周囲が「今後、売上は1割減るだろう」と言うときは2割減と考える。
私はいつも先の見通しを「良い」「普通」「悪い」と3パターン想定して経営にあたるが、とくに悪いパターン、それも最悪の状況を想定することは非常に嫌なことであるが、最も重要である。
なぜなら、自社が身を置く業界やマクロ経済が最悪になっても何とかなる見通しを立てておけば、それより悪くならないかぎり、後は上振れするだけ利益が増す。
だから、実際に厳しくならなければ「その分は儲けもの」という気持ちで経営をやることが大事である。
たとえば、2016年、英国が国民投票により2年後にEUを離脱すると決定したとき、経営者や経済評論家の予測は「日本の会社への影響は売上1割減」というのが大半だった。
そこで私は2割減と先を読み、それを前提に計画をつくり直した。
周囲が1割減ると言うときは、2割減ると考える。
ここで、さほど影響はないだろうと楽観視して何も手を打たないと、想定以上に悪い結果になったときに、より深いダメージを負うことになるからだ。
当時、わが社の海外売上比率は85%以上で、欧州の売上は3割弱を占めていた。
さらに主力のプリンター部門の拠点は英国にしかなく、EU離脱が現実になれば、英国とEU諸国間でヒト・モノ・カネの動きの自由度が制限されることになる。
世界の枠組みが大きく変わるかもしれない、まして2年先の影響を予測することは非常に困難で、こうした不透明な情勢ではとりあえず静観し、2年後の姿が見え始めてから動き出せばよいと考える経営者もいるだろう。
だが、そのときになって対応したのでは遅いのだ。だから、与えられた情報と自分の経験を総動員し、考えうる最悪の事態を想定して手を打たねばならない。
幹部にも、「離脱まで2年の猶予があると考えるな。明日突然、最悪のことが起こるという前提で準備を進めよう。離脱が撤回される可能性があるとか、EU側が譲歩して英国に有利な方向に行くとか、都合のいい情報はいっさいアタマに入れるな」と指示した。
「経営の3坂」と言うが、「上り坂」「下り坂」いずれの局面よりも怖いのは、想定外の「まさか」である。結局、会社が潰ぶれるのは、想定外の事態に打つ手がなかったときである。
だから社長は、先行きがまるで見えないとしても、最悪の事態を想定して万全の準備をするしかないのだ。
佐藤肇著「佐藤式先読み経営」より
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