階 ③ 行動の段階 の3段階があります。 まず、状況を認識する段階で工 ラーが発生します。それはたとえ ば「カン違い」「思い込み」「無意 識な行動」などであり、事実を正 しく認識できず、誤った認識をす ることでエラーを引き起こしてし まうのです。ある県立病院で「ア ルマールのつもりでアマリールを 処方してしまい、患者が意識不明 に陥った」という事故が新聞報道 されました。これはまさに、薬剤 を処方する際の誤った認識が事故 につながっています。 次は、判断や決定を行う段階で 発生するエラーです。誤った認識 に基づいて誤った判断をするので す。認識が正しくても、経験や能 力不足から誤った判断をしてしま うこともあります。 また、この段階でも判断や決定 の場で「カン違い」や「思い込み」 が入り込んでくる可能性もありま す。たとえば、点滴のスピード設 定をする場合、用件をすべて正し く認識していても、計算間違いや 早見表の見間違いによって判断を 誤るなどが該当します。 最後が行動の段階です。誤った 判断に基づいて、誤った行動をし てしまいます。また判断は正しく ても、経験や能力不足により誤っ た行動をする場合もあります。経 験不足による技能や技術の未熟さ が原因となるケースです。 このように、ヒューマンエラー が発生する中でとくにポイントと なるのは、最初の認識の段階です。

ヒューマンエラーは 起こるべくして起こる

すでに述べたとおり、ヒューマ ンエラーは「カン違い」や「思い 込み」あるいは「無意識的な行 動」により発生します。これらは 人間の弱点だとも言えるでしょう。 ヒューマンエラーを起こすのは人 間ですが、ヒューマンエラーは起 こるべくして起こっているのです。 一般に、ヒューマンエラーが発 生すると、発生させた人が責めら れがちです。しかし、発生させた 本人よりも、発生するような職場 環境になっているという状況がも っとも問題です。「人はミスを犯 すもの」という前提に立って職場 環境を整備しましょう。カン違い が原因でミスが発生したならば、 カン違い自体ではなく、カン違い してしまう職場環境を問題としま す。そのような職場を改善しない まま放置していること自体が問題 なのです。

3 けじめのないところに事故がある

ミスo事故を発生させてしまう無意識の行動は、「けじめをつける」ことで防止できます。 5Sはまさに、けじめをつけるための取組みです。けじめのある行動が習慣化されれば、ミス・事故は防止できるのです。

けじめのない無意識的な 行動がミスにつながる

ミスや事故は、けじめを欠いて いるときに起こります。ある病院 の不妊治療時に事故が発生しまし た。それは、受精卵を子宮に戻す ときに、誤って他人のモノを戻し てしまったという事故です。受精 卵が入った前の患者のシャーレを 片づけないまま、次の患者の処置 をしてしまったことが原因でした。 これは、仕事のけじめが曖味だっ たために起きたミス・事故の端的 な例です。 こうした事故は、仕事のけじめ が習慣化されていたならば起こり ようがありません。たとえば、チ ェック作業のときに声をかけられ て、仕事を中断してしまうことが あります。これは中断の仕方が間 題です。無意識のうちに中断する と、どこまでチェックしたのかが わからなくなって、ミスを誘発し てしまいます。 無意識の行動は、チェックや確 認の行動が不十分になります。す なわち、チェックをしていても実 際にはチェックできていない状況 に陥っています。 こうした無意識は、作業や仕事 の「慣れ」から来ています。仕事 への慣れは良い面も多いのですが、 悪い面が無意識の行動につながり、 それがチェック行動の不備となっ て、ミスや事故を起こしてしまう のです。

無意識な行動を防ぐには

こうしたミスや事故を防ぐには、 無意識を排除することです。その ためには、仕事の各手順ごとに 「けじめをつける」ことを意識し ます。 けじめをつけるためには、習慣 付けが大切です。重要なポイント は、職場の中で仕事の確認を確実 にして、片付けなどを徹底するこ とです。そのようなことを通じて、 仕事にけじめをつけることが重要 なのです。 無意識な行動をしないためによ く活用されるのが、「指差呼称」ま たは「指差し確認」です。チェッ クすべきポイントを指差して「○ ○よし!」と声に出して確認する のです。指差呼称をすることで、 無意識の状況を意識化させること ができます。 ここで重要なのは、確認すべき ポイントを明確にして、可能な限 り表示などで明確化することです。 そのためには、指差呼称すべきポ イントを目で見てわかるように工 夫します。つまり、「日で見る管 理」の考え方を活用することが効 果的なのです。

5Sがけじめのある行動を引き出す

5Sの取組みは、まさに行動に けじめをつけるための取組みといってよいでしょう。「使用した器 具や道具は必ず元の位置に戻す」 「汚れたら必ず清掃する」「仕事の 終了時に机の上にモノは残さな い」などのルールを確実に実行す ることで、次第にけじめのある行 動が習慣化してきます。5S はこ のようなけじめのある行動を引き 出すためのツールなのです。 こうしたけじめのある行動が、 ヒューマンエラーの発生を防ぐこ とにつながります。すなわち、カ ン違いや思い込み、あるいは無意 識的な行動を、けじめある行動に よって防ぐのです。 けじめの行動が身についていな い職場では、 いかなる安全管理の ためのルールを設定しても、その ルールが守られないことになりか ねません。5S に取り組んで、ル ールを守る行動を継続することに よって、けじめある行動が習慣化 してきます。このようなけじめの 行動が、ミス・事故防止で重要に なるのです。

4 職場の見える化はできていますか?

事故・ミスを防ぐために、日で見る管理・見える化を進めます。見える化の対象は、モノだけではありません。 仕事の進捗状況、情報、技術・技能も見える化して、安全な職場を築きあげましょう。

職場に求められる見える化

事故やミスを防ぐためには、目 で見る管理や見える化が必要です。 皆さんの職場は見える化ができて いますか? 見える化の対象は、モノだけで はありません。仕事や情報など、 さまざまな見える化が求められて います。実は5Sを展開するこ とにより、さまざまな事柄の見え る化が実現できるようになります。 ここでは代表的な見える化の内容 を説明しましょう。

モノの見える化

「モノが正しく元の位置に戻って いるか」、この見える化が5Sの 基本です。この基本がまず実現さ れなければなりません。正しい位 置に戻っているかどうかは、モノ を使用するメンバーの意識の見え る化にもつながります。 これまで平行。直角に整然と置 かれていたワゴンや包交車、処置 台車などが、あるときから急に乱 れたりすることがあります。こう した状況は、職場のモラール(士 気・帰属意識。意欲など)が低下 している可能性を示しています。

仕事の進捗状況の見える化

仕事の進捗状況は見える化でき ているでしょうか。常備している 医療材料の在庫が少なくなると、 発注しなければなりません。では、 「誰が」「何を」「どのタイミング」 で発注するのでしょうか。また、 いま現在発注しているかどうかが、 日で見てわかる状態となっている でしょうか。 こうした進捗の見える化を「状 況の見える化」といいます。いま、 仕事の状況がどのようになってい るのか、誰もがひと目でわかるよ うになっていると、仕事のムダや 間違いをなくしやすくなります。

情報の見える化

職場に掲示している情報が全員 に伝わっているかどうか、その見 える化はできているでしょうか。 掲示板にある掲示物の貼り方を見 ると、その実態がわかります。 掲示板におびただしい数の掲示 物が貼られていて、大切な連絡事 項が埋もれてしまっている場面を 見かけます。これでは連絡事項は 伝わりません。連絡文書は、単に 掲示しておけばよいというもので はありません。管理されている状 態で掲示されていることがポイン トです。

ベテラン職員の技術・技能の見える化

ベテラン職員の技術・技能は、 本当の意味で見える化できている でしょうか。こうした質問をする と、多くの医療機関で「仕事のマ ニュアルを作成しているので大丈 夫」「マニュアルに技術や技能はまとめられている」といった回答 が返ってきます。仕事の進め方を マニュアルにまとめて、次の人に わかりやすくするのはとても大切 です。 しかし、ここで見逃してならな いのは、作成されたマニュアルが 「業務が順調に推移している場 合」についてまとめてあるという ことです。 一方、ベテラン職員が 持っている技術。技能は、マニュ アルに書かれてあるもの以外のと ころにあります。スムーズに業務 が進行できていないとき、患者の 容態に突然変化があったとき、必 要な医療材料を切らしたときなど、 緊急事態の対応こそがベテランの 持つ技術。技能です。業務が順調 に流れているときは、ベテランと 新人の仕事自体に大きな差はなく、 技術・技能の差はさほど問題にな りません。緊急時の対応をどうや って見える化するかがポイントな のです。 見える化の効果を示します。参 考にしてください。

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