カネの「入り」を「出」よりも1ヵ月早めれば運転資金が足らなくなることはない。
必要運転資金を少なくするには、最低でも1カ月、資金の「入り」を「出」よりも早めることだ。私の経験則から言えば、この1カ月のサイクルの目安は、売掛債権の「回収率」が買掛債務の「支払い率」を5%上回ることで実現される。
自社の「当期回収率」というのは、当期に回収すべき「当期売上高」プラス期首の売掛残高(つまり、前期に回収できなかったもの)に対する、当期に回収できた回収高の比率である。
一方の「当期支払い率」は、当期に支払う「当期仕入高」プラス期首の買掛残高(前期に支払わなかったもの)に対する、当期に支払った支払い額の比率のことである。
この自社の回収率と支払い率を計算してみて、もし支払い率が回収率を上回り、その傾向が年々続いているようなら、それだけB/S右側の資金調達が増え、
結局、金融のための金利が増えることにつながる。厳しい言い方をすれば、社長の怠慢で、社員が一所懸命に稼いだ利益を、無駄な金利支払いで減らしているということだ。
そこで支払い率の高い会社は、まず回収率を上げ、同時に支払い率を下げる方策を考えねばならない。ただし、回収率も支払い率も、すべての会社における絶対的な適正値というものはない。
そこで、どの会社にも共通する目安としては、資金繰りに1カ月の余裕をもたせるべく、回収率が支払い率を常に5%上回るようにすればよいのである。
ちなみに、この回収率と支払い率に5%の差を設けると、1カ月分の資金余裕が生まれるという法則は私の経験則から導きだしたもので、学問的な裏付けはないc
しかし、実際に自社の回収率や支払い率を試算してみれば、この法則のとおりになるはずだ。
計算の詳しい解説については拙書『先読み経営』をご参照いただくとして、大事なことは自社の回収率や支払い率の適正値を社長が知らずにいるかぎり、営業部長に回収改善の指示を出したり、資材の担当長に支払い条件の改善を具体的に指示できないということである。
回収と支払いの改善は、取引相手あってのことだから一朝一夕にはいかない。時間がかかることだ。だからこそ、社長が自社の適正値を知り、これを部下と共有して、支払いサイトの長い仕入れ先の取引を増やすとか、現金や前受金取引の仕組みをつくれないかなど、執念をもって策を講じてほしいのである。
佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より
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