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第4章 「値上げ」をしたら、天国と地獄を見ました

「値上げ」をしたら、お客さんが来なくなりました腹をくくって、値上げをする3週間にわたり、会計のことをスゴ腕の税理士さんにみっちりと教えてもらったあと、僕は値上げに踏み切ることにしました。

値上げの決意ができたのは、「腹をくくった」というと格好いいのですが、うだうだとずっと悩んでいてもしかたがないのと、このまま同じことをやっていても黒字にならないことが理解できたからです。

チマチマと値上げをするのは性に合わないので、一気に全商品を値上げしました。

値上げをした当日。

ドキドキしながらパソコンの注文の画面とにらめっこをしながら待てど暮らせど、1件も注文が入ってきません。

「あれ?なんかインターネットのシステム障害でも起きてる?」と不安になり、ウチの会社のホームページに行って、試しに自分で注文をしてみると、ちゃんと注文することができます。

値上げをしたからといって、まさか1件も注文がこないとは思ってもいません。

結局、その日は注文がまったくない状態のまま過ぎていきました。

翌日、今日こそは注文がくるだろうと、パソコンの前に座りましたが、まったく注文がくる気配すらありません。

「これはさすがにまずいな……」とあせってきました。

さらに、値段をもとに戻したくなる衝動が。

心のなかでいろいろと葛藤していると、時計の針がカチカチと動く音がやけに大きく聞こえてきます。

そんななか、自分にできることは、ただただパソコンの前で待つのみ。

「何もせずに待っている時間というのは、なぜにこんなにも長いのか」と、さすがに心が折れそうになってきます。

そして、注文がないまま、また長い1日が過ぎていきました。

その翌日。

2日間も注文がゼロというのは、さすがにもう限界です。

心臓をギューッとつかまれたような気分です。

やるせない気持ちのまま、しばらくボーッとしていたら、税理士さんが前に言っていた言葉を思い出しました。

「お客さんが何に困っているかを理解して、その困りごとを解決して差し上げれば、値段はあまり関係ないんです」「そうか!これか!」お客さんの困っていることがなんなのかがわかれば、それを解決できそうな商品を提案してみたらいいんじゃないだろうか?早速、社長兼店長である僕はお客さんに一斉メールを送信することにしました。

メールの件名は「困りごとはありませんか?」。

こうなったら、ヘタな小細工などなしで直球勝負です。

メールの文面を書き終え、メルマガ会員さん全員へ送信完了!あとは、返事が来るのを待つだけです。

数時間後、メールの返事が3通きました。

ワクワクしながらメールを読むと、すべて「金額が高い」という内容です。

深いため息をついて、自分を呪いました。

そして、打つ手がことごとく失敗する、この八方ふさがりの状況にたまりかねて、税理士さんに電話をしました。

「あのう。

値上げをしたら、お客さんが来なくなって。

そのあと、税理士さんの言葉を思い出して、思いきってお客さんに、困りごとがないかメールで聞いてみたんです。

すると、『金額が高い』というのが困りごとということで。

もう、どうしたらいいかよくわからなくて……」「どんなふうに聞いてみたんですか?」「お客さんにメールで『困りごとはないですか?』と直接聞いてみたら、そう言うんです」「え?直接聞いたんですか?だったら、お客さんもそう言うかもしれませんね」「これって値上げに反対ってことですよね?」「違うんです。

値上げをするかわりに、お客さんも気づいていない困りごとを解決してあげるんですよ。

ちょっと今取り込み中なんで失礼しますね」「お客さんも気づいていない困りごとってなんですか?もしもし!もしもーし!」プーップーップーッ(どうやら電話が切れたみたいです)。

僕には税理士さんが言っていることの意味がよくわかりません。

わからないながらも、もがき続けたのですが、会社の業績はみるみる落ちていきました。

値上げをした結果、さらなる悪夢が急に電話を切った税理士さんにいらだちを覚え、以来、税理士さんに連絡するのをやめました。

そして、値上げをしてから1年後、売上は70%もダウンしてしまいました。

いつ潰れてもおかしくない状態から、さらに深刻な状態に。

そんな会社の業績の悪化は、具体的に次のような順番で僕の身に降りかかったのです。

・銀行から借り入れた支払いのリスケジュール(支払いを一時的に待ってもらうこと)・社会保険の支払いのリスケジュール・家賃の滞納が数か月・クレジットカードの使用停止・電気が止まること数回・たまらず消費者金融から借り入れて食いつなぐ生活値上げによる売上の激減によって、支払いができなくなり、銀行から借り入れた支払いのリスケジュールという手続きをとりました。

いわゆるブラックリスト入りです。

社会保険の支払いもリスケジュールしました。

さらには、会社の家賃も数か月間滞納するだけでなく、僕個人もクレジットカードが使えなくなる、電気が止まること数回、そして消費者金融から借り入れて食いつなぐ、という落ちるところまで落ちていったのです。

こうなると、すべてが灰色に見えます。

これは、決してたとえではなく、白黒テレビの画面のように風景から色が消えて見えるんです。

精神的にもボロボロでした。

お金がない、いや、むしろ大きな借金を抱えて、払うものが払えない状態でい続けることが、どれだけ心の負担になるか。

それは心だけでなく、僕の髪の毛が真っ白になるという変化としても表れました。

そうなんです、おじいさんみたいに、ほぼすべての髪の毛が白くなってしまったんです。

値段によってお客さんも変わる状況は変わらないなか、ある日、税理士さんが電話をくれました。

僕は藁にもすがるような気持ちで「このままの状態がずっと続くんでしょうか?」と質問すると、税理士さんはこう言いました。

「値上げをしてお客さんが入れ替わるまでは、我慢です」今振り返ると、このひと言があったからこそ、僕はつらい時期を耐えることができたといっても過言ではありません。

税理士さんが言うには、今までのお客さんは安売りの商品が好きだから、僕のお店を気に入ってくれていた人たちだと。

だから、値段が高くなると去って行くというのです。

そして、税理士さんは「新しいお客さんがある一定の人数、集まるまでは、売上が戻ることはない」とも。

税理士さんのその言葉を証明するかのごとく、値上げをしてから1年半くらいたったあと、毎月の売上は微々たるものなのですが、ほんの少しずつ注文の件数が増えていったのです。

このわずかながらでも上向いたことは、僕にとっては大きな希望となりました。

ただし、ドラマみたいにこれで手放しで前進したわけではありません。

お客さんが少しずつ増え(入れ替わって)、業績が上向いてきて、数字上では利益が出始めているのがわかっているのですが、注文の数が少ないために、ものすごく漠然とした不安に襲われるんです。

値上げをして売れているので、商品1つあたりの利益は大きくなっています。

だから、販売数が減ったとしても、きちんと利益が出ます。

これは頭ではわかっています。

でも、以前に比べて暇なので、とても不安になるんです。

僕はこれまで「たくさん売れる=儲かる」と思い込んでいました。

忙しくなればなるほど儲かっているという錯覚に陥っていたのです。

いや、むしろ、忙しくなることが、儲かる道へとつながっているとさえ。

そんな考えが頭に染みついていたので、「暇=儲からない=会社が危ない」というふうに感じていたのが、漠然とした不安の正体です。

販売数は減ったけれど利益は出ている。

だから客観的に見ればあせる必要はないのですが、そんなふうに会社の状況が上向いていても、とにかく暇なことが怖かったのです。

この心理的なブロックが外れ、不安が消えて精神的な落ち着きを取り戻すまでには、けっこう時間がかかりました。

黒字が何年か継続でき、注文数が少なくても大丈夫だと理解して、ようやく安心できるようになりました。

会社の利益に貢献する商品、しない商品「地雷商品」と「棚ぼた商品」約1年半のつらい日々を耐え忍び、資金繰りの面で苦労していることには変わりませんが、なんとなく売上が戻り、利益らしきものが出始めてきたころのことです。

さらに、しっかりと黒字化するために、僕は第二弾の値上げをしようと考えました。

もう失うものはないので、怖いものはありません。

それに、税理士さんの「値上げをしてお客さんが入れ替わるまでは、我慢です」という言葉も実感しつつあります。

ただし、あの1年半で味わった苦痛は、もう経験したくありません。

だから、今度は一気に全部を値上げすることはせず、少しずつ様子を見ながら行うことに決めました。

まず、税理士さんに僕の会社の数字に関することをいろいろと見てもらった結果、販売している商品の平均的な限界利益率は25%だということがわかりました。

でも、取り扱う商品のなかには、限界利益率が高い商品もあれば、低い商品もあり、それが混在している状態です。

限界利益率の高い商品に注力して販売すると経営は楽になるとのことですが、どの商品に注力すればいいのかがまったくわかりません。

そこで、かなり手間はかかりますが、すべての商品について次の計算式をもとに限界利益率をはじき出してみることにしました。

限界利益額:販売価格-変動費限界利益率:限界利益額÷販売価格×100エクセルに、商品名、販売価格、変動費、限界利益額と、それぞれ入力し、限界利益率を出します。

ひたすらこの計算を繰り返す。

コツコツコツコツ。

バカのひとつ覚えで、商品ごとの限界利益率をとにかく計算し続けました。

延々と取り組んでいると、何かが見えてきました。

それは、どの商品が利益に貢献していて、どの商品がまったく貢献していないか、ということです。

そして、売れば売るほど赤字を垂れ流すような商品が存在していることがわかったのです。

それを僕は「地雷商品」と名づけました。

踏んでしまうと自爆するくらい儲からない商品だからです。

経営という点から考えると、やっかいなのがこの「地雷商品」で、よく売れる商品のなかに含まれていることが多く、限界利益率が2%とか5%だったりするのです。

ただ、このまったく儲からない「地雷商品」は、他店との価格競争に勝てる実力があり、売れ行きも好調なんです。

ですが、一向に利益に貢献せずに売れているだけ、という状態になっていることがわかりました。

反対に、思ってもいないような商品が、じつはものすごく限界利益率が高いという逆のパターンもわかりました。

ほとんど販促もしない商品なのですが、たまにポツポツと売れて、ものすごく限界利益率が高く、利益にとても貢献してくれるんです。

こういった優秀な商品ばかりが売れてくれれば儲かるのになあと思う商品を、労せずしてよいことが舞い込む「棚からぼた餅」という言葉のイメージそのままに「棚ぼた商品」と名づけました。

「棚ぼた商品」の限界利益率はだいたい30~35%程度で、平均の限界利益率を10%以上も上回っていて、売れれば売れるほど利益に貢献してくれます。

じつは売れ筋の商品が会社の首を絞めていた2000近くある商品の限界利益額と限界利益率を出してみて、さらにわかったことがあります。

それは今まで売上ばかりを眺め、売れ筋の「地雷商品」ばかり見ながら経営をしていたことです。

その売れ筋の「地雷商品」が売れれば売れるほど儲かるものだと思っていました。

売れ筋の「地雷商品」は、人気者なのでやっぱり愛着があるのですが、どうやらそれは勘違いの始まりだと思い知りました。

同時に、「棚ぼた商品」がもっと売れれば、経営が楽になるということも。

「地雷商品」が中心に売れてしまうと、会社には一向に利益が出ない。

売れているのに赤字になってしまう、というようなことが起こり、その果てには会社が潰れてしまいます。

ただ、お値打ちな「地雷商品」がなければ、お客さんに対しての価格の訴求力が弱くなるのも事実です。

価格的にまったく魅力のないお店になってしまいます。

「地雷商品」と「棚ぼた商品」がちょうどいい具合で売れればいちばんいいのでしょうが、お客さんは賢いです。

安いものを見つけたら、ピンポイントでその商品を購入し、別の商品は、また別の最安値のお店で買ってしまうなどしてしまいます。

会社として儲からないのは困りますが、何よりお客さんが来てくれないのは困ります。

ただ、背に腹は代えられないので、値上げをしてでも利益を出さなければならないのが僕の会社の現状です。

そこで、まず値上げの実験をしてみました。

値上げが、会社の利益に与える影響試しに300円値上げをしてみたら最終的な目標を「儲からない商品は置かないこと」に決めました。

早い話が「地雷商品」を店から排除する。

けれども、商品ラインナップの豊富さはお店としても売りにしたいので、商品自体を排除してしまうのではなく、儲からない地雷商品の「値上げ」をしました。

ただ、これには頭をかなり悩ませました。

「地雷商品」は集客するための目玉商品である可能性が高いので、他店と比べて競争力のある商品です。

この商品の価格競争力が弱くなってしまうと、お店にお客さんが集まらなくなるのが不安になるからです。

でも、まだまだ僕の会社は薄利多売の傾向なので、少しでもこの状況を改善していかなくてはいけません。

目標は、すべての「地雷商品」の平均の限界利益率が25%以上になることです。

人気商品は怖いので、試しに、目立って売れているわけではないけれど、利益額が少なくて地雷商品の枠に入る3000円の商品を値上げしてみることにしました。

売値3000円を、10%値上げした3300円で様子を見てみます。

ただし、もちろん強気の値上げではなく、「これで売れなくなるのであれば、値段はもとに戻そう」と思いながら。

だから、値上げをして1週間経ってもまったく売れないようであれば、値段はもとに戻すという条件つきです。

1日目。

反応なし。

注文ゼロ。

2日目。

同じく注文なし。

あの悪夢が蘇ってきます。

いやな予感が頭をよぎりまくります。

3日目。

値上げをしていない商品は売れますが、値上げをした商品は、相変わらずまったく売れません。

4日目。

値上げをした商品は、今日も売上ゼロ。

「これが答えなのか……。

もう値段をもとに戻そうかな」と思ったのですが、最初に期間を1週間と決めていたので、もう少しだけ待ってみることにしました。

5日目。

値上げをした商品が1つ売れました。

単なる偶然かもしれませんが、「値上げをしても売れた」という事実は、「可能性はゼロではないよ」と僕に語ってくれているような気がしました。

6日目。

また、値上げをした商品が売れたのです。

今度は1日に2個。

もともと、それほど売れている商品ではなかったので、「もしかして、値上げをしても売れ行きはそれほど大きくは変わらないのかな?」という思いも頭をもたげます。

7日目。

また売れました。

今度は4個。

1週間の合計で売れた数は、値上げをする前とそれほど変わりません。

この結果、値上げに対するイメージが変わりました。

「値上げなんかしたら、誰も買ってくれないんじゃないか」というものから、「値上げをしても、ほしい人は買ってくれるのではないか」と考えるようになりました。

「値上げ」の偉大な力3000円の商品を10%値上げをして3300円で販売したところ、販売数はほとんど変わらずに売れるわけです。

仮にすべての商品がその限界利益率になれば、これはとんでもない業績改善です。

この、もともと3000円だった商品は、1つ販売するごとに450円の限界利益です。

それを300円値上げしたら、1つ販売するごとに750円の限界利益が出ました。

限界利益率でいえば、15%から22・7%に上昇したのです。

わずか7・7%の改善なのですが、年間の利益額だとかなりの大きな改善となります。

「捕らぬ狸の皮算用」ではないですが、全商品が7%の限界利益率の改善をしたならば、どの程度のインパクトがあるのか、自分なりにシミュレーションしてみることにしました。

僕の会社の平均の限界利益率は25%です。

なんとそれが32%になります。

仮に年商5000万円とします。

その場合、今までの限界利益は、5000万円×25%=1250万円です。

平均の限界利益率が32%になったら、5000万円×32%=1600万円と、年間350万円もの改善につながります。

これは赤字の会社が黒字になる、まさにV字回復すら可能な数字です。

何より10%の値上げが、ここまで大きく利益を押し上げてくれることに気づいた僕は、値上げの偉大な力を実感しました。

値上げするかどうかの適切な判断「リピーター」の多い商品も、値上げをすべきか?そこで次に、限界利益率の低い「地雷商品」をあらためてピックアップしていったところ、その数は800近くありました。

その商品1つひとつに対して、値上げのシミュレーションをして、販売価格を眺め、値段をつけ直し、限界利益率を計算していきます。

まず、販売価格の妥当性を無視して、「地雷商品」の希望の限界利益率を32%に設定しました。

これは、一部商品の限界利益率を32%まで値上げして平均の限界利益率を29%以上にしたかった、というあくまで数字上の都合を優先させただけです。

次に、商品1つひとつの販売価格の妥当性をチェックしていきました。

しかし、妥当性があるのかないのかを判断するのはとても難しい作業でした。

というのも、僕はこれまで販売していた価格自体が、妥当性があると思って値づけをしていたわけではなく、あくまで競合他社と比べて値づけをしていただけだからです。

だから、妥当性というのは、結局僕にはわからないというのが結論ですが。

ただ、この作業にまったく意味がなかったわけではなく、僕なりの妥当性として、「今までの価格で商品を販売し続けても儲からない。

儲からないならば、今までの価格設定は妥当ではない」という判断につながったからです。

それよりも僕が気にしたのが、限界利益率を32%に引き上げた際の数字の「見た目の印象」でした。

「見た目の印象」というのは、わかりやすい数字、ちょっと安いと感じる数字というような意味合いです。

たとえば、限界利益率を32%にした価格が1769円だったら、キリのよい1800円にしてみたり、または1980円にしてみたり、なかにはいっそ2000円ちょうどにするのもありかと、そのような数字の見た目を整える作業をしていきました。

値づけの専門家がいたとしたら、暴挙としかいえないかもしれませんが、「どうせ今までの価格で儲けることができないのであれば、思いきって変えてしまおう」と、よくも悪くも腹をくくったからできたのかもしれません。

大胆な価格の変更をしながらも、1つだけ気になることがありました。

それは、リピーターが多い商品の価格です。

値上げをしていいものなのかどうか、かなり悩みました。

リピーターが多い商品を、中身を変えずに値上げだけした場合には、間違いなく売れなくなるだろう、という想像は僕でも容易にできます。

そこで、値上げをするかしないかを判断する3つの条件を作ったのです。

①限界利益率が20%以下である商品②その商品が1つも売れなくなっても困らない③会社のイメージを左右しない商品この3つにあてはまるものは値上げの対象にしました。

反対に2つあてはまるが1つはあてはまらない、たとえば、限界利益率は20%以下だけれど、会社のイメージに関わる商品の場合には、値上げをしないという判断です。

値上げをして生まれた、良心の呵責そして、800近くある「地雷商品」の価格を決め、一気に値上げをしました。

その結果、販売数が10%ほど下がりましたが、売上はさほど変わらず、利益が3倍以上に増え、経営状況は一気に回復傾向へ向かいました。

ただ、値上げをしたことで経営状況は上向いたものの、手放しで喜べないことがありました。

こっそり値上げをして売れ続ければ、それがいちばんいいのかもしれません。

ただ、良心の呵責というか、何かしっくりこないんです。

また、価格競争も激しいご時世ですから、ただ価格だけを上げるのでは、お客さんは間違いなく離れていってしまいます。

そこで、よそよりも高い値段の僕のお店で「買ってよかった」と思ってもらうには、どうすればいいかを考えました。

値上げをするぶん、お客さんに何か付加価値をもたらせるように工夫をしなければと。

基本的に値上げをしていますから、手に入る利益額が増えていきます。

だから、その利益をお客さんのために使うことにしました。

花を販売していて、「花の育て方がわからない」という声をしばしばいただくことがあります。

だから、その部分を解消するために、懇切丁寧な育て方の説明書を、商品ごとに作り込み、花と一緒にお客さんにお渡ししたんです。

説明書を作るのは、決して楽な作業ではありません。

いろいろな本で調べたり、ときに生産者の方にアドバイスをいただいたりして、自ら育ててもみました。

すると、価格はよそのお店よりも高い商品もありますが、少しずつ「あなたのお店で買ってよかった」と言われるようになったのです。

第4章を読み終えた読者へ顧客の声によく耳を傾けること。

その大切さは誰もが理解しています。

しかし、世界で初めて自動車の量産に成功したヘンリー・フォードは言いました。

「顧客の声に耳を傾けていたら、速く走る馬車しか作れなかっただろう」「値上げ」という人生初の未体験ゾーンに突入した彼は、その方法を「顧客の困りごとの解決」に求めました。

正直な彼は、顧客に「困りごとはありませんか?」とメールを送ったのです。

すると返ってきたのは「金額が高い」という回答。

もしも、ヘンリー・フォードがこれを聞いたら、あきれて絶句したことでしょう。

しかし、そんな彼を笑うことはできません。

小さな会社も、大きな会社も、みんなそろって「金額が高い」という声に耳を傾け、値下げしているのですから。

デフレ傾向の強い経済環境において、高価格なプライシングは「黙っていては」手に入りません。

「いつか高価格になるといいな」と願っているだけでは、ライバルに引きずられて値下げ地獄にハマってしまうだけです。

高価格を実現している商売人は、あらかじめ「高価格にする!」と決めています。

この点、彼は全商品の限界利益率を見ながら、「地雷商品」と「棚ぼた商品」を分けることから始め、そのうえでそれぞれのプライシングを考えていきます。

このプロセスは本章に書かれている通りですが、ここで読者のみなさんにあらためて注目していただきたいポイントがあります。

それは、彼が意識する限界利益率が、だんだん細かい数字になってきたことです。

15%、22%、25%、29%、32%、そんな数字が本章にはたくさん登場しています。

彼はシミュレーションに慣れるうち、スゴ腕の税理士さんが言っていた「1%の重要性」を実感したことでしょう。

販売単価が1%変わるだけで、どれだけ利益が変わるのか。

多くの経営者が理解していない、この事実をとうとう理解したのです。

幾多の困難を乗り越えて一皮むけ、やっと金に余裕ができました。

金に余裕ができると、思考と精神にも自由が生まれます。

さてこの先、再び調子に乗ってレクサスを買うのか、それとも……。

 

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