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「プライドが邪魔をして、社員に弱みを見せられない」スーパーマーケットオーナー社長   50代  新田幸次さん(仮名)

テレビ番組を見て、大ショック「もう、社長をやめようと思っているんです」  スーパーマーケットのオーナー社長として、 7店舗を展開する新田社長は、疲れた表情で私にそう言いました。  新田社長の信条は、「社長たるもの、社員に弱いところを見せてはいけない」。  社長は何でも知っていて、何でもできる。そして人格者でなくてはならない、と自分に課して頑張っていました。  ところが、ある日、テレビのビジネス番組を見てショックを受けます。  その番組で紹介されていたある社長は、あっけらかんと、「社員にいろいろなことを教えてもらって、助けてもらっています」と言い放ちました。部下に自分の弱い部分を平気でさらけ出している。それでいて、社員たちから愛され、信頼もされている。  そんな社長の姿を見て、頑張っている自分が馬鹿らしくなってしまったというのです。  たしかに、ひと昔前の社長像は、威厳があるカリスマでした。そして、そういう社長の下で働けることに誇りを持つ社員も、たくさんいたのではないかと思います。  しかし、現代の若者の多くが求めているのは、ピラミッドのはるか上にいる社長ではなく、時には、自分の気持ちを理解してくれる経営者です。たとえば、 IT企業の若い社長さんは、スタッフと一緒になって同じ目標を目指しますよね。  高校教師が、クラスの雰囲気を盛り上げるために、子どもたちのなかに入って行き、まるで、ガキ大将のように接したら、クラスが1つにまとまって、すごく面白いチームになったという実例も聞いたことがあります。  私に相談してきた新田社長は、まさに昭和タイプのカリスマ経営者を目指していました。だから、社員には絶対に弱みを見せない。そして、月に 1回の店長会議では、メンバーのやる気を奮い立たせようと、ミニセミナーまでやっていたそうです。  でも、いくら気合いを入れて会議をやっても、店長たちは、いっときやる気になったように見えて、結局、変化が見られず、「すっかり疲れてしまった」とのことでした。最後の店長会で、本音を話してみたら「みんながガッチリとスクラムを組んで一緒に頑張る、というような組織を作りたかったけれど、絵に描いた餅だったみたいです。ほとほと、疲れてしまって、もう、社長を降りようと思っているんです」「事情はわかりました。もし、そこまで覚悟ができているのなら、社長を降りる前に、店長さんたちに、新田さんの本音をお話ししてみてはいかがですか?」「えっ?  そんなことを言ったら、ドン引きされますよ」「辞めるなら、ドン引きされてもいいじゃありませんか!」  その日の感情コンサルはそんな会話で終わりました。  しばらくして、新田社長は、ついに社長を辞める決心をして、それを伝える最後の店長会議に臨んだそうです。初めて、なんのシナリオも用意せず、自分の本音を伝えるつもりでのぞんだ店長会議。はじまる前は、手が震え、手汗が出て、正直、すごく怖かったとか。  店長会議では、「自分は、がっちりとスクラムを組んで、全員がやる気に満ちた組織を作ろうとしてやってきたけれど、うまくいかなかった。これはあなたたちのせいじゃない。たぶん、私のやり方がまずかったと思う。これまで、みなに迷惑をかけてきたけれど、近いうちに社長を辞めようと思う」と、本音を包み隠さずに伝えました。  すると……。店長たちの目の色が変わって、がぜん、やる気になったというのです。  そして、「そんなこと言わないでください!  僕たち、頑張りますから!」と。今まで、うまくいかなかったのに、本音をさらけ出した途端、ずっと聞きたかった言葉を初めて聞くことができたのです。普段、弱みを見せない社長の本音は、そのギャップが社員に響きます。  自分の欠点をさらけ出せる人ほど、人から愛されるという法則があります。  周りの人たちは自分を写す鏡。本当の自分を隠していたら、周りも本音で付き合ってくれません。それに、できる自分を演じていても、周りにはバレバレです。  等身大の自分をちゃんと自分自身が認めて、弱い自分を見せられる人が、本当の意味での人格者なのかもしれません。社長かどうかなんて、関係ありません。そもそも、何でもできる人は 1人でやればいいのです。  かつて、田中角栄さんが大蔵大臣(現在の財務大臣)になったとき、エリート官僚たちの前で、「自分は高等小学校卒で諸君のような専門家ではないが、経験を積んで、いささか仕事のコツは知っている。これから一緒に国家のために仕事をしていくうえでは、お互いの信頼関係が大切だ。大臣室の扉はいつでも開けておく。何でも言ってほしい。上司の許可を取る必要はない。すべての責任はワシが取る」という内容の演説をして、官僚たちの心を鷲づかみにしたと聞いたことがあります。  手前味噌ですが、私も、感情セラピストの養成講座では、メンバーに本音で接してもらうために、率先してダメな自分を正直にさらけ出すようにしています。そのほうがカッコつけずに等身大の私でいられますし、楽しい時間が過ごせます。  店長さんたちがやる気になった新田社長のスーパーが、その後どうなったか?  なんと、 7店だった店舗が、たった 3年で 37店舗にまで増えたそうです!  新田社長は、この躍進について、「あの日、私が本音を伝えたのが大きかった。みんながやる気になってくれたことで、自分は経営に専念できるようになり、すごく楽になりました。毎日、やりがいのある日々です」と笑顔で語ってくださいました。

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