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第4章 セクハラ、マタハラ、ケアハラの新ルール

第4章セクハラ、マタハラ、ケアハラの新ルール本章でお伝えしたいこと●セクハラは「男性から女性に」とは限らない●「不快な思い」をさせるだけでもセクハラになる●「会社に相談したこと」による不利益取り扱いが禁止に

改めて「セクハラ」って何か説明できますか?◆セクハラのルールも厳しくなった!2019年の法改正では、パワハラについての法整備が行われたとともに、従来から存在していたセクハラ等についての法改正も行われました。ひと言で言えば、従来から法規制されていたセクハラ、マタハラ、ケアハラについて、その実効性を高めるための改正が行われた、ということになります。たとえば、セクハラなどについて会社に相談したことに対し、会社が解雇などの不利益な取り扱いをすることが禁じられました。これはパワハラについても同様です。さらに、あくまで「努力義務」ではありますが、自社の社員が社外でセクハラをした場合、その事実確認への協力をすることが定められました。パワハラとセクハラ、マタハラなどは、一緒に取り上げられることが多く、「相手の意に反する」「会社に不利益をもたらす」など、多くの共通点があります。ぜひこの機会に、セクハラについてのOKとNGについても知っておいてほしいと思います。◆知っているようで知らない「セクハラ」の定義では、セクハラとは何か。「職場で女性に対して下品な発言をすること」「女性社員になれなれしくボディタッチすること」確かにこれらはセクハラですが、実際にはセクハラの範囲はもっともっと広いものです。セクハラについて規定しているのは「男女雇用機会均等法」です。その定義によれば、セクハラとは「職場において、その会社の役職員から、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したり抵抗したりすることによって解雇、降格、減給などの不利益を受けること」、または「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること」となります。ざっくり言えば、「性的な言動、行為によるハラスメント」と考えればいいでしょう。性的な発言の例としては、「相手の性生活について聞くこと」「スリーサイズを聞くこと」などが挙げられる他、直接相手に対する発言でないもの、たとえば「相手の性的なことがらを言いふらす」ことも含まれます。また、性的な関係の強要はもちろん、必要がないのに相手の身体に触ること、わいせつな図画を配布することも、性的な行動とされます。

◆「相手が嫌がっていなければOK」とはいえ……また、相手の「意に反すること」が条件となります。つまり、相手が望んでいたり、同意していたらセクハラにはならない、ということです。この点、セクハラは「住居侵入」と似ていると言われています。他人の家に無断で侵入する行為は犯罪ですが、住人の事前の同意があれば問題ありません。その点で共通しているからです。ただ、相手がどう思っているかを、勝手にこちらが判断することはできません。相手が自分に好意を持っていると一方的に思い込み、親愛の表現のつもりで発した言葉でも、相手が不快に思えば、それはセクハラになるのです。セクハラ事件で加害者が「相手が気を持たせるようなそぶりをした」という言い訳をすることがありますが、それは通用しないのです。こうなるともう「社内恋愛なんて不可能では?」と思う人もいるかもしれません。もちろん、相手が嫌がっていないのならセクハラにはなりませんが、特に相手の立場が上である場合、そう簡単に相手のことを拒めない、という事情もあります。少なくともあなたの立場が上だとしたら、「君子危うきに近寄らず」の気持ちでいるべきでしょう。◆女性から男性へのセクハラも……?ここで一つ注意すべきなのは、「セクハラとは男性から女性への行為に限らない」ということです。女性上司が男性部下に対して行うセクハラもあり得ますし、男性同士、女性同士のセクハラもあります。女性から男性へのセクハラのことを「逆セクハラ」などと言うことがあります。本来、セクハラとは男女問わず当てはまるものですから、この表現はおかしいのですが、昨今は女性管理職が増えてきたこともあり、こうした問題がよりクローズアップされているようです。女性上司が男性部下を執拗に飲みに誘うなどはもちろん、わざと露出の高い服装でアピールする、といったこともセクハラになり得るので、注意が必要です。◆「女性だから」はもちろん、「男性だから」もNG!そもそも、「女性だから」「男性だから」という発想自体が、セクハラになる可能性があるのです。「女性だから昇進させない」「女性だから会議に呼ばない」といったケースは、セクハラであるとともに「男女雇用機会均等法」の「男女の均等取り扱い」の法規定に違反する行為にもなります。「女性にお茶くみをさせる」という会社は、いまだに多いのではないでしょうか。これについて、もし「お茶くみは女性だけがやる仕事」となっていたら、セクハラとなる可能性があります。男性についても同様で、「男性だから残業しろ」という発言が、セクハラになる可能性があります。

そもそも、「男性が」「女性が」という発想に凝り固まっていると、思わぬセクハラをしてしまいかねないのです。◆セクハラはパワハラ以上に影響が大きい?セクハラによる影響は、ある意味パワハラより大きいと言えるかもしれません。セクハラを行った社員は、会社からの懲戒処分だけでなく、刑事上、民事上の法違反を問われるケースがあるからです。前述したようなセクハラの例は、刑法(強制わいせつ罪、名誉毀損罪、侮辱罪等)、軽犯罪法、迷惑防止条例、ストーカー規制法などの違反になることが大半です。また、相手が訴えることで、民事上の損害賠償責任を負うケースもあります。それだけでなく、会社の責任が問われることもあります。セクハラに関して会社の責任が最初に認められた判例として知られる「福岡セクハラ事件」というものがあります。上司である編集長の男性A氏が、部下の女性Bさんの性的な風評を社内外に流したことに対し、BさんはA氏本人に抗議し、同社の専務に対しても改善を求めた。しかし、専務は「両者の話し合いで誤解を解くしかない」「話し合いがつかなければ辞めてもらうしかない」と答え、結果、Bさんは退職した。それに対するBさんからの損害賠償請求に対し、裁判所は「会社が労働環境調整義務を果たさなかった」として、会社の責任を認めた。いかがでしょうか。セクハラは思った以上に「広い概念」を持つということを、ご理解いただけたのではないかと思います。すでに「当たり前のこと」になっているからこそ、セクハラの概念について、今一度認識しておきたいところです。

これはどうなる!?セクハラの「セーフ」「アウト」◆「2つのセクハラ」を知っていますか?セクハラにもいろいろありますが、大きく「対価型」と「環境型」の2つに分類されます。「対価型セクハラ」とは、性的な言動に対して拒否したり抵抗したりしたことで、労働者が不利益を受けること。上司が執拗に性的な関係を迫り、拒否されたから解雇する、などというケースです。そこまで露骨でなくても、「二人きりでの飲みに誘い、断られたから降格させた」「別の部署に異動させた」というレベルでも、十分にこの「対価型セクハラ」となり得ます。もう一つの「環境型セクハラ」とは、性的な言動により労働者の就業環境が害されるというものです。上司が不要なボディタッチを繰り返し、それによる苦痛で業務に支障が出る、といったケースです。対価型セクハラのように明確な不利益はなくとも、仕事をするに当たって不快な思いをするだけでも十分、セクハラになるということです。何がセクハラになるかについては、「指針」によってより細かく示されています。たとえば、対価型セクハラの例として、●事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇すること。●出張中の車中において上司が労働者の腰、胸などに触ったが、抵抗されたため、その労働者について不利益な配置転換をすること。●営業所内において事業主が日頃から労働者にかかわる性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、その労働者を降格すること。などが挙げられています。また、環境型セクハラの例としては、●事務所内において上司が労働者の腰、胸などに度々触ったため、その労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。●同僚が取引先において労働者にかかわる性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、その労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。●労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、その労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと。などが挙げられています。

◆すでに多くの裁判例があるセクハラただ、この例だけでは「何がセクハラで何がセクハラではないか」をすべて網羅しているとは言えません。セクハラに関しては法律が制定されてから20年以上たっていることもあり、各種の「判例」が出そろっています。あるケースがセクハラか、セクハラでないかをめぐって裁判が行われた場合、そこで出た判決がその後の目安となっているわけです。また、この分野のガイドラインとなる資料として、経団連出版が発刊した『セクハラ防止ガイドブック』と、人事院による「セクシュアル・ハラスメントの防止等の運用について」という資料があります。これらは裁判例や学説の考え方に近く、企業が人事労務管理、訴訟リスクマネジメントの立場から対応する場合には、大いに参考になるものです。そこで、以降はこれらの資料を参照しながら、「何がセクハラになるか」をより具体的に見ていくことにいたしましょう。

1職場内外で起きやすいもの⑴性的な内容の発言関係ア性的な関心、欲求に基づくもの✓スリーサイズを聞くなど身体的特徴を話題にすること✓聞くに耐えない卑猥な冗談を交わすこと✓体調が悪そうな女性に「今日は生理日か」「もう更年期か」などと言うこと✓性的な経験や性生活について質問すること✓性的な噂を立てたり、性的なからかいの対象とすることイ性別により差別しようとする意識等に基づくもの✓「男のくせに根性がない」「女には仕事を任せられない」「女性は職場の花でありさえすればいい」などと発言すること✓「男の子、女の子」「僕、坊や、お嬢さん」「おじさん、おばさん」などと人格を認めないような呼び方をすること✓性的指向や性自認をからかいやいじめの対象とすること⑵性的な行動関係ア性的な関心、欲求に基づくもの✓ヌードポスター等を職場に貼ること✓雑誌等の卑猥な写真・記事等をわざと見せたり、読んだりすること✓身体を執拗に眺め回すこと✓食事やデートにしつこく誘うこと✓性的な内容の電話をかけたり、性的な内容の手紙・Eメールを送ること✓身体に不必要に接触すること✓浴室や更衣室等をのぞき見することイ性別により差別しようとする意識等に基づくもの✓女性であるというだけで職場でお茶汲み、掃除、私用等を強要すること2主に職場外において起こるものア性的な関心、欲求に基づくもの✓性的な関係を強要することイ性別により差別しようとする意識等に基づくもの✓カラオケでのデュエットを強要すること✓酒席で、上司の側に座席を指定したり、お酌やチークダンス等を強要すること(資料出所)人事院規則「セクシュアル・ハラスメントの防止等の運用について」より

1レッドカード該当行為(絶対に避けるべき言動)①雇用上の利益や不利益の与奪を条件に性的誘いかけなどをする✓人事考課、配置異動などの配慮を条件にして誘いかける✓性的要求への服従や拒否によって雇用上の扱いを変える②性的な嗜好などによって人事管理の差別的取り扱いをする✓性的な好き嫌いなどによって雇用上の扱いを不公平にする③強圧的に性的行為に誘ったり執拗に交際の働きかけをする✓業務上の指導などの名目にかこつけて個人的な接触をはかる✓性的関係を求める発言を繰り返す✓食事やデートにしつこく誘ったり、いやがられているのにつきまとったりする(いわゆるストーカー行為も含む)④相手の身体への一方的な接近や接触をはかる✓抱きついたり、腰や胸に触る✓職場で通りかかるたびに逃げようとしても髪や肩や手を触る⑤性的な言動によって極度に不快な職場環境をつくる✓繰り返し性的な電話をかけたり、電子メールを送ったりする✓職場にポルノ写真やヌードカレンダーを継続的に掲示する✓性的冗談を繰り返したり、複数の者が取り囲んでしつこく言う✓化粧室や更衣室の前などで胸や腰をじっと見る✓接待においてお酒の酌やデュエットを強要する✓性的魅力をアピールするような服装や振る舞いを強要する⑥人格を傷つけかねない性的評言や性的風評をする✓「性的にふしだら」などと悪質な中傷を繰り返す✓私生活上の秘密や個人の性に関するうわさなどを意図的に流す2イエローカード該当行為(できるだけ避けるべき言動)①性別による差別的発言や蔑視的発言をする✓女性のみ「ちゃん」づけで呼んだり、「女の子」と呼ぶ✓「女性に仕事は無理だ」「男だったら徹夜しろ」などという②性的な言動によって正常な業務の遂行を妨害する✓相手が返答に窮するような性的冗談をいう✓個人的な性的体験談を話したり、聞いたりする③性的な言動によって望ましくない職場環境をつくる✓肩、髪、手などに不必要に触れる✓休憩時間にヌード雑誌をこれみよがしに読んだり見せたりする④性的に不快感をもよおすような話題づくりや状況づくりをする✓任意参加の会合で上司の隣りに座ることやお酒の酌を要求する✓ある女性と他の女性の性的魅力について比較する⑤不必要に相手の個人領域やプライバシーを侵犯する✓スリーサイズを尋ねたり、身体的特徴を話題にする✓顔をあわせるたびに「結婚はまだか」「子どもはまだか」と尋ねる

OUT!「仕事のアドバイスをしてあげるから、今度二人で飲みに行かない?」と誘うここでレッドカードとされている事例は、あえて詳しく説明するまでもないものばかりです。突然相手に抱きついたり触ったりすることは、もはや単なる犯罪です。人事考課や異動などをにおわせてホテルや自宅に誘うのはもちろん、二人きりでの飲食に誘うこともまた、レッドカードです。ここに挙げた「仕事のアドバイスを口実に誘う」例も、誘った側が上司など権限を持っている立場であれば、明らかな「対価型」のセクハラと言えるでしょう。あくまで仕事の話だと言い張ったところで、「二人だけで飲みに行く」という誘いである以上、性的なものと考えられても無理はないのです。同様に、自分の部署に異動を希望している人を「相談に乗ってあげよう」と誘うようなことも、セクハラとされます。たとえ単なる相談だということでも、相手としてはそれを断ったら心証が悪くなり、異動が不可能になると考えるに十分な状況と言えます。下心があろうとなかろうと、こうした誘い自体が問題になるのです。ある程度の立場にある人は、自分の発言の「重み」について、常に意識しておくべきでしょう。OUT!「あいつは男をとっかえひっかえしているらしい」などのうわさを流す「食事に誘う」「ホテルに誘う」などは直接的なセクハラですが、「性的なうわさを流す」といった間接的な行為もまた、セクハラになるので注意。その内容が事実かどうかは関係ありません。人格を傷つけかねない性的風評を流すことは、明らかなセクハラです。OUT!社内の女性に「ちゃん」をつけて呼ぶこれは絶対にNGとは言えないのですが、避けたほうがいいケース。男性も含め社内の人全員を「ちゃん」づけするならまだいいのですが、女性だけ「ちゃん」づけするとなると、セクハラとされる恐れがあります。つまり、「女性だけ」ということが、差別だと判断されるのです。同様に女性のことを「女の子」と呼ぶことも差別的だとされる可能性があります。「女性はそちらの部屋を使ってください」を、「女の子はそちらの部屋を使ってください」などと表現するようなケースです。

本人は親しみを込めたつもりかもしれませんが、結局、問題は相手がどう取るかです。「お嬢さん」などの表現も避けるべきですし、「おばさん」は論外です。前にクイズで取り上げましたが、同様の理由で「女性だけ」にお茶くみをさせることも、セクハラだとされることがあります。OUT!男なら根性を見せろ!セクハラは「女性に対して」とは限りません。「女性だけ」がNGであるのと同様、この例のような「男性だけ」もまた、セクハラになり得ます。「男性なら徹夜くらいしろ」「男のくせに根性がないな」なども、差別的だとされる可能性があります。先ほど女性について「おばさん」と言うことが差別的になるという話をしましたが、この理屈からは「おじさん」もセクハラになり得るのです。一方、「女性には無理だ」というような発言は、一見女性への配慮に見えますが、言い方によっては差別的に捉えられるでしょう。つまり「男だから」「女だから」というステレオタイプに凝り固まったような発言は避けよということです。OUT!誰もが見えるところにセクシーなポスターを貼るこれは「環境型セクハラ」です。露骨なヌードポスターはもちろんですが、お酒の広告にあるような、水着の女性が大きく写っているようなポスターも避けるべきでしょう。休み時間に性的な雑誌をこれ見よがしに読んだり、ネットでそうしたサイトを見ることもやめましょう。OUT!「結婚はまだか」「子供はまだか」としつこく聞くこれは「旧来型」の上司はついついやってしまいがちかもしれません。結婚するのも子供を作るのも、あくまで個人の自由。社内の、しかも公衆の面前でこういう話をするのは避けるべきでしょう。ただし、キャリアプランや業務の必要上、出産の予定などを確認する必要があるケースもあります。その場合は、あくまで相手の許可を取ったうえで、話題にする分には差し支えないでしょう。こうしよう!他にもケースを挙げればいくらでもありますが、キリがないのでこれくらいにしておきます。では、セクハラをしないためにはどうすればいいのか。一つは「男性だから」「女性だから」という発想を極力なくすことでしょう。「女性は

お茶くみ」というような発想は、時代遅れどころかセクハラになると心得ておきましょう。「男なら」という発想もやはり、根性論ではなくセクハラとされる時代です。とはいえ、生理や妊娠・出産など、女性だけに特有のものはもちろんあり、それらについての配慮は必要。つまり、こうした話題を配慮もなく口にしないようにすべき、ということです。もう一つは、「自分の影響力を過小評価しない」ことでしょう。軽い気持ちでの誘い文句が、相手からは「断れない命令」と受け取られてしまう可能性があるからです。もちろん、二人きりで話さねばならないこともあるでしょうから、それはあくまで社内で。職場の親睦を深めるために会合を開きたいのなら、あくまで大勢で。これが基本です。

マタハラはもちろん、「パタハラ」「ケアハラ」も禁止ですOUT!「つわりがひどいから休むなんて、認められないよ」OUT!「あの人、育休を限界まで取るんだって。こんなに忙しいっていうのに……」冒頭から「アウト」の事例を2つ並べました。これはどちらも「マタハラ」、つまり「マタニティハラスメント」となります。労働基準法では、女性社員に対し産前産後6週間の産前産後休業、生まれた子が満1歳になるまでの間に毎日1時間の育児時間を与えることなどを、使用者(会社)に義務づけています。会社は産前産後の女性社員に対して、時間外労働や深夜労働をさせないなどの対応をする義務もあります。また、男女雇用機会均等法では、女性社員に妊娠中および出産後の通院時間を与えることを事業主に義務づけています。さらに育児・介護休業法では、男女社員から請求があった場合、事業主は育児休業等を与えることが義務づけられています。つまり、産休や育休を取得することは、法律で認められた権利。にもかかわらず、それを阻害したり非難したりすることが「ハラスメント」となるのです。産休や育休を取ろうとしたことで不当な解雇や減給などをされることもマタハラになりますし、マタハラを会社に訴えたことで、その社員が会社から不利益な取り扱いを受けることもマタハラです。最近は男性社員が育児休業などを取ることも増えており、それを妨げる言動や不利益取り扱いなども問題視されるようになっています。これについては、「パタハラ(パタニティハラスメント)」と呼ばれています。パタニティ(Paternity)とは、英語で「父性」を意味する言葉です。つまり、OUT!「男のくせに育休を取るなんて、何を考えているのか」ということです。マタハラ、パタハラに関しては、今回の法改正を待たずして、セクハラと同様にすでに法律が整備されていました。それが「育児・介護休業法」「男女雇用機会均等法」です。かつての日本では、女性社員は結婚すると会社を辞め、家事や育児に専念するのが当た

り前とされてきました。しかし、出産や子育てが忙しい時期だけ休業し、その後また働きたいという人が増え、企業側もそうした人材を活用すべきということで、育児休業に関する法律が定められたものです。1992年に「育児休業法」として制定され、その後1995年に現在の「育児・介護休業法」になりました。この法律では従来から、男女社員からの請求があった際、具体的にどのように育児休業や看護休暇等を与えるべきか、時間外労働や深夜労働の制限をどうするかなど各種の育児支援について定められているとともに、育児休業等の申出・取得等を理由とする不利益な取り扱いが禁止されています。そして、上司・同僚などからのマタハラへの防止措置を講じることが、事業主の義務とされています。さらに、今回の改正により、マタハラ等に関する問題を会社に相談したことによる不利益取り扱いも禁止されたわけです。また、「育児・介護休業法」という言葉からもわかるとおり、この法律では、男女社員の介護のための休業が認められています。法律によって認められた介護休業その他の介護支援制度を利用する権利を認めないこともまた、「ケアハラ」として禁じられています。認めたとしても降格や減給をしたり、出世コースから外すといったこともケアハラです。また、介護休業を取ろうとすることに対するハラスメント的な発言も「ケアハラ」になります。たとえば以下のようなものです。OUT!親の介護休業を取ろうとしたら「老人ホームに入れればいいじゃないか」と言われたどんな事情があろうとも、親などの介護のための休業は法律で認められた権利です。この例のように「ホームに入れろ」といった発言や、「奥さんに任せればいいだろ」という発言もケアハラになるので、注意が必要です。

column「カスハラ」対応への第一歩さて、今回の法改正では義務化されるに至りませんでしたが、もう一つのハラスメント対応として注目すべきことがあります。それがいわゆる「カスタマーハラスメント」です。「顧客(カスタマー)ハラスメント」の名前のとおり、取引先や顧客等からの著しい迷惑行為を指します。最もわかりやすいのが、いわゆる「クレーマー」の問題でしょう。明らかに理不尽な要求を繰り返したり、ささいなことで激高して土下座を要求したりといったクレーマーは、「モンスターカスタマー」とも呼ばれて社会問題化しています。相手は顧客であるために無下にできず、暴言や長時間の拘束で心身に不調をきたすこともあります。いわゆる「下請けいじめ」なども、この範疇に含まれるでしょう。発注者であるという立場の強みを利用して、明らかに度を越えた値引きや納期の要求を突きつけてきたりといった行為はそもそも、下請法によって禁じられていますが、その過程において高圧的な態度や威圧的な言動があれば、それによってメンタルの不調をきたすこともあるでしょう。今回の法改正における厚生労働大臣の指針では、こうした問題に対処するために相談窓口を設けたり、「悪質なクレーマーには一人で対応させない」といった規則を設けたり、カスタマーハラスメントに対応するためのマニュアルを設けるなどの対処をすることが「望ましい」とされました。「望ましい」である以上、やらなかったから罰則があるといったことはないのですが、このように指針として言及されたことは、カスハラ解決への第一歩と言えるでしょう。

これってパワハラ?Q10いわゆる「時代遅れのおじさん」であるB氏。かつては営業部長だったけれど、彼の営業方法はもう通用しない。他に仕事もないから、電話当番をやっててもらおう。

Aこのケースは判断が二分されそうです。会社として客観的にB氏の現時点の業務遂行能力を評価し、それに見合った職務に配置したというのであれば、パワハラにはなりません。ただ、直属の上司の独断でいじめや嫌がらせとして行われた配置だとしたら、パワハラに該当する可能性があるでしょう。

これってパワハラ?Q11ある日突然、私がパワハラをしていると訴えるメールが部下から人事に。確かに教育のため、少々厳しくした側面もあったかもしれないが……。え、問答無用で部署異動?それはおかしいでしょ?

A部下からの訴えがあって初めて、「自分がパワハラまがいのことをしていた」ことに気づかされることは多いもの。ただし、会社は当の上司の言い分を聞かずに処分してはいけません。双方の話を詳しく聞き、事実確認を行ったうえで対応を決める必要があるのです。このあたりの詳細は続く第5章にて解説していくことにします。

 

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