景気後退局面で先行きが見えないなかでは、最悪の事態でキャッシュがいつまでもつか、予測バランスシートをつくつておけ。
景気後退局面に社長がまず第一にやるべきは、わが社の資金の把握である。
たとえば、2020年の前半にコロナ。ショックが起こり、経済回復の見通しがまったく立たないなかで、私は地元の若手経営者らに、「この状態で最悪のシナリオを考えたときに、いつまでキャッシュがもつかを計算しておきなさい」と助言した。
というのも、コロナウィルスの感染リスクを下げるためには、人が動き、接触することを避けなければならない。いわば「何もできない状態」である。
したがって、とにかくこの状態でどれくらい売上が落ちるか、そして減少する売上プラス手持ちの現預金で経費を賄う場合、いつまでキャッシュがもつかという予測B/Sを、まずはつくってみなければならない。
なぜなら、 会社は赤字でも倒産しないが、キャッシュが詰まれば一晩で倒産するからだ。ご自分の会社の生死に関わることなのだから、社長は最悪の事態となっても何とかなるように、何をおいても真っ先に、資金の実態を見通しておくべきなのだ。
予測B/Sは、現時点から最低でも1年半から2年後までシミュレートしておくとよい。もちろん、終息が早いことが読めるようなら不要だが、先行きが不透明なケースは2年後まで見通すべきである。
コロナ・ショックのときはとりあえず1年半後まで、2020年7月から12月までの6カ月を「フェーズー」、翌2021年1月から6月までを「フェーズ2」、7月から2021年末までを「フェーズ3」とし、6カ月ごとの3つのB/Sをつくり、キャッシュがつながるかを確認した。
とにかく、こうして予測B/Sをつくってみると、有事に際して自社の盤石な財務のありがたみを痛感する。
今回のコロナ・ショック以前にも、これまで幾度の景気後退局面を経験してきたが、わが社スター精密には日本人全従業員の給与、賞与、退職金3年分の現預金があるということが、私にどれほどの心強さをもたらしたか、計り知れない。
危機に際して不安がる社員たちを前に、「3年売上がゼロでも君たちの雇用を守るカネが、わが社にはある。絶対に会社は潰れないから、安心して一緒にがんばってくれ」と力強く宣言できたことは、会社におカネを残す経営に徹し続けた努力に対する、大きなご褒美だと思えてならないのだ。
佐藤肇「社長の決断と全社統率」CDより
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