海外法人の従業員に「俺たちは、日本の社長に信用されている」と思わせるよう心を砕け。
ただし、こちらは相手を信用してはいけない。
海外でビジネスを展開する場合に、端的にヒトの問題が大きな比重を占める。
結論を言ってしまうと、現地法人のトップ以下、営業スタッフも現地社員を雇うこと。そして、彼らのモチベーションをいかに高めるかということにつきる。
わが社は戦略上、海外での販売は商社に任せず、海外販売会社を設立して直販体制を敷いており、責任者をはじめ、営業スタッフもすべて現地の人間を雇っている。
中国のように、人脈がないと商売ができない国では代理店を使っているが、基本的に各国で直販をしている理由は、商品知識をもった販売員が商品の魅力をきちんとお客さんに伝えてくれないと、売れない商品だからである。
高額な工作機械は、商社任せのカタログ販売ではやはり売れない。よって、見込み客の段階で丁寧なヒアリングを行ったり、試し加工をしてもらったり、機械のオペレーション指導をしたり、あるいは故障したときには36時間以内に修理にうかがったりと、手厚いサービスをやるのだが、これを外国人(日本人)がやるよりも、同じ言葉を話す現地のスタッフが行ったほうが、お客さんとうまくコミュニケーションがとれる。
そして大事なことは、現場に権限を与えることだ。何をするのもイチイチ日本の本社にお伺いを立てさせ、本社が上座で海外現地が下座というような態度では、当然ながら働く人のモチベーションは上がらず、成果も上がらない。
現地の責任者に日本人を置かないのも、「どうせ日本人しかトップになれない」と思わせると、優秀な現地人が定着しないからである。
どんなに優れたビジネスモデルや戦略を考えても、実行する現地スタッフの頑張りがなければ決して成功しない。だから海外販社には、「日本の社長は俺たちを頼りにしている、がんばろう」と思わせることに、私としては心を砕いているのである。
ただし、信頼して権限を委譲するといっても、おカネだけは絶対に日本でコントロールしなければならない。給料用の預金はローカル銀行を使うが、取引に使う運用預金は日本のメガバンク以外は使わないし、ある一定以上のカネを動かすときは、本社の役員のサインが必要な仕組みにしている。
死んだ親父は常々、「海外支店の社員を、うまく編せ」と言っていた。編すというと聞こえは悪いが、要するに、文化も信条も違い、日常的に顔を合わせることも叶わない海外の社員に対しては、日本にいる社員以上に、巧みな人心掌握が必要だということである。
佐藤肇「世界で戦う経営」CDより
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