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CHAPTER6会計・ファイナンスのKPI

会計的には売上総利益という表記の方が適切ですが、本書では以降、一般的な表現である「粗利」を用います。粗利は事業や製品の根源的な収益力や競争力を反映する利益です。全社単位でも見ますが、事業や製品別の粗利額や粗利率も非常に重視されます。一般に売上原価の小さいサービス業は高く、逆に売上原価の大きな流通業では小さくなる傾向があります。この指標は右記のように業種や商材ごとに異なるため、同業他社や業種平均と比べたときの高低が重要になります。例えばアップルのスマートフォンであるiPhoneの粗利率は概ね60%以上とされており、他のスマートフォンを圧倒しています。これはiPhoneが非常に強い競争力(ブランドイメージや顧客のロイヤルティなど)を持っており、高い値付けが実現できることに起因します。逆にこの指標がライバルよりも著しく低い場合は、コスト競争力が劣っており、競争上不利な状況に立たされていることを示唆します。既存の事業や製品に関しては、時系列での変化をしっかり追うことが必要です。例えばこの数値が大きく下がっている場合には、商品仕入値や原材料費などの原価が高騰している、あるいは市況の悪化や競争相手の安値攻勢による実売単価の低下などが示唆されます。特に売上原価の比率が高いビジネスで、かつボラティリティ[★28]の大きなビジネスでは、そうした市況や競争環境もあわせてウォッチするのが一般です。意外に見逃しがちなのは、粗利率の大きい製品の売上げ構成比が減っているというパターンです。それを見逃さないためにも、各製品の粗利率を把握したうえで、その販売比率などにも目を向ける必要があります(多くの企業ではそれぞれ実数として把握されています)。新製品の粗利率は、価格戦略と大きく連動してきます。予想原価を見込んだうえで、競争力があると見込まれるなら高く価格設定しますし、それほどでもないと思われるなら競合状況を勘案して妥当な値付けを探ります。競合する類似製品がない場合などは、通常、投資回収のためにも高い粗利率を設定するのが一般的です(いわゆるスキミング・プライシング[★29])。新製品の場合、目標値がそのまま維持できていれば当初のマーケティング戦略通りに物事が進んでいるといえますが、予想外に目標を下回った場合には、実売価格の問題なのか、それとも予想以上に原価が上がってしまったのかなどを早期に突き止め、解決のアクションをとる必要があります。粗利率は高い方が望ましい一方で、売上原価をいたずらに下げればいいというものではありません。例えば飲食ビジネスであれば、売上原価の低減は食材のレベルダウンなどを通じて行われることがありますが、それはかえって顧客離れを促すことにつながりかねません。小売りでも「安かろう悪かろう」の商品ばかり並べていては、客足は遠のくでしょう。費用は常に売上げとの見合いで検討されるべきものなのです。関連KPI売上高営業利益率、価格維持率(値引き率)、経費率

営業利益は全社のみならず、事業レベルや製品レベルでも本業の儲けそのものを示す重要な利益とされています。欧米で多用されるEBIT(EarningsBeforeInterestandTaxes:利息および税金控除前利益)とほぼ同じ意味を持ちます。その意味で国際比較しやすい数字でもあります。売上高営業利益率の高い会社は俗にいう「儲かっている会社」といえるでしょう。この指標も業界によって多少の差はありますが、高低の大まかなめどはあります。一般に、5%程度なら「まずまず」、10%なら「かなり順調」、15%なら「高収益」、20%以上なら「笑いが止まらないくらい儲かっている」といった感じです。営業利益ベースでの赤字は一般には好ましくない状態といえます。事業ごとにこの指標を見ることもできますが、その際には事業間で共有している間接費(本社部門の人件費など)の配賦(振り分け)が大きな問題となります。ここでは事業ごとの売上高営業利益率について考えましょう。事業ごとにこの指標を使う場合、先に示したように間接費の配賦が大きな論点となってきます。よくあるのは「売上げに比例させて配賦する」というやり方ですが、これはビジネスモデルや粗利率が違う場合、不公平感を生みかねません。超簡便版でもいいのでABC(★8参照)などを用いて納得感のある配賦をすることが必要です。実務的によく用いられるのは、その事業で使ったことが明確な直接費(その事業部の人件費など)のみを差し引いた事業部ごとのコントリビューション(貢献利益)の比率を見る方法です。事業部長から見ると、直接費は自分の裁量でかなりの部分コントロールできる費用ですから、それを重視するわけです。企業内の売上げ構成や本社人件費に大きな差がない場合は、過去の数値を参考にし、例えば「あとで配賦される間接費はこのくらいだから、それと目標売上高から逆算して、売上高に対するコントリビューションの比率は10%を目指そう」などと考えるわけです。売上高コントリビューション比率は事業ごとに見ていくことが大切ですが、事業の位置づけや成長ステージによって、当然ばらつきが出ます。例えば新規事業は、最初数年はコントリビューションがマイナスということが多いですが、会社としてある程度は新しい事業に取り組まないわけにもいきません。そこで通常は、全社としての目標営業利益率と、想定される各事業部の売上高とコントリビューション比率、そして間接部門のコストなどを勘案したうえで調整が図られるのが一般的です。営業利益率も粗利率同様、いたずらに経費削減で高めようとしてはなりません。しっかりとした営業活動を行うからこそ売上げが生まれるという場面も多いからです。一方で、会社の中には無駄な経費もたくさんあるものです。冗費を削り、売上げに結び付く活動にしっかりお金を使うという方向性は維持する必要があります。関連KPIコントリビューション、売上高経常利益率

経常利益はアメリカなどでは対応する概念がなく、日本独自の利益の概念といえます。一方で、日本人の経営者にとっては、売上高営業利益率と同じ、あるいはそれ以上に重視する人も少なくありません。この数字が高いことは、本業に加え、財務状態も良好な企業といえます。事業部などの現場で独自に設定されることはあまりなく、経営陣や財務部門が気にする数字といえます。営業外収益の具体的な項目としては、受取利息、受取配当金、有価証券売却益、受取賃借料などがあります。一方、営業外費用には、支払利息や棚卸資産廃棄損などが含まれます。棚卸資産廃棄損は事業部にも関係する数字ですが、それ以外は投資や融資(あるいは借り入れ)といった金融活動や、本業とは関係のない部分での収益・支出となります。「事業には直接関係はない」といいながらも、近年は投資を積極的に行い、配当を得る企業なども増えています。投資やそのための資金調達も広い意味での本業とみなせば、経常利益を意識することにも一定の意味はあるといえるでしょう。この数字は通常、事業部レベルで設定されることはありません。ただし、京セラのアメーバシステムのように、社内金利制や間接費の配賦などを通じて社内の管理会計的にこれを設定するケースも稀にですがあります(なお、京セラで設定される付加価値=差引売上げは、従業員の人件費を引いていませんので、厳密には「人件費差引前経常利益」とでもいうべき指標になっています)。売上高経常利益率は、事業の現場で目標設定されないとはいえ、ある程度意識はされます。例えば配当収入が潤沢な企業であれば、その分、目標となる営業利益率を低めに設定することもあるかもしれず、それが事業単位でも効いてくるということです。逆に、会社として借り入れが多く支払利息が大きい場合、最終的な利益を確保するためにも、目標となる営業利益率は高くなるかもしれません。経営レベルでは、同業他社並みの経常利益率を達成するためにプレッシャーが働くのが一般的です。まずは手を打ちやすい支払利息の削減などを通じてこの数字を高く設定し、実現しようというのが一般的です。一方で、借り入れを減らすことは投資の原資を減らすことにもつながりますので、そうしたバランスを見極めながら、財務部やCFO(最高財務責任者)と相談しながらこの数字を設定し、アクションにつなげていきます。経常利益はその気になれば有価証券の売却などで「お化粧」ができる点には注意が必要です。一時の利益かさ上げのためにこれらを調整弁的に使う企業もあるので、他の会社の数字を参考にする際などには留意しておく方がいいでしょう。逆に、自社の場合、どの程度そのような調整弁があるかを理解しておくことも、いざというときの備えとしては必要といえます。関連KPI売上高営業利益率、コントリビューション

本書では以降、税引後利益ではなく、より一般に用いられている「純利益」、あるいは「当期純利益」という言葉を用います。まず、税金を引く前の税引前利益は経常利益に特別利益(固定資産売却益、投資有価証券[★30]等の売却益など)を足し、特別損失(固定資産売却損、固定資産除却損、投資有価証券売却損、災害損失など)を差し引いて求めます。そこから法人税等を支払った残りの額が純利益です。法人税等の支払いまでを含めた、企業としての最終的な収益性を示す数字ともいえます。この数字を気にするのは基本的に経営陣、さらには企業の持ち主である株主などとなります。純利益が多く出れば、それは自己資本の厚みを増すことにつながっていくからです。また、現在のルールでは赤字でも配当などを出せますが、かつては、配当はこの純利益の使途の1つで、それらを支払った残りが自己資本に組み込まれていました。今でもその感覚で経営を行っている経営者はいます。この指標は通常、事業部単位で意識されることはあまりありません。企業の経営陣としては、株主に対する手前からも、当期の純利益を黒字にしたいものです。それゆえこの利益の段階で黒字を目指すことが1つの目標になります。仮に特別利益と特別損失がなければ、これは経常利益から法人税等を支払ったものとなりますので、目標の売上高と経常利益を設定し、税率を与件とみなせば、自ずと目標となる純利益や純利益率も決まってきます。ただ、この数字は経常利益以上に「お化粧」ができる数字でもあります。特に老舗の企業では簿価が時価よりもはるかに低い不動産を持っていることが少なくありません。そこで、そうした不動産を売却することで、経常利益は赤字でも、純利益ベースで黒字化しようとすることが時々あるのです。ただし、そうした方法で益出しをしても、プロの投資家からはほとんど評価はされません。先に「税率を与件とみなせば」と書きましたが、税法上違法ではない節税対策を駆使することで、実質的な法人税率を下げることは可能です(WORDS094参照)。実際に税務の専門家に依頼することで、そうしたことを行っている企業もあります。アメリカの巨大プラットフォーム企業がグローバルなレベルで節税対策をしていることも有名です。ただし、いくら合法でも、過度な節税は消費者や当局の反感を招くこともあるのでバランス感は必要です。COLUMN株式公開企業であれば、純利益は向上させる対象となりますが、非公開企業でかつ上場を目指さない企業の場合などは、あえて純利益をギリギリ黒字にしたり、時には赤字にしたりすることもあります。同族企業で経費と個人的支出の境界があいまいな一方で、受注は底堅い場合などによく発生します。また、役員報酬を赤字(黒字)ギリギリになるように設定する企業もあります。世の中の企業の多くは、必ずしも純利益を多くすることを目指してはいないのです。関連KPI売上高経常利益率、実効税率

日本でもIFRSを導入する企業が増え、包括利益を示すようになりつつあります(現在は過渡期のため、それまでの日本方式による当期純利益と、IFRS準拠の包括利益を同時に示しています)。包括利益は、図14に示した利益であり、その時々の経済状況や市況を織り込んだ最終利益といえます。本業での儲けのほかに、良い資産を持っていると増える利益といえます。この利益は大きいに越したことはないのですが、図からもわかる通り、企業独自でコントロールできない要素も大きく、かえって企業本体のビジネスの実力を見にくくするという批判もあります。自社でコントロールできない部分が多いためか、この利益を最重要KPIとしている日本の経営者はまだ少ないようです。また、純利益以外の部分が年度末になってみないと確定しない部分が多く、PDCAサイクルともやや相性が悪いです。事実、2020年3月期決算の企業は、コロナ禍による3月の株価下落でその他包括利益が一気にマイナスになるケースもありました。とはいえ、包括利益が下がっていいわけではないので、今後も値下がりが見込まれる有価証券は売るといった、包括利益を高める努力は当然求められるでしょう。なお、EBITやEBITDA(WORDS088参照)、純利益などは、その何倍が企業価値になるといったマルチプル法[★31]による企業価値算定にも用いられますが、包括利益はその目的にも必ずしも合致しません。IFRSが今後どのくらいのスピードで浸透していくかはまだ不透明ですが、おいおい日本で採用する企業も増えるでしょう。多少使い勝手の悪い部分もありますが、すでに導入した企業の財務諸表に目を通すなどして今のうちから慣れておくことが必要です。COLUMN世界的にはIFRSが主流になると考えられる一方で、それが人事考課などの面で現場を混乱させる可能性もあります。例えば、子会社の社長の評価は、これまで会社ごとの営業利益などで行われてきました。それが「包括利益をベースに評価を行う」となったら彼らも混乱するでしょう。せっかくこれまでの基準では大きな利益を上げたのに、IFRS基準ではのれんの減損で評価を下げる子会社社長もいるかもしれません。そしてそれは当人の責任ではなく、前任者の判断ミスということもあるのです。関連KPI税引後利益

資産をいかに効率的に使って利益を上げたかということを示す数字で、日本では「経営者の通信簿」の上位に来る指標の1つとされます。無駄な資産を抱え込まず、資産を有効活用して利益を上げるとこの数字は上がります。P/LとB/Sの数字を用いて計算する指標の中でも最も代表的なものです。なお、ROAの計算式の分子として純利益を用いることもあるため、どちらを分子として用いているかには注意が必要です。ちなみに、日本基準の決算短信サマリーでは、「総資産経常利益率」の方を採用しています。一方、東洋経済新報社の『会社四季報』では、「総資産純利益率」を用いています。日本ではROAの平均は、分子に経常利益を用いた場合、3%から4%程度とされます。景気変動も受けますが、それ以上に業界の特性を反映します。例えば大きな設備投資を必要とする割に世界的な競争が厳しい製造業(例:家電など)ではこの数字は下がりますし、設備投資を必要とせず、利益率も高いサービス業などではこの数字は高くなります。2019年度に東証1部上場企業で最も経常利益ベースのROAが高かったのはカカクコムで52・8%でした。そうした事情もあって、この数値は業界平均と比較するのが一般的です。かつては株式の持ち合いなどもあってこの数字が低くても許容される時代もありましたが、株主(特に外国人株主)からの資産効率を上げよというプレッシャー(さらには安定株主に甘んじるなというプレッシャー)が強くなったこともあり、日本企業の総資産はかつてより圧縮される傾向にあります。この指標を最も気にするのは経営者です。まずは業界平均をクリアすることが目標となります。その気になれば事業単位でROAも出せるのですが、そこまでやっている企業は多くありません。これは、分子の経常利益(あるいは純利益)が、事業部ではコントロールしにくい財務的な数字を含むものであること、あるいは資産を特定の事業に紐づけることが難しいことが多い(資産を事業部間で共有していることが多いため)といった理由によります。とはいえ、経営者はROAを上げたいですから、各事業部や部署に対しては、利益を上げること(通常は営業利益ベースで目標設定します)と無駄な資産を減らすことを指示します。資産は共有資産も多いため、具体的な額までは示されないことも多いですが、特定の事業部に帰属することが明らかな流動負債(在庫など)などは削減の目標額を示すこともあります。会社全体としても、事業にほとんど貢献しない遊休資産(めったに使わない保養施設など)は削減するよう目標設定されることがあります。通常、これは財務部門や総務部門といった本社部門が担当します。総資産の中には現金やその等価物が含まれることにも注意しましょう。本来であれば投資のめどがない現金は株主からすると配当や自社株買いなどで還元してほしいのですが、いざという場合に備えてキャッシュを多めに抱えている企業は少なくありません。そうした企業は実態が健全な割にはROAが低くなる傾向があります。また、土地は通常簿価で評価されていますから、良い立地の土地を多数抱える老舗企業は実態以上にROAが高く見えることもあります。関連KPI売上高経常利益率、総資産額、総資産成長率

ROEは株主の持ち分である自己資本(純資産株主の拠出額+利益剰余金の積み上げ)に対してその期の純利益がどのくらいに達したかを見るものです。この数字は株主に対するリターンの成績と見ることもでき、ROEの高い会社は株主に対して十分に責任を果たしたと解釈できます。研究によるとROEは株価と比較的強い正の相関があることも知られています。日本では2017年に初めて上場企業のROEが10%を超えましたが、2018年にはまた少し下回りました。業界によっても異なりますし、景気によっても平均値は変動するので一概にはいえませんが、10%を超えていたらまずは合格点といえるでしょう。ただし、この数字は(純利益総資産)×(総資産自己資本)と分解されることからもわかるように、「総資産自己資本」(財務レバレッジ)を上げることでも高まります。つまり負債を増やして財務レバレッジを高めれば、「純利益総資産」(純利益を分子とした場合のROAといえます)は平均以下でも、ROEを高めることは可能なのです。財務レバレッジは次項で紹介する、安全性を示す指標である自己資本比率の逆数です。つまり、安全性の面では劣ることになります。負債(特に借金)は有効活用すれば非常にプラスに働きますが、多すぎると逆に経営を不安定にしてしまいます。ファイナンスの世界には最適資本構成[★32]と呼ばれる概念があり、それに近い財務レバレッジにすることが望まれます。この指標を意識するのは経営陣と財務責任者です。会社の持ち主である株主も注目します。潜在株主もこの指標を見て株式の売買の材料にしますので、安定して高いROEを上げることが一般には望まれます。それが実現できていることは、IR(インベスター・リレーションズ)の場などでも株主に訴求できる強みとなります。この指標は全社レベルのKPIですので、事業部ごとにこれを意識することはあまりありません。現場レベルでも、財務レバレッジはコントロール不可なので、結局、前項でも述べたように、資産を圧縮し、利益を上げる努力が求められることになります。逆にいえば、目標ROEの設定は経営レベルでなされ、想定される財務レバレッジを踏まえたうえで、各事業部に目標とする利益を割り振ることで行われるといえます。先にROEは株価と正の相関を持つと書きましたが、純利益そのものはWORDS076[KPIの使い方]でも述べたように、特別利益が生じることでも上がります。それゆえ、普通の年は平凡なROEなのに、ある年急に特別利益のおかげでROEが上がったからといって株主にはあまり評価されません。あくまで本業で安定的にこの数字を高く維持することが必要です。その意味で、単年度の指標ではありますが、中期的な時系列トレンドも非常に大切です。関連KPI財務レバレッジ、ROA

この指標は企業の安全性(経営が厳しいときでも持ちこたえられる度合い)を示す代表的な数値です。純資産=自己資本が厚いということは、(借り入れなどと異なり)返済義務のない株式による資金調達と、過去からの利益剰余金が積み上がっていることを意味するからです。なお、厳密にいえば純資産は、純資産=自己資本+新株予約権+非支配株主持分(連結財務諸表のみ)ですので、自己資本とは一致しません。定義によって自己資本比率の数値が大きく変わることは少ないですが、分子に純資産(広義の自己資本)を用いているか、狭義の自己資本を用いているかは注意しましょう。日本では2017年に上場企業の自己資本比率が40%を超えたとされました。自己資本比率が高いことは、安全性の面では好ましいことですが、前項で触れた、逆数となる財務レバレッジが低いということでもありますので、一概に好ましいことともいえません。負債は、それを活用して新しい投資をし、将来のキャッシュフローにつながるケースも多いからです。節税効果もあります。日本ではソフトバンクグループが多額の借金で知られています。同社の自己資本比率は決して高くはありませんが、負債の有効活用という見方もできるのです。自己資本比率は業界ごとに大きく異なります。安定している業界では自己資本比率は低くてもよく、リスクの高い業界や企業(ベンチャー企業がその典型)では自己資本比率は高くなります。安定している企業の代表はインフラ系の企業です。ただし、かつては自己資本比率の低かった電力業界などは、東日本大震災の前後で状況は変わっています。ベンチャー企業は通常大きな借り入れはできませんから、必然的にリスクマネーである自己資本(エクイティともいいます)での資金調達が増えます。その結果、自己資本比率も高くなってしまうのです。この数値を気にするのは経営陣や財務責任者です。現場ではほとんど意識されません。ただし、自己資本比率が高いということは、資本コストの高い自己資本の比率が高いということですから、現場でも高いレベルの利益率が要求されることになります。自己資本の方が有利子負債(デット)より資本コスト[★33]が高いというのはややピンときませんが、自己資本はいざ会社に何かあったとき、有利子負債より返済が劣後になりますので(借金の方が株主への返済に先立つ)、ハイリスク・ハイリターンの資金提供となります。それゆえ、自己資本比率の高い企業は、高いリターンが求められるのです。WORDS079[KPIの使い方]でも触れたように、概念としては最適資本構成というものがあります。あるレベルまでは負債の有効活用の効果が勝りますが、一定レベルを超えると倒産リスクの方が高まるというものです。ただし、最適資本構成を求める方法論はいまだ確立していませんので、経営状況なども勘案して適切と思われる自己資本比率を模索するのが一般的です。この指標も会計方針のトリックで見た目と実態が変わってくることがあります。WORDS078[補足・注意点]でも触れたように、好立地に土地を保有する企業は簿価ベースでの自己資本比率は低くても、見た目以上に安全度が高いといえます。また、企業規模が大きくなりすぎると、いわゆる「Toobigtofail」の状態となり、国としてもつぶすにつぶせなくなります。かつての銀行やダイエーなどがその例です。そうしたケースでは公的資金が投入されたり、借金の棒引きが行われたりします。関連KPI財務レバレッジ

この指標も企業の安全性を示す代表的な数値です。似たような指標に流動比率(流動資産流動負債)がありますが、流動資産の多くを占める棚卸資産は往々にして換金が難しいため、流動比率が高くても、実際には資金繰りに寄与しないということがままあります。そこで、より保守的に厳しく見るなら、この当座比率の方が企業の安全性を示す指標としては好ましいのです。それゆえ、英語では「厳密なテスト」を意味する「AcidTestRatio」と呼ばれたりします。この比率は、表現を変えれば、ほぼ「売掛金+現金・現金等価物」を「買掛金+短期借入金」で割ったものになります。この数値を気にするのも経営陣や財務責任者です。当座比率のめどは在庫の換金性によっても変わってきますが、一般的には90%あるいは100%以上が良いとされ、70%以下はやや不安とされます。換金性の高い在庫(陳腐化しにくく、汎用性の高いもの)がある場合はもう少し目標値は下がります。この数値は現場レベルで意識されることはほとんどありません。先述の式からもわかるように、売掛金を早期に回収して現金化しても、計算値そのものは変わりませんから、現場で直接的にできる努力は限定されるのです。経営陣や財務責任者としては短期借入金を減らす努力を日常からしておくことが必要です。具体的には、やはり利益を上げることで借入金の必要性を下げるのが最もわかりやすいでしょうから、現場に利益を上げるように指示をすることが必要です。また、資本コストは高くなりますが、増資による資金調達のめどを立てておくことも有効です。もっとも、増資するためには売上げや利益が順調に上がっていることが必要ですから、結局は適切に売上げを上げ、コストを減らし、不要不急の投資はしないといった当たり前のことを日常から行うことが必要です。逆にいえば、当座比率が70%を大きく割り込まないように売上計画や利益計画を立て、それをしっかり実行していくことが必要となります。当座比率と比較的近い意味合いの指標に手元流動性比率があります。これは、現預金や償還期限が1年以内の有価証券など、換金性の高い流動資産を1日あるいは1カ月当たりの売上高で割ったものです。支払い能力の余裕度を示します。大企業では1カ月程度あれば問題ないとされますが、中小企業では1カ月半から2カ月程度は持っておきたいとされます。こうした指標もあわせて安全度を総合的に見ることが必要です。関連KPI流動比率、手元流動性比率

コンサルティングや法律事務所などの高度知識型のサービス業やデジタルコンテンツ販売業などでは、あまり在庫という概念は重要ではありません。しかし、製造業や小売業などでは、事業の特性上、一定レベルの在庫を持つのが普通です。商材のタイプにもよりますが、あまりにも長く在庫が社内に残っていることは、好ましいことではありません。業界平均に比べてこの数字が大きすぎる企業は在庫管理やキャッシュマネジメントが下手な会社といえます。在庫は、それがないと売上げにつながりませんから製造業や小売業では必須のものです。特に小売業では「品揃え」の良さが顧客を引き付けるという要素もありますので、それをいかに魅力的なものにするかは非常に大切な論点となります。一方で、在庫はそれを製造したり購入するためのお金を必要とします。これは通常、販売に先立ちますので、在庫を豊富に持ちすぎることは企業のキャッシュフローを圧迫する、つまり資金の手当てをしなくてはならないことを意味します。また、貴金属などの例外を除けば、在庫を長く持ちすぎることは、製品・商品の陳腐化、さらには廃棄ロスや極度の値下げにつながり、収益性を損ねます。したがって、一定レベルの在庫は必要なものの、在庫回転期間が長くならないようにするのが一般的です。業界特性や景気の好不調にもよりますが、一般的には1カ月強程度が在庫回転期間のめどとされます。全産業に比べると、製造業ではやや長くなる傾向があります。この指標は、経営者や財務責任者、事業部長などはもちろん、生産、調達、マーケティング、販売部門など、多くの部署の人間が意識します。それだけ部門横断的な数字といえるでしょう。小売業では店舗ごとの比較もよくなされます。同じチェーン店にもかかわらず、店舗間で大きく差がある場合には、仕入担当者の力量の差か、店舗内の売り方の差なのかといった分析を行い、原因をつぶしていきます。製造業では製品在庫と仕掛在庫、部品在庫を分けて考えることも一般的です。製品在庫は製品力や販売力の問題ですが、仕掛在庫や部品在庫が増加しているといった状況は、通常は調達や生産プロセスの巧拙の問題となります。この数字は一般的には短い方がいいのですが、それを意識するあまり、顧客に売れ筋ではない品を強引に売ろうとすると、通常は顧客の不興を買うものです。現場レベルにこの数字を強調しすぎると往々にしてそうしたことも起こりがちとなります。顧客満足と在庫調整やキャッシュマネジメントの間で適度なバランスをとることが望まれます。関連KPICCC、売上債権回転期間、仕入債務回転期間

企業にとって資金繰りは非常に重要な経営上の論点です。CCCが短い企業は資金繰りに余裕がある企業といえます。現金(キャッシュ)が潤沢な企業であればそれほどCCCを気にしなくてもいいのですが、資金が限定されるベンチャー企業などでは、「Collectearly,Paylate」といわれるように、現金化は極力早く、支払いは可能なら遅くするのが鉄則といわれています。前項で説明した在庫回転期間の要素に加え、顧客との交渉力や仕入先との交渉力が効いてくる指標です。ファイナンスの側面では、運転資本(棚卸資産+売上債権-支払債務)と表裏一体の関係にある数字でもあります。この数字は業界や企業規模によって差があります。日本の大手自動車メーカーなどは2カ月程度とされていますが、重電になると3カ月を超えることも珍しくありません。製造業でも足の早い清涼飲料などでは比較的短く1カ月弱、小売りなども概ね短くなっています。また、企業規模が小さい方が通常キャッシュに余力がないため、多少CCCが短い傾向があります。この指標も、経営者や財務責任者、事業部長、生産、調達、マーケティング、販売部門など、多くの部署の人間が意識する部門横断的な数字です。資金繰りにダイレクトに効いてくるという意味では、経営者や財務責任者がより強く意識する数字ともいえます。棚卸資産回転期間に加え、売上債権回転期間、支払債務回転期間の3つの要素が効いてくるため、棚卸資産回転期間よりもさらに多くの人々の協力がないと改善しない数字です。この数字を改善することは、WORDS093[KPIの使い方]で述べるEVAの向上にもつながり、長期的には企業価値の向上にも寄与します。通常、この数字に責任を持つのは財務責任者や事業部長レベルです。そしてこの数字を上げるべく、現場に指示を出します。例えば営業担当者に対しては、なるべく早く現金を回収できるような契約を結ぶよう動機づける、あるいは支払いが滞っている顧客がいれば、いち早く察知し、代金回収を徹底するなどです。仕入担当者に対しては、取引先に支払いサイトを長くできないかという交渉をお願いすることもあります。最も良いのは、ビジネスモデルを最初からCCCが短くなるよう設計することです。例えばアマゾンのマーケットプレイス事業はCCCがマイナスという驚異の数字となっています。アマゾンの販売能力をベースとした交渉力の強さならではともいえますが、初期の事業の構想時にこうしたことを考えることも大切です。企業としてこの数字を小さくする努力は必要ですが、やりすぎると「あの会社は資金繰りが厳しそうだが、大丈夫なのか?」という不信感を招くこともあります。原材料を売った企業からしたら、「支払いをもう少し待ってくれ」などといわれたらそう考えても不思議はないでしょう。それで取引が縮小しては本末転倒です。闇雲なやり方は避ける方が賢明です。関連KPI棚卸資産回転期間、売上債権回転期間、支払債務回転期間、運転資本、EVA

固定費の具体的な内容としては、正社員の人件費やオフィスの賃借料、減価償却費などがあります。広告費や開発費も固定費的要素の強い費用です。売上げに応じて増減する変動費(原材料やアルバイトの人件費)に比べ、一般的には、より企業活動にとって重要な費用といえます。会計(特に管理会計)においては、固定費と変動費の別、次項とその次の項で紹介する限界利益率や損益分岐点売上高を非常に重視します。どのようなタイプのコストで自社のビジネスが成り立っているかを知ることで、目標とする売上高を決めたり、自社のリスクについても理解が深まるのです。固定費は「自ら売上変動のリスクをとった費用」とみなすこともできます。それゆえ固定費の大きなビジネスモデルは、同業の固定費を変動費化したビジネスモデル(例:製造業におけるファブレスメーカー[★34])などに比べると、ハイリスク・ハイリターンとなり、β(WORDS090参照)も大きくなります。固定費は企業活動の中核となる重要な費用である一方で、簡単には減らせないという難しい問題もあります。これを固定費の下方硬直性といいます。特に日本においては、仮に赤字になったとしても正社員を指名解雇することは非常に難しいですし、すでに設備投資してしまった工場の減価償却費を減らすことも容易ではありません。そこで悩ましい問題となるのは、特に成長を志す企業にとって、どのくらいまで固定費を増やすべきかという問題です。成長に自信があるのであればどんどん正社員を採用し、オフィスもどんどん借り増せばいいのですが、そのようなことをして仮に売上げが停滞すると一気に赤字体質となってしまいます。一方で、慎重になりすぎて成長できる機会を逃すのも好ましいことではありません。経営者にとって、どこまで固定費を増やすかの判断は容易ではないのです。なお、固定費額の見積もりは、簡便法としては費用項目ごとに「これは固定費、これは変動費」などと分ける勘定科目法がよく用いられます(その他に、月次ベースや四半期ベースでの売上げと費用の挙動から回帰線を引いて求める回帰分析法[★35]などもあります)。固定費の設定は、事業ごとの売上げ成長予測などを踏まえたうえで、最終的には経営者が決めることになります。そしてそれを改めて各事業部に割り振ることとなります。近年はリスクが増していますので、比較的権限移譲されている企業でも、固定費増額についてはより上位層の承認を得る必要があることが多いです。近年、固定費を変動費化する企業が増えています。正社員を減らして契約社員を増やすといったことなどがその典型です。ただ、これは企業にとってはリスク低減になる一方、安定雇用を望む従業員の満足度を下げたり、採用競争力を低下させる可能性もあります。製造業におけるファブレスメーカーへの転換(特に海外への製造委託)も、製造ノウハウの蓄積が止まったり、製造業の発言力の源泉でもある「地元での雇用創出」を減らすことにつながります。リスク低減と企業力強化のバランスの中で、どのくらい固定費(特に人件費)を持つかを決めるのは難しい問題なのです。関連KPI変動費率、限界利益率、損益分岐点売上高

売上げを上げたときにそれに比例して発生する費用が変動費です。原材料費などがその典型です。小売業では商品の仕入額が変動費のかなりの部分を占めます。出版社では本を作る際の用紙や印刷の費用のほかに著者に支払う印税(通常10%)なども変動費となります。このような変動費を売上げから除いたものが限界利益で、それが売上げに占める比率を限界利益率といいます。売上げを上げたときにまず手元に残る利益の比率といえます。限界利益率が高い製品・サービスほど、仮に同じ額売れるとすれば、固定費や固定的な先行投資を早く回収してくれることになります。この指標は、企業レベル、事業レベル、製品レベルなど、さまざまなレベルで考えることができます。限界利益率は製造業であれば、効率的にモノを作ることでも上がりますし、顧客に対して高価格を実現できる付加価値の高い製品を作ることでも上がります。商材の特性にもよるので、限界利益率が高いものが良い商材というわけではありませんが、ライバル企業などに比べて限界利益率が高いことは好ましいといえます。この指標は、評価という側面以上に、ビジネスモデルを構想したり、どの製品を優先的に作るべきかを判断したりするときに役に立ちます。例えばコピー機のビジネスは、機械の価格はあえて低めに設定してリースや販売を容易にする一方で、トナーや紙といった消耗品、あるいはメンテナンスサービスの契約といった付帯的製品・サービスの限界利益率を高く設定することで、トータルの利益の最大化を図っています。どの製品を優先的に作るかということについては、同じ額だけ売れる見込みがあるなら、限界利益率の高い製品を優先して作る方がいいということになります。ただし、一般的には「同じ額だけ売れるなら」という前提が成り立つシーンは少ないので、供給力も勘案したうえで、結局はどちらの方が手元に残る限界利益の総額が大きくなるかで判断をします。なお、仮に最終の利益見込みが赤字の場合でも、限界利益率がプラスであるならば、何もしないよりも作って売る方がいいという判断をします。限界利益率がプラスである限りは、赤字幅の縮小に寄与するからです。時々、限界利益率がプラスだからといって極端な値引きをするケースがありますが、それは顧客の不公平感を招き、得策ではなくなる場合もあります。例えば満員ではないスポーツ会場において、30分遅れてきたお客さんに、定価3000円のチケットを500円で売るのがいいかといえば微妙でしょう。その瞬間は確かに多少利益が増えるかもしれませんが、そのような噂が広がると、結局間接的な値下げ圧力につながる可能性があるからです。関連KPI固定費、変動費率、損益分岐点売上高

企業や事業部は通常、黒字が求められますので、「どれだけ売れば黒字化するのか」を把握しておくことは非常に大切です。実際の売上高に比べ、この数字が低い企業は余裕を持って利益を出せている企業といえます。損益分岐点売上高は、企業レベル、事業レベル、製品レベルそれぞれで設定することができます。新しい期の数字を把握することも大事ですが、過去にどのくらいその数字を上回ってきたか(余裕度がどのくらいあったか)も把握しておくべきといえるでしょう。例えば図15に示した損益分岐点比率が80%であれば、売上げが8割に減ってもギリギリ赤字にならないことを意味します。この指標は、他の数字の計画の中で決まってくることが多いため、これそのものの目標設定をいの一番にすることは少ないです。しかし、期中に年間としてこの数字に達しない可能性があることがわかれば、それを達成すべくアクションを起こすことになります(特に企業レベル)。例えば営業のテコ入れをする、固定費を下げる(例:オフィススペースを解約するなど)といったやり方です。この指標はまた、利益目標を達成するための売上げを求める式に援用することもできます。その場合、式の分子に来る「固定費」を、「固定費+目標利益」で置き換えます(図16で確認してください)。

関連KPI固定費、変動費率、限界利益率、損益分岐点比率

製造原価、あるいは1個当たりの製造原価は製造業において競争力に直結する数字です。仮に同レベルの製品を作ったときに、ライバル企業に比べて1個当たりの製造原価が低いということは、それだけいざとなったときに価格競争をできる余地がある、あるいはもし同じ価格を付けられるならその分粗利が厚くなることを意味するからです。その意味で、メーカーの競争力を最も左右する数字の1つといえるでしょう。原価計算にもいろいろな手法がありますが、代表的な直接原価計算の手法では、変動費のみを製品原価に含め、固定費についてはその期間に特有の期間原価とします。ある製品の1個当たりの製造原価は、顧客が受け入れる品質を前提にした場合、当然安い方が有利です。多くの業界では、シェアトップの企業が規模の経済性[★36]や経験曲線[★37]などを活かして最も安い1個当たりの製造原価を実現しています。ただし、競争がグローバルにまたがる場合には、人件費や地代といった要素コスト[★38]の差がこれらの効果以上に効いてくることがあります。家電など、かつて日本が世界を席巻した分野において、近年、アジア企業に勝てなくなっているのは、その部分でのコスト差が大きく効いた結果です(近年では規模シェアの面でも逆転されたため、ますますコスト競争力を失いつつあります)。特に生産部門の担当者はこの数値に責任を持つことが多いです。営業やマーケティングの人間とも話し合い、競争力のある価格とすべく、そこから逆算して目標とする原価を「作り込む」といったことを行います。製造コストはさらに原材料費や人件費などにブレークダウンし、そこでも目標を設定するのが一般的です。そのうえで月次や四半期単位などでPDCAを回し、価格差異(人件費や原材料の単位当たりのコストの差異に由来する差異)と数量差異(同じく、使用した数量の差異に由来する差異)にブレークダウンして、さらなるコスト低減を図るといった行動をとります。原材料の比率が大きな製品では、調達担当者にもそうしたブレークダウンされたKPIが課され、仕入先との交渉や、場合によっては仕入先の変更などを検討することが求められます。右記では「営業やマーケティングの人間とも話し合い」と書きましたが、企業によってはこの部分がおろそかになっていることがあります。そうなると、「1個当たりの製造原価」をKPIとされた生産責任者は、この数値を下げるために、「固定費を分散するために、売れようが売れまいがたくさん作ろう。売れなかったら営業のせいにすればいい」と考え、販売予測以上に製品を作ることがあります。これでは在庫に悩まされることは必然です。やはりバリューチェーンを通じたコミュニケーションは大切なのです。関連KPI売上原価、原材料費、労務費、製造間接費

EBITに有形固定資産(設備投資など)に関わる減価償却費(Depreciation)や、無形固定資産(特許や商標、営業権など)に関わる償却費(Amortization)を足し戻したEBITDAは、営業活動で生み出したキャッシュフローに近い数字です。減価償却費や償却費は、P/L的には費用計上されますが、キャッシュアウトが生じたのはすでに過去の話で、その期にはキャッシュは出ていかないからです。この数字が大きな企業は本業でキャッシュを稼いでいる企業といえます。1990年代頃から、アメリカの影響を受けて、日本でも財務会計上の数字よりもキャッシュフローをより重視していこうという機運が広がりました。それとほぼ軌を一にして日本でも使われ始めたのがこのEBITDAです。この指標のメリットに、企業や国ごとに異なる会計方針[★39]の差(例:減価償却の方法に定率法を用いているか定額法を用いているか)といった要素抜きに、企業が稼いだキャッシュフローを比較できるという点があります。例えば定率法で巨額の設備投資をすれば、どうしても実態以上に初期の利益が圧縮されて見えることになります。しかしEBITDAではそれらは足し戻されるので、経年の比較などもしやすくなるのです。なお、同じ業界の企業を長期のスパンで見れば、結局はEBITDAの大きな会社は、EBITの大きな会社と一致してきます。日本ではソフトバンクグループの孫正義会長が、かなり昔からこの指標を他の利益指標以上に重視して経営を行ってきたことで有名です。ビジネスでも資金調達の面でも海外志向の強い同社ならではといえるでしょう。新規の投資などをしなければ、減価償却費や償却費は事前に決まってきます。それゆえ、EBITDAは目標となる営業利益EBITを設定すれば自動的に決まってくることになります。逆にいえば、目標EBITDAを決めれば自動的に目標営業利益が決まるともいえます。海外ではEV/EBITDAという、企業価値をEBITDAで割った数字を見ることで株価の割安感や企業買収価格の妥当性を判断することがあります(EVはEnterpriseValue=企業価値)。それゆえ、海外投資家を重視するのであれば、まずこの目標EBITDAを決め、そこから営業利益を設定するということもあります。もちろん、期中に新規の設備投資などを予定する場合には、それも見込んで目標EBITDAを設定します。この数字は事業部単位に落とし込むことも可能ではありますが、それで事業部の評価を行っている企業は日本ではまだ多くありません。その意味で、EBITDAは投資家を意識した全社レベルの数字と考えておいていいでしょう。EBITDAに似た指標にEBITAがあります。これは、有形資産に関わる減価償却費を足し戻さなかったものです。KPIとして使われることはEBITDAに比べると少ないですが、ROIC(WORDS092)を求める際には、分子にEBIT×(1-実効税率)ではなく、EBITA×(1-実効税率)を使う方がいいという学説もあり(実際にそれで解説している教科書もあります)、財務の実務家であれば知っておくべき指標といえます。関連KPIEBIT、EBITA

まず企業レベルでは、FCFは営業キャッシュフロー-投資キャッシュフロー(財務諸表では投資をマイナスの数値で表記しますが、ここでは投資額をプラスで表しています)とみなせます。自由に使えるお金ですから、投資するもよし、配当で株主還元するもよし、最終的には経営者の判断にゆだねられます。プロジェクト評価のレベルでも、このFCFが重要な役割を果たします。WORDS091[概要]で後述するように、予測される将来のFCFを見積もり、現在価値に割り戻してプロジェクトのGO/NOGOを決めるという方法(DCF法:DiscountedCashflow法)がグローバルスタンダードかつ基本となる考え方です。企業レベルでは、FCFは多い方がいいように思えます。しかしそれは、将来の競争力強化に向けた投資を怠った結果、投資キャッシュフローのマイナスがなく、営業利益が出ているだけかもしれません。したがって、その企業の戦略や投資の内容なども精査したうえでこの数字を見ないと判断を誤ることもあります。投資判断の予測FCFは多いに越したことはありません。ただし、投資判断で用いるFCFは基本的に予測数値ですので、実際にそのFCFが得られる保証はありません。なぜその予測を立てたかの根拠が重視されます。企業レベルのFCFについては、先述のような事情もあり、目標数値を設定し、達成したとしても内容が伴わなければ意味がありません。一般論としては、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを分けて考える方がいいでしょう。これは目標数値を事業部にブレークダウンする場合も同様です。その際には、事業ポートフォリオのバランスも重要です。仮にボトムアップで上がってきた目標の合計が全社のそれと一致したとしても、ある事業部には投資を控えさせ、それを別の事業部の投資に充てるといった調整が必要になるかもしれません。投資判断のためのプロジェクト予測のFCFは、項目別にその根拠をしっかりさせることが大事です。プロジェクトの担当者は往々にしてプロジェクトを通したいがあまり、安易な数字を目の子勘定で作る場合があります。特に予測営業利益の大前提ともなる予測売上高は通常楽観的なものになりがちです(実際には予測を90%以上下回るということもざらです)。未来を正確に予測することはできませんが、それでもその根拠は何なのか、どのような施策を打てばその数字になるのかなどはしっかり議論することが大切です。全社レベルのFCFはEVA(WORDS093参照)と比較するとその性格がさらに明らかになります。FCF=EBIT×(1-実効税率)+減価償却費-投資-運転資本増分[★40]であるのに対し、EVA=EBIT×(1-実効税率)-ΣI×WACCとなります(ΣI×WACCは正味投資額。WORDS093参照)。この2つは長期にわたってその現在価値を合計すると同じになります。FCFが各年の投資によって変動しやすいのに対し、EVAは毎年の変化がマイルドになり、それゆえ時系列の管理もしやすいというメリットもあるのです。関連KPI営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、EVA、NPV

[★41]WACCはファイナンスの世界ではあらゆる場面に顔を出す非常に重要な概念です。企業レベルでは、ROICのハードルレートとなりますし、NPV(WORDS091)を計算する場合の割引率ともなります。IRR(WORDS091[補足・注意点])を計算する場合のハードルレートともなります。有利子負債(デット)のコストは自己資本(エクイティ)のコストよりも低いうえに、有利子負債には節税効果もありますから、自己資本のコストの方がはるかに高くなります。つまり、調達資金に占める自己資本の比率が高いほど、WACCは上がることになります。配当さえ出さなければ現金支出がないエクイティにコストがあるという考え方は、つい20年ほど前には大企業にさえあまり浸透していませんでしたが、近年では株主に報いないと株価が下がるといったことが明確になったこともあり、浸透してきました。ただし、その算出方法はWORDS090の式にもある通りやや複雑で、正しく説明できる人間は稀といえるでしょう。WACCはリスクが高く、自己資本の比率も高いベンチャー企業などでは高くなります。逆に、インフラ企業で規模も大きなガス会社や鉄道会社などでは小さくなります。この数値を意識するのは主に経営者と財務責任者です。現場レベルでも、NPVなどを計算する際には用いるので意識はしますが、自分ではどうにもコントロールできない所与の数字であると認識します。WACCは先述のような事業の特性や資金提供者の意向、その時々の政策金利や株式市場の動向といったさまざまな要素が絡んでくるため、CFOであっても簡単に変えられるものではありません。バランスのいい最適資本構成を目指すことがまずはCFOの役割となります。WACCはその結果として半ば自動的に決まるともいえます。とはいえ、負債の調達などは、金融機関によっても金利は多少異なりますし、固定金利か変動金利かによっても変わってきます。銀行を一行に絞るか分散させるかという問題も一長一短あります。そうしたさまざまな要因も勘案したうえで、銀行や債権者などに適切に情報を伝え、可能な範囲でWACCを下げることを目指すことも必要です。グローバル企業の場合はどの国に進出し、どの国で資金調達するかでWACCが大きく変わるといいます。国ごとに有利子負債の金利も変わりますし、実効税率も異なります。企業のグローバル化が進むほど、経営者やCFOの手腕が問われるといえます。COLUMN旭硝子(現AGC)はかつてキャッシュフロー重視の経営を進める中で、管理会計上、国内のWACCをあえて高めに設定するということをしました。これはいい換えれば「国内でビジネスをしていると損をする。リスクをとってでも海外に出ていってリターンを得る方がいいよ」という社内に対するメッセージでもあったのです。関連KPI財務レバレッジ、負債コスト、自己資本コスト

NPVはファイナンスのあらゆるエッセンスが詰まっている重要概念といえます。将来にわたるFCFをWACCを用いて現在価値に割引き、その合計がプラスかマイナスかで投資の可否が決まります。投資の良否を峻別する指標ともいえます。NPVは他のKPIとは異なり、そのプロジェクトを開始すべきか否かを判断するものであって、年間や四半期でPDCAを回すという類のものではありません。その意味でKPIの意味である「重要業績評価指標」といえるか否かは多少微妙ではあるのですが、ビジネスパーソンとして理解しておかないと問題のある数値でもあるので、ここに取り上げています。NPVはプラスかマイナスかが大きな分水嶺ですが、当然ながらプラスの数字が大きいことは好ましいことです。そのプラスが実現すれば、その分企業価値が高まることを意味するからです。投資家から見れば、NPVが大きなプラスのプロジェクトを多数抱えている企業は魅力的な投資対象となります。NPVは、WORDS091の式を見れば、これまでに解説した予測FCFと想定されるWACCが決まれば自動的に決まるように思われます。しかし、実務的にはそのプロジェクトが何年続くかを決め、最終年に残存価値[★42]を求めるという計算プロセスをとります。その残存価値の求め方には、そこでプロジェクトを清算するという考え方や、ある前提の下でプロジェクトが続き、それを最終年度時点での価値に割り戻すという考え方などがあります。それ次第でNPVが大きく変わることもあるので、NPVを評価する側は、その根拠についてしっかり説明してもらうことが求められます(CHAPTER2、CASE2の図9参照のこと)。NPVはまた、最終的な1つの計算結果ですべてを決めるのではなく、感度分析(ある変数の数値を変えると最終結果がどう変わるかを見るシミュレーション的な分析)の結果も大事です。例えばFCFが毎年5%程度減るだけでマイナスになるようなプロジェクトは、仮にNPVがプラスになったとはいえ、かなり微妙な案件といえるでしょう。通常、NPVの試算はExcelのような表計算ソフトで行われることが多いので、感度分析も比較的楽に行えます。NPVは評価にはあまりなじまないと先に書きましたが、もちろんその気になれば評価にも使えます。例えばあるプロジェクトを実際に開始したのちに、どのくらい予測通りに進んでいるかを見ることで(特にFCFや、それにつながる売上げや費用について)、担当者の予測能力や実行力を判断することもできます。NPVと同時に知っておくべき数字にIRRがあります。これはNPVがゼロとなるときの割引率で、IRRがWACCよりも高ければNPVもプラスになり、投資は行うべきという判断になります。ファンドの成績などを比較する際には、元の投資額が違うことが多いので、このIRRでパフォーマンスを比較したりします。関連KPIIRR、フリーキャッシュフロー(FCF)、WACC

ROIC(ReturnonInvestedCapital)はROCE(ReturnonCapitalEmployed)と同じ意味を持ちます。前者がB/Sの左側(資金の使途)に着目しているのに対し、後者は右側(資金の調達先)に着目したものです。ROICは株主重視、あるいは資本の提供者重視の経営が求められる昨今のビジネス界の中で、日本でも活用が進み始めています。ソニーなどはそれで成功したといわれる典型です。ROICがWACCを大きく上回っている会社は、企業価値を大きく高めた企業といえます。ROICは、次項のEVAと本質的には同じ意味を持ちます(率と額の差はありますが)。EVAが若干扱いにくい部分があって、日本では一時期よりも利用企業が減ったのに対し、ROICは率を見ればいいというシンプルさが受けて、どんどん利用する企業が増えています。ROICはクリアすべきハードルレートが明確で、WACCになります。つまり、ROICがWACCを超えれば企業価値は向上しますが、WACCを下回れば企業価値は下がることになります。その意味で、会計よりもファイナンス的な指標です。重要なポイントは、単に黒字を出すだけではだめだという点です。多くの経営者は黒字を出せば安心するものですが、ROICは単に黒字なだけでは足りず、資金提供者(投資家や銀行など)に帰属する利益、すなわちEBIT×(1-実効税率)が、資金提供額×WACCを超えることが必須と考えるのです。この指標の良い点は、全社レベルでも事業部レベルでも設定が可能ということです。事業部レベルでROICがその事業のWACCを下回るようだと、その事業はファイナンス的には企業全体にマイナスの影響を与えていると判断されるわけです。それゆえ、基本は各事業部ともその事業部のWACCを超えることがまずは目標となります。ただし難しいのは、事業部ごとの使用資産=使用資本を正確に求める点と、事業ごとにWACCを設定する点です。通常、どのような企業であっても多少は事業部間で資産(例:土地、建物、無形固定資産など)を共有しているものです。それを各事業部に正確に切り分けることは必ずしも容易ではないのです。より難しいのは事業部ごとのWACCかもしれません。通常、事業部ごとの株価はありませんので、事業部固有のβを求めるのは簡単ではなく様々な工夫が必要になってくるのです。ROIC(ROCE)で用いる使用資本は、基本的に時価となります(比較すべきWACCが時価ベースのβなどを用いているため)。これは、ROAやROEといった伝統的な会計指標が簿価で計算されるのとは大きな違いです。ただし、簡便法として簿価ベースでROI

Cを計算している企業もあります。関連KPIEVA、β、WACC

EVAは1980年代にアメリカのスターン・スチュアート社によって開発されたKPIです。そのため、EVAは同社の登録商標になっています(本書では便宜的には割愛しています)。コカ・コーラ社などがこの指標を用いて企業価値を大きく向上させたことなどから注目を集めました。EVAの額の大きな企業は、その分企業価値を向上させたといえます。ファイナンスの理論的にも非常にエレガントな指標です。日本では90年代に旭硝子(現AGC)や花王、ソニー、オリックスといった先進企業に導入されましたが、現場ではややわかりにくい指標ということもあって、2000年代にはやや下火になりました。前項のROICでも触れたように、EVAとROICは、額と率の差を除けば表裏一体の関係にあります。ROICのハードルはWACCを超えることでしたが、EVAのハードルはプラスになることです。これは、EVA使用資本=ROIC-WACCという関係になることからも明確です。EVAがプラスになれば、その企業の企業価値は理論上、上がります。これは事業部レベルにも応用でき、EVAがプラスの事業はファイナンス面ではその企業に貢献したとみなすことができます。EVAは、EVAがプラスの企業を買収したり、EVAがマイナスの自社事業を売却することでも上がります。この指標も全社ベース、事業部ベースで使えます。基本となる最低ラインはプラスを目指すことですが、具体的な額については昨対比でさらにEVAを増やすこととするのが一般的です。ただし、事業によっては明らかにEVAをプラスにするのが難しい場合もあります。例えば前年のEVAがマイナス300億円だった事業でいきなりそれをプラスにするのは容易ではありません。そうした場合には、EVAのマイナスをどれだけ縮小するかに着目し、EVAの目標も最初からマイナス200億円などとする場合もあります。担当する事業部長の評価も、EVAの額そのものではなく、EVAの増分、すなわちΔEVAを重視するなど、企業によって工夫をします。かつて旭硝子がEVAを導入した際には、「EVA率」という独自の指標を設定しました。それは、EVA率=NOPAT(使用資本額×WACC)というものです。その意図の1つとしては、この指標にしておくと、NOPATさえプラスならば、仮にEVAはマイナスでもEVA率はプラスになるという見映えです。ちょっとしたことのように思えますが、人間はマイナスの数字を突き付けられるよりも、プラスの数字の方を好むということです。ROICもEBITがプラスならプラスとなるため、同様の効果があります。スターン・スチュアート社の本来のやり方では、広告費や研究開発費を資産計上する、あるいはM&Aで生じた「のれん」を償却せずに投下資本に計上するといった、通常の会計とは異なる方法論を推奨しています。ただし、実務的に面倒が増えることなどもあり、どこまで同社の方法に忠実に行うかは企業によって異なるため、この点には注意が必要です。関連KPIROIC(ROCE)

実効税率はファイナンス系のKPIを求めるときにも出てくる非常に重要な数字です。脱税はもちろん違法行為なのでアウトですが、企業としては適度な節税対策を施すことで、政府や当局への税金を減らし、資金提供者への利益を増やすことも昨今はある程度求められるようになっています。この数字が低いことは、節税のうまさや、税率の低い国での活動比率が大きなことを意味します。節税に関しては、企業の意識の差が大きく出る部分でもあります。中には「税金を納めるのは公的存在である企業の役目」との考え方の下、節税対策をほとんど行わない企業もあれば、税務や法律のプロを雇って極力租税回避をする企業もあります。社会を重視するのか株主を重視するのか、どちらが良いとは、一概にはいえません。それゆえ、実効税率の高低をどう評価するのかは非常に難しいといえるでしょう。なお、実効税率はグローバル化という要素でも変わってきます。例えば法人税率が日本より低い国でビジネスを大きく展開すれば、平均としての実効税率は低くなります。日本国内でも企業誘致のために税率を下げている自治体はありますので、そうした地域に進出すると実効税率は変わります。節税にあまり関心のない企業の場合、この数字は最終的に自動的に決まってくるものであるため、目標を設定するということはありません。ここでは、節税に積極的なグローバル企業をイメージして議論します。そうした企業においてこの数字を意識するのはやはり経営者や財務責任者です。節税につながる投資の減損[★43]などは期初に想定することが難しいため、目標の設定は難しいといえますが、それでもある程度のめどは立てることが多いでしょう。例えばフェイスブックなどでは概ね10%程度の実効税率をイメージしているようです。先進国の実効税率は20%台前半といわれますから、うまく節税ができているといえるでしょう。特にIT企業の場合は「モノ」を売っているわけではないので、形式上の本社をアイルランドなどの低税率の国に置けば、合法的に実効税率を下げることは比較的容易なのです。「ダブルアイリッシュ・サンドウィッチ」などの節税スキームなどもどんどん開発され、規制がかかりそうになるとまた新しいスキームを作るといったことも行われています。特にIT系の企業においては、最近、さすがに低すぎる実効税率や、商売をしている国に税金を払わないことは企業イメージを損なうとして、一時期ほどの節税を控える動きも出ています。例えばアマゾンは2016年までは日本で法人税などを支払っていませんでしたが、2017年からは日本でも税金を払う方が日本での事業を拡大するうえで得策と判断し、数百億円の税金を支払うように方向転換をしました。関連KPI税引後利益、WACC

[★44]株価は経営者が注目する数字の1つといえます。株式を多く持つオーナー経営者の場合、それは直接自分の資産額に影響を与えますし、そうでない場合でも、株主が非常に気にする数字であるため、株価を中長期的に上げることは、資本主義社会では経営者に与えられた最大使命といえるでしょう。1株当たりの株価は、株式分割をすれば小さくなりますので、それそのものを比較することにあまり意味はありません。例えばキーエンスの株価は日本電信電話の株価のおよそ17倍ですが(2020年6月現在)、だからキーエンスの方が優れているということにはなりません。実際には、時系列比較や他社との比較をする際には株価×発行済株式数で計算される時価総額を比較する方が妥当といえるでしょう。キーエンスと日本電信電話の場合、時価総額はほぼ拮抗しています。株価は最終的には市場が決めるものなので、経営者や従業員は成長や利益創出への努力を適切に行うことが必要となります。ただ、株価はどれだけ企業が努力しても、その時々の経済環境の影響を強く受けます。例えば特段の努力をしなくとも、景気の見通しが良くなれば株価は上がりますし、コロナショックのように市場が悲観的になれば株価は下がります。証券会社などが設定する「テーマ」や、日経平均225に採用されるかなどといった、自社にはコントロールしにくい要素でも株価は動きます。その意味で、PDCAにはあまり向きません(一方で、経営者は投資家に向けたIR活動をしっかり行う必要があります)。株式は、従業員や経営者を動機づける目的でしばしば採用されます。それが株式報酬で、その典型がストックオプション(新株予約権)、リストリクテッド・ストック(特定譲渡制限付株式)、パフォーマンスシェア(業績連動株式報酬)などです。これらはさらにさまざまなバリエーションがありますが、結局は「頑張った結果、株価が上がれば金銭的なメリットが得られる」という点は共通しています。仮に株価が劇的に上がらなくても、配当が支払われれば、それも株式保有者の懐を潤すことになります。なお、制度の設計次第ですが、その期の利益に応じてボーナスを支払うと経営者は往々にして短期的視点に走りますが、株式報酬はその視点を中長期に向けさせる効果もあるとされています。株式報酬は動機づけの手法としては悪くはないのですが、しばしば不公平感を生むものでもあります。例えば数年前に調子の良かったある事業部のスタッフが多くの株式報酬をもらったとします。それが最近はむしろ全社業績の足を引っ張っているにもかかわらず、他部門の頑張りで上がった株価の恩恵を受けたなら、面白くないと感じる人も出るでしょう。株価は各事業部にあるわけではなく、「親子上場」をしているケースなどを除けば、基本的に1社に1つであるからこその悩みともいえます。関連KPI時価総額、理論株価との乖離率、PER[★45]

株価は、突き詰めれば成長(期待)と収益性(の持続期待)で決まる部分が大です。企業が売上げを拡大する目的は株価だけには限りませんが(例:ビジョン実現、競争力強化など)、資本主義社会である以上、特に株式公開企業は成長を止めるわけにはいかないのです。売上高成長率は、企業の成長ステージによっても妥当な値は変わってきます。例えば株式公開したてのベンチャー企業であれば、やはり2桁以上の成長率は当面期待したいと考えるでしょう。一方で、成熟産業の企業の場合、売上高を5%上げることさえかなり高いハードルになることもあります。そうした成長ステージも鑑みたうえで、業界のライバル企業の成長率以上に売上げを伸ばす企業は、顧客に受け入れられており、合格点といえるでしょう。なお、単年度の伸び率は突発的に変動することもあるので、例えば5年間のCAGR(年平均成長率)なども同時に見るといいでしょう。5年間の年平均成長率は、(当期の売上高5年前の売上高)<(15)-1で求められます(「<」はべき乗を表す記号)。複利的な計算をする点がポイントです。この数字は経営者はもちろん、全社員が意識すべき数字です。とはいえ、現実には特にKPIとしてこの数字を与えられるのは、事業部長を始めとするプロフィットセンター[★46]のリーダーや、顧客との接点に立つマーケティング担当者、営業担当者などです。通常はビジネスの成長ステージや競争環境などを勘案して事業単位、製品単位などで設定されます。新規事業などでは対前年比300%の売上増といった目標が設定されることもあります。翌期に向けた成長率を設定することは、自ずと翌期の売上高を設定するのと同じ意味を持ちます。ただし、成長率ありきで売上げを設定するのと、目標市場シェアなどから勘案して売上高ありきで成長率を設定するのとでは、多少意味合いが違ってきます。現実にはその中間的なやり方の企業が多いようです。売上げの成長実現は、戦略面もさることながら、実行面における徹底力による部分も大です。近年はやや迷走していますが、GEは高い売上目標を達成することがリーダーの義務と考え、愚直にそれを実現することで、一時期世界一の時価総額を誇るまでになったのです。独自に売上げを伸ばすことができない企業はM&Aなども活用します。ただ、その副作用として、もともとあったビジネスの売上減が隠れてしまうということがあります。例えばP/L上は毎年順調に売上増を果たしているようで、実は買収の貢献を抜きにしたら減収という状態だとしたら、あまり好ましいとはいえません。成長の質を見ることも大切です。関連KPI売上高、利益成長率、従業員増加率

株主にとって、金銭的リターンは大きく2つに分かれます。株価の値上げによるリターン(キャピタルゲイン)と配当の支払いによるリターン(インカムゲイン)です。例えば日経平均が史上最高値を付けたのはバブル真っ盛りの1989年末で、現在の日経平均はその55%程度にすぎません(2020年6月現在)。では、仮に89年のピーク時に日経平均銘柄に満遍なく投資を始めた人が、現在資産が5割強に減ったかというとそんなことはありません(銘柄の変更はここではいったん無視します)。なぜなら、毎年の配当収入があるため、それを加味すれば7~8割程度のリターンを得られているからです。特に株式を長期保有する機関投資家や企業は、株価に一喜一憂するよりも毎年の確実な配当を望む傾向にあります。中期の1株当たりの配当額は安定的に株主に報いる指標ともいえます。投資家は配当について、1株当たりの配当額に加え、配当性向や配当利回りも同時に見る傾向があります。配当性向は、純利益に占める配当支払額の比率です。配当利回りとは年間配当金額をその株式の購入価額で割ったものです。1株当たり配当額が高ければいいかといえばそんなことはありません。特にベンチャー企業や成長率が高い企業の場合、株主からすれば配当で返してもらうよりも、その資金を新規事業に投資してさらなる成長を図り、株価を上げてくれる方がありがたいと考えるからです。この数字は経営者や財務責任者が気にする数字です。先述したように、新規投資に回すべきか配当に回すべきかといった戦略面をまず勘案します。また、配当性向がどのくらいになるのか、最新の時価ベースで配当利回りがいくらになるのか、キャッシュフローや手元現金がどうなるのかなども検討材料とし、ラフな目標を決めます。同業他社との比較も大事です。実際の配当支払額については、例えば安定配当を重視する企業であれば、利益が見込み以上に出た場合は配当を増やす一方、利益が予想を下回った場合でも、配当が減りすぎるのは株主の不興を買うため、一定額の配当額以上には減らさないといった方策をとるかもしれません。多くの企業では中間配当も出しますので、その段階で下期の業績動向も見極め、ラフに配当の目標を修正します。昨今ではアクティビストと呼ばれる、企業との対話を重視する株主も増えています。彼らは配当に非常に敏感です。例えば過剰に現金をため込んでいるのであれば、配当として還元すべきという提案をしてくることもあります。彼らは「モノいう株主」として企業側からは煙たがられることもままありますが、日本でもスチュワードシップ・コードが導入されるなど、株主の声を正しく反映し、ガバナンスに活かそうという流れがあります。彼らとの日常的な対話も配当政策を考えるうえでは非常に重要です。関連KPI配当性向、配当利回り

業界や業態にもよりますが、国内にはもはや成長余力があまりなく、海外に成長の活路を求めている企業はこの数字が高くなります。通常、特にこの数字が高くなるのは製造業です。TDKや村田製作所、ヤマハ発動機、アドバンテスト、シマノといった企業はおよそ90%超の売上げを海外で稼ぎ出しています。それに対して、サービス業では一般にこの比率は低い傾向があります。海外での事業ノウハウや資産に乏しい不動産業などがその典型です。この数字は業界比較や時系列での比較が重要な数字といえます。例えばサッポロホールディングスはキリンホールディングスやアサヒグループホールディングスに比べるとこの数字が低く、海外展開(あるいは海外企業の買収)に出遅れたと見ることができます。この数字の高さは、国内経済に過度に頼らないことから、グローバルでリスクヘッジが効いていると見ることもできます。この数字が低い場合、日本経済に万が一のことがあれば(例:大地震、パンデミックなど)、それがそのままダメージにつながるわけです(コロナショックのような全世界同時パンデミックが起こることもなくはないですが)。一方で、この数字を高めるべく、海外展開を加速すると、日本では想定しないようなリスクを抱えることもあります。誘拐やテロなどがその典型です。経験の少ない企業の場合、こうしたリスクとどう付き合っていくのかも学ぶ必要が生じるのです。この数字は企業のグローバル戦略をそのまま反映します。それゆえ、通常は経営者や事業部長たちが話し合って、中長期にこの数字をどうしていくかを検討し設定します。単年度で目標設定するというより、中期目標から逆算して短期の目標が設定されることが多いです。この数値の高さは、海外志向の強い、グローバルで活躍したい学生などを採用する際の武器として使うこともできます。ただ、その際には海外売上高比率だけではなく、海外での勤務者数なども同時にチェックされるのが一般的です。日本ではトヨタ自動車が、海外勤務者が最も多く、ついでソニーなどとなっています。やはり古くから海外で事業展開してきた企業がこの数字も高くなる傾向があります。海外での売上高比率は、どの地域のものかといったブレークダウンも大事です。リスクヘッジの観点からは、日米欧中、そして新興国が満遍なく分散していることが望ましいといえるでしょう。また、輸出が中心なのか、現地生産をしているのかといったことも、グローバル化の進展度合いを測る目安になります。関連KPI海外勤務者数、現地従業員数、進出国数、外国人比率

大企業ではあまり意識されることのない数字ですが、ベンチャー企業や、資金繰りに苦しんでいる中小企業にとって、この数字は非常に大きな意味を持ちます。この数字がゼロになった瞬間に、実質倒産を意味することも少なくありません。銀行の預金残高は、日頃から目配せしておくことも重要ですが、特に20日や25日といった給与支払日にどこまで下がってしまうかをシミュレーションしておくことが重要です。例えば、中旬の15日に300万円の残高があったとしても、給与支払日の20日に350万円の支払い予定だとしたら、その瞬間に残高はマイナスになってしまうからです。また、通常の月は大丈夫でも、ボーナス支払い月(通常は6月と12月)の末に一気にキャッシュが減ることは一般的なので、それは特に慎重に見ておく必要があります(ボーナスを出すことはマストではありませんが、生活給的なボーナスまで出さないのは好ましいとはいえません)。この指標は、ゼロを切らないことがマストです。ただ、ギリギリになってから金策に走るのは効果的ではないので、通常はある程度の余裕を見ながら「月末には常に200万円が残るようにしよう」などと考えます。ただ、特にベンチャー企業の場合は予定通りにキャッシュが入ってこないことも多いものです。そこでPDCAをしっかり回し、どの時期に現金が危なくなりそうかを必ずチェックします。事前にキャッシュショートの事態に陥るのが予測できたなら、売掛金の回収を急いだり、買掛金の支払いを待ってもらう、あるいはファクタリング(売掛債権をファクタリングサービス会社に売却し、手数料を差し引いたキャッシュを得る)を利用する、銀行に融資をお願いするなど、キャッシュを回すための施策を講じる必要が生じます。もちろん、銀行などは、「もうダメだ」という企業にはそうそう貸しませんので、常日頃からキャッシュショートの事態にならないように事業運営を正しく行うことは当然必要です。あるいは借り入れ先を予め開拓し、いざというときに借りられる状態にしておくなども重要です。昨今は銀行や信用金庫も貸出先の開拓に苦労していますので、しっかり売上げを上げられる体制が構築できていれば、新たな貸し出しに応じてくれることもあります。ベンチャー企業などでよくあるのは、内部の管理会計などに手が回らず、キャッシュショートの直前に「しまった、まずい」と気がつくケースです。その企業が有望であれば、売り手も買掛金の支払いを多少待ってくれることもありますが、やはり好ましい印象は与えません。最低限の資金繰り表(予定も含む)などは作っておくべきです。関連KPI手元流動性、銀行のコミットメントライン[★47]

これはベンチャー業界独自の用語です。ベンチャーの初期は投資段階にありますから、入ってくるキャッシュ以上に出ていくキャッシュの方が多くなります。その差額がバーンレートです。例えば支払い現金が1000万円で入ってきた現金が500万円なら、バーンレートは500万円となります。ベンチャーが軌道に乗って黒字化するまでの月間の赤字額ともいえます。バーンレートはビジネスモデルや企業の戦略次第で変わってくる側面もあるため、単に額面だけを見てその多寡を判断することはできません。特にネットワークの経済性(参加者が多いほど便利になり、参加者が参加者を呼ぶという効果。SNSなどで典型的に働く)が効きやすいビジネスにおいては、まずはユーザー数を増やすことが勝ち残るための至上命題になります。そのため先行投資額が多く、必然的にバーンレートも増します。配車アプリのウーバー・テクノロジーズのように、起業から10年以上たち、株式公開後もいまだに黒字化していない企業もあります。バーンレートは手元の現金や現金等価物と合わせ、「資金が枯渇するまでにどのくらいの猶予があるか」(これをランウェイといいます)という視点でも見ます。例えば銀行にある現金が1億円でバーンレートが2000万円の場合、このペースでいけば5カ月後に資金が枯渇する(ランウェイが5カ月である)ことを意味します。その間にベンチャーキャピタルなどから資金を調達するといった手立てを講じる必要があることがわかります。この指標を主に見るのはベンチャー企業の経営者やCFO、そして投資側のベンチャーキャピタルなどです。通常、資金調達時に大まかな投資や収支の予測を提出し、それをベースにPDCAを回します。予想以上にバーンレートが増していれば、収入が少ないか、費用あるいは投資が多いということですから、必要に応じて投資を抑えるなどの手を打ちます。ただし、ベンチャー企業の場合、最終的に株式公開をしたり、長期的な果実を得るためには、必ずしもブレーキを踏むことが得策ともいえません。ベンチャーキャピタルの意見も参考にしますが、よりアクセルを踏んでバーンレートを高め、顧客獲得を加速することもあります。グランドデザインとしての戦略を踏まえたうえで、高速でPDCAを回す必要があるといえるでしょう。場合によっては戦略やビジネスモデルそのものを見直すこともあります。バーンレートの高さは、適切な投資によるものなどの場合は問題ありませんが、いたずらにオフィスを華美なものにしたり、役員の給与を上げたりするのは、投資家から見ても適切な行動とはいえません。戦略上必要な部分以外は冗費を削り、金銭的バブル感を持たないことが大切です。また近年は「BornGlobal」を標榜し、早くからアメリカに進出する企業もありますが、エンジニアの給与などはシリコンバレーでは日本の倍以上もすることがあり、一気にバーンレートを増すこともあります。行き当たりばったりではなく、計画的にお金を使っていくことが求められます。関連KPIランウェイ、企業価値、現金残高

CHAPTER6用語解説[★28]ボラティリティ:(特に価格の)変動の大きさを指す。ボラティリティの大きな資産(例:株式)はリスキーな資産といえる[★29]スキミング・プライシング:新製品導入に当たって、それまでの投資を早期に回収すべく、比較的高い値付けを行うこと。安値で初期のユーザー数を増やすことを意図するペネトレーション・プライシングと対比されることが多い[★30]投資有価証券:市場性のない関係会社の株式やそのままでは市場価値のない有価証券など[★31]マルチプル法:非上場企業や、企業の一部門の価値を求める際に、特定の指標に類似企業から得られる適切な倍率をかけてそれを求めること。EBITマルチプルやEBITDAマルチプル、売上高マルチプル、UU(ユニークユーザー)マルチプルなどの方法がある[★32]最適資本構成:借り入れによる節税効果と倒産リスクの低さの効果の和が最大化する「有利子負債と自己資本の最適バランス」。なお、どこかに最適資本構成が存在するはずだが、それを理論的に求める方法はまだ開発されていない[★33]資本コスト:資金を調達する際のコスト、いい換えれば資金提供者が期待するリターン[★34]ファブレスメーカー:自社で工場を持たず生産を外部に委託する製造業者。アップルやキーエンスなどが有名。ファーストリテイリングなどのSPA(製造小売りアパレル)もファブレスメーカーの一種とみなしうる[★35]回帰分析法:横軸に各月(あるいは四半期)の売上高、縦軸に費用をとり、その傾きから変動費率を求める方法。なお、固定費額が途中で変わった場合はその分を調整する[★36]規模の経済性:製造・販売する数量が増えるに従い1個当たりのコストが安くなるという効果。主に固定費の分散と、購買の際のボリュームディスカウントから生じる[★37]経験曲線:累積の生産量が増えるに従い、1個当たりの製造コストが減る現象。規模の経済性に加え、生産手段が効率化されることなどによって生じる[★38]要素コスト:労働や資本、土地など、企業活動の基礎的要素に対して支払われる費用[★39]会計方針:損益計算書や貸借対照表の作成に当たって、その成績を正しく示すために採用した会計処理の原則や手続、表示の方法を指す[★40]運転資本増分:運転資本は、売上債権+棚卸資産-支払債務。ワーキング・キャピタル(WC)ともいう。運転資本増分は、それが前年からどれだけ増えたかという数字。例えば運転資本が1億円増えたということは、それだけキャッシュが拘束されてしまって使えなくなったことを示す。資金繰りに困っている企業であれば、銀行から借り入れを行うなどしてこの運転資本増分を賄う必要がある[★41]マーケットリスクプレミアム:ある株式市場に投資して資産を運用したとき、無リスクの資産(通常は国債)で運用をした場合に比べてどのくらいリターンが上回ったかを示した数字。日本の上場企業株式の場合、概ね5%程度といわれている。リスク資産に対するリターンの適切な超過分ともいえる[★42]残存価値:あるプロジェクトの価値をDCF法で求める際、その期間の終了時に残っていると想定される価値。その見積もり次第でNPVは大きく変わってくることも多い[★43]減損:資産の価値が減って回復が難しいと判断したとき、簿価上でその価額まで価値を切り下げること。買収企業の価値が下がったとき(あるいはそもそも高値摑みをしていたとき)などによく行われる[★44]TOPIX:東証株価指数(TokyoStockPriceIndex)のこと。日本の株式市場の状況を表す代表的な指標。東証1部の全銘柄の時価総額を基準時価総額で割って求める。1968年1月の数値を100としたインデックスである。日経225のような単純平均ではなく加重平均なので、高額の値嵩株の変動の影響を受けにくく、市場全体の動向を反映しやすい[★45]PER:株価が1株当たり純利益の何倍(何年分)であるかを表す数字。PriceEarningsRatioの略[★46]プロフィットセンター:企業内で利益に責任を持つ部署あるいはその単位。通常は事業部がプロフィットセンターとなることが多いが、移転価格(企業内の取引をあたかも外部企業との取引と同様に取り扱う)を用いることで、(通常は利益責任を持たない)工場やサポートセンターなどをプロフィットセンターとするケースなどもある[★47]コミットメントライン:借り手と銀行が予め契約した期間・融資枠の範囲内で、借り手の請求に基づき、銀行が融資を行うことをコミットする契約、あるいはその金額

著者紹介グロービス1992年の設立以来、「経営に関する『ヒト』『カネ』『チエ』の生態系を創り、社会の創造と変革を行う」ことをビジョンに掲げ、各種事業を展開している。グロービスには以下の事業がある。グロービス経営大学院・日本語(東京、大阪、名古屋、仙台、福岡、オンライン)・英語(東京、オンライン)グロービス・マネジメント・スクールグロービス・コーポレート・エデュケーション(法人向け人材育成サービス/日本・上海・シンガポール・タイ)グロービス・キャピタル・パートナーズ(ベンチャーキャピタル事業)グロービス出版(出版/電子出版事業)GLOBIS知見録(オウンドメディア、スマホアプリ)その他の事業:一般社団法人G1(カンファレンス運営)一般財団法人KIBOW(震災復興支援活動、社会的インパクト投資)株式会社茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメント(プロバスケットボールチーム運営)執筆者紹介嶋田毅(しまだ・つよし)グロービス出版局長、グロービス経営大学院教授。東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。著書に『MBA100の基本』『MBA問題解決100の基本』『利益思考』『ダークサイドオブMBAコンセプト』(東洋経済新報社)、『グロービスMBAキーワード図解基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード図解基本ビジネス分析ツール50』(ダイヤモンド社)、『テクノベートMBA基本キーワード70』『ビジネスで騙されないための論理思考』『[実況]ロジカルシンキング教室』(PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』(グロービス電子出版)他、多数の共著書、共訳書がある。

KPI大全重要経営指標100の読み方&使い方電子版発行日2020年9月10日Ver.1.0著者グロービス執筆者嶋田毅発行者駒橋憲一発行所東洋経済新報社〒1038345東京都中央区日本橋本石町121電話東洋経済コールセンター03(6386)1040https://toyokeizai.net/装丁遠藤陽一(デザインワークショップジン)本文デザイン高橋明香(おかっぱ製作所)イラスト山崎真理子編集協力パプリカ商店編集担当齋藤宏軌制作協力丸井工文社©2020GlobisCorp.

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