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第2章 「数字」が読めると本当に儲かるんですか?

なけなしのお金を払った最後の一手スゴ腕の税理士に最後の望みを託すことにその後、季節は冬から春へ、そして夏へと移り変わり……。

僕の会社は、お金が残らないだけでなく、しだいにいつ潰れてもおかしくない虫の息の状態になっていきました。

そのため、経費を少しでも減らそうと、小さい事務所へ移転することにしました。

家賃は6万円と格安ですが、防音や断熱などとは無縁の築40年の物件です。

関係各所への支払いは相変わらず滞ったままでしたが、5月に「母の日」という花屋にとっては1年で最大のイベントがあったので、まとまったお金が銀行の口座へと入金され、資金繰りも首の皮一枚でつながっています。

そんなある日、ネットショップを経営している仲間と話をしていたときに、税理士の話題になりました。

僕は話に合わせるべくなんとなく、「いい税理士さん、いないですかねえ?」と口にしました。

すると、知り合いの女性の経営者Nさんが「ネット通販などの会計に精通している、スゴ腕の税理士さんがいるよ。

私もその人にお願いしているの」と、身を乗り出しながら目をキラキラさせて僕に言うのです。

正直、税理士をお願いする金銭的な余裕はなかったのですが、万策尽きた僕にとっては「スゴ腕」という言葉は、なんともいえない魅力的な響きでした。

しだいに、なけなしのお金を払って攻める最後の一手という気持ちになり、またNさんには大変お世話になっていたので、それならばということで税理士を紹介してもらうことにしました。

その「大丈夫」は、本当に大丈夫なんですか?事務所のエアコンをMAXにしても、室温が30度よりも下がってくれないくらいの真夏の暑い日。

今日は14時過ぎに、紹介してもらった税理士さんが事務所に顔合わせに来る日です。

「どんな人が来るんだろう?」と、ドキドキしながら待っていたら、14時ちょうどくらいに「ピンポーン」とベルが鳴りました。

ドアを開けると、「はじめまして。

Nさんからご紹介いただいた税理士ですが。

いやあ~、暑いですねぇ~」と言いながら、ぷっくりとふくれたお腹の男の人が立っています。

税理士さんの口もとは笑っているのですが、メガネ越しに見える目は笑っておらず、ちょっと怪しい感じの雰囲気。

若干だらしなくも感じる安っぽい服装なんですが、いかにも高そうなカバンを持っています。

この人、いったい何者なんだ?というか、大丈夫なんだろうか?「スゴ腕」ということで切れ者風の、もっとこうシュッとしたイメージの人を想像していたのですが、なんとなく頼りなさそうです。

一抹の不安を抱えながらも、「こちらへどうぞ」と、その税理士さんにソファに腰かけてもらいました。

僕は「すみません。

古い事務所なんで、クーラーがあまり効かなくて……」と言うと、税理士さんからは「いやぁ、すみません。

デブなもんで。

汗が止まらないんですよ」と冗談か本気かよくわからない答えが。

思わず僕もうなずきそうになってしまいましたが、さすがに「そうですよね」とも言えず、笑ってごまかしました。

そして、どんどん不安になっていく気持ちを抑えながら「信頼できる人からの紹介なんだから、きっと大丈夫」と、自分に言い聞かせました。

挨拶もサッと済ませ、税理士さんは「では、決算書を見せていただけますか?」と早速言いました。

僕は用意していた3期ぶんの決算書を手渡すと、税理士さんは手際よくパラパラと決算書をめくります。

僕は、こういうとき、何をしながら待っていればいいのかわからないので、ただただ相手の顔色をうかがうばかりです。

税理士さんは、とくに深刻そうでも、落胆するわけでもなく、かといって安心しているという顔でもなく、時折電卓を叩いては、数字をチェックしています。

10分ほど決算書を眺めていたでしょうか。

ポンと決算書を置き、税理士さんは僕のほうを向いてこう言いました。

「なんとかなるんで大丈夫ですよ」僕はそのひと言で、かえって不安になりました。

今までいろんな人のアドバイスを聞いてもうまくいかなかったので、人の話を素直に受け止められなくなってもいたからです。

だから、何も知らないくせに軽々しく「大丈夫」と答える、この税理士さんが怪しくてなりませんでした。

「経費」と「費用」って違うんですか?税理士さんは僕の目の前をうろうろと歩きながら、しばらく天井を眺めています。

僕にはまるで、刑事ドラマで現場検証するときに犯人を推理する刑事の動きみたいに見えました。

費用には大きく分けて、「固定費」と「変動費」があるその後、税理士さんは決算書と僕の顔を何度か見ながら、何かを悟ったのか、いきなりこんな質問をしました。

「ところで、経費と費用の違いってわかります?」「経費と費用って同じではないんですか?」「少し意味が違います。

たとえば経費に計上できるとか、できないとか言いますよね?」「経費で落とせるとか?」「そうです。

会社が負担しても問題ないものを『費用』と言います。

そのなかに『経費』という項目があると思ってください。

これは法人税を支払う際に大きく関わってきます。

経費に計上できないものも含めたお金が『費用』です。

早い話が、『費用』は『経費』とそれ以外に分かれます」「ふーん。

そういうもんなんですか?」「たとえば、会社の車を事務所の前に停めておいたら、駐車違反で切符を切られて反則金を払ったことはないですか?」僕は昔、配送の途中で、ちょっとだけだからと思って路上駐車したら、お客さんの話が思っていたよりも長くて駐車違反になったことを思い出しました。

「それに近いことは過去にありますが……」「それ、会社負担にできるんですが、経費に計上はできないんですよ。

なので、『費用』というのは、会社を運営していくうえでかかったお金のすべてだと思ってください」「なんとな~くわかりますが、これって儲かることと何か関係があるんですか?」「まあまあ、そうあせらずに。

ここはなんとなくでも大丈夫です。

経費は費用の一部だということがわかれば問題ありません。

あくまで法人税を支払ううえでのルールの一部ですから。

で、問題は経費よりも、費用です。

これをよく知っておいてほしいんです」「どうしてですか?」「費用には大きく分けて2種類あります。

ご存知ですか?」「2種類……。

いや、わからないです」「費用というのは、大きく分けると、『固定費』と『変動費』の2つです。

これは、決算書には載っていますが、明記されて分けられているわけではないので、ぜひ覚えてください」「はあ……」「覚えてください」と言われても、まずなんで覚えるのかという、その意味がわからないんですが。

固定費は、すねかじりな「ニートな費用」税理士さんは、あまり話に納得していない僕にかまわず続けます。

「固定費の定義は、『売れても売れなくてもかかる費用』です。

どんなものがありますか?」「売れても売れなくてもかかる費用ですか?家賃ですかね」「それもそうですね。

ほかには思いつきませんか?」「うーん。

あ、水道代とか電気代ですか。

売れなくても電気は使いますし」「そうですね。

ほかにはどうでしょう?」「えっ!?まだありますか?」「はい。

たくさんありますよ」「すみません。

思いつきません……」「では、答えを言いますね。

それ以外に人件費も固定費です。

売れなくても人件費はかかります。

また、福利厚生費や接待交際費、会議費、交通費、広告費もそうです。

まだたくさんありますが、売れなくてもかかっている費用はすべて固定費です。

費用の大半が固定費なんです」「広告費も固定費なんですか?広告を出せば売れ行きも変わりますが」「でも、広告を出してもまったく売れないケースもありますよね?だから、固定費として考えます」「なんか納得できないんですが……」「考え方としては、固定費は、すねかじりなニートな費用というイメージです。

なんにもしないけど、食費はかかるし、部屋でゲームやっているから、電気代もかかりますよね?固定費は『ニートな費用』だと思ってください」「『ニートな費用』ですか。

なんとなくイメージできます」僕は頭のなかで、まさに部屋でずっとゲームばかりやっている人の姿を思い浮かべました。

「さらに変動費を知ると、固定費もよりわかりやすくなってきます。

変動費は『売れば売るほどかかる費用』と覚えてください」「うーん。

変動費は『売れば売るほどかかる費用』ですか……」「そうです。

商品が1つ売れると必ずかかる費用って何がありますか?」「えーっと。

ウチは通販をやっているので、1個売れたらそのぶんの仕入れる原価、梱包資材の費用と、出荷するための送料ですかね。

あと、梱包するための人件費がかかりますが」「梱包するための人件費は、売れなくてもその場に梱包する人がいれば時給が発生するので、固定費になるんですよ」「それで人件費は固定費になるのかあ。

では、売れたぶんだけ歩合制で梱包してもらってる場合はどうなるんですか?」「その場合は変動費として分けるのが適切です。

さきほど納得できなかった広告費。

これも考え方は同じで、売れたぶんだけかかる性質であれば変動費。

10万円かけてチラシを作って、いくら売れるのかわからないようなら固定費なんです」「まあ、なんとなくですが、イメージはつかめます……」固定費と変動費という言葉は、なんとな~く聞いたことがありました。

文字通り、固定しているから固定費で、変動するから変動費だと思っていましたが、その性質を聞いてみると、じつは違う解釈があるみたいです。

「儲けるための会計」を学ぶ売れても売れなくてもかかる費用である固定費。

売れれば売れるほどかかる費用である変動費。

でも、それらを分けることに、いったいなんのメリットがあるのかは、よくわかりません。

変動費は、売れれば売れるほどかかる「ストーカー費用」税理士さんは、きっと話すのが好きな人なんでしょう。

僕の理解度に関係なく、一方的に話を進めていきます。

「わかってきたところで、もっと理解していただけるよう、通販だけでなく、ほかの業種でも考えてみましょうか。

たとえば、イタリアンレストランがあるとしますよね。

そこの家賃は?」「固定費ですか?」「そう、では、人件費は?」「売れても売れなくてもかかりますので固定費です」「では、売れれば売れるほどかかる費用である変動費は、たとえば食材に使う材料費がそれにあたります。

料理を注文されるたびに食材を使用しますので、材料費が変動費になります」「ふーん……」「さらに別の業種でも。

う~ん、コンビニだとどうでしょう。

コンビニでおでんを買ったときを思い出してください。

おでんを買うと器に入れてくれますよね。

さらにその器を袋に入れて、割り箸もつけてくれます。

あとは辛子。

これらは、固定費か変動費のどちらでしょうか?」そう、おでんには辛子は必須だよなぁ。

「あのう、私の質問、聞いてますか?」「あっ、えーと……。

変動費ですか?」「そう。

これらも変動費です。

もちろん、おでんの具材の原価も変動費に入ります。

おでんを温め続けている電気代は固定費です。

売れなくても電気代はかかっていますからね。

こんな感じで、会社ごとに区分けが異なってくるのが変動費です」「固定費の『ニートな費用』みたいに、変動費も何かわかりやすいたとえはないんですか?」「イメージでいえば、変動費は『ストーカー費用』です」「あっ、つきまとうってことですか?」「そうです。

売れば売るほどつきまとってくる。

ストーカーのような費用が変動費です」「ふーん。

そうやって費用の性質で分類しているんですね」「そうです。

たとえばコンサルタントや税理士は、お客さんが増えれば増えるほど外出することが多いです。

クライアントのもとへ出かけることになるので、旅費交通費が変動費になったりするんですよ」「仕事によってかなり変わるんですね」「はい、それが変動費の性質なんです」僕は費用の名前はおぼろげに知っているくらいなので、どんな内容かも初めて知りました。

儲けるための会計が「管理会計」ただ、費用の分け方と、儲かる話になんのつながりがあるのかは、疑問のままです。

「こうやって分けるのって、どんな意味があるんですか?」「こういう分け方や計算をするのは、儲けるためです。

そして、それは『管理会計』と呼ばれています」「それがわかると儲かるんですか?」と聞いてみたものの、全然儲かる感じがしないんですが……。

「まあ、そうあせらずに」「僕の会社は虫の息なんで、あせってるんです!ところで、『管理会計』ってなんですか?」「儲けるための会計です。

一般的な会計、いわゆる決算書を作る業務とか、税金を支払うための会計を『税務会計』といいます。

今回は、管理会計という会計の話をしていきます」「儲けるための会計が管理会計ですか?じゃあ、それを学んで数字が読めると本当に儲かるんですか?裏を返すと、数字が読めないと儲からないってことですか?」「はい。

知っておくと知らないとではずいぶん違います。

数字が読めると、儲かります。

まずは、自分の会社の固定費と変動費をしっかりと分けていくことが大切です。

そこがきちんとわかってくると、儲けるための計算がとてもわかりやすくなるからです」本当に数字が読めないと儲からないのかなあ?それに、数字って苦手なんだよなあ……。

いずれにせよ、「費用の性質を知る」ことと「僕の会社が儲かる状態になる」のと、どんな関連性があるのかという疑問は残ったままです。

「儲けるための会計」とはいったいなんなのか?聞き慣れない話を聞いたので、正直エネルギーを消耗しましたが、儲けるためのヒントくらいは何かつかめるかもしれないと思い、話の続きを聞きました。

会社が続くために大切なのは「利益」会社には出ていくお金と入ってくるお金があるのはわかるのですが、そもそも赤字の僕の会社は、出ていくお金が多いから赤字。

そこまではわかります。

会社のお金を増やすためには、売上を増やすことだと信じて突っ走ってきましたが、その結果、赤字になってしまっていました。

原因はわからないままでしたが、税理士さんの話を聞けば、果たしてそれもわかるのでしょうか?「利益」が大事なことくらいはわかるけど税理士さんは僕の顔をじっと見つめてから、こう言いました。

「儲かる話を聞きたいというので、より核心に近づいていこうと思います。

では、会社が続くために大切なものって、なんだかわかりますか?」「そりゃもちろん、根性です!」「根性って大事ですよね。

とても大事なのですが、お金の面で会社が生き残るために必要なのは、まず利益です。

根性とやる気がなくても、利益があったら会社は存続できます。

では、利益ってなんのことだと思いますか?」「そりゃ、儲けたお金ですよね」「そうですね。

儲けでもあります。

その利益にはいろんな種類があるんです」「えっ?利益に種類ってあるんですか?それって、よいお金と悪いお金とか、そういうことですか?」「あの、そういう精神論じゃなくて、会計上のお金の話です」「あ、そっちですか」自分で「そっち」って言ってしまったけれど、どっちだ?「そうそう。

そっちです。

基本的な利益が5つ、そして、限界利益を含めて6つあります。

そのなかの1つで、粗利ってわかりますか?」「なんとな~く」「粗利というのは、正式名称を『売上総利益』といいます。

簡単にいうと、売上額から仕入額を引いたものです。

600円で仕入れた物を1000円で売ると、粗利(売上総利益)はいくらになりますか?」「それくらいはわかります。

400円です」「そうです。

正解です!では、純利益って聞いたことはありますか?」「聞いたことがあるような、ないような……」本当は言葉自体は聞いたことはあるけど、イマイチよくわからないので、ごまかしました。

「純利益は売上から費用を引いて、最後に残ったものです。

もう少し補足すると、さきほどの粗利(売上総利益)からすべての費用を引いて、支払わなければならない法人税も差し引いたものが純利益です。

正式名称を『当期純利益』といいます。

ついてきていますか?」「えっ、はい。

いや、ちょっとややこしいです……」というか、これって儲けるために必要な話なのかな?「純利益は会社の活動の最終的な成果なんです。

損益計算書を見ると、営業外の収益と費用、特別利益や特別損失、そして税金を記載する欄があります。

これらを足し引きして、最後に残ったものが純利益です」「はあ。

なんだか難しい……」「では、図を書いて説明しますね」と言って、税理士さんはスラスラと図を書き始めました。

「次の図のように、1年ぶんの売上がこの丸だとすると、そのなかに『仕入原価』や『販売費及び一般管理費』といわれる費用の一部、税金そのほかもろもろがあって、残ったものが『純利益』(当期純利益)です」

「うーん。

ちょっとこんがらがってきました。

でも、図を見るとイメージはわかります。

最後に残った儲けが純利益っていうことですか?」「その通りです。

そして、この引かれてしまうお金を減らして、売上を増やすと利益がより多く残る、ということだけ覚えておいてください」「売上を増やすと利益が残るという、その理屈くらいはわかります!」やっぱり、僕がこれまでやってきたように売上を増やすと儲かるってことなのでしょうか。

覚えておくべき4つの利益僕の「理屈くらい」という言葉を聞いて税理士さんが、一瞬だけ険しい顔つきになったのを見逃しませんでした。

「ただ、さきほど利益は6つあると言いましたが、あとの4つは言葉も覚えてください。

営業利益と経常利益、税引き前当期純利益、そして、限界利益です」「いやもう、専門用語はいいです!正直、儲かる会計って言うんで、儲かる話が聞けると思ったんですけど、どうやら違うんですね」「まあ、そうあせらずに。

でも、とくに限界利益はむちゃくちゃ大事なんで、もう少し聞いてほしいんです」出た!また「あせらずに」という言葉。

「もうちょっと今日は疲れました。

それこそ、僕のほうがもう限界です」「うまいこと言いますね。

そうしたら、最後に1つだけ聞いてもらえますか?」「今日はこれが最後ですよ」「これはとてもシンプルなので、わかりやすいと思います。

では、営業利益についてです。

『営業利益』は、『売上』から『仕入原価』と『販売費及び一般管理費』を引いたものです。

言い換えると、『売上総利益(粗利)』から『販売費及び一般管理費』を引いたものです。

図で言うと、この部分です」税理士さんは、そう言って図を描いてさし示しました。

「図で説明してもらえると、イメージはわかります」「営業利益は、実際の自分たちの営業、言い換えるならば、本業で得た利益という意味です。

ここの金額が大きな会社は、本業がうまくいっているという証でもあります」「ふーん」「じゃあ、私は今日はこれで帰りますので、また来週の同じ時間におうかがいします。

これまでお伝えしたことの復習を次回までの宿題にしておきます」えっ宿題!?でも、もっと話が続くかと思ったら、意外とあっさり終わりました。

「これを覚えておくと儲かることにつながるんですか?」「まあ、そうあせらずに。

では、また来週よろしくお願いします」まさかこの年になって宿題?めんどくさいんだけどな……。

というか、儲かるとは思えない話ばかりで正直疲れました。

本当にこの税理士さん、大丈夫なんだろうか?不安は募るばかりです。

それに聞き慣れない言葉のオンパレードで、頭のなかは混乱しています。

果たして全部覚えないと儲かる会社にはなれないのか……早くも挫折しそうです。

「限界利益」という「魔法のメガネ」この前、「費用」の種類の説明を受けたわけですが、昔、会計の本を何日もかけて読んでみたものの、まず用語がさっぱりわからなくて、何も記憶に残っていないことを思い出しました。

今回もそんなことにならなければいいのですが……。

そして、税理士さんが来る日を迎えました。

限界利益によって、「いくら稼げば儲かるか」がわかる税理士さんは、いつものように額からしたたる汗をハンカチで拭きながら話し始めました。

「今日は『いくら稼げば儲かるか』がわかる限界利益についての話をしますね」「この前、聞いたときも思ったんですけど、なんか難しそうな名前ですよね」「そのまま説明すると、売上から変動費を引いたもの。

少しかみ砕くと、売上から売れると必ずかかる費用を引いたものが限界利益ですが、一度理解できれば簡単ですよ。

限界利益によって、まるで魔法のメガネをかけているかのごとく、いくら売れば儲かるかがわかります」「魔法のメガネ?」「はい。

粗利(売上総利益)はいわばふつうのメガネで見える数字です。

でも、限界利益という魔法のメガネがあれば、本質的な利益が見えてきます。

今まで見えなかった数字が見えるメガネです」「うーん。

なんだか、よくわからない……。

それを覚えると儲かるんでしょうか?もう、ずっと学校の勉強みたいだと思ったら、今度は『魔法のメガネ』というファンタジーの話ですか?早く儲かる話を教えてくださいよ」「まあ、そうあせらずに」出た、またその言葉。

「僕はあせっているんですって!会社はこんな状態だし、最後の望みをかけたお金をあなたに払ったんですよ。

これでダメだったら、ウチは潰れます」「落ち着いてください。

お気持ちはよくわかります。

私はこれまで同じような境遇の経営者さんとたくさん会ってきました。

みなさん同じことを言います。

はっきり言いますが、数字の基本をおろそかにするから、儲からないんです。

この前、お話しした数字の基本をしっかり覚えたうえで、今日お話しする限界利益を学んで、実践することで、みなさん黒字に転換したんですよ。

どうしますか?ここから先の話、続けますか?それともやめましょうか?」なんだ!?これまでになかった税理士さんの自信満々な態度は!しかも、メガネ越しにうっすらと見える視線が鋭い。

税理士さんが本気で言っているのが伝わってきました。

いや、だまされてはいけない。

だって、「限界利益」という言葉を知っても全然儲かる気がしないんですから。

会社の「儲けパワー」慣れない会計の話で、頭からは湯気が出そうです。

ただ、会社を黒字にしたいという気持ちだけが、僕と税理士さんをつないでいました。

税理士さんは「限界利益は魔法のメガネ」と言っていたけれど、いったいどんなところが「魔法」なのか見当もつきません。

「魔法のメガネをかければ本質的な利益が見える」と言うけれど、そもそも「本質的」って何?限界利益によって、いくら売れば黒字になるかもわかる僕は両手で丸い輪っかを作って、目にあてながら税理士さんに質問しました。

「魔法のメガネをかけると何が見えるんですか?」「より本質的な利益の構造を見ることができます」「そもそも『本質的』っていうのが、どんなことを意味しているのかさえわからないんですが……。

たとえば、今いくら儲かってるかって見えますか?」「見えます」「じゃあ、いくら売れば黒字になるかは?」「見えます」「じゃあ、いくらまで値引きしても儲かるかは?」「見えます」「じゃあ、いくら経費を削ればいいかは?」「それも見えます。

『限界利益』がわかると、さまざまな予測もできます。

限界利益のすごさがわかったところで、その計算方法を教えますね」「ちょっとだけすごいかもしれないと思ったくらいなんですが……。

でも、どうすればそれが使えるようになるのかは知りたいです」「この前、費用は2つに分けられるという話をしましたよね」「あ、はい。

固定費と変動費ですね。

そこは覚えています」「たぶん、計算式で見てもらったほうが理解しやすいと思います。

限界利益ってこんな感じで使うんです」限界利益-固定費=営業利益(本業の利益)「すみません。

こんがらがってます。

また、専門用語が頭に入ってきません」「ゆっくり理解していけば大丈夫です。

とにかく、限界利益から、ニートな費用である固定費を引くだけで、営業利益(本業の利益)を計算することができるんです。

売上総利益(粗利)とか変動費とか関係なし。

これだけで、いろいろな計算が楽々できるんです」「ふーん」「さらに、限界利益が大きければ大きいほど、会社の『儲けパワー』が大きいと理解してもらって大丈夫です」「儲けパワー?」なんだ、この怪しいワードは……。

「限界利益は変動費も含めて考えてある利益なので、『儲けパワー』がわかるんです。

しかも、これは、決算書を見ても載っていないんです」「儲けパワー」について真剣に話す税理士さんの顔を見て、思わずぷっと吹き出しそうになりながらも、必死にこらえました。

「これは税理士さんが考えたんですか?」「いえいえ。

僕ではありません。

僕も最初はわからなかったんです。

でも、学んで理解できるようになっただけです。

ですから、古屋さんもきちんと学べば理解できますよ」「儲けパワーをですか……」ヒーローもののアニメに興じる子どもみたいに、いい大人が「儲けパワー」の話をしている姿が、僕にはシュールに思えました。

儲けパワーは、算数で計算できるきっと怪訝そうな表情になっている僕をよそに、税理士さんは、相変わらず会計の話をするのが楽しそうです。

「では、本題に入りましょう。

限界利益額の出し方なんですが、とても簡単です。

計算方法はシンプルなんです。

小学校で習った算数だけで計算できます。

これさえ覚えておけば、いつでも魔法のメガネが手に入ったも同然です」限界利益額:売上額-変動費の額「え?こんな引き算でいいんですか?」「はい。

これだけです。

限界利益は額と率で把握するんですが、まずは額から理解していきましょう。

限界利益の額がいくらだというのは、会計の基本的なお金の数え方だと思ってください」「あっ、でも、売上額と変動費の額がいくらなのかを把握してないと計算できないと思いますが……」「はい。

この前の費用の説明でもあった、まず自分の会社の変動費には、どんな費用があるのかを把握しておくことが大切です。

では、古屋さんの会社にあてはめて、実際に計算してみましょう」「はあ……」「では、商品1個に対する限界利益額を出してみましょう。

仕入額とか販売額とかがわかる商品を例に……。

ここにある観葉植物っていくらで販売していますか?」「えっと、これは2000円です」「その金額は税込ですか?」「いえ、税別です」「ここ、大事なんですけど、税別で計算するなら、すべてを税別で計算してください。

売上が税込で、原価も資材費も、いわゆる変動費が税別だったら計算がおかしくなっちゃいますから」「でも、消費税って、たいしたことないんじゃないですか?」「いえいえ。

消費税は怖いですよ。

消費税が8%とすると、100万円の8%は8万円です。

もし自分のお財布から8万円がなくなっていたら、平気な顔していられます?」僕は、実際に財布から8万円がなくなった状況を想像して、ゾッとしました。

「いやー、三日三晩うなされると思います」「消費税は大きいでしょ?税込なら税込、税別なら税別で統一しましょう」「そういうものなんですね」「では、今回はわかりやすくする意味でも税別で統一しましょう。

で、販売価格2000円の観葉植物が売れたら、売上は2000円ですね。

この商品の仕入額はいくらになりますか?」「これの仕入額は1000円です。

税別です」「仕入額1000円に、まだまだここから引いていきます。

変動費を丸ごと引いたら限界利益額が出ますから。

で、この観葉植物が1個売れたとします。

そのときにかかるストーカー費用である変動費は、仕入額

の1000円と、あとほかに何がありますか?」「えっと。

これに原価100円のバスケットをつけて、梱包するのに箱が100円、あとは、配送に400円かかっています」「この観葉植物には仕入額の1000円と、売れれば売れるほどバスケットと箱と配送費を合わせた600円が必ずかかっているということですね?」「はい。

そういうことになります」変動費の合計:1000円+600円=1600円「では、変動費の合計額は1600円になりましたね」「そうなりましたか」それっぽい答え方をしたけれど、本当は税理士さんの話を聞くだけで精一杯でした。

「計算してみてください。

簡単ですよ。

限界利益額=売上─変動費の額」限界利益額:2000円-1600円=400円「えーっと、売上2000円から変動費の1600円を引くと、限界利益額は400円ということになりますか?」「正解です!この商品が1個売れたときの限界利益額は400円です」「ここまではかろうじてついていっています」「これは、1個だけ売れたときのやり方ですけど、1年間の売上に対する限界利益額を出すのも簡単です」「それはどうやってやるんですか?」「仮に、この2000円の観葉植物だけしか販売していなかったら、どうなるかで、まずは考えてみましょう。

仮に年間100個売れていたら?」さっきの計算を100個で考えればいいんだよな。

これくらいならできそうです。

売上:1個2000円×100個=20万円仕入:1個1000円×100個=10万円バスケット代:1個100円×100個=1万円箱代:1個100円×100個=1万円送料:1個400円×100個=4万円「えーっと、100個だと、売上が20万円で、仕入額が10万円、バスケットが1万円、箱代も1万円、運賃が4万円です」「では、売上20万円に対して、変動費はいくらになりますか?」「えーっと、仕入額の10万円と、バスケット代の1万円、箱代の1万円、送料の4万円を全部足すわけだから、16万円です」「限界利益額はいくらになりますか?」売上20万円-仕入額10万円-バスケット1万円-箱代1万円-送料4万円=4万円「売上の20万円から変動費の16万円を引くから、4万円ですか?」「そうですね。

簡単でしょ?」「簡単ってほどじゃないですけど、なんとなくは理解できました。

でも、実際は、いろんな商品を扱っているので、こんなに簡単ではないですよね」「たしかに今回はわかりやすいようにシンプルにしました。

でも、計算式は同じです。

ちなみに。

じつは決算書を見て計算すると、1年ぶんを簡単に計算することができるんです。

古屋さんの会社の昨年の限界利益額を出してみませんか?」「出すことによって儲けパワーとやらがわかるんでしょうか……」今まで教えてもらった、費用の種類のなかの1つ変動費。

変動費と売上がわかるだけで、限界利益が理解できてしまう。

それが自分の会社の儲けパワーにつながる、と税理士さんは言います。

ただ、まだ限界利益についてよくわからない僕にとっては「魔法のメガネ」ではありません。

決算書で見るところは2つだけ「儲けパワー」という言葉の安っぽい語感はさておき、「パワー」とつく名の通り、力強い言葉ではあるので、じつはちょっと興味も湧いてきました。

1つの商品の儲けパワーが見えてくるだけでなく、僕の会社の1年ぶんの儲けパワーが見えるらしい。

興味があるけれど理解しきれないもどかしさを抱えながらも、少しその先を知りたくなってきました。

決算書で、ここだけは見ておくべきところ税理士さんは、手もとにある僕の会社の決算書に目をやりました。

「では、昨年の決算書のなかにある損益計算書を見てください」「損益計算書には数字がいっぱい書いてありますが。

どこを見ればいいんですか?」「数字がズラズラと書いてありますが、で、そこの、いちばん上の『売上高』の部分の数字をまず書き出します。

4500万円って書いてある部分です」「4500万円。

書きました。

で、次はどこを見ればいいんですか?」「では、売上高の下の『売上原価』を見てください。

2500万円と書いてあります」「あ、これですね。

2500万円」「次に『販売費及び一般管理費』と書いてある部分があるのですが」「え?販売なんでしたっけ?」「これは純利益の説明でも少し出てきましたが、『販売費及び一般管理費』です。

これは、固定費と変動費がまとまって載ってしまっているので、この明細が記載してある『販売費及び一般管理費の明細』をページをめくって探してみてください」「あ、ここか。

うわ。

ここも数字だらけ……」まあ、決算書だから当たり前か。

「大丈夫です。

左側が費用の内容を表す項目。

『科目』と書いてあります。

旅費交通費とか、荷造り運賃とか、接待交際費とかいろいろ載ってますよね?」「あ、ここか。

はい。

いやー、細かいなこりゃ」「目が慣れてくれば心配いりません。

変動費と固定費に分けたいので、このなかから、さきほど1個あたりの限界利益額を求めて変動費を出したように、『販売費及び一般管理費の明細』を見ながら変動費を探していきましょう。

バスケットは資材費の項目、梱包用の箱も資材費の項目ですね。

送料は荷造り運賃の項目に含まれていますから、この2つの部分だけですよ」「2つだけ?」「『販売費及び一般管理費の明細』というのは、独自の項目(科目)を追加することができるんです。

たとえば、バスケットと箱を区別したいのであれば、箱代という項目を追加して分けることも可能です」「項目は必ずしも決まっているわけではないんですね」「そうです。

自分の会社にあった項目(科目)がつけられると、どれが変動費なのかがわかりやすくなるメリットもありますよ」「へー」僕は、会計というのが思っていたよりも柔軟なことに少し驚きました。

限界利益率は会社の「儲けパワー」税理士さんは、決算書を見ながら話を続けます。

「では、本題に戻りますね。

古屋さんの会社にとっての変動費は、売上原価、荷造り運賃、資材費でしたね。

それぞれいくらになってますか?」「売上原価が2500万円でした。

で、荷造り運賃が500万円、資材費が500万円で、合わせて変動費は3500万円です」「では、数字が出そろったところで計算してみましょう。

限界利益額を出してみてください」「はあ。

えっと、限界利益額の求め方は、『売上─変動費』だったから、売上4500万円から、売上原価2500万円と荷造り運賃500万円と資材費500万円だから……。

限界利益額は1000万円です」年間の限界利益額:売上4500万円-売上原価2500万円-荷造り運賃500万円-資材費500万円=1000万円「はい。

その通りです!年間の限界利益額であろうが、商品1個あたりであろうが、計算のやり方は一緒なのは、わかりました?」「なんとな~く」「で、この限界利益額を使って会社の『儲けパワー』がわかるんです」「会社自体の儲けパワーがですか?」「そう、古屋さんの会社の儲けパワーがわかるんですよ。

儲けパワーが高ければ高いほど、儲かる確率が上がってきます。

今は儲かっていないかもしれないですけど、現状の儲けパワーを見てみませんか?」なんだか、やたら「儲けパワー」「儲けパワー」とうるさいなあ。

でも、なんだか気になります。

「見っ、見てみたいです……」限界利益額を出してどのように使うのかの全容はまだ見えてきませんでした。

それにしても、いい年をしたおじさんが「儲けパワー」という言葉を連呼するのはどうかと。

でも、「儲けパワー」という言葉、やっぱり嫌いじゃないです。

儲けパワーの正体は「限界利益率」「儲けパワー」に関して、今僕がわかっているのは「限界利益額」が相当重要であるということくらいです。

「儲けパワー」という胡散臭さも感じる言葉と、「限界利益」という小難しい会計用語に、どんな関連があるのか?僕にとって未知の領域はまだまだ続いていきます。

「儲けパワー」の計算は、公式にあてはめるだけ税理士さんは、かけているメガネのふちをさわって位置を直しながら話し始めました。

メガネの奥では、鋭い眼光が。

「儲けパワーの正体を知るにあたって、まずさきほど出した数字を整理しましょうか。

売上と変動費と限界利益額を出しましたよね?ちょっとそこに書き出してみてください」「売上が4500万円、変動費が合計3500万円、限界利益額が1000万円っと」売上:4500万円変動費の合計:3500万円限界利益額:1000万円「儲けパワーを専門用語で言うと、『限界利益率』と呼びます。

さきほど計算した、限界利益額を比率にしたものです」「限界利益率が儲けパワーなんですか?」「はい。

限界利益率が高ければ高いほど、儲けパワーがあると思ってください。

じゃあ、先に、公式から教えちゃいますね」限界利益率:限界利益額÷売上×100「うっ。

なんか難しそう……。

計算、本当に苦手なんですよね」「難しそうに見えますが、まず100をかけるのはパーセントを出すためなので省いてしまっても大丈夫です。

100をかける前の数字でも、何%なのかはわかりますよね」「はあ……」パーセントのことはわかったけど、こういう計算式ってパッと見てめんどくさそうなんです。

「売上に対して、限界利益がどの程度占めているのか、を見ていくという公式です。

早い話が売上が10で限界利益が2であれば、限界利益率は20%ですよね?そこを計算するときには小学校で習った割り算を使えば簡単なんです。

2÷10は0・2です。

そこに100をかけると20になりますよね。

で、答えが20%になるじゃないですか。

その公式を使っているだけです」「言っている日本語はわかりますが、それでも計算、苦手なんですけど」「わかりました。

公式にあてはめるだけですので簡単ですよ。

では、計算してみましょう」「じゃあ、なんとか。

限界利益額が1000万円、売上が4500万円です」限界利益率:1000万円÷4500万円×100「そうそう。

電卓でピッピッとやっちゃいましょう」「あ、はい。

いち、じゅう、ひゃく、せんまん……」限界利益率:1000万円÷4500万円×100=22・22222……%「小数点第2位を四捨五入したら、22・2%になりますね」「22・2%ですか……」「これが古屋さんの会社の儲けパワーです!」税理士さんは、まるでドラマの主人公が、クライマックスで必ず言う決めゼリフのように言いました。

「儲けパワー」は、会社の現状を映す鏡ただ、それがウチの会社の儲けパワーですって言われても、何も感情の変化が起きないんですが。

「で、その儲けパワーってやつで、何がわかるんでしたっけ?」「限界利益率はその会社の現状を映す鏡と言っても過言ではありません。

これは会社ごとに違います。

今後どうしていきたいかを考えるうえでの指標となります」「僕の会社は22・2%の儲けパワーがあるというのは、よいことなんですか、それともよくないんですか?まあ経営状況からいえば、ダメっぽい気がしますが」「22・2%はあくまでも指標ですが、一応、目安として知っておいてほしいのは、私が知るかぎり25%以下で黒字になっている会社は少ないです。

そうですね、限界利益率が高ければ高いほど、儲けパワーが高いと思ってください。

仮に限界利益率が30%の会社と25%の会社とでは、限界利益率が30%の会社のほうが、儲かる確率は高まりますね」「やっぱり、高ければ高いほうがいいんですね。

ってことは、これが理由でウチの会社は儲からないわけですか?」「そうですね。

そういうことになります。

そして、限界利益率は高いに越したことはありません。

で、これは決算書をもとにした数字ですが、商品1つずつの限界利益率も出すことができます。

さきほどの観葉植物の限界利益率も出してみましょう」「あ、はい。

えっと、さっきの観葉植物の販売価格は2000円、限界利益額が400円で……」観葉植物の販売価格:2000円限界利益額:400円限界利益率:400円÷2000円×100=20%「限界利益率は20%でしょうか。

会社の1年間トータルの限界利益率は22・2%でしたから、それよりも低いですね。

ますます儲からない状況がそろっているわけですね」「えー……。

だから儲からないんですか?」「そうですね。

この商品は古屋さんの会社のなかで、儲けパワーが平均よりも低いです。

この観葉植物が売れても儲かりにくいともいえます」なんか、もうウチの会社のダメ出し祭りになってきました。

「心が折れてきそうなので、もっと儲かる話、教えてくださいよ」「まあ、そうあせらずに。

ここからが重要です」出た、「あせらずに」。

「平均よりも低いと聞けば、余計あせりますよ!」

「まあまあ。

この観葉植物がたくさん売れることで、売上は上がりますが、限界利益率が高まることには大きく貢献してはいない。

つまり、この商品が売れても利益の底上げにならない。

売上を上げることが、利益率を上げることにつながるかというと、答えはノーです」自分がこれまで、とにかく売上を上げようと必死になってやってきたことが一瞬で否定されたわけです。

でも、そんなことよりも数字が示す未知の世界への興味が勝り、もっとその先を知りたくなっていました。

「えーっ!売上が増えても儲からなかったのは、こういうことなんですか?じゃあ、どうやったら儲かるんですか?」「限界利益率がわかると、会社にとって1つの目指すべき数字が見えてきます。

この限界利益率を指標にして、上げていくべきなのか、下げても大丈夫なのかを考えていくんです。

今儲かっていれば22・2%は安全ゾーンかもしれませんが、今儲かっていないのであれば危険ゾーンという判断もできます」「それって、儲からないことがわかっちゃうメガネじゃないですか!ふつう魔法のメガネって希望が見えるものなんじゃないですか?儲からない事実がわかるって残酷なんですけど。

もう、いっそのこと会社やめちゃったほうがいいですかね?」「あきらめるのはまだ早いですよ。

どうすれば儲かるかを計算する方法があります。

さらにこの限界利益率をもとに、いくらまで売上を伸ばせば会社が黒字になるのかを見ることもできます」「えっ、そんなのがわかるんですか!」「たしか限界利益の説明で言った気がするのですが……。

ところで、『損益分岐点(損益分岐点売上高)』の計算をしたことはありますか?」「なんとなく言葉は聞いたことはありますけど、計算したことはありません」「とても簡単に計算ができますよ」「限界利益率」の話で、なんとなくわかったのは、「売上を上げれば、会社にお金は残る」という今までの考え方では儲からないということでした。

では、儲かるにはどうしたらいいんだろう?果たして「損益分岐点」を知ることで儲かるのか?じれったい。

早く教えてほしい。

第2章を読み終えた読者へ孤独は人の心を蝕みます。

話を聞いてくれる友人がいない、笑い合える仲間がいない、悩みを相談できる相手がいない。

そんなとき人は闇から抜け出すことができません。

出口の見えない彼を救ったのは、商売仲間のふと発したひと言でした。

「スゴ腕の税理士さんがいるよ」。

これを教えてくれた仲間、そしてスゴ腕の税理士さんとの出会いがなければ、彼の商売が好転することはなかったかもしれません。

出会いは、救いを求める彼に「苦境を脱出するキッカケ」をもたらしました。

彼が手にしたものは、「管理会計」という道具です。

人の縁に加えて、管理会計の知識。

これによって彼の運命は、音を立てて変わり始めます。

彼は気づきました。

人間に男と女がいるがごとく、会計にも2種類あることを。

決算や税金のための税務会計(財務会計と呼ばれることもあります)と管理会計、ここで悩める彼を救ったのが管理会計でした。

もともと、管理会計は英語で「マネジメント・アカウンティング」といいます。

直訳すると「経営会計」ですが、彼はこれを「儲けるための会計」と理解しました。

「儲けるための会計」の出発点はコストを「固定費」と「変動費」に分けること。

これによって限界利益(売上─変動費)を明らかすることができます。

彼は税理士さんとともに、あらゆるコストを丁寧に1つずつ確認しながら固定費と変動費を分けていきます。

そして苦労の末に限界利益の考え方を理解し、実際に計算する方法をマスターしたのです。

「わかる」と「できる」の間にはかなりの距離があります。

多くの商売人たちが限界利益を頭では「わかって」いますが、実際の現場で限界利益を計算「できる」ところまで行っている人は少ないのが現状。

まったくの会計の初心者だった彼は、スゴ腕の税理士さんの力を借りながら、「できる」ところまできました。

これはすごいことなんです。

限界利益と限界利益率まで理解し、それを計算するところまでできた彼は、これできっとうまくいきます。

いや、うまくいくに違いありませんが……。

 

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