MENU

あらゆる立場の視点を持つ

 私は常に、ひとつの物事について、あらゆる視点から考えるようにしている。誰かと議論をする際にも、あえて様々な立ち位置から見た場合の意見を出すことがある。  経営者の視点だけでなく、マーケターの視点、営業の視点、ものづくりの視点、経理の視点、総務の視点、人事の視点、取引業者の視点、さらには顧客の視点……というように複数の視点を持って、常に自分の中で意見を戦わせているのだ。  私はこれを、意識的に行っている。それは、「ひとりディベート」とでも言える作業だ。ディベート(討議・討論)では、あるテーマについて肯定派と否定派に分かれて意見を戦わせ、最終的に勝敗を決める。  これをひとりで行うには、まず初めに肯定側に立って、テーマについて徹底的に肯定する。次に、対極の立場である否定側に回り、同じテーマについて徹底的に否定する(この「徹底的」とは S字のクリッピングポイントを指すので、それだけの情報を集めるには、それぞれの立場で環境分析を行う必要がある)。  そうやって両極の意見をひととおり出したら、今度は、振り子のように両者の間を行ったり来たりする。頭の中に振り子をイメージして、肯定意見と否定意見を様々な角度から検証するのだ。場合によっては、時系列を変えた意見を出してみたり、 5 W 1 Hの視点から違う意見を出してみたりもする。  なぜ、そこまでしてあらゆる立場の視点を持とうとするのか。それは、最適解を導き出し、適切な判断を下すためだ。それと同時に、関係する可能性のある視点(立場)を洗い出し、それぞれの視点からの想定をしておけば、目的へ到達できる確率も上がる。  また、すでにある程度の方向性が決まっていたとしても、「こういう考え方もある」「こんな立場の意見もある」と事前に把握している上で物事を進めたほうが、多くのリスクを想定でき、トラブル自体が起きにくくなる。そして、チャンスもつかみやすい。  では、あらゆる立場の視点を持つとして、どの範囲まで持てばいいのか。望ましいのは、関係者全員の視点を持つことだ。  まずは顧客。その中でも、長年にわたる顧客と新しい顧客では、視点が違う可能性があるため、それぞれを想定するといい。  社内では、営業担当者などの「売る」立場から、商品開発や仕入れ、原材料の生産者といった「作る」立場もあれば、資金調達や法務などを担う「守る」立場がある。さらには、競合他社や行政など関係各所の視点も持っておくといい。  かなり大変だと思ったかもしれないが、何度か時間をとって真剣に考えると、その後は自然と頭に浮かぶようになる。かつ、それらはすべて、のちのちの蓄積にもなる。  実際のところ、関係者の種類というのはそう多くはなく、大体いつも同じだと気づく場合もあるだろう。決して無限ではないので、いずれすぐに頭に浮かぶようになるのが理想だ。  判断には、意識的に行っているものと、無意識のうちに行っているものがある。社長歴が長くなると、テーブルから物が落ちそうになった瞬間にサッと手が出るように、無意識で行う判断が増えてくる。直感的に答えがわかるようになってくるのだ。  特に、経営者としての基準や、経営者としてどうあるべきか、といった本質的なことほど、無意識で判断できるようになる。経営者としての姿勢はそう変わるものではないため、何度も判断を繰り返すうちに、どうすればいいかがおのずとわかり、もはや意識的に判断する必要がなくなるのだ。  そうすれば、より複雑な課題や、それまで経験したことがないような問題に集中することができるようになる。むしろそれが社長の本来の仕事であり、最も大切な判断でもある。だからこそ、それ以外の判断は誰かに委任して、いつでも時間をたっぷり使えるようにしておく必要があるのだ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次