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INTRODUCTIONなぜ、あの人と会話すると心がザワつくのか

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INTRODUCTIONなぜ、あの人と会話すると心がザワつくのか

まずはいい知らせからお伝えしよう。フィードバックは必ずしも難しいものとは限らない。息子の担任が、思いがけず息子の社交性を褒めてくれた。顧客のひとりが、注文の処理が早くなる方法を教えてくれた。前髪をまっすぐ切り揃えたいと思っていたが、美容師から別のスタイルを提案され、実際そのほうがよかった。

私たちは、このようなフィードバックをいつももらっている。ポジティブなフィードバックが問題になることはほとんどないが、褒め言葉に心地悪さを覚えることはある。

それはたぶん、その言葉が本心かどうかわからなかったり、褒められるほどのことをしたのか不安になったりするからだろう。

とはいえ、契約を結びたいと言われる、誰かが自分を賞賛していると知る、自分のスキルが1段階上がる指導を受ける、といったフィードバックにはやはり興奮を覚える。

自分の行動が実を結んだ、思いどおりになった、自分をよく思っている人がいると知るのは嬉しいものだ。

一方で、つらいフィードバックもある。そういうフィードバックをもらうと、動揺したり、腹を立てたり、苛立ちを覚えたり、落ち込んだりする。

自分の子ども、キャリア、性格を攻撃されている、チームからはずされようとしていると思えば、誰だってそういう気持ちになる。この種のフィードバックをもらうと、心に波風が立つ。

そして、鼓動が早くなったり、胃がギュッと締めつけられたり、さまざまな思いが頭のなかを駆け巡ったりする。

心がザワつくと、たいていは「邪魔」に感じて、脇にどけよう、克服しようとする。嫌な気分になり、世界が暗く見え、普段のコミュニケーション能力が発揮できない。

考えることも学ぶこともできないので、自分を守るか、相手を攻撃するか、打ち負かされて引き下がるしかなくなる。

しかし、フィードバックによって生じた感情を脇にどけたり、なかったことにしたりしても、何も解決しない。

確かに、そういう心のザワつきは邪魔である。だが、邪魔をするばかりではない。それは情報でもある。

問題の源がどこにあるかを教えてくれる、一種の地図のような役割を果たしてくれるのだ。心のザワつきがどういうものかを理解し、どんなときに起こるのかを把握する。それが、自分の反応を制御し、フィードバックを活かせる会話力を手に入れるカギとなる。

フィードバックが心をザワつかせる三つの理由

フィードバックをくれる人はいくらでもいるし、自分の欠点が尽きるとは思えない。そう考えると、フィードバックは際限なく私たちの心を揺さぶるように思える。

だがそんなことはない。幸い、フィードバックが心をザワつかせる原因となりうるものは三つしかない。それは、「真実」「人間関係」「アイデンティティ」だ。

心がザワつく理由やそれによって身体に生じる反応、フィードバックへの対応の仕方は、次のようにそれぞれ異なる。

1.真実フィードバックが間違っている、公平でない、役に立たない

フィードバックを拒む正当な理由はたくさんあるが、なかでもいちばんの理由は「間違っているから」だ。

ほかにも、「アドバイスの内容が悪い」「評価の仕方が不公平」「自分に関する情報が古い(または不十分)」などがあげられる。そういうフィードバックをもらうと、拒絶、保身、反論といった行動に出る。たとえ表に出さなくても、心のなかではつねにそうしている。

2.人間関係フィードバックを君からはもらいたくない

フィードバックは、くれた相手が誰かによっても見方が変わる。相手の説得力(のなさ)、信頼性(のなさ)、動機(の疑わしさ)などから、心に波風が立つのだ。また、相手から自分はどう扱われているか、ということでも心はザワつく。

その人は自分に感謝しているだろうか?敬意を持ってフィードバックをくれようとしているだろうか(「メールで知らせて終わりか。ふざけるな!」)?本当の原因は彼らなのに、こちらのせいにしようとしていないだろうか?20年一緒にいて自分の感情を抑えこんでいれば、反応が大きくなるのもわかるが、20秒の信号待ちで出会った人が相手でも、心がザワつくことがある。

3.アイデンティティフィードバックをもらって冷静でいられなくなった

アイデンティティとは、自分の人となりについてや未来に待ち受けることについて、自分で自分に語るストーリーのことである。自分を批判する言葉が耳に入ってくると、人は、自分のアイデンティティを攻撃されたと思う。

そうすると、体内の警報機が鳴り、脳の防御システムが発動し、相手が続きを口にするよりも先に、反撃の準備か逃げだす準備をする。

このときに生じる反応は、アドレナリンがわずかに放出されるといった小さなものから、激しく混乱するといった大きなものまでさまざまだ。

フィードバックをもらったときに生じるザワつきを「邪魔」だと思うのは、それが理不尽なものだからではない。実りある会話に専念できなくなるから邪魔なのだ。

フィードバックをうまく受けとれるかどうかは、フィードバックを分類し選別するかどうか、相手のものの見方を理解しようとするかどうか、最初は適切に思えなくても、そのアドバイスを試すかどうか、フィードバックの内容を検証するかどうか、的はずれ、またはいまの自分には不要と最終的に判断した部分を、見送ったり切り捨てたりするかどうかで決まる。

フィードバックは、受けとった人だけが学ぶものではない。そこから意義のある会話が始まれば、フィードバックを与えた人もまた、自分のアドバイスが役に立たない理由や自分の評価が公平でない理由に気づけるようになり、与える人と受けとる人の両方が、互いの関係性を正しく理解できるようになる。

また、自分の発言に対する相手の反応に互いに目がいくようになるので、想像していた以上に生産的な方向へ会話が進むようになる。ただし、心がザワついていては無理だ。

そのスイッチが入った状態でいると、ためになるかもしれないフィードバックを切り捨てるという間違いを犯したり、置き去りにしたほうがいいフィードバックを重く受けとめたりする。

悪影響を及ぼすという意味ではどちらも同じだ。次のチャプター1から8にかけて、心のザワつきが生じる原因である、真実、人間関係、アイデンティティを詳しく見ていく。

それらがどのように私たちの感情を揺さぶるのかを説明し、それらに効果的に対処する方法を紹介する。

チャプター9では、フィードバックの断り方と、フィードバックをもらったときにうまくやりとりするコツについて説明する。

チャプター10では、集団のなかで生まれるフィードバックに目を向け、組織内にフィードバックを引きだす力を広める方法を紹介する。

チーム、家族、会社、コミュニティといった集団では、そこに属する人とかかわり、互いに影響を与えあう。

だから、自ら学び、発見や成長の機会を求める意欲が高まる刺激を個々に与えれば、フィードバックから自ら学ぼうとする姿勢が組織内やチーム内に生まれる。

また、フィードバックのやりとりで心のザワつきが生まれないようにと、互いに協力的にもなる。

本書ではさまざまな人物の例が登場する。名前は変えてあるが、すべて実在する人物が実際に経験したことである。

自分に当てはめたりしながら、フィードバックのやりとりで大変な思いをしているのは自分だけではないのだと気づいてもらえれば幸いだ。

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