DaiGo式禁煙プログラム第5章の冒頭で、私たちが新しい習慣を身につけるのに必要な日数は、平均で66日というロンドン大学の研究を紹介しました。また同研究では、「毎朝1杯の水を飲む」という簡単な習慣は短期間で身につくが、エクササイズや勉強など、複雑な作業や持続するための精神力を必要とする習慣ほど、身につくまでには長い時間が必要という結論になっていました。例えば、1日50回の腹筋を習慣化する場合、研究に参加した人たちは平均84日かかりました。つまりより難易度が高い禁煙の習慣化には、66日以上かかる可能性があります。そこで、今回は3カ月、99日の禁煙プログラムを作成しました。重要なポイントは次の3つです。・禁煙すると宣言した日(パブリック・コミットメント)から禁煙開始日までに2週間の準備期間を設けること・意志の力や我慢に頼らず、本書で紹介した複数の禁煙法を組み合わせ、実践していくこと・禁煙開始後、1度や2度喫煙してしまうことがあっても、放り出さずに、禁煙の習慣化を継続することプログラムで活用していくプラン、心理テクニックは、本書でこれまで取り上げてきたものばかりです。これらを組み合わせて、環境を変え、感情を観察し、行動をコントロールすることで、喫煙という習慣を禁煙という習慣に置き換えていきましょう。仮に持続時間が1時間であっても、「タバコを吸いたいという欲求」と「実際にタバコを吸う行動」を切り離せるようになったら、それは禁煙の習慣化が成功し始めている兆しです。焦らず、じっくりと進めていきましょう。
1日目禁煙を宣言する禁煙開始の1日目は、「タバコをやめる」と宣言する「パブリック・コミットメント」と、禁煙開始日の設定を行います。「タバコをやめる」ことをまわりに宣言する(パブリック・コミットメント)夫、妻、彼氏、彼女、子ども、親友、恩師など、「この人には信頼されていたい!」という人に対して、「禁煙すること」を宣言します。口頭で伝えるだけでなく、可能なら紙に「~だから、◯日から禁煙を始めます!」と動機づけとともに書き、配ってください。また、ブログやFacebookなどのSNSで「禁煙します!」と公表するのもいいでしょう。TwitterやLINEのアカウント名を「名前@禁煙中」に変えるのもいいアイデアです。親しい人に加え、より多くの人の目に触れる状態にしていきます。「パブリック・コミットメント」には、「一貫していたいという欲求」と「タバコを吸いたいという欲求」のぶつかり合いに、「大事な人からのあなたへの評価」という重しを加え、禁煙という行動を持続させる効果があります。禁煙開始日を決める禁煙を宣言したおよそ2週間後に禁煙開始日を設定します。重要なのは、設定した禁煙開始日は絶対に動かさないことです。人間は自分に甘く、計画を先延ばしにしてしまいがちです。カレンダーやスケジュール帳など、普段から目にするものに禁煙開始日を書き込み、大きな赤丸をつけるなどして強く印象に残るようにしましょう。ただし、2週間後が繁忙期などでストレスの多い時期と重なるとわかっている場合は、15日目を禁煙開始日にする必要はありません。無理に長年の喫煙習慣を遠ざけようとしても、強いストレスがトリガーになり、初期段階で禁煙に失敗してしまう可能性が高いからです。そうした場合はさらに1週先を禁煙開始日とします。また、禁煙開始日は休日や長期休暇の始まりの日に設定すると、ストレスが少なく禁煙の成功率が上がります。
2日目~14日目禁煙のための準備をする禁煙開始日までの2週間は、禁煙を成功させるための重要な準備期間です。あなたの喫煙習慣がどのようなものだったかを振り返り、タバコを吸うきっかけとなっている日々の習慣を見定め、その対抗策を練っていきます。喫煙のトリガー(状況)を見極めてリスト化するノートとペン、あるいはスマホのメモ機能などを用意して、あなたがどんなときにタバコを吸っていることが多いか、どんなときに吸いたくなっているのか、その状況を書き出していきましょう。ポイントはタバコを吸う動機と環境を知った上で、「本当に吸いたかったのか?」という疑問をぶつけていくことです。すると、動機と環境によって引き起こされた「タバコを吸う」という行動が、じつは「吸いたい欲求」と関係がなかったことが見えてきます。それが、「喫煙のトリガー(状況)を見極める」という作業を行う最大の狙いです。身の回りから喫煙リマインダーを捨てる2週間後の禁煙開始日に向けて、身の回りから喫煙を連想させる物、タバコまたはタバコ関連のアイテムを取り除くという禁煙実行のための事前準備を行います。「タバコ」「ライター」「灰皿」はもちろん、喫煙を思い起こさせる物はできるだけ処分していきましょう。大事なのは、これを禁煙開始日までの2週間の間に済ませることです。いざ禁煙を始めてから喫煙リマインダーを消そうとすると、逆に「吸いたい」という自動的な思考を引き起こすトリガーとなってしまいます。禁煙開始日以降にやってくるタバコへの誘惑に対して、事前に実行可能な選択肢を消しておくことが禁煙の成功率を高めるのです。吸いたくなったときのための「ifthenプラン」を立てる「ifthenプラン」は94件の学術研究で効果が立証され、心理学に裏打ちされた「悪い習慣を断ち切り、新たな習慣を身につける」ための最強のテクニックです。①タバコを吸いたくなる場面をイメージする※「喫煙のトリガー(状況)を見極める」で思い浮かんだシチュエーションをイメージする(例)朝起きてすぐ、寝起きの一服をしてしまう②もし「①」の状態になったらどうするかを決める(例)朝起きたら、すぐに顔を洗い、朝食の準備をする③「②」で決めた対処法を「ifthenプラン」の形にする(例)もし朝起きてタバコを吸いたくなったら、顔を洗い、朝食の準備をする「ifthenプラン」は、「then」に複数の選択肢があるほど、成功率が高くなることもわかっています。(例)もし朝起きてタバコを吸いたくなったら、顔を洗い、朝食の準備をする。それでも吸いたい気持ちが高まるなら、家の外に出てしまうこのようにして禁煙開始日までの2週間の間にできるだけ多くの「ifthenプラン」を立て、文章化しておきましょう。そうすればタバコを吸いたくなったとき、これを見返すことで「吸いたくなったら、こう対処したらいい」とひと目でわかります。言わば、「ifthenプラン」は「禁煙リマインダー」として機能するのです。禁煙外来を訪れる禁煙開始日以降にやってくるニコチンへの禁断症状への対策として、禁煙補助薬を活用しましょう。事前に禁煙外来を受診し、ニコチンガム、ニコチンタブレット、ニコチンパッチ、ニコチン点鼻薬、バレニクリン(商品名:チャンピックス)などの処方薬を手に入れます。喫煙習慣を変えていくための禁煙法にプラスして、薬物療法を併用することで禁煙成功率を高めることができます。
15日目禁煙開始しっかりと眠った後の休日の朝は自己コントロール能力が十分に回復していて、実行力、決断力ともに高まるので、禁煙はできるだけ休日から始めてください。さらには、長期休暇の間であれば、生活環境が変わり、楽しい出来事も多く起こるので、「タバコを吸いたい」という欲求から逃れやすくなります。「よし、これから自分の人生を変えていくんだ」と願いながら、タバコを吸わないという新しい習慣を始めましょう。一気に本数をゼロにする「1日に吸う本数を少しずつ減らしながら、禁煙を目指す減煙」ではなく、禁煙開始日からはスパッと断煙する(ゼロにする)ことを本書ではおすすめしています。「パブリック・コミットメント」を行った日から2週間の準備期間中に吸いたくなる気持ちを抑える対策(「喫煙のトリガー(状況)を見極める」、「ifthenプラン」)をしたら、禁煙開始日以降は1本も吸わないことが禁煙成功への近道となります。
16日目~90日目禁煙を習慣化する禁煙を開始したら、これを習慣化するメンタルテクニックを使っていきます。「禁煙日記」をつける禁煙日記は、禁煙開始日以降につけるもので、タバコを吸いたいと思ったとき、あるいは吸ってしまったときの状況、感情、時間などを次のように記録していきます。それを読み返し、何が喫煙のトリガーになっているかを理解するのが目的です。・どんな場面で強烈にタバコを吸いたくなったか・吸いたくなった感情は、渇望レベルの満点が100点としたら何点だったか・吸ったのはどんな状況で、吸った後、どんな感情になったか・何が吸うという行為につながったのか書くことによる主なメリットは、次の4つです。・タバコを吸いたいという欲求と自分を切り離すことができる・日常の喫煙危険時間帯、喫煙危険スポットが見えてくる・吸ってしまった状況も書き残すことで、次回、同じ失敗を繰り返さないためのデータが手に入る・何がタバコを吸う直接の原因となったのかを確認できるので、以後、喫煙のトリガーとなる感情、喫煙リマインダーとなる環境を遠ざける策が立てられるただ喫煙の習慣からくる「吸いたい」という自動的な思考は強力で、禁煙中の喫煙者はさまざまな理由によって一時的に禁煙を途切れさせてしまいます。でもそこで「もうダメだ」とがっくりし、「自分は弱い人間だ」と落ち込まないでください。禁煙成功者の禁煙チャレンジ数は6・1~29・6回です。禁煙中の「気づいたら、1本吸ってしまった」程度のトラブルは、起こりうる挫折として事前に計画しておきましょう。重要なのは、挫折から何を学び、その直後から再開される吸わない生活にどう生かしていくかです。禁煙開始日から始める「禁煙日記」は、そのための対策となります。禁煙初期は薬物療法を併用する事前に処方してもらったバレニクリン、ニコチン点鼻薬、ニコチンパッチ、ニコチンガムなどを併用しましょう。禁煙補助薬による治療期間は、12週間が一般的。これはニコチンが体内から抜けていくとされる期間に合わせたものです。禁煙法と薬物療法を併用することで、禁煙成功率を高めることができます。「20秒の先延ばしテクニック」を使う吸いたいと思ったら、「タバコが吸いたい~、と歌にして歌う」「コップに水を入れて飲む」「コーヒーを淹れる」など、吸いたい欲求から吸うという行動に移るのを止めてください。これは自動思考の停止と呼ばれるテクニックです。吸いたい欲求を否定したり、タバコを強く拒否したり、吸いたい自分を批判したりするのではなく、「欲求はある。でも大丈夫。やり過ごそう」という考え方です。タバコを吸いたい欲求を採点する「うわ、吸いたい!」と思った瞬間の欲求を100点として、20秒後は何点か、1分後は何点か、5分後は何点か……と自分の欲求を観察して採点します。時間の経過とともに点数が下がっていくことが目に見えてわかるはずです。「採点法」は2つの意味で役に立ちます。1つは、「うわ、吸いたい!」と思ったそのときの欲求と行動をきり離せることです。「タバコが吸いたい~」と歌うのと同じく、欲求を数字に置き換える作業はあなたに冷静さを取り戻させます。そして、もう1つは「タバコを吸いたくなるような状況を設定し、欲求がどう変わるか観察できること」です。これは第3章で紹介した「喫煙のトリガー(状況)を見極める」と「ifthenプラン」をバックアップするメンタルテクニックとなります。吸いそうな状況を詳しくイメージする禁煙開始後、改めて「喫煙のメリット、トラブル」を書き出すとともに、メリットを手に入れることを阻害し、タバコを吸ってしまいそうな状況を細かく思い描きます。これは「心理的対比」と呼ばれるテクニックで、次のように行うことで目標の達成率を高めます。目標を達成したイメージを細かく思い描く脳がイメージをダイレクトに受け取る「これは目標を達成できそうだ!」と脳が思い込む「達成を邪魔する状況」を詳細に思い浮かべる
「このトラブルを乗り越えれば報酬が手に入る」と納得するポイントは、目標達成に向けたプロセスで起こりうるトラブルを想定することです。これを細かく想像することで、脳がトラブルを認識。ネガティブなイメージが加わることで、「このトラブルを乗り越えれば、目標達成という報酬が手に入るのだな」と納得し、モチベーションが高まるというしくみです。これが「心理的対比」が禁煙に役立つ理由です。「どうにでもなれ効果」を回避する「どうにもでもなれ効果」とは、一度計画が崩れると自暴自棄になってしまう心理状態です。禁煙中、どうしても我慢できず1本吸ってしまったとき、そこから次の1本へとつながらなかった時間をカウントし、吸っていないことを自画自賛していきます。リカバリーに達成感をもたせることで、「どうにでもなれ」を防ぐ対策となります。瞑想トレーニングを併用するストレスを感じていると、「スリップ」と呼ばれる事故的な喫煙の可能性が高まります。そこで、日常的なストレスをコントロールするために、最もシンプルな「呼吸に集中する瞑想」を行います。基本的には、軽く目を閉じ、「吸って吐いて」の呼吸に意識を向けて、5分間の瞑想を。たったこれだけで、ストレスは軽減され、「吸いたい欲求」は過ぎ去ります。
心理的介入(心理学的に正しい禁煙法)は「禁煙」というゴールへ導く伴走者繰り返しになりますが、アメリカ合衆国保健福祉省(HHS)の統計データでは、禁煙に関して1つの心理的介入(心理学的に正しい禁煙法)を行った場合、禁煙成功率は15・1%ですが、2つの心理的介入を使うと18・5%、3~4つを同時に使った場合は23・2%へと上昇することがわかっています。そして、コクラン共同計画が行ったレビューによると、禁煙補助薬であるバレニクリンを使った薬物療法での禁煙成功率は33・2%となっています。つまり、複数の心理的介入と薬物療法を組み合わせることで、禁煙の成功率は50%を超えるということです。「いつかはやめたい」という思いを掘り起こし、「パブリック・コミットメント」として周囲に宣言。そこから禁煙開始日までの間に「タバコを吸わない習慣」が定着する環境作りを行い、禁煙開始日以降は「吸いたい欲求」と「吸うという行動」をきり離す工夫を重ねていきましょう。ニコチンの禁断症状(離脱症状)がピークとなる3日目、ニコチンが体内から抜けていく3週間目、そして新たな習慣が定着し始める3カ月目が、「禁煙の山場」です。心理的介入(心理学的に正しい禁煙法)は行動を止めることで、喫煙習慣を途切れさせ、禁煙というゴールへ導く伴走者。あなたがタバコを必要としない人生を歩み始めることを願っています。
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