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Day3CSFの見つけ方とその事例

KPIマネジメントに応用できる「制約条件理論」 ここが KPIマネジメントの肝の部分です。 各論に入る前に、 CSFを見つける時に重要な考え方を紹介します。 それは「制約条件理論( TOC = Theory of Constraints)」です。 制約条件理論という言葉は知らなくても、エリヤフ・ゴールドラット教授の著書『ザ・ゴール』シリーズを読まれた方は多いかもしれません。 制約条件理論はさまざまな場面で役立つ考え方です。 もちろん KPIマネジメントにも有効です。プロジェクトマネジメントでもそうです。予算管理や時間管理でも役立つ応用範囲の広い理論ですから、ぜひポイントを確認しておきましょう。「制約条件理論」を理解してもらうために、私は 2つのたとえ話をよくします。 1つは「ネックレス」の話。もう 1つは「工場の組立ライン」の話です。 「ネックレス」で一番弱いところはどこ? 図 8のようなネックレスを引っ張ると、どこが切れるでしょうか?

典型的な回答が「留め金の部分」と「ペンダントトップの部分」というものです。 実際はどうかというと、どちらもそうかもしれませんが、そうでないかもしれません。スッキリした回答ではなくて申し訳ないです。 正しい回答は「一番弱い部分」です。 ですので、一番弱い部分が「留め金の部分」あるいは「ペンダントトップの部分」であれば、これらが回答になります。 なーんだって思うかもしれません。しかし、この「一番弱い部分が切れる」というのが最適な回答です。 当たり前の話ですが、ネックレスは切れてしまったら使い物になりません。ですので、ネックレスを使うためには、この「一番弱い部分」を強化しなければいけません。弱い部分を強化して、引っ張ってもその箇所が切れないようにします。 その後、このネックレスを引っ張るとどこが切れるでしょうか? もう分かりますよね。 「次に弱いところ」です。 そして、順番に弱いところを発見し、次々に強化していき、引っ張る力より全ての箇所が強くなれば、ネックレスはどんなに引っ張っても切れなくなります。

最も弱いところを順番に強化していけば、ネックレスは強くなる。 これが、最もシンプルな制約条件理論を理解するためのメタファー(たとえ話)です。 そして、この弱い部分こそが CSF( Critical Success Factor)なのです。このメタファーから 3つの法則が分かります。 ① CSFを強化するとネックレスは強くなる ② CSFは移動する ③ CSFを順番に強化し続けるとネックレスは切れなくなる 組立ラインの「制約条件」はどこか もう 1つのたとえ話。今度は工場の組立機械です。 図 9のように組立ラインの左側から部品を組立機械 A → B → Cと順番に通します。すると右側に完成品ができます。組立機械の生産能力は、それぞれ 1時間当たり A: 50台、 B: 20台、 C: 40台とします。

講演やワークショップでは、この図を見せながら、こんな質問をします。「この条件下で、この組立ラインは 1時間当たり何台の完成品を作ることができるでしょうか?」 回答は、「 1時間当たり 20台の完成品ができる」です。 いかに組立機械 Aと Cが 1時間当たりにそれぞれ 50台、 40台の生産能力があったとしても、組立機械 Bの生産能力が 1時間当たり 20台なので、結果として製品は 20台しか製造できません。 組立機械 Bが「制約条件」になり、全体の生産性を決定します。つまり、この組立機械 Bが、プロセスの中で一番弱い箇所であり、 CSF( Critical Success Factor)にあたります。 生産能力が一番低いところが CSF

では、この組立ラインの生産性を 1時間当たり 35台にするには、どうすればよいでしょう? これもいろいろな方法があります。しかし重要なポイントは 1つです。それは、組立機械 Bの生産能力を現在の 1時間当たり 20台から 35台に引き上げる必要があるということです。 具体的には、もし組立機械 Bの旧型(生産能力 1時間あたり 15台)が倉庫に眠っていれば、その旧型機械 Bを引っ張り出してきて、並行稼働(新型の組立機械 Bに加えて倉庫にあった旧型の組立機械 Bも両方とも稼働)させればよいのです。 これで、次の図 10のように 1時間当たり、 35台の完成品が作れる可能性が出てきました。

では、新旧の組立機械 Bを扱うオペレータをどう配置すればよいでしょうか? あなたが工場長だったら、どのような判断をしますか? 以下の選択肢から選んでください。 ①新規採用する ②組立機械 Bの作業員に頑張ってもらう

③組立機械 A・組立機械 Cの作業員から異動してもらう これも前提条件によって違いますが、 ③の組立機械 A・ Cの作業員から異動してもらうが妥当解です。 一般的に生産ラインは、組立機械の生産能力に合わせて人員を配置していることが多いですね。ですので、組立機械 Aや Cは、それぞれ 50台、 40台組み立てられる作業員がいる可能性が高いのです。つまり余剰人員がいるのです。 ①の「新規採用」は、採用コストもかかりますし、人件費も増えます。人材育成のコストやパワーもかかります。 コストをかけないために、 ②の組立機械 Bの人に頑張ってもらうという話もよく聞きます。短期間であれば、そのような選択肢もあるのかもしれません。しかし、無理をし続けると、組立機械 Bの作業員が体調を壊したり、辞めたりします。このような無理な施策は長続きしないものです。 組立ラインは、分かりやすい制約条件理論のメタファー(たとえ話)です。 一番生産能力の低いところを特定する。これが CSFにあたります。 そして Goalから逆算すれば、 KPIを計算できます。今回であれば、必要な作業員の数などがそれにあたります。それを制約条件ではない部分(今回では組立機械 Aと C)が支援するわけです。 ネックレスのメタファーも全く同じですね。ネックレスのチェーンの部分を一周チェックすると、傷がついていたり、細かったりするところがあります。ここが切れやすいと想像できます。その部分が CSFです。 「制約条件」が減っていくと業績が上がる ネックレスのチェーンの部分をチェックするように、組織の弱いところをチェックするにはどうしたらよいでしょうか。 弱い組織とは、たとえば新メンバー(新人・異動者・転職者・新管理職)がいる組織。あるいは情報が限られている組織。具体的には、雇用形態が弱い契約社員、派遣社員、業務委託が多くいる組織などが考えられます。 このような組織の場合、それ以外の組織が守れば、組織全体が強くなります。「制約条件」が減っていけば、生産性が高まり、業績が上がる。 とてもシンプルな話です。 イケてる組織、業績を上げ続けている組織は、この「制約条件理論」に従って、事業運営をしていることが多いようです。 Googleの調査で「心理的安全性が高い組織」の業績がよいという話や、ハーバード大学のロバート・キーガン教授が提唱した「弱さを見せあえる組織は強い」という話と同様です。弱いところ、困っていることを周囲に伝えると支援してくれる組織の業績がよいのです。 逆にイケてない組織は、周囲が弱いこと、困っていることを話すと、「自分たちで頑張れ!」と言ったり、あるいはここぞとばかりにいじめてくるのです。支援の全く逆ですね。 先ほどの工場の組立ラインの例でいうと、組立機械 Bの人たちに、自分たちで頑張れと言うのです。 これまでの制約条件理論のおさらいです。 プロセスの中で一番弱いところを見つけます。一番弱いところが CSFであり、それを組織全体で支援することを繰り返せば、業績が上がります。 繰り返すのもポイントの 1つです。ネックレスのチェーンの弱いところを順番に強化していきました。制約条件は移動するのです。 この後、 KPIの具体的な事例をたくさん紹介します。しかし、事例で取り上げたケースは、過去の CSFであり、過去の KPIです。過去の CSFはすでに強化されていて、現在は別の CSFを強化しているはずです。 ならば、なぜ過去の事例を紹介するのか? それは、 CSFを見つける勘どころをイメージしてもらうためです。 CSFの具体的な見つけ方 では、 CSFを見つけるための具体的な方法を説明しましょう。 ①ビジネスプロセスを図示 ②そのプロセスの中でどこが弱いのかを見つける = CSF じつは文章にするとたったこれだけです。 しかし、これを関係者で図にして、確認するプロセスが重要です。先ほどの MC 4の確認ワークショップと同じです。 関係者で認識を揃えることが重要なのです。 ちなみに、最初からこのプロセスを複雑に図示する必要はありません。「最初から」と書きましたが、正確に表現すると、最後まで全体像を精緻に表現する必要はありません。 目的は CSFを見つけることです。つまり、ビジネスプロセスの大きな流れの中で、弱い箇所を見つけて、その箇所だけ、さらに精緻に分析すればよいのです。 図 11をご覧ください。これは会員制の事業のビジネスプロセスの図です。最近流行りのサブスクリプション(サブスク =月額固定料金)型の事業ともいえます。

まず、このような図を作ります。どうしても精緻に作りたがる人がいるかもしれませんが、そこは何とか我慢して、シンプルにするのをおすすめします。 次は、売上やコストを式として表現し、それを元に仮説を立てて、データで確認をします。式やデータが苦手という方がいるかもしれません。しかし、組織の中には、数字が得意な方が必ずいます。その方を仲間にして、一緒に考えましょう。これらを通して、 CSFにあたりをつけます。 たとえば、この種の会員制ビジネスの売上は、「売上」 =「会員数」 ×「継続月数」 ×「月会費」 と表現できます。「会員数」は「入会数」 −「退会数」の差分。そして継続月数は、「退会数」を減らすことで大きくできます。 コスト側も式にできます。 コスト =集客費 +人件費 +システム費 +店舗費 +他

当たり前ですが、売上の各項目は増加させたい。そしてコスト側の各項目は減少させたい。つまり、二律背反問題が起きるのですよね。 たとえば新規会員数を増やすためには、集客費を増やさなければいけない。しかし、コストの中で集客費は数少ない変動費なので、利益が厳しい時は、減少させなければいけないといったケースです。「売上 −コスト」が利益ですから、このように数式にすることで、利益を表すことができます。そして、この中で、どの項目が自分たちで変化させられる「変数」つまり「変動費」なのかを考えます。あるいは、その業界や職種の経験が長い人に、アドバイスや意見をもらいます。「会員制ビジネス」では、退会数を減らすことが鉄則です。それは、これらの式を見れば分かります。「会員数」は「入会数」 −「退会数」の差分。そして継続月数は「退会数」を減らすことで大きくできます。「退会数」を減らすことができれば、「会員数」の増加にも、「継続月数」の増加にも寄与するのです。 1粒で 2度おいしいわけです。 それをデータや現場の声で確認します。念のために、「退会」データに加えて「入会」のデータも確認します。データは、どのような属性の人が「退会」しやすいのか、あるいはしにくいのか。現在保有しているデータでよいので、素早く現状把握することが重要です。 あわせて、現場のハイパフォーマー(優秀な人材)とミドルパフォーマー(平均的な人材)の目星をつけておくこともポイントです。ハイパフォーマーとミドルパフォーマーの行動の比較により、何が CSFかが判明することが少なくないからです。 「最重要」ではなく「プロセスが弱い」と表現する理由 最後に 1つ案外重要なポイントを説明します。 CSFが分かった後に、現場に「介入」する際のポイントです。 以前私は、 CSFのことを「最重要プロセス」と呼んでいました。今でも、最も強化すべきポイントであり、大事なポイントなので、この「最重要プロセス」という名称自体は間違っていません。 しかし、最重要という言葉のニュアンスとして、そこが重要であり、他は重要ではないと感じる方が多いことに気づきました。 そこで、最近は、重要と表現するより「弱い」がいい感じだなと思っています。「そのプロセスが弱いので、周囲の支援が必要です。なぜならば、周囲のプロセスは強いわけですから。支援しましょう」と伝えると、納得してもらえるケースがよくありました。 同じ内容なのですが、「これが重要」と言い切ると、他の部署がやっかむようです。あえて争いを作る必要はありませんよね。

 

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