同族企業の強みは、先代の「想い」が引き継がれるところ。
少子化で後継難が目立つが、中小企業はやはり同族承継がいちばん良い。
株式の相続や金融機関との信頼関係維持がスムーズなど、理由はいくつもあるが、そもそも私財を担保に入れて、文字どおり、身も心も会社と一体化する覚悟をもつことは、並大抵ではない。
その点で、同族後継者は帰属意識が違う。朝な夕なに事業のロマンを語り続け、家に箸も茶碗も置かないほど、会社の発展に心血を注ぐ父親の背中を見て育てば、「親父の会社を俺の代で潰してはならない」という漠然とした宿命意識が、十代のうちから芽生える子息が育つ。
じつは、私の息子もスター精密の一員である。大学卒業後に入社し、現場で様々な経験を積ませ、20年目にしてやっと執行役員となった。
その息子がかつて、入社式の前日、私に宛てて初めて手紙をよこしてきた。
「拝啓佐藤季様自分自身のせえを断つためにも、明日からは父と呼びません。しかしながら、僕には創業者であるおじいちゃんの血と、会社の発展に人生の全てをかけているお父さんの血が流れています。
ふたりの血を受け継いだ僕だからこそ、スター精ふを愛する気持ち、スター精ぶをもっと良い会社にしたいという口ヽいの強さは、他の誰にも負けないつもりです。
ふたりの血が流れていることは、僕の誇りです。その自負を胸に、僕はこれからスター精碁で一所恙命やります。
そしていつか、あなたの一春信頼できる部下に成長してみせます。それが、22年間育てていただいた思返しになると信じているからです」
親ばかと笑われることを承知で息子からの手紙を披露したのは、「会社を愛し、従業員を大切にする」という創業者のDNAが親子3代にわたり伝承されていく、同族企業の強さをお伝えしたかったからだ。
かつて私は親父の社葬で、「人生でも仕事でも、父を一番尊敬できたことが幸せです」とスピーチしたが、こんな幸福を味わえることは同族承継ならではの良さだと実感している。
従業員にしても、同族が継ぐことで、トップが代わっても会社のDNAは変わらないという安心感をもってもらえる。
だから、息子がいなければ娘でもよい。子供がいなければ、いとこでも姪でも甥でもいい。とにかく、血のつながりのある者に会社を継いでもらうことが最良だと、私は思う。
佐藤肇「決断の定石」CDより
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