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「資金繰りの嫌な思いを社員や家族にはさせたくない」製造業社長   40代  田淵二郎さん(仮名)

家族には、「ちゃんとやってるから!」  社長さんにとって、「資金繰りの悩み」は、なかなか相談相手がいないものだと思います。社員に相談すると「ウチの会社、危ないのでは」と思われそうだし、ヘタに銀行に相談したら、逆に資金を引き上げられてしまいそう。そして、家族には心配をかけたくない……。  次に紹介するのは、そんな「やさしさ」から、苦しくなってしまった社長さんの事例です。  社員 50名を抱える製造業のトップである田淵社長が感情コンサルにお越しになったとき、最初は「お金が足りない」ことが問題なのかと思いました。ところが、どうも、お話をうかがううちに、「お金の悩みを誰にも相談できないこと」がストレスの最大の原因だとわかってきたのです。  奥様が経理を担当されていて、「資金繰りはどうするの?」って聞いてくるのが嫌で、イライラしてしまい、「大丈夫だから!  ちゃんとわかってやってるんだから待ってろ!」と、つい声を荒げていたそうです。「奥様は経理を担当されているんですよね?  たぶん、資金繰りが苦しいことはご存知でしょうから、相談されてもよいのではありませんか?」「いや、家庭に仕事を持ち込むと、家のなかが嫌なムードになるし、家族に心配かけたくない。それに、お金の問題くらい、 1人でクリアするのが本物の経営者でしょう」  どうやら、田淵社長には、「経営者は、お金の問題くらいで周りに頼って、心配させてはいけない」という思い込みがあるようでした。  私は、この思い込みから田淵さんを解放できないか、試してみることにしました。「家族や社員にお金の心配をさせたくないって、すごくやさしいですね」「いや、それが経営者としては弱い部分なんです」「経営者としては弱いかもしれませんが、人としてはどうですか?」「まあ、人としてはやさしいほうがいいですけど」「田淵さんは、社長である前に 1人の人間ですよね。人として、そんなやさしさを持ち合わせているなんて素敵じゃないですか」「まあ、そういう見方もできるかもしれません」相談することは、心配させることではない  自分を否定していた田淵社長でしたが、まず、「経営者として弱さはあるけれど、人間としては素敵である」と、そこまでは受け入れてもらえました。  私は続けて言いました。「もし、田淵さんと奥様の立場が逆だったらどうですか?  つまり、奥様がガンガン攻める経営をしていて、田淵さんが経理を担当しているとします。そんなある日、奥様が『ちょっと資金繰りが厳しいんだけど、どうしよう』って相談してきたら、田淵さんはどんな気持ちになりますか?」 「『あっ、自分は信頼してもらっているな』って感じるかな」「なるほど。頼ることはいけないって、さっきはおっしゃいましたが、逆の立場になったとき、自分が頼られるのは嫌な感じがしないんですね」「ああ、そうか……。たしかに、そうですね……」「奥様から、『どうするの?』って言われるのがすごく嫌だっておっしゃっていましたよね。もし、立場が逆転して、田淵さんが経理を担当していて、資金繰りが苦しいことがわかっているのに、社長である奥様から何の相談もなかったらどうですか?」「そうか……、心配で『大丈夫なの?』って声をかけると思います」「ですよね。奥様は、単に田淵さんのことを心配して、『私にも相談してよ』って、おっしゃりたかったのではありませんか?」 「……今まで、 1人で解決できなくてダメな社長だと思っていました、でも、周りを信頼できず、本音が言えないほうがダメな社長なのかもしれませんね。経営者である前に人間なんですものね」  この感情コンサルで、田淵社長はガラリと変わったそうです。  奥様に、「実は今、こんなふうに資金繰りをやっていて、今後はこういうふうに進めようと思うんだけど、どうかな?」って、相談するようになったのです。  たとえ、自分のなかで方針が決まっていても、奥様の、「あっ、それいいじゃない」「それってちょっと辛くない」という言葉を聞くだけで、とても気持ちが楽になったのだとか。  さらに、幹部社員にもいろいろと相談するようにしたら、それまで思ってもいなかったような発言や提案が出てきて、会社としてすごく活気が出たとのことでした。「今までは、資金繰りに困っているのに、『大丈夫だから!』って言っていた。これは、心配をかけまいと思って、困っているのに大丈夫だって言っていたわけで、自分にも周りにもウソをついていたんですね。これからは、ウソをつかずに、本音をさらけ出してやっていくつもりです」  田淵社長からは、そんな言葉をいただきました。とかく、相談しにくいお金の悩み。でも、相談することは、決して悪いことではないのです。

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