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第3章 社長は「B/S」のココだけ見ていればいい

なぜ、社長はB/Sを見ないのか中小企業の社長の8割は自社の決算書をまともに見ていません。

では、残りの2割は決算書をきちんと読んでいるのか。

とんでもない。

法律で作成が義務づけられている決算書は「P/L(損益計算書)」と「B/S(貸借対照表)」の2種類ですが、「自分は決算書を読んでいる」と答える社長でも、よくよく聞いてみると、目を通しているのはP/Lだけ。

B/Sを読んでいる社長は皆無に等しい。

P/Lを読むだけでもまだマシじゃないか、と考えている社長は危険です。

社長が優先して読むべきはB/Sであって、P/Lではない。

この優先順位を間違え、P/Lだけ読んでいる社長は、むしろ会社を危うくする。

だから、いますぐ改めなくてはいけません。

その理由の前に、P/LとB/Sについて最低限知っておくべきことを紹介しましょう。

P/Lは、ある期間に会社がいくらお金を使って、いくらの収入があり、差し引きでいくら儲けたのか(損をしたのか)を計算した決算書です。

もっとシンプルに言えば、黒字か赤字か、その額はいくらかを明らかにする決算書と考えてもらっていい。

損益(profitandloss)を計算するから、略して「P/L」です。

一方のB/Sは、ある時点での会社の資産の運用状態を明らかにする決算書です。

資産のうち現金がいくら、設備投資して機械に使われているのがいくらといった現在の状態がわかります。

これらの資産は、空から勝手に降ってくるわけではありません。

誰かから借りるか(負債)、事業その他によって自分で生み出すこと(純資産)によってつくられます。

左側の「資産」の額と、右側の「負債」と「純資産」の合計額はバランスして同額になるので、バランスシート(Balancesheet)、略して「B/S」と言います。

もしこのバランスが崩れて、「負債」が「資産」を上回れば債務超過。

会社はいわゆる倒産です(→図表3、図表4〈数字は架空の一例〉)。

さて、どうして社長はB/Sを見るべきか。

ココでおさらいです。

会社が倒産するのは、どんなときでしたか。

会社が赤字になったとき?違いましたね。

収支が赤字でも、支払いに充てるキャッシュがあれば会社はつぶれません。

だから、黒字か赤字かを表すP/Lを優先して見る必要はない。

会社が倒産するのは、キャッシュが底を突いたときです。

キャッシュがあるかどうかは、資産の現在の状態を示しているB/Sを見ればわかります。

キャッシュは、B/Sの左側「資産の部」の「流動資産」のトップにある「現金預金」という勘定科目にあります。

この数字に厚みがあれば会社は倒産しません。

また、そのほかの資産も含めて流動性が高いほど倒産しにくい。

そのことをチェックするために社長はB/Sを見るべきです。

B/Sを知っているだけで、見える景色が180度違うところが、決算書を見ていると自負する社長でも、実際はP/Lしか見ていません。

優先度は、むしろ逆です。

P/Lを見なくてもすぐに会社が倒産することはありませんが、B/Sを見ていないと会社のピンチにも気づけない。

極論すれば、社長はB/Sだけ見ていればいいのです。

多くの社長が優先順位を間違えるのは、トキメキに差があるからでしょう。

P/Lを見ると、「売上」「営業利益」など、心躍る勘定科目が並んでいます。

これらの勘定科目は、社長や社員が頑張ると額が増えていく。

みんなの頑張りが直結して、頑張っている社長は見るのが楽しい。

一方、B/Sはどうか。

「売掛金」「買掛金」「利益剰余金」など、耳慣れない勘定科目が並んでいます。

意味がよくわからないものを見ても、人の心はワクワクしません。

また、B/Sは現在の状態を示す決算書。

数字を見て、「今期はよく頑張った」と充実感を味わえるわけでもありません。

社長がB/Sに興味を持てないのも、ある意味であたりまえです。

ただ、社長はその場その場の気分で経営をしてはいけません。

トキメこうが、トキメかなかろうが、会社を守るために見るべきものは見なくてはいけない。

まずは覚悟を決める。

といっても、身構える必要はありません。

難しそうに見えますが、ポイントさえ押さえれば、誰でも理解できるようになります。

また、B/Sがわかってくると、社長の仕事の醍醐味はB/Sをつくることだとわかってきます。

B/Sを知っている社長と知らない社長では、見える景色が180度違う。

おもしろい景色を見たければ、何はさておきB/Sです。

勘定科目を知る第一歩は「転記」からB/Sには聞いたことのない勘定科目が並んでいて、見ただけで頭が痛くなる――。

じつは経営サポート会員の社長の多くも、その状態からスタートします。

しかし、徐々にB/Sに詳しくなり、いまや先生役になってほかの社長に教えている社長も少なくありません。

勘定科目を見るだけで頭痛がする社長に、第一歩として何からやってもらうのか。

転記です。

自社のB/Sのフォーマットに直筆で書き写してもらう。

書き写すくらい朝飯前だと思う社長は甘い。

多くの社長は勘定科目がわかっていません。

だから書き写すときに不安になって、経理に電話をする。

「ココにある『貸付金』って何?俺、こんなに借金してたっけ?えっ、俺が借りてるんじゃないの?」B/Sを知らない社長はわからないことが続出し、書き写すだけでもこのような調子で時間がかかります。

もちろん、1回転記しただけで完璧に覚えることはできません。

しかし毎月1回やれば、勘定科目が示す意味がおおよそつかめてくる(主要な勘定科目のポイントについては、この章の後半で解説します)。

この段階では、勘定科目のだいたいの数字をつかめれば十分です。

大切なのは、自社の生きた数字を使って転記することです。

会計の解説書などに載っているモデルケースの数字は単純化されていて、一見、入門編にぴったりです。

しかし、モデルケースの数字は所詮、他人事。

リアルでない数字を使っても頭に入ってきません。

私も若かりしころ、会計の勉強をしようと思って解説書を買った。

しかし、本を開いて5分で投げ出した。

それが普通です。

自社の数字を使えば、自社の経理に直接聞けるのもメリットです。

解説書には、「貸付金は、所定の期日に返済してもらう約束で貸した資金」と書いてあります。

これもそんなに難しくありません。

ただ、経理からこの「貸付金」は、「従業員の〇〇さんがマイホームを買うとき、頼まれて頭金300万円を貸したじゃないですか。

あのお金ですよ!」と説明してもらったほうがストンと入ってくる。

解説書は抽象的ですが、自社の経理は具体的です。

先生としては自社の経理のほうが優秀です。

共信冷熱株式会社(山梨県、業務用空調設備)の岸本務社長は勉強熱心で、経営サポート会員になる前から決算書を読んで勉強していました。

ただ、「いずれ後継者に」と考えている息子は数字がわからない。

息子に決算書を教えるために始めたのがB/Sの転記でした。

「わが社のB/Sと武蔵野さんが用意してくれたフォーマットでは、勘定科目が異なります。

B/Sを転記するとき、息子はそこでつまずいた。

そのまま丸写しはできないので、息子は経理を任せている会計士さんと相談して、自社のB/Sの勘定科目を整理し直した。

会計士とやりとりするうちに、勘定科目の意味を少しずつ理解できたようです」(岸本社長)自分で手を動かせば、自分が書いている内容が否が応でも気になります。

それがB/Sを理解する第一歩です。

「資産は上へ、負債は下へ」が社長の仕事勘定科目のおおよその意味がつかめたら、次はそれらがどのような順番で並んでいるのかを理解してください。

左側の「資産の部」は、3つのブロックに分かれています。

上から「流動資産」「固定資産」「繰延資産」です。

じつはこの順番には規則性があり、各ブロックのなかも同じ規則性で並んでいます。

流動資産のブロックは、「現金預金」「受取手形」「売掛金」……という順番です。

これらはどのような規則で並んでいるのか。

流動性の高さです。

つまり、現金化しやすい順番に上から並んでいます。

工場を建てるために取得した土地は、資産価値が高くても、すぐに売却できない。

資産の部で「土地」は下のほうです。

一方、「売掛金」は、業種によるものの、だいたい1〜2か月以内に回収して現金化できる。

だから「資産の部」の上のほうにあります。

会社をつぶさないために、社長はキャッシュをチェックすべきだと言いました。

まずは「現金預金」が最も重要ですが、その他の資産も流動性が高いに越したことはない。

万が一のときキャッシュにしやすいし、キャッシュにしやすい資産をたくさん持っているほうが銀行も安心してお金を貸してくれます。

資産の部の上のほうほど数字が大きくなり、逆に下に行くほど数字が小さくなるのが理想のB/Sです(→図表5)。

一方、右側の「負債の部」と「純資産の部」はどうでしょうか。

「負債の部」にも規則性があります。

資金調達のしやすさです。

資金調達するには信用力が必要ですが、信用力の低い会社でも、上のほうにある「支払手形」や「短期借入金」から比較的簡単に資金をつくることができます。

逆に下のほうにある「社債」や「長期借入金」を多くするのは、信用力の低い会社では無理です。

では、「負債の部」は、上と下、どちらの数字が大きいほうがいいのか。

銀行の立場になればわかります。

銀行は信用力の高い会社にお金を貸します。

銀行がお金を貸し続けてくれれば会社は倒産しない。

だから、「負債の部」は下に行くほど数字が大きくなるのが理想です。

このことがわかれば、次に社長がやるべきことも見えてきます。

「資産の部」は上へ、「負債の部」と「純資産の部」は下へ——。

このようにB/Sの数字を意図的に移して、ちょっとやそっとじゃ倒産しない強い会社をつくります。

「資産の部」なら、固定資産より流動資産を増やす。

同じ流動資産でも、売掛金を現金に移すために回収を早めるといった施策が考えられます。

逆に「負債の部」なら、支払手形をやめて買掛金にしてもらう、短期借入金を増やすなら長期借入金を増やすといった施策が必要です。

社長の仕事の醍醐味は、まさにココにあります。

P/Lの数字は、社長を含め会社に関わる全員が一丸となってつくった結果です。

未来に向けて計画することはできても、過去の結果は変えられません。

しかし、B/Sは未来の数字で、社長ひとりの意思でどのようにも変えられます。

その分、責任も重大ですが、やりがいもあります。

B/Sは〝異常値〟だけチェックすればいい「資産の部」は上へ、「負債の部」は下へと数字を移していくことが社長の仕事です。

ただ、やみくもに数字を移せばいいわけではない。

会社がつぶれにくいB/Sをつくるには、計画が必要です。

B/Sの計画は、長期事業計画に合わせてつくります。

長期事業計画のつくり方は後述しますが、B/Sの計画は、P/Lの計画が決まればほぼ自動的に決まる。

「売上を1年で10%伸ばす」と決めれば、利益や税金の額も決まり、「いまからいくら現金を増やさなければ危ないのか」「増やすために銀行からいくら借りる必要があるのか」「売掛金や買掛金はいくらが適正なのか」といった具体的な目標が計算できます。

計算は前述した「資金運用計画策定支援システム」のソフトがあれば簡単にやってくれますが、まずは、社長自身がいちいち電卓をたたいて計算すると、頭にスーッと入ってきます。

社長がやるべきは、目標に近づいているかどうかのチェックです。

チェックの方法はアナログでいい。

紙を用意して、まず前期の決算時のB/Sを左端に書き写します。

これが今期の期首の現状の数字です。

そして同じ紙の右端に、期末の目標数字を書き写す。

これは単純に期首の数字に成長率(前年比115%成長)を掛けた数字でも最初はかまいません。

記入したら、その月の数字が左右の数字の間に収まっているかどうかを確認します。

図表6を見てください。

「売掛金」の期首が3億3190万円、期末の目標が3億9610万円としたら、書かれた数字が間の3億3330万円ならOKです。

とくに何もせず、翌月にチェックするまで放置しておけばいい。

ただ、期首と期末の間に収まらなければ異常値です。

売掛金が期首の実績を下回っていたり、期末の目標を超えて3億9990万円になっていたりしたら、どこかに問題があって計画どおりに進んでいない証拠。

異常値が出てきた原因を突き止めて、すみやかに対策を施す必要があります。

目標を超えているならいいじゃないか、と考えるのは間違いです。

売掛金が目標を超えて膨らんでいたとしましょう。

これは手放しに喜んでいいことでしょうか。

売掛金の増加する原因は2つです。

ひとつは、売上の増加。

もうひとつは回収の遅れです。

売上が増えた結果、売掛金も増えたなら、プラスの材料です。

しかし、売上は伸びていないのに回収が進まずに売掛金が増えたなら、キャッシュフローの観点でマイナスになる。

もし後者なら、喜ぶどころか危険信号です。

このようにB/Sの数字には二面性があって、「とにかく増えればいい/減らせばいい」と単純に決めつけることができません。

だから目標数字を超えていれば、「目標を早く達成できた」ではなく、「どこかに異常がある」と判断すべき。

異常値をできるだけ早く察知して手を打つことが、会社を守ることにつながります(→図表6)。

「長期借入金」を全体の8割以上にB/Sの主要な勘定科目について、社長が最低限知っておくべきポイントがあります。

まず借入金です。

キャッシュをつくるためには銀行からの借入れが欠かせません。

借入金は短期借入金と長期借入金の2種類があり、その違いを理解したうえで借入れしたほうがいい。

借入金が短期か長期かは、返済期日によって決まります。

借りてから1年以内に返すものは短期借入金、返済期日がそれより先なら長期借入金です。

自由に使えるようになるのが1年以内なら「流動」、それより先なら「固定」と言います。

さて、短期と長期、借りるならどちらが正しいか。

銀行は、初めて融資する会社には短期で貸します。

短期で貸すのは、取引のない会社を信用していないからです。

短期なら回収しやすいし、回収後は「やっぱり危ない会社だから、もう貸さないようにしよう」とサヨナラできる。

銀行からたくさん借りられたとしても、それが短期なら自慢するのは間違い。

長期で借りられると、銀行が信用するいい会社です。

ただし、建設業は例外で官庁の評価が低くなるから、長期借入金でお金を借りないようにします。

建設機械は必要なときにリースで借りれば、長期で借りなくても大丈夫です。

期末に短期借入金を全額返して、翌月1日に必要な資金を借ります。

短期と長期では、短期のほうが金利は低めに設定されます。

だから短期で借りたほうがお得と考える社長も多いでしょう。

しかし、思い出してください。

借金とは〝金利で時間を買う〟ことです。

金利は安くても、すぐ返さなくてはいけないのであれば、安物買いの銭失い。

多少高い金利を払っても、長い期間借りることが正しい。

借入金のバランスは、長短比率80%以上が理想です。

長短比率は、「長期借入金÷借入総額」で計算します。

つまり長期借入金が全体の8割以上になるようにB/Sをつくります。

この水準を下回るようだと、自分の会社は銀行にまだ信用されていないと思うべきです(信用力を高める方法は第2章参照)。

飲食店の倒産は「買掛金」の存在にあり次は「売掛金」と「買掛金」です。

掛けとは、ツケのこと。

売掛金は、すでに商品を売っているものの、代金があと払いでまだ回収していないお金です。

売掛金の回収が遅れるほどお金の流れが悪くなるため、売掛金は原則少ないほうがいい。

ただ、売掛金の増減には二面性があります。

売上全体が減ったときにも売掛金は減少するので、どのような理由で減少したのかをしっかり分析する必要があります。

世の中には売掛金がゼロの商売がたくさんあります。

飲食店は現金かクレジットカード支払いがメインで売掛金はほとんど発生せず、キャッシュフローを考えると最強です。

でも、飲食店の80%は開業して5年以内に倒産します。

売掛金ゼロで現金があるのに、いったいなぜでしょうか。

現金に目を奪われて、買掛金の存在を忘れるからです。

買掛金は、売掛金と逆で、すでに商品を仕入れているのに、まだ代金を払っていないお金です。

飲食店は、原材料の多くを業者から掛けで仕入れています。

買掛金がある場合、売上から仕入と経費を差し引いて少ない利益が出ます。

ところが、開業したばかりの飲食店は個人経営に近く、社長は商品が売れて現金が入ってきた時点で利益だと勘違いしてしまう。

目の前に利益があると思うと、つい使ってしまう社長は少なくありません。

その後、仕入先から請求書が届いて、「しまった。

まだ支払いが残っているのに、飲みに行くんじゃなかった」と初めて気づく。

売掛金は発生しないが買掛金が発生する商売をやっている社長は要注意です。

さて、買掛金は売掛金と逆で、支払いサイト(支払日までの期間)が長いほど現金が手元に残り、キャッシュフローがカイゼンします。

仕入金額が同じなのに買掛金が増えているなら、キャッシュフロー上は大丈夫ということになります。

しかし、そこだけにとらわれると商売はうまくいかなくなる。

仕入先の立場で考えてください。

現金ですぐ払ってくれるお客様と、支払いが2か月後になるお客様、どちらに品質のいい商品を売りますか?断然、現金払いのお客様です。

キャッシュフローをよくする考えはあくまでも自社都合で、取引先にとってはむしろ迷惑以外のなにものでもない。

その結果、品質の悪いモノをつかまされたり、品薄のときに商品を回してもらえなくなったり、事業がダメージを受けます。

商売を継続的に回していくには、取引先の利益にまで気を配る必要があります。

そう考えると、支払いサイトが長いのはダメ。

買掛金はできるだけ減らして、そのほかのところ(B/Sの「負債の部」の下のほう)で資金調達してキャッシュを蓄えることが正解です。

なぜ「支払手形」はゼロが正しいのか?B/Sの「負債の部」は、できるだけ上から下に移す。

では、「負債の部」の一番上にある勘定科目は何か。

「流動負債」のなかの「支払手形」です。

支払手形は、減らすどころかゼロが正しい。

そうでなければ、常に倒産の危険がつきまといます。

支払手形は、厳密に言うと買掛金の一種です。

買掛金は口約束で、もし約束した期日に支払いができなくても「待った」が利きます。

一方、支払手形は口約束ではなく、期日に現金化できる手形を渡します。

取引先は手形を銀行に持ち込むと、期日に手形を振り出した会社(支払いをする会社)の口座からお金が引き出され、現金を受け取れます。

このとき、口座の残高が足りなければ、手形は不渡りです。

全金融機関に通知されて信用力がガタ落ちし、事実上の倒産に追い込まれます。

「あと数日待ってくれればお金を口座に入金できたのに」と言ってもあとの祭り。

「待った」は利きません。

期日に決済できなければ、その時点でアウトです。

実際、こんなケースがありました。

A社は、取引先のB社に12月31日が期日の支払手形を振り出しました。

A社は黒字経営だったものの資金繰りが厳しく、旧知の仲であるB社社長に「ジャンプ」(手形の期日を延長すること)を依頼。

B社社長は快諾して、A社はピンチを脱しました。

ところがB社社長はそのことを経理担当者に伝え忘れ、手形を銀行に持ち込んでしまった。

A社の口座は残高が足りなかったので、銀行はA社に「このままでは不渡りになる」と警告しようと連絡。

しかし、会社は年末年始の休業中で、社長も海外旅行で不在。

年が明けてA社社長が出勤したときには、時すでに遅し。

A社は不渡りを出して倒産しました。

支払手形を振り出していると、ちょっとしたミスや行き違いで不渡りになり、会社をつぶしてしまう恐れがある。

だから支払手形はゼロにすることが正しい。

「支払手形」をなくす方法問題は、どうやって支払手形をゼロにするかです。

支払手形をやめ、現金払いにするには、支払いサイトを短くすることが一般的です。

90日の支払手形と、90日後の現金払いでは、受け取る側に大した違いはありません。

むしろ期日前にまわし手形(受け取った手形に裏書きして、自社の仕入先などに譲渡する)として利用できるので、現金より手形のほうがいいという会社も多い。

現金払いを認めてもらうには、受け取る側に何らかのメリットを提示する必要があります。

そのひとつが、支払いサイトの短縮です。

「締め日から30日後に現金で払います」と支払いサイトを短くすれば、受け取る側は売掛金を早く回収できるメリットが生まれ、現金払いを認めやすくなります。

現金ですんなり払えるならいいですが、もともと現金が回らないから支払手形を振り出しているので、支払手形をやめるには、借入れを増やすなどしてキャッシュをつくる必要があります。

名古屋眼鏡株式会社(愛知県、メガネ等の商社)の小林成年社長や、株式会社高井製作所(石川県、豆腐製造機器)の高井東一郎社長も、借入れを増やして計画的に支払手形をなくし、いまや両社とも支払手形はゼロです。

借入れをしたら金利負担は増えるからイヤな社長もいるでしょう。

ただ、これも割引率次第です。

通常、支払いサイトを短くするときは、期間に応じて支払割引してもらいます。

借金を早く返せば利息分が減るのと同じで、早く支払う分、額面から割り引いて安くしてもらうわけです。

支払手形(期間3か月)の割引率が2%(サイト3か月の手形とすると、実質年利率は8%)、借入金の金利が1%なら、割引率のほうが圧倒的に高い。

むしろ銀行から借り入れて金利を負担してでも、現金で払ったほうが得です。

支払手形の割引率の相場は2%程度ですが、相場にこだわる必要はありません。

割引率を1・5%(年率6%)にしてあげれば、受取側も得をする。

0・5%割引を減らしても、まだ借入れの金利より高いので、こちらも損はしない。

どちらにとってもウィン・ウィンです。

支払手形をゼロにできたら、当座預金口座をなくしてもいい。

当座預金口座は決済用の口座で、手形の振出に必要です。

当座預金口座がなければ支払手形を振り出せません。

いったんゼロにしても、当座預金口座があると、苦しいときにまた支払手形に頼りかねない。

そうならないように退路を断ち、厳しい経営をする。

武蔵野は、25年前に当座預金口座をすべて閉め、当座預金についていた銀行保証をすべて外しました。

その前から支払手形はゼロにしていましたが、当座預金口座を閉めてからは手形を振り出したくても振り出せなくなった。

おかげで甘えることなく経営ができています。

「受取手形」もゼロが正解では、B/Sの左側「資産の部」にある「受取手形」はどのように考えればいいでしょうか。

これもできたらゼロがいい。

手形で受け取ると、振出先が金策に行きづまって不渡りになる恐れがある。

以前、「わが社が信用できないのか」と手形での支払いを迫ってきた社長がいましたが、「お客様は信用しても、支払手形は信用しない」が私の持論。

丁寧にお断りして、取引を停止しました。

その会社は数年後に倒産した。

支払手形を信用しなくて正解でした。

何らかの事情があって手形を受け取らざるを得ないなら、期日まで何もしないでじっと持っておくべきです。

期日前でも、手形を銀行に持っていけば割り引いたうえで現金化してくれます。

ただ、割引には担保が必要です。

また、割引後に手形を振り出した会社が倒産すると、割り引いてもらった側が手形を買い戻さなくてはいけません。

要するに、割り引いたところで不渡りのリスクは自社が被る。

期日まで待っていれば、回収は銀行がやってくれます。

不渡りになるリスクはありますが、割り引いていないから買い戻す必要がありません。

在庫管理のパワーで「日本経営品質賞」の「経営革新奨励賞」受賞「在庫」は、「資産の部」のなかでも要注意の勘定科目です。

B/Sに並ぶ勘定科目は、基本的に経理の帳簿にすべて記載されています。

例外は現金と在庫です。

現金は、毎日必ず手持ちの額を調べるので正確な数字を把握できます。

しかし、在庫は月に1回、棚卸するまでわからない。

つまり、資産高を確定させるための最後のピースが「在庫」です。

そこで重要になってくるのが棚卸です。

棚卸がいいかげんだと、資産高にズレが生じてB/Sが不正確になる。

棚卸を帳簿棚卸(入庫や出庫の記録から在庫数を算出する)ですませている会社もありますが、基本は現物で実地棚卸をします。

在庫には紛失や盗難、破損がつきものですから、現場で実数を調べないといけません。

実地棚卸は手間や時間がかかって面倒ですが、それは整理整頓ができていないからです。

倉庫内が整理整頓され、あるべきものがあるべきところに置いてあれば、棚卸にそれほど時間はかかりません。

武蔵野のダスキン事業は多種多様な300品ほどの商品を扱います。

棚卸は、以前は5時間もかかっていましたが、いまはiPadを導入して1時間で終わるので、ダスキンの各代理店がびっくりしています。

在庫は少なければ少ないほうがいい。

商品が売れていると、倉庫に置かれずに店頭に並べられ、すぐに顧客の手に渡ります。

在庫が少なければ儲かっている証拠です。

対策が必要なのは、在庫が多いときです。

在庫が多くなる原因は3つです。

ひとつ目は、商品が欠品すると販売機会をロスするからです。

現場はとにかく売上を伸ばしたいので、最終的に余ってもいいから在庫を積みたがる。

しかし、在庫を積むことは、倉庫にお金を積むことにほかなりません。

現場はそのことがわかっていないから、「積めるだけ積んで大丈夫」と考える。

これを変えるには、社長が介入して在庫を適正な量にコントロールするしかない。

飯田工業薬品株式会社(静岡県、化学品商社)の飯田悦郎社長は、毎朝、朝礼が終わると倉庫に行って自らチェックをします。

同社は、2016年度の「日本経営品質賞」で「経営革新奨励賞」を受賞した。

在庫チェックを欠かさなかった飯田社長の努力が組織内での対話や協働に活かされました。

在庫が膨らむ2つ目の理由は、〝仲よし負け〟です。

在庫といっても、製造業の場合は「原料在庫」と「製品在庫」があります。

このうち原料在庫が増えたら、調達担当者が仕入先に押し込まれて大量に買わされている。

仕入先と仲がよすぎて客観的な判断ができなくなるから、人を入れ替えるべきです。

在庫は「資産」ではなく〝死産〟一方、製品在庫が膨らんでいるときは、そもそも売れない商品をつくっている可能性が高い。

これが3つ目の理由です。

どんなにいい製品でも、売れないものはダメな製品です。

製造部門はそれがわかっていないから、「売れないのは営業のせい」とつくり続けてしまう。

これではますます倉庫に〝罪庫〟が積み上がるだけです。

売れないとわかったら、つくるのをやめる。

流通業は仕入れるのをやめる。

その決断が大事です。

積み上がった在庫は、処分しないといつまでも在庫のままで、維持管理費用がかかります。

そのまま倉庫に眠らせておくメリットは何もないので、安売りしてでも売り切ります。

勘定科目の「在庫」が売上の伸び以上に膨らんだら、これら3つのどれか、もしくは複数が原因になっています。

至急、原因を特定して対策を打ちましょう。

在庫は、B/Sで「資産」にカウントされるので、在庫が増えることに悪いイメージを抱いていない社長もいます。

しかし、在庫は「資産」ではなく〝死産〟。

倉庫に置いてあるだけコストがかかる〝金食い虫〟です。

帳簿を見ているだけでは、そのことを実感できないかもしれません。

しかし、倉庫に行ってホコリをかぶっている原料や製品を見れば否が応でも気づきます。

そのためにも社長は自ら倉庫に足を運ぶべきです。

社長が無知でも何とかなる?「実践経営塾」の経営計画実習セミナーにきていた、株式会社パルコホーム宮城(宮城県、不動産業)の菊池靖社長は、銀行格付が4(スコア50以上・リスクがあるが良好水準)から3(スコア65以上・リスク些少)になったのに怒っていました。

無知だったからです。

会社のレベルが高くなっているのに、先輩の社長たちはこれを聞いて唖然としていました。

経営サポート企業の社長のなかには、入会当初、銀行格付が最も悪い「10」(事故先・履行のメド全くなし)が何十人といましたが、配点の点数が「3点(129点中)」というめったにお目にかかれない会社が過去「3社」だけありました。

いまから思うと、どうしたら3点になるのか不思議です。

A社は、銀行格付が「3」になったから、私が本を書くたびに実名で書いていいか、と聞いても毎回「NO」です。

B社は、500万円の支払手形を30枚も出していた(エー?びっくり)。

C社は恐れ多くて書けません。

しかし、配点点数が3点だった3社とも勉強して、いまは普通の会社になっています。

 

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