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「全員味方」から「全員中立」へ

傷つきやすい小心者が、優秀なリーダーになるいいリーダーほど、なかなか本音を言わないこれまで誰にも言ってこなかったことですが、じつはラジオ番組「社長トーク」を収録する際にこだわってきたルールが1つあります。

それは、収録部屋に入るのはゲストの社長さんと聞き手の私だけにするということです。

社長インタビューとなると、必ずと言っていいほど、秘書や広報担当者の方が同伴されますが、大変失礼ながら、収録の際にはブースの外で音声を聞いていただくようにお願いしています。

もちろん、私のほうにもアシスタントはつけません。

なぜそうしているかといえば、優秀なリーダーは驚くほど繊細だからです。

リーダーの多くが、「気配り」タイプです。

そばに誰かがいると、発言に気を遣ってしまい、本音を語ってもらえないことがあります。

とくに、広報担当者などが発言メモをつくってくださっていると、できるだけメモに沿ったコメントをしようと配慮されたり、ついつい社員の表情を気にされたりするものです。

NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」のキャスターをしていたころにも、同じような体験をしました。

カメラが回っているあいだは当たり障りのない真面目な話ばかりしていた社長さんが、カメラが止まった途端に、いい話や本音をぽろっと口にすることが少なくなかったのです。

そのため、ディレクターさんからは、「『今日はありがとうございました!』という締めの言葉を発したあとからが、本当のインタビューだと思っておけ」と言われたこともあります。

実際、「収録終了のかけ声があっても、カメラは止めないように」という指示もあったほどです。

一方、「社長トーク」は音声だけの番組ですが、第三者の存在は、カメラと同じくらい、社長さんに気を遣わせるものなのです。

そこで収録のときには、社内の人が視界に入らない「密室状態」をあえてつくり、ほかの人の視線を気にせず自由にお話しいただける環境をつくっています。

「逆に、密室のほうが社長さんは緊張するのでは?」と思われるかもしれませんが、そこは私が努力で補うべき点です。

社長さんに気持ちよくリラックスしてお話しいただけるよう、聞くことに徹する姿勢で対話に臨んでいます。

雑誌のインタビューなどでは、広報担当者が事前に打ち合わせを求めてきたり、記事の内容を秘書がチェックしたりすることがほとんどです。

たしかに、会社のことを広く正確に伝えるためには、こうしたプロセスが大切なのかもしれません。

しかし私は、企業のリーダーに自由に話してもらい、社会の未来を切り拓き続けている人間としての思いや哲学を多くの人に聞いていただきたいのです。

社長の言葉は、仕事と人生に関わるビジョンに溢れていますから、多くの人に勇気と希望を与えてくれるはずです。

大局を見ているようで、じつは驚くほど細かい「密室インタビュー」のエピソードからもおわかりいただけるとおり、「細かいことは気にしない、我が道を行くリーダー」という典型的な社長キャラクターの人というのは、本当は多くないのだと思います。

むしろ、「繊細で傷つきやすく、細部が気になるタイプの人が、トップリーダーになっている」という印象です。

繰り返しになりますが、繊細であることは、リーダーにとって大切な資質です。

つねに注意深く周囲に意識を張り巡らしているからこそ、細かいことにすぐ気がつく。

いろいろな角度で物事を検証し、自分の信念を深めてきた人が、リーダーとしても成功しています。

私は仕事柄、さまざまな企業トップと会議や食事を共にする機会があります。

プロジェクトなどをご一緒する際には、優秀なリーダーほど、小さな文字の間違いや資料の不備に誰よりも早く気づきますし、作業をしてくれているアシスタントたちにも細やかに配慮し、感謝の言葉を伝えています。

こうした姿を間近で見るにつけ、一流のリーダーほど繊細であると確信させられるのです。

また、会食の際に毎回驚くのが、お礼のメッセージの早さです。

会が終わってタクシーまでお見送りした直後、SNS経由で「今日はありがとうございました」とお礼のメッセージが入ることが少なくありません。

そのたびに私は「また先を越されてしまった……」と反省するわけですが、トップリーダーというのは本当に「マメ」です。

異性にモテる方が多いのにも、そういう理由があるのかもしれません。

これは第2章でお伝えした「リーダー=考える人」であるということと無関係ではないのかもしれません。

つねに多くのことに意識を張り巡らせているので、あらゆることに直感的に気づいてしまう瞬発力が鍛えられているのでしょう。

リーダーの行動力は「」トップリーダーの繊細さは、行動にも表れています。

会食直後のお礼メールもその1つですが、繊細で配慮が行き届いているがゆえに、行動もマメになるのでしょう。

私はこれまで4度ほど、サウジアラビアを訪問しています。

現地の人と交流するなかで実感したのは、サウジアラビアのアブドラ前国王が本当に国民に愛されているということでした。

アブドラ前国王は生前、1カ月かけてサウジ全土を回って国民と対話したり、国民から直接要望を聞く会を定期開催したりしていました。

厳格なイスラム教が行き届いたサウジアラビアならば、おそらく国王がそこまでしなくても、国を治めることはできたと思います。

しかしアブドラ前国王は、国民の生の声を聞くことを大切にしていました。

その背景には、国民への愛情だけでなく、インターネットの発展もあったのだと言われています。

さまざまな価値観に基づく情報がサウジアラビア全土に入ってくる時代になった以上、自らの目で国民の生活を観察し、自らの声で国民に伝えていかなければならないとの思いが、国王ご自身にもあったのでしょう。

モロッコの国王も同様の取り組みをしています。

国民と握手して回ったり、共に語り合ったりして、積極的に国民との距離を縮めているそうです。

君主制が敷かれている国家のリーダーですら、現場を行脚するようになっています。

こうした現実を目の当たりにし、トップリーダーの繊細さと行動力を垣間見た思いでした。

この国王たちと同様、現場を歩くようにしている企業経営者は少なくありません。

変化の激しいこれからの時代、現場に足を運ぶことはますます重要になります。

現場の空気感やメンバーたちの顔色の変化を繊細に察知することが、リーダーの意思決定力を補強していくのです。

トップリーダーたちは、繊細さと大胆さを併せ持つ以前、経団連の機関誌向け新春対談で、2年連続で司会を務めさせていただいたことがあります。

経団連会長だった奥田碩(元・トヨタ自動車社長)さんの対談相手は、当時、総理大臣だった小泉純一郎さんでした。

奥田さんは、豪放磊落な方といった印象でしたが、実際にお会いしてみると「気遣いの人」でした。

小泉首相のお話が何度も脱線してしまったりするなか、司会役の私を気遣って、何度もさり気なく助け舟を出してくださいました。

もちろん小泉首相も、その場に集まっていた経団連幹部のみなさんを楽しませるために、いろんな話題を提供してくださり、2人のトップリーダーの人間としての温かさを体験させていただきました。

また、2年前のダボス会議では、安倍晋三総理の英語スピーチを拝見する機会がありました。

日本の総理大臣がダボスで英語のスピーチをするのは初めてのことでした。

本番前にうっかりその会場に入ったところ、ちょうど安倍総理がスピーチのリハーサルをしている最中でした。

「一国の総理なのだから、スピーチといっても、その場で原稿を読むだけだろう」と思っていたのですが、かなり入念にリハーサルをしているご様子で、どんなことにも手を抜かず徹底的に準備されている姿が非常に印象的でした。

総理のスピーチのあと、会場にいた何人かの海外のトップリーダーたちに「日本の総理のスピーチはどうでしたか?」と感想を聞いてみたところ、誰もが「彼は覚悟が定まっていたね」「自信に溢れた話し方だったよ」と評していました。

各国の首脳が何名もスピーチを行うダボス会議のような場では、話の内容よりも、その話し振りが評価の対象となります。

安倍総理が覚悟や自信を評されたのは、とても名誉なことです。

見えないところでの繊細で緻密な準備と大胆なパフォーマンス——これこそがトップリーダーに求められる姿なのだろうと思った瞬間でした。

成長するリーダーは、なぜ「傷つきやすい」のか?繊細さというのは、時として「傷つきやすさ」にもつながります。

おそらく、多くのリーダーは本来傷つきやすいのだと思います。

本書をお読みいただいている方にも、「私はリーダーなのにちょっとしたことで傷ついたり、悔やんだりしてしまう……」と気にしている人がいるとしたら、むしろそのことはポジティブに捉えるべきでしょう。

「社長トーク」では、過去の失敗について聞くことが多々あります。

どのリーダーたちも、何かしらの大きな失敗・危機を味わい、それを乗り越えてきた経験を持っています。

そして、誰もが過去の失敗を細部にわたって記憶に留め、そのときの痛みをいまも強く持っています。

収録中には「もう過ぎたことだし、いまでこそ笑って話せますがね……」と言いながら、ある種の笑い話として失敗談を話してくださいますが、収録が終わってリラックスした拍子に、思わずポロっとこんな言葉が飛び出すことがあります。

「収録中は言いませんでしたけど、じつはこんなひどいこともあってね……」「あのときは『もう人生終わった』と思いましたよ……」「信頼していた人にも裏切られて、本当に理不尽な思いをしました……」失敗を忘れようとしたり、なかったことにしようしたりする人は、いいリーダーになれません。

傷つき、悔しい思いを持ち続けているからこそ、同じ失敗を2度とするまいと心に決められるのです。

好かれなくてもいい。

だが、嫌われてはいけない「リーダーは嫌われ役」を信じてはいけない「リーダーには嫌われる覚悟が必要」「リーダーは孤独である」といったリーダー論を聞いたことがあると思います。

しかし、「せめて組織やチームのメンバーからは好かれたい」——そんなふうに思うのは自然なことですし、現実問題としてプロジェクトなどは、メンバーとリーダーのあいだに信頼関係がなければ、まずうまくいきません。

そして何よりも、ビジョンが共有されていなければ、そのプロジェクトは、魂の入らないただの形式的なものに終わってしまいます。

たしかに大きな挑戦につながるプロジェクトを担うリーダーほど、残念ながら、みんなから好かれる存在にはなりにくいものです。

より長期的なメリットを念頭に置いた変革を起こそうとするリーダーは、たいていの場合、既得権益を手にしている人たちを敵に回すことになります。

あの手この手で足を引っ張られ、誹謗中傷のなかで孤独感に苛まれることもあるでしょう。

それほど大げさなことでなくても、組織・業界のなかで何か新しいチャレンジをしようとするときは、自分たちの地位が脅かされるのを恐れた他部署や他社から、妨害を受けることもあるかもしれません。

また、社長直轄の大胆なプロジェクトのリーダーとして任命されたものの、集められたメンバーたちにやる気がなかったり、もっとひどいときには、リーダーに反感を持っていたりということもあり得ます。

ビジョンなきリーダーの末路としての「ハコモノ」大企業が立ち上げるプロジェクトや、税金を使って開催される予算消化型のイベントなどでは、そうした残念なことがときおり起きてしまいます。

とにかく言われたとおりに体裁だけ整えるのが当面の目標となってしまい、「お金と時間を使ってそのプロジェクトを遂行することに、どんな意味があるのか?」「誰をどのように幸せにするプロジェクトなのか?」ということが意識されないまま、淡々と予定が進められていく。

こうして買い手不在の商品や集客もままならないイベントが生まれ、世の中に何ももたらさない、それどころか、公共の利益を損なうという結果に終わっています。

その最たるものが、行政における「ハコモノ」です。

また、つくったけれど使われず、維持費だけがかさむという無駄遣いのプロジェクトは、建築物のように目に見えるもの以外にも無数にあるでしょう。

これは、国や自治体や関連企業が悪いという以前に、プロジェクトに関わるすべてのリーダーが、ビジョンを持っていなかったことに大きな問題があるのです。

人口が増え、経済が拡大していたころの日本であれば、こうしたビジョンなきリーダーが跋扈していようと、なんとか経済は回ってきました。

しかし、人口減少が進むいまの日本では、かつての拡大型経済の方法は機能しません。

ビジョン型リーダーシップを発揮した取り組みに変えなければ、プロジェクトそのものを実施する財源すら出せなくなりつつあるのが現実です。

敵をつくらない人が、結局いつも成し遂げるでは、かつての日本の高度経済成長期は、ビジョンなきリーダーばかりだったかといえば、そうではありません。

成長の真っただ中にあった日本にも、ビジョンあるリーダーはたしかに存在していました。

少し意外な印象を受ける方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の高度経済成長の象徴的存在とも言える総理大臣・田中角榮氏は、ある意味、ビジョナリーな存在でした。

「日本列島改造論」というビジョンで、日本国民をワクワクさせたリーダーです。

田中元総理のリーダーとしての考え方をよく表した言葉を、ある人から教えていただきました。

それは「広大な中間地帯をつくれ」という言葉です。

「政治家たるもの、自分を好いてくれる人と嫌う人、どちらか一方が増えすぎても、掲げたビジョンを実現することはできない。

熱烈な支持者がいる政治家には、同じくらいたくさんの反対派が生まれるし、熱烈な支持者はいきなり苛烈な批判者に反転する可能性がある。

だからこそ、好きでも嫌いでもない『中間層』をどれだけつくるかが大切だ」というのが、この言葉の意味です。

これは企業でリーダーを務める人にとっても、参考になる考え方だと思います。

とくに大企業では、「社内のある集団からは好かれ、他の集団からは嫌われている」といった人がリーダーになると、それは派閥に発展し、組織風土の悪化にもつながります。

2015年のダボス会議での一幕ですが、夜のパーティの際に、三井物産の社長だった飯島彰己さんのまわりに、大勢の人だかりができていました。

ちょうど、飯島さんの「社長退任」と「役員序列32人抜きの同社最年少社長の就任」が発表された日の直後だったのです。

「どうやって次期社長を決めたんですか?」——集まった人たちからそんな質問が出ると、「人望ですよ」と飯島さんが答えていらしたのが印象的でした。

また、日本を代表する経営者の1人である三菱商事の小島順彦会長が、かつて同社社長に就任した際にも、前社長がメディア上で「彼(小島さん)を悪く言う人はいないから」とコメントされていたのを覚えています。

「世界中のあらゆる分野でリスクをとる大手商社のトップ」と聞くと、「カリスマ的で大胆なリスクテイカー」をイメージしてしまいがちですが、どうやら違うようです。

さまざまな国のさまざまな分野に関わるプロが集まる多様な組織だからこそ、人望が厚い、つまり、敵をつくらない人がリーダーになる。

大きな仕事をするリーダーほど、じつは「嫌われない人」なのです。

「嫌われないリーダー」がやっている、たった1つのこと私自身、7年にわたりダボス会議に関わるなかで、何度も小島会長とご一緒する機会を得ましたが、人に分け隔てなく処される小島会長の姿には、これまで大いに感銘を受けてきました。

ヤング・グローバル・リーダー関連の記者会見にも同席くださったり、親子ほど年齢の離れた私たちにアドバイスをくださったりと、たくさんお力添えをいただいています。

そして何より、小島会長が三菱商事の話をされるご様子が、最も印象に残っています。

ビジネスのことを語りながらも、そこからは、事業や社員に対する愛情が溢れ出ているからです。

飯島さんと小島さんという、2人の大手商社トップを通じて私が学んだのは、本当に大きな仕事を成し遂げるリーダーは敵をつくらないようにしているし、それ以前に、まわりの人に対する愛情や感謝を忘れないということです。

私は、田中元総理にはお会いしたことがありませんが、元秘書官だったという方から当時のエピソードを伺ったところ、田中元総理もおそらく愛情に溢れた方だったのだろうと感じました。

総理大臣や商社のトップともなれば、トップリーダーになるまでの過程で、すでに数々の修羅場や苦労を経ているでしょうが、若くして起業した創業社長などは、組織の成長とともに、自身もリーダーとして成長していくケースが多いように思います。

たとえば、新卒採用支援事業などを展開する株式会社パフ(本社東京都)の代表取締役社長・釘崎清秀さんも、そんなリーダーのお1人かもしれません。

一時期、同社の業績が伸び悩んでいたころ、あるコンサルタント会社に、社員全員と面談をしてもらったそうです。

「現場の率直な考えを知りたい」という釘崎さんの思いから実施した面談でしたが、なんと8割くらいの社員が「社長がわかっていない、話を聞いてくれない」と釘崎さんへの不満を口にしたという結果が届きました。

社員とのコミュニケーションを日ごろから意識し、現場ともわかり合えていると思っていたのに、批判の嵐に突然直面した釘崎さんは、ナイフで胸をえぐられたような気持ちになり、しばし立ち直れなかったといいます。

それでもなんとか気持ちを立て直し、その翌日から社員1人ずつと自ら面談することを決意しました。

話している最中もずっと、「この社員も自分のことを嫌っているんだろうか……」と考えてしまい、不安は相当のものだったそうです。

それでも、これを機会に改めて現場と真摯に向き合ったことで、同社の業績は回復していきました。

先輩経営者たちから「社員は社長の心の鏡だ」「社長が意識を変えるだけで、組織は変わる」というアドバイスをいただくことがよくあります。

それは、まさに真実。

どこかでメンバーを信じていなかったり、見下したりしていると、メンバーのほうも同じようにリーダーに不信感を持ったり軽蔑したりするようになります。

一方、現場を尊重するように意識を変えると、リーダーに対する態度も変わってくるのです。

本当のリーダーは孤独ではないとはいえ、これもまた「言うは易し、行うは難し」です。

「期待したほどの実力を発揮してくれなかった……」「切羽詰まった状況なのに、のんびり仕事している……」などと、ついメンバーの「足りない部分」に目が行ってしまい、恨み節が口をついてしまいます。

しかし、組織やチームのメンバーは、簡単に取り替えられるものではありません。

また、チームだからこそ実現できる仕事というのは数え切れないほどありますし、それぞれの人生があるなか、共に歩む仲間となったのは何かの巡り合わせです。

何度も何度もそう自分に言い聞かせながら、少しずつ、メンバー1人ひとりに感謝できるように自らを磨くこともまた、リーダーに必要な修練です。

こうしてリーダー自身が人間として成長していったときに、そのビジョンに本当に共感してくれる仲間が集まり、大きなことを成し遂げられるのでしょう。

すでに紹介したひらまつの平松博利社長がおっしゃった印象的な言葉があります。

ある日、平松さんのところにコンサルタント会社の人がやってきて、「社長は孤独ですよね。

我々が助言しますよ」と言ったそうです。

平松さんはそれに対して、こう答えました。

「僕は孤独じゃない。

だって『この指とまれ』と言って一緒にやっている仲間が600人もいるんだよ。

僕が孤独なわけがないでしょう?」人間として成長したリーダーは、決して孤独ではないのです。

最高のチームづくりは「」女性メンバーは「」リーダーの特徴である「繊細さ」といえば、女性らしさの代表のような気もしますが、ここで少し、閑話休題。

昨今の女性の社会参画推進に関連して、女性のメンバー・女性のリーダーというものについて、私が考えていることをお伝えしておきたいと思います。

組織・チームにおける女性メンバーというのは「炭鉱のカナリア」、つまり、組織の空気の悪化をいち早く知らせてくれる存在です。

かつて、炭鉱夫はカナリアを連れて炭鉱に入ったそうです。

カナリアという鳥はつねに囀っていますが、窒息ガスや毒ガスに気づくと急に鳴き止み、炭鉱内の環境変化を教えてくれる貴重な存在でした。

組織においても同じで、女性たちは職場で抱いた違和感などを、率直に言葉にすることが多いように思います。

リーダーはこうした女性の声に耳を傾けることで、いち早くチーム内の不協和音に気づくことができます。

しかし、女性たちが声を上げやすい環境をつくるだけは不十分です。

彼女たちの今後の成長を支える意味でも、問題を提示するだけでなく、解決策もセットで提案してもらうような環境づくりが必要です。

雑談レベルで職場の変化を感じ取ることは大切ですが、オフィシャルに意見を聞く以上、ただの愚痴で終わらせないように一線を引くようにしましょう。

不満を解決するためのアイデアも語ってもらうことで、「炭鉱のカナリア」から「炭鉱で共に働く仲間」へと女性たちにキャリアアップしてもらえるよう、リーダーは配慮すべきです。

女性リーダーが少ない、本当の理由女性の活躍を推進しようとするなかで、企業の方々からよく聞こえてくるのは、「管理職になりたがらない女性が多い」「女性は給料よりも働きがいを重視する傾向がある」といった声です。

起業の世界でも、「女性起業家は会社を大きくできない」と言われることがあります。

実際、数多くの起業家を輩出しているアメリカでも、自ら大企業をつくり上げた女性はほとんどいないと聞いています。

しかし、それは女性の能力の問題ではなく、まず女性が育ってきた環境に一因があると思われます。

女性は、小さなころから大人に「大志を持て」などと言われる機会も少ないですし、就職してからも、リーダーとして活躍する同性の先輩が少ないため、リーダーシップを直接学ぶ機会にも恵まれているとは言えません。

人間の意識の大部分は環境によって規定されていきますから、それまで歩んできた環境のなかに、「リーダーになること」や「大きな組織をつくって社会にインパクトを与えること」を当たり前だと思わせてくれるような人がいなかったということが、かなり大きな要因になっているのではないでしょうか。

NHK連続テレビ小説「あさが来た」の主人公のモデルになった大同生命創業者の広岡浅子さんは商家で育ち、子どものころから経営者たちの薫陶を受ける環境にありました。

そうした環境のなかで育ったり、女性リーダーが活躍する姿を目にしたりする女性が増えていけば、女性のなかからも大経営者やトップリーダーがもっと生まれてくるはずです。

いままさにリーダーを務めている方は、メンバーが女性であろうと男性であろうと、ビジョンを語り、責任を持つ喜びをどんどん現場に伝えていただきたいと思います。

すでに、若手経営者が率いる企業などでは、女性リーダーもたくさん生まれています。

男女関係なくリーダーが務まる時代は、すでに目の前にまで来ているようです。

「後任リーダー」のことを考えていますか?そうはいっても、いまの時代、まだまだ女性リーダーへの重圧は相当なものです。

私が初めて政府の委員会のメンバーになったのは、30代前半のことです。

政府税制調査会の金融小委員会の委員という立場でした。

委員会に出てみると、そこには大学教授や企業経営者、業界団体のトップなど、立派な方々ばかり。

「もし私が男性だったら、この席に座ることはまずなかっただろう……」と一瞬にして理解しました。

当時の政府では、「審議会のメンバーの3割は女性にする」との閣議決定がなされていましたから、たまたま私にも委員の機会が与えられたのだと思います。

けれどもここで、「どうせ私は数合わせ。

期待なんかされていない……」とは思わないように心がけました。

本当に期待されていなかったとしても、それでは却って「期待するほどではない」というまわりの期待に応えてしまうことになります。

そこで私が考えたのは、「次にまた女性のメンバーが後任者として同じ席に座るときに、少しでも期待してもらえるような結果を、前任者として残そう」ということでした。

まわりのメンバーの方たちとの実力の差は歴然としていましたから、委員会で立派な結果を残すことはできなかったかもしれませんが、「この会議はどういう方向を目指しているのか」「それに向けて自分が貢献できることは何か」を真剣に考えながら参加するようにしました。

性別に関係なく、リーダーというのは、新たなことにチャレンジする存在です。

自分を超えるリーダーが生まれてくるように、自分たちのチームがさらなる高みを目指せるように、「後進のために何ができるか」という視点を持っておくことも大切です。

私たちがいまリーダーの立場にいることができるのも、先輩リーダーがつくってくれた土壌のおかげだということを、時には思い出したいものです。

なぜ「サウジの女性リーダー」は輝いているのか?私が、女性も男性も関係なく優秀なリーダーになり得ると確信したのは、サウジアラビアを訪問したことがきっかけです。

サウジアラビアは、イスラム教の戒律が厳しい国で、親族以外の男女が同じ部屋で過ごすことは許されていません。

結婚披露宴ですら、新郎と新婦が別々の部屋に分けられ、男性だけ、女性だけでお祝いをするくらいです。

こうした話を聞くと、ますます「サウジアラビアは女性が抑圧された国だ」という印象を抱くかもしれませんが、現実はかなり異なります。

これまで、サウジアラビアを4度訪問したなかで、最も衝撃を受けたのは、商工会議所を訪問したときのことです。

この国では商工会議所も男女別に存在します。

私が訪問したのはもちろん「女性商工会議所」で、建物に一歩入ると、もうそこには女性しかいません。

受付から会議所会頭まですべて女性で、登録しているメンバーも女性のみです。

訪問当時の首都リヤドの人口は130万人で、リヤドの女性商工会議所のメンバー数は1万人でしたから、けっこうな数の女性経営者がいることがわかります。

女性経営者が財務相談をするための銀行も「女性支店」であり、支店長以下全員が女性です。

サウジの女性商工会議所メンバーたちと交流を深めるなかで見えてきたのは、女性しかいない環境で仕事をしている女性には、「男性のサポートをする」という意識がそもそもなく、それぞれがそれぞれに適したポジションで責任を発揮できるということです。

「女性は男性のサポート」という刷り込みは、男性と女性が一緒に働いているからこそ生まれます。

仕事の環境に女性しかいなければ、女性でもリーダーとしての役割をごく自然に担うことができるのです。

ですから、もっと女性に活躍してもらいたいのであれば、日本でも、まずは女性だけのチームをつくり、女性だけで考え、決めていくプロジェクトをつくってみるのもいいかもしれません。

しかし、それはチームをつくるだけでなく、通常のプロジェクトと同じ基準で結果責任を問い、成果を判断することが不可欠です。

意識を変えるためのこんな環境づくりも、リーダーの役割です。

「国・会社にお願いする」から「」サウジアラビアでは、いくつかの女子大学も訪問し、女子学生たちに向けて日本の女性の活躍状況などをデータとともに話しました。

出産・子育て時期に女性の就業率が谷を描く、いわゆる「M字カーブ」のグラフを見せたところ、女子学生たちから「なぜ日本人女性は、出産・子育てで仕事を辞めなくてはいけないのですか?」という質問がありました。

保育所や就労時間などの事情を説明すると、さらに学生たちからは「どうして原因がはっきりしているのに、解決しようとしないのですか?」「保育所が足りないならば自分たちでつくればいいし、もっと就労時間の融通が効く職場をつくればいいのでは?」という意見が次々に出ました。

日本では、そうした環境改善を政府や雇用主に対して要望することが多いですが、彼女たちが疑問に思っていたのは、「政府や会社に期待するのではなく、なぜ課題を解決する事業を、自分たちで起こそうとしないのか?」ということでした。

「世の中にないならば、つくればいい」——これはまさに起業家の発想です。

サウジアラビアのある女子大の学長は、「我が大学は、JobSeeker(就職先を探す人)を育てるのではなく、JobMaker(仕事を生み出す人)を育成することを目的にしています」と言い切っていらっしゃいました。

誰かに改善を求めるのではなく、自分たちで改善策を見つけ出し、実行する。

それは女性に限らず、およそあらゆるリーダーに必要な精神です。

 

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