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第2章 ウィズコロナ時代のハラスメント

第2章ウィズコロナ時代のハラスメント新型コロナ感染についてのハラスメント新型コロナは、世界や日本の経済だけでなく、社会のありとあらゆるところに大変な影響をもたらしている。日本では、2020年5月に緊急事態宣言が解除されたが、その後の感染の拡がりがどのようになるかまだ予断を許さない。このような状況の中で、われわれはアフターコロナではなくウィズコロナ時代を生きていかざるを得ない段階に入っている。このウィズコロナ時代の職場で、今までにないハラスメントが起きている。それは大きく分けると、新型コロナの感染に関する言動についての新型コロナ・ハラスメント(コロハラ)と、新型コロナで急速に広がったテレワーク・ハラスメント(テレハラ)である。まず新型コロナ・ハラスメントについて考えよう。新型コロナの感染者の数が毎日発表される。そのたびにどこで感染者が出たのか、自分の住んでいるところはどうなのかなど不安は募るばかりである。経営者や管理職にとっては、感染者が自分の職場から出たらどうすればよいのだろう、それを防止するにはどうしたらよいのだろうといったことが心配になる。社員の方も、職場に感染者が出たら会社を休めるのか、給料はどうなるのか、もし自分が感染したらどうなるのかなどと心配は尽きない。そのような中でハラスメントが起こる。職場で、社員やその家族に感染者が出たときに行き過ぎた言動があるとパワハラになる。例えば社員の家族に感染者が出たとき、その社員は出社したいのに経営者が会社に来るなと命令することはどうだろう。結論としてはハラスメントにはならない。新型コロナは感染者との濃厚接触によって拡大するから自宅待機命令を出せる。では、単に発熱があるだけの社員に会社に来るなと言うのはどうだろう。微妙ではあるが、新型コロナの感染が収まらない状況下で、他の社員への感染防止のために自宅待機命令を出してもハラスメントにはならないだろう。経営者や管理職としては、新型コロナの感染が「夜の街」で広がっているので、社員がプライベートで繁華街に飲みにいくのを禁止したとする。これはハラスメントだろうか。会社は社員に対する安全配慮義務があり、社員が安全な環境で働けるようにしなければならない。そのために新型コロナの感染防止に全力を尽くさなければならないという面はある。しかしこのように私的な飲食までも禁止するのはハラスメントになるだろう。

社員全員に、平熱かどうかなどの健康情報の提出を義務付けるのはどうだろうか。新型コロナの感染を防止するためであれば、このような個人情報であってもそれを提出させることはハラスメントにはならない。ただ、体温そのものまでを毎日提出させるのは行き過ぎになるだろう。プライバシーの侵害に当たるからである。テレワークと在宅勤務の広がりテレワークというのは、直訳すれば「離れたところでの労働」であり、ITを使って場所や時間にとらわれずに働くことである。パーソル総合研究所が全国2万5000人を対象にした「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」(2020年4月10~12日)では、テレワーク実施率は27・9%にもなった。テレワークが広がって在宅勤務も増えた。2020年4月7日の緊急事態宣言が出される前に行われた国土交通省の「テレワーク人口実態調査」(3月9、10日に実施)では、在宅勤務率は12・6%であった。それが緊急事態宣言後には増えて、日本生産性本部が5月11日から13日にかけて会社勤めの1100人を対象にした調査では、29%(319人)が在宅勤務だった。今後、働き方がコロナ以前の状態に完全に戻ることはないだろう。この日本生産性本部の調査では、在宅勤務などをしている人の約6割が新型コロナ収束後もテレワークを続けたいと回答している。テレワーク時代が始まったと言える。テレワークには限界があるテレワーク時代の始まりということで、時流に乗り遅れるなと世の中は大変な勢いである。もちろん、テレワークは、ワークライフバランスを図る観点から積極的に導入すべきではある。しかし、テレワークは世間で言うほどすべてバラ色ではない。こんなことを言うと時代遅れと言われそうだが、そのようなことはない。それほど生産性が向上するというのなら、コロナ以前からもっと導入されていたはずだ。テレワークには当然ながら限界がある。まずテレワークを導入できる企業とできない企業がある。工場や飲食店はそもそもテレワークに向いていない。それ以外にもさまざまな問題点がある。経済同友会の105社へのアンケート調査結果(2020年4月20~24日)では、ほぼすべての会社でテレワークが実践されているが、課題として、「込み入ったやりとりは、在宅勤務では難しい」「テレワークによる生産性の低下に対する抜本的な働き方改革」などが挙げられている。この回答の中の「込み入ったやりとりが難しい」、つまりコミュニケーションがとりづらいというのは、テレワークがもつ最大の問題点だろう。テレワークが増えてくると、直接会うことが減り、上司と部下のコミュニケーションのレベルは大きく低下する。コロナ以前であれば、上司と部下が顔を合わせ、お互いのその日の気分や体調も見ながら仕事ができた。しかしテレワークとなるとそうはいかない。机を並べていないので、上司と部下でお互いの状態がよくわからない。テレワークのひとつとして、ZoomやTeamsといったアプリを用いたテレビ会議

がよく取り上げられる。しかし、会社はいつも会議をしているわけではないから、在宅や社外で業務をしている部下の様子はわからない。労務管理として、パソコンの前からの離席状況を記録するという会社があるようだが、そのような監視体制で業務のモチベーションが上がるかは疑問である。新たなハラスメント「テレハラ」このような問題点をかかえたテレワークであるが、今まで想定されなかった新たなハラスメントが出てきた。テレワーク・ハラスメント、テレハラである。テレハラは、リモートワーク・ハラスメント(リモハラ)と言われることもある。実例としては、テレワークをしている社員から、「上司に、カーテンの模様がかわいいねと言われた」「オンライン飲み会に一部の人だけが呼ばれる」「子供がうるさいから黙らせろと言われた」「見えないところでさぼってないだろうなとか、服装がだらしないと言われた」というようなケースが報告されている。このような画面に映った部屋の様子を指摘することは、部下のプライバシーを侵害し不快感を与えるのでセクハラ、パワハラになりうる。「子供がうるさいから黙らせろ」というのも、時と場合によるので一概に問題だとも言い切れないが、乱暴すぎる言い方は部下に不快感を与えるだろう。さぼってないだろうなとか、服装のことを指摘するのも、行き過ぎた言動として部下に不快感を与えるのでパワハラになる可能性がある。なぜテレハラが出てくるのかこのようなテレハラが出てくるのは、先に挙げたテレワークの問題点に関係している。まず、在宅勤務によって部下の部屋などのプライバシーに関わるハラスメントが生じやすい。それは自宅といった私の部分が会社の仕事という公の部分に関わるからである。上司には公と私の区別意識が必要である。もうひとつは部下との十分なコミュニケーションがとれないことに原因がある。まず部下が職場にいないので、画面から離れるとその時間に部下がどのようにしているか様子がわからない。例えば、今までであれば部下が机に向かって仕事をしているのを見ているのでよいが、テレワークだと部下が見えないので、その仕事が不十分だと思った上司は部下が家でさぼっていたのではないかと疑ってしまう。そうすると上司から「見えないところでさぼっていただろう」という言葉が出てきて、ずっと仕事をしていた部下に不快感を与えてしまうことになる。それ以外にも、IT機器の扱いがうまくできない部下を業務からはずしたり、逆に部下がITにうとい上司をばかにするような言動をしたりするテクハラも起きるだろう。経営者と管理職は何に注意すればよいのかでは、このようなテレハラを起こさないようにするために経営者と管理職はどんなことに注意したらよいのだろうか。

要は前に挙げたことが起きないようにすることなのだが、第一に必要なことは、上司としては勤務という公的な部分だけに関わるという意識である。つまり、在宅でのテレワークでの私的な部分であるプライバシーに注意することである。例えば「カーテンの模様がかわいいね」というのは、言った方からすると素敵とほめているのに、なぜハラスメントなのかと思うかもしれない。しかし自分の部屋はプライベートな空間であり、言われた方は自分の部屋を見られたという意識の方が強い。「部屋が片付いていない」というのも、やはりプライベートについての指摘なので避けるべきである。管理職としては親しみをこめた軽口のつもりでも、言われた方にショックを与えることを十分に認識しておく必要がある。次に必要なことは働き方についての理解である。テレワークという働き方では、上司が部下を信頼することが前提になる。その信頼がないと「見えないところでさぼっていただろう」というセリフが出てしまう。新時代の新しい働き方に合わせて、テレワークにおいては今以上に経営者と社員、管理職と部下との信頼関係を構築しなければならない。人間関係とコミュニケーションが今以上に必要になるということである。京都大学の若林直樹教授も、テレワークが成功するかどうかのポイントは、リーダーと部下とのコミュニケーションと信頼関係の強化であると言っている(「日本経済新聞」2020年8月11日付朝刊)。最後にひとつ注意すべきことがある。画像や文字など上司と部下のやりとりの記録が残ることである。これはテレワークに限ったことではなく、これまでもメールなどでのやりとりは記録に残っていた。ただテレワークが広がると、それだけ記録に残ることが多くなるのは間違いない。このことはハラスメントについて言えば、それだけやりとりが証拠になって残るということを意味する。テレワーク時代では画像やメールなどのやりとりは感情的になることなくより慎重にしなければならない。

 

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