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「先代社長からの『社長は完璧であれ』というプレッシャーが半端ない」介護施設経営   40代  坂井玲子さん(仮名)

社長は完璧でなくてはならない!「どうして感情セラピストの養成講座に参加されたんですか?」  私からの問いに、坂井社長は開口一番、こう答えました。「完璧になれると思ったからです」  もともと坂井社長は、大きな病院で部長クラスの看護師をされていました。  実家は、介護施設を何軒も経営していて、お父さんから「看護師を辞めて、施設を継げ」と迫られ、父親の経営していた施設を引き継ぐ形で社長になったそうです。  お父さんからの社長教育は強烈でした。  曰く、「社長は隙を見せるな」「社長は誰よりも頑張れ」「社長は誰よりも仕事をしろ」。  坂井社長が、「社長は完璧でなければならない」と思い込むのに、そう時間はかかりませんでした。  坂井社長のように、先代社長(多くの場合、父親)からの教えが一種のトラウマになり、強い思い込みを持ってしまうケースは、多々見られます。  会社を継ぐことはありませんでしたが、私自身が父の会社に入社し、父の経営哲学を引き継いで仕事にあたっていたので、親の影響力の大きさというものがよくわかります。  先代社長である父の教えを受けて、「社長たるもの、完璧でなければならない」と思い込んでしまった坂井社長は、感情セラピスト養成講座を受ければ自分は完璧になれる、と誤解したようなのです。  実のところ、感情セラピストになるにあたっては、「ダメな自分を認めてあげて、ダメな自分でもいいや」と思うことが1つのスタートです。  これは、「完璧であれ」という考えとは真反対のもの。私は、坂井社長に伝えました。「感情セラピストの養成講座を受けても、完璧にはなれないと思います。自信は持てるようになると思いますが、完璧にはなれないと思います」「自分の弱さ」を口にできるという進歩  こうして感情セラピスト養成講座に参加した坂井社長でしたが、「完璧になりたいのに、逆に自分のダメなところを見つけてしまったら、それを埋めるという余計な仕事が増えてしまう」と、そんなふうに思えて、最初は講座が苦痛だったそうです。  でも、あるとき、彼女が講座の参加者を前にして、こう言ったんです。「私、自信がないんです」  それまで人前で弱さを見せることがなかったのに、意外な言葉でした。  発言の真意を聞くと、「この場では、本音を言わないと、はじまらないと思ったので」と……。  この本音がポロリと出たようなひと言が、講座の参加者たちに認められたことがきっかけとなり、坂井社長のなかの「完璧でなければならない」という思い込みのハードルが一気に下がったようでした。  実は、このように、「言葉に出せるようになる」というのは、大きな進歩なんです。  人って、心の奥底に、頑なに握りしめている思い込みは、言葉に出すことすらできません。  売上に執着している人は、「今月は売上が未達でもいいや」って口にできません。「ウソでもいいから、言ってみて」と促しても、口にできないんです。  ですから、「ウソでもいいので口にできる」だけでも、大きな進歩。  もちろん、本気で口にできるようになると、一気に解決なのですが、まずは、口に出せるようになることが第 1段階なのです。  坂井社長は「自信がない」と、人前で口に出して、自分の弱みをさらけ出したことで、「完璧でなければならない自分」から、「弱みがあって、それを認めることができる自分」へと、1つ階段を登ったわけです。  私は坂井社長に伝えました。「お父さんのやり方はお父さんのやり方ですから、完璧主義でオーケーです。でも、今の社長は坂井さんなのですから、やり方は自分で決めることが大事です。お父さんのやり方をリスペクトするなら、そのままコピーしてもいいし、やり方は坂井さんの自由です。ただ、自分が気持ちいい、やりたいと思うやり方をしてください。そうでないと、たぶん、苦しいと思います」社長という重い鎧  そんなアドバイスをしてから、しばらくして、彼女にとって大きな出来事がありました。  社内で「完璧な社長」を演じていた坂井社長には、当然のように、周りからいろいろな相談がまわってきていました。  それこそ、各施設の事務所から、「プリンターが故障してしまったのですが、どうしましょう?」って、そんな相談まで持ちかけられていたのです。  社長に就任以来、そんな細かなことまで、すべて受け入れていたのですが、感情セラピストの養成講座を受けたことによって心境の変化があったのでしょう。ある日、社員の 1人にこう言ったそうなんです。「ごめん、これから私、どうでもいいことを言うから聞き流してね……。『私はプリンター屋さんじゃないっつ ーの!  ネットで調べれば、どうすればいいかわかることを、なんでいちいち聞いてくるかな!』……ごめん、今のは、独り言ね」  ずっと言えなかったことを、思い切って口にしたのでしょう。言われた社員は、さぞかし、驚いたことでしょうね。  この出来事は、坂井社長のなかで、「社長という、重い鎧」が脱ぎ捨てられた瞬間でした。  以来、すっかり、心が軽くなったそうです。  社長というのは、たくさんの鎧を着せられているような仕事です。本当は自分で望んで着ているのですが、まずは自分の思いを大切にする、ここに気づく

ことができません。  自分が鎧をたくさん着ていたことに気づいて、それを脱ぐことができた坂井社長の言葉が、秀逸でした。「実は、ずっと自分のことが大嫌いだったのに、最近、鏡のなかの自分がすごくキレイに見えるんです。そんなふうに思える自分に驚いています」  この言葉には、私も驚きました。そして、感動しました。  感情が整って自由になると、お顔が変わってきます、内面の美しさがおもてに出るのかもしれません。  大ヒットしたディズニー映画、『アナと雪の女王』のなかに、ものを凍らせてしまう秘密の力を持ったエルサが、すべてを解放して「レット・イット・ゴー(ありのままで)」を歌う名シーンがありましたよね。  ずっと辛い思いをしていたエルサが吹っ切れた表情で歌う姿が、多くの人たちの心をつかみました。私は、社長だって、「ありのまま」で良いと思っています。そうでないと、自分を認められません。そして、自分を認められない社長は、社員を認めることもできないのです。

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