「まさか」と思うような不測の危機に直面したときほど、中小企業の良さ、強さを実感することはない。
たとえば2008年9月のリーマンショックのわずか2カ月後、主力の工作機械の受注が8割減という事態になった。工作機械は高額なので、景気が悪くなると需要が減って売れなくなる。
そこで無理に売ろうとすると、値下げせざるを得ない。しかし、市況が戻った後も簡単には値戻しできないため、それが市場価格になってしまう。
そこで、「売るな。売らないのだから作るな、買うな」を徹底した。すべての事業所で金曜も休みにして、週休3日にしたのである。同時に、国内の全工場。全事務所を回り、従業員にこう説明した。
「会社はキャッシュがあれば何とでもなる。わが社には現預金が150億円ある。国内の全従業員の給与。賞与・退職金の3年分だ。だから、仮に3年間売上ゼロでも大丈夫。だから安心して、一緒に危機を乗り越えてほしい」。
結果、作らないから在庫が減り、売らないから売掛債権も減り、売上利益の大激減で赤字額は85億円でも、実際の現預金の減少は6億円にとどめられた。自己資本比率は81%、盤石である。人員整理もしていない。
リーマン・ショックのときにいち早く回復できたのは、買うな、作るな、売るなという指示を早く出せたからだ。そして、社員がそれを迅速に、辛抱強く徹底してくれたから、というのも大きな要因である。
こんなことは、売上が1000億円に満たない会社だからこそできることで、3000億円を超える会社なら、急激に変えることはできないだろう。もしもスター精密が大企業であったら、私はリーマンショックのときに何もできなかったかもしれない。
だから、これは痩せ我慢でも何でもなく、これまで会社を大きくしなかった。何かあったときにすぐに対応できる企業規模でないと、自信をもって経営ができないからだ。
大型客船が進行方向を変えるのは大変だ。でも、遊園地の手こぎボートなら、片側のオールだけですぐに曲がることができる。
何かあったときにすぐに対応できるかどうかを決めるのは、会社の規模である。
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