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Chapter1OKRの基本

Prologueリーダーの役割は、チームのゴールを示すこと「リーダー」とはなんでしょうか?世の中には、さまざまな定義があふれています。本書では、次のように定義します。3~6人規模のチームの、パフォーマンスと成果を最大化する責務を持つ人なぜ、このような責務を持った人が必要なのでしょうか?それは、単に人が集まっただけでは、求められる成果を出すのに、かなり多くの労力をかける必要があるからです。ほとんどの場合において、人が集まったとき、一人ひとりの力を出す向きは異なります。このような状況では、各人が頑張っても、トータルとしての成果は振るいません。1人が一人前の仕事をしているのに、5人で仕事をすると4人分の成果しか得られず、5人分の仕事をしようとするとなぜか7人必要になってしまう……、そんな状況はないでしょうか。そんなとき、何がゴールかを明確にすることで、チームの方向性を揃えられるようになります。このゴールをチームに示すことが、リーダーに求められる最大の役割です。リーダーやメンバー、それぞれのマンパワーでは限界があります。複数人の力を活かして、1人ではできないことを成し遂げるのがチームです。しかし、ゴールを明確に示しただけでは、寄せ集められた人たちが、すんなりと十分な成果を出せるようなチームにはなりません。人は恒常性と呼ばれる性質を持っており、ある程度安定した状態であれば、できる限りその状態を保とうとするからです。一般的には、チームはこちらのタックマンモデルに示すような、「形成期→混乱期→規範期→機能期→解散期」という経過を通っていきます。【形成期】メンバーが集められてチームができ上がる。はじめは仕事に慣れていないが、これまで行ってきた仕事の延長線上で仕事をこなしていくうちに、仕事に慣れて少しずつ成果が上がる。メンバー同士のコミュニケーションはそれほど多くなく、表面的な付き合いをしている状況。【混乱期】一緒に仕事をしていくと、仕事にも慣れ、チーム内のコミュニケーションにも慣れてくる。すると、次第に仕事のやり方などで意見の食い違いが生じてきて、対立の解消に時間が割かれてしまい、作業効率が悪くなる。しかし、そのような衝突を経ることで、人に備わっている「今まで通りに仕事をしたい」という恒常性に打ち勝ち、新たなやり方が生まれる。【規範期】新たなやり方を進めていくためにルールが決まり、そのルールに従って仕事をしていく中でさらにルールが整備され、スムーズに仕事が進むようになる。

【機能期】スムーズに仕事が進むにつれてチームとしての方向性も明確になり、その方向性を個人が認識し、自発的に動けるようになる。そして成果はますます向上する。【解散期】最終的には、いつかはチームは解散する。このように、十分にチームとして機能するには、どうしても時間が必要になります。この時間を短縮し、素早くチームを立ち上げていくことも、リーダーに求められます。チームの状態に応じてリーダーシップのスタイルを変えていく必要があるのです。リーダーシップの4つのスタイルリーダーシップのスタイルとして、1977年にポール・ハーシーとケネス・ブランチャートが提唱したSL(SituationalLeadership)理論に基づくモデルをご紹介しましょう。

この理論ではリーダーシップのスタイルは、S1の指示型リーダーシップから始まり、S2のコーチ型、S3の援助型、そして最終的にはS4の委任型リーダーシップへと変わることを示しています。横軸の「指示的行動」とは、何をするのか(What)、どのような方法でするのか(How)、どこでするのか(Where)、いつするのか(When)など、業務について詳細に指示すること。縦軸の「援助的行動」とは、部下とよくコミュニケーションをとり、必要に応じて励ましたり、サポートしたりすることです。S1の「指示型」では、リーダーは業務について具体的に指示し、きめ細かく監督します。意思決定はリーダーが行うため、部下とのコミュニケーションは少ないです。S2の「コーチ型」では、リーダーは引き続き指示命令をしますが、質問を投げかけるなどのコミュニケーションをとり、部下に提案もさせます。まさにコーチですね。S3の「援助型」は、リーダーが部下の背中を押してあげるイメージです。部下の意見を聞き、ほめたりアドバイスしたりしながら、意思決定を助けます。S4の「委任型」では、部下はすでに自発的に行動できるため、リーダーは仕事の責任を部下に任せます。

報われないリーダーさて、本書をお読みのみなさんは、S1からS4のうち、どのリーダーシップを実現しているでしょうか。リーダーたるもの、颯爽とチームメンバーをまとめ上げ、最高のパフォーマンスを引き出したいと思うことでしょう。テレビや雑誌、ネットで取り上げられる、世界のリーダーに憧れを抱いている方もいるでしょう。しかし、現実は厳しいもので、みなさんがどんなに頑張ってもメンバーとの溝は埋まらず、頑張れば頑張るほどメンバーとの溝が深まっていくというのが現実かもしれません。リーダーとして頑張っているのにこれでは報われませんね。しかし、このような状況になってしまっているのは、リーダーのあなたがよかれと思ってしている行動が原因かもしれません。リーダーとして頑張っているのに、報われないケースをいくつかご紹介します。このようなケースに心当たりがあるようでしたら、リーダーであるあなたの頑張り方が問題だと思ってください。【ケースA】属人化、やれる仕事しかしない、強く言えないチームメンバーは自分よりも年上のベテラン揃いで、ものすごく気の利くメンバー。リーダーが年下でも、アットホームな雰囲気で接してくれる。ベテランなので、慣れた様子でどんどん仕事をこなしていく。しかし、新しいタイプの仕事をお願いすると、「やったことないから無理。失敗して迷惑をかけるかもしれない」と拒否されてしまう。年上ということもあり説得するのははばかられるし、説得に労力をかける時間ももったいないし、精神的にも苦痛を伴うので、仕方なく、リーダーのあなたがその仕事を引き受ける。こんな状況が続いて、いつの間にかリーダーの自分だけが居残って仕事をしている状態に。上司からは「いつも頑張っているね!」とよい評価をされるので、さらに頑張ろうとする。……これは、S1以前の状態です。【ケースB】自分が自分が上司から新規事業の企画を任された。チームメンバーと一緒に新しい企画をしている。メンバーも今回の企画の仕事を前向きに捉えてくれている。みんなでアイデアを持ち寄ることにした。他のメンバーに負けるものかと、気合いをいれてプレゼン資料を作った。各自のアイデアをお披露目するレビューの場で、まずはお手本を見せようと、リーダーが最初に自分の企画のプレゼンを行った。リーダーの目から見ても、他のメンバーのアイデアのほうがキラリと光るものがあると感じたが、リーダー以外の全員一致で、リーダーのアイデアが選ばれた。その後、企画を進めているが、メンバーから、口には出さないものの「リーダーの企画だから、リーダー1人で進めればいいでしょ」的な雰囲気を感じてつらい。……S2の状態です。【ケースC】先回りして成長の芽を摘む最近のIT技術の発展は目覚ましく、なかなか理解できない。デジタルネイティブな若手は、スマートに情報機器を使いこなして、どんどんと仕事をこなしていく。手帳ではなく、スマホでメモもスケジュール管理も済ませている。商品のランディングページも、キャッチコピーやページのラフスケッチを伝えれば、1日もあれば完成させてしまう。この手の仕事は若手に任せて、若手が集中しやすいように、若手が雑務と思うような仕事はリーダーが一手に引き受けている。細かい作業を行っているだけ。……S1の状態です。【ケースD】細かく指示を出しすぎ、インセンティブで気を引きすぎ事業の調子がよく、新たなチームを立ち上げ、そこのリーダーになった。メンバーは、社内では集められなかったので、その大部分を新規に採用した。他のチームよりもいい成果を出したい。仕事に慣れないメンバーが大半なので、親身になって教えることを心がけている。また、やる気にさせるために3カ月ごとに成果を評価し、トップには金一封を渡している。……これは、S1の状態です。メンバーからは「ええ恰好しいリーダー」とも思われていそうです。この通り、これらのケースでは、S1の「指示型」かS2の「コーチ型」でとどまっており、チームのこれからの成長は見込めません。まずはS3の「援助型」のリーダーシップに移行したいところです。援助型のリーダーシップは、言い換えれば、サーバント型のリーダーシップ。サーバント(servant)は、「召使い」や「家来」といった意味です。サーバント型のリーダーシップでは、こちらの図のようにチームが持っている目標を達成するために、リーダーがチームに奉仕します。それでは、最終的に目指すべきS4の「委任型」リーダーシップを具体的に行うには、どうすればよいでしょうか?そのヒントになるのが「OKR(ObjectiveandKeyResult)」です。OKRで解決しようメンバーに意思決定や問題解決を委ねる委任的なリーダーシップに不安を覚える方は、多いと思います。しかし、その一方で理想のチームというのは、このようなものだと考えている方も少なくないでしょう。このようなチームにするには、2つのポイントを押さえることが肝要です。1つは、チームで合意した目標を作ること。もう1つは、チームで目標達成のために、カイゼンしながら行動し続けることです。これらは、当たり前のことではあるのですが、実践しようとすると何かと難しいもの。このような課題を解決するときに使える手法が「OKR」なのです。

本書では「OKR」を活用して、チームとしての成果を向上していくヒントをご紹介します。Chapter1では、まず、OKRの基本をお伝えします。OKRが成果を生むからくりから、OKRのよくある勘違い、OKRのメリットまで挙げているので、ここでOKRの全体像をつかんでください。Chapter2では、具体的なOKRの設定方法(=OKRの始め方)をご紹介しています。理論がわかっただけでは意味がありません。この章を参考に、ぜひチームのOKRを設定してみてください。Chapter3では、チームでのOKR運用方法を、具体的なノウハウとともにご紹介しています。OKRを設定しても、正しく運用できなければ効果は見込めませんから、Chapter2とセットで実行してください。最後のChapter4では、一歩踏み込み、組織でOKRを使う方法をお伝えしています。チームで使ったOKRを、部署、会社へと広げていく方法です。本書を片手にリーダーの役割を遂行し、チームの目標を達成していってください。OKRJapanマスターファシリテータ天野勝

Prologueリーダーの役割は、チームのゴールを示すこと/リーダーシップの4つのスタイル/報われないリーダー/OKRで解決しようChapter1OKRの基本01なぜ目標が大事なのか?目標がメンバーの成果を最大にする/目標達成は計画通りにはいかない02OKRとは何かOKRは「目的」と「主要成果」/OKRの4つの原則03OKRが成果を生むからくりOKRは攻めの目標管理手法/達成できれば大きな成果となる/失敗が許される/新たなアイデアが生まれやすくなる/対立しにくくなる04OKRの勘違いスタートアップ(起業)だけが使うものである?/企業レベルで使うものである?/個人の業績評価に使うものである?/スタッフ部門が指標を決めるものである?/リーダーが決めた指標を、メンバーが遵守するものである?05OKRのメリット大きな成果が得られる/メンバーが当事者意識を持って仕事を行える/チャレンジしやすくなる/活動の進捗が見える/他の部署・チームとの協力がしやすくなるChapter2OKRの始め方01ゴールを決めるプロセスを確認する02チームの境界を決める03チームのミッションを決めるミッションはチーム全員で決めていく/ミッションの決め方04マイルストーンを決める(3カ月単位のObjective)ミッションのタイプを確認する/「O(Objective)」はワクワクする内容にする05モデルを作成する06目標を決める(Objectiveに対するKeyResult)どの指標に注目するかを決める/具体的な数値目標を決め、「KR(KeyResult)」とする07KeyResultはSMARTで考えるS:Specific(具体的に)/M:Measurable(測定可能な)/A:Achievable(達成可能な)→Ambitious(野心的な)/R:Relevant(関連した)/T:Timebound(期限がある)08OKRの設定例Chapter3チームでOKRを使う01ゴールに向かうプロセスを確認する02運用を設計する03行動を決める行動=タスクを設定する/タスクのサイズは1日以内で完了できるものに/タスクボードを活用する04行動する05達成状況を評価する「O(Objective)」の達成状況を評価する/「KR(KeyResult)」の達成状況を評価する06行動を見直す07最終的な達成状況を評価する08OKRブリーフィングの進め方OKRブリーフィングは「KPTA」でふりかえる/「KPTAふりかえり」のやり方/2回目以降の「KPTAふりかえり」のやり方09OKRデイリーチェックインの進め方1日の作戦を立てよう10個人面談の進め方メンバーと対話しよう11OKRマネジメントボードを活用してみるOKRの運用を支援するデジタルツールChapter4組織でOKRを使う

01OKRの組織導入パターン02「ステップ1:立ち上げ」の進め方OKR推進チームを作る/OKR推進チームのOKRを設定する/ガイドを作る/有識者による講演会、有志による勉強会を開く/最初の導入部門を決める/研修をする/導入を支援する/事例発表会を開催する/次の導入部門を決める03「ステップ2:展開」の進め方研修をする/導入を支援する/事例発表会を開催する/次の導入部門を決める04「ステップ3:定着」の進め方OKRを制度化する/OKR推進チームを解散する05階層型組織のOKR06マトリクス型組織のOKR適切な道具を使おうEpilogue読んだだけではよくなりません。始めて、わかるのです。

01なぜ目標が大事なのか?目標がメンバーの成果を最大にするチームというからには、チームとして求められる成果、すなわちチームとしてのミッションがあります。人が集まっただけではただの集団(グループ)です。求められる成果を達成する責任を持つのがチームリーダーです。リーダーとしてチームを率いていく際に最低限必要なことは、プロローグでもお伝えした通り、以下の2つです。・チームで合意した目標を作ること・チームで目標達成のために、カイゼンしながら行動し続けることしかし、リーダーが手取り足取り細かく指示・命令をしたところで、メンバーはリーダーが思うように動いてくれるとは限りません。本書をお読みのリーダーのみなさんも、上司から事細かく指示されたら、「そんなの言われなくたってわかってるよ」「自分に任せてくれればもっといい成果を出せるよ」などと思うのではないでしょうか?メンバーそれぞれが違う方向を向いていたら、たとえ一人ひとりが一生懸命に頑張ったところで、その成果を合わせても、期待できるような成果は得られません。そこで、メンバーの成果を最大限にするために必要なのが、目標なのです。しかし、その目標が上から降ってきた目標では、メンバーはなかなかその気になりません。目標に対して当事者意識を持つ最大の方法は、目標を決めるプロセスに参加することです。たとえば、パック旅行であっても、1つだけでも自分でオプションを選ぶと、その旅行が、がぜん楽しくなるのはこのためです。目標達成は計画通りにはいかないしかし、短期間の旅行でさえ、最初に計画を立てた通りに進められないことがあるのです。現地に行ってみたら、想定と異なっていることもあるでしょう。なおさら、仕事において計画段階で決めたことを、その通りに進めるだけで目標達成できるのはまれです。特に、目標達成までの期間が長くなれば見通しも立たなくなります。活動しながら、自分たちの行動を確認し、適宜カイゼンしていかなければ、目標を達成するのは難しいでしょう。そして、そのカイゼンした行動もメンバーの足並みを揃えていなければ、成果は薄れてしまいます。

02OKRとは何かOKRは「目的」と「主要成果」ここでまず、OKRについて簡単にご説明しておきましょう。OKRは、「Objective(目的)」と「KeyResult(主要成果)」という2つの言葉の頭文字を並べた言葉で、組織やチーム、個人のありたい姿を達成するためのツールです。Objectiveは、「こうありたい」という姿を表したものです。どの方向を向いて進めばよいかを示します。文章で表されることが多く、定性的な場合がほとんどです。これまでのOKRの紹介では、Objectiveを「目標」と訳すことが多いようですが、私としては「目的」のほうが本来のニュアンスに近いように感じるため、本書では「目的」と訳して進めていきます。KeyResultは、Objectiveがどのように達成しつつあるかを端的に測るための指標です。たとえばチームの運営にOKRを採用するならば、そのチームとしてのあるべき姿を明文化し(Objective)、そのあるべき姿にどのように近づいているかという達成状況を測定するための主要成果を3つ~5つ程度決めます(KeyResult)。測定するのですから、KeyResultは定量的なものである必要があります。主要成果の変化の具合を見ながら、チームが目的に向かって進んでいるかを確認していきます。OKRとは何かを考える際には、2つの側面で考えると理解しやすくなります。狭い定義としてのOKRは、「チームの活動の方向性を示すためのゴール」です。広い定義としては、「OKRを用いたマネジメントの手法」です。OKRの4つの原則OKRには原則とも言える4つのキーワードがあります。「フォーカス」「アライメント」「トラッキング」「ストレッチ」です。「フォーカス」は、大切なことを選び、そこにリソースを集中することです。複数のことを同時に行うと、力が分散してしまいどれもうまくいかない、というような事態に陥ります。これを防ぐには、最も大切なものにすべての力を投入するのが一番です。「アライメント」は、複数の要素間で整合を取ることです。不整合が起きると、要素間にムダが発生してしまいます。それぞれの要素についての理解を深めることで、整合性を増します。

「トラッキング」は、状況がどうなっているかを追跡することです。最初と最後の状態しかわからないと、どちらを向けばよいかすらわからず、障害にぶつかってしまいます。中間の状態がわかることで、障害を避けてゴールに近づくことができます。「ストレッチ」は、現状からさらに高みへと挑戦することです。現状維持のままでは、状況の変化に取り残されてしまいます。現状を打破するには、新しいことに取り組む必要があり、その際に発生する危険を回避するためのセーフティネットも必要となります。本書ではこの後、OKRの具体的な設定方法、運用方法なども紹介していきますが、常にこの4つの考え方が原則としてあることを覚えておいてください。

03OKRが成果を生むからくりOKRは攻めの目標管理手法OKRは目標管理手法の1つです。目標管理の方法ならば、MBO、SMART、KPIなど、これまでも多くの手法が実践され、一定の成果が上がっています。それなのに、なぜ今、OKRがこうも注目されているのでしょうか?それはいい成果が上がっているからです。OKRを使えば必ずしも成果が上がるとは言い切れないのですが、成果を上げている企業でOKRを採用していることは事実で、その企業の知名度とも相まって注目されています。最も有名な事例としては、Googleでしょう。国内ではメルカリも導入しています。目標管理手法は「攻めの目標管理」と「守りの目標管理」に大別できます。攻めの目標管理は、創造性を発揮して新しいものを生み出すことに使われます。守りの目標管理は、現在あるものを失わないようにするために使われます。これまでの目標管理手法は後者の「守りの目標管理」として使われることが多いようです。OKRは、前者の「攻めの目標管理」と、とても相性がよいです。創造性を発揮して新しいものを生み出すような仕事に向いています。何が成果かを主要成果として定め、成果の程度を測定する指標を決めます。そして、成果が出たか判断ができるように目標値を決めます。さてこの目標値、みなさんはどのような値を設定するでしょうか?これまでの目標管理手法の多くは「ストレッチ目標」で目標を設定することを推奨しています。ストレッチ目標とは、現状よりも成長を見込んだ、もしくは成長することを期待して設定した目標です。OKRもストレッチ目標に近い考え方ではあるのですが、主要成果の目標値を決める際に、「野心的(Ambitious)」な目標値を決めることが特徴です。どのくらい野心的かというと、感覚的にその達成確率が60~70%程度のものです。このような主要成果を、1つの目的に対して3つ~5つ程度設定するのです。達成できる確率が100%ではない、野心的な目標値を設定することによるメリットは、大きく以下の4つです。①達成できれば大きな成果となる②失敗が許される③新たなアイデアが生まれやすくなる④対立しにくくなる達成できれば大きな成果となるもともとが達成することが難しい目標値ですから、達成できれば大きな成果となります。達成することが容易い目標値の場合は、「達成することが当たり前」なので、期待を超えて大きく貢献するような成果にはなりにくいです。失敗が許されるもし、失敗が許されない環境であれば、多くの人は「絶対に達成できる目標値」を設定することでしょう。普段は実力を隠しておいて60%くらいのパフォーマンスで働き、目標値も80%くらいのパフォーマンスで達成できるような値をあえて設定するかもしれません。それではチームの成長は期待できないでしょう。OKRでは、達成できなかったとしても、もともと困難なことをしようとしているのですから、特にペナルティにはしません。チャレンジすることが許されているというのは、チャレンジが失敗したとしても叱責されたり、非難されることがないことでもあります。失敗に伴う痛みがなければ、人はどんどんチャレンジできます。創造性を必要とする仕事のほとんどは、計画通りにいきません。多くの試行錯誤が必要です。だからこそ、試行錯誤を繰り返せる環境、すなわち失敗が許される環境が必要なのです。新たなアイデアが生まれやすくなる野心的な目標値を達成するには、何かしらの新しいことをやる必要があります。身近な目標だけ見ていると、どうしてもこれまでの慣習などにとらわれてしまいます。目の前に発生する障害を、その都度取り除くようなイメージです。しかし、目標が遠くにあると、そのような障害を発生しないようにするとか、その逆に障害を転じてプラスにするなどの「仕組み自体を変えるような新たなアイデア」が生まれやすくなります。対立しにくくなる野心的な目標値であれば、チームメンバーが協力し合いやすくなります。

同じチームに所属していたとしても、メンバーの意見は異なります。いわゆる、「総論賛成、各論反対」という状況です。各人の意見がぶつかってしまいます。

意見がぶつかること自体は、互いの考え方を知るうえでも重要な過程ですが、ぶつかりすぎて消耗してしまっては困ります。しかし、同じ目標を持っていると、そのような対立を解消し、目標を達成するための手段のアイデアが生まれます。このような仕組みを用いて対立を解消するための手法も考案されており、TOC(制約理論)では、対立解消図として紹介されています。知らず知らずのうちに、常識として刷り込まれていた制約に気づけることで、新たな発想も生まれやすくなります。対立解消図の例として「野心的な目標を立てる/立てない」を考えてみましょう。次の図では、行動(手段)レベルである「D:野心的な目標を立てる」と「D’:野心的な目標を立てない」が対立しています。しかし、両方の立場で共通となる上位の目的を考えていくと「A:高い成果を上げたい」というところでは一致するでしょう。

次に、DやD’が共通目的のAのどのような要望を満たしているかを明確にします。「B:チャレンジする」と「C:立てた目標を達成する」も、一見すると対立しているように感じますが、共通目的(「A:高い成果を上げたい」)から考えるとこれらが両立できることは、よいことだと思えるでしょう。このように共通の目的(この場合は「A:高い成果を上げたい」)を持つことで、新たな着地点が見つかります。この共通目的は、より野心的であるほど合意しやすいのです。現場改善の手法として紹介されることの多い「トヨタ生産方式」でも、2倍や10倍という高い目標値を設定する事例が紹介されています。

04OKRの勘違いOKRは感覚的に理解しやすいために、誤って解釈されることも多いようです。ここでは、そのような勘違いを引き合いに、OKRへの理解を深めていきましょう。スタートアップ(起業)だけが使うものである?OKRの事例としてGoogleやFacebook、メルカリなどの比較的新しい企業での導入事例が紹介されることが多いため、スタートアップ(起業)にしか使えないものと勘違いしてしまい、「うちではできない」と諦めてしまう方がいます。スタートアップのほうが導入しやすいのは事実です。事例も豊富なため、導入する際の検討もはかどることでしょう。しかし、一般の企業においても、OKRは有用です。伝統のある企業の場合、MBOやKPIといった目標管理の仕組みがすでに導入されている場合も多いと思いますが、これらとOKRを組み合わせて使うことも可能です。企業レベルで使うものである?OKRの仕組みは単純なので、個人の目標管理に使ったり、チームや部門の目標管理に使うことができます。ただし、企業レベルでOKRの仕組みを導入し、企業レベル、部門レベル、チームレベル、個人レベルのそれぞれが連携し、うまく回りだせば、そのぶん成果も大きくなるのは事実です。個人の業績評価に使うものである?目標を達成した場合の報酬として、給与や賞与に反映させるために、個人OKRを設定するというのも代表的な勘違いです。OKRは、より高い目標を掲げて、その目標を達成していくための仕組みであって、業績評価とは切り離して考えるべきものです。スタッフ部門が指標を決めるものである?OKRがうまくいくのは、そこで働く人々の自主性を引き出すからです。企業レベルでのOKRの導入を経営企画室といったスタッフ部門が推進するのはかまいませんが、スタッフ部門が個別の部門やチームの指標を決めるのは、やめましょう。計画の押しつけとなり、自主性を損なってしまいかねません。「指標の設定を個別の部門・チームに任せてしまっては、達成しやすい低めの目標を決めるのではないか」と不安になるかもしれませんが、思い出してください。OKRでは「野心的」な目標を立てるのが原則なので、そのような不安は不要です。とは言え、全社規模でのOKR設定の目標のガイドがあったほうが、取り組みやすいのは事実です。しかし、それそのものが部門やチームのKeyResultになるわけではありません。リーダーが決めた指標を、メンバーが遵守するものである?OKRを使うことで、リーダーの意のままに、メンバーを操れるようになるものではありません。指標はリーダーもメンバーも納得のうえで決めるものです。チームで指標を決め、その指標を活用して、チームの成果を向上させることに使います。

05OKRのメリットOKRについてのイメージは掴めてきましたでしょうか。ここまで説明してきたことを、メリットという形で整理しておきます。大きな成果が得られる成功できるかどうかの確率が半々の野心的な目標を立てるので、それが達成できれば大きな成果となります。達成できない場合でも、80%程度も達成できれば、十分な成果となることでしょう。メンバーが当事者意識を持って仕事を行えるすでに存在している作業レベルの計画が降ってきてそれをやらなくてはならない状態だと、多くの人は「やらされ感」を持つものです。OKRでは、OKRを決めるところからメンバーが参加し、そのOKRを活用して仕事を進めていきます。自分たちで何をするか決め、それを自分たちが実行するのですから、当事者意識を持って仕事が行えるようになります。いつも通りのことをやっているだけでは、野心的な目標を達成することはできません。さまざまな工夫が必要となります。このような工夫を繰り返し、その効果をチームで共有できると、自己効力感も向上します。チャレンジしやすくなる野心的な目標を立てること自体が、チャレンジと考えてもよいでしょう。つまり、OKRを導入するということは、チャレンジが認められているのです。「チャレンジしろ」と号令だけかけて、失敗が許されないような環境では、誰も冒険したがらないものです。活動の進捗が見える測定可能なものがKeyResultになります。このKeyResultを測定し最新の状況にしていくことで、活動がどの程度進んでいるのかが客観的にわかります。他の部署・チームとの協力がしやすくなる他の部署やチームもOKRを使っていれば、どのような活動を行っているかが、外部からも理解しやすくなります。相手を理解できれば、利害がわかり、どのような協力を得ることができるのか、もしくは協力をすることができるのかがわかります。OKRをうまく活用できれば、以上のようなメリットを得られます。あくまでも「うまく活用できれば」の話です。次章以降で、うまく活用するためのポイントとして、OKRの設定の仕方と、OKRを運用する方法を紹介していきます。

 

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