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「人を動かす」から「人が動く」へ

はじめに——内向型リーダーのための導火線毎週1人ずつ成長企業のリーダーにお会いし、マンツーマンで徹底的にお話を聞く「経営者インタビュー」を始めて、かれこれ15年近くになりました。

大手企業から中小・ベンチャーまで、業種・業界も千差万別。

少なく見積もっても、1000人以上のトップリーダーたちにインタビューしてきた計算になります。

膨大な数のリーダーたちから、さまざまな学びを得てきた私がいま感じているのは、求められるリーダーシップが変化しているということ。

その変化をひと言で表現したのが、「最高のリーダーは何もしない」です。

どういうわけか、いま最前線で活躍している優秀なリーダーほど、リーダーらしい仕事を何もしていないように見えます。

だとすると、これからのリーダーには〝ある種の発想転換〟が必要ではないか——。

これが、本書の出発点です。

「世界中のトップリーダー」から「」「リーダーの話をもっと聞きたい」という私の思いは、自分自身が1人のリーダーとして歩むなかで自然に生まれてきたものです。

私が最初にリーダーになったのは、20代後半のこと。

「日本初の投資信託評価会社」を起業し、経営者になりました。

小さな所帯ながら1つの会社を切り盛りし、創業から4年後には、同社を世界的格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)に売却しました。

業界初の事業に挑戦し、走り続けた4年間で得たものは、計り知れません。

「どんなちっぽけな人間でも、社会を変える存在になれる」——起業を通じて手にしたその実感を、もっと世の中に伝えたいとの思いから、「シンクタンク・ソフィアバンク」の設立に参画しました。

創業メンバーとして新たな歩みをはじめると同時に、雑誌やテレビの企画を通じて、起業家へのインタビューもはじめました。

そして訪れた1つの転機が、NHK教育テレビ「21世紀ビジネス塾」キャスターへの就任です。

全国各地の元気な中小企業を紹介するこの番組では、スタジオでの司会だけではなく、毎週、現場に出向いてさまざまなリーダーを取材する機会もいただきました。

この経験を通じて、私は「小さな企業の現場にこそ日本の未来がある」と確信するようになりました。

決して恵まれているとは言えない環境の下、従業員や取引先、地域への責任を全うすることに人生をかけているリーダーたちの言葉に勇気と希望をいただき、「これこそ全国の方々に伝えるべきことだ」と心底思うようになったのです。

NHKのキャスターを終えた私は、さらに「藤沢久美の社長トーク」というネットラジオ番組を立ち上げ、新興市場に上場している企業のリーダー、ユニークなビジネスを立ち上げたリーダーたちをゲストに招き、対話する機会を持つようにしました。

毎週のように異なる分野のリーダーたちと対話する体験は、大いに刺激になります。

ビジネスも人生も、それぞれに個性的で、さまざまな仕事と生き方があることを学んできました。

そして、さらに私の視野を広げてくれたのが、「ダボス会議」を主宰する世界経済フォーラムからヤング・グローバル・リーダーに選出されたことでした。

それ以来、ビジネス・NGO・アカデミア・政治・文化・スポーツなど、世界の各分野のリーダーたちと交流する機会にも恵まれています。

日本の片隅の小さな企業のリーダーから、世界を動かすグローバル企業のリーダーまで、ありとあらゆるリーダーたちと対話するうちに、気がつくと、「リーダー観察」が私のライフワークになっていました。

内向的な人ほど、リーダーになるべき時代いま起きているリーダーシップの変化について、簡単に触れておきましょう。

リーダーというと、「即断即決・勇猛・大胆」「ついていきたくなるカリスマ性」「頼りになるボス猿」というイメージを持つ方が多いのではないかと思います。

しかし、そうしたリーダー像は、過去のものになりつつあります。

いま最前線で活躍しているリーダーたちは、権限を現場に引き渡し、メンバーたちに支えられることで、組織・チームを勝利へと導いています。

「優秀なリーダーほど『リーダーらしい仕事』を何もしていない」というのは、まさにそういうことなのです。

そして同時に、一流のリーダーの多くは、内向的で、心配性で、繊細であるという点でも共通しています(無論、「ポジティブな意味で」なのですが……)。

「社長トーク」の収録の際に、大きなギャップを感じることも増えてきました。

社長のもの静かな佇まいを見ただけでは、その会社の圧倒的な業績とイメージがつながらないのです。

本書を手にした方のなかには、「自分はリーダーに向いていないのではないか?」「リーダーの仕事を全うできていないのではないか?」という問題意識をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、その心配自体が「リーダーとしての素質」になり得るということをまずお伝えしておきたいと思います。

あと必要なのは、発想の転換だけです。

本書をきっかけに〝リーダーらしい仕事〟を手放し、本当のリーダーの仕事へと向かっていただきたいと思います。

あらゆるリーダーに効く6つの「発想転換」この本では「社長トーク」などを通じて私が学んだ「新しいリーダーシップのエッセンス」と、それを身につけるために必要な「6つの発想転換」を紹介していきます。

理論やフレームワークを解説した抽象的な本にならないよう、誰もが知る大企業から、ニッチなジャンルで成功を続けている中小企業に至るまで、私が自分の目で見たり、耳で聞いたりした具体的な事例をベースにお伝えしていきます。

また、「読んで終わり」ではなく、ビジネスの現場にも活かしていただくため、みなさんの日々の仕事に置き換えたり、重ねたりできるようなエピソードも盛り込むようにしました。

本書で紹介する事例やエピソードは、経営者のものが中心ですが、中間管理職やプロジェクトリーダー、アルバイトを束ねる店長さんなど、立場や組織形態が違えども、リーダーとして考えるべきことは「1つ」なのだと実感していただけると思います。

誰よりもまず私自身が、その効果を実感しています。

いま私は、ひょんなことから文部科学省で15名ほどの小さなチームのリーダーをしているのですが、このプロジェクトでも経営者の方々から得た知恵が日々とても役に立っているのです。

「組織やチームが自分の指示どおりに動かない」「現場に思いが届かなくて、自分が動き回らざるを得ない」「リーダーになるつもりなんてなかったのに……」そんなリーダーたちの悩みを乗り越える「発想転換」への道筋を、読者のみなさんと一緒に見つけていきたいと願っています。

では、「最高のリーダーは何もしない」とは、いったいどういうことなのか?さっそく、これについてお伝えしていきましょう。

目次最高のリーダーは何もしないはじめに——内向型リーダーのための導火線「世界中のトップリーダー」から「小さな組織のリーダー」までを取材!!内向的な人ほど、リーダーになるべき時代あらゆるリーダーに効く6つの「発想転換」目次

第1の発想転換「人を動かす」から「人が動く」へなぜ優秀なリーダーは「何もしない」のか?

最高のリーダーは「指示」しない「何もしないリーダーシップ」が浸透している職場最も大切な仕事は「目的」をつくることリーダーのビジョンは「マニュアル」を超えるなぜ「指示しない職場」で業績が上がっているのか?「動き回るリーダー」から「静かなるリーダー」へ従来のリーダーシップは「遅すぎる」理想的なリーダーは「2つのスタイル」を併せ持つ仕事に徹するほど、「何もしていない」ように見える「型を教え込む」から「思いを伝えきる」へ「命令を遂行する部隊」から「自分で判断する仲間」へリーダーの年齢は問われなくなる「何もしないリーダー」は2つの能力を備えている「なんとなく働いている人」をもっと幸せにする役割世界のリーダーが「原点回帰」している危機に直面したリーダーが「変えたこと」と「変えなかったこと」次世代リーダーシップは「伝統ある同族企業」に学べなぜ「日本型リーダー」がアメリカで再評価されるのか?トヨタが復活し、シャープが凋落する理由

第2の発想転換「やるべきこと」から「やりたいこと」へ「魅力的なビジョン」をつくるには?

「実現したいこと」が決まっている必要はないビジョンは「あとからつくる」もの生き方とビジョンを一致させる——起業家の場合組織の哲学を「翻訳」する——サラリーマン社長の場合既存の土台に「新しい柱」を加える——後継者の場合一流のリーダーは「直感」で決断しているどれだけ相談・調査しても、最後はリーダーの直感直感で決める人の「自信」はどこから来るのか?「自分で探し回る」から「考えながら待つ」へ「偶然の幸運」に恵まれるリーダーの共通点「何もしていない」ときこそ、最大のチャンスが訪れるもの静かな外見、轟音を立てる脳内「心配性」な人ほど、最高のリーダーになる誰よりも「高解像度」でチームを見ているか極端に心配性で、最高にポジティブ「極限の繊細さ」を持つ人だけが、「最強の大胆さ」を手にする

「みんなに相談」から「1人で決断」へ決断の全責任はリーダー1人にリーダーの相談は「壁打ち」であるべき相談されても「指摘」しない

第3の発想転換「命令を伝える」から「物語を伝える」へ人・組織にビジョンを浸透させる

「魅了するプレゼン力」から「共感を呼ぶ説明力」へ「高度なプレゼン技術」は必須条件ではないまずはリーダー自身が「腹落ち」しているか?直感での決断を、論理的な言葉に「変換」する正解がない世界では、「納得感」がすべてリーダーの「声」が最高のチームをつくるビジョンは「耳」から浸透するただの「きれいごと」で終わらせないために腑に落ちるまで「質問」をぶつけてもらう本当の仲間を「選別」するビジョンを浸透させる「同じ釜の飯」の力「合宿」する組織が増えているリーダー同士で「寝食を共にする」機会をつくる「ツールで伝える」から「現場で伝える」へビジョンの語り手としての新人教育担当何度もビジョンを「振り返る習慣」をつくる「社外の人」の言葉の力を借りるリーダーにとって唯一の仕事道具は「言葉」

第4の発想転換「全員味方」から「全員中立」へリーダーは「嫌われない人」を目指せ

傷つきやすい小心者が、優秀なリーダーになるいいリーダーほど、なかなか本音を言わない大局を見ているようで、じつは驚くほど細かいリーダーの行動力は「マメさ」から生まれるトップリーダーたちは、繊細さと大胆さを併せ持つ成長するリーダーは、なぜ「傷つきやすい」のか?好かれなくてもいい。

だが、嫌われてはいけない「リーダーは嫌われ役」を信じてはいけないビジョンなきリーダーの末路としての「ハコモノ」敵をつくらない人が、結局いつも成し遂げる「嫌われないリーダー」がやっている、たった1つのこと本当のリーダーは孤独ではない最高のチームづくりは「女性」がカギ女性メンバーは「炭鉱のカナリア」である女性リーダーが少ない、本当の理由「後任リーダー」のことを考えていますか?なぜ「サウジの女性リーダー」は輝いているのか?「国・会社にお願いする」から「ないなら自分でつくる」へ

第5の発想転換「チームの最前線」から「チームの最後尾」へ「任せて見守る」チームマネジメント

「手をかける」から「目をかける」へホウレンソウ禁止で「自ら動くチーム」をつくる「部長は仕事をするなよ」の真意メンバーの現場力は「プライベート」で培われるマニュアルには「余白」があったほうがいいなぜノルマがないのに、成長を続けられるのか?「損をしない」か見極め、「何もしない」に徹する「利益」がなければ、ビジョンは実現しない「人材配置とハンコだけ」がトップリーダーの理想形「目に見えないリターン」も見通せているか?危機にあってもメンバーを信じきる

第6の発想転換「きれいごと〈も〉」から「きれいごと〈で〉」へリーダーに求められる「社会貢献」の視点

「会社のために」から「社会のために」へ若いメンバーは、何に「飢えている」のか?「新しいハングリー精神」をビジョンに組み込む貢献が「見える化」されると、人は自ら動きはじめる「チームを巻き込む」から「顧客も巻き込む」へ「きれいごと」が顧客に届くと、社会が変わる「取引先」にさえもビジョンは浸透する「ビジネスと貢献」から「ビジネスで貢献」へ「社会問題の解決」が世界のリーダーの常識にリーダーの「きれいごと」がイノベーションを生み出した成長するリーダーの条件——他者から素直に学ぶことおわりに——リーダー観察者ではなく、1人のリーダーとして

最高のリーダーは「」「何もしないリーダーシップ」が浸透している職場何人かと一緒に、ある居酒屋で食事をしていたときのことです。

注文したものはほとんど食べ終えていたのですが、炭火焼の地鶏が食べきれず少し残ってしまいました。

そこに若い女性の店員さんがやってきて、こう言いました。

「こちら、別の味に変えてお持ちしましょうか?」半信半疑ながらお願いしてみると、ポン酢で和えられた地鶏の炭火焼が、小鉢に盛りつけられて運ばれてきます。

これがとてもさっぱりとしておいしくて、あっと言うまに平らげてしまいました。

再びやってきた店員さんに「おいしかったです!」と告げると、今度は、先ほど下げた炭火焼の鉄板に何かを盛りつけて運んできてくれました。

「鉄板に残っていた鶏の脂でつくったガーリックチャーハンです」こちらもいただいてみると、たしかにおいしい。

しかも、どちらも無料のサービスなのです。

「社員さんですか?」——あまりに見事な対応に感動して、こちらが思わず尋ねると、なんと彼女はアルバイトだとのこと。

「ウチって、ヘンなお店なんです……」——照れ臭そうに笑ってから彼女は言いました。

「生産者さんに感謝しながら働いているので、お客様にはなるべく残さず食べていただきたいんです」そのあともいろいろとお話を聞いてわかったのですが、このアルバイトさんの対応は、マニュアルや店長からの指示に基づいたものではなく、お客様の表情や注文状況を見ながら、彼女の判断で自由にやっていることなのだとか……。

そして、最後に確認したのが、お店を経営している会社の名前。

「エー・ピーカンパニー」という会社でした。

最も大切な仕事は「」株式会社エー・ピーカンパニー(本社東京都)は、「塚田農場」「四十八漁場」などの居酒屋チェーンを全国に展開する会社です。

偶然にもその数カ月前、同社の創業者で代表取締役社長の米山久さんには、「社長トーク」に出演いただいていました。

アルバイトの女性から「エー・ピーカンパニー」の名前を聞いたとき、私は「なるほど!」と思わず膝を打ちました。

彼女の振る舞いや「生産者さんに感謝しながら働いている」といった言葉が、米山さんから伺っていたお話と、見事に符合していたからです。

エー・ピーカンパニーの特徴は、食品の生産(一次産業)から流通・加工(二次産業)、販売(三次産業)までを一貫して手がけるビジネスモデルにあります。

同社ではこれを「生販直結モデル」「六次産業化」などと呼んでいます。

宮崎県の地鶏農家さんと出会った米山さんが、「日本の食文化を支える生産者さんたちのために、自分にできることは何か?」と自問自答するなかから、このビジネスモデルは生まれました。

実際、「一次産業の方々の生活をもっとよくしたい」「後継者に困らない環境をつくりたい」「地方の活性化を目指したい」という米山さんの思いが、お店の隅々にまで行きわたっています。

エー・ピーカンパニーには、本書が主題とするリーダーシップの典型を見てとることができます。

現場で働く人たちの「マニュアルに収まりきらないアクション」の根本にあるのは、米山さんというリーダーが打ち出した「ビジョン」です。

ビジョンとは、ひと言で言えば「働く目的」です。

ビジョンがそれぞれのメンバーに浸透しているからこそ、それが現場での行動となって現れる。

リーダーの最も大切な仕事は、ビジョンをつくり、それをメンバーに浸透させることなのです。

リーダーのビジョンは「」同社では、実際の生産現場を見学した社員が、アルバイトの方々に現場を疑似体験させる研修を行っています。

もちろんこれは、「一次産業の方々の現状を知り、何ができるか考えてほしい」という米山さんの思いをメンバーに伝えるためです。

たとえば、養鶏場で生まれたかわいらしいヒヨコが次第に成長して鶏になり、屠殺されて解体される——そんな過程をすべて見てもらうといいます。

ショックを受けるスタッフもいるそうですが、鶏たちの命を自分たちがいただいていること、そして鶏を精魂込めて育ててくれている養鶏農家の方々の仕事ぶりを知ることで、スタッフたちは大切な気づきを得ます。

生産・流通・販売までのプロセスをしっかりと認識した途端、社員やアルバイトたちは、こう考えるようになります。

「生産者の方々の努力や鶏の命を無駄にしたくない」「それには、お客様に全部残さずおいしく食べてもらわないと……」もちろんエー・ピーカンパニーの居酒屋にも最低限のマニュアルは存在するでしょう。

しかし、より深いところで、社員やアルバイトたちを突き動かしているのは、リーダーが伝えたビジョンなのです。

なぜ「指示しない職場」で業績が上がっているのか?特筆すべきは、リーダーとしての米山さんの究極の仕事が「ビジョンの共有」だということです。

「お客様に残さずに食べきっていただくためにどうすればいいか?」について、何か具体的な指示があるわけではなく、そこは各メンバーに委ねられています。

事実、「塚田農場」の各店舗には、自由予算枠が与えられています。

その範囲内であれば、現場の判断でさまざまなサービスを提供できるのです。

具体的なアクションは、現場のスタッフによって異なりますが、それぞれが根本に持っている目的は同じです。

「お客様に満足してもらって、リピーターになってもらえれば、原材料を安定的に仕入れることができる。

そうすれば生産者さんたちの生活も安定する」——そんな同じ目的に基づいたストーリーが見えているからこそ、細かなマニュアルで指示されなくても、メンバーそれぞれが自発的にお客様の満足度を高めようと工夫できるのです。

これが実際の業績にもつながっており、同社のリピート率は居酒屋業界平均の倍以上だというから驚きです。

まさに、ビジョンを共有した現場の工夫がなせる技だと言えるでしょう。

「動き回るリーダー」から「」従来のリーダーシップは「遅すぎる」本書がお伝えしようとしている新しいリーダーの典型的なあり方として、エー・ピーカンパニーの事例を紹介させていただきました。

ここで、なぜこうしたリーダーシップが生まれてきているのかを、社会の変化と合わせて整理しておきましょう。

21世紀にかけて急速に進んだ情報通信革命が、ビジネスのあり方を大きく変えました。

かつては、一定の枠組みの下で、ゆっくりと小さな改善をしながら仕事をしていれば、会社や組織は安泰でした。

むしろ、ルールやマニュアルからはみ出ようとするメンバーがいないか注意しながらチームを統率する、軍隊の隊長のようなリーダーシップが求められていたのです。

しかし、いまではこうしたリーダーシップはうまく機能しません。

従来の「強いリーダーシップ」が機能不全に陥った原因は、大きく2つあります。

1つは、消費者の価値観やニーズの多様化です。

インターネットをはじめとした情報通信の発展によって、かつて知りようがなかった「小さな価値観・ニーズ」が顕在化し、それがダイレクトに企業や組織に伝わるようになりました。

同時に、モノやサービスが充実したことで、量から質へ、「納得できる価値があるもの」へと人々の嗜好が移ってきました。

大量生産された商品や画一的なサービスではなく、精神的充足が得られる商品、特別感のあるサービスを求める傾向が強くなってきたのです。

もう1つは、変化のスピードです。

各人の嗜好が多様であるだけでなく、その嗜好自体が大変なスピードで移ろいます。

「先週喜ばれたものが、今週には陳腐化している」ということも起こる時代になりました。

こうした状況下で、リーダーが自社の商品・サービスのすべてを把握し、それぞれに対して意思決定をしていくのは不可能です。

また、現場がマニュアルだけに頼っていたり、個別のケースごとにリーダーの指示を仰いだりしていると、柔軟かつ素早い対応ができずに、お客様のニーズとのあいだにズレが生じることになります。

つまり、従来のトップダウン型リーダーシップだけでは「遅すぎる」のです。

めまぐるしく移り変わる複雑なニーズに対応していくには、現場にいるメンバーたちが自律的に動き、個別に対応するほかありません。

理想的なリーダーは「」そして、それを実現するための最適解が、「働く目的」をメンバー全員に明確に伝えていくビジョン型リーダーシップです。

これからのリーダーの仕事は、ビジョンをつくることであり、それをメンバーに浸透させることなのです。

ですから、その先の具体的なアクションは、メンバー個人に委ねることになります。

現場に命令を出したり、メンバーの動きを細かく管理したりするといった「管理職的な口出し」は、もはや不要になりつつあります。

しかし、経営者ならまだしも、現場のリーダーをしていると、現場が見えるがゆえに、細かな指示を出したくなるものです。

メンバーと同じ目線で動きすぎて、忙しくなってしまっているリーダーも散見されます。

「命令や指示をしないなんて、現場のプレイングマネジャーには無理ですよ!」という反論も聞こえてきそうですが、そこは程度の問題です。

まったく指示をしないという選択肢はないかもしれませんが、日ごろの指示を、一度冷静に見つめ直してみると、言わなくてもよかったことや、メンバーの自主性を阻害しているものが見えてくるはずです。

リーダー(Leader)とは、「リード(Lead)する人」ですから、私たちはどうしても「みんなを力強く引っぱっていく役割」をイメージしがちです。

しかし、そうではないリードの仕方もあるのです。

かつてのように、昇級・昇進やその他の信賞必罰によってメンバーの行動を制限していくのではなく、メンバーがワクワクして自ら動き出すような目的を提示し、現場に任せるのが新しいリーダーシップのかたちです。

もちろん、組織やチームが危機に直面し、メンバーが右往左往している局面では、全権を担って矢面に立ち、時には剛腕をふるって組織を守り、時には敵をつくりながらも力強くチームを牽引していく、そんなリーダーが求められます。

たとえば大災害のときには、強烈なリーダーがいて初めて多くの人の命が救われるということを、多くの日本人が実感したと思います。

つまり、カリスマ型リーダーを全否定し、ビジョン型リーダーだけを肯定したいわけではありません。

「強いリーダーシップを発揮できる素地を持ちながらも、平時にはビジョン型に徹する」というように、状況に応じて両方のリーダーシップを使い分けられる人こそが、理想的なリーダーです。

仕事に徹するほど、「」とはいえ、「社長トーク」に出演していただいた経営者の方々を見ていても、いまは「人をついてこさせる」とか「メンバーを使う」といった、ある種の「上から目線」を連想させるような言葉遣いをする人はまずいません。

「先頭に立ってグイグイとみんなを引っ張っていく」というよりも、「そこに座って思いを伝えているうちに、みんなが自然と動いてくれている」というイメージのリーダーが多いのです。

ビジョンに基づいてメンバーが自律的に動くチームをつくれれば、リーダーは現場への指示に時間を奪われなくなります。

そこで生まれた時間を使って広く世の中を観察し、次なる展開を考え、変化に備える——こうした好循環を生み出し、メンバーとともに成長する組織をつくることこそが、これからのリーダーの仕事です。

組織やチームの誰よりも静かに考え続けること。

未来を見つめ続けること。

そんな「本来の仕事」にリーダーが徹すれば徹するほど、その姿は「何もしていない」ように見えるのです。

「型を教え込む」から「」「命令を遂行する部隊」から「」ここで、現場に求められる対応スピードが上がっている事例を紹介しましょう。

ありとあらゆるものにセンサーや通信デバイスが搭載され、モノ同士が情報交換をするIoT(InternetofThings―モノのインターネット)というトレンドが最近話題になっています。

この動きは、ドイツが数年前に「インダストリー4・0」という国家プロジェクトを掲げ、ものづくりの分業体制や産業構造にITを取り入れた革新を起こそうとしたことからはじまりました。

その結果、個別対応の商品を量産品並みのスピードとコストで生産するのがあたり前になりつつあります。

素材メーカーでさえも、最終顧客の嗜好をいち早く捉えて開発していかなくては、市場のスピードについていけないと言われるほどです。

そんな変化の真っただ中にあるヨーロッパの製造業の方から聞いた話です。

イギリスのある補聴器メーカーでは、オーダーメイドの補聴器を量産型のものと同程度のスピードと価格で製造・販売する取り組みをはじめました。

具体的には、各店舗に設置された3Dスキャナを使って顧客の耳の形状を測定し、ぴったりとフィットする補聴器を3Dプリンタで数分のうちにつくってしまうのだそうです。

これまでは、既製品の形状が耳に合わず不便な思いをしていた人も多かったのですが、技術の進歩によって、そんな顧客の悩みが解決されると同時に、スピードと価格の壁も崩されていったという事例です。

しかし、このサービスで注目すべきは、じつはテクノロジーではなく人です。

というのも、耳の形状を測る計測担当者のこだわり度が、製品の質を大きく左右するからです。

つまり、計測担当者がこの仕事にどれほど真剣に取り組み、顧客を思うかにかかっているのです。

サービスもものづくりも、ますます個別対応が必要とされるようになってきたいま、それに対応する人・組織の質的向上が求められています。

リーダーの指示やマニュアルに従って忠実に動く人ではなく、リーダーの「ビジョン」に基づき、自ら考え行動できるメンバーが、仕事の成否を左右する時代に入ったのです。

これまでは、みんな同じように仕事ができるよう、組織独自の「型」を身につけさせるのがリーダーの仕事でした。

「これさえ覚えておけば、どんな人でもある程度までならば結果を出せる」という水準に育成すれば、なんとかなる環境だったわけです。

しかし、消費者のニーズが1分1秒で変わっていくような世界では、新たな課題を自分で発見し、その解決策を自ら考え、実行できる人材を育てる必要があります。

リーダーが個別のニーズや方法論について、1つずつ部下に教えていては間に合わないのです。

リーダーの年齢は問われなくなるビジョン型リーダーシップを取り入れているのは、製造業や小売業だけではありません。

極端な言い方をすれば、どんなビジネスであろうと、ビジョン型のリーダーシップを取り入れていかなければ、時代に置いていかれかねないのです。

たとえば、金融機関。

アメリカのある大学の研究には、「これから15年後には、現在ある仕事の50%がコンピュータに置き換わっている」という予測があります。

そのなかには、金融機関の業務、税理士、会計士の業務なども含まれています。

何も対応しないでいれば、日本の金融機関であろうと、15年もしないうちに経営危機に直面するかもしれません。

ITがさらに発展し、人工知能(AI)が進歩すれば、資金決済や財務審査、会計・税務処理などは、コンピュータがすべてやってくれるようになります。

簡単な問い合わせや窓口業務も、AIを搭載したロボットの自動応答でかなり対応できるようになるでしょう。

また、これから顧客となる若者たちは、ほぼ100%スマホ世代ですから、ウェブ上で完結するサービスを求めてくるはずです。

そうした環境下で、金融機関は未来に向けて、どんな事業展開を仕掛けていくべきなのか?——これを考えるのが喫緊の課題です。

しかし、金融機関の経営陣のなかに、スマホを使いこなしたり、ITに通じていたりする人はどれほどいるでしょうか?あまりいないと思います。

これからの事業を考えるにあたっては、スマホ世代に近い人たちに新たな金融業を牽引してもらうのがいちばんです。

リーダーたちは、未来の大きな流れを現場に指し示したら、あとは次の世代を担う若者たちに具体的な未来像を描いてもらう勇気が必要なのです。

時代の大きな変化は、過去の常識にとらわれない若い世代へと、リーダーの年齢を引き下げていくことになるでしょう。

年齢に関係なくリーダーとして活躍してもらうためにも、ビジョンの大切さを知っておくことが重要です。

「何もしないリーダー」は2つの能力を備えているだからと言って、現場にすべてを任せればいいかというと、そうではありません。

メンバーが個別の判断を下す際のよりどころ——すなわちビジョンを伝えるのは、ほかの誰でもなくリーダーの仕事です。

したがって、リーダーには次の2つの能力が求められます。

メンバーが共感して自ら動きたくなる、魅力的なビジョンをつくる力

ビジョンをメンバーにしっかりと伝えて浸透させる力ビジョンとは「リーダーが実現したいこと」だと言い換えてもいいでしょう。

しかし、「実現したいこと」であれば何でもいいかというと、そういうわけではありません。

やはり「何を実現したいのか」によって、人が動きたくなるかどうかは大きく変わってきます。

一方で、どんなにすばらしいビジョンをつくっても、それがメンバーに伝わっていなければ、ただの「きれいごと」「お題目」で終わってしまいます。

優秀なリーダーほど、ビジョン策定に費やしたのと同じ、またはそれ以上の情熱を持って、「どうすればこの思いをメンバーにわかってもらえるだろうか」「どうすればこのビジョンが腑に落ちて、自分から動きたくなってくれるだろうか」に知恵を絞っています。

「なんとなく働いている人」をもっと幸せにする役割ビジョンをつくるということは、組織・チームに所属するメンバーたちの仕事を「定義」することだとも言えるでしょう。

つまり、「何のために働いているのか?」を考えるための土台を、メンバーそれぞれに用意するのです。

「リーダーが〝働く意味〟まで用意するなんて……押しつけがましくないかな?」と思われるかもしれません。

しかし、考えてみてください。

どれくらいの人が明確な目的意識を持って働いているでしょうか?ほとんどの人は「仕事で実現したいこと」についてはっきりとしたイメージを持っているわけではありません。

「なんとなく」とか「ちょっとしたご縁で」いまの会社で働くことになったという人もいるでしょう。

働く人たちは、「この会社は『生産者の人たちの暮らしをよくする会社』であり、あなたの役割は仕事を通じてそれを実現することだ」といったストーリーを必要としています。

ビジョンが指し示す「仕事の目的」に共感できれば、それを実現する喜びを味わうために、人は誰かに指図されなくても、自らの腕を磨きはじめます。

そして、働く1人ひとりが、自らの成長を喜べるようになれば、それはまさに最高の職場と言えるでしょう。

世界のリーダーが「」危機に直面したリーダーが「」「」松阪牛や黒毛和牛で有名な株式会社柿安本店(本社三重県桑名市)は、1871(明治4)年創業という老舗企業です。

精肉の販売を基幹事業の1つとしてきた同社は、この20年間のうちに2度の危機に見舞われました。

1度目は、BSE(牛海綿状脳症)、いわゆる狂牛病が問題になったとき。

牛肉がパタリと売れなくなりました。

同業者みんなが「大変だ!」と焦るなか、同社は「ピンチをチャンスに」の発想で、牛肉ではなくサラダを中核にした新たなビジネスモデルをつくり、積極的に出店することで黒字にしました。

当時、創業の地の精肉店本店で、実験的に販売していたサラダがお客様に好評だったため、それを一気にメインに据えるという大胆な決断をしたのです。

2度目の危機は、東日本大震災でした。

原発事故による放射能汚染が稲わらに広がり、それを餌にする高級牛の買い控えが起きたのです。

高級牛を主力商品とする柿安本店にとっては大打撃でした。

しかし、ここでも同社は、後ろ向きになることなく、いち早く被害対策を講じました。

「いまは、サラダを扱う惣菜事業や、牛肉を扱わないレストラン事業などをブラッシュアップするときだ」と方針を定め、ショッピングセンターを中心に和菓子店を一気に出店するなど、店舗開発にも積極的に打って出たのです。

このようにして同社は、本来なら赤字になってもおかしくない2度の危機を黒字で乗り越えました。

それにしても、惣菜や和菓子などの事業を展開し、多角化経営に舵を切ることに葛藤はなかったのでしょうか?そして、なぜ従業員たちは、リーダーが下したこれらの決断についてくることができたのでしょうか?——それがまず私に浮かんだ疑問でした。

創業から140年以上を経ている同社には、「伝統と革新」という言葉があります。

伝統とは当然、明治4年から受け継がれてきた暖簾に込められた歴史であり、革新とは、つねに新しいことに挑戦しようという未来に対する姿勢です。

柿安の6代目代表取締役社長である赤塚保正さんは、先代から社長を引き継ぐときに、こんなことを言われたそうです。

「これだけ世の中の変化が激しい時代なのだから、変えたいことはすべて変えればいい。

ただし、1つだけ絶対に変えてはいけないものがある。

それは柿安の経営理念だ」同社の経営理念は、「おいしいものをお値打ちに提供する」。

ここには「牛肉」と書かれてはいません。

牛肉以外のものだとしても、お客様がおいしいと思ってくれるものをお値打ちに提供できていれば、理念を実践していることになります。

赤塚さんが大胆な決断を現場の人たちに伝えるときには、それが理念に沿っているかをつねに意識してきました。

危機が起きたときも、「決して人員削減はしない」とまず宣言したうえで、新たなビジネス展開について説明したそうです。

赤塚さんは、日ごろから365日ほぼ毎日、どこかの現場に足を運び、従業員たちと対話する時間を持つようにしています。

赤塚さんが思いを語るだけではなく、従業員たちの声にも真摯に耳を傾けることを大切にしています。

ふだんから言葉のやりとりを繰り返してきたからこそ、従業員たちはトップの決断を信じて受け止めることができたのでしょう。

こうして、多角化経営という大きな転換に際しても、従業員たちは気持ちを1つにして挑戦し、成功を手繰り寄せる結果となったのです。

次世代リーダーシップは「」柿安本店の例が興味深いのは、明治時代に創業された老舗の同族企業が、140年以上経ったいまも、ビジョン型のリーダーシップを実践しているという点です。

日本はいわゆる「100年企業」(創業100年以上の長寿企業)が世界で最も多い国だと言われています。

こうした会社が企業哲学や経営理念を大切にしているということは、さまざまな調査や研究で明らかになっているとおりです。

経営理念というのは、「働く目的」としてのビジョンとほぼ同義だと考えていいでしょう。

一方、企業哲学は、目的に向かって働くときのベースとなる心得であり、行動のための指針です。

つまり、理念やビジョンが時代に応じて変化することもある一方、哲学は不変です。

しかしながら、哲学やビジョンが、額縁に入った「お題目」であっては意味がありません。

これを現場に浸透させることに成功した企業だけが、「100年企業」となる資格を得るのです。

会社が100年を超える歴史を持つということは、当然のことながら、その経営者が何度か交代しているということを意味します。

リーダーが変わっても企業が続いているということは、哲学や理念が一時的に浸透しているだけでなく、世代を超えて継承されているということにほかなりません。

ビジョンの継承という問題を考える場合、やはり同族経営だからこその強みはあります。

寝食を共にする血族同士だから、言葉を超えた価値観を共有できる。

つまり、哲学や理念が世代を超えて受け継がれやすい環境にあるのです。

柿安と同じく三重にある、赤福餅の老舗・株式会社赤福(本社三重県伊勢市)でも、「赤福の社長の役割は、次の世代に伝統をつなぐことだ」と代々言い伝えられているそうです。

日々の生活のなかであたり前のように、過去から預かった伝統を未来へ受け渡していけるのは、まさに同じ家族だからかもしれません。

では、同族企業でなければ、ビジョン型リーダーシップは実現できないものなのでしょうか?なぜ「日本型リーダー」が

アメリカで再評価されるのか?国内では何かと批判の対象になりがちな日本型経営ですが、海外では、世界最多の「100年企業」を生み出してきた経営のあり方として再評価されつつあるようです。

次の一節はハーバード・ビジネス・スクール教授の竹内弘高さんと一橋大学名誉教授の野中郁次郎さんが書いた「賢慮のリーダー——『実践知』を身につけよ」という論文からの引用です。

「日本企業は資本主義化が不十分だと批判されることが多かった。

いわく、投資家へのリターンが十分でない、短期的な株主価値を最大化しない、機動的なオフショアリングを行わない、社員を解雇してコスト削減しない、経営トップのインセンティブとなる報酬を支払わない……。

だがその一方で、日本企業に対する根強い信頼がある。

いわく、優れた日本企業は社会と共生している。

社会目的を持って利益を上げている。

日常的に共通善を『生き方』として追求している。

道徳的な目的を持って事業をしている。

(中略)こうした日本企業の理解は、これからの経営の理論と実践に影響するだろう。

(中略)企業と社会を対立させる古い資本主義とは対照的に、優れた日本企業は、リーダーが社会的目的を持ち続ける限り、資本主義に対する新しい共同体的アプローチの見本となるに違いない」(『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2011年9月号)いくつもの日本企業の例を引き合いに出しながら、リーダーシップの新たなかたちを打ち出したこの論文は、アメリカでも話題になりました。

ハーバード大学などが日本型経営に魅力を感じている理由の1つは、リーマンショックです。

短期的に高い収益を求める効率的経営をよしとしてきた企業の多くが、金融危機とともに廃業を余儀なくされました。

効率こそが経営の要諦と信じてきた経営者たちが、この現実を目の当たりにし、「企業の持続性」を意識するようになったのです。

リーマンショック以降、世界のトップリーダーが集まるダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)でも、企業の持続可能性に関するセッションが設けられるようになりました。

同様の問題意識から、哲学者や宗教者も会議に招かれ、経営者との対話の場が用意されています。

私もダボス会議で、世界のトップ経営者たちが東大寺の北河原公敬長老と対話する席にご一緒したことがあります。

「戦わずに経営を続けるにはどうすればいいか?」「持続する企業になるために、2000年続く仏教から学べることは?」など、世界のトップリーダーたちが、日本型経営に通じる哲学を求め、真剣な眼差しで質問している姿がとても印象的でした。

トヨタが復活し、シャープが凋落する理由日本型経営やビジョン型リーダーシップを考えるうえで、象徴的な事例としてわかりやすいのは、トヨタ自動車やパナソニックのような会社と、シャープやソニーといった会社との比較でしょう。

いずれの会社にも危機はありましたが、トヨタやパナソニックが度重なるピンチをくぐり抜けて復活を遂げているのは、両社ともに、確固たる哲学に支えられたビジョンが継承されているからではないでしょうか。

いまトヨタは、豊田家出身の豊田章男さんが代表取締役社長(第11代社長)をしていますし、絶対的な存在として、その父である豊田章一郎さんがいらっしゃいます。

トヨタとして何を大切にするべきなのかが、現在に至るまで脈々と受け継がれているように思います。

また、パナソニックは、松下家との関わりは薄くなったものの、PHP研究所などに松下幸之助さんの精神が受け継がれていますし、幸之助さんから直接薫陶を受けた人がご存命で、その哲学やビジョンの継承に大きな影響力を持っているように思います。

ものづくりの大切さや働くことの意味、利益は社会に貢献した証であること、また、その利益は「さらに事業を拡大せよ」と社会から委託されたお金であるといった考え方が、同社にはまだ残っているのではないでしょうか。

一方、シャープやソニーでは、創業時の哲学とそれに基づくビジョンが、ある時期から途絶えてしまった感があります。

企業の哲学とはかけ離れた目的を掲げるリーダーが登場したことで、組織を支える「根っこ」がなくなってしまい、従業員たちが依って立つところを見失ってしまったように見えます。

哲学やビジョンは時に軽視されることがありますが、企業の持続性や世代交代の局面では、決定的な差を生み出します。

凋落を嘆かれる会社では、なんらかの理由で哲学やそれに基づくビジョンの継承がうまくいっていないケースが多いのではないでしょうか。

では、そもそもビジョンを生み出すには、何が必要なのでしょうか?次の章では、メンバーたちが自ら動きたくなるようなビジョンを生み出したリーダーたちの特徴を紹介します。

 

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