なぜ、会社にお金が残らないのか?(資金繰り)「資金繰り表」をつけてみる限界利益の考え方をもとに経営していった結果、僕の会社の業績も徐々に回復しつつあります。
そのころ、「そろそろ会社のお金の流れについて、自分の目で見て確認しておいたほうがよさそうだな」と思うようになってきました。
それまでは、とにかく利益を上げていくことに必死だったのですが、ようやく「お金の流れ」にも目がいき始めたのです。
正直にいえば、スゴ腕の税理士さんが教えてくれた大事なことをノートにメモをしており、書いてあったのが「資金繰り表をつける」ということだったのですが。
「資金繰り表」とは、手持ちのお金を把握する表です。
これは税理士さんの受け売りですが、平たくいえば「お小遣い帳」みたいなものです。
これをきちんとつけることで、資金繰りが健全になるというのです。
たとえば、月末になって「なぜかお金が足りない!」という状態はこれまでもよくありました。
しかし、資金繰り表をつけていると「どの支払いにいくら必要なのか?」「もし足りなくなるとするならば、それはいつなのか?」ということが事前に把握できるようになります。
ほかにも、税理士さんは「1年を通した資金繰りがわかると、現在の会社の状況は黒字でも、繁忙期が過ぎて仮に赤字の状態が続いた場合、会社の体力があるのかどうかも確認できる」と言っていたことも思い出しました。
税理士さんが教えてくれた資金繰り表は、とてもシンプルでした。
入金欄と出金欄、そして差し引きの残高の欄。
この3つに数字を入れていくだけです。
早い話が銀行の通帳と同じ作りです。
残高20万円の口座から5万円を引き出せば残高が15万円に減り、そこに10万円を入金すれば残高が25万円に増えるといった具合です。
先のことはわからないから「予測資金繰り表」を作るただ、実際に資金繰り表を作成するために、今月の出金(支払いのぶん)を計算していると、とても大変な作業になることがわかりました。
実際の請求書や納品書から請求される金額を足していき、1円単位から正確にしていこうとすると、とてつもない労力になるのです。
なぜなら、請求書は月末で締められて、翌月に発行されることが多く、入力したくてもリアルタイムでの入力が不可能だからです。
請求書を待っていると、いつまで経ってもこの作業が終わらないのです。
1か月ぶんの資金繰り表を作るのに、ヘタをすると1か月という時間が必要になってしまいます。
売上に関しても同じです。
事実ベースの売上だけを入力していっても、先々の売上の入金ぶんが見えてきません。
さらに、請求書がなかなかこない仕入先などの場合、請求書がきてから資金繰り表に追加していると、まったく先が見通せないのです。
これでは早い話、暗い道でライトなしに車を走らせているようなもの。
まったく周りが見えないだけでなく、その先に何があるのかもわからないのです。
1か月の資金繰り表でさえこうなので、1年の資金繰りは一向に見えてきません。
そのため、ちょっと違った角度から、もっと大雑把に俯瞰できるような資金繰り表を自分なりに作ってみることにしました。
それは、すべてを予測の値で入力していく、「予測資金繰り表」です。
「予測資金繰り表」を作るためには、次の4つの数字が必要になります。
①現在の残高(残高)②毎月の売上入金予測(入金)③毎月の仕入予測(出金)④毎月の販売費及び一般管理費の予測(出金)そして、ルールを1つ決めました。
それは、概算でもかまわないので、とにかく表を1年間ぶん埋めること。
埋めないかぎり何も見えてきません。
それに、埋めたあとに修正を行えば、より正確な資金繰り表が、のちのち完成するだろうと思いました。
なぜなら、その月だけではなく、半年後に資金がショートしてしまう(足りなくなる)場合、計画的に銀行から借り入れるなり、業績回復のために死に物狂いで利益を確保していく計画を立てるなり、なんらかの手を打たなければならないからです。
だから、「予測資金繰り表」というのは、自分にとっては納得感の高いものです。
それに、ざっくりとでも年間でどこに何が待っているのかを把握できれば、いきなり月末になって「あっ!お金が足りない!」とあわてなくて済みます。
とにかく僕の場合には、月末にお金が足りなくてドキドキした経験が何度もあったので、そうした状態から早く解放されたい気持ちが強く、そのおかげで予測資金繰り表というのを考えられたのかもしれません。
年間で起こるトラブルも予想できるようになるちなみに、この「予測資金繰り表」を作ったことで、1年のうち2月に資金がショートしやすいことがわかりました。
年間の決算では黒字なのですが、毎年この月は入金のタイミングや季節の売上の増減があるため、入金にムラが出てしまうんですね。
そのため、資金が底をつきやすいことが明確になったんです。
そして、銀行へこの「予測資金繰り表」を持って、相談に行きました。
結果、この「予測資金繰り表」のおかげで、早い段階でつなぎ資金の融資をしていただき、事なきを得ました。
会社は赤字でも倒産しませんが、資金がなくなると倒産してしまいます。
それに、「黒字倒産」という言葉があるくらいですから、いくら黒字でも資金繰りがいいかげんだと、すぐに倒産してしまうと気づかされました(ああ、よかった)。
やっぱり広告を出せば、もっと儲かるんだろうか?(費用対効果)広告を出すかどうかは費用対効果を計算してから僕の会社の経営状況は順調に回復してきて、資金的にほんの少しだけゆとりが出てきました。
さらに売上と利益を伸ばすために、ウェブ広告を掲載してみようと思いました。
ただ、以前みたいに数字の計算をせずにじゃぶじゃぶと広告費を使ってしまっては、同じ過ちを繰り返してしまいます。
過去の僕と違ったのは、広告を出して、いくらたくさんの方に買っていただいても赤字ではどうしようもないので、広告を出したときのシミュレーションをするようになったことです。
用意した広告の予算は10万円。
販売する「棚ぼた商品」の価格は3000円で、限界利益額は1000円。
予算と商品を使って、さらに利益を増やしていく計画です。
広告の予算:10万円商品の販売価格:3000円商品の限界利益額:1000円昔の僕だったら、数字のことを考えたとしても、せいぜい「10万円の予算で広告を出すのであれば、売上が10万円以上になったらペイできるんじゃない?」という程度に思い込んでいました。
しかし、今はそれが間違っているとわかります。
広告費に対して、限界利益額が上回れば黒字、下回れば赤字。
ということは、次のような状態になることが大前提となります。
そして、これで広告を出す費用対効果もわかります。
広告費<限界利益額そのためには、広告に掲載した商品1点あたりの限界利益額の合計を出して、広告費と同額になる必要な商品の販売数を割り出します。
公式にすると、次のようになります。
広告費÷限界利益額=必要な商品の販売数さらに、必要な商品の販売数に販売価格をかければ、自ずと必要な売上も出てきます。
必要な商品の販売数×商品の販売価格=必要な売上この2つを実際に計算してみると……。
広告費10万円÷限界利益額1000円=必要な商品の販売数100個えっ、100個!?こんなに売らないと、広告費を回収できないのか……。
果たして10万円の広告費で、3000円の商品が100個も売れるのでしょうか?それでも広告を出す意味はあるか?さらに、10万円の広告費に必要な売上を計算してみます。
必要な商品の販売数100個×商品の販売価格3000円=必要な売上30万円10万円の広告費を回収するには、売上が30万円必要だというのが答えです。
これにはちょっと悩みました。
実際に広告を出す前のシミュレーションで立ち止まれて、よかったです。
一方で、これは昔の僕も考えていたのですが、たとえば、広告を出したことによって100人の新しいお客さんと出会えるとすれば、利益だけでは測れない価値がそこに眠っている可能性も否定できません。
でも、3000円の商品を100個、売上で30万円、たとえここまで実現しても利益はゼロなんです。
で、結局は広告の予算10万円を使うのはやめることにしました。
10万円の広告費に対して30万円も売れる気がしなかったので。
広告費をかけて99個売っても赤字です。
広告費をかけずに1個売れたほうがよっぽど利益が出るんですから。
こうやって、事前に計算しておくことで、どれだけ売れると広告を出して儲かるのかがわかるというのは、見切り発車の多い僕にとっては大きな学びになりました。
やっぱり忙しくなったら、人を増やしたほうがいいですか?「人を雇う」前に確認すべき3つのこと会社が順調に回っていくと、今いる人数では少し仕事量がキャパオーバーとなってきました。
実際に、それぞれのスタッフにもミスが目立ち始め、お客さんからお叱りを受けることも多くなってきたのです。
何より、これから会社の規模を拡大していきたいと思っていたので、ここはひとつ、人の力を借りて、会社の売上や利益を大きくしていこうと。
ただ、闇雲にどんどん人を雇ってしまうと、昔の僕のように、人件費を払うだけでもアップアップの状態になってしまいます。
人件費は、僕の会社のような中小企業でも年間数百万円単位の金額が動く、大きな費用の1つです。
過去の失敗を踏まえて、人を雇うべきなのかどうかを決める前に確認したほうがいい条件を次の3つにまとめました。
①業務を効率化して今の人数でできないだろうか?②雇わずに外注することはできないだろうか?③雇った場合、給与を支払っても資金繰りは大丈夫か?会計の考え方を学んでわかったのは、今よりもスタッフの人数を増やすと、財務体質をよくすることにはつながりにくい、ということです。
仮に利益が大きく下がっても黒字が継続できるような、潤沢な資金のある会社は別ですが、ギリギリの資金で経営している僕のような会社は、気軽に人を雇った場合、最悪すぐに赤字に転落することも考えられます。
実際に過去の僕は、スタッフの給料を増やしてあげられないにもかかわらず、新しいスタッフを雇い、資金繰りに苦労しました。
その結果たどり着いた答えは、僕の会社のような中小企業にとって重要なのは「少数精鋭型の組織」ということです。
そして、「少数精鋭型」とは言い換えれば、「経費が少なく利益を残す組織」です。
そんな組織を作るために、自然と思いついたのがこの3つの項目です。
その1業務を効率化して今の人数でできないだろうか?「人を雇いたい」と感じる瞬間は大きく分けて2つあります。
1つは、業務が忙しいので、もっと人手がほしいとき。
もう1つは、今よりも売上を上げて規模を拡大したいときです。
そんなときにチェックしたほうがいい指標についても、スゴ腕の税理士さんが話してくれたのを思い出しました。
それは、社長を含めた従業員1人あたりの限界利益がいくらなのかというものです。
公式はとても簡単です。
従業員1人あたりの限界利益:年間の限界利益÷社長を含めた全従業員数※アルバイトやパートの場合には0・5人とカウントここから出てくる数字の平均的な目安は、中小企業の場合には1000万円、上場企業の場合には1500万円だそうです。
以前に僕が無計画に人を雇っていたとき、たしかに従業員1人あたりの限界利益は1000万円を大きく切っており、とてもやり繰りが大変だったのもこの数字が証明してくれています。
今は、まず「どうにか現在いるスタッフの人数でこなせないだろうか」という視点で考え抜いた結果、業務を減らしたり、統合したりするなどが意外とできてしまうことにも気づきました。
業務の流れや仕組みを見直したり、もっと簡素化できる部分はないだろうかとスタッフにヒアリングしてみると、やらなくてもいい業務や、無駄だった業務が見えてきます。
無駄な業務をやめることで、そのぶんの人件費が浮くのはもちろん、空いた時間を使って、もっとやるべき仕事の時間に割りあてられ、より利益が出る方向につながっていきました。
会社の利益を高めるためにも、効率化は、人を雇う前に、ぜひやったほうがいいです。
僕の会社のような中小企業で正社員を雇おうとすると、給与や賞与、社会保険もろもろで、新人でさえ年間300万円はかかります。
仕事をきちんと覚えて、利益を出せるようになるまでには最低でも1年はかかります。
その300万円を予算として、業務の仕組み化や効率化に使おうとコンサルタントを雇ったとしても、100万円ほどで済んでしまうことも少なくありません。
その2人を雇わずに外注することはできないだろうか?いくら「人を雇わずに効率化できないか」と考えても、それでは解決しない問題もあります。
たとえば、イベントや新商品を考えたりする、格好よくいえば「クリエイティブな仕事」は効率化できない仕事の1つです。
僕の会社の場合、そのほとんどを社長である僕がやっています。
そこで考えたのは、僕自身がやっている仕事のうち、「クリエイティブな作業の時間を確保するために、社外の人にやってもらえることはないだろうか」ということです。
たとえば、入力や封入などの単純作業がそうです。
また、自分で思うようにできない仕事や、自社にその仕事が得意な人がいない場合も外注することにしました。
ほかにも、会社のホームページや販促チラシなどは、パソコンのデザインのソフトの知識がない僕がうんうんとうなりながら考えて作るよりも、いい外注先を見つけたほうが、速いうえにクオリティが高くなります。
そうして、肝心な部分や外注できない部分に関しては、自分たちでやることにし、そのほかの単純な作業や、自分たちにとっては複雑過ぎる作業に関しては外注することにしました。
その3雇った場合、給与を支払っても資金繰りは大丈夫か?過去の苦い経験から、どうしても人を雇う方向で考える場合には、しっかりと試算をすることが大切だと痛感しました。
実際に、以前、スタッフの給与を支払うために、銀行から借り入れた経験や、自分の給与を出さずに我慢して人件費に補てんしたこともあります。
このことも数字で考えると、よくわかります。
たとえば、年間の黒字額が500万円あったとします。
正社員を1人雇えば人件費は300万円。
パートさんであれば130万円ほどです。
交通費や福利厚生費などを含めると最低これくらいにはなってきます。
そして、単純な計算として、年間500万円の黒字額から正社員の給与を支払うと、年間の黒字額は200万円に減ってしまいます。
さらに現実的なことをいえば、1年目から業績を上げてくれるような正社員は300万円で雇えることは少ないです。
決算書上は黒字だとしても、資金繰りとして人を雇っても大丈夫なのかチェックしないと、痛い目に遭います。
だから僕は、人を雇った場合、年間にどれくらいかかるのか、どこかの月で資金が足りなくならないか、雇ったけれど思ったより業績が上がらない場合はどうか、雇って業績が下がった場合はどうかなどを、シミュレーションしました。
さらに、会社にしっかりと蓄えがある場合には、雇った人が利益に貢献しなかったと仮定して、何年間大丈夫なのかなども見ておくとさらに安心だとわかりました。
そうやってシミュレーションして、仮にどこかで資金がショートする可能性がある場合には、当たり前ですが、雇うべきではないと僕は思っています。
何より給与の支払いが滞ってしまうようでは、雇った人にも迷惑をかけてしまいます。
人は会社にとってエンジンのような役割ですが、そのためのガソリン(お金)がないと回りません。
雇った人は、最初はガソリンを食うばかりかもしれませんが、成長すると、ガソリンとなる会社のお金を生み出せるように育ってくれます。
しかし、そうなるまでは燃費が悪い状態なので、その間を過ごせるのかどうかを判断すべきです。
これらの「人を雇う前に確認すべき3つのこと」をチェックしたうえで「人を雇える」と判断できた場合は、安心して人を雇え、健全な利益を出しながら会社を運営していくことが可能だとわかります。
でも、今のところ、この条件で人を雇うという判断にいたったケースはほとんどありません。
計画は「ほしい利益」から立てる計画は「売上」ではなく、「ほしい利益」をもとに立てる「会社の計画をどう立てたらいいのか?」というのは、僕が赤字で苦しんでいたときに、なんとなく疑問に思っていたことの1つです。
会計については少しずつわかってきたけれども、その点は相変わらず悩みのタネでした。
たまたまなのですが、毎年ずっと利益を伸ばし続けている社長さんとお話しする機会がありました。
ここでは、そのときに教えてもらった「利益計画」の話をしたいと思います。
それまでの僕は、「ほしい売上」をもとに計画を作り、最終的に残ったお金が利益になると思っていました。
しかし、その社長さんは「それは違う」と言います。
「利益は狙って出していくもの。
だからこそ、『利益計画』を立てるべきだ」と言うのです。
そして、「『ほしい利益額』を決めて、逆算していったときに出てくるものが売上だ。
その計画の立て方を覚えると、世界がガラリと変わるよ」とも。
僕はその話を聞いて「そもそも計画って大切ですか?」と、今思えば会話がまったくかみ合わない質問をしてしまいました。
すると、その社長さんは「月間の売上目標を立てると、売上を目指してがんばるでしょ?だから、売上目標は達成できるようになる。
でも、売上があっても、利益が出てないなんてことなかった?売上ありきだから、利益がついてこないんだよ。
『利益計画』を立てると、利益を目標とするから、自ずと利益が残るよ」と、まさに僕の過去の失敗の核心を突くことを丁寧に教えてくれました。
「計画によって、そんなに出てくる結果が変わるのであれば、ぜひそのやり方を教えください」とその社長さんにお願いして、教えてもらったのが次の方法です。
①月間の「ほしい利益額」を決める②月間の「固定費」を決める③月間の「平均の限界利益率」を決める④公式にあてはめる⑤最終的に、「必要な売上」が算出できる公式は、次のようになります。
(ほしい利益額+月間固定費)÷平均限界利益率=利益達成に必要な売上仮に、「月間のほしい利益額」が100万円、「月間の固定費」が100万円、「月間の平均限界利益率」が30%だとします。
それをもとに実際に計算をしてみましょう。
ほしい利益額:100万円月間固定費:100万円平均限界利益率:30%利益達成に必要な売上:666万6666・7円(小数点第2位を四捨五入)以前の僕は、売上を上げて、結果的に残ったのが利益という感覚でやっていたけれど(結果的に残らなかったのですが)、こうやって計算すると、どれくらい売上を達成すれば利益が出るかが一目瞭然です。
もっと利益がほしかったら、もっと計算するさらに、その社長さんは「もう少し利益がほしいなと思ったら、すかさず再度計算をしてみるといい」とも言っていました。
そこで今度は、ほしい利益額を少し欲張って200万円にして計算すると……。
ほしい利益額:200万円月間固定費:100万円平均限界利益率:30%利益達成に必要な売上:1000万円なんと利益を2倍にしたい場合には、売上は2倍にしなくても大丈夫だという結果が出てきます。
費用(固定費)を増やさずに、限界利益率を下げずに(値引きしない)販売をしていくという条件ですが、利益を増やしていくことはそれほど難しいことではないと感じました。
さらに、「ほしい利益」から計画を立てることによって、自分自身に変化が起きました。
それは、今までの売上ありきの視点とは違って、次の3つを意識するようになったことです。
①新商品を投入する際に、限界利益を気にしながら値づけをする②販売促進する商品の限界利益率を気にする③経費を使う際、予算を気にする数字に詳しい人ならば、けっこう当たり前のことかもしれませんが、僕にとっては大発見です。
以前の僕は、求めるものが売上だけだったので、これら3つのことはあまり気にせず、売上を上げるためにあらゆる手段を使っていました。
しかし、「利益」を意識してからというもの、販促活動でも利益率を高めるために、セールなどの値引き以外の方法として、たとえば新商品の発表会、限定品の特別先行販売会など、今までと違った視点でお客さんにお知らせをする方法に取り組むように変わったのです。
これらの方法は、すでにいろいろな企業で実施されていますが、僕の場合は利益から考えた結果なので、会計の視点で発想することのすごさに驚いています。
計画が順調かどうかは、どう確認すればいい?毎日の利益をチェックする方法「ほしい利益」をもとに計画を立てたあと、しばらくして「実際に計画通りになっているかどうか?」が気になり始めました。
「日々の売上に対して、利益はどれくらい出ているのか?」「今日現在の段階で黒字なのか?」「今月は赤字なのか、黒字なのか?」「赤字だとすれば、いくら売り上げれば黒字になるのか?」などなど、気になることは尽きません。
税理士さんにお願いして作成してもらう決算書は年に一度のものです。
細かくやっている税理士事務所でも月に一度が一般的と聞きます。
ですから、現在の財務状況を把握するのは、どこの会社も自前でやらなければなりません。
だからこそ、大きな会社には経理部があって毎日数字とにらめっこをしている人たちがいるのかと、妙に納得してしまいました。
僕の会社では税理士さんに月次決算をお願いするようになりましたが、その書類が僕の手もとに届くまでには、月末で締めても、その翌月末ごろです。
その1か月のタイムラグが僕にとって、居心地のよくない期間になりつつありました。
「今のやり方で正しいのかどうか?」「利益は出ているのかどうか?」など、わからない状態でびくびくしながら過ごしていたからです。
その期間をたとえていうならば、目隠しで車を運転しているような恐怖感がずっと続いているような感じです。
しかし、ただ怖がって結果を待つばかりでは、いてもたってもいられないので、何かできないかと考えました。
まず、過去の僕がチェックしていたのは「売上」です。
これを続けた結果、失敗したわけです。
指標とすべきなのは売上ではなく「利益」。
「利益」を、毎日「見える化」できたら、安心して経営できるのではないか。
では、どうやったら毎日の利益がチェックできるだろうかと考えたところ、「利益計画に対して、現状どうなのか?」がわかれば、あせる必要もないことに気づきました。
「利益」が出ているかどうかのボーダーラインが、税理士さんが教えてくれた「損益分岐点」です。
そこで、毎日の限界利益を積み上げていって、その月の固定費を引いたところの黒字と赤字の境界線をチェックしたのです。
年ごとなのか、月ごとなのか、日ごとなのかの単位の違いだけで、公式はほぼ同じということもわかったので、税理士さんに教えてもらった損益分岐点の出し方を、自分なりに応用してみました。
まず、利益をチェックするために必要な数字はたったの3つです。
①今日までの売上合計②平均の限界利益率③今月の固定費(予測額)この①と②を使って「今日までの限界利益額」を算出することで、毎日の利益が「見える化」できます。
今日までの限界利益額の計算:今日までの売上合計×平均の限界利益率=今日までの限界利益額ただし、計算したところで売上は変わりません。
でも、「利益計画を達成しているのかどうか」「達成していなければ、どれだけ足りないのか、どれくらいやれば達成できるのか」がわかると、自然と次に打つ手が見えてきます。
さらに、この毎日の限界利益額を合計して、月間の累計を見ていきました。
一度、習慣化すると利益計画のチェックも毎日するようになりました。
しかし、そんな余裕がないとか、週に一度ならなんとかできそうだという人もいるかもしれません。
その場合には、次のようにまとめて計算して、「現在の状態」が一目瞭然になるやり方もあります。
現在の利益の状態:(今日までの売上合計×平均限界利益率)-(今月の固定費+目標利益※予測値)=今日までの利益目標の達成度合い人間の身体も同じですが、やっぱり今の自分の健康状態をチェックするに越したことはありません。
ずっと検診に行っていなかった人が、自覚症状が出たときには遅かった……なんてことを聞くと、なおさらです。
この重要性に気づき、僕の会社では、現在、専用の計算ソフトを作り、毎日の利益を算出しているほどです。
手作業で計算するのが大変なので、その結果、自動化するためのソフトを自分で作ってしまったというのが正直なところですが。
暗闇のなかでライトもつけずに車(会社)を運転(経営)していれば、思わぬ事故に遭うのも当前です。
それが過去の僕です。
しかし、車のライトをつけて、今どこを走っているかという現在地がわかって運転できれば、目的地に確実に近づけます。
利益を出すために、できること利益を出すための4つの方法利益も確実に出せて、黒字が続くようになり、ふと「なぜ、利益を出せるようになったのか?」を振り返ってみました。
もちろん、もう売上だけを上げていっても利益が出るわけではないことは、十分にわかっています。
では、どうすれば利益が増えるのか?僕が肌感覚でわかったのは、ざっくりと説明するならば、「月間の固定費の金額よりも、月間の限界利益が多くなっている状態(固定費<限界利益)であれば、利益が出ている」ということです。
このことをもう少し細分化して説明するならば、利益を出すには次の4つの方法が考えられます。
①今よりも価格を下げて、販売数を圧倒的に増やす②今と同じ価格で、販売数を増やす③今よりも価格を上げて、販売数はそのまま、または減らす④今よりも原価を下げて、販売数はそのまま、または減らす僕が大失敗したのが①の方法です。
スゴ腕の税理士さんにも指摘されましたが、10%値引きした場合は、10%多く売ればいいわけではありません。
販売数を圧倒的に伸ばさなくてはいけない、というのは先述した通りです。
単純な値引き戦略(セール)は、じつは多くのお店でやっています。
しかし、これは圧倒的に販売数が伸びていってくれないと成立しないのです。
このことについて、自分なりにもう少し深く掘り下げてみたところ、販売数を伸ばすための費用がふくらみやすいのがデメリットだとわかりました。
だから、値引きをしても利益を出すには、限界利益の高い商品でないと難しいことを実感したのです。
販売数は、増やしたくても簡単に増えません。
さらに、たとえ販売数が増えたとしても、増えたぶんだけ費用がかかりますし、売れたぶんだけ仕事量も増えます。
ですから、人件費も比例して増えてしまうというデメリットも含んでいることが、シミュレーションと実体験の両面からわかりました。
実際に、どんどん商品が売れて、売上も比例して増えてきたときに、人手が足りなくなってどんどん人を雇ったことがあります。
そのときは雇うと人件費がどんどんふくらみ、出るはずの利益が人件費に食われていってしまいました。
けれども外側から見ると、とても忙しそうで、仕入れる商品数や取引金額も増えていくので儲かっているように見えます。
しかし、お財布事情は火の車。
さらに現実をいうと、従業員は忙しくて疲れ果て、離職率も非常に高かったです。
売上が上がれば上がるほど、仕事も増えていくので、スタッフがイヤな顔をするんです。
会社の雰囲気もとても悪かったし、僕自身も先が見えない山積みの仕事を見て、ため息しか出ないような状態でした。
僕のような考えが浅い人間にとって①は難しい方法の1つだと、今ならわかります。
では、②~④のなかで、どんなふうに限界利益を高めていくか、説明していきます。
黒字になりやすい利益の出し方、なりにくい利益の出し方スゴ腕の税理士さんに出会う前に取り組んだ、もう1つの方法が②の「今と同じ価格で、販売数を増やす」でした。
とにかく売上が少なかったため、がむしゃらに販売数を伸ばしていきました。
小さな注文も喜んでお受けして、ほとんど休みも取らずにせっせと販売数を伸ばすための努力をしたのです。
でも、当時の僕の会社の赤字の状態は変わりませんでした。
単純に限界利益率を変えずに販売数を伸ばすと、利益も増えます。
では、なぜ赤字なのかというと、商品の限界利益率があまりに低かったため、効率が悪かったんです。
ひと言でいうならば、薄利多売です。
もしも、限界利益率の高い価格設定になっていれば、この方法で黒字転換が可能だと思います。
計算式は次のようになります。
販売数アップによって増えた限界利益額の算出方法:増えた販売数×限界利益額ちなみに、さきほどお話しした「人を雇っても大丈夫かどうかの判断」をする際に、次の状態になっているかどうかがポイントだとも気づきました。
ただ、今いるスタッフの人数では対応しきれなくなったとき、黒字額は天井となり、それ以上、利益を増やすためには業務を効率化したり、外注したり、人を雇ったりするなど、何かしら改善しなくてはなりません。
増えた限界利益>新たに雇う人の人件費昔の僕の会社の損益分岐点を割り出してみると、まず、利益を出すための販売数はちょっとやそっとで達成できそうもない数字でした。
それをクリアするためには不眠不休でやるしかありません。
実際、そうするしかなかったのですが、これは今思うと、いわゆる「ブラック企業」になる始まりのようなもので離職率も上がってしまいます。
それだけでなく、これは実体験として、経営者である自分自身も疲弊しました。
では、次の項目で、③と④の方法について見ていきます。
できるだけ高く売るか、できるだけ安く仕入れるか?販売数が増えないなか、利益を増やすには?販売数を増やしにくい場合に、残りは次の③か④の方法が考えられます。
③今よりも価格を上げて、販売数はそのまま、または減らす④今よりも原価を下げて、販売数はそのまま、または減らすまず、③の方法は簡単にいえば、「値上げしましょう」ということです。
僕が利益を出すべく取り組んだのがこの方法です。
その理由は、計算上、利益が一気に増える可能性がいちばん高いからです。
ただし、先述したように、日用品やすでに多くのお客さんにリピート購入してもらっている商品を値上げすると、販売数が減ってしまう可能性が高くなります。
したがって、値上げに踏み切れない商品が多数あるのも事実です。
だから、新しい商品を販売する際に、いつもよりも少し高めの価格設定で販売をスタートさせるのも1つの方法です。
この値上げ戦略は、単純に限界利益率が高くなるので、同じ数量を販売した場合でも限界利益は増えていきます。
販売数を増やさなくていい方法なので、仕事量が変わらないため、固定費は増えません。
そして、いつもと同じ仕事量なのに利益が高まっていくのです。
もちろん値上げをしても売れる、という条件つきにはなりますが、この戦略の結果、僕の会社の経営は好循環になっていきました。
では、値上げによって、どのように利益が変わるのかを実際の数字の計算から見てみましょう。
限界利益の公式:限界利益=販売価格-変動費たとえば、変動費600円、限界利益400円で、1000円で販売していた「商品A」という花があります。
商品A:1000円変動費:600円限界利益:400円その花を1200円に値上げしたとします。
200円値上げをすると、限界利益も200円増えます。
商品A:1200円変動費:600円限界利益:600円この場合には、販売価格を1000円から1200円に20%値上げすると、限界利益が400円から600円へと1・5倍高まるという結果になりました。
値上げした以上の効果が期待できることがわかると思います。
また、1000円の花を10個販売したときと、1200円の花を10個販売したときで見てみましょう。
1000円の花を10個販売:限界利益400円×10個=4000円1200円の花を10個販売:限界利益600円×10個=6000円限界利益の差は2000円です。
この限界利益2000円の差は、次のように1000円の花だと5個多く売ってやっと同じになります。
1000円の花:限界利益400円×15個=6000円1200円の花:限界利益600円×10個=6000円1日に花が平均10個売れるお店であれば、1000円で売るのと、1200円で売るのとではかなりの違いが出てきます。
仮に1か月(30日)で限界利益の差を販売数で換算すると、なんと150個の差になります。
1年間では1800個の販売数の差です。
その差を限界利益で表すと、1か月で6万円の差となり、1年間では72万円もの差となってしまいます。
値上げした状態の差を見て、1日の売れる数×30日ぶん、または、1日の売れる数×1年ぶんを計算してみて、いくらくらい利益が変化するのかを知ることで、大きな判断材料になると思います。
値上げは、利益を増やす最もパワフルな方法だと考え、僕が熱心に取り組んだのも理解していただけるのではないでしょうか。
ただし、商品を少しでも高く販売するためには、知恵を使わなければなりません。
販売促進のためのアイデアを日々考え、工夫をし、商品の付加価値を高めていくことが求められます。
僕の場合は、先述したようにお客さんへのサポート(花の育て方の説明書を配るなど)をしたのもそうです。
小さな会社が利益を出すためのたった1つの方法では、「④今よりも原価を下げて、販売数はそのまま、または減らす」という方法です。
③の「値上げ戦略」と同様に、この方法も非常にパワフルで、同じ効果が期待できます。
さきほどの花の原価を、仮に200円下げることができれば、同じ利益を出すことができる、という理屈です。
ただ、僕の経験上(現在、花屋を14年やっていますが)、今まで原価が下がった商品はありません。
それに、原価を他社よりも下げるためには往々にして、圧倒的な数量を仕入れなければなりません。
こんなことからも、僕のような小さな会社は、商品1つあたりの在庫量を増やして、原価を減らすことはけっこう難しい戦略です。
また、飲食店や製造業などは、原材料の高騰や為替の変動で、仕入価格が上がる可能性もあります。
原価は下げられるに越したことはないですが、不可抗力で上がることも十分に考えられます。
だから、この方法に頼っている場合、いきなり仕入価格が上がった際には、何も打つ手がなくなってしまいます。
ですから、「②今と同じ価格で、販売数を増やす」と「③今よりも価格を上げて、販売数はそのまま、または減らす」という方法を組み合わせながら、原価を下げられるならば下げる、というのが理想的な利益の増やし方だと思います。
とくに「小さな会社が生き残るには?」と考えるならば、「③今よりも価格を上げて販売数はそのまま、または減らす」という方法で、その金額に見合った付加価値をお客さんにもたらす、というのが僕の答えです。
ずっと赤字体質の会社が、なぜ黒字が続くようになれたのか?「目隠し運転の経営」からの卒業計画をし、利益を出せて黒字になるという経験を一度すると、面白いもので、どうやれば黒字になるのかも、肌感覚でわかってきました。
売っても売っても赤字から抜け出せないときの、「いったいどうすれば、黒字になるんですか?」という目隠し運転で経営していたころの感覚がウソのようです。
今は、月次決算書を眺めながら、前月の平均限界利益率を確認しています。
そして、「固定費の合計が大きく増えていないか」「飛び抜けて増えている費用の項目がないか」どうかを、毎月チェックしています。
これらはもはや習慣になっています。
さらに、毎月繰り返していると、費用の金額や限界利益率などに対して、元巨人軍の「ミスター・ジャイアンツ」こと長嶋茂雄さんではないですが、「勘ピューター」的なものがビビッと反応するんです。
異常値なのか、平常値なのか、改善しているのかなどが、なんとなくではあるのですが、不思議とわかるようになったんです。
赤字になりやすい体質、黒字になりやすい体質そんな今、僕は数年前の自分の会社の決算書を引っ張り出してきて、なぜ赤字体質から抜け出せなかったのかを分析してみました。
年商1億円を超えて最高の売上を記録したにもかかわらず、赤字になったときの決算書に目を通すと、売上は今の2倍。
損益計算書の気になる数字、とくにストーカーのようにつきまとってくる変動費(仕入原価や荷造り運賃)を中心に見ていくと、たしかに仕入原価は売上に対して今よりも比率は高そうなのですが、荷造り運賃の比率はそれほどでもないのです。
「あれれ?」と思って、計算してみると、限界利益率は22%ほど。
たしかに薄利多売タイプの限界利益率です。
そして、この売上で、これで黒字にならないということであれば、答えはニートな費用の固定費の部分にありそうです。
そこで、固定費を見ました。
費用がまとめて書いてある「販売費及び一般管理費」の明細のページを見てみると、ズバーンと人件費が、そしてモリモリと広告費が!!「かけ過ぎだよ~!」と思わず心のなかで叫びたくなるほどです。
人件費と広告費をたっぷりかけていたら利益なんて絶対に出ません。
そんな赤字体質の決算書を見て、まるで「メタボ体質」だなと思いました。
逆に、黒字になる体質というのは、ぜい肉(余計な費用)がない、締まった体型なのではないか、とも。
そうやって体型でたとえて考えてみると、黒字体質、赤字体質のパターンがイメージできました。
たとえば、限界利益率が「筋肉」で、固定費等の費用が「ぜい肉」で、ぜい肉を削ぎ落とし、筋肉を鍛え上げれば「細マッチョ」になる、なんてふうに。
実際に、「細マッチョ」であれば最終利益もしっかり出てきます。
すると、赤字体質と黒字体質の違いも、肌感覚でわかってきました。
図にすると、次のようなイメージです。
体型でいえば、「メタボ」と同じく筋肉(限界利益率)は低いがぜい肉(固定費)も少ないのが「激やせ」。
「細マッチョ」よりも重厚感のあるのが「ゴリマッチョ」です。
僕が独立したとき、最初は安売りの花屋から始めたのですが、とにかく費用を削って一生懸命がんばったけれど、まったく儲からなくてどうしようかと考えていたころが、まさに「激やせ」状態です。
そして「激やせ」状態から売上を上げようと、僕の場合は「メタボ」の状態になってしまいました。
小さな会社は「細マッチョ」な会社を目指そうこの「体型によるタイプ別」ということから、あらためて考えると、黒字になるかどうかは結局、限界利益率のバランスに依存するものだと気づきました。
赤字体質のときに否定した「お金はあとからついてくる」という状況は、黒字体質のモデルと赤字体質のモデルの違いが深く関係しているのです。
会社の体質(限界利益率のバランス)自体が利益を出せない状態になっていると、何をしても、今のままの方法では利益は出ません。
そもそも限界利益率が低く、利益を出せない体質になっているから、赤字体質の「メタボ」や「激やせ」の会社は、そのままどんどん突き進んでしまうのです。
ということは、黒字化して健全なる利益をしっかりと出すためには、「細マッチョ」もしくは「ゴリマッチョ」でなければなりません。
ただ、「ゴリマッチョ」は固定費も多いけれど、それをものともいわせない圧倒的な限界利益がある状態です。
たとえば自社でオリジナル商品を作り、その商品は圧倒的な限界利益率を誇り、広告費をガンガン突っ込んでバカ売れしているような規模の大きい会社がそうです。
商品を仕入れて販売するような小売業にはまずできない限界利益率でしょう。
僕のような会社が目指すべきは、やはり「細マッチョ」なんだろうなと思いました。
「細マッチョ」は筋肉質で無駄なものがない、利益がしっかり出ている会社です。
「数字」に想いを乗せよう数字は、事実しか語らないけれど強い味方はっきりいうと、会計の計算はめんどくさいし、いまだに僕は数字が得意ではないし、あまり好きではありません。
それに、数字とにらめっこをしていると、いつのまにか、お客さんの数、お客さんが買ってくれた商品の利益ばかり考えてしまいがちです。
この人は5万円、この人は10万円、スタッフのあの人は25万円、あの人は15万円と人を数字で眺めてしまうことにもなりかねません。
僕はその感覚が非常に危険だと思っています。
もちろん、数字を読めることはとても重要です。
でも、その向こう側にはお客さんがいて、手前には、そのために数字を追いかける人がいます。
その数字を追いかける人が、喜んだり、ときには悔しい思いをしたり、悲しんだりします。
数字自体には感情がなく、単に結果を表わす記号ですが、数字を扱う人こそが価値を持っているわけであり、数字に想いを乗せていくことが大事なのではないでしょうか。
利益を追い求めることは、たしかに大切です。
そうでなければ、会社は存続しません。
今この本をここまで読んでくれたあなたも、そう感じる1人だと思います。
でも、「利益だけ」を追いかけて満足でしょうか?僕も、お客さんも、スタッフも同じ人間です。
青くさいセリフになってしまうかもしれませんが、やっぱりお客さんはもちろん、スタッフも含めたみんなが「ありがとう」と笑顔で言ってくれることが何よりもうれしいです。
だから、数字は大事ですが、その数字はお客さんや周りの人を喜ばせるために使っていきたいと思いました。
これが会計を学んで、自分としていちばん成長できたことだと感じています。
社長が調子に乗ったら、会社は簡単に傾きますさまざまな苦難を乗り越えた結果、5年ほど連続で黒字決算を継続できるまでになりました。
しかし、ここで1つ問題が。
黒字が続いているものの、3年間売上が期待よりも伸び悩んでいるのです。
もちろん、赤字から抜け出せないころから比べると、はるかにマシになりました。
しかし、目標を1つ実現すると、人間、新たな欲が出て、さらに利益を上げて新規事業に投資をしたいという考えも出てきたのです。
もっと利益を上げるためには、2つのやり方があります。
1つは、売上を増やして利益を上げる。
もう1つは、今の売上のまま、限界利益率を高める。
前者は販売数を増やすこと、後者は値上げをすることを意味します。
でも、セールで値引きをしてたくさん売るというやり方はもうしたくありません。
一方で、値上げをするにも限度があります。
1つひとつの商品を大切に販売して、お客さんに喜んでもらいながら、事業を伸ばしたい。
それを実現するにはどうすればいいか?そこで、新たなヒントを得るために、勉強会に積極的に参加したり、いろんな人に会いに行ってみたりしよう、と考えました。
そのようなタイミングで、本で読んだのか、誰かから聞いたのかは忘れてしまいましたが、「自己の成長は移動距離に比例する」という言葉を思い出したのです。
「そうか!これか!」僕は、1年かけて、全国の活躍している人に会いに行くことに決めました。
思い立ったが吉日!早速あちこちにアポイントを入れ、飛行機の予約をしました。
北海道、仙台、名古屋、大阪、福岡、鹿児島、沖縄などなど。
あちこち行き始めたら、これがまた楽しい!会社への出勤は週に2日ほど。
土日は休みなので、週に3日はどこかへ出かけているような状態です。
そんなことを1年くらい続けていたら、売上が上がるどころか、どんどん下がり始めてしまったんです。
利益は一気に急降下。
これはまずいぞ!このままでは今期の赤字は確定です。
ずっと黒字だったのに、赤字に転落だけは絶対にイヤだ!決算の締めまで残り3か月。
しかも、資金繰り上では翌年に資金がショートするのはほぼ確定です。
どうする?何から始めればいいんだ?とにかくなんとかしないと!そこで、久しく連絡を取っていなかったスゴ腕の税理士さんに電話をしました。
「はい。
もしもし」「ご無沙汰してます。
黒字がずっと続いて儲かっていたのですが、油断していたら会社がまずいことになってしまいまして、このままだと赤字です。
どうしたらいいんでしょうか?」「それはまた大変ですね。
ところで、『儲ける』という漢字の、『儲』の字の語源って知っていますか?」「えっ?うーん。
なんでしょう?」相変わらず、税理士さんは遠回りな話をしている気がします。
でも、これも最後まで聞くと何かわかるのでしょうか。
「『儲ける』という字は、『信じる」に『者』と書きますよね。
ということは、信じて突き進んだ者だけが、儲けることができるという意味ですか?」「うーん、ちょっと違います」「じゃあ、信者を増やしたら、儲かる……」「よくそういうふうにも言われますが、語源としては違います。
じつは、『儲ける』という字にはお金に関する意味合いはいっさい入っていないんです。
『儲ける』という字は、イ(にんべん)に『諸』と書くんです。
また、『儲ける』と『設ける』という字はもともと同じだったといいます。
『設』の語源は、用意するとか蓄えるという意味があります。
私なりの解釈をすると、いくら黒字でも、節約をして、しっかりと蓄えておかないと、儲かる状態にはならないという意味です」「でも、必要なお金は使っているけど、無駄づかいはしてないですよ!」「私はあえて何も言わずに、古屋さんの会社の数字だけを見ていたのですが、ここ1年くらい固定費がかなり上がっていました。
固定費を下げて、まずは身の丈に合った経営をして、しっかりと利益を蓄えるべきです。
コツコツと蓄えることで、『儲かる』という状態になりますよ」「そうか!そういうことか……」税理士さんにアドバイスをもらってから決算までの3か月間、僕は固定費を削減して、利益を高めるための施策や業務を、毎日の行動計画に落とし込み、目の前のやるべきことをコツコツとこなしました。
業績は一気には変わりませんでしたが、徐々に上向き、なんとかギリギリ黒字での決算になりました。
僕は大切なことを、忘れていたのかもしれません。
黒字が続いて、自動的にそうなる仕組みができた、自分は好き勝手やっても会社はもう大丈夫だと、勘違いしていました。
そして、お金が手もとに残るようになると、少しくらいなら使っても大丈夫だろうと、かつての悪い癖も顔を出し、知らず知らずのうちに、お金に苦労する時代はもう終わったんだと錯覚をしていました。
「儲かる」という状態は、お金が勝手に入ってくるわけではなく、きちんと自己管理をして、自分自身が成長することによって手に入るものなのかもしれません。
第5章を読み終えた読者へ貧すれば鈍す──商売する者にとって、これほどイヤな言葉はありません。
この言葉の恐ろしさは、それが真実であることです。
資金繰りに苦しむようになると働くことが義務になり、やがて心がすさんできます。
彼は、スゴ腕の税理士さんとの出会いによってドロ沼を抜け出しました。
脱出のカギが、「限界利益」だったのです。
儲けパワーを表す「限界利益」の知識によって苦境を乗り越えた彼は、とうとう「大切なもの」を手にしました。
多くの商売人がそれを望みながら、しかしなかなか手に入れることが叶わないもの──それは「自由」です。
数字が読めるメリットはここにあります。
やるべきことが見えず、不安にさいなまれる毎日から、数字とともに商売のことを考える、楽しく自由な毎日へ。
商売の自由を手に入れた彼、そして本書の読者は相当運がいい。
本当にラッキーです。
これから先、彼はどんなふうに商売を展開していくのでしょう。
そして本書を読んだ読者にはどんな変化が訪れるのでしょうか。
物語の続きが楽しみでなりません。
おわりに~「自分だけのため」から「人のため」に儲けたい~古屋悟司会社の黒字がずっと続くようになった今、新しいことに取り組んでいます。
「お客さんが何に困っているかを理解して、その困りごとを解決して差し上げれば、値段はあまり関係ないんです」僕は税理士さんにこう教わりました。
その言葉通りに実践した結果、お客さんが自分では気づいていない困りごとを解決できると、ほかのお店よりも多少値段が高くても喜んでお金を払ってくれます。
そうやってお客さんの困りごとを解決すると、それが自分たちの利益につながるだけでなく、「こうすれば、もっと多くの人を喜ばせられる」というヒントをたくさんいただけることもわかりました。
それに、誰かの困りごとは、ほかの誰かの困りごとだったりもします。
困りごとを解決することで、みんなにとってよい循環が生まれることも実感したのです。
であれば、新しく雇う人も、困りごとを抱えた人にしようと。
たとえば、女性の方は、子育てがあったり、親の介護があったり、男性に比べて働く場所や時間がかぎられてしまっています。
そのため、パートですら雇ってもらえないこともあります。
それに、もし子どもが風邪を引いたら、休まねばなりません。
だからこそ、そんな女性が活躍できる職場を作ろうと思ったのです。
幸い、インターネットが発達した現在では、どこにいてもパソコン1つで仕事をすることができます。
空いた隙間の時間を使って、子どもが寝たあとに仕事をすることも可能になりました。
そこで、僕の会社では、1人の女性を新たな条件で雇いました。
遠く離れた青森の女性なのですが、古くからの友人でもあり、僕の仕事を手伝ってもらうことにしたのです。
彼女には、インターネット上の楽天市場以外のショッピングモールに出店してもらい、1店舗をまかせました。
完全に勤怠自由です。
報酬は売上に対するパーセンテージの歩合制で、売上を上げれば上げるほど収入に直結します。
自分が稼ぎたいだけがんばることができる、という環境を作りました。
別の女性にも、新たな条件で働いてもらっています。
その女性は東京にいて親御さんの介護で、自宅にいつもいなければならないという環境でした。
彼女にも同じようにインターネットの1店舗をまかせています。
彼女はパソコンで画像を加工するのが得意なので、僕の会社の仕事の一部も1件単位で手伝ってもらっています。
自分が利益を出せるようになった今、自分以外の人たちにもしっかりと儲けを出してもらうことは僕の新しい仕事になりました。
困っている人が、自由に働ける環境を作り、楽しく仕事をしながら、やりがいを感じてもらう。
私利私欲でレクサスを買ったころと違い、なんだか、こんな僕でも少しは世の中の役に立っているのではないか、と感じる今日このごろです。
古屋悟司(ふるやさとし)楽天市場で人気の花屋「ゲキハナ」を運営。
1973年生まれ。
2004年、順調だった営業の仕事を辞め、たった1か月の研修ののち、花屋を開業。
いきなり閑古鳥が鳴くようになり、背水の陣でネット販売に着手。
売上はうなぎのぼりになったが、数年後、決算書を見るとずっと赤字だったことに愕然とする。
その後、会計を学んだことをきっかけに、倒産の危機を乗り越え、V字回復に成功。
以降、黒字を継続中。
現在は、「ゲキハナ」の運営に加えて、「黒字会計.jp」のサイト運営や管理会計ソフトの販売を通じて、小さな会社を中心に「黒字化のノウハウ」を紹介している。
また、企業や地方公共団体、大学での講義などでも、自らの失敗体験をもとにした「儲かる会計」を教えている。
案内人田中靖浩(たなかやすひろ)田中公認会計士事務所所長。
1963年三重県四日市市出身。
早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社を経て現職。
中小企業向け経営コンサルティング、経営・会計セミナー、講演、書籍の執筆、新聞・雑誌の連載などで活動中。
著書に『値決めの心理作戦儲かる一言損する一言』『良い値決め悪い値決め』『実学入門経営がみえる会計』(以上、日本経済新聞出版社)など多数ある。
この作品は株式会社日本実業出版社『「数字」が読めると本当に儲かるんですか?』(2017年5月20日発行)に基づいて制作されました。
数字オンチのための「儲かる会計」が肌感覚でわかる本「数字」が読めると本当に儲かるんですか?(電子書籍版)Ver12017年6月10日発行著者古屋悟司S.Furuya2017発行者吉田啓二発行所株式会社日本実業出版社東京都新宿区市谷本村町3-29〒162-0845http://www.njg.co.jp/制作協力株式会社eNEXTJapan無断転載・複製を禁じます。
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