千駄木の寿司屋由紀は安曇の指示通りに不要資産をリストアップしたものの、その数が多いのに唖然とした。
特に目立ったのは、使っていないミシンと裁断機だった。
なかでも一番大きな問題は北海道工場だった。
この工場は従業員に支払う給与さえも稼いでいないのだ。
赤字を垂れ流しにしてまで稼働を続けた理由は、故郷北海道に対する源蔵の思い入れだった。
しかし、継続させるわけにはいかないことは明らかだった。
福利厚生用に購入したゴルフ場や宿泊会員権もすべて処分リストに載せた。
1年以上動いていない材料や製品在庫もすべて処分対象にした。
これらを現金に換えれば、北海道工場の従業員に退職金を支払っても、かなりの額を借入金の返済に回せるはずだ。
リストラの効果が顕著に現れるに違いない。
文京区の下町にある老舗の寿司屋が、今日の打ち合わせ場所だ。
「我慢しないで食べちゃいます」と言って、由紀は寿司を次々と食べた。
安曇は熱燗を美味しそうに飲みながら、由紀を眺めていた。
どうも、由紀の様子が変だ。
「私は確かに経理の素人ですけど、あんな見え透いたことを言わなくてもいいのに」由紀の憤りは収まらない。
話はこうである。
経理部長の斉藤がやってきて、「今月は久しぶりに利益が出そうですが、支払資金が足りないので銀行借入をしたい」と言った。
そこで「利益が出たのなら、資金繰りは良くなるのではありませんか?」と斉藤に尋ねると、唐突に「社長、もっと会計を勉強しなさい」と、あきれた顔で言われたというのだ。
「斉藤は私を子供扱いしているのです」由紀は不愉快でたまらない。
「斉藤さんが言っていることも間違いではないね。
以前に少しだけ触れたが、利益と現金の有無とは別物なのだ」安曇は熱燗を美味しそうに飲みながら言った。
そして、いつもの突飛な質問が始まった。
「君は大トロの握りは儲かると思うかね?」1貫500円以上もするのだから儲からないはずはない、と由紀は答えた。
「結論から言うと儲からない。
一貫あたりの利益が多くても儲からないのだよ」由紀は何のことかさっぱり理解できない。
単価の高い大トロが売れれば、儲けは増えるはずだ。
にもかかわらず大トロは儲からない、というのである。
「作家の池波正太郎に言わせると、美味しいからと言って大トロばかり注文してはいけないそうだ。
大トロはその店のサービス品だし数も限られている。
本物の食通は寿司屋と他の客の事も考えて、控えめに注文するというのだ」由紀はますます混乱してきた。
「それは食通の話ではありませんか?」安曇は首を横に振った。
「いや会計理論的にも正しい。
ヒントを出そう。
コハダは儲かる。
しかし、大トロは儲からない。
この寿司屋全体を現金製造機と見なして、考えてみなさい」由紀は「儲かる」という言葉の意味を考えた。
普段使う「儲かる」と言う言葉の意味は、「現金が増える」ことで、会計でいう利益とはニュアンスが違う。
安曇教授も大トロよりもコハダを売った方が現金が増える、と言っているに違いない。
クロマグロの大トロは、仕入値が高く、しかも、いつも手にはいるとは限らない。
そこで、市場で気に入ったクロマグロが見つかれば、多めに仕入れることになる。
すべて売り切るまでに一カ月かかるとすると、最初に支払った現金がすべて回収されまで一カ月もかかるということだ。
ところが、コハダはそうではない。
仕入値は安い。
一貫あたりの売価も安いから客は気軽に注文する。
新鮮さが売り物だから一度に大量に仕入れることはない。
一日分仕入れてその日のうちに売り切るとすると、今日仕入れたコハダは店を閉める頃には全て現金に変わっていると言うことだ。
(在庫として留まっている時間が違うのだわ!)由紀は、いま考えたことを安曇に説明した。
「考えるポイントは、儲けと資金量だ。
確かに一貫あたりの利益は大トロの方が大きいから、コハダより儲かるように錯覚する。
しかし、資金量に着目するとコハダに軍配が上がる。
それぞれを購入した資金が、再び現金になるまでの時間が第一のポイントだ。
コハダは大トロよりずっと短い。
君が言うように一日で現金に変わる。
だから、コハダは少ない資金を繰り返し回転させる(使う)ことで、たくさんの現金を稼ぎ出せる。
しかし、大トロは売り切るまでに一カ月もかかるから、その間、資金が寝てしまう」安曇は、目の前に並べられたコハダと大トロの握りを美味しそうに頬張った。
「数字を使って説明しよう。
この寿司屋は、毎日コハダ100匹を5千円で仕入れて、その日のうちに全て売り尽くす。
一方、クロマグロの大トロは月一回、10キロ5万円で仕入れて25日間(1貫50g1日8貫25日=10kg)で売る、と仮定しよう。
最初に必要な資金は、コハダは5千円、クロマグロは5万円だ。
しかし、一カ月間で稼ぎ出す現金の大きさは全く異なる。
例えば、コハダを一貫100円(原価は50円)で売れば、1カ月先には最初の5千円の現金は12万5千円(1日の儲け5千円25日)に膨らむ。
大トロを1カ月かけて1貫500円(原価250円)で売るとした場合、増える現金は5万円(1日の儲け2千円25日)にすぎない!」由紀は耳を疑った。
しかし、計算すれば確かにそうなのである。
「この関係を滞留する延べの資金量から見ていこう。
コハダに使う資金5千円は1日で回収されるから、滞留資金量は12万5千円(5千円25日)だけだ。
ところが、大トロをすべて売り切るまでに、延べで62・5万円(5万円25日2)の資金が滞留してしまうことになる。
つまり、少ない資金を高回転で回すコハダの方が、経営上圧倒的に有利と言えるのだ」
由紀はハンナの経営を考えていた。
新作に備えて、半年前から大量に生地と付属品を購入して在庫にしている。
その延べ資金量は軽く十億円を超える。
これでは現金が足りなくなるはずだ。
(コハダのように現金の回転速度を速くすることだわ)由紀は、在庫を減らすことの意味がつかめた。
それは、少ない資金量(現金)で商売をすることなのだ!「大トロは儲からない、という常識をひっくり返したのが回転寿司だ」クロマグロの大トロであっても、仕入ルートが確保でき、客がどんどん食べてくれれば、回転速度は速まる。
1本100万円もするクロマグロを1日で売り切ることができたら、資金が滞留する期間はコハダと同じ1日だけだ。
多少安く売っても大トロの握りは儲かる商品に変わる。
これが、回転寿司が儲かるひみつだ、と安曇は言った。
スーパーの深夜営業が増えた理由「もうひとつ例を挙げよう。
最近、サラリーマンの多い住宅地で深夜営業のスーパーが増えてきたね。
なぜだろうか?」「コンビニとの競争ですか?」「それも理由のひとつだが、会計の視点で答えて欲しい。
ヒントを出そう。
住宅地は夜でも需要がある。
それから、商品は現金の仮の姿だ。
さあ考えてごらん」以前、由紀は母親と閉店直前のスーパーで、半額で生鮮食料品を買ったことを思い出した。
売れ残りが生じないように、閉店が近づくと値下げして売り切ろうとするのだ。
ところが、最近、スーパーが営業時間を延ばしてからは値下げ品が減った。
遅い時間に帰宅する人たちが正規の値段で買うからだ。
その結果値引き商品も、捨てる商品も減ったのだ。
安曇の言うように、商品は現金の仮の姿と考えると、商品を捨てるという意味は現金を捨てることにほかならない。
結論が出た。
「帰宅時間が遅いサラリーマンが多い地域では、深夜営業はキャッシュフローの増加につながるからです」由紀は自信を持って答えた。
なぜ在庫が増えるのか?「ところで君の会社だが」安曇は話題をハンナに戻した。
「経理の斉藤さんは、利益は出たが、それ以上に在庫が増えたから資金繰りが厳しくなった、と言いたかったのだろう」確かに、ハンナの製品在庫は増え続けている。
生地在庫もジッパーやボタンなどの付属品の在庫が多い。
これらは営業所や工場の倉庫であふれんばかりに置かれている。
利益が出ても、今のような経営を続けていたのでは、現金は慢性的に不足する。
その時、由紀に新たな疑問がわいてきた。
(なぜ、ハンナの在庫は知らぬ間に増えてしまうのだろう。
そして、なぜこの寿司屋の在庫は少ないのだろう)由紀は安曇に聞いてみた。
「ハンナの件は後で説明するとして、寿司屋について言えば余分な仕入をしないからだ」寿司屋は経験的に、売れるだけのネタを仕入れる。
だから、(大トロは例外として)寿司屋には長期在庫はない。
このことは、デザイナーをしていた由紀にはよく理解できた。
特に、若い女性の消費行動は敏感でつかみにくい。
自信作でも、全く売れずにバーゲン会場に直行する製品は珍しくない。
理由はこうだ。
展示会シーズンを迎えると、デザイナーたちは夜を徹して新製品をデザインする。
しかし、いくら頑張って世に送り出しても、なぜか売れない。
そこで、ひとつでもヒットさせたい気持ちが製品の種類を増やすのだ。
その結果、売れ残りの製品在庫は増え続ける。
どうやら資金繰りが苦しくなる理由は、この辺にありそうだ。
「君の会社は何種類の製品を取り扱っているのだね?」「ブランドは、子供、女学生、独身女性、独身男性、既婚女性、既婚男性、シニア女性、シニア男性の8種類です。
製品は1シーズンあたり1ブランドで約50種類ですから、全部で400種類くらいですね」「製品ごとのサイズ、色を考えると、品種は2000種類を超えそうだね」「そうですね」あまりに多い品種に由紀は唖然とした。
品種が多いことはわかってはいたけれど、改めて2000種類と言われると驚くばかりだった。
しかも、新製品は春夏、秋冬、初春と3回発表する。
つまり、毎年6000種類の新製品を世に送り出しているのである。
しかし、なぜこんなに多い製品数を問題にしてこなかったのだろう。
「私が言うのも変ですけど、なぜ増えてしまうのでしょうか?」恥ずかしそうに由紀が聞いた。
「君たちが顧客のニーズを絞り込めないからだ。
だから、ダメもとで品種を増やし、ブランドも増やしてきたのだ」顧客のニーズを絞り込めないから、製品種類が増加し、製品在庫が増え、資金繰りが悪化したのである。
「ブランドも品種も絞るべきですね」「その通り。
そうすれば在庫は減る」キャッシュフロー計算書「以前、会計は主観が入り込んでいる、という話をしたことがあるね。
つまり、バランスシートと損益計算書は『会社のオピニオン』ということだ。
ところが、この箴言には続きがある。
『しかし、キャッシュは現実』。
つまり現金はウソをつかない、という意味だ。
ところがここにも問題がある。
現金には色づけができない」由紀には、現金に色をつけるという意味が理解できなかった。
「こういうことだ。
仮にハンナの銀行口座に使えないほどの預金があるとしよう。
君は、このお金を何に使う?」「そうですね。
デザイン用の高性能コンピュータ、若手デザイナーの教育、積極的な広報活動、そしてパリやミラノに直営店を持つのもいいですね」由紀は思いを巡らせた。
「しかし、その預金のすべてが銀行からの借入だったら」「父と同じ間違いを犯すことになってしまいます」「そうだね。
ここで会社の現金(預金も含む)の中身を考えてみよう。
まず、商売で稼いだ現金だ。
他に土地を売って捻出した現金、銀行から借り入れた現金、増資によって調達した現金が含まれているかもしれない。
しかし、現金そのものには色がつけられない。
その出所がわからないと使い方を誤る危険がある。
そこで、現金の流れを可視化することが必要になる。
これがキャッシュフロー計算書だ」安曇は、由紀のノートに3つの蛇口を持つ水槽の絵を描いた。
そして、それぞれの蛇口に「投資用」「財務用」そして「株主用」と書いた。
「キャッシュフロー計算書の構造を説明しよう。
水槽に貯まっている水は、会社が1年間で作り出した現金だ。
これを営業キャッシュフロー(営業CF)という。
経営者の仕事はこの水槽の水をできる限り増やすことだ。
貯まった水の使い道は3通りある。
ひとつは現金製造機(固定資産)を買うための支出だ。
これを投資キャッシュフロー(投資CF)という。
そして、残りの2つが銀行借入金の返済と株主配当だ。
これらを財務キャッシュフロー(財務CF)という。
現金が余れば、翌月に繰り越され、不足すれば前月の現金を取り崩すことになる」
安曇は、ここで熱燗の徳利を逆さにして、最後の一滴を杯に注いだ。
「もし、この徳利のように水槽の水がなくなったらどうするか?(赤字の営業CF)。
預金があれば取り崩す。
銀行から借り入れる。
あるいは、固定資産を売却して、水槽の水が枯れないようにするだろう。
こうしたキャッシュフローの動きをまとめた表が、キャッシュフロー計算書だ。
この表には営業CF、投資CF、財務CF別に現金の収支が表現されている。
キャッシュフロー計算書を見るだけで、会社の実態を読み取ることができるのだ」由紀は水槽の絵を見ながら、頭の中を整理しようと努めた。
キャッシュフロー計算書を見れば、現金がどのような理由で増加し、あるいは減少したのかが一目でわかるようになる、と安曇は言う。
だが、それは会計の専門家だから見えるのであって、自分のような素人には使いこなせないのではないか、と由紀は思った。
「私にも使えますか?」「もちろんだ」安曇は太鼓判を押した。
それから、テーブルに置かれたノートに正方形を3つ描き、相互を矢印で結んだ。
「具体的に説明しよう。
このパターン1の図は、君がここ2カ月で実際に経験してきたことを表している。
君の会社はたびたび運転資金のショートを起こしただけでなく、多額の銀行借入で身動きできない状態だった。
つまり、ハンナの実力では現在の借入金は大きすぎて、とてもじゃないが元本を返済し、利息を支払うだけの体力はない。
そこで、銀行の支店長は君にリストラの決断を迫った。
君は現金を生まない固定資産を売却して()借入を返済した。
ところが、やっと利益が出たものの、在庫が増えたため運転資金がショートし、再び借り入れを起こした()」
ここまで聞いて、由紀は斉藤が言ったことの意味を初めて理解できた。
「次に、君のお父さんが何をしてきたか想像してみよう。
その現金の流れを表現したのがパターン2の図だ。
君のお父さんは工場を建て、最新の裁断設備やミシンを購入して、生産力をつけようと考えた。
しかし、会社には購入資金はない。
当時は、銀行借入で設備投資するのは当然だったから全額借入金(財務CF)でまかなった()。
ところが、予想に反して売上が伸びなかった。
品種が多いから在庫も増えて、営業CFが減ったため、銀行から資金を調達した()。
結果として借入金は膨れあがった」
由紀は、この時まで父親が何を考えて工場を拡張したのか想像がつかなかった。
こうして安曇の説明を聞いていると、父親は深い考えもなく設備投資をしたのではないか、と思えてきた。
安曇の話は続いた。
「次に、君のお父さんが目指したと思われる現金の流れがパターン3だ。
投資資金を借入金で調達しても()、会社の業績は向上し営業活動から十分な現金収入がもたらされて借入金の返済も利息の支払い()も何の問題もなくできるはずだった。
ところが、現実はそうではなかった」
由紀は自分が相続した負の遺産が、父親の判断ミスによるものであることを理解した。
「これから3カ月後の収支を予測してみよう。
それがパターン4だ。
営業CFは黒字になるだろう。
北海道工場が売れれば現金が入る。
しかし、どちらも銀行借入金の返済と利息に充てられる。
これでは銀行のために働いているようなものだ。
だからといって、この状態では新規投資をする余裕などはない。
投資ができなければ競争力は急激に落ち込んでしまう。
このジレンマをどう克服するかだ」
「どこかのタイミングで積極的に打って出なくてはならない、と言うことでしょうか?」由紀が真剣なまなざしで聞いた。
「その通り。
君の責任で会社の将来を決めるのだ。
君が目指すべき会社はパターン5だ。
現金は泉のように沸いてくる。
将来への投資も盤石だ。
しかも借金はゼロだから、余った現金は株主に還元できる。
大株主の君は配当金で好きなものが買える」
「ハンナはパターン5のような会社に生まれ変われますか?」「君自身に強い意思と実行力があれば可能だ」由紀がこれまで拭い去ることができなかった不安は、希望へと変わった。
こころの底から活力が沸いてくるのがわかった。
「自信はありません。
でも、挑戦します」この辺りは住宅が多いせいか、まだ8時だというのに客は2人だけになってしまった。
「次回は母が手料理をごちそうすると申しておりました」「待ち遠しいね」
安曇は笑みを浮かべて由紀に熱燗をすすめた。
解説営業循環過程とキャッシュフローの関係営業循環過程営業循環過程とは現金製造機の中で、現金を使って現金を製造する過程のことです。
最初に、現金は材料に形を変え、さまざまなプロセスを経て価値を増やし、製品へと変化します。
完成した製品は顧客に売却され売掛金になり、代金が銀行口座に振り込まれて再び現金となってサイクルは一巡します。
このように、現金は材料仕掛品(製造途中)製品売掛金の順に形を変えて、より大きな現金として再び会社に戻ってきます。
この一連のプロセスを営業循環過程といい、現金製造機の内側に相当します。
これは会計(より本質的にはビジネス)を理解するために大変重要な概念です。
利益とキャッシュフロー営業循環を繰り返して増加した現金を「営業キャッシュフロー」と言います。
本文のコハダのように、効率的な事業運営には少ない資金を高速で回転させて営業キャッシュフローを大きく増やすことが大切です。
利益は売上(売掛金)と費用(製品原価)との差額です。
通常、利益は製品を得意先に引き渡したときに計上します。
しかし売掛金の回収はその後ですから、利益の計上と現金が増加するタイミングは異なります。
次に、利益と営業CFが大きく異なるケースを考えてみましょう。
利益が出たため、売上代金をすべて使って、もう一度同じ製品を製造したところ、今度は全く売れないまま決算を迎えたとします。
手許に現金はありません。
しかし、決算上は黒字です。
同様に、製品がすべて売れても売掛金が回収されない場合も、結果は同じです。
このように、黒字(利益)であることと、手元に現金があることは、同義ではありません。
キャッシュフロー計算書の構造一定期間における現金(現金及び預金などの現金同等物)の増減と残高を表した計算書がキャッシュフロー計算書で、次の3つの区分から構成されています。
営業キャッシュフロー(営業CF)この営業循環過程で増加した現金を「営業CF」と言います。
これは当期利益(つまり売上|費用)に減価償却費を足し、運転資本(在庫売掛金買掛金)の増加額を差し引いた値です。
ここで利益に減価償却費を足す理由は、減価償却費は現金支出を伴わない費用であるからです。
つまり、利益減価償却費(これをキャッシュ利益と言います)以上に運転資本が増えると営業CFはマイナスになり、「勘定合って銭足らず」の状態になります。
営業CFは、本業での現金の増減を表しており、健全な会社であればここはプラスです。
もしも、営業CFの赤字が何年も続き、改善の兆しが見えない場合、会社は重大な危機を迎えることになります。
投資キャッシュフロー(投資CF)固定資産(現金製造機)の購入や売却にかかわる現金の収支を「投資CF」と言います。
具体的には、機械設備、建物、土地、子会社株式の取得と売却、投資目的で保有する株式の売買、子会社などに対する資金の貸付や返済などです。
健全な会社は積極的に投資活動を行っていると考えられますので、この値はマイナスになります。
不景気に喘いだ1990年代後半の多くの日本企業のように、投資を控えると営業CFは減少します。
会社が存続するには、少なくとも現状を維持するだけの投資支出は必要です。
営業CFから投資CFを差し引いた値を「フリーキャッシュフロー(FCF)」と言います。
キャッシュフロー経営では、原則としてFCFは黒字であることを要求しますが、これは「経営者は営業CFを最大にして、その範囲内で有効な投資をすべきである」という意味です。
財務キャッシュフロー(財務CF)銀行借入、社債の発行、株式の発行(増資)、配当金の支払、自社株の購入等、ビジネスの基盤を支えるための現金収支を「財務CF」と言います。
キャッシュフロー経営の立場から言えば、投資は営業CFの範囲にとどめるべきです。
しかし、巨額な設備投資や子会社買収を行う場合にはそれだけでは足りませんから、銀行借入や増資で調達することになります。
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