儲けのセンス1損益分岐点のコントロールケース「カフェの値引きとトッピング無料、どちらが効果的なのか?」まずは「長期的な利益の増やし方=LTV:ライフ・タイム・バリュー」の視点を学ぶためのケーススタディーです。
とあるカフェチェーンで2つの施策を検討していました。
案1300円のコーヒーを50円値引きして250円で販売する。
案2300円のコーヒーに50円のトッピングを無料サービスして300円で販売する。
施策の目的は、長期的に利益を増やすことです。
案1の「値引き」、案2の「トッピング無料サービス」のうち、どちらが効果的なのかを数字で判断してみましょう。
複数の案から最適な施策を選ぶ。
このような時には、前章で紹介した「決定分析」が役立ちます。
今回は選択肢が2つと少ないので、簡易的な方法で比較してみることにします。
案1は「値引き」施策、そして案2は「追加サービス」施策と分類できます。
どちらの案を選べば良いのかあるいは、みなさんならどちらの方法を選ぶのか、というのがお題です。
もしかしたら、直観で決めたくなるかもしれません。
しかし、それをぐっとこらえて、四則演算(+・-・×・÷)を活用して、少し整理してみましょう。
まず、案1と案2では、何が同じで、何が違うのか?そこから検討していきます。
まず「同じ」なのは、案1も案2も正価から50円を値引きする施策だということです。
案1では300円のコーヒーから50円を値引きして250円で販売します。
案2では300円のコーヒーの値段は変えずに50円のトッピングを無料サービスします。
これは、説明の仕方を変えると正価{300円(コーヒー代)+50円(トッピング代)}−値引き50円=販売価格300円ということです。
案1も案2も正価から50円値引きしているのが分かります。
一方で「違う」のは、顧客当たりの売上です。
案1では250円の売上になり、案2では300円の売上になります。
簡単に案1、案2の「同じ」と「違い」を確認しました。
ここから四則演算を活用して、案1と案2を比較してみましょう。
比較するポイントは、「売上」「値引き率」「利益率」「今後の顧客拡大の可能性」の4つです。
まずは「売上」の観点からの比較です。
案1と案2を単純に比較しても、どちらの案が顧客の支持を得て、総売上が上がるのか分かりません。
そこで、値引きをしない場合と同じ売上額を上げるには、どれくらい顧客数を増やさないといけないのかを計算してみます。
案1では300円÷250円=120%の顧客数が必要。
つまり+20%の顧客増が必要です。
案2では350円÷300円≒116・7%の顧客数が必要。
つまり+16・7%の顧客増が必要です。
ということは、今回の値引き施策を実施すると、案1では20%顧客増加できて売上が同額になります。
この「20%」という数字を具体的に想像してみましょう。
今まで300円では少し高いと思っていた顧客が「250円なら買ってみよう」と考えるかどうかです。
そのように考える顧客が20%増加すれば売上が同額になるのです。
同様に案2は、トッピングを無料サービスすることで、顧客が16・7%増えればよいわけです。
繰り返しになりますが、現状では、どちらの案がより効果が高いのか分かりません。
しかし、同じ売上額を実現するために増加しないといけない顧客数が、案1+20%>案2+16・7%と、案2の方が少なくてすみます。
案2の方がやや実現性が高いのではないかと判断できます。
次に「値引き率」です。
案1では50円÷300円≒16・7%。
一方の案2では50円÷(300円+50円)≒14・3%です。
一般的に、カフェチェーンにとって値引き率は低い方が良いですから、案1>案2と顧客数の増加に続いて、値引き率でも案2が有利であるのが分かります。
同じく「利益率」の変化について考えてみましょう。
事前に利益率のデータはありませんから、前述の数値に加えてみなさんの経験や知識が必要です。
たとえばコーヒーの利益率やトッピングの利益率といった数値が必要になります。
私もよく分かりません。
しかし、飲食業の食べ物の原価率は10~30%であることを経験的に知っています。
そこで、コーヒー1杯を作るのに30円の原価がかかるとしましょう。
すると、〈コーヒー1杯当たりの利益と利益率〉利益:300円−30円=270円利益率:270円÷300円=90%となります。
実際の利益は、ここから人件費、コーヒーマシンのコスト、家賃や光熱費、減価償却費、税金などを引いて1杯当たり10~30円程度になります。
ここでは簡単に計算するためにコーヒー1杯の粗利ベースでの利益額は270円、利益率は90%としましょう。
一方の50円のトッピングを作るための原価を10円だとします。
すると、〈トッピング1つ当たりの利益と利益率〉利益:50円−10円=40円利益率:40円÷50円=80%〈「コーヒー+トッピング」1杯当たりの利益と利益率〉利益額:270円+40円=310円
利益率:310円÷350円=88%となります。
では今回の施策案1、案2を実施すると、それぞれ利益額、利益率はいくらになるでしょうか。
〈案150円の値引き〉売上:250円(正価300円−50円)利益:270円−50円=220円利益率:220円÷250円=88%ポイントは、値引き額の50円が丸々利益から減少することです。
〈案250円のトッピング無料〉売上:300円(正価300円+正価50円−50円)利益:310円−(50円−10円)=270円利益率:270円÷300円=90%ポイントは、値引きの場合とは違い、50円丸々利益が減るのではなく、原価である10円を除いた(50円−10円)=40円の利益が減ることです。
案1では利益が50円減少するのですが、案2では原価を除いた40円が減少するのです。
結果、案2の方が利益という観点で見ても減りが小さいので、案2に軍配が上がります。
まとめると、売上の観点、値引き率の観点、利益率の観点でも案2に軍配が上がるようです。
続いて、今回の施策をきっかけに案1、案2のどちらが今後の売上拡大、つまり長期的な利益(ライフ・タイム・バリュー)増加に有効でしょうか?既存顧客と新規顧客に分類して考えると分かりやすいかもしれません。
既存顧客とは、今まで店に来てくれていた顧客です。
新規顧客とは、今回の施策で新たに来てくれた顧客です。
今回の施策が終わった後、案1では、新規顧客の一定割合が、その後もこの店で飲み続けてくれることが期待されます。
一方で250円から300円と元の価格に戻ったことで、既存顧客の一部がこのコーヒーチェーン店から離脱するリスクもあります。
一方の案2は、トッピングを無料でサービスするという「新たな体験」を提供する施策です。
既存顧客のうちトッピングを気に入ったお客様の一定割合が、今後もトッピングを追加してくれる可能性が期待できます。
つまり、今後の売上拡大の可能性としても案2に軍配が上がるようです。
この案1、案2は実際のコーヒーチェーン店で行われた施策でした。
私は、それまで普通のカフェラテしか頼んでいなかったのが、案2の施策をきっかけに「エスプレッソショット」を追加したり、「ミルク」を「豆乳」に変更するなど、追加サービスの常連になりました。
まさしく案2の施策に乗ったのです。
いかがでしょうか?今回使ったのも、四則演算だけです。
それだけでもここまで分析ができるのです。
しかも、確認にかかる時間は、シナリオさえ作成できれば数分から数十分です。
こんなシンプルな2つの案ですが、どちらが良いのか数十分で回答できたとすると、かなり仕事ができた感じがするのではないでしょうか?今回の分析フローを図24にまとめておきました。
復習などに活用ください。
経営者が、固定費より変動費を好む理由ちなみに利益は、どのような数式で表現できるでしょうか?利益=売上−費用です。
先ほど売上の話をしましたので、ここでは、費用について補足説明しましょう。
費用と一括りにしましたが、費用にはいくつかの分類方法があります。
一般的には損益計算書(P/L)を作成する際の仕分け項目である「原価」と「一般管理費」が挙げられます。
それぞれの費用を売上から除くと、売上−原価=売上総利益(粗利)、同じく売上−原価−一般管理費=営業利益(営利)となります。
また、粗利や営利を売上で割ったものをそれぞれ粗利率(粗利÷売上)、営業利益率(営利÷売上)と言います。
粗利率や営業利益率は、企業の利益分析の際に、あるいは自社の時系列推移を確認する際によく利用されます。
また、同業企業間で収益性(儲ける力)を比較する際にもよく利用されます。
費用には、「投資かコストか」あるいは「固定費か変動費か」という分類方法もあります。
ここでは「固定費」と「変動費」に分類する効能について説明します。
先ほど経営者は利益で物事を考える、という話をしました。
その利益を考える際の基本的な考え方の一つが、費用を「固定費」と「変動費」に分けるということです。
これは企業の利益分析を行う時に威力を発揮する分類の仕方です。
ちなみに何に対して固定や変動と言っているのでしょうか?それは売上の増減に対して、固定か変動かといっています。
固定費とは「売上の増減とは無関係に支払わなければいけない費用」のこと。
一方の変動費は、「売上と連動して支払わなければいけない費用」のことを指します。
売上が増えれば、それに合わせて増加する費用ということです。
逆に言えば、売上がなければ、変動費は払わなくてよいということです。
先に結論を書くと、経営者は同じ費用を使うのであれば、いかにして固定費を下げ、変動費の割合を増やすかということを考えているのです。
つまり同じ100万円を支払うにしても、固定費の割合を下げたいと考えているのです。
なぜか?それは経営者が、うまくいかなかった場合のことを考えているからです。
たとえば、図25のように100万円支払う場合、極端な例として、次の2つを比較します。
A:すべて固定費であった場合(つまり売上に関係なく100万円を支払う)B:すべて変動費であった場合(売上に連動して100万円を支払う)
これに対して、さらに3つのケースが考えられます。
①想定通り売上が100万円売れた場合②想定の2倍の200万円売れた場合③想定外で売上が0であった場合結果は、図25のようになります。
想定通りの売上の①のケースの場合はA(固定費)、B(変動費)とも同じ結果になります。
しかし、売上が2倍の②のケースの場合はA(固定費)の方が利益的に勝り、売上がゼロになる③のケースでは、B(変動費)のリスクが小さいのが分かります。
大雑把に覚えておいてほしいのは、事前に売上が想定以上に見込める②のケースの場合は、固定費を高めに設定して、利益がより多く得られるような体制を構築すればよいのです。
具体的には、すべて自前で準備するなどです。
しかし、事前に売上が想定通り見込めない場合(大半がそうでしょう)、今回でいう③のケースの場合は、できる限り変動費を高めに設定してリスクに備えることが重要なのです。
固定費の一般的な例としては、事務所、工場、倉庫の家賃、自社の従業員の給料関係費用、システムや資産の減価償却費などが挙げられます。
これらの費用は、一般的には、売上がまったくなくても支払わなければなりません。
一方の変動費の例としては、原材料費、販売手数料、運賃などが挙げられます。
たとえば商品Aを専業で販売している会社があります。
この会社の売上を図26として表しています。
グラフの縦軸は売上、横軸は商品Aの販売数量(Quantity)です。
商品Aの単価(Price)を10万円だとすると、1つ売れると10万円、2つ売れると20万円、10個売れると100万円の売上になります。
これはグラフでは右斜め上に伸びる直線になります。
この直線の「傾き」が価格(Price)を表しています。
一方の固定費や変動費などの費用は、どのように表現されるのでしょうか?固定費は、商品Aが売れる、売れないにかかわらず必要な費用です。
つまり、販売数量に関係なく、横軸と平行に費用がかかるのです。
もしも、商品Aが1つも売れなかった場合は、売上0−固定費分だけ赤字になるわけです(これはグラフの一番左の「売上・費用」の軸との交点で表されています)。
一方の変動費は、売れるごとに発生する費用です。
売上同様に右肩上がりに増えていきます。
総費用は、固定費と変動費の合計になります。
どれぐらい売れば黒字になるのか図26を左から見ていくと、グラフ全体の左部分では、売上を表す太線より、総費用(固定費+変動費)を表す細線の方が上にあります。
これは売上より総費用の方が多いということです。
つまり赤字の状態です。
さらにグラフを右に見ていくと売上のグラフと総費用(固定費+変動費)のグラフが交わる部分があります。
これは売上=総費用(固定費+変動費)となり、赤字を脱出して、利益ゼロになったことを表しています。
この点を損益分岐点(BEP:BreakEvenPoint)と呼びます。
損益分岐点という漢字から、その意味がよく分かります。
損(赤字)と益(黒字)の分岐(分ける)点だということです。
この売上まで売り上げると赤字を脱出するという分岐点です。
経営者にとってはとても重要な数値です。
当然ですが、会社ごとにこの数値は違います。
一般的に、大企業は、この損益分岐点売上高が大きく、中小企業の損益分岐点売上高は小さくなります。
自社の損益分岐点売上高を把握できれば、それを売上と比較してみてください。
その割合、「損益分岐点売上高÷売上」が低ければ低いほど、黒字になりやすい企業体質だと分かります。
ですので、経年で自社の数値を追いかけてみると、黒字体質かどうかを把握することができます。
損益分岐点売上高に加えて、損益分岐点の売上を上げるのに必要な商品Aの販売数を把握しておくことも重要です。
つまり、商品Aをいくつ以上売れば利益が出るのかが分かる重要な数字だからです。
本書では損益分岐点販売数量(BEPQ)と呼ぶことにします。
損益分岐点を下げる3つの方法損益分岐点(BEP)、正確に表現すると損益分岐点の販売数量(BEPQ)を下げる方法について考えてみましょう。
BEPQは、黒字になるために必要な最低販売数量です。
経営者にとって、同じ商品を100個売れば黒字になる状態と50個売れば黒字になる状態を比較して、どちらの状態が好ましいでしょうか。
もちろん、より販売数量が少ない50個で黒字になる状態が好ましいはずですね。
当然ですが、経営者は損益分岐点(BEP)、損益分岐点販売数量(BEPQ)をできるだけ下げたいのです。
そこで、この数値を具体的に下げる方法を考えてみましょう。
これがまさに経営者の視点なのです。
図26を再掲しました。
損益分岐点を下げるにはどうしたらよいでしょうか。
損益分岐点は売上のグラフと総費用(固定費+変動費)のグラフの交点です。
X軸(横軸)が販売数量を表していますので、この交点が左(販売数量が小さくなる方向)に移動すればよいわけです。
このグラフは3つの直線からできています。
それぞれ、右肩上がりの売上のグラフ、横に一直線の固定費のグラフ、右肩上がりの変動費のグラフです。
どうすれば損益分岐点を左側に移動させることができるのでしょうか。
グラフが3つありますので、少なくとも3つの方法を見つけることができます。
少なくとも書いたのは、これら3つの方法を組み合わせることもできるからです。
ここでは、基本となる3つの方法を確認していきましょう。
1つは売上のグラフの傾きを上げる方法です。
傾きを上げると、損益分岐点を表す交点部分は、左側に移動します。
具体的な施策としては、傾き=商品の単価ですから、単価の値上げをしたり、値引きを改善したりするわけです。
2つめは固定費を下げる方法です。
固定費を下げると、固定費の横棒のグラフは下に下がります。
すると、損益分岐点を表す交点部分は左に移動します。
これもいくつか方法があります。
固定費の中の無駄を省き、単純に固定費を削減する。
あるいは固定費を変動費にする。
たとえば自社に保有するのではなく、利用する都度支払いするように変えるなどが考えられます。
ただし固定費を変動費に変更すると、変動費のグラフの傾きが大きくなり、損益分岐点を表す交点は右側(販売数量が大きくなる方向)に移動します。
それとのバランスが重要です。
3つめは、変動費のグラフの傾きを下げる、つまり商品Aを販売するのにかかる変動比率を下げるわけです。
すると損益分岐点を表す交点は、左に移動します。
これには単純に発注価格を下げる方法も考えられますし、あるいは業務フローを見直して、無駄な工程を省く、合体させるなどして、安くする方法などもあります。
ちなみに、3つの方法「価格を上げる」「固定費を下げる」「変動比率を下げる」のうち、どの方法が損益分岐点を下げるのに最も効果があるのでしょうか?詳細は省きますが、最も効果的なのは、「固定費を下げる」なのです。
優秀な経営者は常に損益分岐点を下げたいと考えています。
つまり、優秀な経営者は「固定費を下げる」ことが最大の関心事なのです。
これを覚えておいてください。
具体的に固定費を下げるためには、自社で保有(=固定費)するのではなく、外注(アウトソーシング)すれば良いのです。
もちろん、自社に保有したいものもたくさんあります。
しかし、基本原則としては、自社保有ではなく、他社に依頼することで変動費にしたいのです。
そして、売上が確実に見込める場合だけ、自社保有=固定費として、確実に利益を確保したいのです。
特に企業規模が小さいときは尚更です。
「売れるものは自社で、売れるかどうかわからないものは他社で」という戦略は、アマゾンを見ていると忠実に実行しているのが良くわかります。
アマゾンは新しい商品カテゴリーに参入する際、最初はマーケットプレイスとして、様々な小売店の販売仲介をしています。
売れたら、小売店に変動費として手数料を支払います。
結果、アマゾンの利益は限られていますが、リスクは相対的に小さくなります。
コストを変動費にしているからです。
ところが、その商品カテゴリーの売上が確実に上がることが分かると、アマゾン自身で、商品を仕入れて自社販売を開始します。
自社として固定費をかけてリスクをとるわけです。
一般的に経営者は、固定費にすることを避けたいと考えます。
しかし、アマゾンは、すでにマーケットプレイスを通してその商品のニーズや売上の見込みがあることを把握しているので、固定費にしてもリスクは少ないと判断できるわけです。
アマゾンは、商品が安いイメージを作り上げているのも上手ですが、本当にマーケティングの原理原則を理解している会社だと思います。
話をもとに戻しましょう。
一般的な企業は固定費を下げて、変動費を上げたいわけです。
その「固定費を下げる」には、前述したように2つ方法があります。
1つは無駄などを省いて固定費自体を下げる方法。
もう一つは固定費を変動費に変える方法です。
売れた分だけ、あるいは使った分だけ払うように変更するということです。
具体的には、自社で保有するのではなく、利用する都度支払うということです。
世界的にクラウドビジネスやシェアエコノミーが大きく伸びているのは、この「固定費を変動費」にすることができるからです。
経営者あるいは経営者の視点を保有している人たちのニーズにとても合っているのです。
IT業界を例にとると、従来、大企業は、自社でシステム開発をし、データを保管し、プログラムを動かすサーバーを自社で所有していました。
つまりシステムやデータを活用・保有することは固定費でした。
他に選択肢がなかったのです。
ところが、固定費を変動費に変更できる方法ができたのです。
それがクラウドサービスです。
当初はインフラ部分のみがサービスの対象でした。
しかし、現在では、システム関連の大半はクラウドに乗せ替えられるのです。
そこで、多くの企業が、AzureやAWSなどのクラウドサービスを活用し出しているのです。
クラウドサービスは、使った分だけ費用が発生する料金体系。
つまり従来固定費であったものを変動費に変えることができるのです。
クラウドの利用者が増えているというのは、固定費から変動費に大きく舵を切っていることを示しているとも言えるでしょう。
当初は経営者の視点で判断を行う企業だけがその恩恵を享受していました。
判断をしない企業群は、クラウドサービスはセキュリティーが劣っているという話をして、変化を妨げていました。
しかし、現在では政府、金融機関が情報系だけではなく勘定系といった基幹システムまで活用するようになっています。
それほど「所有から使用」、あるいは「固定費から変動費」の流れは大きいのです。
勉強会で元は取れるのか?さて、経営者は「利益」を考えているという話をしました。
言い換えると、投資したお金はプラスになって返ってくるのかどうか判断しています。
100万円使ったら、100万円以上になって返ってきてほしいのです。
そうならないと利益が出ないからです。
第1章の図7を題材にしたケーススタディを思い出してください。
最終的には、関西とエリアの営業担当を集めて勉強会をすることで販促を検討することを上司に提案しました。
良い提案かもしれません。
しかし、立場を逆にしてあなたが上司の営業責任者であったらどうでしょうか?勉強会の実施は有効かもしれない。
しかし営業担当を集めて、勉強会を実施したとしても、効果が出ない可能性もあります。
それは避けたいものです。
特に今回は、関西とエリア(おそらく本社である東京から離れた)の営業担当を集めての勉強会の提案を受けています。
時間もコストもかかります。
それで効果が思わしくなければ目も当てられません。
もちろん、勉強会をテレビ会議などで実施することで、移動費用や移動時間を削減することは可能です。
だとしても、上司の視点で考えると、判断するための情報が少なくて、簡単にYESと言いにくい可能性もあります。
つまり、営業責任者の気持ちとしては、「勉強会は良いけれど、効果はどれくらいあるの?」あるいは「投資に見合った効果があるのかどうか」をざっくりとでも良いので知りたいのです。
上司である営業責任者はバカではありません。
すべてのことを正確に把握できるとは思っていません。
でもざっくりとは知りたいのです。
何度も「ざっくりで良い」と書いているのは、ほとんどの人が数字で説明してくれないからです。
その際に、たとえば、あなたが次のように回答できたらいかがでしょうか?「首都圏と比較すると関西、エリアの商品Bの基本企画の売上は1人あたり月額60万円少ないことが分かっています。
もしも今回の勉強会に参加した営業のうち、半分の人に効果があるとしたらどうでしょうか?関西の営業担当は6名、エリアの営業担当は15名ですので、1月当たり約600万円の売上が見込めます。
〈勉強会によって、見込める売上増加額(1月当たり)〉(6人+15人)×50%×60万円≒600万円この数字は、5月の売上1億500万円を基準に考えると、〈勉強会によって、見込める売上アップの割合〉600万円÷1億500万円≒6%これで当初の目標の5%を超えることができます。
ポイントは2つです。
首都圏との差分である60万円を埋められるような改善点を見つけることができるのか?もう1つは、勉強会を実施する際に参加者の半数に効果が出せるようなコンテンツを作成できるのかです。
この両者について詳細を検討するので、その際は事前にチェック頂けないでしょうか?」このように説明できたらどうでしょうか?勉強会を企画する商品Bの企画担当に、この程度の売上アップ(参加者の半数が月額60万円売上アップできる)を見込めるような勉強会の企画内容(コンテンツ)を作れるのかどうかを検討してもらうと良いわけです。
月額600万円の売上アップという効果(Return)を推測するのと同時に、そこにかける投資(Investment)も確認しておくことが必要です。
たとえば、移動コストが関西担当者1人当たり3万円、エリア担当者1人当たり5万円としましょう。
〈移動コストの合計〉関西:3万円×6人=18万円エリア:5万円×15人=75万円合計:93万円また、彼らは勉強会の移動のために1日営業できなくなります。
1日当たりの営業の損失売上を5月分の売上から計算すると、〈営業の損失売上の合計(1日当たり)〉関西分:月間売上1680万円÷月間営業日数20日=84万円エリア:月間売上3900万円÷月間営業日数20日=195万円合計:279万円〈移動コストと営業の損失額の合計(関西+エリア)〉(移動コスト)93万円+(売上減少)279万円=372万円売上増加を600万円と想定しましたので、投資対効果は「効果600万円÷投資372万円」=161%です。
つまり372万円の投資をして、600万円の売上しか上がらないので投資対効果は161%だということです。
161%という数字は投資よりも効果の方が61%大きいということですので、良い数値です。
ところが冷静に考えてみると、投資側の372万円という数値はリアルな数値。
リアルと書いたのは間違いなく使うコストです。
一方の、効果側の数値はあくまでも推定、あるいは願望にすぎません。
空手形の可能性もあります。
これでは上司は勉強会を実施するのを躊躇してしまいます。
そこで、勉強会をテレビ会議で実施してはどうでしょうか。
移動時間がなくなるので、営業の拘束時間を半分に減らせますから、損失売上は279万円の半分の140万円になります。
移動コストの93万円も不要になります。
でも、テレビ会議では、効果も少し下がるかもしれません。
売上側の効果も減らして、600万円×90%と見積もると540万円になります。
するとテレビ会議で実施した場合の投資対効果は、「効果540万円÷投資140万円」=約3・9倍。
約4倍ですので投資対効果はかなり高いと言えるでしょう。
これならば、勉強会の実施を判断できるかもしれません。
さらに勉強会の売上効果が一過性ではなく一定期間見込める、仮に今後半年間効果があるとしたら「効果540万円×6カ月」=3240万円となります。
すると投資対効果は、「3240万円÷投資140万円」=約23倍となり、これならば、営業責任者の上司は、勉強会を実施すべきだと判断できるのではなないでしょうか。
ここで計算に使ったのも四則演算だけです。
四則演算だけで、営業向け勉強会の可否の判断がしやすくなったのではないでしょうか?
このように短時間で数字を把握する際に「フェルミ推定」が役立ちます。
繰り返しになりますが、フェルミ推定は四則演算を活用して仕事のレベルアップを行う有効な手法の1つです。
その費用は投資かコストか本章の冒頭で、経営者は利益で物事を見ているという話をしました。
投資対効果、効果を投資で割った数値でその投資の是非を判断します。
たとえばROIが1倍以下である場合は、投資よりも効果が小さいことを意味します。
そのような施策は意味がありませんので、絶対に実施しません。
当然です。
1倍を超えるのは必須です。
しかし、実際は、想定通りに施策が進まないケースも少なくありません。
ですので、ROIは、その施策がうまくいかない危険性も考慮して割引する必要があります。
たとえば、計算上のROIを5割の「危険率」を掛けて計算します。
ROIの数値が2倍で、その危険率が5割であればROI=2×危険率(5割)=1となります。
ちなみに、企業が使用するお金、費用は2つに大別することができます。
投資とコストです。
この2つの違いを理解して費用のコントロールをすることが必要です。
投資は効果が計算できる費用。
コストは効果が計算できない費用です。
コストを正確に表現すると、「あなたが効果を計算していない費用」です。
投資は、前述のようにROI、つまり効果との比較で、実施するかどうかを決定します。
一方のコストは効果が不明確ですので、できる限り極限まで小さくします。
当たり前ですね、効果が不明確な費用は一円も使いたくないと考えるのが優秀な経営者です。
先ほど、コストは、正確に表現すると「あなたが効果を計算していない費用」だと書きました。
これは、あなた以外の優秀な人であれば、効果を計算できるかもしれないという意味を含んでいます。
あなたが、怠け者だったり、あるいは先入観にとらわれているとか、実際に効果をイメージすることができなかったり、これらの組み合わせで、効果を明確にできていないだけなのです。
私は研修会社の経営企画をしていた経験があります。
その際に、営業研修を受講した人たちが研修前後でどの程度効果(具体的には、売上アップ)があったのかを明確にして、営業資料に使おうという提案をしたことがあります。
実際、その会社の営業研修の効果は高く、受講者は研修前後で平均10%程度売上アップをしていました。
とても大きな成果です。
ところが、この数値を提示するのを多くの人が反対したのです。
理由は次のようなものです。
そもそも営業研修を受講する人は選抜された人であり、研修という機会を活かすことができる。
だから営業成績が向上するのは当たり前だ。
また、営業成績を向上させるものは、研修以外の要因も大きい。
担当顧客の状況、市場の状況、販売商品と同業商品の相対的競争優位の状況などを考慮しないといけない。
みな、その通りです。
先ほどの10%はあくまでも、相関関係があることを示しているだけで、因果関係までは分かりません。
正しくない可能性があるので、営業資料に提示したくないというのです。
まったく正しい見解だと思います。
ところが、外資系の同業他社は営業研修前後での成果を「5%アップ」と謳っていました。
もちろん、きちんとサンプルなどを明確にし、因果関係ではなく、相関関係だと書いていました。
先ほどから、経営者は費用対効果(ROI)を判断の基準にする、と述べています。
実際は研修受講と10%の営業成果に相関があるのだけれど、それを明記していない資料と「受講者は5%売上アップしている」と明記している資料、どちらが顧客企業内で決裁を取りやすいでしょうか。
同業他社の研修を受講すると、受講者の人数×平均売上×5%が効果だと計算できます。
受講者の人数×営業研修の受講料と営業研修参加日数による売上機会損失が投資です。
これを比較して、危険率を掛ければ、同業企業の営業研修を受講すべきかどうかの判断ができます。
ところが私がいた会社の営業研修は、前述のように、効果は同業他社よりも高いのですが、それを明記しません。
結果、導入を検討する企業から考えると、投資ではなくコストになってしまうのです。
このように、本当は投資対効果が高いのにもかかわらず、それを明確にしていないケースが多いのです。
本当にもったいないと思います。
繰り返しになりますが、費用は、投資とコストに大別できます。
みなさんが費用を使う際は、できる限り、その効果を可視化し、ROIを確認する習慣をつけることをお勧めします。
そのためにも『爆速で終わらせる1因数分解』で説明したフェルミ推定の考え方は有効です。
儲けのセンス22軸思考2つの軸で整理するさて、ここからは少しテーマを変更しましょう。
数字の応用編として、私の経験を少し披露したいと思います。
私は物事を考える時に2つの軸で考えることがよくあります。
2002年にフランスのINSEAD(ビジネススクール)のエグゼクティブ・マーケティング・コースに参加する機会がありました。
本当は前年2001年9月末からアメリカのノースウエスタン大学で、マーケティングのグルであるコトラー教授主催のマーケティング・コースに参加する予定だったのですが、911(セプテンバー・イレブン)がアメリカで起き、リクルートはすべてのアメリカ出張を禁止しました。
その影響で渡航先を変更した私は、フランスにあるINSEADを選んだのです。
その時までINSEADを知りませんでした。
しかしこの機会に、マーケティングの基礎を学び直すことができました。
特に様々なデータを2軸で表現する重要性を学べたのがラッキーでした。
適切なデータを適切な2軸で表現すると、事実が浮き彫りになるのです。
今回は、そのうちのいくつかの事例を紹介することにしましょう。
顧客満足度とロイヤルティ一般的に顧客満足度を高めると、売上が増加すると言われています。
相関関係はありそうですし、因果関係もありそうです。
つまり、顧客満足度を高めると、ロイヤルティ(再購入意向)が高まるということです。
顧客満足度を高める→ロイヤルティ(再購入意向)が高まる→実際に再購入する。
結果としてライフ・タイム・バリューが高まる→さらにエバンジェリスト(自らその商品を宣伝までしてくれる)になってくれる、というフローが期待できます。
ここまでくると、顧客が顧客を呼んでくれるので、マーケティングコストが下がり、企業の収益率が大幅に向上します。
とても重要な考え方です。
当時の私は、これを盲目的に信じていました。
しかし、実際の場面では、その関係には強弱があるのです。
それを理解するために2つの軸を考えてみます。
具体的には、顧客満足度とロイヤルティ(再購入意向)の2つを軸にして、商品ごとにプロットしてみます。
図27はその一例です。
図を見ると不思議なことに気づきます。
確かに、顧客満足度が高まるとロイヤルティは高まっています。
しかし、その関係性はいくつかパターンに分類されるのが分かります。
具体的には、顧客満足度が高くなってもあまりロイヤルティの数値が高まらないグラフ。
もう一つは逆に顧客満足度が低くてもロイヤルティが高いグラフ。
何が違うのでしょうか。
違いは「代替商品への変更が容易かどうか」です。
マーケティング用語ではスイッチングコストが高い、あるいは低いといいます。
スイッチングコストが高い商品とは、代替商品が少ない、あるいは、あったとしてもそれに変更する手間やコストがとてもかかる商品です。
たとえば、自宅の水道などは典型的でしょう。
水道に何らかの不満があったとして、変更するのは手間がかかります。
代替商品は、自分で水を引く、あるいは川から汲んでくる、あるいは水を購入する、などでしょうか。
これは、なかなか選択できません。
つまり、このような代替商品が少ない製品・サービスでは、企業が顧客満足度を高めなくても、顧客は、自社商品(今回でいうと水)を購入し続けてくれるのです。
これでは、企業が顧客満足度を高めようという動機は生まれにくいでしょう。
昨今、水道事業の一部を民営化しようという話が上がっています。
これを危惧する人たちは、生活用水には代替商品がないので、民営化され、将来の値上げがあったとしても選択肢がない、つまりどんな値上げも飲まざるを得ないことを憂いているのです。
ついこのあいだまでの電気やガスなどのインフラ関連もそうでした。
代替策がありませんでした。
ところが、電気・ガスの自由化が始まりました。
選択肢が増えたのです。
現在は、商品ごとの差異が小さく、分かりにくいのですが、時間が経つにしたがい、顧客満足度が低いままだと、ロイヤルティが下がってしまい、容易に競合企業へスイッチされてしまうかもしれません。
逆に、顧客満足度が少し下がるとロイヤルティも下がる商品とは何でしょうか。
これはスイッチングコストが低いものです。
少しでも不満を持ったら、競合商品に替えてしまうのです。
コンビニエンスストアで購入できる商品などは、その代表でしょう。
何か飲料を購入しようとした際に、いつもの棚にその商品がないだけで、他の商品を購入した経験があるのではないでしょうか?商品そのものに不満がなくても、その商品をすぐに購入できないという不満だけで、ロイヤルティが下がるのです。
携帯電話会社が、SIMフリーにすることを抵抗していたなどは分かりやすいですね。
SIMフリーにすると他の携帯電話キャリアに変更するのが容易になります。
格安携帯電話も利用しやすくなります。
つまりスイッチングコストが下がるので、少しの顧客満足度低下でロイヤルティが下がってしまうのです。
基本的に、競争環境は厳しくなる一方なので、グラフは、左上側から右下側シフトしていきます。
消費者にとっては選択肢が増えるので嬉しいですね。
しかし、供給する側の企業にとっては競争が厳しい世の中になっていきます。
2本線を引く「2軸で考えてみる」とは、「2つ線を引く」ということです。
大事なのは、軸を作って、それをグラフにするとどのような「絵」になるのかを想像することが重要です。
次に、その絵になるとするならば、どのような意味があるのかを考える。
ここまでくればしめたものです。
仮説ができていて、そしてグラフを作れば検証できるのです。
もちろん、グラフを作ってみたら想像通りにならないケースもあります。
それもまた想像通りではなかったという事実が分かるわけです。
次回以降は、それを検討しないで良いというメリットがあるのです。
ちなみに2つの線は、グラフのように縦軸、横軸とするケースと十字にするケースの2通りがあります。
前者のグラフにするケースは、2つの変数の関係(主には相関)をはっきりさせるケースです。
後者の十字にするケースは、4つの象限に分類して、その特徴を明らかにするものです。
有名なのは、アンゾフのマトリックス、PPMなどがありますね。
アンゾフのマトリックスは、図28のように製品軸と市場軸という2つの軸を設定し、それぞれ「既存」「新規」と分類します。
すると4つの象限に分類できます。
それぞれの象限に代表的な成長オプションを明示しておきました。
たとえば第一象限は既存市場×既存製品です。
ここでは市場浸透が成長オプションになります。
第二象限は、既存市場×新製品。
ここでの成長オプションは新製品開発となります。
第三象限は新市場×既存商品です。
ここでの成長オプションは、新市場開拓。
最後の第四象限は、新市場×新製品です。
ここでの成長オプションは、(狭義の)多角化となります。
PPMはプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの略で、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が考案したフレームワークです。
図29のように一軸は製品ライフサイクルを市場成長率とし、もう一軸は経験曲線効果を相対的市場占有率として、製品を4つの象限に位置づけました。
そして、それぞれにどのように経営資源を配分するべきかを示しました。
「市場成長率高×マーケットシェア低」に位置づけられる製品は「問題児」と分類します。
可能性はあるけれど、可能性に賭けるには投資が必要です。
「市場成長率低×マーケットシェア低」は「負け犬」と分類し、撤退を検討します。
「市場成長率高×マーケットシェア高」の製品は「花形」と分類します。
儲かって仕方ない製品だということです。
最後は「市場成長率低×マーケットシェア高」の製品で、これは「金のなる木」と分類します。
できる限り投資を抑え、利益を生み出すように仕向け、他のカテゴリー、たとえば問題児もしくは花形商品に投資を回します。
これらのようにイケテイル軸を見つけることができると、課題が一気に解決できます。
では、いくつか例を見ていきましょう。
売上高と利益率次は、売上高と利益率を散布図としてプロットした図30です。
これは私が工務店を調査した際のデータを分かりやすく示したものです。
売上が増える、つまり規模が大きくなるにしたがい、利益率がどう変化するのかを見たかったのです。
本来、工務店は、受注産業で、倒産しにくいはずなのですが、倒産することもあります。
その理由を見つけたかったのです。
このシンプルな「売上」と「利益」という2つの軸を見つけることで、工務店業界の状況が一目で分かるようになりました。
少し詳しく注文住宅のビジネスモデルを説明しましょう。
注文住宅を建てる工務店は、前述のように基本は倒産しづらい事業モデルです。
なぜならば、顧客の要望を見積もりして、それに利益を乗せて請求するわけです。
これがきちんと成立するならば、必ず利益が出ます。
ところが、これを妨げる力が働くのです。
一つは、競争です。
小規模な工務店は、同業との競争に巻き込まれ、乗せる利益を小さくしがちです。
また、注文住宅やリフォームはクレーム産業です。
結果として、見積もり以上にコストがかかるケースもあります。
よって規模が小さい工務店の利益率は低く、規模が大きくなるにしたがい、利益率が高まります。
ところが、データをプロットしてみると中堅規模の利益率が低いのです。
これは主に2つの理由がありました。
1つは、規模が大きくなると間接コスト、たとえば本部スタッフの数が増えるのです。
規模に対して、間接人員が増えて利益率を下げます。
また一部の会社は、注文住宅に加えて建売住宅事業に進出します。
注文住宅は顧客と何度も打合せをするなど、手間がかかり利益率は決して高くありません。
一方の建売住宅は、顧客と打合せをするのではなく、自社で仕様を決めて家を建てるわけです。
材料費も下げられます。
うまく土地を仕入れて、うまく売れれば、利益率は高くなります。
注文住宅事業者から見ると、建売住宅事業は、楽に儲けることができるように感じるのです。
しかし、おいしいだけの話はありません。
土地の仕入れと実際に家が売れるまでにタイムラグがあり、その金利負担も必要です。
販売のための販促費もかかります。
場合によっては、値引きも必要です。
注文住宅よりもリスクがあるのです。
この散布図で、中規模の工務店の利益率が低いのが分かります。
このあたりの規模の工務店は倒産のリスクがあったのです。
さらに規模が大きくなると、これらのリスクもマネジメントでき、結果、利益率も高まるのです。
売上高と利益率を散布図にすると、このように今後の取引に役立つ考察を得ることができました。
取引額順位と累計利益率図20を再掲します。
横軸に取引額の順位、縦軸に累計の利益率をプロットした図です。
会社により異なりますが、この図から2つのことが分かります。
実は想定以上に赤字の取引先が多いということです。
もう1つは、2割程度の顧客で8割以上の利益を出しているということです。
特定の顧客群から売上の大半、利益の大半を生み出しているのです。
赤字の顧客群については詳細分析が必要です。
悪い赤字顧客と戦略的な赤字顧客を分別する必要があります。
悪い赤字顧客とは、値引きや過剰サービスなどを行っている顧客群です。
戦略的な赤字顧客とは、新規取引顧客などに代表されます。
今後取引が増えるのが期待される顧客群です。
赤字顧客のリストに取引期間のデータを付加し、一社一社確認していくと良いでしょう。
かつて取引が大きかった際に実施していたサービスや値引きなどが、取引が減少し赤字になった今でも継続されているケースがあります。
このような顧客群に対して、どのように対応するのかを決定し、実行することが重要です。
年齢と給料図31は、横軸に年齢、縦軸に給料をプロットしたものです。
標準的に中間管理職、上級管理職になる年齢とその時の給料をプロットしています。
左下から右上へ昇るようにある枠より上にいる人たちは、昇進スピードが早い「ハイパフォーマー」グループと言えます。
逆にこの枠よりも下にいる人たちは、昇進スピードが遅く、大きく下にずれている人たちは、過去のパフォーマンスが低かった「ローパフォーマー」たちと言えます。
必ずしもこのデータだけでハイパフォーマー、ローパフォーマーを決めることは乱暴ですが、簡単に作れる一次資料しては、参考になるのではないでしょうか。
儲けのセンス3数字のストックを増やす数字が読めれば、景気動向も見えてくる日本は統計数値が豊富です。
どのような数値がどこにあるのか知っている、あるいは、それらのおおよその数値を知っていると、フェルミ推定や仮説力の精度が高まります。
仮説力の精度が高まると、施策の精度が高まります。
すると、結果として儲けのセンスも高まります。
企業関係の数値を把握する際は、経済産業省のホームページが便利です。
たとえば「平成28年経済センサス・活動調査産業横断的集計」という資料があります。
これは平成30年6月に出された資料で、前回調査の平成23年のデータとの比較が分かります。
そのなかからいくつかキーになるデータを確認してみましょう。
まず売上関連です。
平成28年の日本の売上高(収入)は約1625兆円(平成23年比+22%)。
5年前と比較すると約2割増加しているのが分かります。
5年で2割強、つまり毎年4%売上がアップしていた計算になります。
同じく付加価値額は約290兆円(平成23年比+18%)。
付加価値額は毎年3%強増加した計算になります。
なかなか立派な数字ではないでしょうか。
ちなみに今回のデータでの「付加価値額」は営業利益に人件費と租税公課(税金や公の負担金)を加えたものです。
産業間で比較する際に、付加価値額と営業利益で違いが出るのは、主に雇用者報酬(人件費)です。
業界を「労働集約型」「資本集約型」「知識集約型産業」に分類すると、資本集約型(製造業)では付加価値額と営業利益の差が小さいですが、労働集約型(介護、教育など)は、労働分配率(付加価値額に占める給与総額)が高いため、営業利益額に比べて付加価値額が相対的に高く出ます。
たとえば教育産業は、付加価値額が高い業界です。
これは、労働分配率は高いのですが、労働生産性が高くなく、低賃金労働者を多数働かせている労働集約型業種だからです。
また、介護業界でも同様の傾向が見てとれます。
一方、知識集約型(情報通信、専門サービスなど)は、働き手が付加価値の源泉であり、労働生産性(従業員一人当たりの付加価値額)が高くなる傾向があります。
次に、業界別に売上高のトップ3を見てみると、1位は卸売業・小売業で500兆円、2位は製造業で396兆円、3位の金融業・保険業が125兆円となります。
上位3業種で6割強を占めています。
また、いわゆる第三次産業が約7割を占めることが分かります。
売上高1億円以上の企業数を見ると、卸売・小売業が20万社強、建設業、製造業がそれぞれ11万社強あることが分かります。
一方で、付加価値額で比較すると、製造業が69兆円、卸売・小売業が54兆円、建設業が21兆円となり、上位3業種で全業種の5割弱を占めていることが分かります。
次に企業数、事業所数、従業員数を見てみましょう。
企業数は385万企業(24年2月比▲6・6%)。
事業所数は558万事業所(同▲3・3%)。
従業員数は5687万人(同+2%)となります。
企業数や事業所数は減少しているのですが、従業員数は増えているのが分かります。
都道府県別に比較すると、東京が68万事業所、大阪が42万事業所、愛知が32万事業所。
上位3都府県で4分の1を占めています。
東名阪への集中度が分かりますね。
平成24年との比較では、47都道府県中、実に45都道府県で事業所数が減っています。
増えているのは、宮城+3・9%と沖縄+0・5%の2県だけです。
減少率が大きいのは、熊本▲6・5%、京都、和歌山▲5・7%となっています。
従業員数について見てみると、卸売業・小売業が1184万人と、20%を占めます。
つまり5人に1人は卸売・小売業に従事しています。
2番目には製造業が多くて886万人と、15%強が従事しています。
3位としては医療・福祉が737万人で13%を占めています。
この3業種で約5割の人が従事していることが分かります。
概要を図32にまとめておきました。
繰り返しになりますが、これらの数字を知っている、あるいは、情報の入手方法を知っていれば、フェルミ推定の精度を高めることができます。
加えて、偶然入手したデータの正誤チェックも可能です。
データはこちら(http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/census/H28y_kaku.pdf)をご参照ください。
同業界の損益計算書を構成比で比較する前項で日本企業についてのざっくりした数字の一部について触れました。
次は、複数の企業を比較する方法をご紹介します。
前述のように「比較」はとても効果的な手法です。
「同じ業界で、ここまで明暗を分けるのか」と驚いた2社の損益計算書を図33上部に掲載しました。
業界は地図業界で、どちらの企業もみなさん聞いたことがあるはずです。
A社は大きく黒字、一方のB社はかなりの赤字になっています。
実は、A社は増収増益を続けていて、対照的にB社は減収減益なのです。
しかし、実数のままでは、たとえば売上規模も約6倍(61,332/9,158)もあるので比較しづらいですね。
そこで、それぞれの企業の各項目を売上に対しての「構成比」で比較してみます。
その結果を図33下部に掲載しました。
このように構成比で比較すると、売上規模が異なる2社を比較しやすいことがお分かりいただけるでしょう。
それでは、損益計算書の下から見ていきます。
当期純利益がA社6%、B社▲19%です。
その差は25pt。
同じ業界とは思えないほどの差です。
その差のうち8ptはB社の特別損失にあるのが分かります。
特別損失ですので、今年だけの一過性のものと考えて良いでしょう。
その上の両社の経常利益、営業利益、売上総利益の差はおおよそ20ptです。
つまり、利益の差は、原価の差だということが分かります。
B社が手を打つべきは原価削減だということが分かります。
興味深いので両社の決算発表資料を読みました。
同じ地図を扱っている両社ですが、A社は売上の8割を占める地図データベース事業が増収増益とあります。
その理由として国内カーナビデータの販売が好調と記載されていました。
一方のB社は売上の半分を市販出版物が占め、そこの売上が減少しています。
しかも、3割弱を占める電子売上では、簡易型カーナビゲーション関連の売上が減少との記載があります。
同じカーナビ事業に対しての業績も明暗を分けていることが分かりました。
また、今期の業績計画に関して、A社、B社とも増収増益を掲げていました。
特にB社は原価を11pt改善し、黒字にするということでした。
ところが今期が始まり、第三四半期が終わる年末になり、B社は当初計画を下方修正する発表をしました。
売上は微増、収益は前期より改善するのですが、やはり赤字決算見込みということでした。
並行して従業員2割弱のリストラの発表をしました。
図33の下部を見ていただくと分かるようにB社の人件費率は高くないので、この施策の効果は限定的だと思われます。
それよりも、原価のさらなる削減が重要なのです。
一方のA社の上半期は、過去最高収益で、目標達成見込みということです。
同業の2社の損益計算書(P/L)を売上高に対する構成比で比較し、さらに各社の決算報告書の定性データを加えると、何が起きているのか想像できるのを理解いただけたのではないでしょうか。
「金持ち父さん」が勝つ理由トマ・ピケティの『21世紀の資本』をご存知でしょうか。
話題になったので、知っている方、読んだことがある方も少なくないかもしれません。
ここで紹介された有名な不等式があります。
r>grは資本収益率、gは経済成長率です。
ざっくり言うと資本主義では、金持ちはどんどん金持ちになり、貧乏な人は貧乏なままであるということを証明した不等式なのです。
少し説明しましょう。
rの資本収益率とは、投資家や地主が、株や投資信託、不動産などの投資で得られる利益率のことです。
ざっくり年率4〜5%で伸びています。
一方のgは、会社員や行員が労働で得られる給料の伸び率です。
同じくざっくり年率1〜2%で伸びているということです。
これ自体は直感的に思い付きそうです。
ただピケティのすごいのは、1800年代からの200年、20か国以上のデータを集めて、GDP以前のデータ含めてこの主張を裏付けたことです。
株やマンションなどの不動産をたくさん持てるのは、一般的には金持ちです。
過去200年「r>g」ですから、投資ができる金持ちほど、さらに金持ちになっていくわけです。
一方で投資するほどのまとまったお金がない財産の少ない労働者は、貧しいままという残酷な現実を表している式なのです。
つまり、財産を持つ親が、子どもにその財産を代々相続させていけば、子どもは相続したお金を投資に回しさえすれば働かなくてもお金が増えていきます。
その元手がない労働者との格差は、どんどん開いていくのです。
これでは汗水たらして一生懸命に働くのがバカらしくなります。
生まれた時の条件が、その後のお金回りの幸せを決定づけているのです。
確率論的に言うと、株、投資信託、不動産などに長期投資をした方が得だということを分かりやすく示した不等式であるとも言えます。
余談ですが、私の大学院時代の専門は材料物性学でした。
その専門用語でオストワルド成長、オストワルド半径という言葉があります。
ある特定の温度でオストワルド半径以上の粒子は、周囲の粒子を取り込んでいき、どんどん大きくなります。
逆にオストワルド半径以下の粒子は、次々に取り込まれていきます。
私は、ピケティの不等式を見た時に、このオストワルド半径を思い出しました。
ある一定以上の資産を保有している人は、どんどん金持ちになっていくのです。
昔、「お金はさびしん坊」という話を聞いたことがあります。
お金はさびしん坊なので、お札が数枚では存在せず、たくさんのお金を保有しているところに集まっていくという話です。
まさにピケティの話ですね。
話をもとに戻すと、このような経済の不等式を知っているのも、何かアイデアを考えるためのきっかけになるかもしれません。
コラムダイエットと数字「ダイエットと数字」というと思い浮かぶのは、岡田斗司夫さんが2007年に出版した『いつまでもデブと思うなよ』で有名になったレコーディングダイエットです。
この方法で120㎏弱からマイナス55㎏ものダイエットに成功したそうです。
このレコーディングダイエットは、文字通りただ記録するだけで痩せるという方法です。
著書が出版されて10年以上たつのに、この方法をサポートするためのアプリも複数存在しています。
食べたものをただ記録するだけでダイエットできるというシンプルな方法が受けているのだと思います。
これも、いわゆる「見える化」の一つですね。
最初のステップは、まずは記録。
食べたもの、食べた時間、体重を記録します。
「見える化」すると問題が把握しやすくなります。
仕事と同じですね。
たとえば「脂っぽいものが多い」「間食が多い」「寝る前に食べている」などでしょうか。
これらの問題を意識しながら、次は食べたもののカロリー、体脂肪率も記録していきます。
食べたもののカロリーを記録していくと、徐々によく食べる食材のカロリーを把握できていきます。
ここで一日に摂取しているカロリーの合計が「見える化」できます。
次のステップでは、この1日あたりの摂取カロリーに上限を設けるのです。
女性は1200k、男性で1500kとありますので、慣れるまではなかなかハードかもしれません。
当然ですが、数字でコントロールすることで、窮屈に感じて、元通りの食事をしたくなるかもしれません。
その際に、気を紛らわせる方法を見つけることができるかどうかがポイントになるそうです。
軽い運動や没頭できる趣味を見つけるなどですね。
次のステップでは、自分の身体との対話を始めます。
食前には、「本当におなかはすいているのか」。
食後には「満足しているのか。
まだ足りないのか」などです。
カロリーの制限を設けているにも関わらず、慣れてくると満腹感を持つことが増えてくるそうです。
ここまでくればしめたものです。
暴飲暴食をしなければ、リバウンドも怖くありません。
記録する際のポイントは、溜めて夜に一気に書くのではなく、間食含め食べた都度に記録することが重要です。
その都度記録する。
つまり習慣にできればダイエットも楽しくなってきます。
習慣にするのは、「報酬」が必要です。
たとえば、お気に入りの筆記具やノートを使って気分が良い。
あるいは、UI/UXがよいアプリを使ってストレス解消法などを見つけることができるかどうかも重要です。
ダイエットと数字という話では、「食べる順番」ダイエットも有名ですね。
こちらも実践は簡単です。
食べる順番だけ意識するとダイエットできるという簡単な方法です。
順番は、①汁物、②食物繊維、③たんぱく質、④炭水化物です。
最初におなかに溜まりやすい汁物を食べることで、おなかに満腹感を持たせる効果があります。
次に食物繊維を食べることで、血糖値の上昇を抑えます。
血糖値が高まると脂肪を吸収しやすくなります。
食物繊維を食べることで、これを防ぐ効果が見込めます。
3番目に肉や魚のメイン料理をいただきます。
そして最後が炭水化物。
炭水化物を最後に食べるというのが、この「食べる順番」ダイエットの最大のポイントです。
炭水化物を空腹状態で食べると、血糖値が上昇し、脂肪を吸収しやすくなってしまうのです。
また、最後に炭水化物を食べることで、食べすぎを抑制する効果も見込めます。
こちらのダイエットは、①汁物、②食物繊維、③たんぱく質、④炭水化物という順番さえ覚えればよいので、実践はさらに簡単です。
私自身は、食べる順番ダイエットと体重記録という方法で、10年くらいプラスマイナス1~2㎏の体重をキープしています。
私はワインが好きなので、一生健康で毎日飲み続けるために体重のコントロールをしています。
自分の意思が伝わって初めて、いい仕事になる第4章では、「人を動かすリーダーの数字力」について説明していきます。
ビジネスに限らず何かを進めるのは、突き詰めると「人」です。
上司、部下、取引先、パートナー、家族、ご近所さんなど、彼らに私たちが考えていることをきちんと伝えて、一緒に動いてもらわなければ何も進みません。
今まで解説してきた「数値化」「見える化」「因数分解」「2軸思考」などを効果的に活用して、「人」に行動変容をしてもらうスキルをまとめました。
ポイントは3つ。
「タイムマネジメント」「対話力」そして「見える化」です。
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