第2章組織力の公式
組織と集団の違いそもそも「組織」とはいったい何なのでしょうか?強い組織をつくり上げていくためには、まず組織とは何かを知ることが不可欠です。複数の人が集まれば組織?組織は、複数の人が集まって構成されます。しかしながら、複数の人が集まっているだけでは組織ではありません。たとえば、渋谷のスクランブル交差点には数えきれないほど多くの人がいますが、この状態は組織でしょうか?当然のことながら、同じ場所に多くの人が存在しているだけの状態を組織とは呼びません。なぜなら、スクランブル交差点にいる人には「共通の目的」がないからです。ある人は買い物に行き、別の人は仕事に向かい、また別の人は学校に行くなど、それぞれ別の目的を持っています。別々の目的を持っている人が集まっていても「組織」にはなりえません。共通の目的があれば組織?では、映画を見るために映画館で座っている人たちはいかがでしょうか?同じ映画を見るという「共通の目的」がありますが、これは組織と呼べるでしょうか?もちろん、「共通の目的」があるこの状態も組織とは呼べません。映画を見るという共通の目的のために集まった状態(集団)ではありますが、「組織」ではありません。なぜなら、映画を見るという目的は、他の人がいなくても、つまり、一人でも達成することが可能だからです。組織は、複数の人が協力して共通の目的を達成しようとする結局のところ、「共通の目的」を、個人で達成するのではなく、他の人と「協力して達成を目指す」ことで「組織」となります。個人で達成可能な目的であれば、わざわざ複数の人が集まる必要はありません。そのような目的であれば個人で達成したほうが、「組織のもやもや」を抱えることなく楽です。個人では達成できないような大きな「共通の目的」を複数の人で協力して目指すことにこそ、複数の人が集まる「組織」をつくる意味があります。
組織力=個人の力の単純合計+相乗効果以前、プロレスラーのチームと女性の綱引きのチームが対戦をして、どちらが勝つかというクイズ番組を見ました。プロレスラーのチームは身長180cm以上、体重100kg以上、筋骨隆々の大男揃いです。一方、女性のチームは綱引きの強豪ではありますが、身長は150~160cmほど、体重はプロレスラーの半分程度と見受けられました。どちらが勝ったと思いますか?結果はなんと、女性チームの勝利でした。一人ずつで力比べをしたら、プロレスラーのほうが圧倒的に強いはずです。しかしながら、体格では圧倒的に劣る女性が全員の力を合わせ、同じ方向に、同じタイミングで綱を引くことで、筋骨隆々のプロレスラーに勝利したのです。この話から分かることは、組織力は、「個人の力の単純合計」ではないということです。個人の力の単純合計に、相乗効果(プラスの場合もあれば、マイナスの場合もあります)を加えたものが、組織力なのです。たとえメンバーそれぞれの力が強かったとしても、正しくその力を合わせて相乗効果を生み出さなければ、組織力は大きくなりません。「個人の成長は組織の成長」であると考えて、個人向けの研修や能力開発に力を注ぐことがありますが、力の合わせ方を間違えると、組織の成長にはつながりません。個人個人の力を高めることと同時に、相乗効果のマイナスを減らしプラスを増やすことができて初めて、強い組織力が発揮されます。
個人の力=最大出力×発揮率高性能のエンジンを積んでいる自動車があるとします。自動車としての基本性能は高く、理論上の最高速度は非常に速いのですが、アクセルを踏まなければスピードは出ません。小さなエンジンしか積んでいなくても、アクセル全開にすれば、高性能の車に勝てます。自動車のエンジンと同じで、スキル、経験などで構成されるその人が本来持っていて最大限発揮できる力、すなわち、ポテンシャルがその人の「最大出力」となります。そして、実際の仕事において、どれだけアクセルを踏み込んで出力を引き出せているかが「発揮率」になります。個人の力は最大出力と発揮率の掛け算となります。どちらか一方ではなく、それぞれをいかに高めるかが重要になります。
高い目標設定が「最大出力」を成長させるまずは、最大出力を成長させる方法について考えてみましょう。そもそも、仕事における「成長」とはどんなものでしょうか?私は、コンサルティングやセミナーの現場で「これまでのキャリアでどのようなときに成長したか?」をよく質問するのですが、次のような答えが返ってきます。◯大きな仕事を任され、やり遂げたとき◯トラブル、困難を乗り越えたとき◯高い目標を何とか達成したとき◯部下を育成し、目標を達成させることができたとき「できない」と思っていたことが、簡単ではない行動や経験を通じて「できた」ときのことを回答いただくことがほとんどです。つまり、仕事における成長とは、経験を通じて「できなかったこと」が「できる」ようになったことと言えるでしょう。また、成長を実感するのは、なんらかの行動、経験を通してということもポイントです。過去の研究でも、仕事における成長への影響は、70%が「経験」、20%が「他者からの学び」、残り10%が「本や研修」からとされています。つまり、仕事の「経験」こそが、最大出力を成長させるカギとなります。コンフォートゾーンではなく、ストレッチゾーン「できない」と思えるようなことへの挑戦、すなわち、高い目標を設定してそれに挑むことで人は成長します。目標設定には3つのゾーンがあります。苦労や努力なしに簡単に達成できる目標は「コンフォートゾーン」と呼ばれます。快適で居心地のよいゾーンであり、今のままでも簡単に達成できる目標ですので、成長は望めません。
成長につながるのは、今の状態では背伸びしてやっと届くか届かないかのところにある目標で、「ストレッチゾーン」と呼ばれます。背伸びして挑戦することになるので目標に対して不安やストレスを感じることになり、快適で居心地がいいゾーンではありません。一方で、目標は高ければ高いほどいいというわけでもありません。不安やストレスを過度に感じるほどの目標は「パニックゾーン」と呼ばれます。読んで字のごとく、パニックになってしまうほど高い目標のことです。このようなゾーンでは、目標に向かった挑戦ができなくなってしまうので、成長は望めなくなります。つまり、ストレッチゾーンにある高い目標を設定することで、最大出力は成長していきます。内省とフィードバックと立て直し最大出力を高めるためには、設定した目標に向かって行動していくことが重要です。その際、ただやみくもに行動するのではなく、何ができて、何ができなかったのか、そして、次に何をするのかまで「振り返る」ことで、今までできなかったことが次はできるようになる。つまり、成長につなげていくことができます。振り返りには2種類あります。まず、本人が振り返る「内省」です。自分の経験を自分で振り返ることで、経験から学び成長につなげることができます。もう一つは、現場リーダーによるメンバーの振り返りの支援「フィードバック」です。立教大学経営学部中原教授の定義をもとに考えると、フィードバックは次の2つの機能からなります。1.耳の痛いことであっても、部下に「現状」をしっかり伝える(情報通知)2.将来の行動計画をつくる(立て直し)『実践!フィードバック』中原淳著PHP研究所内省だけだと、自分自身では気づかない点を見落としてしまったり、間違った解釈をしてしまうことがあります。そこで、現場リーダーはメンバーに、何ができて、何ができなかったかという情報を正しく通知し、次に向けた「立て直し」を支援するのです。マイクロマネジメントはNGフィードバックを行う際に気をつけないといけないことがあります。それは、マイクロマネジメントといわれる過度の指示、管理を行ってしまうことです。たとえば、立て直し策をメンバーが内省して考えることなく、いつも現場リーダーが細かく指示するとどうなるでしょう。メンバーが立て直し策を実行し、うまくいったとしても、それはただ言われたことを実行しているだけなので、メンバー自身の経験値にはなりません。また、仮に立て直し策がうまくいかなくても、現場リーダーに言われたとおりにやっただけなので、自分の責任だとは考えなくなります。同時に、立て直し策を自分で考えたところで後で現場リーダーから細かく指示されるので、立て直し策をだんだん考えなくなってしまいます。このように、過度に管理するマイクロマネジメントでは、メンバーの成長を阻害することになってしまいます。
発揮率が高い組織はエンゲージメントが高いエンゲージメントというのは比較的新しい概念で、タワーズワトソンの定義では、「従業員の一人ひとりが企業の掲げる戦略・目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲」となっています。一言でいえば会社と従業員の結びつきのことで、エンージメントという英語で理解しようとするより、次ページの図のように、会社と従業員の心理的な距離、結びつきと考えたほうが理解しやすいでしょう。エンゲージメントが高いメンバーは、会社の目的、目標を達成しようという高い熱意を持ちます。一方、エンゲージメントが低いメンバーは、会社の目的、目標の達成に対する意欲が低く、できるだけ楽をして働こうと考えたり、批判や批評ばかりをしています。当然のことながら、エンゲージメントの高い人が多い組織は業績が良いと、さまざまな調査で実証されています。エンゲージメント調査で有名なアメリカの調査会社ギャラップ社の調査から、エンゲージメントの高い組織と低い組織とでは、多くの違いがあることがわかりました。エンゲージメントが高い組織は、さまざまな点でパフォーマンスが高かったのです(表を参照)。
つまり、高い目標を掲げて「最大出力」を成長させると同時に、エンゲージメントを高めて「発揮率」を高めることで個人の力が最大化されるということです。では、どのようにすればエンゲージメントを高めることができるのでしょうか?
エンパワーメントがエンゲージメントを高めるエンゲージメントを高め、各メンバーが伸び伸びと、持てる力を最大限発揮できる組織を作る秘訣は「エンパワーメント」にあります。エンパワーメント(empowerment)は、em+power(力を与える)の名詞形であり、権限委譲などと訳されることもありますが、組織づくりにおけるエンパワーメントの意味は、「従業員の持っている能力、意欲を最大限引き出し、自発的に仕事を進める力や権限を与えること」です。勝ちパターンが決まっていた時代においては、権限を持つ上司がいて、部下が上司の言うとおりに実行する上意下達の指示命令型の組織づくりが有効でした。しかしながら、予測困難性が高い現代では、上司の指示が必ずしも「正解」ではなく、部下が適切な権限を持ち判断する中で仕事を進めることが求められます。また、部下自身も自分の権限で判断、実行することで、高い意欲で仕事に臨むことができます。エンパワーメントが高い効果を持つことは、私の経験からも正しいと断言できます。例をあげましょう。私が経営していた会社では、店長会で、何をどう売るのかを厳密に指示するようにしていました。しかし、なかなか現場で実行されませんでした。そこで、主力製品が何かだけを決め、「売り方」については店長主導で話し合って決めるという形に店長会を変更したところ、現場での実行度合いが変わり、売上も大きくプラスに転じました。また、このことをきっかけに店長からの発案や店長同士の相談も増え、組織として一段階成長したことを実感しました。店長の感じていた本部主導のやらされ感、つまり「もやもや」が、「わくわく」した熱意に変わっていったのです。共通の目的を理解し、共感していたとしても、自分の意志がまったく反映されないと、意欲は湧きにくいものです。エンパワーメントによって「わくわく」が発生し、自律的、自発的に能力、意欲を目的達成に向けることができます。
権限委譲≠エンパワーメント現場リーダーとしてメンバーをエンパワーメントするためには、エンパワーメントを正しく理解する必要があります。エンパワーメントは「権限委譲」と訳されることが多く誤解されがちですが、ただ権限を委譲するだけでは、メンバーのポテンシャルを引き出すことはできません。繰り返しになりますが、「メンバーの持っている能力、意欲を最大限引き出し、自発的に仕事を進める力や権限を与えること」がエンパワーメントです。ここには、自律性の促進と支援という現場リーダーからの積極的な関わりが欠かせません。自律性の促進人は「自律」してこそ、初めて持っている力を最大限発揮することができます。上司の指示命令に基づき言われたことを言われたとおりに行っているだけの状態は、自律ではありません。自分で計画し、自分で自分を律しながら行動することが、自律です。プレーヤー時代にまじめで優秀だった人が現場リーダーになると、メンバーを律するようなマネジメントを行いがちです。メンバーを律することはもちろん必要ではありますが、度が過ぎるとマイクロマネジメントと呼ばれる過度に干渉していくような管理になってしまいます。過干渉も問題ですが、すべてを「丸投げ」というのもいけません。方向性、目的を明示し正しい理解をしたうえで任せることが重要です。方向性について共通認識ができたうえで、メンバーが自分で考え行動できるようにプロセス、やり方を任せることが自律には必要です。そうすることで、メンバーは遠回りや失敗をすることもありますが、学びや成長が促進されます。また、現場リーダーが思いもよらなかった方法や過去に縛られないプロセスを生み出すことで、飛躍的な成果を生み出すことにつながります。ただし、自律と自由の違いは正しく理解しておかなければなりません。組織で一緒に働くのですから、どんなことでも自分で自由に考えて行動して良いわけではありません。組織の目的、その中でのメンバー個人の役割を正しく認識したうえで初めて、自律的な行動は意味あるものになります。モニタリングとフィードバック、承認・賞賛業務においては、メンバーが自律した行動ができる環境を整備しなければなりません。そのような環境は、適切なモニタリングとフィードバック、承認・賞賛を行うことで整えることができます。メンバーの状況をしっかりと把握するモニタリングがあって初めて、適切なタイミングでの支援が可能となります。モニタリングで事実を正しく把握したら、それをもとにフィードバックを行うというのがエンパワーメントにおける支援です。自律を求められても、自分自身では状況把握や行動の修正を正しく行えないことは多々あります。適切なフィードバックがあれば、自分で考え、行動できるようになります。業務に直接関わる具体的な内容は当然のことですが、業務には直接関わらない精神的な面での支援も自律を促すうえで大切なことです。自律的に働いている中でも躓いたり悩んだりすることはもちろんあります。そして、それを自分だけで抱え込むというのもよくあることです。そのようなとき、今行っている業務についての客観的なフィードバックだけでは支援しきれなくなります。精神的な面でメンバーを支援する、つまり、これまでに積み重ねてきたことを承認・賞賛して、信頼関係を強くするのです。透明性自律性を促進するうえでは、組織の透明性を高めることも欠かせません。経営者とメンバーの間には、持っている情報の量に大きな差があります。情報量が違うため、メンバーが経営者と同じように考えることは困難です。情報を公開したとしても、それぞれ役割が違うため解釈や情報の優先度は違ってくるかもしれません。しかし、同じ情報に触れる機会を持つことで、自律のために必要な方向性や役割を正しく理解することができます。組織の透明性を高めることは、組織や他のメンバーへの信頼を高めることにもつながります。社長が何を考えているのか、隣の部署がどんなことをしているのか知らない状態でお互いを信頼し合うことは不可能です。透明性を高め、自律したメンバーが支援し合うことで個人も組織も成長できるようになることこそが、エンパワーメントの神髄です。一老舗旅館からスタートし星野リゾートを大きく成長させた原動力がエンパワーメントであると星野社長も述べています。星野リゾートが目指しているのは顧客満足と利益を両立させることができる独自のホテル運営手法だ。今では多くのエンパワーされた社員たちが、この目標に向かって日々行動し、会社の仕組みを進化させ、それが全体として業績向上に結びついている。『社員の力で最高のチームをつくる〈新版〉1分間エンパワーメント』ケン・ブランチャード、ジョン・P・カルロス、アラン・ランドルフ著星野佳路監訳ダイヤモンド社
相乗効果の源泉である多様性は、諸刃の剣個人の力は、高い目標設定で最大出力を高め、エンパワーメントで発揮率を上げていくことで強化されます。一方、「組織力=個人の力の単純合計+相乗効果」でした。相乗効果の部分は、プラスのこともあればマイナスのこともあります。この相乗効果の源泉は多様性にあります。新卒一括採用、年功序列、終身雇用などこれまでの日本の企業は男性中心の画一的な働き方が主流でした。このような働き方の中では、自然と「空気を読む」「背中を見て育つ」ことになっていました。しかしながら今では、性別、年齢、国籍、文化、考え方などさまざまな人材や労働形態、そして転職を含めた人材の流動化など、企業の人材の多様性が拡大しています。その理由として考えられるのが、画一的な組織に比べ優秀な人材を確保しやすいということ、そして、さまざまな能力が発揮されることでイノベーションを生む効果があることです。ボストン・コンサルティング・グループによる分析でも、多様性に富むほどイノベーションによる収益の割合が高いことが示されています。一方で多様性の高い組織には、多様であるがゆえに方向性にバラツキが生じやすいというデメリットもあります。多様性の持つプラスの側面を最大限発揮させつつ、デメリットを最小化するためには、どのようなことが必要なのでしょうか?
心理的安全性が組織を活性化するグーグルの行った、「ProjectOxygen」というリサーチプロジェクトによって「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」のほうがチームが効果的であるために重要であることが明らかにされました。そのリサーチで分かった最も重要な因子が「心理的安全性」です。グーグルによる「心理的安全性」の定義は次のとおりです。心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understandingteameffectiveness/steps/identifydynamicsofeffectiveteams/簡単に言うと、安心して上司や同僚に意見を言える信頼関係のある状態が、心理的安全性が高いということです。あるメンバーが上司の考えとは違うものの、組織の目的を達成するために必要な意見を持っていたときに、その意見を表明すると怒られそう、あるいは、分からないことがあったときに無知だと思われそうなどと感じると、意見を言わなくなります。組織の目的を達成することよりも、チームの空気を読むことを重視してしまうと、組織として高い業績を望めなくなってしまいます。また、失敗や間違いを認めて、そこから学ぶことで成長につながりますが、心理的安全性のない組織では、メンバーは失敗や間違いを報告しない、隠蔽する、ごまかすなどの行動をとってしまうため、成長できません。現場リーダーは、組織を心理的安全性の高い状態に保たなければなりません。ただし、心理的安全性の高い組織は、風通しや仲が良いだけの組織というわけではありません。ただ風通しが良いだけ、仲が良いだけの組織は、「ぬるい」だけかもしれません。心理的安全性と両立させるべきものを守ってはじめて、多様性の本当の価値を引き出すことができるのです。
多様性の負の側面を抑えるには?多様であるがゆえのばらつきという多様性のデメリットを最小化するために一番大切なことは、「多様であってはならないもの」を明確にすることです。現場リーダーが組織において揃えるべき、多様であってはならないものとは、「共通の目的」と「規律」の2つです。共通の目的画一的な働き方をしていた時代は、同じ会社に勤め上げ、出世することを目的に働いている人が多くいました。しかしながら、多様なメンバーがいる昨今、当たり前ですが人生の目的、生活で重視する点、考え方なども多様性を増してきています。終身雇用制が前提の時代であれば、組織の「共通の目的」は明確に言語化されていなくても、長年勤務する中でなんとなく分かっていくものでした。しかしながら、多様な人材が働いていることを前提とすると、これまで以上に「組織は何を目指しているのか?」「どこへ向かいたいのか?」といった組織の「共通の目的」は、なんとなく分かるようなものであってはいけません。「共通の目的」を明確に言語化し、繰り返し伝えることで全員の意識のベクトルを合わせなければ、組織はバラバラになってしまいます。規律組織で一緒に働くうえで信頼関係が不可欠なことは言うまでもありません。信頼関係は、築くことは難しい反面、壊れるときはあっという間です。そのため、信頼関係を壊す行為を組織からなくすことが重要になってきます。知人や友人との信頼関係はどのようなときに崩れるでしょうか?「時間に遅れてきたとき」「ウソをつかれたとき」「陰で悪口を言われたとき」「貸したものが返ってこないとき」などなど、さまざまなケースがあると思います。多様な組織であればなおさら、個人個人の信頼関係を壊すと考えられるケースも多様になります。そのため、「信頼できない」ケースを一つひとつ見極めるのは困難です。また、すべてをルールや規則で縛ってしまうと、ルールの抜け道探しが始まり、結果として組織にとって良くない状態になってしまいます。現場リーダーに必要となるのは「信頼できない」の最低ラインを明確にすることです。「信頼できない」の最低ライン、すなわち、規律を作り、しっかり守れる組織にすることが信頼関係を築く第一歩です。ヤクルトスワローズ、阪神タイガースなどで監督を務めた野村克也氏は次のように書いています。弱いチームは規律が甘い。乱れている。断言してもいい。『そなえ』野村克也著大和書房規律を守ることは社会人であれば常識だ、と考える人もいるでしょう。しかしながら、何を規律として守るべきかは人によって大きく異なります。そのため、人によって理解の差がでないように明確に言語化することが大切です。さらに付け加えると、現場リーダーが作るべきなのは「最低ライン」だけで、規律だらけでメンバーを縛りつけることのないようにする必要もあります。
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