01事例1特定の営業活動を強化することで業績向上を目指す
それでは、みなさんが自分でKPIを作成するための参考になる事例を見てみましょう。
まずは、売上を拡大したい場合です。
年頭所感や事業戦略資料を読むと、その方向性が書かれています。
例えば、顧客数を増やす、1ユーザあたりの売上を増加させる、特定の商品を拡販する、特定のユーザを強化する、特定のエリアを強化する、特定の営業ステップを強化する……などです。
営業プロセスを分解して売上向上策を練る
営業組織での事例を考えてみることにしましょう。
まず、営業活動をプロセスで分解してみます。
営業プロセスに分解し、図式化すると視覚的にも理解しやすくなります。
主な営業プロセスは、❶営業先リストアップ→❷アプローチ→❸ヒヤリング→❹プレゼンテーション→❺クロージング→❻納品の6つとなります。
次の図のように、左から右に棒グラフの高さが低くなっていきます。

これは、例えば営業先を100リストアップ(❶)した場合に、次のステップのアプローチ(❷)では、取捨選択がなされ、例えば90営業アプローチすることを表しています。
当然、次のプロセスでも同様量が減っていくことを図示しています。
また、営業組織では、「売上=営業活動量×受注率×平均単価(正価-値引き)」という式で表現することができます。
ですので、売上を向上させるための選択肢は次の3つです。
A営業活動量を増やすB受注率を向上させるC平均単価を上げる「A営業活動量を増やす」には、❶営業先リストアップ、❷アプローチ、❸ヒヤリング、❹プレゼンテーションなどの行動量を増やすことが必要です。
受注率を上げるためには、❶から❹の営業活動から❺クロージングへの歩留まりを高める必要があります。
平均単価を上げるためには、最後の❺クロージングのプロセスで契約する売上額を向上させることが必要です。
営業活動量を増やす方法具体的な方法について考えてみましょう。
まず、Aの営業活動量を増加させる方法を考えてみます。
仮に❷アプローチ量を1・2倍に増やすことができて、残りのBの受注率とCの平均単価を維持することができれば、売上は1・2倍になるということです。
一般的に、営業の行動量を増やすには、営業工数(時間)を増やすことが必要です。
現在の営業担当に頑張ってもらい1・2倍活動してもらうというのは、あまりに都合がよすぎます。
実際の選択肢としては、新規に採用を行う、あるいは営業代行会社にアウトソーシングするなどが考えられます。
当然ながら、これらを実行するには、タイムラグが発生します。
採用を行った後やアウトソーシング先の教育などが必要です。
当然新たなコストも必要になります。
あるいは現在の営業活動、非営業活動(会議や資料作成など)のムダを見直して工数を生み出すことがポイントです。
受注率を向上させる方法次に、Bの受注率を向上させる方法を考えてみます。
受注率は、例えば「❺クロージング÷❷アプローチ」という分数で表現されます。
ですので、❺クロージング量を増やすか、❷アプローチ量を減らすかという選択肢があります。
❺クロージング量を増やすには、❸ヒヤリングを強化し、❹プレゼンテーション時の企画提案内容を向上させることなどが想定できます。
あるいは、❹プレゼンテーション時に顧客に分かりやすく価値がある商品を提案することでも実現できます。
また、❷アプローチ量を減らすには、❶営業先リストアップの品質を向上させることで実現できます。
どれも選択できるのですが、現場のリアリティがあるかどうかが重要です。
例えば、商品自体を変更できないのであれば、「❹プレゼンテーション時に顧客に分かりやすく価値がある商品を提案すること」を選択できないわけです。
平均単価を上げる方法最後にCの平均単価(正価-値引き)を上げる方法を見てみましょう。
平均単価を上げるためには、値引きを改善する、複数商品の販売をする、高額商品を販売するなどが考えられます。
営業現場でむやみに値引きをする習慣があれば、それを改善するだけで、その分、売上が増加します。
しかも、値引き改善した額は、そのまま利益増加に直結しますので、インパクトが大きいのです。
ABCすべての数値を向上させるのは非現実的3種類の方法を書きましたが、今回のように売上を掛け算として表現する場合、3つの要素とも変数と考えて、それぞれアップさせることを考えがちです。
しかし、3つとも数値を向上させるのは、実際はかなり困難です。
私が引き継いだ事業で、この3つを少しずつ改善する計画を立てて、大コケしたことがありました。
どこにフォーカスするのかを決めなければいけません。
私が営業組織を担当していたときに実際に選択したのは、受注率を上げるというものです。
私は基本的にここから手を打ちます。
各論でいうと、プレゼンテーションをCSFと設定して、プレゼンテーション額をKPIに設定しました。
プレゼンテーションの額をKPIに設定することでなぜ、受注率が改善するのか分かりにくいかもしれません。
これは、次のような考え方に基づいています。
営業担当の過去のプレゼンテーション額と実際の受注額のデータを収集します。
例えば100万円のプレゼンテーションをして、50万円の受注になっていたとすると、プレゼンテーション額に対して50%の受注ができたことになります。
このデータから、目標額の2倍のプレゼンテーション額が必要だと仮定できます。
例えば目標が200万円ならば、プレゼンテーション額は400万円必要になるということです。
営業担当は、顧客のリストを眺めて、どこにいくらプレゼンテーションするのかを検討し、400万円になるように設計します。
そして実際に、顧客にプレゼンテーションを行ったら、その金額を加算していくわけです。
ただ、そのプレゼンテーション額は顧客が検討している額でないと意味がありません。
営業担当の申告数字でよいのですが、その際に、簡単なカードを準備して、顧客に検討している額とサインを自筆で記入してもらうようにしました。
この小さな工夫が受注率アップに貢献します。
理由は2つです。
まず、(私もそうでしたが)営業担当は楽観的に物事を見がちです。
つまり、顧客が検討している額より大きく見がちなのです。
顧客に検討額を記入いただくことで、そのずれを防げます。
そして、もう一つは、顧客にサインをもらうことで、発注確度が高まるのです。
人間は、一度サインすると、それをそのまま進めたくなります。
申込書や契約書ではない、ただのカードなのですが、それでも効果があります。
つまり、もともと営業設計時は50%の歩留まりだったものが、顧客に検討額とサインをもらうだけで受注率が向上するのです。
営業量を増やしたいときは時間短縮が効果的受注率が向上できたら、営業量を増加させる次のステップに進みます。
その際に効果的なのが「時間」を測定することです。
営業活動は、❶営業先リストアップ、❷アプローチ、❸ヒヤリング、❹プレゼンテーション、❺クロージング、❻納品の6ステップで表現できますが、ここでいう「時間」とは、1つのステップから次のステップまでにかかる時間のことを指します。
まず、これを測定します。
そして、❶営業先リストアップや❷アプローチから❺クロージングや❻納品までの期間を短縮できないか検討を行うのです。
この「時間」を短縮できると営業量を増加させることができます。
例えばこの営業プロセスに1カ月かかっていたとすると、1年間で12プロセス回せることになります。
もしも、営業プロセスを半月に短縮することができれば、1年間で倍の24プロセス回せることになります。
つまり、プロセス間の時間を短縮することで営業行動量が2倍になったわけです。
営業プロセスを短縮する3つの方法プロセスの短縮には次の3つの方法があります。
(1)プロセスの省略(2)プロセスの標準化(3)業務の分担プロセスの省略とは例えば、❷アプローチと❸ヒヤリングを同時に行い、2つのプロセスを1つのプロセスにすることです。
1度目の訪問時で顧客ニーズを抜けや漏れなくヒヤリングをするためのニーズヒヤリングツールを整備することで、これを実現できます。
プロセスの標準化とは、それぞれのプロセスで行うことを標準化し、営業ツールや営業トークを整備することです。
例えば、ある営業組織では、営業未経験者が大半でした。
1度にアポイント、プレゼンテーションを行うのではなく、1度目はアポイントを取るだけ、2度目の訪問時にプレゼンテーションを行うようにしました。
この場合、1度目の訪問は3分で次回のアポイント設定を行うことだけにフォーカスします。
そして業務を標準化するためにツールを準備するわけです。
業務の分担とは、❶営業先リストアップを営業以外の職種が実施する、❷アプローチをコールセンターが担い、集中的に実施するなどがありえます。
私が担当していた組織では、❸ヒヤリングを行い、後日、❹プレゼンテーションを実施するというプロセスが標準でした。
プレゼンテーションのための資料を❸ヒヤリング実施日と❹プレゼンテーション日の間に準備をします。
ところが、忙しくなると、ついついこの期間を長めにとるようになっていました。
この期間が長くなると、せっかく盛り上がった顧客の気持ちが冷めてしまい、受注率が下がり、ひどいときはプレゼンテーションのアポイント自体が流れてしまうこともあったのです。
そこで、プロセスを変更し、ヒヤリングを行うと同時にプレゼンテーションを行うフローに変更したのです。
現場からは当初大きな抵抗がありました。
しかし、標準フローを整備し、前述のようにツールとトークを整備し、現場が使いこなせるようにロールプレイングなども実施しました。
結果、プロセスが短くなり、2倍以上の顧客対応ができるようになりました。
すでに受注率を上げていたこともあり、業績に大きなインパクトを与えることができました。
しかも、顧客の気持ちが高まっているタイミングにプレゼンテーションを実施できたので、期せずして受注率を微増することにも成功しました。
その後、プロセスを標準化できたので、それをシステム化し、営業活動を支援することにしました。
結果、若手などの営業経験が短い営業担当でも営業活動量の向上に成功することができました。
ここで重要なポイントは、受注率を上げてから、営業活動量を向上させるという順番です。
すでに受注率が向上しているので、その後、営業活動量を増加しても、高い歩留まり率で受注できます。
間違っても、逆の順番ではしないことです。
02事例2エリアにフォーカスすることで業績を拡大する
売上をエリアごとに分割して考えるケースがあります。
売上=エリアA+エリアB+エリアC+……というイメージです。
例えば、個人向けのサービスで、個人にリーチさせる場合、個人の「生活圏」ごとに特徴を場合分けすることがあります。
生活圏については、個人の生活動線ごとに、おもに2つのエリアを考える必要があります。
個人が住んでいる「住居エリア」と、企業や学校に通っている「就業や就学エリア」の2つです。
個人に効率的に情報を提供するためには、この2つを意識することが必要です。
1つは、住居にいる個人にどうやって情報を提供するのか。
もう1つは、通勤・通学する個人に対してどうやって情報提供するのかということです。
都市部の生活圏には特殊事情がある日常的には、個人は生活圏の中で過ごしています。
一般的に1つの県には複数の生活圏が存在し、1~3の生活圏があります。
ところが、東京は人口が多く、10個以上の生活圏が存在します。
しかも、東京の個人は日常的に、生活圏を飛び越えるのです。
具体的には、住居エリア、就業・就学エリアに加えて第3、第4の場所がある個人が多いのです。
それは、遊ぶエリアです。
いわゆる渋谷や新宿や銀座といった大都市が集積しているので、このような事が起こるのです。
つまり東京は、他都市とはまったく異なります。
個人の行動特性も異なりますし、売上規模も段違いなのです。
自社の戦略を検討する本社は東京にあることが多く、その視点から地方を考えると、事業規模も小さく、あまり魅力的には見えません。
これは、売上規模の大きな既存事業から売上規模の小さい新規事業を検討する際や、高収益の日本の事業から低収益の外国の事業を見ているのに似ています。
顧客群を狭く絞ったマーケティング手法このような場合、東京、大阪、名古屋といった大都市圏とそれ以外を分割して考えるとよいケースがあります。
大都市圏以外については、商品企画、エリア、顧客群を狭く絞ってビジネス展開をして、うまくいくことがあるのです。
現在は存在しませんが、かつてのリクルートには「狭域ビジネス」と呼ぶビジネスがありました。
主要駅からの距離で商圏を決め、業種を絞り、提供するサービス企画を固定化しました。
例えば主要駅から300メートル圏内の居酒屋に対して、5回連続2分の1ページの企画にフォーカスして拡販するといった試みです。
そして全体の広告の中での比率をKPIに設定していました。
これにより、条件を絞っているので、類似の事例が収集でき、営業担当同士のナレッジマネジメントが回転しやすくなるのです。
詳しくは、平尾勇司・著『HotPepperミラクル・ストーリー─リクルート式「楽しい事業」のつくり方』という書籍に詳しく紹介されていますので、興味がある方は読んでみてください。
この本は、事業運営のコツからKPI作成のポイントまでうまくまとまっている本です。
お勧めです。
私は、ホットペッパーが属していた「狭域ビジネス」を監査する仕事をしていた時代があり、このビジネスのメカニズムを研究し、その後、自事業の分析や初期のKPI講座のコンテンツ作成の参考にしていました。
03事例3商品特性から特定ユーザ数をKPIに設定する
商品特性から、ユーザ群あるいはユーザ別に売上を分解して考えるとよいケースがあります。
売上=ユーザA+ユーザB+ユーザC+……と表現できます。
売上が多い順に並べ換えて、累計顧客数と累計売上の折れ線グラフを作ります。
すると売上上位ユーザ数X%に対して、全売上に対する売上上位ユーザの累計売上が何%になるのかが分かります。
一つの目安として売上上位20%のユーザ数が、売上の80%以上を占めている場合、特定ユーザの営業活動を強化するかどうかの分析が有効です。
一般的にパレートの法則と呼ばれるものです。
さらに集中して、数%のユーザ数で50%以上の売上だとすると確実に分析が必要です。
まず、売上上位顧客の特性に共通点がないかを把握します。
例えば特定業界、特定エリア、特定企業規模(売上や利益あるいは従業員数)などです。
コンサル業界などでは、業界の変化に合わせて注力企業をシフトしていく必要があります。
某コンサル企業は、これを上手に戦略的に実施しています。
2ケタ成長の新規売上拡大を果たした成功モデル例リクルートにある企業の人事採用や研修を支援するサービスでは、従業員数の多寡により取引規模は大きく異なります。
従業員100名の企業と1000名の企業では、採用や研修を行う従業員数が異なります。
当然、従業員数が多い方が商談が大きくなる可能性は高いわけです。
当たり前ですね。
この当たり前をきちんとCSFと設定して、KPIとしてマネジメントすればよいのです。
以下は、現在の売上に着目してKPIを設定したケースです。
ある会社の事例で、将来の売上を上げるためのアプローチで科学的だなと思った話があったので紹介します。
前半までは同じです。
自社の取引が大きい、あるいは最近大きくなった企業をピックアップします。
その共通点を発見します。
例えば──◎いくつかの業界で規制変化があった◎一定の企業規模以上である◎その企業の課題を解決できる自社ならではの提案ができているこれが必要条件。
加えて──◎ライトパーソン(正しい人)と商談ができているこれを十分条件だと考えたのです。
つまり、高取引額企業の共通点は、「理由が明確なターゲット企業に、自社独自の提案を準備」して、「その価値が分かり、決断できる人に提案ができている」という2つのことを同時に実行していること。
同社は、これを偶然に頼るのではなく、必然になるようすればよいと考えたわけです。
そこでまず対象企業の選定を行います。
この例でいうと、規制変化があった業界かつ一定の企業規模以上の企業をピックアップします。
それを昨年度取引があった企業群から数十社。
これは昨年度の取引の多寡にかかわらずピックアップします。
そして、同数を昨年度取引がなかった企業群からピックアップします。
次に、ピックアップした企業群の担当を決めていきます。
同社はサービス・商品が6種類ありました。
1つの企業に対して、営業担当、ファシリテーション兼プロジェクトマネジャー、そして6商品・サービスそれぞれの担当の合計8名の担当をつけるのです。
繰り返しになりますが、昨年度の取引の有無にかかわらず、1社あたり8名の担当をつけるのです。
昨年度取引があった企業も、6商品・サービスすべての取引があったわけではありません。
かなりの自社人員リソースをこの企業群に投下しているのが理解してもらえると思います。
この8人のチームは、その後2つの活動を行います。
1つは、対象企業に対して自社ならではの課題解決提案企画を作成すること。
もう1つは、ライトパーソン(その企画提案の価値を理解し、決断できる)を見つけ、その人と会って提案できる状態にすることです。
この2つのワークを並行して実施します。
そして、チーム結成後、1カ月目、2カ月目、3カ月目など、タイミングごとに提案企画の進捗とライトパーソンとの関係性構築の進捗についての関門があります。
この関門を越えられないと、チームは解散になり、そのメンバーは、他チームのサポートに回ります。
つまり、時期ごとの進捗内容がCSFであり、その進捗率をKPIにしているわけです。
この会社は、このアプローチにより毎年2ケタ以上の業績拡大を続けていました。
新規売上拡大の成功モデルの1つだと思います。
営業活動にABCを導入する特定企業にシフトした際の留意点として、参考事例を紹介します。
それは、売上は大きいものの実は儲かっていない企業の存在を明らかにすることです。
これは工場で実施されている工場会計に活用されているABC(AccountBasedCosting)の営業活動への応用です。
ABCは、原材料などの原価だけではなく、工場で作業を行っている人件費も商品に配賦します。
具体的には、ラインで作業した時間を計測し、それに作業者の時間単価を考慮して、原価として算入するわけです。
これにより、その製品の正しい原価を把握でき、結果として利益率も把握できるようになります。
工場以外では、コンサルティング企業もコンサルタントの活動を同様に把握しているケースがあります。
この考え方を営業活動にも活用するわけです。
営業担当がA社に商品aの商談に行った場合、その時間から計算した営業担当の人件費を、A社の商品aの営業費用として紐づけるのです。
これは営業担当に限りません。
例えば営業をサポートするアシスタント、商品担当、コンサルタントがA社の商品aのために活動した人件費を同様に紐づけていきます。
すると、企業ごとの利益や商品ごとの利益を把握することが可能になります。
このとき、取引が大きい企業が必ずしも利益が出ていないことが分かり、愕然とすることがあります。
同様に特定の商品で利益が出ていないことが分かることもあります。
取引が大きいのに不思議ですね。
取引額が大きい企業で利益が出ていないケースのおもな原因は2つです。
1つは、取引が大きいので、値引き要求が強く、値引き額が大きいこと。
もう1つは、同じく企業からの要望が高いので、社内外の人材が動く時間が大きいこと。
それも要望が高いと、解決できる人材も限られていて、その人件費が高いことが拍車をかけています。
このような企業群とは取引の再考が必要です。
利益が出ていない取引を続けることに意味は見いだしにくいですね。
値引き改善が最も先にやるべきことです。
余談ですが、利益額を見ずに、売上額の多寡だけで営業が評価されたり、表彰されたりするケースもあります。
このようなABCを導入することで、それを避けることができます。
ABCは、本格的に導入すると手間がかかりますが、2週間ほどスケジューラに記入してもらう、あるいは人を張り付けて観察するだけで、本格導入の必要性が判断できるケースもあります。
04事例4時代の変化を先取りして特定の商品にシフトする
リクルートのように情報をマッチングするビジネスモデルでは、情報を提供する企業ユーザ(クライアント)と情報収集をする個人ユーザ(カスタマー)という2つのユーザを意識する必要があります。
基本的には情報提供する企業ユーザから広告費をもらい、情報収集する個人ユーザには無料で情報提供を行います。
マッチングビジネスにとっては、「どのようなメディアを使って企業ユーザから個人ユーザへ情報を届けるのが最も効率的なのか」を考え続けることが重要な課題です。
時代によって変化してきた情報伝達手段歴史を振り返ると、かつては自宅に就職情報を無料で届けたり、コンビニエンスストアや駅売店で情報誌を販売したり、その後はフリーペーパーとして無料で提供したり、PCやガラケーなどネットメディアを利用したりしてきました。
最近だとスマホやアプリが主流となり、今後は音声や映像、さらにはVRやARなども意識しなければなりません、ところが、一部の個人ユーザには、いまだにフリーペーパーなどの利用が底堅いのも事実です。
2000年ごろの企業ユーザは、まだまだ紙メディアで情報提供するのが主流でした。
今から考えると、ネットメディアでの情報提供が主流になるのは火を見るよりも明らかでした。
しかし、その渦中にいると、ほんの一部の先進的な企業だけがネットにシフトしだしているにすぎませんでした。
企業全体がネットシフトするには、まだまだ時間がかかるように感じていました。
一方の個人ユーザの情報収集は変化の兆しが見えてきていました。
特に、若い世代はどんどん紙離れが進み、紙での情報収集割合が減り、ネット経由での情報収集が増えており、ユーザの情報獲得手段が大きくシフトしそうな兆しがありました。
総合提案営業から注力商品営業へ経営から考えると、紙メディア商品ではなく、ネットメディア商品に情報提供手法を大きくシフトしていきたいと考えたとしても不思議ではありません。
つまり特定商品の拡販に注力するということです。
いわゆる「注力商品営業」です。
しかし、このときに限らず、変化の時代には、企業ユーザのさまざまなニーズに対して、さまざまな商品を使って総合的に課題解決するという選択も十分に合理的です。
こちらは、いわゆる「総合提案営業」です。
つまり、事業全体の売上=商品A+商品B+商品C+……と表現すると、商品Aだけに「注力商品営業」をするのか、商品A、B、C……どれを売ってもよいという「総合提案営業」をするのかという二択です。
ある意味、究極の選択です。
それまでの営業戦略は「総合提案営業」でした。
ネットメディアの利用企業数を増やすには?しかし、私たちの選択は時代の変化を先取りして、「特定商品営業」にシフトするというものでした。
しかも、その特定商品は、慣れ親しんだ紙メディアではなく、ネットメディアです。
営業先である企業にとってもネットメディアでの情報提供には親和性がありません(今からわずか15年ほど前の話です)。
この決定は、大きな変化です。
本部が方針をシフトしたからといって、全社一丸になって実行できるイメージが持てませんでした。
そこで特定のエリアで特定期間だけ、ネットメディアへの「特定商品営業」を強化するトライアルを設計しました。
当時の目的は、ネットメディアの利用企業数を増やすことです。
ネットメディアで情報提供する企業数を増やし、それらの企業にネットメディア経由で情報収集する若い個人ユーザが反響することで、ネットメディアの効果を体感してもらう。
これが実現したいことでした。
ネットメディアの売上は「ネットメディアの利用企業数×企業あたり売上」ですので、今回の施策では利用企業数を増やすことが重要です。
ネットメディア利用企業数を増やすために取った秘策次に考えなければいけないのは、どのような利用企業を増やせばよいか。
例えば、企業の情報提供メディアによって分類すると次の3つに分類されます。
①紙メディアのみで情報提供②ネットメディアのみで情報提供③紙メディアとネットメディア併用で情報提供当時は「①紙メディアのみ」が多いわけです。
これを一気に「②ネットメディアのみ」に変更できればよいのですが、無理があります。
大半の企業は大きな変化を好みません。
また、紙メディアからネットメディアへのシフトにより個人からの反響が減る可能性もあります。
当時の価格体系でいうと紙メディアの方がネットメディアよりも高額でした、このシフトを起こすことで私たちも売上が減ってしまう可能性があります。
一方で、「③紙メディアとネットメディア併用」にすると、企業から見ても情報提供手段が増えます。
当然ですが、情報が個人ユーザに届きやすくなります。
しかし、紙メディアの広告料にネットメディアを加えるのですから、その分の広告料が高くなります。
その壁を越える必要があります。
しかし、私たちが得たい結果を考えると、どの選択肢を選ぶべきかは火を見るよりも明らかです。
「③紙メディアとネットメディア併用」へのシフトです。
そこで、価格がお得な紙メディアとネットメディアのセット商品を作ることで、広告料値上げを最小限に抑える設計をしました。
特定エリアで特定期間だけ、価格がお得な紙メディアとネットメディアのセット商品の拡販施策のトライアルを行いました。
商品A+商品B+商品C……から「商品A+商品D」への注力営業を行ったということです。
トライアルによって得たさまざまなノウハウこのトライアルによりさまざまなノウハウが収集できました。
営業活動を、アプローチ、プレゼンテーション、クロージング、広告作成・納品、効果検証というステップに分類して、さまざまな数値、情報が得られます。
例えば、アプローチやプレゼンテーション部分では、「営業はどのような顧客群には営業活動を行うのか/行わないのか」、プレゼンテーションやクロージング部分では、「どのような顧客群は、今回のセット商品の利用をしたのか/しないのか」、広告作成・効果検証では、「どのような顧客群に反響が多かったのか/少なかったのか」などです。
これらの数値や情報を事前に想定していた仮説と検証を行います。
そして、修正を行います。
例えば、アプローチ部分では、対象顧客の優先順位の変更、プレゼンテーションやクロージング部分では、営業ツールの見直しや営業支援組織の設置、広告作成・効果検証では、広告作成のノウハウ共有などを行います。
このトライアルは、「ネット商品拡販営業」のための布石です。
これらの修正ポイントを整備して、きたる本番を迎えるわけです。
そして、その本番も1回実施して終了ではなく、たゆまざる改善活動を行っていくわけです。
05事例5従量課金モデルでは歩留まり向上から始める
顧客に従量課金するモデルでは、売上は「リーチ×歩留まり×商材価格×手数料率」と表現できます。
売上を上げる方法は次の4つが考えられます。
①リーチ(つまりユーザ数)を増加させる②歩留まりを上げる=商材を購入してくれるユーザの割合を増加させる③商材価格を上げる=高い商材の購入や購入頻度を上げる④手数料率を上げるどれも変数ですので、どれもがCSFになる可能性があります。
ただし一般的にはリーチを増やすには、コストが必要です。
できれば歩留まりを向上させてから実施した方が生産性は高まります。
商品価格のアップは商品特性によります。
手数料率は商材を提供してくれる企業との交渉になります。
プラットフォーム上で商売をする場合は、かなり困難かもしれません。
ただ、そうでない場合は、検討の余地があると思います。
手数料率が低いと、損益分岐の販売個数が高くなり、ビジネスとしての安定性が担保できなくなります。
まず、手数料率のアップができないかを検討するとよいでしょう。
よく、ビジネスが立ちいかなくなってから、この手数料アップの交渉をするケースがありますが、そのタイミングでは時間が限られており、うまくいきません。
交渉事は、納期がある側が妥協しがちです。
手数料が固定値になった後は、歩留まりの向上を検討するとよいでしょう。
歩留まりの向上にはユーザの「行動シェア」を上げることが重要です。
「行動シェア」を上げる「行動シェア」という考え方について説明します。
ユーザは何かを検討する際に、並行検討します。
例えば5つの商材を並行検討して、そのうちから1つを選択するとします。
商材間の優劣が同等とすれば、1つの商材を提案するという営業活動は5分の1、つまり20%の行動シェアを取ることになります。
つまり、自社商材を5つ紹介できれば、行動シェア100%となります。
もしもユーザが5つのうちのどれかの商材を買う場合は、必ず自社の商材から購入してくれることになります。
当然、すべてのユーザがどれかの商材を買うわけではありません。
何らかの商材を購入する割合を購買率と表現すれば、歩留まり=購買率×行動シェアと表現できます。
私はこのように因数分解することで、次のように考えています。
「購買率を上げることはできない」つまり、本来購買しないはずのユーザに無理やり購入いただくことはできません。
そして、するべきではありません。
一方で、購入するお客様が、その製品を購入する場合は、(我々が扱う製品がよいという前提ですが)、我々を通じて購入していただきたい。
それが「行動シェアを上げる」という考え方です。
実際は、ユーザによっては、10件以上並行検討してから購入する人もいます。
逆に1件だけで並行検討せずに購入する人もいます。
かなりの分散があります。
横軸に紹介数と縦軸に歩留まりをプロットすると、何らかの閾値があります。
例えば、1件紹介では10%、2件では30%、3件では45%、4件では48%、5件では49%などというような傾向が出ます。
この例であれば、2件紹介するのと3件紹介するのでは、歩留まりに大きな違いがあります。
ユーザに対して3件もしくは4件の製品を紹介することができれば、歩留まり向上が期待できるわけです。
この行動をCSFとして、例えば100ユーザあたり70%は3件以上紹介しようとKPIを設定するわけです。
この70%のままだと分母も分子も変数になります。
一定期間に例えば1000ユーザにリーチできるのであれば、70%を乗じて、700ユーザに3件以上紹介することをKPIと設定できるのです。
06事例6採用活動におけるKPIの考え方
採用活動は次のような式で表現できます。
採用数=応募数×通過率複数回の面接を行う場合は、次のように表現できます。
採用数=応募数×1次面接通過率×2次面接通過率×最終面接通過率この応募数、面接通過率のデータは企業ごとにかなり違いますし、また職種ごとの需給バランスによって大きく変化します。
そして、どのステップに課題があるのかで打ち手も異なります。
ですので、職種ごとに分類して打ち手を考えることが必要です。
応募数を増やしたいのか、通過率を上げる必要があるのかで打ち手が異なります。
例えば応募数を増やすには、自社の職種が得意な人材紹介会社の開拓が必要です。
これがCSFになります。
増やしたい職種の採用数と、紹介会社1社から紹介してもらえる応募数から、開拓する人材会社数が計算できます。
増やしたい採用数が10人で、通過率が50%だとすると、10÷50%=20人の応募が必要になります。
紹介会社1社あたり4人紹介してもらえるとするならば、新たに5社の紹介会社の開拓が必要になります。
この「5社の紹介会社の開拓」がその職種採用のKPIになるわけです。
人材紹介会社のケースで説明しましたが、メディアを利用する場合も考え方は同じです。
通過率を上げる通過率を上げる場合を考えてみます。
通過率は2つの項目に因数分解できます。
①自社がその応募者を合格とする率②それを受けて応募者が承諾する率数式として表現すると次のようになります。
通過率=自社合格率×応募者承諾率低い通過率を向上させる場合でも、自社合格率を上げるのか、応募者承諾率を上げるのかで打ち手が異なるということです。
自社合格率を上げる自社合格率を上げるには、応募者の質、自社とマッチングしている人を増やす、合格レベルを下げるといった方法が考えられます。
前者の自社とマッチングしている人を増やすには、人材紹介会社との関係性強化やメディアなどでの告知内容の改善が重要です。
人材紹介会社とは、通過した場合も通過しなかった場合もきちんとフィードバックすることで、修正をし続けることが重要です。
後者の採用レベルを下げる場合は、何らかの要件を緩和することになります。
例えば、スキル要件を下げる場合は、その後の人材育成が必要になります。
人材育成施策とセットで検討しないと、単なる問題の先送りになってしまいます。
応募者承諾率を上げる応募者承諾率を上げる場合を考えてみます。
応募者が承諾しない理由は2つに大別されます。
①他の会社に転職する②転職そのものを取りやめて自社に残る選択をした理由を把握するとともに、対策を打つことが重要です。
特定の企業に採用負けしている場合は、個別の打ち手の検討が必要です。
これは、営業活動と同じですね。
採用活動における重要なCSFとは?採用活動で最も重要なCSFは何か。
それはずばり「スピード」「採用選考スピード」です。
某人気企業は何度も何度も選考を行い、時間をかけています。
それとは正反対のことを言っています。
採用を結婚に例えると理解しやすいかもしれません。
もしも私がモテモテであれば、パートナーをいつまでも待たせることができるかもしれません。
しかし、そうではありません。
それどころか、パートナーの方がモテモテで、私たちが試されているわけです。
だとすると、私たちが競合との勝負に打ち勝ってパートナーと結婚するには、強い競合が出てくる前、あるいは出てきたとしても競合がぐずぐずしている間にプロポーズするしか活路を見いだすことはできません。
これは採用活動でも同じことです。
私たちが、人気企業に打ち勝って優秀な人材を採用するには、1日でも早く内定を出すしかないのです。
もちろん、内定を出しても来てくれない可能性はあります。
しかし、人気企業が、私たちよりも先に内定を出したら、私たちの会社に入社してくれる可能性はゼロになります。
ゼロと可能性があるのは、大きく異なります。
このためにも、「採用選考スピード」のアップは不可欠なのです。
採用面接のムダはどこにあるのか?この話をすると、「拙速に採用活動をしてはいけない」という人がいます。
その通りです。
ただし、「スピードアップ」は「拙速」ではないのです。
採用活動を分解し、時間がかかっている箇所はどこだと思いますか?実は、面接の日程設定なのです。
応募者と面接官の日程設定に時間がかかっているのです。
日程設定の時間を短縮する工夫をするだけで、採用選考スピードが向上します。
例えば、1次面接を行い、後日面接日程の設定をしているケースを考えてみます。
1次面接官に2次面接官の次回面接可能スケジュールを伝える。
加えて1次面接官に、合格の場合はその場で合格を伝えて、2次面接設定の権限を与えるだけで、1週間程度の時間短縮が可能です。
それを拡大して、人材紹介会社に同様の権限を付与すれば、さらに1、2週間の期間短縮ができるようになります。
面接回数を減らして、企業側が一気に会うことでも期間短縮は可能です。
面接設定の時間には価値がありません。
ここのムダ取りをするだけで、採用力が向上します。
そもそも、自社の採用選考期間を把握していない経営者も多いのが実態です。
そこを把握することから始められるとよいと思います。
07事例7社外広報は目的を明確にしてKPIを設定する
自社の存在を社外に発信する社外広報の場合、KPIを設定するのは簡単ではありませんし、必要でないケースもあるかもしれません。
よくあるケースは、社外に広報できたメディアを広告換算し、合計した金額と社外広報にかかっているコストを比較するというものです。
投資対効果を比較し、社外広報の価値を「見える化」するのが狙いです。
これはこれで一つの考え方だと思います。
ある社外広報のKPI設定のケース以前、ある社外広報が、「我々の社外広報の目的は、採用活動の支援だ」と自らの立場を設定しました。
採用活動において応募が増加することに寄与し、応募者が内定承諾することに貢献すると決めたのです。
具体的には、採用ターゲットの企業認知率や転職意向率を高めることで、これらを実現しようとしたのです。
ここまでシャープに絞り込めば、KPIは設計可能です。
まず、現状の企業認知率と転職意向率を把握します。
同時に、自社の企業イメージや転職意向に寄与する要素に関して把握も行います。
そして、採用ターゲットが自社に対して想起してほしいイメージと現実のギャップを把握します。
これらのデータを定期的に把握する仕組みやフローを整備します。
可能であれば競合企業の採用上のデータも把握します。
採用ターゲットに想起してほしいイメージや、現実とそのギャップや採用競合の数値などを参考にKPI設定を行います。
例えば企業認知度70%、転職意向度20%のように設定するわけです。
認知度や意向度は簡単に変化しない数値なので、長期間での数値改善を目指します。
この場合、企業認知度70%、転職意向度20%といった数値がKPIとなります。
並行して、上述のギャップを課題解決する方法について検討を始めます。
例えば採用ターゲットがよく読むメディアに社外広報活動をする必要があります。
前述のように採用活動の場合、職種別にKPI設定を行うので、職種別のメディア把握が有効です。
次にその採用ターゲットとメディアの相性により、どのようなコンテンツが有効なのかを検討します。
採用活動を目的として、社外広報では多様性を担保した同一性が重要に思います。
少し難しい表現をしてしまいましたが、「この会社にはいろいろな人がいる。
そして私と同じような人もいる」ということが伝わるのがよいのです。
そういう意味では、社外広報に登場する人物を多様にすることがCSFとなり、具体的な人数がKPIとなります。
これについては、設計は簡単ですが、実行は難しいです。
特定の人を何度も何度も社外広報する方が、実は簡単です。
しかし、これでは、「いろいろな人がいる」を担保できません。
いろいろな人を社外メディアに取り上げてもらうには、社内の人物の把握も必要ですし、社内外の人間関係づくりも必要です。
かなり難易度は高いのです。
しかも、社外広報に登場することで、転職エージェントから連絡がかかり、転職する可能性を高めてしまうのではないかとも考えがちです。
つまり、実行難易度が高いのです。
だからこそ、他社には容易に模倣ができないので、実行できた場合の、競争優位性が高いのは間違いありません。
今回は社外広報の採用活動への寄与についてでしたが、これは販促活動への寄与でも、ブランドイメージ向上でも基本的な考え方は同じです。
目的を絞り、ターゲットを絞り、それに合わせたメディアとコンテンツの整合性を取ることがポイントです。
08事例8社内スタッフ部門は従業員満足度をKPIにするのが基本
ある従業員向けのサービスを提供している社内スタッフ部門の事例です。
この部署は、社内向けのPC、スマホ、イントラネット、社内システム、ネットワークなどの運用と問い合わせを受けているコールセンターの部署です。
ここでは、年に1回従業員満足度調査を大々的に実施しています。
総合満足度に加えて、それぞれの項目の満足度やその理由を継続的に把握しています。
それを、項目別、部署別、入社時期別、階層別、雇用形態別などさまざまな切り口で分析を行います。
目的はコールセンター内の最適な資源配分です。
この手のコールセンターは、コストセンター(コストだけが集計されて収益は集計されない部門)だと位置づけられていることが大半です。
コストセンターですので、可能な限りコスト削減することが求められます。
結果、人員やコストの最適配置が必要になります。
そのKPIマネジメントツールとして従業員満足度アンケート結果を位置づけているのです。
従業員満足度をKPIにする方法具体的には、総合満足度やそれぞれの項目の満足度に閾値を設け、ある数値より下になると原因分析をし、必要に応じて打ち手を講じます。
打ち手には人員のシフトやコストが必要です。
その原資を満足度が一定以上の項目から移管するのです。
つまり、満足度の閾値に上限と下限を設定していて、上限を上回ると資源を減らし、下限を下回ると資源を増やすことを検討します。
上回った場合は、資源は減らすのですが、下限を下回っても、すぐに資源を増やすことはしません。
原因を特定し、検討するのです。
例えば、スマホの利用について満足度が下がっていたケースです。
この満足度の下落は特定の組織のみで顕著でした。
理由を分析してみると、一番大きな理由は、その部署がコスト削減のために安価なスマホを選択したことにありました。
最も合理的な解決策は、その部署が安価なスマホの使用を止めることです。
しかし、それをしないでこの部署を支援をしたとしても、効果は限定的です。
しかも、実行するとなると、効果は限定的な一方、コストと手間はかなり必要です。
このようなケースでは「満足度を上げることは実行しない」という判断をするのです。
同じく、ネットワークへの不満が高い数値を示しているケースもありました。
これは特定の部署での状況ではありませんでした。
こちらは特定のビルで顕著に満足度が悪化していたのです。
調査を進めると、ちょうど、社内ネットワークを有線から無線に変更するタイミングであることが分かりました。
無線機器の設置が十分でないタイミングでの不満であることが想定されます。
実際、無線機器の設置状況と不満の状況に関連がありました。
このようなケースでも、状況説明はするのですが、手を打つことはしませんでした。
このように社内スタッフ部門では従業員満足度をKPIとして、事業運営を行っているケースもあります。
09事例9集客担当には集客単価を決めて自由に動いてもらう
マッチングビジネスの事例です。
マッチングビジネスは、情報収集したい個人ユーザと情報提供をしたい法人ユーザを結びつけます。
主な仕事が3つあります。
個人ユーザを集客する「集客担当」、企業ユーザの情報を収集する「営業担当」「広告担当」、そして両者をマッチングする「メディア担当」です。
それぞれの機能別に3つの組織を作ると、組織間の壁ができて、サイロ化し、部分最適な判断をしがちです。
一方、横断組織にすると全体最適な判断はできるのですが、判断に時間がかかります。
この事例は、機能別組織にしながら、全体最適な判断を素早くできるという両立をKPIマネジメントで実現できた話です。
集客は拡大したもののマッチングが低下「集客担当」はさまざまな手法(テレビ・ラジオ・新聞・インターネット・フリーペーパー・チラシ・看板・雑誌など)を駆使して個人ユーザを集客する仕事です。
一般的には、限られた集客予算の中で、最大限の集客目標の達成を求められます。
すると手段の目的化が起きるのです。
本来はマッチングすることが目的です。
そのために個人ユーザを集客しますが、マッチングに至らなくても集客すること自体が目的になりがちです。
マッチングに至らない理由はいくつかあります。
個人ユーザの特性と情報提供内容が異なることも1つです。
あるいは、情報提供の量が少ないことも1つです。
マッチングのムダとムラが起きてしまうのです。
機能別組織にしていると、このような部分最適が起こりがちです。
「集客担当」は必死に集客目標達成のために頑張りました。
しかし、情報量や情報の質やタイミングが合わずにマッチングしないのです。
骨折り損のくたびれもうけです。
個人ユーザにとっても不幸です。
情報収集しようとサービス利用したのに、その情報の量が少なく、あるいは質が合っていないのです。
そのサービスに対して不信、不満を持つようになります。
今後の利用意向も下がっていきます。
マッチング企業はお金を使って、アンチファンを作っているのです。
では、どうすればよいのか考えてみます。
集客担当に「マッチング目標」を導入する前述のように、一般的には、限られた集客予算の中で、最大限の集客目標の達成を求められます。
つまり、集客予算と集客目標の2つの数字が重要な指標として運用することになります。
しかし、事業の目的はマッチングを最大化することです。
そこで、「集客担当」にもこの「マッチング目標」をKPIとして持ってもらいます。
「集客目標」「集客予算」は、目安数値として格下げします。
つまり、「マッチング目標」に応じて、集客数をできる限りリアルに変更させる仕事だと位置づけるわけです。
企業からの情報量が多くなれば、集客数を増加させる。
反対に少なくなれば集客数を減少させる。
そのようなフレキシブルな集客活動を行ってもらうのです。
そうすると、「集客担当」は、企業からの情報提供の予測情報が必要になります。
その予測情報をもとに集客活動の強弱を変化させるようになります。
その際に集客担当に「目安の集客単価」を与えておくとさらに効果的です。
「集客担当」が何か施策を行うたびに、決裁のために会議を行い、説明を行うことが必要であれば、判断スピードが遅くなります。
このフレキシビリティを与えるために、「目安の集客単価」の範囲であれば自由に集客できるという自由度を与えておくということです。
10事例10仕事ができるようになるためのKPI
個人として仕事ができるようになるためにはどうしたらよいか。
これもKPIマネジメントが活用できます。
2000年に私がリクルートワークス研究所の調査グループのマネジャーになったときの話です。
東名阪のワーキングパーソン1万3000人に調査を実施しました。
その中で、「過去1カ月以内に仕事に関係する情報収集をした」という設問にイエスと回答した方は、約17%でした。
つまり6分の1の方(だけ)が、過去1カ月に情報収集していたことになります。
さらにこの17%の方を分析すると、同じ年齢、学歴、企業規模などで収入が多いのです。
定期的にインプットしている人たちの方が、(おそらく仕事で成果を出して、結果として)収入が多いのは、納得感が高く、理解しやすいと思います。
このことを知ってから、私は本を読むことを習慣にしました。
週に2冊、年間100冊を目標にしています。
3分の1程度が直接仕事に関係する本。
3分の1程度が直接ではないが、仕事にも関係する本。
残りの3分の1は、仕事には関係ない本を読むようにしています。
週2冊をKPI設定しているのですが、当然ですが、体調や気分により、読書が進む日もありますし、まったくうまく進まない日もあります。
ある意味、心身の健康のバロメータとしてKPIの活用もできています。
「本を読む時間がない」が言い訳の人に伝えたい「読書のKPI」このような話をすると、「読む時間がない」という話を頂くことがあります。
そのような方にアドバイスしている話があります。
それを披露します。
まず、時間がないという方に質問です。
「読書のためにどれくらいの時間が必要なのか把握していますか?」これを把握するためには、自分の読むスピードの把握が必要です。
私は平均すると、おおよそ1ページを1分間で読むことができます。
もちろん、1ページの中の字数も異なります。
2段組みで小さな字で書かれている本もあります。
挿絵や図版がふんだんにある本もあります。
また、前述のように心身の状態でもスピードは大きく異なります。
本のテーマを私が事前に持っているかどうかでも異なります。
ですので、分散はかなり大きいのですが、平均1ページにつき1分だということだけです。
これが分かると必要な時間が把握できます。
本のページ数は平均すると200から300ページです。
私の読むスピードは、平均1ページ1分です。
1冊の本を読むのに200分から300分かかるということです。
平均250分です。
私は週あたり平均2冊読みますので、ざっくり500分必要になります。
つまり、平日5日間で読もうと考えると1日あたり100分が必要になります。
私は幸か不幸か、通勤時間が片道60分かかります。
往復120分になります。
つまり、通勤時間を読書時間にあてることができれば、100分を超える計算になります。
もちろん、読めないこともあります。
ですので、それは週末で辻褄を合わせるようにしています。
年間で考えると100冊が私の目標です。
週2冊平均だと50週あれば達成です。
実際、1年は52週ありますので、2週ほどバッファーもあります。
また、気分が乗らないタイミングでは、あえて薄い本をたくさん購入して、冊数を稼いで、気分を高めることもあります。
最近は電子書籍も増えてきて、電車内で本を読むことも楽ちんになっています。
通勤がもっと短いという方は、冊数を減らすことも一つの方法でしょう。
1日24時間は平等です。
通勤時間が短い方は、他の時間に使っているのだと思います。
だまされたと思って、始めてみてください。
「習慣の力」というのがあります。
しばらくすると、本を読むことが歯磨きをするのと同じく習慣になります。
歯磨きをしないと気持ちが悪いのと同様に、読書をしないと気持ちが悪くなります。
そうなるとしめたものです。
これから人生100年時代になっていきます。
過去の知識・経験だけで過ごすことは難しくなるでしょう。
変化に対応して、しなやかになるためにも、定期的な情報のインプットをお勧めします。
もちろん、本以外の情報源でもよいのですが、本は、きわめて効率的な方法です(5年ほど前から私のFacebookに書評をアップしていますので、興味がある方はご覧ください)。
11事例11人生100年時代を健康に過ごすためのKPI
リンダ・グラットンさんの『ライフ・シフト』によると、今後は人生100年時代になるそうです。
できるだけ健康で過ごしたいものです。
チーム医療フォーラムを主宰されている医師でもある秋山和宏さんに話を伺ったことがあります。
以下、少し長いですが引用します。
「医療の発展により、人々の平均寿命は格段に延びました。
もちろん、要因としては食生活の安定などもありますが、日本では平均寿命が戦後と比べて男女ともに30歳以上も延びています。
しかし、人々が長寿になった一方で、寝たきりなど自立した生活ができない期間が増えてしまっているのもまた事実といえます。
WHO(世界保健機関)では2000年に、平均寿命から自立した生活ができない期間を差し引いた「健康寿命」という概念を発表しました。
日本においては、この健康寿命と平均寿命の差が約10年、つまり医療や介護が必要な期間が約10年にもわたることから、「人生ラスト10年問題」として喫緊の課題となっています。
男性の人生ラスト10年を見た場合、ピンピンと元気に過ごしてコロリと往生する「ピンピンコロリ」が約10%、徐々に老化していくケースが約70%、そして寝たきり状態になる方が約20%を占めるという研究結果もあります。
人生ラスト10年問題においては、歩けなくなる、嚥下障害によって食べられなくなる、認知できなくなるという順番で、自立した生活が送れない状況へと移行していくケースが目立ちます。
これらを防ぐのに役立つのが、筋肉量を落とさないことです。
加齢や疾患による筋肉量の減少は「サルコペニア(sarco:筋肉・penia:減少)」と呼ばれていますが、筋肉量が落ちなければ健康的に歩ける期間が長くなりますし、嚥下機能も舌や顎などの筋肉に影響を受けます。
また、アルツハイマーの原因はアミロイドβというタンパク質の蓄積が原因のひとつといわれており、こちらも運動による改善効果が見られているのです。
さらに、人間は感染症にかかったり、怪我を負うと、点滴のエネルギーではなく筋肉を燃焼させて闘うことも明らかになっています。
手術なども身体にとっては外傷のひとつなので、筋肉量が少ないと手術自体は成功しても体力がもたず、結果的にリスクが高まってしまうわけです。
そこで最近は、術前の診断で体力を算出するような取り組みも増えています」歩くことで筋肉量を維持する人生100年時代を健康的に長生きするためには、筋肉量を維持することが重要なのです。
筋肉量を維持するために、例えばできる限り歩くことが一つの方法です。
つまり歩くことがCSFで、その歩数などがKPIとなります。
ウォーキングに関する記事を読むと、歩いた方がよいとか、歩きすぎはよくないなど、さまさまな意見があります。
おそらく個人差も大きいと思います。
私自身は、1日1万5000歩を目安に歩いています。
私の場合10分で1000歩換算ですので、150分歩いている計算になります。
朝に散歩したり、帰りに散歩したりして歩数を稼いでいる状態です。
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