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Part3知識編

01ネーミング数を出す、魂を込める、トレンドを見るネーミングの開発で大切なことは、伝えたい商品の特徴と目指すべきポジションを明確にし、ひたすらそれに合った案を数多く出すことです。数百の中から絞り込みながらネーミングを決めていくことも少なくありません。ネーミングはコピーライターやネーミングに特化したサービス会社、ブランディングのコンサルタント会社等に依頼する、もしくは社内のスタッフがつくっていくというケースが多いようです。まずは、漢字、カタカナ、英語、ひらがな、文章などの形式の中で、イメージに合わないものを排除していきます。一般的にネーミングは覚えやすく、短く、意味が伝わりやすいものがいいという考え方がありますが、長いネーミングでも成功しているものもあります。大切なのは、様々な角度からネーミングを考え、用紙に出力し、声に出した感じ、形や雰囲気が、狙っているイメージポジションを表現しているかを検証することです。そして、ネーミングに魂を込めることです。CMは広告会社が、パッケージはデザイナーがつくります。しかしネーミングだけは商品担当者が自分でつくることができるのです。数多くのネーミング案を出していくうちに、このネーミングでなければ駄目だという確信に近いものが見えてくるはずです。ネーミングにもカテゴリーによってトーン&マナーがあります。既存のネーミングの中でどういうポジションを目指すのか、もしくは新しいトーン&マナーで行くのかといったポジショニングのイメージが重要です。トーン&マナーは時代によって変わっていきます。トレンドを念頭に置きながら新商品のポジショニングとネーミングを合わせていきましょう。例えばビールであれば、10年前は漢字2文字や英単語2つのものがビールらしいネーミングの代表例でしたが、ここ数年のクラフトビールの影響で、物語を感じさせる自由なネーミングが登場し、それがクラフトビールの世界観をつくってきました。時間軸でネーミングのトレンドを踏まえることは大変意味があります。その上で、商標が取られていないか、グローバルに使ったときに不適切な意味が発生しないか、といった点を検証していきます。

02キャッチコピー手に取ってもらうために最も大事な要素パッケージデザインの役割の1つは、商品の魅力を短時間で正確に伝え、初回購入(トライアル)をつくり出すことです。発売当初から大量の広告を投入できる商品は少なく、多くの場合、商品の良さを短時間で伝える短い言葉「キャッチコピー」が消費者の購買行動に大きな影響を与えます。その商品をぱっと見たときに、瞬時に商品の魅力が分かることが大切です。言うは易し、行うは難しで、このキャッチコピーは作り手の力量が問われる仕事だと感じます。多くのマーケティング活動がそうであるように、キャッチコピーとは商品のコンセプトを消費者に納得してもらうように短く変換したものです。多くのヒット商品の陰には、消費者に分かりやすくコンセプトを伝えるキャッチコピーの存在があります。質の高いキャッチコピーをつくるには、歴代の素晴らしいキャッチコピーを見て学んでいくしかないのですが、あえていくつかのポイントを挙げるとすると、「新しい驚きがあること」「社会の応援があること」「ベネフィットが分かること」「説得ではなく納得があること」といった視点が大切です。例えば洗剤「アタック」の「わずかスプーン1杯で驚きの白さに」というコピーを考えてみましょう。新しい驚きやベネフィットが分かりやすく伝わってきますが、1970年から1980年にかけて、洗剤は生活排水として水質汚染の問題と戦っていました。その後、様々な技術革新により進化していきますが、「わずか」という3文字は生活排水による水質汚染の問題を解決したいという社会の雰囲気をしっかりと受け止めた3文字といえます。商品はその時代、社会の応援があって初めてヒットします。キャッチコピーは時代に合ったメッセージを端的に伝えることができる武器なのです。「熟カレー」の「一晩寝かせたあの旨さ」の名コピーも、思わず納得してしまうおいしさの表現です。商品の作り手は、自分では気づかないうちに、消費者を説得しようとしていますが、説得では消費は売れません。買い手に納得してもらえる言葉にできて初めて手に取ってもらえるのです。下痢止めの薬「ストッパ」のコピーも秀逸です。ストレス性の下痢に悩まされる人は「突発性」という言葉にとても敏感です。自分のことだと分かります。「突発性の下痢に」「水なし1錠で効く」というコピーは、どこで急な下痢に襲われても安心ですよ、とターゲットの気持ちに寄り添っているのです。

03カラーカテゴリーカラーに対して、どういう色を選択するかカラーはブランド要素として強く記憶に結びつきます。赤い缶を提示するだけで、「コカ・コーラ」を多くの人が連想するように、1つのカラーをブランドカラーとして、パッケージで長期的に使い続けることは大変価値があります。その際に大切なのは、ブランドの世界観と色が合っていることです。温かみを感じさせたいのであれば暖色系を使い、シャープなイメージのブランドであれば、黒や銀を使うなど、色そのものが持つ印象やメッセージとブランドのパーソナリティーを合わせることが必要です。ただし、カテゴリーによって、「らしい色」があります。牛乳であれば、白、青、緑などがカテゴリーカラーです。ビールは銀、金、白などクールでリッチな色がカテゴリーカラーとして定着しています。このカテゴリーカラーを念頭に置いて、あくまでもカテゴリーカラーに近いところでデザインするのか、あえてカテゴリーカラーを外して、オリジナルカラーでデザインするのか。カラーの選択はこの2つで大きく分かれます。オリジナルカラーで新しい市場をつくれれば、それが大きな差異化の要素になりますが、新しい色を定着させるには時間と費用もかかり、リスクも伴います。例えば「雪印メグミルク牛乳」は、雪印乳業時代からの青と白をあえて捨て、カテゴリーカラーとしてそれまでなかった赤で、再出発にかける思いを表現しました。それから20年近くたちますが、カテゴリーカラーを見慣れている消費者に、新しい色の商品をカテゴリーカラーとして認識してもらうには相当な努力を要しています。また、同じ色でも、明るさや濃度、素材の色や加工の仕方によって全く印象が変わってきます。元気な感じを演出することもできれば、落ち着いた高級なイメージを演出することもできます。例えば大阪のおばちゃんのヘアカラーの紫と、僧侶の袈裟の紫では、同じ紫でも全く印象が異なります。ロングセラーブランドのカラーを考えるときも、この微妙な色の変化で鮮度を高めることができます。この色がいい、駄目ということは一概には言えず、実際に最終形に近い色見本やダミーを作ることで色の印象を確認することをお勧めします。

04写真工夫していい範囲を決めておく写真には、商品の中身を見せるもの、商品の完成形を伝えるもの、原材料を伝えるもの、産地を伝えるもの、インパクトを伝えるものなど、様々な使い方があります。直接中身を見せることができない商品のパッケージでは、中身をおいしそうに見せるために写真を使います。おいしそうに見せる写真には高度な技術が必要になり、ベテランの経験がものをいいます。例えば、ビールの泡だけを撮影用に作る専門の人がいるといった具合に、それぞれの分野で一流の専門家がいます。こういったプロに協力してもらうことが大切です。また、写真で伝えたい商品のコンセプトに合わせて、写真の表現の方向性を明確にしておくことが重要です。ボリュームたっぷりに見せたいのか、ジューシーに見せたいのか、もしくは具がたくさん入っているように見せたいのか、ほっかほっかに見せたいのかなど、商品の一番見せたいイメージを撮影スタッフと事前に確認しておくことです。パッケージは印刷の素材や方法が多岐にわたるため、出やすい色、出にくい色など表現の限界を知っておくことも重要です。デザイン案ができた段階で、印刷会社の人も交え、撮影前に印刷素材・印刷方法を事前にスタッフで確認しておくことをお勧めします。撮影やその後の画像修正では、「よく見せるための工夫の範囲」も決めておくといいでしょう。写真は、対象になる商品や人物に手を加え、画像修整することで、大きく印象を変えることができます。例えば、人物をきれいに見せるための修正はどこまでがコンプライアンス上認められるのかといった範囲を明確にしておく必要があります。写真で重要なのは、どう見せたいかということと、「よく見せるための工夫」を自社はどこまで許容するかを事前に明確にしておくことです。

05イラスト写真よりもシズル感が出る場合もある写真と同じ目的で、イラストを使うケースがあります。商品の中身を見せるもの、商品の完成形を伝えるもの、原材料を伝えるもの、産地を伝えるもの、使用シーンやターゲット層のイメージを伝えるもの、新しいアイコンを登場させるものといったパターンが代表的ですが、ビジュアル部分を写真で表現すべきかイラストで表現すべきかは悩みどころです。一般的にイラストを利用することのメリットとしては、情緒的な雰囲気を加えやすい、実際にないもの・見えないものを表現できる、費用を抑えやすいといった点が挙げられます。情緒的な雰囲気とは、例えば、大根を原材料として表現したい場合、写真だと大根の土や表面の毛根まで、非常にリアルに表現することができますが、必ずしもそれがおいしそうに見えるわけではありません。イラストで書くことで、おいしそうという印象(シズル感)を写真以上に伝えることができます。また、実際に見えないものや、その季節に存在しないものなどもイラストであれば表現することができます。体の中に薬効が浸透していく様子などは、写真で表現するには限界があります。イラストであれば見えないものを視覚化し、伝えたい部分をより強調して描くことも可能です。著名なイラストレーターのイラスト料は高額な場合もありますが、通常は関わる人の数や機材を比較すると、写真よりイラストのコストのほうが低いことが多いでしょう。こういったメリットを検討した上で、イラストを使うのか写真を使うのかを検討しましょう。イラストの中にも、本物そっくりに描くリアルイラストという手法もありますし、写真で撮ったものをあえてイラスト風に加工することもあります。CGを使うことで、より鮮明な表現をすることも可能です。目的に合ったイラストを活用することで、デザインの訴求力は上がります。

05イラスト写真よりもシズル感が出る場合もある写真と同じ目的で、イラストを使うケースがあります。商品の中身を見せるもの、商品の完成形を伝えるもの、原材料を伝えるもの、産地を伝えるもの、使用シーンやターゲット層のイメージを伝えるもの、新しいアイコンを登場させるものといったパターンが代表的ですが、ビジュアル部分を写真で表現すべきかイラストで表現すべきかは悩みどころです。一般的にイラストを利用することのメリットとしては、情緒的な雰囲気を加えやすい、実際にないもの・見えないものを表現できる、費用を抑えやすいといった点が挙げられます。情緒的な雰囲気とは、例えば、大根を原材料として表現したい場合、写真だと大根の土や表面の毛根まで、非常にリアルに表現することができますが、必ずしもそれがおいしそうに見えるわけではありません。イラストで書くことで、おいしそうという印象(シズル感)を写真以上に伝えることができます。また、実際に見えないものや、その季節に存在しないものなどもイラストであれば表現することができます。体の中に薬効が浸透していく様子などは、写真で表現するには限界があります。イラストであれば見えないものを視覚化し、伝えたい部分をより強調して描くことも可能です。著名なイラストレーターのイラスト料は高額な場合もありますが、通常は関わる人の数や機材を比較すると、写真よりイラストのコストのほうが低いことが多いでしょう。こういったメリットを検討した上で、イラストを使うのか写真を使うのかを検討しましょう。イラストの中にも、本物そっくりに描くリアルイラストという手法もありますし、写真で撮ったものをあえてイラスト風に加工することもあります。CGを使うことで、より鮮明な表現をすることも可能です。目的に合ったイラストを活用することで、デザインの訴求力は上がります。

06キャラクターキャラクターを育てるか、借りてくるかキャラクターの位置づけはパッケージデザインだけでなく、コミュニケーション全体の中で考えられるものですが、パッケージとの関係も切り離せません。オリジナルキャラクターをつくるのか、既存のキャラクターを活用するのか。商品コンセプトを機能的に伝えていくことを目的にするのか、キャラクターそのものをブランドの情緒的価値として育てていくのかに分類されます。ディズニーやサンリオの有名なキャラクターをはじめ、アニメーションで登場するようなキャラクターをパッケージに入れることで、すぐに店頭で訴求力は上がりますが、売り上げに応じて使用料を払う必要があります。一方、オリジナルキャラクターを育てるのは大変な時間とお金がかかりますが、完成してそれが浸透すると、大きなブランド資産になります。キャラクターには商品キャラクターとコーポレートキャラクターがあります。不二家のペコちゃんや佐藤製薬のサトちゃんなどはコーポレートキャラクターです。一方、赤城乳業のガリガリ君や「チョコボール」のキョロちゃん、「コルゲンコーワ」のカエル、チチヤスのチー坊、「激落ちくん」やプリングルズのキャラクターなどは、商品と強く結びついた商品キャラクターとして消費者の印象に残っています。キャラクターを活用すると、消費者に伝えなければならない情報が1つ増えるため、注意が必要です。1回のキャンペーンだけでキャラクターが広く知れ渡るケースはまれで、1つのブランドを育てるのと同じように、まず、どういった性格なのか、どんな物語の中で登場するのかといったストーリーをしっかりとつくり、コミュニケーションプランの中での位置づけをはっきりさせ、時代によって変化、成長させるなど長期的に育成していく必要があります。そうでないと、なんとなくパッケージに残っていて消費者には何も伝わっていないキャラクターになってしまいます。「育成するのか、借りてくるのか」「キャラクターの存在をメインに商品を売るのか、商品特徴を伝えるためにキャラクターを採用するのか」──この2つの軸に沿ってキャラクター活用の目的を整理すると進めやすいと思います。

07ロゴロゴはパッケージデザインの中心的要素ロゴは多くの場合、パッケージデザインの中心的位置を占めます。商品名や企業名をロゴ化することで、デザインの視認性が高くなり、短時間で情報を伝達できる、ブランド資産として活用しやすくなるという面があります。しかし、ロゴの育成には時間と費用がかかります。開発したロゴを人々の記憶に残し、メッセージとリンクした記号に育てていくまでにはかなりの労力が必要になります。企業ロゴをパッケージに記載するケースも多く、商品ロゴとぶつかることもあるので、企業ロゴと商品ロゴのバランスも決めておくとよいでしょう。広告を大量に入れる、企業ブランドを前面に出さずに商品ブランドとして育成していく、数多くのラインアップを同一のブランドで展開する、といった場合には、パッケージデザインに先行もしくは同時並行する形で、ロゴ開発に時間をかけることをお勧めします。特に化粧品などの場合はこのケースが多いと思います。その場合にはネーミングを先に決めておくこと、ネーミング以外のマークを入れてもいいのか、スローガンなどを付け加えるのかといった表現の範囲を決めておくことが重要です。広告量の少ない新商品の場合には、まず商品のベネフィットをパッケージで伝えることが最優先になるので、実務的にはロゴの制作だけ抜き出してそこまで時間をかけることは難しいかもしれません。しかし中長期的に見たときに商品ロゴはパッケージデザインの中心的な要素になります。パッケージデザインを制作、評価する過程の中で、ロゴを抜き出して、展開するメディアに載せて評価してみるのも1つの方法だと思います。POP、雑誌広告、WEBなどに展開できそうか。色が1色になっても成功するか。強い存在感があるか。商品のイメージに合ったフォントや色味になっているか。縦組みや横組み、様々な商品に展開していったときに使いやすいか。こういった視点でロゴの完成度を高めていきましょう。

08形形状は国境を越えて残るアイデンティティー形状は長期にわたり、かつ国境を越えて消費者の記憶に残るアイデンティティーです。パッケージデザインの触ることのできるメディアとしての特徴を最大限に生かすのが、この「形」という要素です。形のデザインは、美しい、高級そう、クールといった情緒的価値だけでなく、持ちやすさ、使いやすさといった機能的な価値、人間工学的視点も必要です。また、生産ラインに乗せたときに効率的に作れるのか、金型が作れるかといった製造面での視点、物流上の運びやすさや品質保持性など、様々な面での検討が必要なため、時間とコストが発生しますが、それゆえに一度形のアイデンティティーを形成できると大変に強いブランド資産になります。ロングセラー商品のパッケージデザインには、そのアウトラインを見るだけで、商品をイメージさせるものがあります。法律的にも、パッケージの形状は条件を満たせば立体商標として登録することが可能です。日本のパッケージデザインでは形状のデザインと平面のデザインを同じ人が担当する場合もありますが、本来は別の専門分野なので、形状デザイナーと平面デザイナーがチームを組んで進める形が望ましいように思います。進行に当たっては、形状デザインと平面デザインをある程度同時に進めることをお勧めします。最初はラフスケッチなどから始め、2次元で正面・側面からのイメージをつくりながらデザイン案を絞り込んでいきます、次に3次元で立体的に見て検討し、実際にモックアップといわれる同サイズの模型を作ります。このモックアップに塗装やロゴなどを張り付けて、本物そっくりに仕上げ、手で持った感触などを検討します。実際に作ってみるというプロセスは大変重要で、画面上とは違った視点で検証することができます。モックアップは調査や広告素材としても使うことができます。設計段階で図面を起こしていくときにも参考になります。

09容器容器によって商品価値を高める優れた容器の開発は商品価値を大きく高めることができます。容器開発には様々なコスト、時間といった労力が求められますが、その分、完成したときに競争優位の源泉になる可能性が十分にあります。容器開発の方向性には4つのパターンがあります。1つは顧客の不満を解決するという開発方向です。顧客のニーズが明確なときに大変有効です。例えば、納豆を取り出すときには、従来は、納豆に付いているフィルムを取り、ねばねばが手に付いた状態で、調味料の袋を切って準備しなければならず、手を汚さずに納豆を食べたいというニーズがありました。これに対しミツカンは、フィルムが必要ない容器を開発して大きな成功を収めました。2つ目のパターンは使用シーンを増やすという方向です。これまでの商品の容器形状とは異なる形状の容器を開発することで使用シーンを拡大することができます。3つ目のパターンは、容器を開発することで、新しい使い方を提案し、商品価値を高める方法です。例えばモーターを内蔵し、均一に噴射されるファンデーションやまつげにきれいに付くマスカラ、定期的に噴射する芳香剤などは、容器に新しい機能を加えることで新しい商品価値を実現しています。4つ目は商品の情緒的価値を高める容器開発です。サーフボードの形をした豆腐は、「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」というネーミングとマッチして大きなヒットを生み出しました。いずれにせよ、どの目標のために容器開発をするのかというゴール設定と、組織横断的な協力が重要になります。容器開発には金型開発などコストもかかりますので、回収計画など長期的な財務計画も重要になります。容量を大きく変えるという視点も大切です。従来の商品を小さくすることで持ち運びが可能になり、新しい使用シーンを生み出すこともあります。大型化することによって新しい用途が生まれることもあります。容器開発においては他業界の容器の情報を常に仕入れながら、ユーザーの使用シーンを積極的に観察し、容器やサイズを変えることでどのような市場ができるかなどの仮説検証を繰り返し、機会を見いだしていくことが欠かせません。

10パッケージの素材地球環境に優しい素材で社会貢献もよく使われるパッケージの素材は、大きく4つに分類できます。素材はその特性や加工方法など、かなりの専門知識が必要な分野です。ここでは、基本の4素材の特徴だけを紹介していますが、それぞれはさらに細かく分かれています。商品担当者としては、現在自社で使っている素材の基本的な特性は知っておく必要があります。詳細については、右図の各分野・素材の資料を参照してください。●紙:腰があり、クッション性や通気性に優れています。形態を変える自由度が高いため、様々な形をつくることができ、自動包装などとの適性も高い素材です。●金属缶:商品の中身の保護性や、たくさん積んでも壊れないといった積載性に優れています。また圧力や熱にも強い特性があります。●ガラス瓶:耐油性、耐熱性に優れるという特性があります。またリサイクル、リユースもしやすい素材です。●プラスチック:成型性に優れており、透明で軽量、耐水性にも優れています。それぞれの特性を理解し、消費者や流通のニーズに合わせて、素材の変更や追加を検討することが大切です。例えば、ガラス容器だった調味料をプラスチック容器にすることで、ガラス瓶では重くて割れる危険性があるため難しかった生鮮売り場へも陳列できるようになり、プロモーションを促進させるといった可能性が生まれます。最近は、消費者の意識が変化し、企業の環境への取り組みが高く評価されるようになってきています。地球環境に優しい素材へスイッチすることで、社会貢献にもつながります。素材の開発は常に行われており、今までは評価の低かった素材も、廃棄設備が進化することでエコ素材に変わることもあります。新しい素材情報を常にウオッチし、検討していくことが大切です。

11印刷の方法パッケージに使われる5つの印刷方法パッケージで使われる基本的な5つの印刷方法をご紹介します。●オフセット印刷:油性のインキと水とが互いに反発し合う性質を利用して印刷します。美しい印刷物を仕上げるのには最も一般的な印刷方法です。グラデーションをきれいに出そうという場合には、オフセット印刷が最も適しています。●グラビア印刷:凹版印刷の一種で、金属板にへこみを作り、そこにインクをためて、押しつける印刷方法です。インキの層が厚くなるため、濃いベタ印刷やカラー写真の再現性に優れています。フィルムへの印刷はグラビア印刷が使われます。グラデーションの再現性は高くありません。版が高いため、大量印刷に向いています。●フレキソ印刷:凸版印刷の一種で、ゴム印のように版の凸部分にインキをのせて転写する印刷方法です。版が樹脂でできているために、大量に印刷する場合には向きません。カラー写真の再現性に欠け、ベタムラが出やすいので、1色や2色の場合やコストを抑えたい場合に向いています。●シルク印刷:シルクの布の網の間からインクをヘラですることで印刷する方法です。以前は実際にシルクを使っていたので、シルク印刷と呼ばれています。インキを厚く盛ることができ、曲面にも印刷できるため、化粧品のボトルやガラス瓶のロゴなどに使われています。●ホットスタンプ:金や銀などの箔を印刷したいときに使う方法で、箔押しともいわれます。熱によって箔を圧着させる方式で、プラスチック容器のロゴ部分や、キャップなどの印刷に使われています。パッケージデザインを制作する際には、事前に自社の素材と印刷の方法をデザイナーに説明し、印刷された既存商品を見本として渡すことをお勧めします。デザイナーはどこまで細かく再現できるのかが確認でき、印刷で表現できないデザインを回避することができます。

01デザインのルールと研究あくまでもデザインの基礎知識として参考に「デザインにルールやマニュアルがありますか?」「もしそういう本があったら読みたいのですが」こういったご相談を受けることがあります。残念ながら売れるデザイン、時代を超えて愛されるデザインを簡単につくるマニュアルはありません。しかし昔からの経験により、人々が美しいと感じるルールといったものが存在します。また、心理学やマーケティング分野の研究により、デザインを客観的に体系化しようという試みも積み重ねられています。こうしたルールや研究は、それをそのまま守れば良いデザインが完成するというものではありませんが、パッケージデザインに関係する知識として知っておくと参考になります。デザインのルールでは、古くから自然や生活の中で人々の経験から導かれたものが多く、理論が先にあったというよりも、自然環境、また自然から影響を受けたデザインと暮らした結果、人々が美しいと感じたものから出来上がっています。例えば、人は1:1.618の比率を最も美しいと感じ、これを黄金比率と呼んでいます。もともとオウム貝など自然界にあるものは、この比率になっているものが多く、タバコやトランプ、カメラなど身近にあるものの多くもこの黄金比率に近い比率で作られています。ただ、現代に暮らす我々は普段接しているものに親近感を感じ、それらから影響を受けていることも否めません。実際に私たちはオウム貝よりも、トランプやタバコ、カメラなどとの接触頻度が高く、普段使いなれたそのサイズに対して安心感や親近感を持っているのだとも考えられます。つまり現実には、相互に因果関係があるのかもしれません。また学術的な研究は、ある一定の条件の下で検証された仮説であり、すべての場面で共通に使える定石を証明しているわけではありません。この2点に注意した上で、デザインの共通ルールや法則を学んでいただければと思います。

02黄金比率見る人に安定した美感を与える比率黄金比率とは、人々が安定した美感を感じる比率だといわれています。1:1.1618がその比率といわれ、パルテノン神殿やピラミッドといった歴史的建造物や美術品にも見ることができます。ひまわりやバラ、松ぼっくり、オウム貝など自然界にあるものの中にも、この黄金比率になっているものが数多く存在します。身近なものでは名刺、トランプ、タバコの箱、カメラなどがこの黄金比率に近いです。美容外科でも目、鼻、口などの美しさとして黄金比率が参考にされています。そもそもこの黄金比率とは、1つの線を2つに分けて、「小さく分けた辺と元々の線の長さでできる長方形の面積」と「大きく分けたほうの辺で作られた正方形の面積」を同じにするには何対何で分ければいいか?という問いに答えたのが1:1.1618(正式には(1+√5)÷2になっています。この線分の小さいほうで4分の1の円を描き続けていくと、ちょうどオウム貝と同じ対数螺旋になります。なぜこれが美しいといわれるのか、明確な証明はありません。この比率で360度を分けたものを「黄金角」と呼んでいます。円を少しずつ大きくしながら、黄金比で分けていくと、ひまわりやバラの模様になります。拡大していく円を黄金角で区切ることで、重ならない区切りを付けることができます。これは、植物にとっては、太陽の光をそれぞれの葉が最も効果的に浴びることができることを意味しています。アリストテレスが「芸術は自然を模倣する」と言ったように、また、ローマの哲学者セネカが「あらゆる芸術は自然の似絵である」と言っているように、自然の偉大さに近付きたいという人々の思いと美しさは何らかの関係があるようです。黄金比率は、自然美を数学的に導き出した1つの答えであり、それを日常に取り入れていく過程で私たちの審美眼が形成されているように思えます。

03脳の半球優位性画像は左に、文字は右に配置する脳の認識パターンによるデザイン研究の1つに、脳の半球優位性を使った実験があります。脳は右脳と左脳に分けられ、それぞれの役割があり、この役割に沿った形でデザインすることで脳の情報処理がスムースにいくというものです。右脳は本来、画像や空間などの空間構成や、音楽などの音楽感覚を処理します。一方、左脳は言語、論理的な処理、計算処理、時間連鎖的思考をつかさどっています。人の目から入力された情報は、左の視野は脳の右半球へ、右の視野は脳の左半球へと伝達されるというクロス構造になっています。したがって、右目から入った情報は論理的思考をつかさどる左脳へ伝達されます。左目から入った情報は、画像・空間処理をつかさどる右脳へ伝達されます。店頭において一瞬で判断されるパッケージデザインの世界では、瞬時に情報処理しやすい形で情報をまとめておくことは、脳に負担をかけることなく商品理解を促進することになります。そのため、イラストや写真などの画像情報は左に配置し、商品特徴やキャッチコピーなど言語情報は右に配置したほうが消費者に理解・選好しやすいと考えられます。早稲田大学の石井裕明氏、恩蔵直人氏、寺尾裕美氏は2007年にプラグと共同で架空のパッケージデザインをつくり、画像と文字をそれぞれ右側と左側に配置を入れ替えて、どちらが選好されるかという実験を行い、チョコレートのパッケージデザインで一定の検証成果を上げています。ただし、カレーのパッケージを用いた同様の実験では、印象の好ましさが確認できたのは自らカレーを購入する消費者だけという結果もあり、カテゴリー特性などの考慮も必要なようです。目立つパッケージデザインをつくるために、あえてこのルールを外すという方法もあるかもしれませんが、実際に多くのパッケージデザインが左に画像、右に文字情報を配置しているため、消費者の慣れという点でもこの配置は有効性を感じます。

04感性工学とデザインイメージを数値化してデザインに生かす長町三生著『感性工学―感性をデザインに活かすテクノロジー』(海文堂出版)には、「感性工学とは人間の感性やイメージを物理的なデザイン要素に翻訳して、感性に合った商品を設計するためのテクノロジーである」と紹介されています。例えば、かわいい、クール、あたたかいなど、様々なイメージに関するキーワードとデザイン要素の結びつきを明らかにし、「かわいい」デザインであれば、こういった組み合わせが最もかわいらしいデザインになる、といったデザイン要素(色や形)の最適な組み合わせを計算によって提示してくれる理論・技術です。女子高生向けのシステムを作ろうと思った場合には、女子高生にデザイン評価のキーワードを出してもらいます。そのキーワードに沿って、様々なデザイン要素を組み合わせたデザイン案を評価してもらい、その結果から、色やボトルの形、文字の種類などが「かわいい」や「あたたかい」といったキーワードとどれくらい結びついているかを明らかにします。この関係性を数式化できれば、「かわいい」とキーワードを入れると、最も「かわいい」に近い色、形、文字の種類をコンピューターが組み合わせて表示してくれるというシステムが完成します。計算には、因子分析や数量化理論Ⅰ類といった多変量解析を使います。また、最近ではこの分野にAI(人工知能)を活用してデザイン生成を行うという研究も進んでいます。大変便利に見える感性工学ですが、どのようなターゲットに調査をするか、どんなキーワードで調査をするか、デザインをどれくらい細かい要素に分けるかによって結果が大きく変わるので注意が必要です。また、この方法で最終デザインが完成するわけではないので、デザイナーがアイデアを膨らませていくためのベースにしたり、現在のターゲットのデザインのイメージを客観的に評価したりするための1つのツールとして活用すると有効です。

05色と感性色の印象を決める3要因色はパッケージデザインの要素の中でも、全体の印象に与える影響が非常に強い要素です。色彩は古くから研究の対象になっていますが、それぞれの色の持つイメージに統一されたものはなく、色についてのイメージ調査を基にして、個々の研究団体や著者によってまとめられています。色についてのイメージ調査はその対象やイメージワードの設定、調査時間などによって結果が異なるので、統一したものはつくりにくいという背景があります。ここでは、南雲治嘉氏の『色彩デザイン』(グラフィック社)の考え方を紹介します。色のイメージは、3つの要因から形成されています。1つは脳科学からくる生理的な要因です。色は大脳を通じてホルモンの分泌を促すことが分かっています。赤であれば、アドレナリンが分泌され、「興奮や情熱」といった効果を促します。黄色であれば、エンドルフィンが分泌され、明朗といった効果を促します。これは脳生理学という科学分野で、ハーバード大学医学部、トーマスジェファーソン大学、東京大学、京都大学などで研究が進められています。2つ目の要因は体験的なもので、感情の記憶からくるイメージです。小さい頃に経験したことが色のイメージに反映されます。3つ目の要因は文化的風土環境からくるもので、文化や風土によって影響を受けるイメージです。例えば国旗に使われる赤色のイメージは日本では太陽ですが、西ヨーロッパで太陽といえば黄色です。白は日本では清潔無垢ですが、フランスでは平和を意味します。『色彩デザイン』の中で「ピュアイメージカラーによる色彩心理一覧」に記載されている色のイメージを掲載しますが、色は個人の経験や文化的風土環境によって異なるため、一般的なカラーイメージは参考にしながらも、ターゲットの育ってきた環境などを配慮して配色することが必要です。

06ネーミングと感性ネーミングには意味を超えた感性が存在するネーミングを考える場合、商品の特徴をどれだけ伝えることができるか、もしくはブランド要素として記憶されやすいか、色々なカテゴリーに汎用できるかといった基準を紹介しました。これとは別に、語感が持つ印象という要素があります。感性リサーチ代表の黒川伊保子氏の著書『名前力』(イーステージ出版)や『日本語はなぜ美しいのか』(集英社新書)の中には「名前の発音」は漢字やそれ自体が持つ意味とは別に、潜在意識へ作用することが紹介されています。例えば「タケシ」という名前を発音してみてください。「タ・ケ・シ」の、舌の破裂音「タ」、喉の破裂音「ケ」、前歯を強く擦る音「シ」の舌打ちと威嚇の音韻がつづく3つの組み合わせは、周囲を緊張させ、喧嘩っ早い元気な男の子を感じさせます。発音した際に感じる身体感覚は、漢字を見て判断するよりも、早く深く意識に届き、また頻度としても漢字を見るよりも名前を呼ぶことのほうが多いので、それぞれの名前の持つ発音体感は潜在意識に作用するのです。また、年齢によっては、気持ちよく感じる語感が異なります。例えば赤ちゃんが発音できる言葉はB、M、Pなどの子音を含む言葉です。従って、子供向けのブランドネームはBやMやPを含む名前を多く使ったものが多いようです。「バーバパパ」「ポッキー」「マミーポコ」などです。逆に思春期の男の子は攻撃的になってくるので、GやZといった子音を含む言葉を好むようになります。黒川氏の分析では、ガンダムに出てくるロボットのほとんどに、思春期の男の子が好む子音が含まれているということでした。こういった感性の考え方は、「ターゲットとネーミングに潜在的な好意が形成されているか」「ブランドのパーソナリティーを感性的に表現しているのか」「商品名とキャッチコピーとの親和性はあるか」といった評価に活用できます。

07感覚転移味はデザインの影響を受ける20世紀のアメリカのマーケティング分野で活躍したルイス・チェスキンが提案した概念に、「感覚転移」があります。これは、味覚はそれを包むパッケージデザインによって影響を受けるという考え方です。彼は、味に大きな差がない場合、もしくは多少差があったとしても、パッケージデザインが良ければ総合的な味の評価をひっくり返せるという実験を行い、検証しました。マルコム・グラッドウェルが『第1感「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』という著書の中で、この実験を紹介しています。競合状態にあるA社とB社のブランデーを対象に、銘柄を表示せずに試飲を行った結果、ほぼ同じスコアで好まれました。次にブランドを明記して試飲を行うと、A社がおいしいと答える人が半数を超えました。しかし、A社とB社のパッケージデザインとグラスを一緒に出して試飲を行うと、B社のほうがおいしいと答える人が圧倒的に増えたのです。この結果からA社のデザインをB社のデザインに近づけ、高級感を出すことでシェア奪回に成功したといいます。同様の実験は、オレンジジュースやマーガリンでも行われ、パッケージの良しあしが味覚へ大きく影響することが知られています。「パッケージがおいしそうに見えることはあなたにとって重要ですか?」と質問をしても、多くの消費者は「パッケージは関係ありません、大事なのは味です」と答えるかもしれません。しかし現実には、消費者はパッケージデザインの影響を大きく受けて味の評価をするのです。デザインは直接的に品質へ影響を及ぼします。味の品質を上げる努力とデザインの質を上げる努力は同じように大切ということが分かります。また、この結果は、消費者調査を行う際には実際の消費場面を再現することが重要だということも教えてくれます。

08対称と非対称対称的なデザインは、バランス、調和、安定を伝える対称的なデザインは古くから美しいと認識されるデザインのパターンです。花、昆虫、動物といった自然物の多くが対称にできています。人間の顔や体も対称です。対称的なデザインからは、バランス、調和、安定、安心、権威といったイメージが伝わります。寺院や教会、神殿などには古くからこの対称的なデザインが使われています。対称には「鏡映(ミラーライン)」「回転」「平行移動」といった3つのタイプがあります。「鏡映」は言葉の通り、鏡を挟んでコピーした状態です。一般的な対称のイメージはこのパターンであり、チョウなどがこの「鏡映」の対称です。「回転」は1つの図形を回転させてコピーした状態。「平行移動」はそのまま平行に移動させてコピーした状態をいいます。対称性は、一般的な模様よりも目にとまり、覚えやすいという点でもデザイン的に優れています。逆に非対称は軽さや動き、新しさなどを伝えます。パッケージデザインへは、そのカテゴリーやブランドがどういったイメージを表現したいかということに応用できます。早稲田大学マーケティング・コミュニケーション研究所とNTTレゾナントは、20代から60代までの男女1093人に缶ビールのパッケージデザインについてのアンケートを実施しました。調査用に用意した缶ビールのパッケージデザインは、左右対象のものと、左右非対称のもの、その中間の3タイプです。ネーミングによる影響を避けるため、4タイプのネーミングを用意しました。その結果、対称なパッケージデザインは「典型的」と感じられる傾向があり、20代において、非対称なパッケージデザインを「目新しい」と感じる傾向が強く出ました。

09アフォーダンスある行動を自然に起こさせるデザインからのメッセージアフォーダンスという言葉は、アメリカの知覚心理学者ジェームス・J・ギブソンによる造語で、「与える」という意味の「afford」からつくられました。その後1988年、ドン・ノーマンがデザイン研究の中で紹介し、広く知られるようになりました。私なりにこのアフォーダンスを説明すると、「ある行動を自然に起こさせるデザインからのメッセージ」といえます。例えば椅子があったとき、人は何も疑問を持たずに、自然に座ります。ドアノブがあったときに、人は自然にそのドアノブを握り、回します。このようにデザインには人にある行動を自然に起こさせるメッセージが含まれています。これによって人々は、毎回説明書を読んだり、使い方を質問したりしなくても、簡単に使うことができるのです。パッケージデザインに置き換えれば、使う人が意識することなく商品を便利に、安全に使うことができるということです。そのようにデザインをすることが大切ですし、既存のパッケージデザインに盛り込まれたアフォーダンスのルールをうまく活用することがポイントです。実際、パッケージデザインには、人々が意識せずに自然に行うように仕向けられているデザインメッセージがたくさんあります。例えば、人々は商品の中身を出すには上部に付いている突起物に触り、引っ張るか左に回せば開くと信じていますし、実際ほとんどのパッケージデザインがそうなっています。他にも「手に取る」「ふたを閉じる」「ラベルをはがす」「薬を押し出す」など、アフォーダンスが「ある行動を自然に起こさせるデザインからのメッセージ」とすれば、パッケージデザインにはアフォーダンスがたくさん存在しています。このアフォーダンスを無視して、全く新しい使い方を教えようとすると、よほどの利便性がない限り「使い勝手が悪い商品」になってしまうので、注意が必要です。

10顔写真を使うリスク人物写真は好き嫌いが出やすいパッケージデザインに人物写真を入れると、好き嫌いが分かれ、結果的に好まれないデザインになるケースが多いようです。プラグでは2020年までに、延べ590万人以上にパッケージデザインの調査を行い、どういったデザインが好まれやすいか、逆にどういったデザインの好意度が低いかを研究してきました。その結果の1つとして、パッケージに人物写真を入れることにはリスクがあるということが分かりました。2017~2018年にプラグが実施した調査では、調査対象の商品は、飲料・食品・菓子・化粧品・医薬品などカテゴリーは多岐にわたりますが、パッケージデザインに顔写真を入れているケースは少なく、2336商品の内、わずか47商品、2%程度でした。さらに詳細に分析し分かったことは、顔写真が入っているパッケージの好意度は全体平均に比べて低いということです。統計的な有意差も確認できています。顔写真を入れることには2つのリスクがあります。1つはターゲットを狭めてしまうリスクです。特定の人物写真を入れると、その人物=ユーザーというイメージを暗示することになり、消費者がパッケージを見たときにイメージするターゲットを極端に狭くしてしまうことになります。2つ目は商品コンセプトと人物写真のイメージがずれてしまっていて、商品のコンセプトが信頼されないというリスクです。例えば和風調味料にフレンチの有名シェフの写真が掲載されていると、商品コンセプトそのものが伝わらないという調査結果がありました。プラグの過去の調査では、食品と化粧品では、人物写真が入ったパッケージは人物写真が入っていないパッケージに比べて好意度が有意に低くなっていることが確認できています。一方、医薬品では好意度の有意差は確認されていません。おそらく医薬品の場合、特定の人物にフォーカスするのではなく、症状を伝えるために一般の人として人物写真を利用しているデザインが多いため、ターゲットを狭めたり、コンセプトと乖離したりするといったリスクが低減されていると考えられます。人物写真の利用は、ターゲットが細かくセグメントされているカテゴリーで戦略上、広さでなく深さを取りたい場合などには有効ですが、このようなリスクがあるため、目的と効果を慎重に検討することをお勧めします。

11男女の好み男はとがった山、女はなだらかな山プラグでの500万人を超える過去のパッケージデザイン調査から分かったことの1つに、男性と女性の評価の差があります。評価スコアのばらつきをグラフにして比較すると、男性は一定のスコアに多くの人が集まるとがった山型になるのに対して、女性の評価スコアは山頂部分が低く続くなだらかな山になることが分かりました。つまり男性は良いものは良いとみんなが同じように評価する傾向があるのに対し、女性は男性に比べるとデザインの好みにばらつきがあると言えます。また、単純に平均値で見ると、男性よりも女性のほうが、年齢が高い層よりも低い層のほうが高評価のスコアを付ける傾向がありました。このような差異がなぜ生じるのかは、様々な視点で考えることができます。例えば、年齢が高くなるほど色々なものを見た経験があるので評価が厳しくなるのかもしれません。普段のパッケージ商品は男性よりも女性のほうがたくさん購入しているので、実際に買っているものとそうでないもので評価の仕方が大きく分かれるのかもしれません。女性は洋服や化粧品などカラフルなものに囲まれているため、デザインに対する評価がよりはっきりと分かれるのかもしれません。研究の視点で考えると「なぜか」という理由は、仮説を立てて検証をしていく必要があるのですが、ここでは読者の皆さんに仮説づくりを任せるとして、実務的に大事なことは、このように年代や性別で好みに傾向があるということを踏まえて調査結果を分析したりデザインを制作したりする必要があるということです。例えば調査結果を年代別で見た場合、単純に比べてしまうと若い人のほうが評価が高いので、若い人に好かれていると思いがちですが、若い人は高い得点を付けやすいことを知っておくと、また違った見方ができます。デザインの制作においても、男性をターゲットにした商品に比べ、女性をターゲットにした商品はターゲットをより細かく設定することで、分散しがちな好みをしっかりとつかむことができるかもしれません。こういった評価の傾向をさらにカテゴリーごとに見ていくことも重要です。どのデザインが好まれるかといった結果だけに目が行きがちですが、過去の調査結果などをこのような視点で分析し、回答傾向をつかんでおくとまた違った形でターゲットを理解できます。

12季節限定の効果「限定」の効果は+4%昔から人は「限定」という言葉に弱いと言われています。確かに限定と聞くと今しか買えないのではないか、後で価値が上がるのではないかと期待が高まり、購入意向が湧くように思えます。昔から商いの世界では「今だけ、ここだけ、あなただけ」という言葉がありますが、経験的にも消費者は限定されることに大きな影響を受けると感じます。例えば経済学の世界ではこれをスノッブ効果といい、今から50年以上前に理論化されています。プラグが2015年から継続しているパッケージデザイン自主調査によれば、調査対象商品約5000商品のうち、何らかの「限定」という表記がされている商品は約1割あります。限定の対象は様々ですが、最も多いものは季節をはじめとした期間限定、その次に多いのが数量を限定しているものです。この2つでおおむね限定商品の8割になります。カテゴリーとしてはビールやチューハイなどのお酒、お菓子などが多く、旬の季節を迎える果物をテーマにしたものや、桜や紅葉といった風味とは直接関係がないものもデザインとして使われています。チューハイやアイスなどは、限定商品が1つのサブカテゴリーになっていることもあり、消費者も限定商品を楽しんでいる傾向がうかがえます。この限定はフルーツなど商品に直接反映しやすいものが多いですが、逆にペット用のトイレシートに季節の香りを付けた季節限定商品など、今まであまり季節限定が存在しなかったカテゴリーで季節限定を取り入れて成功している商品もあります。季節限定の効果ですが、プラグの調査によると、全体で4%ほど消費者の好意度を高めます。季節限定デザインを制作するときのポイントは2点です。1つは当然ですが、季節感が瞬時に感じられることです。季節感を伝えるには春だったら桜やイチゴ、秋だったら紅葉と定番が決まっています。ここを大きく外してしまうと季節感が出ません。もう1点は既存デザインとの距離感です。限定デザインですから、ある程度の自由度があって、既存のデザインと良い意味での違和感が必要になります。ブランドの世界観を全く無視するわけにはいきませんが、普段のレギュレーションの中ではできないことも、期間限定であれば挑戦できます。限定パッケージの存在を上手に活用していくことで、ブランドの鮮度を高めていくことが可能です。

13伝えられることは3つ欲張らずに絞り込む商品は開発担当者にとっては天塩にかけて育てた子供のような存在で、かわいいのはもちろん、自慢したいことがたくさんあります。「この子はこんなに良いところがあります。なぜかというと……」。確かに商品を作っていくときには様々な苦労をして、製法、原料などを工夫して作り上げていくため、伝えたいことがたくさんあるはずです。しかし、残念ながらパッケージデザインのスペースは限られています。売り場でも商品を見てもらえる時間も本当に一瞬です。そのため、パッケージデザインをつくるときには徹底的に情報をそぎ落とし、本当に伝えたいこと、伝えるべきこと、買ってくれる人の役に立てることに絞り込んでいく必要があります。2012年に目の動きを計測する機器であるアイ・トラッキングを使って情報量の増加と製品評価との関係性をテーマにした研究が行われました(石井2020)。この研究では調査対象者に同じ商品の商品名と容量だけ書かれたバッケージデザイン(水準0)をベースに1つずつ情報量を増やしていったとき、どの時点で製品評価が最大になるかを調べました。調査結果では、デザインなどを重視する消費者(促進焦点)は追加の情報量が3を超えた時点(水準3)で製品評価が下がり始め、情報過剰感は製品評価に負の影響を及ぼすことが分かりました。さらに、追加的なアイ・トラッキングの分析によると、パッケージの情報量が増えると、1カ所当たりの注視時間が短くなるのは当然ですが、注視時間全体も短くなってしまいました。石井裕明氏は、この理由を視線の移動時間の増加によるものと分析しています。難しい本を目の前にすると読むのを躊躇してしまう行動と似ているかもしれません。商品には商品名とロゴは必ず記載されますし、容量や原材料の表示などパッケージには記載しなければならない情報がありますから、そこから追加できる情報としては、3つに限定されているということです。それ以上増やしていくとどんどん伝わらなくなっていきます。「デザインに余白があるじゃないか、もったいないだろうと上司に言われたんです」という話を聞いたことがありますが、情報量が多過ぎると何も伝わらないということになってしまいます。

01パッケージデザインと法律知的財産の関連法と表示ルールをしっかりと理解するパッケージデザインを取り巻く法律には様々なものがありますが、特に日々のデザイン開発に関わる2つの法律について、押さえておく必要があると思います。1つは知的財産権に関わる法律です。これにはデザイナーとの良い関係性を守るという面と、自社の権利を競争から守るという2つの面があります。デザイナーにどういった権利が存在するのかを事前に理解し、しっかりとその権利について確認し合うことは、デザイナーと長期的に良い仕事をしていく上で欠かせません。金額の大小ではなく、デザイン料の中に、法律上発生する権利をどこまで含んでいるかという説明が、デザイナーを認めることになるのです。知的財産権法の中でも、商標法、意匠法、著作権法が頻繁に関わります。知的財産権法は、産業の発展に寄与するためにつくられたものですが、それぞれの目的と対象は若干異なります。商標法は、消費者がだまされてニセ商品を購入してしまうことがないように、ネーミングやロゴ、トレードマークといった知的財産を保護します。意匠法は、企業が安心して自社のデザインを使える環境をつくることで、産業が発展することを目的とし、デザイン(形状・模様・色彩)全体の権利を保護します。著作権法は、著作者の権利保護によって、文化の発展に寄与することを目的にしています。パッケージデザインで使われているイラストや写真などが著作権法の対象になります。もう1つの法律は、パッケージへの表示義務に関するものです。例えば、容器包装リサイクル法は識別表示を定めています。これは、容器の資源としての再利用が円滑に進むように、消費者が分別廃棄しやすくするものです。他にも、実際のものより著しく優良または有利であると誤認される表示を禁止する景品表示法や、製品の欠陥によって人の生命や体、財産に損害を被ったことを証明した場合に、被害者は製造業者に対して損害賠償を求めることができると定めた製造物責任法(PL法)、食品や医薬品、化粧品などの表示に関わる食品表示法や医薬品医療機器等法(薬機法)などがあります。表示に関する法律は時代に合わせて改正されます。常に情報を収集しながら専門家の意見を参考にし、消費者にとって最も良い表示の在り方を考えていきましょう。

02著作権デザイナーの権利を知り、良い運用を考えるパッケージデザインには、創作性の有無により、著作物として認められるケースと認められないケースがあります。しかし、パッケージデザインの中で使われるキャラクターやイラスト、写真、毛筆のロゴなどに創作性が認められる場合には、著作権の対象となります。基本的にはパッケージデザインを著作物とみなしてデザイナーと話し合うことをお勧めします。著作権は2つに大別できます。著作物を利用する権利と著作者人格権です。前者の著作物を利用する権利の中で、特に重要になるのが、複製権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利という2点です。複製権は複製する権利ですから、印刷などが含まれ、これについてはデザイナーから企業への譲渡が前提になります。二次的著作物の利用に関する原著作者の権利では、二次的著作物の権利は著作者と原著作者の両者に権利が生じるので、両者の権利を明確にしておくことが大切です。後者の著作者人格権は、公表権、氏名表示権、同一性保持権の3つの権利からできています。公表権は、未発表著作物の公表を決定する権利ですが、現実的に新商品のデザインの公表時期を著作者が勝手に決めることはありません。氏名表示権とは著作物の利用に際し、著作者名を表示することのできる権利です。パッケージデザインで問題になるのは3つ目の同一性保持権です。これは著作物の改変を意に反して受けない権利です。パッケージで用いたキャラクターの表情を変えるといったときなどに関わってきます。こういった権利の存在を理解した上で、お互いの信頼関係や運用のルール、契約などで実際の商慣行に合った継続性のある取引関係を構築することが大切です。

03商標権ネーミングを探す、ブランドを守る商標権とは商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守り、商標を使用する者の業務上の信用の維持と利益の保護を目的としています。商標には、文字、図形、記号、立体的形状やこれらを組み合わせたものなどのタイプがありますが、2015年4月から、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標についても商標登録ができるようになり、ブランド戦略の多様化に合わせて進化しています。実務的にはネーミングを決める際に、既に商標登録されているものとぶつからないかを調べることが多いと思います。多くのネーミングが登録されているので、商標登録していないネーミング案をつくるほうが難しい分野もあります。商標は登録制で、10年の使用期間が認められており、延長することも可能です。特許庁は商標のデータベース「特許情報プラットフォーム(JPlatPat)」を提供しており、想定している名前が他社に取られていないかどうかを簡単に調べられます。他社が取得しているネーミングを、交渉して借りるという方法もあります。商標は登録者に使用意図がない場合、取り消し請求をすることもできます。商標登録された名前は、他社が使うことができないので、そのカテゴリーそのものを意味するような名前として普及させた場合、競争上、大変有利です。「セロテープ」「ポストイット」「バンドエイド」などは好例です。まれに「キシリトール」のように、成分名でありながら当時は認知度が低かったために商標登録できて、競争優位を実現したケースもあります。ネーミング決定段階とロゴが出来上がってきた段階で専門家へ相談し、使用する可能性があれば、早めに商標登録をすることをお勧めします。2015年から始まった新しいタイプの商標も、徐々に登録件数が増えています。ロングセラー商品のデザインなどで、部分的な要素を見ただけでその商品、ブランドと認識できる場合には、色彩のみからなる商標や立体商標として登録できる可能性があります。

04意匠権デザイン資産を守る意匠権はデザインを保護し、利用を促進することで、産業活動が適切なルールに基づいて活発に行われることを目的としています。意匠権の対象となるのは、物品の形状、模様、もしくは色彩またはその結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものとされています。パッケージデザインは、形状とグラフィックデザインの両方がセットとなり、意匠権の対象になります。ただし、パッケージデザインの中のロゴなどは物品の形状と結合していないので、意匠登録の対象にはなりません。意匠登録は、対象となる意匠に類似するものも合わせて提出することで、意匠権の対象範囲を広めることができます。また、全体を意匠登録するだけでなく、一部を抜き出して意匠登録することもできます。パッケージデザインは商品ライフサイクルが速いため、意匠権を申請している間に商品が終売になってしまうこともあるので、どのように意匠を守るかは専門家と相談することが必要です。一方、自社の権利を守るだけでなく他社の意匠権を侵害しないという点も注意が必要です。意匠の類似の判断は難しく、最終的に専門家の判断によるところが大きいですが、一般的に、発売されている商品のデザインと「消費者が混同するようなデザイン」を新たに採用することは大変なリスクを伴います。不正競争防止法では発売して3年間以内の商品の模倣を禁じており、実際、不正競争防止法、意匠法、商標法に基づいて、パッケージデザインの類似に関する訴訟が企業間で発生しています。ロングセラー商品、あるいはロングセラー化を狙った大型商品の場合には、意匠権を活用して、デザイン資産をしっかりと守る必要があります。類似・部分を合わせた意匠権の申請の他に、商標登録によるロゴデザインの保護や、不正競争防止法を念頭にしたプロテクトなどの組み合わせも重要です。

05容器包装リサイクル法表示が義務付けられるマークパッケージデザインは、消費者に対して情報を伝える重要なメディアなので、国や業界団体によって、表示義務が課されている内容があります。例えば、未成年者がアルコールを飲まないように、酒類商品には「お酒は20歳になってから」という表示が義務付けられています。幅広い商品に表示を義務付けているものが、容器包装リサイクル法です。容器包装リサイクル法は、2007年に本格施行された法律です。家庭ごみの6割を占める容器包装を再利用することで、資源の有効利用を目指して施行された法律です。容器包装の製造・使用事業主にリサイクルの義務を課しました。ガラス・PET・紙・プラスチックの4種類の容器包装が対象になります。この容器包装リサイクル法では、消費者が間違いなく排出の分類ができるように、識別マークを見やすく表示することが義務付けられています。定められた表示マークがあり、定められたサイズで表示しなければなりません。サイズや材料、商品などによって例外規定などもあります。詳細を調べるのには、経済産業省のホームページなどが参考になります。こういった法律は突然施行されることはなく、先行段階から実施に至るまで段階的に情報が開示されています。また、時代に合わせ定期的に改正されていきます。2020年4月から、スチール缶、アルミ缶、PETボトルにおける識別マークのサイズが見直されています。限られたパッケージのスペースの中にマークを表示しなければならないので、できるだけ無駄なく表示ができるよう、業界団体などの最新情報を積極的に収集しましょう。

06契約書契約書は企業を映す鏡、まず自分で読むデザイン事務所と初めて仕事をスタートする際には、契約書を結びます。契約書は守秘義務や権利の帰属などについて規定する基本契約書と、個別の仕事ごとに交わすものに分けられます。基本契約書では、①守秘義務の対象と②著作権の譲渡という2点を明確にすることが重要です。パッケージデザインは新商品の情報を扱うので、何を守秘義務の対象とするのかと、何を禁止するのかを明確にしておく必要があるのです。また、商慣行上の問題として、「二次使用の場合の仕事の進め方」や、「第三者の権利が発生する場合」にどうするかをよく話し合い、契約書を作成することが大切です。まれに「デザイン事務所は、発生したすべての損害をクライアントに賠償しなければならない」「思い浮かんだ時点からすべての権利を当社のものとする」「第三者の知的財産を侵害していないことを保証する」といった、デザイン事務所が抱えられるリスクや権利を超えた一方的な契約書を見ることがあります。契約書を見るとその企業が他社に対し、どのように接しようとしているのかがすぐに分かります。契約書はその企業を映す鏡なのです。法律面から言うと、パッケージデザインが著作物として認められるか、法律が定める著作者人格権の行使を一企業が契約で禁止させることは許されるのか、といった議論は専門家の間でも分かれています。しかし、大切なことは契約内容を法務部任せにせず、商品、広告、デザイン担当者も実務的な視点で内容を確認し、自社がどのようなことを書いているのかを理解してください。法務部門は法律のことは分かってもデザインの実務のことは分かりません。法務部任せの契約書は極端なリスク回避を盛り込もうとする傾向が見られます。仕事を依頼するパートナーとの将来的な関係性を考え、契約書を作成することをお勧めします。契約書とは将来、会社から自分がいなくなっても、お互いの法人が末永く良い関係で仕事ができるように結ぶ約束事だと思います。

01パッケージデザインと社会環境環境対応へのスピードが成否を分ける家庭ゴミのおよそ6割がパッケージであり、「環境問題と包装容器」は社会の大きなテーマです。また、2015年に「持続可能な開発目標(SDGs:SustainableDevelopmentGoals)」が国連本部で採択され、環境問題に対しどのように取り組みを強化していくかが大きな課題となっています。このような中で、企業はパッケージデザインの開発においていかに環境負荷を減らしていくかが問われています。ここ数年の変化として、こういった企業の取り組みは消費者に高く評価される傾向にあり、企業の社会的責任というだけでなく、マーケティングの重要なテーマとしても注目されています。ネスレ日本は2019年9月にキットカットのパッケージをプラスチックから紙に変更することで、年間約380トンのプラスチック削減を見込んでいます。2021年までにはリサイクルしやすい単一素材にするとしています。サントリー食品インターナショナルでは2020年4月に伊右衛門のラベルをなくした「伊右衛門ラベルレス(首掛式ラベル付)」を数量限定で発売しました。こういった各社の取り組みは環境への意識の高まりとともに消費者に注目されています。先日、イギリスから帰ってきたパッケージデザイナーの知人と話をしたときにイギリスの消費者が商品を選択する際、包材に使われている原料や環境配慮に対する情報感度がいかに高いかを聞いて驚きました。「日本ではボールペン1つ買うのに、何重にも過剰に包装する。オリンピックで多くの海外の人が来たときに、日本の環境への意識の低さはとても話題になると思います」と言われ、どきっとしました。環境に配慮したパッケージにいかに早く取り組めるかということが企業の成否を分ける大きなテーマになっています。

02SDGs(SustainableDevelopmentGoals)持続可能な開発目標に向けて2015年9月、国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催され、「持続可能な開発目標(SDGs:SustainableDevelopmentGoals)」が加盟193カ国の全会一致で採択されました。2030年に世界が目指すべき17の目標が提示され、さらに細かく169の具体的なターゲットが設定されています。世界規模で地球環境のために行動しようという目標は1992年のリオデジャネイロの地球サミット以来、何度もテーマになっていますが、SDGsは目標がかなり細かく設定され、先進国も発展途上国もみんなで取り組む形にしたこと、持続可能性と企業価値が連動し投資家が動いたこと、などの背景があり急速に各国の重要なテーマとなりました。日本でも実施に向け2016年5月に総理大臣を本部長とした「SDGs推進本部」を設置し、日本の指針となる「SDGs実施指針」を決定しました。指針の中では日本が優先すべき8つの重要分野があり、その中の5番目に「省エネ・再エネ、気候変動対策、循環型社会」が挙げられています。そこでは「食品廃棄物の削減や活用」がテーマとして扱われ、具体的に「食品リサイクル法に基づく安全・安心な3R促進」がうたわれています。こういったSDGsの実現に向け、国連、日本政府、経団連、企業活動、学校教育と様々な主体が取り組む形になっています。それぞれの進捗状況が定期的に国別に報告されることも各国の環境への取り組みを盛り上げているかと思います。SDGsの広がりに合わせ、各企業も経営目標として取り組むことになりました。パッケージに関わる分野で、リユースやリデュース、リサイクルといった活動にどう取り組むかは、1企業のミッションとしてだけでなく、パッケージ全体のエコシステムの在り方という企業、業界の垣根を越えた社会的な目標となっています。

03表示マーク表示マークにもライフサイクルがあるパッケージデザインに表示されるマークには、表示を義務とするものと、条件をクリアした場合に表示が許可される2つのタイプがあります。また、義務にしても許可にしても、国が中心となって推進しているものと業界団体が中心になっているものがあります。国が中心となっているものは法的な罰則があるなど、より厳格な決まりがあります。表示マークは、決して環境問題に関するものだけではありません。特定保健用食品に代表される健康に関するものや、アレルギーに関する表示、お酒マークや「お酒は20歳になってから」といった未成年の使用を禁止するもの、優秀なデザインと認定されたときに表示が可能になるものなど様々な表示マークがあります。パッケージデザインの表示マークの活用において大切なのは、必ず表示しなければならないもの、ある条件を満たせば、それが商品の優位性として表示できるものを分けて知っておくことです。また、表示マークは社会の大きな流れの中で、ある役割を担って登場するので、その動向には常に注意を払う必要があります。製品にはライフサイクルがあり、導入期、成長期、成熟期、衰退期と4つのステージに分かれますが、表示マークにもライフサイクルがあります。世の中に出たときには認知があまりない段階ですが、時代の流れに合い、表示マークが差異化ポイントになってくると、多くの商品がその表示マークを付けるようになります。その後の成熟期には、もはや当たり前のマークになっていることも少なくありません。また、以前から存在するマークが、社会の出来事や関心の高まりを追い風にして、一気に注目されるようなケースもあります。自社商品やブランドの方向性と関わる表示マークの種類と、認定までの期間や手順を整理し、自社商品以外のカテゴリーの動向にも目を向けておく必要があります。

04LCA分析一商品が生み出す生涯の環境負荷LCA分析は、個別の商品やサービスが、製造から廃棄、再利用に至るまでの環境負荷を評価する方法です。ISOでも規定されているようにその歴史は古く、1969年に米コカ・コーラがリターナル瓶と缶飲料の環境負荷を分析したのがスタートといわれています。LCAはライフサイクルアセスメントという名の通り、ライフサイクル、つまり生まれてから廃棄されるまでが対象になります。LCA分析そのものは従来からあった手法の1つなのですが、商品の原料から再利用までの二酸化炭素の排出量を商品に明示するという「カーボンフットプリント」に用いられたことで認知が広がりました。環境負荷という問題をマーケティング活動の中でどう捉え、戦術に落とし込み、パッケージ開発とコミュニケーション活動をどう実現していくかが重要になってきます。LCA分析では、原材料から生産、使用、廃棄、再利用に至るまで、すべてのプロセスにおいての環境負荷を評価することが求められています。具体的には「資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル」という5つのプロセスごとに環境負荷を定量的に算定していき、商品のライフサイクルを合計してどの程度環境に負荷を与えるのか、どのプロセスの環境負荷が大きいのかを把握します。例えばシャンプーで髪を洗ったときに使うお湯も環境負荷として計算されます。また、改善によって環境負荷を減らそうと考えたとき、どのプロセスを改善すればいいのかを把握するのに役立ちます。現在の商品開発においては、その商品を使ったときの体験全体をどうデザインするかが大切になっています。環境負荷も同じ視点で考える必要があります。積極的な環境への取り組みをデザイン上でどう提示していけるかは、ブランド戦略の1つとしてますます重要になるでしょう。

053R循環型社会を目指す活動パッケージの環境問題への対応として、3Rというキーワードがあります。これはリデュース・リユース・リサイクルの3つの頭文字を取ったものです。2000年に循環型社会形成推進基本法に導入され、2004年にはG8で日本の首相が「3Rイニシアティブ」を提案するなど、3Rに関する取り組みや理念の浸透を国内外で図っています。日本では2016年に決定した「SDGs実施指針」の中に「食品リサイクル法に基づく安全・安心な3R促進」がうたわれたことで、3Rに関する活動は企業だけでなく消費者の意識・日常を大きく変えています。リサイクルは、“再資源化”するという考え方です。2つの方法があり、廃棄物を燃料として利用する方法と、廃棄物を原料にして新たな商品を作るという方法です。牛乳パックやペットボトル、空き缶などはリサイクルが積極的に行われています。リユースとは“もう一度使う”という考え方です。「洗浄などのプロセスを通じて、生産工程を経ずにもう一度使う」というプロセスです。ビール瓶として使われている「リターナル瓶」はこの典型といえます。リデュースは「減らす」という考え方です。そもそもの梱包材量を減らしたり、詰め替え用のリフィルなどを用意し、本体の容器を捨てなくて済むようにする方法などが考えられます。3Rの考え方は、それぞれの商品ブランドの考え方とも関わってきますし、リユースなどは、生産や回収面も含めた大きな仕組みが必要になることもあります。現在、できるだけ梱包の面積を少なくしつつ、パッケージの機能を失わないようにして、コストダウンと環境への配慮の両方を目指したり、リサイクルしやすいように素材ごとの分別がしやすいようにしたりといったパッケージ上の工夫がされています。多くの企業が3R社会に向けた商品づくりをしています。パッケージデザイン制作の際には、パッケージ本来の機能が損なわれたり、多大なコストがかかったりしないように、こういった流れを取り入れていくことが必要です。

06ユニバーサルデザインできるだけ多くの人が利用可能であるようにデザインする環境意識と共に、社会全体の意識が高まっているデザイン潮流の1つにユニバーサルデザインがあります。ユニバーサルデザインの基本的な考え方は、「できるだけ多くの人が利用可能であるように製品をデザインすること」といえます。対象は製品だけでなく、建物や環境を含むハード・ソフトの両方が対象になっています。できるだけ多くの人が利用可能とは、「年齢、性別、国籍、個人の能力にかかわらず、使うことができる製品や建物、環境を最初からつくっていこう」と言い換えることができます。米ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイスが提唱した考え方で、もともとは障害者を対象にしたバリアフリー(障害を取り除く)という考えを進化させたものと考えられています。一過性のものではなく、デザインの必要条件になってきているといえます。ユニバーサルデザインには7つの原則があります。「誰にでも公平に利用できる」「利用者に応じた使い方ができる」「使い方が簡単ですぐ分かる」「使い方を間違えても、重大な結果にならない」「必要な情報がすぐに理解できる」「無理な姿勢を取ることなく、少ない力でも楽に使える」「利用者に応じたアクセスのしやすさと十分な空間が確保されている」です。すべてがパッケージデザインに当てはまるわけではありませんし、パッケージ本来の機能や経済性をトレードオフしてまで、ユニバーサルデザインを優先させることも現実的ではありません。現状の環境の中で、コスト面、実用面に合う形でユニバーサルデザインへと少しずつ進化させていくことを心掛けましょう。ユニバーサルデザインの開発においてはアイデアを形にして終わりではなく、改善を積み重ねていくことによってデザインの完成度を上げ、消費者の利便性を高めることが大切です。

07アクセシブルデザイン具体的な改善の道しるべユニバーサルデザインは「障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、できるだけ多くの人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする」という理想的な考え方ですが、現実的に達成するにはとてもハードルの高い目標です。そこで、より広い範囲でパッケージの改善を実現しようという考え方が、アクセシブルデザインという考え方です。星川安之氏は『アクセシブルデザインの発想』(岩波書店)の中で、「福祉用具と一般製品の中間的な位置にある、多様な人の身体的・感覚的・認知的特性に対応した、直感的でわかりやすい工夫と、それを応用した製品とサービス」と紹介しています。この考え方は今後、高齢者が増加する日本において重要になっていきます。高齢者にとって使いやすい包装とは、例えば下記のようなパッケージです。・開封しやすい・内容物が取り出しやすい・表示・賞味期限などが見やすい・誤って使用することがない・廃棄しやすいパッケージでは既にこういった工夫がなされた商品を見ることができます。シャンプーの容器の側面には、表示が見えなくても手で触れば判別できるようにギザギザが入っています。このギザギザは日本のシャンプーの多くで共通して活用されています。牛乳パックの上部には触ることで牛乳と分かるくぼみが設けられており、アルコール飲料の缶には点字が施されています。こういった多くの人が使いやすい包装の在り方を具体的にJIS規格としてまとめたものが、日本工業規格「包装─アクセシブルデザイン─」です。ここではアクセシブルデザインを「何らかの機能に制限のある人に焦点を合わせ、これまでの設計をそのような人々のニーズに合わせて拡張することによって、製品をそのまま利用できる潜在顧客数を最大限まで増やそうとする設計」と定義し、表示や開封といった包装の具体的な視点を提供しています。こういった規格を参考にしながら、今までの商品の良さを損なうことなく、より多くの人が使える配慮を進めていきましょう。

08大きな変化があったとき新型コロナ、東日本大震災…2010年に『図解でわかるパッケージデザインマーケティング』を書いた翌年に、東日本大震災がありました。そして本書を執筆している2020年の9月、中国の武漢で発生したと考えられる新型ウイルスは世界中で猛威を振るい、現時点で3460万人が罹患し、103万人の方が亡くなっています。様々な研究は進んでいるものの、今のところ有効性のあるワクチンは開発されていません。日本でも外出をできるだけ控え、リモートワークを中心にした自粛生活が続き、ほとんどの大学がオンライン授業を行った結果、休学や退学を希望する学生が日に日に増加しています。残念ながら10~20年に1度は災害や戦争、疫病など人々の生活が大きく変わるような状況が巡ってくるように思えます。こういった場合、人々は今まで通りの生活ができなくなり、精神的にも大きなストレスが加わって、その結果は生活様式や購買行動にも反映されていきます。パッケージデザインは人々の日常生活と直結していますので、その影響がダイレクトに表れると感じます。東日本大震災と新型コロナの状況で共通している点を踏まえながら、大きな社会変化とパッケージデザインについて考えたいと思います。こういった状況になると人々は安心・安全を最優先し、ロングセラーブランドに回帰する傾向が強くなります。心理的に新しい商品を探索し、購入しようという気持ちが薄れるという面と、物理的に普段の買い物に時間をかけたくない、かけられなくなるという両面があるように感じます。例えばコロナ禍での店頭での滞在時間は明らかに短くなっていますし、商品を触って探索しづらいという影響から、既によく知っているロングセラー商品を購入しようという傾向が強まるのでしょう。一方で、人々は困難があってもそこからはい上がって生きていこうと、希望の光、新しい光を求めます。東日本大震災のときには、地域への思いや人とのつながりの大切さに気づいた人が多かったように思います。プラグではコロナ禍の生活をテーマにして12人のデプスインタビューを実施しましたが、コロナ禍においても生活を前向きに楽しみたいという人の心の強さを感じました。ちょうどWEBではオンライン飲み会で映えるお酒のパッケージデザインの特集がされていました。大きな変化があったときには人の強さと弱さの両面を見据えた「ロングセラーブランドの強化」と「人々の希望に寄り添うこと」の2つの視点がパッケージデザインに必要だと感じます。

おわりに思えば、良いデザインとは何かを悩み、考え続けた蓄積は既に20年を超えました。デザイナーが主役のこの業界で、デザイナーではない私が何とか価値を生み出せないかと奮闘を続けてきましたが、気づけば、素晴らしいデザイナーやマーケターの方々と出会うことができ、皆様から多くのことを教えていただきました。そして今、デザイナーの言葉とマーケターの言葉をつなぐところに私の存在価値があると感じています。その思いをまとめた本書は、150ものテーマになりました。タイトルの鉄則という言葉は“ゆるぎない、変わることのない規則、法則”とされますが、その定義に恥じぬよう、経営学、マーケティング、デザイン、法律など広い領域の論文や研究をベースにしながら、自身の経験と皆様からの教えを文章にしました。150もある鉄則を最後までお読みいただき、ありがとうございました。この150の鉄則が一度に役に立つことはないかもしれませんが、関わるお立場や商品などに応じて、1つひとつのメッセージがじわじわと皆様のお役に立っていくことを信じています。今回、掲載許可をいただきました28もの企業の方々、50を超えるイラストを書き上げてくださったのりさん、短時間で商品撮影をしてくださった倉持涼様、素晴らしいデザインをつくってくださったtobufune様、エステム様、パッケージデザインの社会的な価値を高めようと志を共にし、活動している(公社)日本パッケージデザイン協会の皆様、パッケージの包装としての在り方をご指導くださいました(公社)日本包装技術協会の皆様に心より御礼を申し上げます。また、日々多くの機会をいただいているクライアントの皆様、マーケティングの素晴らしさをご指導くださいました慶應義塾大学名誉教授の嶋口充輝先生、研究の在り方を教えてくださった嘉悦大学大学院教授の上原聡先生、素晴らしいデザインの完成に向け、デザインと調査に日々努力し、ともに走り続けているプラグのみんな、構成から文章表現に至るまで多くのアドバイスをくれた根岸由紀様、愛くるしく応援してくれた2人の子供たち、そして豊富なご経験と視座で本書の完成をリードしてくださいました日経BPの花澤裕二様に対し、深く感謝の意を表したいと存じます。2020年10月小川亮

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