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第1章誰にでも「好かれる」技術

■はじめに選ばれる人になる――これは組織から個人へと重点がシフトしていく社会において、ますます重要なことではないでしょうか。会社や組織で誰を抜擢し、重要な仕事やポスト、役割を任せるか、悩みを誰に相談するか、どんな相手と付き合うか、そして誰と結婚するか――ビジネスからプライベートまで、私たちの生活のあちこちで「人を選び、人が選ばれる」状況や局面が生まれています。そこでは仕事がバリバリで成績優秀な人が意外にも選ばれず、実力はそこそこでも人望や信用がある人が選ばれるということが往々にして起こります。また、企業の採用担当者はみな口を揃えて「採用するのは優秀な学生よりも『一緒に働きたい』と思わせる人」だと言います。今の世の中、イケメンのホストが必ずしも多くの指名を取れないように、「能力の高さ=選ばれる理由」という図式が通用しなくなってきています。「この人と一緒に仕事をしたい」と思ってもらえる人になる。「この人なら信頼できる」と思ってもらえる人になる。いざというとき「この人がいる」と思い出してもらえる人になる――。むしろ、これからはできる人より「選ばれる人」、そういう時代になっているのです。■ホストは「選ばれる」プロフェッショナル私の名前は信長。新宿・歌舞伎町で働くホストです。10年以上この世界で仕事を続け、これまで28回「№1ホスト」になることができました。そして現在は、歌舞伎町で長く続くホストクラブ「ClubRomance(ロマンス)」の代表取締役としてもお店に出勤しています。ホストクラブに対する一般的なイメージは、「夜の商売の女性がたくさん来て、お酒を飲んでワイワイ騒ぐ店」、ホストに対するイメージは「チャラい系のイケメンで、言葉巧みに女性を口説きまくる」――多少の差こそあれ、こういったものではないでしょうか。もしそのイメージどおりであれば、ホストは単なる「その辺にいる合コン好きなノリの軽いお兄ちゃん」とたいして変わりません。それだけでたくさんのお金を稼ぐことができるなら、こんなに簡単で〝おいしい〟仕事はないでしょう。しかし現実は違います。私たちホストはあくまでも接客業。合コンのような雰囲気でお客さまを盛り上げ、非日常の時間と空間を提供し、楽しんでいただくのが仕事です。普通の居酒屋の10倍の料金をいただく代わりに、その料金に見合った、いや料金以上の満足を感じていただくことを義務付けられた仕事なのです。ホストにはキャバクラやクラブなどと同じ「指名」というシステムがあります。これは、お客さまが自分を接客する担当ホストを選ぶ制度のこと。お客さまに「指名」されると、来店時には常にそのお客さまの担当として接客することになります。ホストクラブの多くは「日給(一般的に6000円~8000円程度と、それほど高くありません)プラス指名料や歩合制」という報酬システムを取っています。ですからホストにとっては、指名をたくさん取ることが非常に重要になります。つまり、私たちホストの仕事は「指名されてナンボ」「お客さまに選ばれてナンボ」だということです。お客さまにしてみれば、自分が選んだ(指名した)ホストの接客に対して高いお金を払うことになるのですから、当然〝見る目〟も厳しくなります。「この人となら楽しい時間が過ごせる」「彼ならお金を払ってでも一緒に飲みたい」と思っていただいてこそ指名が成立するのです。近年ではホストクラブに来店されるお客さまも多様化しています。夜の職業の方はもちろん、医師、いわゆる〝有閑マダム〟と呼ばれる方々、タレントやモデル、さらには普通のOLや公務員、主婦、学生などさまざまな職業の方がいらっしゃいます。また、最近では海外からお見えになるお客さまも少なくありません。そうした多様なお客さまからいかにして選ばれ、いかにして指名されるか。これがホストにとって最重要の課題になるのです。簡単そうに見える仕事、遊んでいるようなイメージの仕事にもかかわらず、新人ホストの8割方が指名も取れず、お金も稼げず、半年も持たずに辞めていってしまうのが現実でもあります。そこには「なぜ指名が取れなかったのか」「なぜ収入を得られなかったのか」、その理由があるはずだと、私は思っています。逆に言えば、人気の高いホスト、№1を張っているホストには、お客さまから「指名される理由」「選ばれる理由」が確実に存在するということなのです。■非イケメン新人が4ヶ月で№1になれた理由一般的なイメージとして、「ホストクラブというのは、イケメンだけが成功する職種」という印象があるように思います。ルックスのみで№1になれるなら、確かにホストは簡単な仕事と言えるでしょう。しかし、これも大間違いです。残念ながらルックスに自信のあるホストは毎日のように面接にきてホストデビューを果たしますが、その後が続かないことも多いのです。私がこれまでに見てきた数多くの№1ホストたちは、必ずしもルックスに恵まれた人ばかりではありませんでした。でも彼らは№1ホストとしてその接客が支持され、多くのお客さまの指名を受けて高収入を手にしています。それはなぜでしょうか?その答えは、ルックス以上に重要になる「選ばれる技術」があるからです。かくいう私も、そのルックスに恵まれたほうではありませんでした。なにしろ、ホストを始める前は体重も90㎏以上、今より20㎏くらい重くて見た目はダメ、さらに、中身もダメダメでした。しかも学生時代の2年間くらいは、ほぼ引きこもり状態。家庭教師のアルバイトをしてはいましたが、それ以外は外に出ないという生活でした。もともと人付き合いが苦手というか嫌いで、いわゆる〝コミュ障〟気味の性格だったため、誰かと話すくらいならテレビを見たり、漫画を読んだり(当時、家には3000冊以上の漫画がありました!)、ギャンブルをしたりするほうが楽しいと思っていたのです。ですから、ホストデビューしたての頃はとても苦労しました。何しろ会話ができない。あまりに無口が過ぎて先輩からよく「お前は地蔵か!」などと怒られたものです。

とはいえ、何を話したらいいかわからないし、勇気を出してたまに話すと場がシラけてしまうという繰り返し。同時期にデビューしたホストたちが数日で指名を取っていくなか、自分だけは数ヶ月してもまったく指名が取れませんでした。周囲を見渡せば、ほかのホストたちはみんなイケメンでカッコイイ人たちばかり。当時の自分のルックスではとてもかないません。そこで毎日考えました。ルックスという天賦の才能で劣っていることは自覚しています。ならば、それ以外のところで何ができるのか。信長というホストをお客さまに選んでいただくために、何をすればいいのかと。そして「選ばれる技術」を身につけようと決意し、努力を始めたのです。人気ホストの先輩を徹底的にマネし、ほかの業界の話を聞き、ビジネス書をはじめとする本を読み漁り、そこで得た知識やノウハウを接客にフィードバックする――。とりわけ読書は私のホストとしての自信づくりに大きな影響を与えてくれました(この辺りのことは本文内でも詳しく述べてあります)。そうした努力や試みの結果、デビューから4ヶ月後には指名を取れただけではなく、№1ホストの座を射止めることもできたのです。選ばれる理由とは、先天的な能力の結果ではなく、むしろ後天的な努力によってもたらされるものです。そして選ばれる理由を知り、選ばれる技術を身につければ、人は誰でも「選ばれる人」になれる。誰もが人から好かれ、応援されるようになる。私はホストの世界に身を置くことで、社会生活における大事なことを、身をもって学んできたのです。残念ながら「これさえやっておけば必ず選ばれる人になれる」という、魔法のような方法はありません。でも、選ばれるための技術はあります。そのために意識するべきこと、実践するべきことはあります。そしてそれは誰にでもできるものばかりです。本書では、私が自分の経験から学び、導き出した「選ばれる技術」について思うところを述べています。ホストの世界の話だから――と読まず嫌いせずに、ぜひページをめくっていただきたく思います。そして本書のなかから何かひとつでも、みなさんの毎日を充実させる小さなエッセンスを〝選んで〟いただけたら幸いです。著者

『歌舞伎町№1ホストが教える選ばれる技術』もくじはじめに第1章誰にでも「好かれる」技術好かれる極意は「当たり前」を徹底すること〝ちょっと恥ずかしい〟に人は心を開く自分の失敗談を三つ用意しておく好印象は接触回数に比例する絶妙なボディタッチで気心が知れる熱は冷めないうちに再加熱する初対面は準備が命会話支配率をコントロールせよ第2章「あの人の一番」になる技術世界一簡単に友達や恋人を作る方法相手を名前で呼び、存在を認める女性は「共感」しか必要としていない男性には上下関係だけを意識する堂々と感情を出す人が信用される第3章自分の「魅力」の作り方選ばれる価値のある「自分」を作る「自分の強み」は9割がわかっていない「自分」の弱点は周りの先生に聞くダメ出しを避ける人は大成しない最短で結果を出すには、1位を〝完コピ〟する完コピはしても自分を否定しない常にモテている自分を演出する魅力的に見えるのは変な謙遜をしない人気がつけば、いつもそばにいる大切さ第4章読書家ホストの「モテる」読書術自分を磨きたいなら本を読め未知のジャンルは「子ども向け」から入る歌舞伎町ホストが年間1000冊買う理由本は徹底的に汚して自分だけの「ノート」にする1冊を最初から最後まで読もうとしない本は買った直後が一番の読みどき第5章結局、生き残るのは「選ばれる」人イケメンホストが生き残れない理由売上を伸ばし続ける人の「好かれる資質」大きな野心は、周りに火をつける飲みに行くなら知らない人と〝当たり前〟を積み重ねる人が出世する№1になるためのチームプレーおわりに

好かれる極意は、「当たり前」を徹底することホストとは、コミュニケーションだけでお客さまに楽しんでいただく〝究極の接客業〟である――これが私の持論であり、この仕事の本質だと思っています。私たちホストは、原価500円の焼酎を5000円で、原価5000円のシャンパンを5万円で売るのが仕事。そしてお客さまに「非日常の楽しい時間」を提供するのが仕事です。同じように酒と楽しい時間を提供している一般的な居酒屋と比べて、ゼロがひとつ違うほど高額な料金をいただくわけですから、当然、接客にもそれに相応しい魅力とクオリティが求められます。だからこそ、ホストの接客は〝究極〟でなければならないのです。こうした話をあちこちでしていると、「ホストという仕事における究極のコミュニケーションの極意とは何ですか?」という質問を受けることがあります。そんなとき私は、いつもこう答えています。「それは相手の立場に立って考え、話し、行動することです」と。あまりに当たり前すぎて「え、それだけ?」と驚かれることもしばしば。どうやら〝究極の接客〟には、究極の極意があると思われているようです。でも、よく考えてみてください。「相手の立場に立つ」――これは誰もが子どもの頃から言われ続けてきたであろう人間関係の基本中の基本です。にもかかわらず、私たちが抱えている悩みの大部分は、いまだに「人間関係」で占められています。つまり、多くの人が相手の立場に立てていない、相手の立場に立つことが想像以上に難しい、ということでもあるのです。■相手を「気持ちよくさせること」が第一相手の立場に立つという「当たり前」を、当たり前に実践しようと努めること。まずは、それを自覚することがコミュニケーションの第一歩だと思います。ホストの接客もビジネスの交渉も、ママさん仲間の集まりも男女のお付き合いも、人間関係、人と人との関わり合いであるという点ではすべて同じ。お客さまに気持ちよく、桁違いの楽しい時間を過ごしていただく。そしてそのうえで、自分に好意を持っていただく。自分を気に入っていただく。そのために、何よりもまず必要なのは、顔のよさでも背の高さでも、ファッションセンスのよさでもなく、〝当たり前すぎる〟原理原則を徹底したコミュニケーションなのです。人間は気持ちに余裕がないと、残念ながら自分のほうを優先してしまうものです。ホストクラブでも「相手の立場に立つ」という当たり前ができない人が多いのです。たとえば、お客さまに電話をして、「今日ちょっとお店に来てよ」「ごめん、今日体調があまりよくなくて……今度行くね」「え、今日はお店の強制指名日だし、お客さん来ないと罰金だから来てよ」こういったやりとりを続けた結果、お客さまは気分を害して、そのホストと永遠のお別れをすることになります。このようなやりとりは、ホストクラブではよく見られるケースです。文面だけみると「なんて自分勝手な」と思われるかもしれませんが、一般的にもこういうケースはよくあるのではないでしょうか?たとえば、仕事が忙しすぎてパートナーに気遣いの一言をかけられない。自分の役職のほうが上だからといって、下の人間に冷たい言葉を投げかけるなど、つい自分主体で考えてしまい、相手の立場に立つ、ということができない。そんなことがよくあります。■相手の立場に立つ会話のルール相手の立場に立つ――たとえば会話ならば、相手に関係のない話はしないということがとても大事です。ホストクラブでも、お客さまの全く知らない従業員の話をする人がたまにいます。いわゆる「内輪ネタ」というやつです。正直、お客さまからしたらどうでもいい情報です。また、日常会話でも、「近所の○○さんが、○○しててさー」とか、「うちの同僚の○○が○○で……」などという話は、相手からしたら基本的には興味がないと心得るべきです。

話している本人には、自分の身の回りに起こったおもしろいネタなのでしょうが、相手からしたらどうでもいいことなのです。こういう話をしているうちに相手からは、「この人と話していてもつまらない」とレッテルを貼られます。だからこそ、相手の視点に立つ、ということがとても重要なのです。会話をするなら必ず相手に関係のある話をする。このことは覚えておいてください。

〝ちょっと恥ずかしい〟に人は心を開く新人ホストだった頃にはお客さまと接しても会話が弾まず、うまくコミュニケーションを取れない時期がありました。とにかくこちらが必死になって話題を振っても、シラッとした感じで全然会話に乗ってきてくれないんですね。銀座のクラブのママさんやホステスさんがお客さんとして来られたときには、逆に「あなた、何かおもしろいことしなさいよ」などと言われたりするんです。でも、まだ入店したてのペーペーの新人ホストですから、言われたってすぐに〝おもしろいこと〟などできるはずもありません。あの頃はお客さまと会話だ、コミュニケーションだといったレベルではありませんでした。「おもしろいことやってよ」と言われても、「すみません、すみません」とひたすら謝るばかり。毎日毎晩、自信をなくし続けていたのです。■自分をさらけ出すと「距離」は縮まるそんなある日、転機が訪れます。接客していてもやはり会話が盛り上がらなかったので苦し紛れに、酔っ払ったときの自分の失敗談とか、女の子に手ひどくフラれた話とか、昔太っていた頃のエピソードといった自分自身の〝カッコ悪い話〟を、なかば自虐的に語ってみました。「ボク、昔は体重が90㎏もあって――。実は今も、お腹はこんなにプニプニしてるんですよ、カッコ悪いでしょ。見ます?」と言って実際におなかを出して見せたりもしました。大学受験に失敗して浪人をしていた頃、付き合っていた彼女から「私も応援するから、一緒に頑張ろう!」と励まされてヤル気になった翌日、その彼女が自分の親友と浮気した話。ライブドアショックの頃、100万円以上の株券が一瞬にして紙クズになって啞然とした話――などなど。自虐ネタを披露したのです。すると、お客さまが初めて楽しそうにケラケラ笑ってくれました。そして次第にお客さまのほうも、自分の失敗談やおバカな話をしてくれるようになったのです。「そうなのよ、私もさぁ――」「でもさ、女って誰でもそういうところがあるのよ。私もね――」お互いの〝カッコ悪い〟〝恥ずかしい〟〝ちょっと笑える〟エピソードをさらけ出し合うことで意気投合し、結果としてそのテーブルでは会話も雰囲気もすごく盛り上がったんですね。ああ、こういうことなのか――と、目からウロコが落ちるような気持ちでした。自分のカッコ悪い話、ちょっと恥ずかしい話を自分からさらけ出すことが、相手との心の距離を縮めるひとつの方法なんだと知ったんです。後に読んだあるビジネス書で、それが「自己開示」というコミュニケーションにおける心理行動だと知るのですが、そのときはまさに自分の体験によって得た大きな気づきだったのです。

自分の失敗談を三つ用意しておく自己開示には「自分から自分自身の失敗談や欠点、弱み、恥ずかしい話などを打ち明けることで信頼感が増加し、相手から好感を持たれやすくなる」という法則があります。さらには「自分が自己開示すると、相手もそれと同じくらいのレベルで自己開示しようとする」という法則もあります。人間の心理というのは不思議なもので、相手が自分に明かしてくれたことに対して、それと同等のものをお返しすることでお互いの関係性のバランスを保とうとする作用が働くんです。私のカッコ悪い話を聞いて、笑い、打ち解け、お客さま自身の悩みや失敗談を打ち明けてくれた。これはまさに自己開示の二つの法則にぴたりとあてはまっていると言えるでしょう。人は相手の〝ちょっとカッコ悪い話〟や〝ちょっと恥ずかしい話〟を打ち明けられることで、親しみと好印象を抱き、心を開くもの。そして同等の自己開示をしあうことで、お互いが心を許すようになるのです。■自虐ネタの先制攻撃最近では講演会などにも呼んでいただき、さまざまな人たちの前でコミュニケーションについてのお話をすることもあるのですが、「自己開示」という言葉や「自分の情報を相手に伝える」という意味合いは知っているという人も少なくありません。ただ、言葉を知っていても「自分の話って何を話せばいいの?」「どこまで話せばいいの?」という声が圧倒的に多い。実践に移せていない人が大半なんですね。そうした講演では、いつもこんな話をしています。「ではみなさん、家に帰ったら自分の失敗談を三つ探しましょう」と。自分のカッコ悪い話、恥ずかしい話をする自己開示とは、考えようによっては自分自身を〝いじる〟行為、いわゆる「自虐ネタを披露すること」とも言えます。だからといって、卑屈になるほど自分をいじる必要はありません。相手が自分に突っ込めるポイントを提示して、相手が同等の情報を開示したくなるきっかけになってくれればいいのですから。自分のちょっと恥ずかしいエピソードを明るく話す。ライトな自虐ネタの先制攻撃は、自分も相手もオープンハートにする一番効果的なコミュニケーション・プロセスなのです。ただ、ひとつ注意点があります。自己開示は強力なコミュニケーションの手段ですが、相手が引くほどの失敗談、笑えないエピソードはNGということ。場を明るく盛り上げるための自己開示だということを忘れてはいけないのです。

好印象は接触回数に比例する売れっ子ホストたちに共通している行動、それは「時間があればスマホでメッセージのやりとりをしている」ということです。もちろん相手はお客さま。お店に来ていただいた翌日のお礼メール、お店のイベントをお知らせするメール、営業とは直接関係ない日常生活のメール――とにかくこまめにメールをしています(電話の場合も)。ホスト業界に来て最初に私が驚いたのがこの〝マメさ〟です。それはもう尋常ではありません。私も――さすがに最近はそこまでマメにすることはありませんが――№1だった頃は「1日100件以上、送信するまで出勤しない」と決めて、意識的にお客さまへのメールや電話を欠かさないようにしていました。実際、私もホストとして売り出し中のときは、時間を決めてお客さまとなるべく多くの回数を会うことに集中していました。1日にお客さま5人と会っていたこともあるくらいです。売れっ子ホストはマメ――これはホストの世界では常識中の常識です。いや、ホストに限らず、マメな男性が女性にモテるのは、いつの時代も変わりません。では、なぜマメな男性はモテるのか、なぜマメなホストは売れっ子になれるのでしょうか。以前読んだ、ある心理学の本で「ザイオン効果(単純接触効果)」という心理学用語を知りました。これは「会う回数(接触回数)が多いと親近感を覚える」という心理行動。初対面の人には警戒心が生まれるのに対して、見慣れた人だと警戒心が薄れるために好意を持ちやすくなるという法則です。いつも顔を合わせる人、よく電話で話をする人、何度もメールでやりとりをする人に対して、自然と好意・好感を持つようになる。初対面の人にひと目惚れするより毎日顔を合わせている人のほうがより恋愛対象になりやすい。こうした心理もザイオン効果が影響しています。ならばマメな男性がモテる、マメなホストが売れっ子になる理由のひとつは、「こまめにメールする、こまめに連絡する=接触回数を増やす」という行動が、女性やお客さまの心理にザイオン効果を生み出しているから、ということは間違いありません。■ザイオン効果英単語記憶術接触回数を増やすことには親近感をアップするだけではなく、「相手の印象に残りやすくなる」というメリットもあります。私は二浪して早稲田大学に入ったのですが、その浪人時代、苦手な英語を克服しようと、英単語の覚え方をガラリと変えたことがあります。たとえば、10日間で100個の単語を覚えるとき、それまでは「1日10個ずつを完璧に覚える」というやり方でした。しかし新しい単語10個を覚えるたびに、前日覚えた単語の多くを忘れてしまうのです。なぜなら、この方法では各単語について覚える機会が1回だけしかないから。接触回数が極端に少なく、反復しないからです。一度見た単語は、反復もせずそれっきり見ないために忘れてしまうわけです。結局最終日、前半に覚えたはずの単語はほとんど忘れていて、2割も覚えていない――こんなことをくり返していたのです。そこで覚え方を「毎日100個すべてに目を通す×10日間」という方法に変えました。時間は短くていいので、とにかく毎日全部を見る。そうすることで、100個の単語すべてと毎日接触する=接触回数を増やそうと考えたのです。最初のうちは数の多さに圧倒されてあまり覚えられないのですが、すべての単語を「毎日見る」「1日1回、必ず目にする」ことで、日を重ねるごとに記憶に残っている単語数が増え、最終的には100個すべてを覚えることができました。これは親近感とはニュアンスが異なりますが、接触回数を増やせば覚えやすくなるという意味でザイオン効果に通じる部分がある例だと思います。また、ビジネスで「得意先に足繁く通うのが営業の基本」というのも同じこと。そうすることで、先方に少なからず「同じものを買うなら、いつも営業に来てくれるあの会社の人から買おう」という心理効果が生まれてくるのです。多くの人が知らず知らずのうちにザイオン効果を駆使しているのです。「近くに来たついでに寄ってみました」「急用ではありませんが、何かお困りになっていることはないか電話しました」いつもいる人、いつも聞く声、いつも見る光景――慣れ親しんだものに愛着がわくのが人情というもの。「しつこい」と思わせない程度に接触回数を増やすことで、さりげなく相手の頭の片隅に自分という存在を置いてもらうことができます。相手にとっての「いつもの人」になることが、好感・好印象を得るための重要なポイントなのです。

絶妙なボディタッチで気心が知れる接触回数と好印象について、あるイベントでお近づきになった政治家の方と話していたら「信長さん、実は選挙も同じですよ」と教えてくれました。立候補者が「○○です。○○をよろしくお願いします」と自分の名前を連呼してアピールするのも、無意識のうちに先述の「ザイオン効果」を狙っているようなものなのだとか。たしかに、毎日名前を聞かされていると、「何だよ、騒々しいな」と思いながらも頭の片隅に残ってしまうでしょう。つまり「いつも名前を聞いている○○候補」として、その人の存在が印象付けられるということ。その結果、投票する際に迷ったら「聞いたこともない人より、この人に」となるケースも決して少なくないのだとか。ザイオン効果が、いわゆる浮動票の獲得に影響を与えるというわけです。■心のハードルを下げるひと言もうひとつ、政治家がよくする行動といえば握手です。政治家が有権者に会うとひとりひとりと握手をしようとするのも、「相手に好印象を与える」「相手との距離を縮める」ための効果的な手段だからです。握手とはお互いに手を握り合う行為です。人は身体的な接触があった相手に好感を持つという心理行動があると言われています。相手に触れるというのは、自分の存在をアピールする最も直接的かつ原始的な方法。赤ちゃんがお母さんに抱っこされていると泣き止むように、身体の接触は人に安心感を与え、リラックスさせる効果もあるんですね。実際、医療や介護、認知症治療の現場などでも患者さんに安心感を与えるためにソフトな身体接触(ボディタッチ)を推奨するケースが増えていると言います。ホストも同じです。ちょこんと肩をつつく、背中をポンポンと軽く叩くといったセクハラととられないレベルのソフトなボディタッチは、お客さまに親近感を抱かせ、心の距離を縮めてくれる効果的なコミュニケーション方法のひとつなのです。こうした身体接触と好印象の法則をビジネスの現場で活用するなら、政治家の方々に倣って「握手をする」ことをおすすめします。握手は最もシンプルで使い勝手よく親近感を生み出せる〝男性同士〟の身体接触=ボディタッチ・スタイルです。私はいま「ClubRomance」の代表取締役としてホストやスタッフをまとめる立場にもありますが、その際も積極的に握手を活用しています。ボディタッチは同性の上司部下のコミュニケーションにおいても、とても有効な手段なのです。初対面の相手と商談をする際、最初にあいさつして名刺交換をした後で、「よろしくお願いします」と握手をする。もちろん初対面だけでなく2回目以降でも、会ったときには「○○さん、先日はどうも」とか「いや、お久しぶりです」と、サッと握手をする。それだけで心のハードルがグンと低くなるんですね。■握手をする理由をつくる握手をして感じる体温や皮膚の感触が、相手に信頼感や安心感を芽生えさせるとも言われています。今回初めてプレゼンをします、というときには、最後に「ありがとうございました。ぜひよろしくお願いします」と手を差し出して握手をする。これだけでも後々先方に残る印象は大きく違ってくるでしょう。政治家ではないので両手で包み込むような握手でなくてかまいません。むしろ、そうではない、もっとソフトでライトな、欧米風の〝グリーティングとしての握手〟のほうがさわやかでいいですね。ただ欧米では握手は当たり前のあいさつ方法でも、日本ではまだそこまで浸透していないのも事実。ですから最初は握手を求めるほうが躊躇したり、求められるほうが困惑したりするかもしれません。かくいう私も、最初の頃は照れたり恥ずかしかったりしたものです。そこで照れ隠しのために「握手をする理由」「握手をする機会」を頻繁につくるようにしました。スタッフの誕生祝い、売上目標達成のお祝い、久し振りに知人に会ったときなど、握手をしても不自然ではない理由をつくっては、握手に慣れるように自分を仕向けていったのです。すると次第に「信長は握手してくるヤツ」というイメージが広がって、それが普通になって、相手から先に手を差し出されることも多くなりました。ですから、ほんの少し勇気を出してシェイクハンド。コミュニケーションはもっとスムーズに、人間関係はもっと良好になるはずです。何かのお祝い事、久し振りに知人に会ったときなど、日常生活のなかにさわやかな握手を取り入れてみてはいかがでしょうか?

熱は冷めないうちに再加熱するザイオン効果に関してもうひとつ。ホストの接客における重要ポイントは、アフターフォローにあります。これがダメなら、二度と来てもらえないと言ってもいい。ホストの仕事は来店時の接客が3割、店外でのフォローや普段のマメなアプローチが7割と言っても過言ではありません。たとえ初めてのお客さまがお店で楽しい時間を過ごせたとしても、その後にこちらからメールも電話も、何のフォローもせずにいると、そのまま1回きりでおしまいとなるケースが少なくありません。逆に、お店での接客で失敗があっても直後のフォローがうまくいけばその失敗も挽回できるし、次回以降の来店や継続的な指名をいただける可能性も飛躍的にアップします。■名刺交換だけでは意味がないホストに限らず、どんな業種でもアフターフォローはビジネス成功の基本と言っていいでしょう。最初の頃はそれがよく理解できていない人も多く、来店されたお客さまに翌日のお礼メール、もしくはお礼電話をするのを忘れて先輩や店長から怒られた経験のあるホストは大勢いるはずです。かつての私もそうでした。まだ新人だった頃には、店長や先輩ではなく、当のお客さまから「あなたは、私のことをほったらかしなのね」と、こっぴどく怒られたこともありました。「あんなに盛り上がったんだから、また来てくれるだろう」などと高をくくっていてはダメ。当然ながら、接客業はそんなに甘くありません。アフターフォローを怠ると、あっという間に忘れられてしまう。マメにフォローしてくれるホストに鞍替えされてしまう。そういうことが日常茶飯事の世界なのです。最近、さまざまなビジネス交流会にご招待いただく機会が増えており、その場で多くの人と名刺交換をさせていただくこともあります。そんなときでも、翌日にメールでやりとりをしたり、電話で話したりと、お会いした直後に接触する機会があると記憶に残るのですが、何もせず名刺を交換しているだけでは、当日どれだけ会話が盛り上がっても、相手のことは日に日におぼろげになっていくのです。エビングハウスの忘却曲線という記憶に関する有名な実験があります。脳の海馬という部位に一時的に保存される記憶の状態を曲線でグラフ化したものです。実験では、覚えた瞬間を100%とすると、20分後には42%を、1時間後には56%を、翌日には74%を、1週間後には77%を、1ヶ月後には79%を忘れてしまうという結果が出ています。つまり、私たちは覚えたと思っていても、そのまま何もしなければ翌日には7割以上も忘れてしまうということです。この忘却曲線のことを知ったとき、来店翌日のアフターフォローの重要性を痛感しました。いくら店で盛り上がっても、間を空けずにフォローしなければ、お客さまの記憶から私たちホストの存在はどんどん消えていくのだと。初めてご来店いただいたお客さまへの連絡をその当日か翌日ではなく、1週間後にしてしまったとしたら、先方からの返事はほぼ返ってきません。「今さらなんなの?もうあなたのことなんか覚えてないわよ」ということでしょう。お客さまはシビアなのです。でも見方を変えれば、翌日やそれ以降、マメに定期的にメールや電話などをして連絡を欠かさないようにすれば、お客さまに覚えていてもらえる。何かのときに思い出してもらえる可能性が高くなるとも言えます。忘却曲線のポイントは、最初の20分から翌日までで一気に忘れてしまい、それ以降は忘れるスピードが緩やかになるという点にあります。つまり忘れないためには、「覚えた直後にもう一度接触する=反復する」ことがとても重要なのです。4時間以内に反復すれば、4割方忘れかけていた記憶が、その段階でもう一度よみがえるというわけです。ホストクラブならば、営業が夜なので、その日来店されたお客さまが帰られた翌日中にお礼のメールや電話をすると、お客さまの記憶に残りやすくなるということ。さらにそれ以降、忘却曲線に沿って忘れる前にこまめに連絡をすることで、記憶に継続性が生まれ、それは「マメに連絡をくれる○○くん」「いつも私を気にかけてくれる△△くん」という好印象にもつながっていくでしょう。我々が自覚すべきは、「忘れられるのが当たり前」ということ。お客さまの〝盛り上がり熱〟はとても冷めやすいもの。その熱を急冷させず、保温状態で継続させるには、こまめに再加熱する必要があるのです。

初対面は準備が命今まで本を2冊出版させていただいてから、私の元には読者の皆さんからたくさんの相談が届くようになりました。中でも多いのは「初対面が苦手なのを何とかしたい」という相談です。初対面で何を話していいのかわからない、緊張する、相手の目を見られない、などなど。でも、あえて厳しいことを言わせていただければ、苦手といいつつ、そのための準備はしていない人が多いのです。多くの人は行き当たりばったりで初対面の会話をしています。これは間違いと言わざるを得ません。初対面の前には、相手の情報をできるだけ多く入れておくのが基本です。私の場合、初対面のお客様の席に着く前に、あらかじめお客さまの持ち物や服装を見ています。盛り上がり具合も見ています。そして、会話のきっかけを準備しておきます。「さっきメチャメチャ盛り上がっていたけど、なんの話してたの?」「そのバッグかわいいね」などの軽い準備ですが、それがあることで落ち着いて接客できるのです。また、私はコミュニティFMでラジオ番組を放送しているのですが、毎回、各分野の著名人、著者を中心にゲストとして出演していただいています。これまでのゲストも政治家、作家、経営者、美容サロンオーナー、カリスマブロガー、セミナー講師、プロ格闘家、AV男優などバラエティに富んでいますが、毎回ほぼ初対面です。それぞれの業界で結果を残してきた成功者の方たちだけに、すごく緊張します。ですから、ゲストの出演が決定したら、私は収録までにゲストの著書や記事をできればすべて読むようにしています。それだけでなく、SNSなどで過去の活動もすべてチェックします。そして、事前に話す内容をメモしておきます。これらの準備は、番組の本題ではない、雑談に役立てるものなのですが、相手がどんなことに興味があり、自分とどんな共通点があるのかを押さえられるかどうかで、雑談の盛り上がり方が全然違います。そして、それが本題の盛り上がりにもつながるのです。かつて一度だけその準備ができなかった時がありましたが、その時はやはりコミュニケーション不足で、本題も盛り上がりにかけました。ビジネスなら、相手の業界のこと、会社のことを調べておくのは鉄則ですし、プライベートでの食事や飲み会などの場合も同様、相手は何が好きで何が嫌いか、どんなことに関心があるのか、という情報をできる範囲で集めましょう。コミュニケーションは共通点探しが基本。共通点を見つけることが最重要です。最近は、SNSをやっている人も多いので、そこで相手の趣味嗜好を調べておくのもいいでしょう。そして、頭の中でシミュレーションし、本番に臨む。ここまでできれば、初対面への苦手意識はだいぶなくなるはずです。

会話支配率をコントロールせよホストという仕事は会話がおもしろくてナンボ。お客さまを軽妙なトークで盛り上げてナンボの仕事というイメージを持たれがちです。しかしホストにとって本当に重要なのは、〝いかに自分は話さず、相手に話させるか〟なのです。ですから私は、接客の際、常にお客さまの話を引き出すことに全力を注いでいます。会話のキッカケをつくるためにこちらから〝自己開示〟することもありますが、それ以降はもっぱら聞き役。お客さまの話を聞くことに集中しているのです。長年ホストをやっていますが、とくにここ数年、本を出させていただいて以来、マスコミの取材を受ける機会もぐんと増えました。そしてあるとき、ふと気がついたのです。「オレ、今、初めて人前でこんなに自分のことをしゃべってる(笑)」と。インタビューで記者の方の質問に答えて、自分のことを話している自分に驚いたのです。つまり私自身、これまでいかに自分のことを話さなかったか、いかに話を聞く側にいたのか、そのとき初めて実感したほどです。相手を気持ちよくさせる接客とは、それくらい相手本位であるべきだと、私は考えています。■理想の会話支配率は相手7:自分3テレビのサッカー中継にはよく「ボール支配率」が表示されます。サッカー好きの方ならご存知でしょう。ボール支配率とは試合中、どちらのチームがボールを持って(支配して)いる時間が長いか、その比率を表す数値のこと。実はホストにもこの「支配率」という発想が求められます。私たちがコントロールするのはサッカーボールならぬ「会話」です。つまり自分が話をする時間とお客さまが話す時間の比率を、どう配分するかに常に気を配る、いわば「会話支配率」の意識が不可欠なのです。「ホスト3:お客さま7」――これが私のなかでの、接客における会話支配率の基本。これをベースに、お客さまの個性やその日の様子などによって臨機応変に会話の配分をコントロールするようにしています。ホストクラブに来店されるお客さまには「誰かに自分の話を聞いてほしい」と思っている方が大勢いらっしゃいます。そもそも、人は誰しも「自分の話をしたい」「自分の話を聞いてほしい」という願望を持っているもの。そして自分の話を聞いてくれる人と一緒にいると楽しく感じるものですから。お客さまが「ねえ、聞いて、聞いて――」という〝話したくて仕方がない〟タイプの場合は、会話支配率を「ホスト1:お客さま9」、ときには「ホスト0:お客さま10」と、自分の比率をグンと下げます。この状態だと、私はほぼ、相づちを打ってリアクションをしているだけ。でも、その相づちとリアクションによってお客さまが気持ちよく話ができて、「聞いてもらえた」という実感を持ってくださればそれでOKです。お客さまに楽しい時間を過ごしていただくことがすべてですから、聞き役に徹するのがホストの役割。そこに自分の話など必要ないんですね。また、ときにはあまり自分からは話さず、「信長くんの話を聞きたい」というお客さまもいらっしゃいます。そういう場合には会話支配率のシフトを逆方向にチェンジ。「自分8:お客さま2」くらいまで自分の比率を上げて、「話し役」のほうを受け持つこともあります。ただしお客さまが「そういえば私もね――」と話を始めたら、その瞬間にシフトチェンジして今度は「聞き役」に徹するのは言うまでもありません。あまり話さないように見えるお客さまでも、本当は聞いてほしい何かを持っているケースが少なくありません。初めての来店で緊張してあまり話さないお客さまもいらっしゃいます。そんなときに、前述したおバカな話や恥ずかしいエピソードによる自己開示が効果を発揮してくれるんですね。少しずつ打ち解けていくうちに話したいことがあふれ出てくることも往々にしてあります。お客さまの「本当は話したい」気持ちを察して話すきっかけを作ることもホストの重要な仕事なのです。■「聞いてサイン」を察する最近ではホストとして、ホストクラブの代表としてだけでなく、本の執筆やラジオ出演、講演、コンサルなどさまざまな仕事をさせていただいています。そうした経験を通じて、さまざまなジャンルの人たちとお会いする機会も格段に増えたのですが、いつも思うことがあります。それは、どの分野にも、どの世界にも「話しすぎる人」「話したがり」が多いということ。なかには話題が豊富で周囲がその人の話を心待ちにしているという人もいますが、それはほんのひと握りでしょう。多くの場合、〝話しすぎる人〟の話題は「自分のことばかり」になりがちです。とくに「仕事で結果を残してきた人」「自分に自信のある人」ほど話しすぎる傾向が強いように思います。しかし仕事でも、プライベートでも、相手との気持ちのいいコミュニケーション、円滑な人間関係を築くためには、自分本位ではなかなか難しいでしょう。自分の話を聞いてほしいのか、こちらの話を聞きたいのか。本当は話したいことがあるのか、話すきっかけがほしいのか。それによって聞き役に徹することもあれば、話し役を受け持つこともある。でも、どちらにせよ、大切なのはこちらのスタンスが常に「相手本位」だということです。明治大学教授・齋藤孝氏もベストセラー『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)のなかで、「雑談のベストバランスは相手8対自分2。でも相手の様子や状況によってこの比率は変えていく必要がある」ということをおっしゃっています。気さくに話せる人、ついつい話したくなる人の周りには人が集まってくるのは世の常。会話をしながら相手の「聞いてサイン、聞かせてサイン」を察し、見極め、それに応じて相手に話させ、ときには自分が会話をリードする。自分が会話支配率をコントロールするという意識を持つことが、相手に気持ちよく話させるためのひとつの方法なのですね。日常の雑談やちょっとした会話の際に心に留めておきたいコミュニケーションのポイントです。

世界一簡単に友達や恋人を作る方法世界一簡単に友達や恋人を作る方法――これは結論からいうと、「相手に好意を示す」ということです。以前、お客さまと新宿のとあるオカマバーに飲みに行ったときのことです。そのバーに行くのはまだ2回目だったのですが、マスター(もちろんオカマさん)が私のことを連れのお客さまに、こう紹介してくれました。「信長くん、私の大事なお友達なの」――。たった2回しか来ていないのに〝お客さま〟ではなく〝大事な友達〟だと。何の気なしに言ったのかもしれないし、オカマバーならではのサービスだったのかもしれません。でも私は、「友達」と紹介されたことをとても嬉しく思いました。お客さまから「信長くんって交友関係が広いのね」と感心されて面目が立ったこともあるのですが、それ以上にそのバーで「親近感を持たれている」「好印象を持ってくれている」「大事に思われている」と感じたことのほうが嬉しかったのです。数いるお客さんのなかのひとり、Oneofthemではなく、信長という個人の存在が認められている喜びと言ってもいいでしょう。「友達」と紹介されたことで、私のなかでマスターとの関係は「客と店主」という営業的なものから、もっと気心の知れた友人関係へと変容し、仲間意識のような感情が芽生えたのです。その後、自分のアフター(営業後にお客さまと食事をしたりお酒を飲んだりすること)などでもよく利用しましたし、知り合いにもたくさん紹介をしました。そのオカマバーは閉店してしまったのですが、マスターに紹介されたひと言は今でも強く印象に残っています。「相手に好きになってほしければ、自分のほうから好きになれ」と言いますが、これはその好例と言えるでしょう。私たちは程度の差はあれ、誰しも「他者から認められたい」という自己承認欲求を持っています。そして、その欲求を満たしてくれる=自分という存在を認めてくれる相手に対しては好印象を持つのが人情というものです。自己承認欲求というのは人として至極健全な感情です。誰かにほめられる、誰かに必要とされる、誰かの役に立っている――そう思えるとき、私たちは大きな喜びを得るもの。そして承認してくれた人には好意・好印象という感情をもって応えようとするものです。オカマバーの例でもマスターの「大事なお友達」というひと言に、当時の私の承認欲求が満たされ、満たしてくれたマスターに対して好印象を持ったと言えます。■恥ずかしくても口に出す効果尾田栄一郎さんによる国民的冒険漫画『ONEPIECE』(集英社)が、子どもだけでなく大人世代にまで幅広く支持されています。そのなかで「人望があって周囲から信頼される理想のチームリーダー」像としてよく名前が挙げられるのが、主人公・ルフィ。共に旅をする海賊仲間を信じ、ひとたび仲間がピンチに陥れば命を懸けて助けるという、頼りがいのある強いリーダーシップが評価されています。ルフィのリーダーシップを語るうえで注目すべきは、「そんなことよりオレの仲間になれ」「仲間ならいるさ、オレが仲間だ!」「未来の海賊王の仲間が情けねぇ顔すんじゃねぇ!」など、仲間に対して常に「オレたちは仲間」「オレはお前の仲間」とはっきりと口に出して言っている点です。お前は自分にとってかけがえのない大事な仲間――これもまた自己承認欲求に大きな影響を与えているように思えます。「大事な仲間」とはっきり言われることで、仲間たちの自己承認欲求が満たされ、お互いの信頼感がより強くなり、強力なチームとなるのです。今の時代「お前はオレの仲間だ!」なんて恥ずかしくて、照れくさくて、なかなか堂々と口には出せないかもしれません。でも、だからこそ勇気を出して言葉にすると、相手の心にすごく訴求するものがあるのです。夫婦関係や恋愛関係なら「愛してる」「誰よりも好きだ」と言葉にする。親子関係なら「産んでくれてありがとう」「いつまでも長生きしてほしい」と言葉にする。もちろんホストならお客さまにもスタッフにも「いつも大事に思っている」「大切な仲間だと思っている」と言葉にする。ビジネスなら「君たちの頑張りを誇りに思う」「御社はわが社にとって唯一無二の存在です」と言葉に出してアピールする。すると、その言葉ひとつで相手のモチベーションが上がり、相手の自分に対する好感度も上がり、それまでの人間関係は大きく変わってくるのです。相手が自分にとって重要な存在である、大事な人であるということを、言葉にして伝える。相手の自己承認欲求を満たしてあげる。それもまた、相手の心をがっちりつかむ=好かれるコミュニケーション術のひとつなのです。

相手を名前で呼び、存在を認めるひと昔前、顧客に好印象を与え、親近感を高めるための〝極意〟として、ビジネス書などで必ず推奨されていたのが「お客さまを名前で呼ぶ」ということ。そして今となっては、名前を呼ぶことはもはや極意でも何でもなく、接客やサービスの基本中の基本となっています。お客さまを名前で呼べない人は、「当たり前のこともできない人」、つまりビジネスマンとして〝ヤバイ〟――そんな時代になっているのです。名前を呼ばない、名前で呼べないのは、お客さまの名前を「覚えていない」と公言しているようなもの。ホストクラブなど、お客さまと「個と個」という関係性を築いて接客をするジャンルの仕事では、入りたてで仕事ができない新人スタッフであっても「名前を覚えて、名前を呼ぶ」ことは最低限のビジネスマナー。これができないようでは、マイナスイメージどころか、その人にとって命取りにさえなりかねません。ビジネスに限らず、あらゆる人間関係において、名前を覚えて、名前を呼ぶことは、それほどまでに重要なのです。初めて来店されたお客さまでも、名前をすぐに覚えて、2回目からは「○○さま」と名前で呼ぶ。一流と呼ばれるホテルやレストラン、銀座のクラブなどでも、接客の基本とされています。人は名前で呼ばれると、なぜか嬉しい気持ちになるものです。なぜなら、「自分という存在を認められている」「〝その他大勢〟ではなく、自分という人間に関心を持たれている」と感じるから。つまり、前項と同じく自己承認欲求が満たされるということです。名前はその人の人格そのもの。名前を呼ぶのは、その人の人格を認めることです。ですから逆に、「○○さん、じゃなくて△△さん……でもない、ああ◇◇さん」などと、いつまでも名前がうろ覚えだと、相手のなかで自分の位置づけが一気に下がってしまいかねません。ビジネスシーンでも、何度も会っているのに、そのたびに「はじめまして」と名刺交換をするような人は、相手からの信用度も下がってしまいます。■名前で呼んでくれる人は忘れない結婚生活が長くなると、旦那さんが奥さんを「なあ」「おい」「お前」としか呼ばなくなり、奥さんは「私は〝お前〟じゃない」と傷つき、ひとりの人間として、ひとりの女性として見られていないと感じてしまう。そんな話をよく聞きます。何かのときに思い出してもらえる人になるには、まず、こちらが先にその人の名前を覚え、その人を名前で呼ぶ機会を増やすことです。目の前にいるんだから、名前を呼ばなくてもその人に向かって話していることはわかる。そうかもしれません。でも、だからこそ意識して名前を呼ぶ。面と向かって二人きりで話しているときでも、「来週の打ち合わせ、いつがいいですか?」ではなく、「○○さん、来週の打ち合わせはいつがいいですか?」と、ちゃんと相手の名前を言う。人は名前で呼んでいる人のことを忘れません。名前を覚えている相手には、関心が向き、目が届き、気配りも行き届きます。だから、できるだけその人の名前を呼ぶ。こちらが名前を呼べば、相手もこちらの名前を、こちらのことを覚えてくれます。名前を呼ぶというのは、ほんの何気ないことのようで、相手との親近感を高め、信頼関係を強めてくれる人間関係の大きな土台なのです。

女性は「共感」しか必要としていないホストとして最も重要な仕事とは、女性の話を聞くこと、気持ちよく話してもらうことです。しかしこれが思っている以上に難しい。自分としては、ごく自然に会話の流れに沿って受け答えをしているつもりなのですが、何気なく発したひと言によって、お客さまの気分を害してしまうことが往々にしてあります。ホストクラブには「容姿のこと」「年齢のこと」「職業のこと」という、女性に聞いてはいけない三つのNGワードがあります。もちろんホストだけでなく、すべての男性が気をつけるべき、女性に対する話題とも言えるでしょう。そして、これらに加えてさらに男性の方々にぜひとも気をつけてほしいのが、こんなフレーズです。「要するに~でしょ」「結局、どうしたいの?」「じゃあ○○すればいいんじゃない」男性にしてみれば他意などなく、女性の話の要点をわかりやすくまとめて、結論を出そうとしているだけ、悩んでいるなら解決策を提案しようと思っているだけ。ところが、それは逆効果で、そうした言葉を聞かされると女性はイラッと、ムカッとしてしまうのです。これは男性と女性の脳の違いに原因があります。みなさんも男性脳、女性脳という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。理屈っぽくて論理的に考えようとするのが男性脳の特徴。一方、感情を優先して行動するのが女性脳の特徴とされています。男性が会話に求めるのは整合性であり、論理的な展開です。そして結論というゴールに向かって話を進めようとします。だから話をまとめようとする、結論を導き出そうとするのです。ところが女性は違います。会話の裏側にある感情のほうを重視するのです。感情を吐き出したい、誰かに聞いてほしいという感情に素直に会話をしようとします。要するに(――これも男性脳の発想ですね)、女性は話をわかりやすく要約してほしいとかまとめてほしいなどと思っていません。会話に理詰めの結論など求めていないのです。要点も結論も解決策もいらない。言いっぱなしでOK――決してバカにしているわけではなく、それが女性の脳の特徴なのですね。男性は結論を出すための会話をし、女性は感情を吐露するための会話をする。男女では脳の特性が異なることを認識して、女性脳の特性に合わせた接し方をすることが、女性に好印象を与えるコミュニケーションの秘訣と言えるでしょう。■女性からの好感度を上げるマジックワード私も新人の頃はこの違いに気づかず、お客さまの話に対して、ついつい正論で答えてしまうという手痛い失敗を何度もしたものです。つい酔いすぎてしまい、お客さまの話を遮って「話、長いよ!まとめて」などと言って機嫌を損ねたこともしばしば。お客さまの仕事の悩みやグチの内容を聞いて、私なりに考えて「でもそれって、上司もダメだけど○○さんのほうにも問題あるんじゃない」などと言ってしまい、「何よ、つまんない。もう帰る」と出て行かれたこともありました。当時の私は、男性脳のおもむくまま、良い悪いだけで話を結論付けようとしていたわけです。男性はその脳の特性のために、無意識のうちに「私はこう考える」と自分の考えを論理的に主張しがちです。でも女性が求めているのは答えや結論ではなく、「その上司もひどい言い方するよね」「それは○○ちゃんがムカついても当然だよ」という「共感」です。女性に好かれるコミュニケーションのポイントは、相手の感情を優先することにあります。まず相手の感情に寄り添って共感してあげる。「わかる、わかる。オレだって腹立つよ」「私も」のひと言は、女性の好感度を大きくアップさせるマジックワードなのです。

男性には上下関係だけを意識するでは相手が男性の場合、好印象を与えるには何を意識すればいいでしょうか。男性の脳は、前述したような「論理的で理屈っぽい思考」に加えて、もうひとつ大きな思考の特徴を持っています。それは「自分を上に見せる」という傾向です。女性脳が相手や周囲と共感したがる、感情を共有したがるのに対して、男性脳は自分の評価にこだわり、「自分はこうなんだ」と誇示し、自慢して、相手や周囲よりも優位に立ちたいと考えるのです。つまり、男性は上下関係を重視し、女性はそれを重視しない、ということです。自分を上に見せたいという思考は、強い自尊心から生み出されます。男性は総じて「他者からの自分に対する評価」へのこだわりが強いということです。そんな自尊心の強い、自己評価を気にする、優位に立ちたがる男性を気分よくさせ、好印象を与えるために有効なのが「上下関係」を意識したコミュニケーションです。簡単に言えば、「少しだけ持ち上げてあげる」ということ。いわば〝絶妙なほめ殺し〟です。とくに男性は、自分の能力や実力を認められたい、自分が達成した成果を評価されたい、自分のプライドを満たされたいという思考の持ち主。その心理を突いて、〝男ゴコロ〟をくすぐるのです。■相手を上げるか、自分を下げるかこれには二つのアプローチがあります。ひとつは「少しだけ持ち上げる」、相手を直接ほめて自分よりも優位な立場に立った気分にさせる方法です。ですから、「すごい」「さすが」「たいしたもの」「驚いた」というストレートなほめ言葉が心に響きます。さらに「その分野では一番だ」「みんな『すごい』と言っている」といったニュアンスを加えれば、より自尊心やプライドをくすぐって優位性を感じさせるほめ言葉になります。もうひとつは「自分を少し下げる」というアプローチ。こちらがへりくだることで相手を優位に立たせる方法です。「○○さんにはかなわない」「自分にはまねできない」「勉強になる」といったニュアンスにすれば、自分のスタンスをやや下手に置くことで相手を持ち上げるほめ言葉になります。ただし注意しなければいけないのが、過剰に持ち上げない、卑屈になるほどへりくだらないということ。過ぎたるは及ばざるがごとし。何事もやり過ぎは禁物です。ほめ過ぎやへりくだり過ぎは、好印象どころか「鼻持ちならない太鼓持ち」というマイナスイメージを与えることになってしまいます。大事なのは「少しだけ」「ちょっとだけ」持ち上げる、へりくだる。そのさじ加減にあります。

堂々と感情を出す人が信用される「あなた、私の話聞いてる?」新人時代から10年間ぐらい、多くのお客さまからこう言われました。もちろん自分では真剣に、大真面目に聞いているつもりでした。それでもお客さまにはなかなか伝わらず、気分を害されて帰ってしまうこともあったのです。今、考えれば答えは明白。会話の際、表情が顔に出ていなかったからです。ポーカーフェイスで無表情だったと言ってもいいでしょう。だから本当はきちんと聞いているにもかかわらず、お客さまには聞いているように見えなかったのです。当時の私は、どうしてそんなことを言われるのか、話を聞いていないと思われてしまうのか、その理由がわかりませんでした。そこであるとき、研究のために自分が接客している姿をスマホで録画し、店が終わった後で細かい部分までチェックしてみました。すると、お客さまとの会話のなかで、明らかに私の表情だけが変化に乏しいということに初めて気がついたのです。とくに驚くでもなければ、身を乗り出すでもない。そのまま座って、うん、うんと聞いている自分の姿を客観的に見て、猛反省しました。「これでは、『話を聞いていない』と勘違いされても仕方がない」と。それからは意識して表情を表に出すようにしました。すると「聞いてる?」と言われることがパッタリなくなったんです。私だけでなく多くの日本人男性は、感情の表し方が不得手です。自分では感情を顔に出しているつもりでも、実際にはその10分の1も表せていないのではないでしょうか。■感情を表現できない人はダサい最近、コミュニケーションに関する講演をさせていただく機会があるのですが、そこでよく、「みなさん、私を見て5秒間だけ最高の笑顔をこちらにください!あなたと私しかいないと思って、恥ずかしがらずに、笑ってみてください」というレッスンをよくやります。男性と女性では結果は対照的です。女性はすぐにニコッと笑えるのに対して、男性は顔が引きつってなかなか笑えないことがほとんど。笑って、悲しい顔をして、困った顔をして、と別のお題を出しても同じで、男性の多くは表情がまったく変わりません。さらにこうして指摘されるまで、自分の表情がほとんど変わっていないことに気づいていない人が多いのです。女性は表情ひとつで今の感情をうかがい知ることが比較的容易なのですが、男性は何を考えているかわかりにくい人が多いでしょう。とくに日本では昔から、男はすぐに喜怒哀楽を顔に出すものではなく、感情に左右されないことが美徳などと言われてきましたから。ビジネスの現場では、時には表情を表に出さないほうがいい状況や、タフな交渉をしていてポーカーフェイスが必要なケースもあるでしょう。しかし、時代は変わりました。嬉しいときは嬉しい顔を、悲しいときは悲しい顔をする。おもしろい話には弾けるように笑い、驚いたときは「びっくりした!」、納得したときは「なるほど」と表情や態度で示す――。怒っているのか、不機嫌なのか、つまらないのか。表情に出さないことから、誤解や軋轢が生じるケースも少なくありません。円滑なコミュニケーションには、言葉以上にこうした目に見える表情や態度がとても重要なのです。人間は感情を持った動物です。ポーカーフェイスで無表情を「ミステリアス」と思ってもらえる人は、見た目や雰囲気に天賦の才を授けられたごく一部の選ばれし人だけ。よく笑い、よく驚き、よく喜び、よく悔しがる。そんな表情が豊かで喜怒哀楽がわかりやすい人に、人は〝人間くささ〟と親しみを感じるのだと思います。

選ばれる価値のある「自分」を作る私たちホストにとって、お客さまから指名されるかどうかは、一番重要な問題です。なぜなら、指名のお客さまが使った金額のうち、半分近くがホストの給料になる、というのがこの業界の報酬システムだからです。指名されるということは、イコール、「お客さまに自分を選んでいただく」ということ。そのためにはいかにして自分という人間に興味を持っていただくか、自分のいいところをしっかりアピールできるか、「あの人と一緒に飲みたい。話がしたい」と思っていただけるかが最重要課題になります。相手や周囲に好感を持たれ、信頼され、何かのとき真っ先に自分の存在を思い出してもらえる――そんな「選ばれる人」になる。これはホストに限らず、どんな分野のビジネスにも、日常生活にも言えることでしょう。では「選んでもらえる自分」になるためにはどうすればいいか。そのひとつのアプローチがセルフ・ブランディングです。自分(セルフ)をブランディング(価値を高める)するとは、「自分に対するプラス・イメージを持ってもらう工夫」であり、「選んでもらえるような価値のある自分を作ること」です。もっとわかりやすく言えば、「自分自身を高める」ことです。■自分の「引き出し」を増やす努力私がそのことを意識したのはホストになってすぐでした。ホストクラブは店によって客層も違います。20代前半のお客さまが多い店もあれば、30代以上の上品なお客さまが多くお見えになる店もあります。私が入った「ClubRomance」は後者でした。年齢層が広く、お客さまの仕事もさまざまです。主婦、学生、OL、有名企業に勤めている方、女医、政治家の秘書、芸能人など、ごく一般の方から普通ではあまり会う機会がないような世界の人もたくさん来店されます。そして、そういうお客さまとコミュニケーションを取って、気分よく会話で盛り上がっていただくには、相手をする私自身が、それ相応の〝引き出し〟を持っていなければいけません。ノリや勢い、ルックスだけでは、最初はよくてもあとが続かない。選ばれ続けるには、「その人でなければいけない理由」が必要なのです。そうした、ホストのなかでも厳しい接客環境に置かれたことで、この世界で上を目指すのならまずは自分を磨くこと、「あの人と話したい」と選んでもらえる自分になることが重要だと考えるようになりました。セルフ・ブランディングへの強い意識が芽生えてきたのです。

「自分の強み」は9割がわかっていないみなさんは「自分の強み」をわかっていますか?セルフ・ブランディングにおいて、まず必要なのが「自分自身を知る」ということ。自分がどんな強み、どんな個性を持っているのかを自覚することが重要になります。ただ問題なのは、自分のこととなると客観視できないために、「何が自分の個性なのか、強みなのかがわからない」という人がとても多いことです。自分のことは自分が一番わかっているようで、その実、意外とわかっていないものです。世の中の9割近い人は、自分のことをよく知らない、自分がどういう人間なのか把握できていないのではないか、私はそう思っています。かくいう私もいまだに自分のことがわかっていない部分があるかもしれません。とくに謙遜しがちで自己アピールが不得手な傾向にある日本人にとって、「自分のいいところ」というのはなかなか自己認識しにくいもの。自己分析して自分の強みを考えようとして、むしろ「ダメなところ、短所」ばかり思い浮かぶというケースが多いのかもしれません。■自分の強みを知るのは身近な人では、自分の強みを知るにはどうすればいいのか。答えは簡単。自己分析では客観的になれずにうまく見つけられないのなら、「他己分析」をすればいいのです。他己分析とは、周囲の人々など他者に自分の強みを分析・指摘してもらう、つまり「身近な人に聞く」ということ。身近にいて、自分のことをよくわかっていて、しかもある程度客観的に見てくれる人に「オレってどういう人間?」「私の強みは何だと思う?」と、ストレートに聞いてみるのです。これが自分自身への理解を深めるための、最も簡単で、一番効果的な手段だと思います。ただ、一番身近な存在である家族の場合、身近すぎるがゆえに贔屓目も入りがちなため、客観性に欠ける面があるかもしれません。その点では友人・知人、先輩・後輩・同僚などがおすすめ。さまざまな視点から自分の個性や強みを指摘してもらうといいでしょう。自分では思いもよらなかった個性や強み、長所が出てきて驚かされることも少なくないはず。そんな新たな自己発見もまた、自分の価値を高めるヒントになります。目的もなくいつもの仲間と食事をしたり飲みに行ったりするなら、そのお金で誰かを飲みに誘って、自分のいいところ・悪いところを正直に聞かせてもらったほうがいい。自分を知りたければ、そばの人に聞け。自分のことは身近な他人が一番よく知っています。

「自分」の弱点は周りの〝先生〟に聞く私がホストとしてのセルフ・ブランディングを意識し始めたとき、最初に取り組んだのも他己分析でした。私の場合、分析をお願いしたのは、ほかでもない「お客さま」です。自分のどんなところが気に入って指名してくれるのか、自分の何が強みだと思うか、逆にどこがダメで、何が弱点か――お店にいらしたお客さまに、「絶対に怒らないから、正直に教えて」とストレートに質問するのです。とはいっても、良識ある普通の大人は人の悪いところを言いにくいものです。ですので、まずは「話をしやすい雰囲気作り」が重要だと付け加えておきます。私の例で言うと、「きちんと話を聞いてくれるところ」「約束を守るところ」「小さいことで怒らない」――「ホストという仕事のためだから」と真剣にお願いすると、お客さまもけっこう正直に指摘してくれます。もちろん、強みばかりではありません。「酔っ払ってくると説教くさいことがある」「理屈っぽい」「酔っ払うと何を言っているかわからなくなる」――お客さまもお酒が入っていますから、欠点の指摘のほうがズバズバと強烈だったりもするのですが。ホストは究極の接客業だと考えている私にとって、こうしたお客さまから直接聞く自分への評価は、セルフ・ブランディングにとって非常に貴重なもの。そうした指摘を聞いてしっかり受け止め、より指名されるホスト、より選ばれるホストになるための糧として、そこから学んできたのです。そういう意味で、私にとってお客さまは一番身近にいる〝先生〟と言っても過言ではありません。著名な作家・故吉川英治氏の『宮本武蔵』という作品のなかに「我以外皆我師」という言葉があります。「自分以外の人、すべてのものは、みんな私の先生」という意味のこの言葉は、自分という人間を知るための金言。今では私の座右の銘となっています。

ダメ出しを避ける人は大成しない他己分析が重要とは言っても、ホスト、とくにイケメンホストのなかにはプライドが高くて、「オレってカッコいいだろ」という自己評価を押し付けるばかりの人も少なくありません。そういうホストは、自分の強みや個性、それ以上に自分の欠点を知ろうとしないから、もしお客さまから「あの人、イヤ」と思われても、自分の何がダメなのかがわからない。それどころか「オレのよさがわからない客のほうが悪い」という発想になってしまうこともあります。この発想になったらお客さま相手の商売はそこまでです。自分という人間、キャラクターが売り物であるホストにとって自分の強みを知らないのは、営業マンが自社製品のことを何も知らずに売ろうとするのと同じこと。自分について主観的な自己評価しかしないのは、顧客のニーズを無視して自社製品のメリットだけを押し付けるようなものです。これでは製品は売れないだろうし、ホストならリピートの指名がなかなか取れないのは目に見えています。作家の村上春樹さんの著書『職業としての小説家』(スイッチ・パブリッシング)によると、彼は原稿を書き上げると、誰よりも最初にまず奥さまに読んでもらうそうです。そして奥さまの遠慮のない批評を聞いて作品内容について議論し、取り入れたほうがいいと思う指摘は素直に取り入れるのだとか。サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックもまた、作品を撮影すると妻のアルマに見せてその感想や意見を聞き、そこからインスピレーションを得ていたと言います。世界の村上春樹でさえ、あのヒッチコックでさえ、奥さまから容赦ないダメ出しをされる。そのときは頭に来るけれど、冷静に考えると自分自身では見えていないものに気づかされる。自分では面白いと思っていたものが、他者から見るとそうではないことに気づかされる。超一流のアーティストだからこそ、客観的な他己評価の重要さを理解していたのでしょう。自己評価だけで仕事をしても、独りよがりになってしまうことを知っていたのです。自分自身を売りにしているホストにとって、お客さまに自分という人間の強み弱みや個性を聞くのは、自分の仕事そのものを本音で他己評価してもらうのと同じこと。それは、決して恥ずかしいことではありません。まず己を知ること。それも、できる限り客観的な視点による評価を真摯に受け入れること。それが、価値ある自分を認めてもらうセルフ・ブランディングの第一歩なのだと思います。

最短で結果を出すには、1位を〝完コピ〟する前項で他己評価の重要さを書きましたが、もうひとつ、他者の存在が大きなポイントになるセルフ・ブランディングのアプローチがあります。それは「人のマネをする」「人のやり方をパクる」という方法です。今、私の店では週1回ミーティングをしていますが、そこでホスト、とくに新人ホストたちに「結果を出しているホストのやり方をマネしろ。どんどんパクれ」と言っています。「すべての創造は模倣から出発する」というのは、芸術家・故池田満寿夫氏の有名な言葉ですが、それはホストの世界も同じです。№1になりたいと思ったら、まずは実際に№1を張っているホストのマネをするのが一番の早道なのです。心理学には「モデリング」という用語があります。これは、見本(モデル)となる人のマネをすることで、その人の動作や行動、思考が身についていくという心理行動のこと。よく「子どもは親の背中を見て育つ」と言いますが、これも意味合い的にはモデリングと言っていいでしょう。この世界に入ったばかりの頃の私には、憧れの売れっ子ホストがいました。その人のようになりたくて、その先輩ホストを徹底的にマネすることにしました。髪型も服装も、会話の仕方も普段の行動も、何から何まですべてパクりまくったのです。周囲からは「そんなの○○のパクりじゃないか」「それはお前の個性じゃない。ただの人マネだろ」とバカにもされましたが、そんな言葉などどこ吹く風。マネすること、パクることに対して後ろめたさはまったくありませんでした。なぜなら私はそのとき、すでに「モデリング」の効果を知っていたからです。■合格者の勉強法をパクるそもそも私がこの〝パクリ文化(=モデリング)〟を学んだのは大学受験のときでした。私は二浪して早稲田大学教育学部に入学しています。現役の時は受験すらせず、一浪から受験を始めたのですが、勉強はすべて自己流。その結果、見事に不合格でした。そうして迎えた2回目の浪人時代。お金がなくて予備校とか塾に通えなかったのですが、あるとき書店で大学合格体験記が集められた本を見つけたのです。そこには合格した人たちの勉強法、使ってきた参考書や問題集などがまとめられていました。早稲田に受かった人はこの参考書を使っていた、こうやって勉強した、こんな時間の使い方をしていた――そんな具体例がたくさん書かれていました。それを読んで気づいたんです。自己流では限界がある。実際に成果を出している人から学べることがこんなにあるじゃないか、と。その体験記をよく読んで分析してみると、受かっている人は基本的にみな同じ勉強法で、似たような参考書を使い、ほぼ同じような生活リズムで過ごしていました。早稲田に入りたかった私は、ならば同じ早稲田に合格した人の勉強法や参考書、時間の使い方まで、すべてマネしてみようと考えたのです。書いてあるとおり、すべてをパクってそのままやってみたら、一気に偏差値が跳ね上がりました。モデリングという言葉を知るのはもっと後のことなのですが、その重要さを実体験として痛感したのです。■上達のカギはコピー+独自性完コピは、ビジネスにおいても活用されるべきアプローチだと思います。日本を代表する自動車、家電だってもともとは海外のパクリです。海外製品を完コピする。そのうえで日本の持つ独自性(燃費、生産効率など)をプラスして世界有数の経済大国になっていったのです。かつての松下電器産業(現パナソニック)が「マネシタ電器」として業界内からは揶揄されていた、というのは有名な話です。〝経営の神様〟と言われた松下幸之助は、当時からすでに「完コピ+独自性」というビジネスアプローチを重要視していたのだと思います。ゴルフでも、自己流で練習するよりも最初からレッスンプロに教えてもらったり、プロの教えをそのままマネして身体で覚えたりするほうが上達は早いです。また、小説を書く技術や感覚、コツを身につけたければ、まず自分の好きな作家の作品をすべて書き写せ、と教えている作家講座もあります。お坊さんが経典を書き写す「写経」という修行にも、そのまま書き写し続けることで、そこに書かれた教えを自分のものにしていくというモデリング的な側面があるのだと思います。

完コピはしても自分を否定しないまず、なりたい自分を実現している人のマネをする。私がモデリングをすすめるのは、「行動が似てくると、それに伴う思考や発想も似てくる」からです。成果を出している人の行動には、それなりの思考があり、裏付けがあります。とにかくすべてをマネてみることで、成果につながる思考や発想にたどりつけるはずだと私は考えているのです。ただ、こういう話をほかのホストに話しても、なかなかピンとこない人もいます。自分というキャラクターを売る仕事だから人マネはしたくない、自分の個性だけで勝負したい、それもわかります。でも最初から自分の個性ひとつでのし上がっていけるホストは、類まれな天賦の才に恵まれたほんのひと握りだけです。■まず個性を捨てろホストが芸能人と大きく違うのは、お客さまと1対1で直接応対する接客業であるという点。そこには「個性よりもお客さまの満足」という大鉄則があるのです。相手のある接客業において自分の個性を主張するには、その個性を支える接客の基本、「お客さまを楽しませることが第一」という意識と思考、そのための工夫と努力が不可欠になります。ナンバーワンを張り続けるような売れっ子ホストは、みんなそれを持っています。彼らのマネをして身につけるべきはその意識であり、考え方なのです。それが身についたうえで、初めてその人の個性が威力を発揮するのです。ですから私は、店の新人ホストに「まず個性を捨てろ。売れているヤツのマネをしろ」と言っています。そして、「ただ、マネはしても自分という存在は否定するな」とも。自分を否定して他者をマネるのではない、ということです。あの人のようになりたいと思ってモデリングをしても、〝あの人〟そのものにはなれません。あの人をマネるのは、あくまでも自分自身の個性で勝負するためなのです。模倣する、モデリングするということは、個性はある期間、とりあえず脇に置いておくということ。それをやって基本の意識を身につけていけば、そのうち必ず個性で勝負できるときがきます。いきなり個性で勝負するより、そのほうが遠回りのようで本当は早道なのです。

常にモテている自分を演出するホストクラブには「指名本数」という、評価に密接にかかわる数字があります。これは売上金額に関係なく、お客さまから指名をいただいた数の多い少ない、という視点でのホストの評価基準です。一番重視されるのはもちろん売上金額なのですが、「使っていただくお金は少なくても、指名は多い」という意味で、「指名本数」も人気のバロメーターのひとつになっています。まだ新入りでなかなか売上が立てられない頃、私はまずこの「指名本数」を増やそうと必死になったものです。大きな金額を使ってくれるひとりのお客さまよりも、そこそこの額を使ってくれるお客さまの人数を増やす。言い方は悪いのですが、大魚1匹を狙うのではなく、中程度の大きさの魚を、バケツいっぱいに釣ろうと考えたわけです。いきなり一晩で100万円のお客さまをつかむのは難しいけれど、3万円くらいの人なら自分でも捕まえられる。ひとりひとりは小さくても、人数が多ければ売上も上がるのですから。そこで講じたのが、お客さまに対して「オレ、今はまだ売上はそこそこだけど、指名本数は多いんだよ」とアピールする作戦です。この、いわゆる〝モテアピール〟は思った以上に効果がありました。お客さまの間で「信長くんって、そんなに人気があるんだ」「こんなに指名があるなら、きっといいコに違いない」というイメージが少しずつ広まっていきます。この拡散効果のおかげもあって、指名本数だけでなく売上も徐々に増えていきました。それがやがて売れっ子になり、№1になるという結果につながっていくことになります。おかげさまで今はもうアピールは必要なくなりましたが、駆け出しの頃はそうやって自分のファンを増やしていく工夫をしていたのです。■「売れているもの」がもっと売れる経済学やマーケティング論に「バンドワゴン効果」という用語がよく出てきます。これは、多数の人に受け入れられている商品やサービスほど、世の中の支持がより一層強くなるという経済的な群集心理現象のことです。また、実際にはそれほどでなくても、「流行している」という情報を流すだけで世の中の支持は高まっていきます。つまりバンドワゴン効果とは、「大勢の人が『いい』と評価しているのだから、きっといいものだと思う」「みんなが集まっているところに人が集まってくる」という心理や行動のことなのです。行列ができている飲食店を見て、「繁盛しているな。そんなにおいしいなら……」と、つい自分も並びたくなってしまう、そんな人も多いと思います。まさにそれ。そのためバンドワゴン効果は「行列効果」とも呼ばれています。では、なぜそうした現象が起こるのでしょうか。それは私たちが、何の情報もないものに対して不安や恐れを感じるからです。でも、みんなが「いい」と言っているもの、実績があるもの、人気があると言われているものに対して、人は安心感を覚えます。だから初めて行くお店よりも、よく知っているお店で買うほうが安心するし、大手企業や有名企業とは安心して取引ができるのです。私の〝モテアピール〟もまったく同じ。とくにホストクラブに慣れていないお客さまは、何よりもまず安心と信頼を求めます。だから「こんなに多くの指名をいただいている」とアピールすることで、お客さまの心理に「よく知らないホストは怖いけど、人気のある信長なら安心」というバンドワゴン効果を引き起こし、結果、私への指名本数も増えたというわけです。当時の私にとってモテアピールは、「あのコは人気がある」という自己演出であり、「安心感がある人」というセルフ・ブランディングだったということです。

魅力的に見えるのは変な謙遜をしない人私はお店が満席になったときには、「おかげさまで今日も満席です」と、リアルタイムですぐブログにアップするようにしています。「そんなことを書いたら『満席じゃ行っても入れない』と客足が引いてしまうんじゃないの?」と言われることもあります。たしかにデメリットもあるのですが、それ以上に大きなメリットがあると、私は思っています。なかにはブログに「今日はお客さまが少なくてヒマだからおいでよ」というようなメッセージを発信しているホストクラブもあるようですが、私に言わせればとんでもない。それは「ウチは人気がない店です」と言っているのと同じです。すぐに満席になる店と、ヒマだからいつでも入れる店、行ってみたいと思うのはどちらでしょうか。お客さまはやはり人に支持されていない店よりも、〝すぐ満席になるくらい〟人気のある店に行きたいもの。たとえ今日は入れなくても、「そんなに人気の店なら次こそは来てみたい」と思っていただければ、後日、そのお客さまは必ず来店してくださいます。人気レストランによくある、「何ヶ月先まで予約の取れない名店」というキャッチフレーズのように満席アピールには大きな意味があるのです。■ほめられたらさりげなくアピール多くの日本人はいまだに自分の強みや長所をアピールすることが苦手です。たとえば「○○さんっててイケメンだからモテるでしょ」「面倒見がいいから部下から慕われてるでしょ」などと言われても、ついつい遠慮して、謙遜して、「いやいや、私なんか全然モテないよ」「いや、慕われてなんかいないよ」などと言ってしまう。しかし、本当に女性にモテたいなら、「自分に好意を持っている女性がいる」ことをにおわせる。仕事での信用度を上げたいなら、「部下から頼りにされている」ことをさりげなく伝えるくらいの自己アピールをするだけでOK。そうすることで、バンドワゴン効果が生まれ、「この人は女性にモテるような魅力のある人なんだ」「部下に慕われるような誠実な人なんだ」といういいイメージを相手に与えることができます。もちろんやり過ぎは禁物。「そう、モテモテです」「部下からはアニキと呼ばれてます」とまで自慢する必要はありません。そこまでやっては「ただの自慢かよ」「鼻持ちならないヤツ」と思われ、かえってマイナスになってしまいます。企業で言えば取引実績、飲食店なら口コミやメディア露出、有名人のコメントなどがそれに当たるでしょう。今の時代、多くの人から高評価されている、みんなからモテているという正当なアピールは、個人や企業のブランディングに不可欠なアクションだと思います。アピールしすぎは煙たがられるけれど、アピールしなさすぎ、卑下しすぎはブランド力や安心感を落としてしまいます。この時代、もっともっと自分を、自分の強みを周囲にアピールしていい。むしろするべきだと思います。人気が人気を呼び、人が人を引き寄せる。自分を卑下せず、本当の自分をより高く見せることがセルフ・ブランディングにつながっていきます。

気がつけば、いつもそばにいる大切さSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でのコミュニケーションが当たり前の時代です。フェイスブックにツイッター、インスタグラム、ツイキャス、YouTube、LINEなど誰もが情報を発信し、大勢の人と共有できる。これをセルフ・ブランディングに活用しない手はありません。かつてホストの営業と言えば電話、メールでしたが、近年はSNSの登場により営業方法もずいぶん様変わりしています。さまざまなSNSでセルフ・ブランディングをして外部からお客さまを呼び込むホストも増えてきました。これは10年前では考えられなかったことです。私が一番有効に活用しているSNSは、LINEのタイムラインです。タイムラインとは、自分の投稿を〝友だち〟としてつながっているすべてのユーザーと時系列で共有できる機能です。いわば、自分の近況などをLINEをしている仲間全員にお知らせできるマイ掲示板のようなもの。私は同じ内容の投稿を複数のSNSにしていますが、タイムラインからの反応が驚くほどに多いのです。LINEは使っている人が多いのが最大のメリット。なのでブログなどよりも、タイムラインのほうが相手の目に触れる機会が多くなります。もっと言うなら、半強制的に相手の目に触れさせることができるのです。この差はとても大きいと考え、私はタイムラインにできるだけ頻繁に投稿するようにしています。この際、投稿の内容はそれほど重要ではありません。もちろん、内容がよいに越したことはありませんが、内容を考える余りに投稿しなくなってしまうくらいならどんどん投稿したほうがよいのです。ですから、今日はどうした、店でこんなことがあった、こんな経験をした――そんなたわいのないことでも何でもいい、できるだけ1日1回はアップすることを習慣にしています。なぜなら、毎日何かしら投稿することで、自分の存在を少しずつでもアピールできるからです。とくに女性はSNSをよくチェックするので、彼女たちがタイムラインを開くと、いつも私の投稿が載っているという状況をつくっておきます。タイムラインを見るたびに、私のコメントや写真を目にする。そうすることで相手の記憶の片隅に常に「信長」という存在が刻まれます。これが、前にも書いた「ザイオン効果」を生み出すのです。頭のどこかに刻まれているからこそ、「飲みたい」「話を聞いてほしい」と思ったとき、「ああ、そうだ」と思い出してもらえる可能性も高くなるでしょう。実際に、「信長くん、毎日タイムラインにアップしてるよね。何だか見るのが習慣になっちゃった」というお客さまは多く、なかには、「最近は講演もしてるんだって?タイムラインで読んで久しぶりに会いたくなった」と、3年ぶりに来てくれたお客さまもいらっしゃいました。3年も間が空いたお客さまに、もう一度戻って来てもらうのは至難の業です。でもSNSによって、間接的ではあっても接触機会を絶やさなかったことで「久しぶりに、また行ってみよう」と思い出してもらえたのです。かつては毎日メールを100人以上に送っていた時期もありましたが、それと同じような効果を生むことができるのです。メールを打ちすぎて腱鞘炎になりかけた当時のことを思えば、驚くほどよい時代になったと実感しています。「気がつけば、いつもそこにいる」「会ってはいないけれど、よく名前を見る」だから、何かのときに思い出す――。相手にとってそんな存在になるというのも、「一→多」「個→公」の情報発信ができるSNSを有効活用したセルフ・ブランディングだと思います。

自分を磨きたいなら本を読めホストという仕事柄、外見を磨くことも重要なのですが、それ以上に求められるのが中身を磨くことです。ホストは自分自身という人間を売り込む商売。いくらルックスだけを整えても、人としての中身がスカスカでは、ピカピカの外見もただのメッキにしかなりません。では、内面を磨くにはどうすればいいのか。一番手軽で、誰にでもできて、しかも効果の高い自分磨きの方法、それはやはり「本を読むこと」でしょう。「ClubRomance」のホストにも、常に「自分を磨きたいなら、とにかく本を読め」とアドバイスしています。でも、私自身、子どもの頃から本好きだったわけではありません。20歳ぐらいまでは、まともに本を最後まで読み切ったこともなかったくらいです。■本の食わず嫌いをなくす私が初めて「読んだ」と思える本に出会ったのは20歳の頃のこと。家庭環境が複雑だったときにコンビニで見つけた「小さなことを気にするな」という内容の自己啓発書でした。さらに大学に入学してしばらくの後、近所の書店で1冊の本と出会いました。中谷彰宏氏の『大人のスピード読書法』(ダイヤモンド社)という本です。なぜ自分がその本を手に取ったのか、実はよく覚えていません。たまたま雑誌を見ていたときに目に入ったのか、キャッチコピーに惹かれたのか、それはともかく、その日、その本を買って帰ったのです。読んでみたら、まさに目からウロコ。本を読むって簡単だったんだ、難しくないんだ、そして「本を読むって、こんなに大切だったんだ」と思い知らされたのです。そもそも、『大人のスピード読書法』という本自体がとても読みやすく、長い文章を読むのが苦手だった私でも、スラスラと読み進めることができたことも大きかったと思います。この1冊の本で「オレだって本を読めるじゃないか」という成功体験を得られたことで、本に対する抵抗感、食わず嫌い感が一気になくなったのです。堰を切ったように本を読み始めたのはそこからです。それ以来、ジャンルなど関係なく、雑誌や書籍を片っ端から買っては読み漁り、おそらく5000冊以上、ビジネス書に限ってはこれまでに1000冊以上を読んできました。今でも1週間に平均3冊くらいのペースで読んでいますが、少し時間が取れる週だと15冊ぐらい読むこともあります(それでも買うペースには及びません)。それほどに本を読むことは、私の生活から切り離せない大切な習慣になっているのです。■ビジネス書の理論をホスト業で実践するホストの仕事を始めてからは、ビジネス書の比重が多くなっていきました。私は、ホストを「究極の接客業」であり、ビジネスの本質はどんな職業でも変わらないと考えています。ならば、一般のビジネス書に書かれているような思考や発想、行動や仕事術だって、ホストの仕事に活用できることがあるはず。そう思ってビジネス書に書いてあることをホストの現場で試して、プラスの効果を得た経験も数多くあります。ものごとの考え方や人間関係、コミュニケーションや人心掌握術など、本から教えられることは、すべて私の血となり肉となっていきました。ビジネス書に限らず、あらゆるジャンルの本に学びと気づきがありました。私がカリスマホストの称号を得られたのも、№1の座を勝ち取れたのも、本を読むおもしろさ、読書による自分磨きの大切さに気づいたからであり、それがホストとして、経営者として、ひとりの人間として、今の私の土台になっているのです。ここからは、私なりの本の読み方をいくつかご紹介します。もちろん、本の読み方は人それぞれ。ご自分の好きなスタイルで読むのが一番いいのですが、あくまでひとつの参考にしていただければ幸いです。

未知のジャンルは「子ども向け」から入る最近、ホストとしての本業の傍ら、講演やビジネスセミナーなどで話をさせていただく機会もあるのですが、そうしたときには、講演のテーマやセミナーの議題に関する基礎知識をある程度は持って臨まなければなりません。ときには雑誌やネットメディアの「歌舞伎町ホストが教える――」といった恋愛企画の取材を申し込まれることもあります。そこでは自分の経験やエピソードを話すだけでなく、世の中の恋愛論や恋愛観を知っておくことも重要。そのため事前に恋愛小説や「恋愛術」、「モテる技術」といった本を片っ端から読むこともあります。また2015年からコミュニティFMで『江東アフタヌーン!!カリスマホスト信長の晴れ時々モテラジオ』というラジオ番組を始め、さまざまな分野の著者の方々にゲストとして出演していただき、対談もさせていただいています。ここでも対談相手の方の著書があればひと通り読んでおく、その方の業界に関する本に目を通しておくのは基本中の基本です。何か課題や目的があって、それに必要な情報を得るために読むという読書シーンがとても多くなっているのです。そうした場合、関連ジャンルの本をまとめて10冊くらい〝大人買い〟して、一気にすべてを読むようなことも少なくありません。■一番やさしいところから入る必要な情報を得るための本や事前学習のための本を買うとき、常に意識していることがひとつあります。それは「一番やさしく書かれた本から買う」ということ。「初心者のための――」「――基礎の基礎」「――入門」といったハードルの低い、難易度の低い本を最初に買うようにしています。小学生向けの児童学習書や「マンガで読む――」のようなコミックもいいでしょう。知らない分野の基本を知り、概要を理解するための読書の場合、本になじみのない人ならまず子ども向けの本から入るのがオススメです。NHKで放送されていた子ども向け報道番組『週刊こどもニュース』は「子どもにも理解できる言葉で解説してくれて、すごくわかりやすい」と、大人のファンが多かったと言います。子ども向け、恐るべしです。■まず漫画版で下地をつくる中途半端に中級レベルの内容から読み始めると、すぐに壁にぶつかって「わからない、や~めた」になりかねません。カーネギーの『道は開ける』『人を動かす』やスティーブン・コヴィーの『7つの習慣』、ドラッカーなどは世界的名著であることは間違いないですが、本をあまり読む習慣のない人がいきなり読み始めると、挫折する恐れがあります。本を読む習慣が身についている私でも、最初から読もうとすると「うわ、厚い」と圧倒されて読む気がおきないこともあります。本を読むことがストレスになるようだったら、無理をせず簡単なもので概要をつかんでから活字の書籍を読めばよいのです。たとえば、『まんがでわかる7つの習慣』(宝島社)は導入としてオススメです。漫画で下地を作ったうえで書籍を読めば、理解は格段に早くなるはずです。書店で必要なジャンルの棚をひと通りチェックしたら、一番簡単な本をまず買う。そして基本的なことを知ってから徐々にレベルアップしていく。仕事や勉強の資料を探しに書店に行ったら、試しに児童書コーナーを見て回るのもよいと思います。思った以上に役立つ本が見つかるかもしれません。

歌舞伎町ホストが年間1000冊買う理由何を読もうか迷ったときの本の選び方は人それぞれ。今人気の本、売れている本を選ぶ人もいれば、書店で行き当たりばったりで本を買う人もいます。私の場合、どちらかというと後者に近い選び方です。書店をぶらりと見て回り、並んでいる本をゆっくり物色していると、思わず目を引く本、〝ビビッとくる〟本に遭遇することがよくあります。やけにタイトルが目に入ってくる、著者の肩書がおもしろい、表紙の写真がユニーク――「本に『読んで』と呼ばれている」感覚とでも言えばいいのでしょうか。でも、本好き、書店好きで同じような経験をしている人は少なくないと思います。そんな本は、もう即買いです。自分の直感が「この本を読め」とささやいている。そのささやきを信じるのも、本選びのひとつの基準だと思います。ビビッときて衝動買いした本はハズれることもありますが、思いのほかおもしろかったり、これまで知らなかった分野のことが理解できたりと、うれしい〝当たり本〟と出会えることも少なくありません。そんなときは思わず、「やったぜ!」という気持ちになります。もちろん時間の許す限り、流行っているベストセラーも読むようにしています。世の中で流行っていること、人気のあるものを知っておくのは、ホストにとってとても重要なこと。流行りものの情報は、会話の糸口にもなれば、共通の話題にもなり得る接客のオールマイティ・アイテムですから。また、ベストセラーになっていても、「なぜこの本が流行るのか、自分には理解できない」という本も多々あります。そんなときは、「自分と世の中の感覚には、どんなズレがあるのだろう?」「なぜこうした発想が支持されるのだろう」ということを自分なりに考えてみる。これはこれでまた、いい勉強になります。ときには本好きなお客さまと、「この本はなぜベストセラーなのか」と盛り上がることも。■読書は最高の自己投資自分がビビッときた本、そして世の中の多くが支持している本、その両方をバランスよく読めるのがベスト――と言いつつ、最近は読書に充てる時間がなかなか取れず、読みたい本が溜まってしまいがち。それでもビビッときた本に出会うと、すぐ買ってしまうのですから困ったものなのですが。でも、私はそれでいいと思っています。実際に私も本を選んで失敗したなと思うことはしょっちゅうです。先日、アマゾンで自分のこれまでの購入履歴をチェックしたら、年間で700冊の本を買っていました。このほかに書店でも大量に買うので、年間に1000冊は買っているでしょう。これには自分でも驚いたくらいです。大事なことは本をたくさん読んで、さまざまな考え方や価値観に触れること。まずは本を買って、触れようとする意識を持つことなのです。私が雑誌のインタビューなどでよく言うのは、「読書ほど効率のよい自己投資はほかにない」ということです。本の書き手になってより強く思うのが、1冊の本には著者の数十年分の人生が、その人生のなかで培われた価値観が、考え方がぎっしり詰まっています。そして、それを1冊1500円程度で買うことができるのです。1回5000円の飲み会に行くことを考えれば、その金額で本を3冊買えます。ただの惰性でいつもの仲間と飲みに行くなら、時にはその1回をパスして、気になっている本を衝動買いしてみる。そうしたちょっとした行動が、もしかしたらみなさんの人生を変えるきっかけになるかもしれません。読書は最高の自己投資である――私はそう思っています。

本は徹底的に汚して自分だけの「ノート」にする私が本を読むときに手放せないのが赤ペン。重要だと思う部分に傍線を引く、気づいた点や感想を余白にメモする、ふと思いついたアイデアを書き留める――というように、片っ端からバンバン書き込みをするからです。「それ、古本?」「いや、昨日買った新刊」「マジかよ」といったやりとりになることもしばしば。でも、「本は汚してナンボ」というのが私の持論なのです。電車のなかでも常にペンを片手に持って、その場で書き込みながら読んでいます。自分でもちょっとおかしいかな?と思うのですが、やめられません。「本も1冊のノート」というのが私の考え。なかには感想や思いついたことを別紙や別ノートにまとめている人もいますが、「なんて面倒なことを――」と思います。どうせノートに書きつけるのなら、本に直接書き込んだほうが絶対に理解しやすいでしょう。その本のなかだけで完結するのですから、後から読み返すとき、いちいち本とノートを突き合わせる手間も省けますし。あるとき、明治大学教授の齋藤孝氏が、本を読むときには3色ボールペンで色分けして線を引き、書き込みをしながら情報整理をするというのを知って、「ああ、オレは間違っていなかった」とホッとしたものです。こんな読み方をしているので、普段のバッグのなかには常に3本くらい、自宅には20本くらいの赤ペンを常備してあります。さらに私の場合、書き込むどころかページを破ることもよくあります。同じテーマの本を何冊か読んだときなど、それぞれの本から重要なページを切り離して、それだけをまとめて持ち歩きます。いわば、自分だけのダイジェスト版をつくるわけです。周囲からは「なんて斬新な読み方だ」と驚かれるのですが、数冊すべて持ち歩くことを考えれば荷物も少なくて済みますし、その都度読みたいページをあちこちの本から探すのは非効率です。それにページを切り取るには、その本のなかで自分にとって重要な部分はどこかを明確にする必要があります。ですから本を破るということは、本を読んでエッセンスを抽出する訓練にもなるわけです。私は、本を汚すことを大前提にして読んでいます。1回目は赤ペンを使って、重要と思うところに線を引いたり書き込みをしたりしながら読みます。2回目は赤ペンで線を引いた部分だけを読みます。そして、赤ペンだらけの本はそのまま所有します。赤ペンが少ない本は、そのなかでも大事だと思う部分が書かれたページをビリビリと破きます。さらに、破った部分を再度見直して大事だと思った部分は、パソコンに書き写してデータとしてまとめておきます。こうして1冊の本から重要部分を抽出して、抽出し尽くして、最後に残った核の部分(データにまとめたもの)を、折を見て定期的に見直すようにしているのです。なぜ何度も見直すのかというと、それは「人は必ず忘れる」ということを大前提にしているからです。ですから私の本は、いつもボロボロです。でも、本は読みすぎて汚くなっているぐらいのほうが価値はあります。びっしりと書き込まれ、継ぎはぎだらけになった本は、他者が見ればただの汚い本かもしれませんが、本人にとっては重要事項がすべて詰まった〝至高の一冊〟なのです。有名作家の初版本や大好きなアイドルのサイン入り写真集ならいざ知らず、読んで、学んで、血や肉にするための本はみっちりと使い込んで、どんどん汚せばいい。それは本を粗末にするのではなく、自分用にカスタマイズするということです。本は汚してはいけない。本は破いてはいけない。そんなことをしたら後で売れなくなる――そうした発想を捨てれば、読書はより効果的で楽しくなる。私はそう思います。

1冊を最初から最後まで読もうとしない本好きでたくさん読んでいるという話をすると、お店のお客さまや読者から「今読んでいる本を教えて」とか「おすすめの本は何ですか」などと聞かれることがあります。そして自分が役に立ったと思う本をすすめたり、SNSなどで紹介したりすると、ときに「難しくて最後まで読めなかった」「あの難解な本、よく読破できたね」と驚かれたり、ほめられたりします。何を隠そう、私自身、本の隅から隅まですべてを読んでいるわけではありません。それどころか半分のページも読まない本さえあります。読書で大事なのは、その本から何を学ぶか、その本の何を自分の身につけるかであって、その本のすべてを理解することではない。私はそう思っています。だから私のおすすめはテキトー読書です。■本当に大事な部分は10ページもないそもそも本の読み方などその人の自由。最初のページから読まなければいけない、最後まで読まなければいけないという決まりもありません。私の場合は、シンプルに最初から読んでいますが、読みたい部分だけであとはスルーでもいい。難しい部分や理解できない部分が出てきたら、そこで立ち往生するのではなく、思い切って読み飛ばす。読みづらい箇所はバンバン飛ばします。自分が読みやすい部分を読めばいいのです。読んでいる途中で、「なるほど、そういうことか」「こんな考え方もあるんだ」という気づきや発見がひとつでも得られれば、その本を手にした意味は十分にあります。最初から最後まで、書いてあることすべてを理解しようと思わないこと。実は、ビジネス書などで本当に大事な部分は、分量にして10ページ分もありません。だから、肩の力を抜いて「難しいところはパス!」くらいの気持ちでOKです。私自身、本を読んでいてわからない部分にぶつかっても、自分がバカなのではなく(昔はそう思った時期もありましたが)、「今はまだ自分に必要ではないこと」だと割り切って読み飛ばしています。もしパスだらけになってしまったら無理して読まず後回しにしたっていい。■わからないところは今は必要ないところおもしろいもので、昔買った本を読み返してみると、その当時はわからなかったことが今になって腑に落ちるということがよくあります。たとえば、昔、ビジネス書を読み始めた頃に買ったジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラスの『ビジョナリーカンパニー』(日経BP)も、当時は「?」の連続で意味がわからなかったのですが、今、自分で店の経営をするようになって改めて読み直すと「なるほど」と思えてくるのです。重要なのは何を得られるかであって、すべてを理解することでも、最後まで読み切ることでもありません。わからなかったら読み飛ばす。それでもつまずいたら「今の自分にはまだ必要ない」と割り切って後回しにする。読書はこれくらいテキトーでいいのだと、私は思います。

本は買った直後が一番の読みどき毎日深夜までお酒を飲んで、翌日はほぼ二日酔い状態。出勤前にはお客さまと店外で会うことも多いし、ホストだけでなく店の経営にも携わっている。信長さんって、いつ本を読んでいるんですか?――そう聞かれることがあります。多忙な人のなかには電車での移動時間や待ち時間、いわゆる〝隙間時間〟に読むというケースも多いようですが、私の場合は細切れに読むと頭に入ってこないため、きっちり時間を確保して読むというスタイルです。時間帯として多いのは、昼間の1時くらいから1~2時間。乗ってくると仕事が始まるまで読み続けることもありますが。ただ、自分の部屋だと、ついつい目の前の雑用をしてしまい、なかなか集中できないので、なるべく外に出かけて、カフェで読むようにしています。最近では昼下がりのカフェが、私のメイン読書スポットです。人にもよるのでしょうが、私の場合はカフェのほうがグングンと読み進められます。私は本を出版していることもあって、業界ではキッチリ人間だと思われがちですが、実際は違います。家にいるとダラダラしてしまうことも多いのです。自分だけだとなかなかヤル気が出ないけれど、周囲の目があるところだと頑張れるという人間心理(ホーソン効果)があるのですが、家よりもカフェのほうが集中できるのは、このホーソン効果の影響なのかもしれません。■「少年ジャンプ」式読書法そしてもうひとつ、本を読むのに絶好のタイミングがあります。それは、本を買った直後。買ってすぐに読むということです。書店を訪れるときは、できる限り時間に余裕を持って出かけ(最低でも1時間くらい)、さらに書店に入る前に周辺で本を読めそうな場所(カフェなど)をチェックするようにしています。買った本をすぐに読むため時間と場所を事前に確保するのが半ば習慣になってしまいました。「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、本も同じ。読みたいと思っていた本も、書店でビビッときた本も、〝読みたいモチベーション〟が一番高いのはその本を買った直後なのです。子どもの頃、『週刊少年ジャンプ』(集英社)が大好きで毎週買っていました。発売日に書店で『ジャンプ』を買うと、すぐに読みたくて、300メートル程度しか離れていない自宅に帰るまでの時間も待てず、歩きながら読んだものです。同じような経験を持っている人も多いのではないでしょうか。今も同じ。本を手に入れた興奮が醒めやらぬうちにカフェになだれ込み、注文もそっちのけでページをめくっていると時間の経つのを忘れてしまう――。私にとってそれは、シャンパンタワーをオーダーしていただくのと同じくらいの至福の時間なのです。

イケメンホストが生き残れない理由若くてルックスがよくて、オシャレでノリがいいイケメン。女子にモテて、高価なものを貢いでもらえて、リッチに暮らせる――。多くの人はホストにこういったイメージを持っているかもしれません。そのイメージ、ある部分は正しく、ある部分は間違っています。ホストは、やはりまず外見を見られるため、ルックスのいいイケメンが多いのは事実。しかし、イケメンだからホストとして成功するかどうかというと、それはまた別の話です。実はこの世界には、イケメンゆえにホストの仕事が続かず、すぐに辞めてしまう人も多い、というもうひとつの事実もあるのです。ホストというのは、単なる「見た目のよさ」だけでお客さまから指名していただけるほど甘くはありません。むしろ、なまじイケメンで普段から女性にモテてきた人ほど、自分のルックスを過信し、努力をしない傾向があります。自分のルックスに自信があるために、ホストクラブという〝ビジネス〟の場でも、イケメンという武器だけでやっていけると思ってしまうのです。ところが、いざお店に出ると、ルックスだけではお客さまがついてきません。ここで初めて壁にぶち当たります。自分が持っている唯一の武器が通用しない。どうしたらいいのかと悩むわけです。結局、高く伸びていた鼻っ柱をポキッとへし折られて自信を喪失し、誰にも相談できないまま、「オレはダメな人間なんだ」と落ち込んでホストを辞めていく――こんなケースが後を絶たないのです。

売上を伸ばし続ける人の「好かれる資質」ホストにとって、ルックス以上に求められるファクターとは何でしょうか。「1対5の法則」というビジネス用語があります。既存顧客に商品を売るためのコストは、新規顧客のそれの5分の1で済む。つまり新規のお客さまを獲得するより、リピーターを増やすほうが低いコストで売上をアップできるということです。女性のお客さまはホストクラブに、楽しい時間、ときにお姫様になったような時間を過ごすためにいらっしゃいます。お客さまにそうした非日常の夢を見ていただくのもホストの大切な仕事。ですからルックスやファッションといった外見、容姿はもちろん大事です。しかしそれはあくまでも、お客さまとの関係性を築くための〝とっかかり〟でしかありません。ホストクラブで「わあ、カッコイイ」というルックスのインパクトが通用するのは最初のうちだけ。見た目のよさには3回も会えば慣れてしまいます。いくらカッコよくても、一緒にいておもしろくない、居心地がよくないというのでは、お客さまは継続して通ってはくれません。ルックスの下にあるホストとしての〝中身〟がなければ、すぐに飽きられてしまうでしょう。リピーターになってもらうにはルックス以外の何かが不可欠になります。この違いを生む〝見た目ではない何か〟とは何でしょう?それはずばり、「好かれる資質」です。つまり、お客さまに気に入ってもらえる、「この人がいい」という好意を持ってもらえる――そんな人間としての資質、人柄や所作、立ち居振る舞いのことです。ホストの世界の話に限ったことではありません。どんな世界にも、同じように振る舞っていながら、自然と人が集まってくる人と、いつのまにか人が離れていってしまう人がいます。それもやはり、その人が持つ「好かれる資質」が大きく関係しているのです。■人の心を動かすのは必死ながむしゃらさ何事においても冷静で先を読む力にたけている――これは素晴らしいことですが、それだけでは人を動かすことは不可能です。それが最もよくわかるのが月末の締め日です。ホストクラブでは毎月末に「締め日」と呼ばれる日があって、個々のホストのその月の売上が集計され確定します。つまりその月のそのお店の売上順位が決まる日、№1が決まる日でもあるわけです。さて、ホストには大きく二つのタイプがあります。顔がイケている、背が高い、細マッチョでいいカラダをしている。愛想もノリも悪くないし、そつのない会話もできる。売上だって決して悪くはないのに、最後の最後でどうしても№1を勝ち取れない人。つまり、実力はあるのに毎回2位とか3位どまりの人がいます。その一方で、イケメンではあっても、店のなかで突出してルックスがいいわけでもない、誰もが彼の話を聞きたくなるほど優れた話術を持っているわけでもない。なのに最終的に№1を勝ち取れる人がいます。ここで問題です。万年次点の人と最終的に№1を勝ち取れる人とでは、どんな違いがあると思いますか。答えは「がむしゃらさ、必死さ」です。テレビなどの影響もあり、№1ホストというのは優雅に登場して「このブランデー注文していい?」とさらりと言って、お客さまも「もちろん♡」と、あっさり注文してくれる、その結果、いとも簡単に何百万円も売り上げるなどと思われがちです。しかし、そんなのはほんのひと握りのレアケース。現実はそんなイメージとは異なっていることが多いのです。「オレは何が何でも№1になりたい。誰にも負けないホストになりたいんだ。だから月末にはシャンパンタワーを入れてほしい。頼む!」と、なりふり構わずに頭を下げ、熱意と感情をむき出しにしてぶつかっていける人が、高額のボトルが入り、最終的に№1ホストになれるんです。「あんなに頼みこむなんてダサいしカッコ悪い。オレは嫌だね。もっとスマートなのがいい」などとクールを気取ってがむしゃらさを笑っている人に限って、いつまでたっても〝その他大勢〟から抜け出せないもの。結局、必死さに勝てないということです。実際に、一日で何百万円も売り上げるような超売れっ子のホストはみな、こうした〝がむしゃらさ〟を持っています。熱意ある言葉で注文を頼む。その必死さやがむしゃらさが、ときとして「数百万円のシャンパンタワー」という普通に考えたらあり得ない成果を引き出してくることさえあるのです。■「スマート」な人は誰も助けてくれない今の世の中、とくに若い人たちは「がむしゃらさ」や「必死さ」や「熱意」や「情熱」といったものを敬遠し、仕事でも恋愛でもスマートにカッコよく、きれいにやろうとする傾向があるように思います。しかしながら、ウサギとカメのお話ではありませんが、がむしゃらさを恥ずかしがり、ひたむきさを笑い、スマートさやクールさばかり追求している人は、最終的に大きく突き抜けられない、私はそう考えます。たしかに不格好かもしれないし、スマートではないかもしれません。でも最終的に人の心を突き動かすのは冷静なスマートさよりも、心の底からの熱意です。血の通った感情なのです。このことは忘れないでください。

大きな野心は、周りに火をつける「てっぺんを目指す」大きな野心は自分のモチベーションに火をつけるのはもちろんですが、それ以上に周りにも大きな火をつけます。周囲も認める実力があるのに「このくらいでいいや」と考える人と、技術や才能はそれほどではなくても「オレはこうなりたい、なってやる」という高い目標と強い意志をもって事に臨む人。どちらが人を惹きつけるか、どちらに魅力を感じるかは言うまでもないでしょう。ちなみにホストクラブにおいては1位と2位の間には圧倒的な差があり、仕事のしやすさが全然違います。「歌舞伎町№2ホスト」より、「歌舞伎町№1ホスト」のほうがインパクトが強いのは明らかでしょう。しかしそれでも、だからといって、2位が悪いわけではありません。全力を尽くして頑張っての2位なら、それは大いに胸を張っていい。大事なのは、最初から2位狙いで行くのではなく、「やる以上は1位を取ってやる」という気概をもって挑む姿勢にあると思うのです。■爆笑された№1宣言ホストなら№1を目指す。営業マンなら会社のトップを目指す。アスリートなら金メダルを目指す。何かに挑戦するなら№1を目指す。てっぺんをとろうという気持ちを持つ。この気概こそが行動力を生む源、知恵を生む泉となるのではないでしょうか。そして目標は公表してしまえばいい。「自分は№1を目指す」と周囲に宣言する。ビッグマウスとバカにする人がいるかもしれません。私自身の時もそうでした。10年くらい前、まだ売れっ子と呼ばれるにはまったくの実力不足だった頃、グループの総会で「今年、僕は絶対にこの店の№1になります」と、全ホスト、全スタッフの前で宣言したのです。当時、店にはテレビに何度も出演しているような圧倒的存在の№1ホストがいましたし、自分は10位に入るのがやっとという状況でした。でも、思い切って宣言しました。私は「№1を目指さずして、何がホストだ」と思っていたほどで、熱意だけは自信がありましたから。それを聞いた他のホストやスタッフは、大爆笑。「何、血迷ったこと言っちゃってるの、信長くん」みたいな反応がほとんどでした。でも〝てっぺんを目指す宣言〟をしてからは、明らかに自分のモチベーションが変わりました。それまで以上に真剣に必死に接客に取り組む行動力が芽生えてきたのです。また、目標を明確にしたことで、日常生活でも行動のすべてが変わりました。たとえば、時間の過ごし方。それまでは営業後に店の人たちと飲み明かすこともしばしばでしたが、目標を宣言してからは「自分にとって本当に大事なこと」に集中するようになりました。ホストにとって大事なこととは言うまでもなく「お客さまのために時間を使う」ということです。さらに自分が変わったことで、今度は周囲の〝自分を見る目〟が変わってきました。「あいつ、口だけじゃないかもしれない」という空気が、同僚にもスタッフにも、お客さまにも生まれてきたのです。とくにお客さまには効果絶大でした。当時の私は「№1をとりたい」と毎日熱っぽく語っていました。そうしたら、いつの間にか「私の夢」が、お客さまとの「共通の夢」に変わっていきました。お客さまは「私が№1になること」を「自分の夢」として応援してくださったのです。大きく夢を語ることが、周囲の人を動かす光景を目の当たりにして、私は大きな驚きと喜びを感じたものです。そして、数ヶ月後、ついに宣言どおり№1になることができたのです。■大きな旗を掲げるということこの「応援される力」というのは、№1をとるためには最も大事な力です。てっぺんを目指すという大きな目標を掲げると(しかもそれを公言すると)、バカにされたり笑われたりすることもありますが、一方では熱意に共感して応援してくれる人も現れてくるものです。掲げなければ、バカにもされないかわりに応援もされません。ならば、自分の目標という旗を見えるように振りましょう。どうせ振るなら、小さい旗ではなく、大きな旗を振りましょう、ということです。そのほうが、より自分自身を鼓舞できるし、より大きく変われるはず。そして多くの人の目に届くはずです。ホストクラブでも、ホストが№1をあきらめると、お客さまの熱が冷めてしまうケースも少なくありません。企業でも目標をつくることが大事と言いますが、ホストも同じです。今月は売上1000万円を目指しているから、と言う人にはお金を使ってくれるけれど、目指すべき目標が何もない人には大きな金額を使うことはほとんどありません。大きな目標も掲げず、てっぺんも目指さず、「そこそこでOK」というホストに対しては、お客さまも真剣になれず〝そこそこ〟にしか応援してくれないのです。最初から「2位でいいや」と思ったら、それ以上の伸びは生まれません。でっかい目標、てっぺんを目指すという〝目に見える野心〟が自分を変え、そして周囲の人を惹きつけていくのです。

飲みに行くなら知らない人と違う部署の人たちとマメに交流を持つ、積極的にコミュニケーションを図るという姿勢は重要です。他部署とのコミュニケーションは、組織内における〝異文化コミュニケーション〟でもあるわけです。そうすることで、組織をまたぐ貴重な〝横のつながり〟を構築することができるのです。同じ部署の人たちと飲む機会はいくらでもあるのですから。他部署ではありませんが、同じ部署でも価値観や視点が異なるという意味で、ときには部署の上司に声をかけるのもいいでしょう。「さすがに上司は誘いにくい」――そんな声が聞こえてきそうです。でも大丈夫。みんなが誘いにくいと思っているため、上司というのは普段、部下から誘われる機会がそうそう多くはありません。なので、かえって部下からの誘いは嬉しいと感じるものです。思い切って声をかけてみてはどうでしょうか。■話せば話すほど親近感は増すまた、(私は吸いませんが)タバコを吸う人なら社内にある喫煙スペースもねらい目。なぜなら職場の飲み会は同じ部署の人同士が多いですが、喫煙所の場合ならさまざまな部署の人が集まってくるからです。部署の垣根を越えて喫煙者同士が身を寄せ合って、「嫁にタバコやめろって言われてるんだよ」「オレはそれでも吸い続ける」などと雑談をしているところに参加する。お互い肩身が狭い思いをしている同志ゆえに、相互理解の壁も崩しやすく、打ち解けやすくなるのではないでしょうか。大事なことは「話す量を増やす」ということです。人は話せば話すほど、その相手に対する親近感が増すもの。とにかく会話量を増やすことが重要だと覚えておいてください。■あえて相性を考えないチーム分けちなみに私は自分の店で、すべてのスタッフが万遍なく接する機会を持つために、こんな工夫をしています。店には50名ほどのスタッフがいるのですが、仕事をする際は、常に5人一組のチームで行動させています。そのチームは、スタッフ同士の人間関係(仲がよい悪い、馬が合う合わないなど)を一切考慮せず完全にランダムで構成します。人は誰しも居心地のよい場所を選びたがるので、自由にチームを組ませると、仲のよいもの同士で固まってしまうからです。そしてチームは4ヶ月でバラし、別の組み合わせで新たなチームを構成し直します。つまり、4ヶ月サイクルで、みんなが違うメンバーとチームを組むわけです。こうして半強制的に普段触れ合う機会が少ない人と接していくうちに、店全体のチームワークが強化されるのです。これもホストクラブという組織のなかで、個性豊かな面々に異文化交流をさせるための経営手段だと考えています。

〝当たり前〟を積み重ねる人が出世する現在、私は「ClubRomance」の代表として店の経営に携わっています。店のオーナーである会長から、「お前が代表になって経営しろ」と託されたときは、「どうして自分が?」と正直驚きました。№1にもなりましたが、だからと言ってホストとして伝説と呼ばれるほど華々しい成績を残したわけではありません。実際に、私などより圧倒的に売上が多く、私より何度も多く№1を取っているホストは他に大勢いたのです。そういう人たちがいるなか、あえて私が指名されたのですから、やはり売上とか実力という視点だけではなく、勤務態度やホストという仕事への考え方といった、売上以外の部分が評価されたのだと思っています。ホストは非常に不規則な仕事です。恐ろしい量のお酒を飲んで二日酔いになることもあれば、お客さまとの付き合いで朝日が昇るまでお酒を飲んだりすることも少なくありません。そうなると、翌日にまで影響が及ぶことも往々にしてあります。つまり遅刻や欠勤をしやすくもなるのですが、私はホストを始めてからこれまで、ほとんど遅刻欠勤をしたことがありません。そんなことは当たり前だと思われるかもしれませんが、こうした〝当たり前のこと〟をちゃんとできることが、社会的な信用の一番の基本だと思います。当たり前を当たり前にできなかったことで一気に信用を失ってしまうようなケースは、ビジネスの世界ではよくあること。逆に言えば、相手からの信頼を積み重ねるためには、まずこうした当たり前をきちんとこなしていくこと。それが確実に出世するための手段でもある、と私は考えます。ホストが売上至上主義、売上が最大の評価基準になる世界であることは間違いありません。つまり、「できる人=売上を上げている人」ということになります。しかし、ホストクラブという組織のなかで出世する人、店長やマネージャーといった店を運営していくリーダーを任される人となると話は変わってきます。必ずしも「できる人」が選ばれる、売上の多い人が出世するとは限らないのです。■なぜ、トップホストが独立に失敗するのか経営コンサルタントの小宮一慶氏は、著書『あたりまえのことをバカになってちゃんとやる』(サンマーク出版)で、仕事も人生も「ABC」が重要だと説いています。ABCとは、著書のタイトルそのまま「A(あたりまえのことを)B(バカになって)C(ちゃんとやる)」という意味だそうです。仕事の内容がやや特殊であるとはいえ、ホストも社会人です。際立つ個性も、ズバ抜けたルックスも、すべて「当たり前をちゃんとやる」というベースがあってこそ。人として基本のモラルを無視するような行動を取っていると、一時的に成功することはあっても、その成功は決して長続きしないでしょう。歌舞伎町には「ホストとしての売上がズバ抜けている」というだけで即、独立するホストが大勢います。しかし、独立したはいいけれど、1年も持たずに閉店してしまう例が後を絶ちません。とくにホストは「モラルが欠如していそう」というイメージを持たれがちな仕事です。彼らは自分に、お店のスタッフに、「当たり前のこと」を徹底できていたか。社会人としてのモラルを無視してはいなかったか。そうしたところに独立しても長続きしない理由があるのではないかと思えてなりません。遅刻をしない、勝手に休まない、あいさつをする、約束を守る、人の悪口を言わない――そんな「当たり前」を当たり前にする。「社会人としてのモラル」を当たり前に守る。選ばれる人は、何を置いてもまず、それができる人なのです。

№1になるためのチームプレーお客さまと1対1で接客し、個人を売り込む。個人の人気が収入に直結する――「ホスト=個人プレー」というイメージを持たれている人も多いかと思います。しかし、ホスト同士が協力してチームワークよく接客しなければ、ホストクラブは成立しません。ホストにもチームプレー、そして横のつながりが非常に重要なのです。ホストクラブではお客さまがひとりで来店された場合、テーブルに担当ホスト(指名されたホスト)と、「ヘルプ」と呼ばれる担当以外のホストが2名くらい座るのが一般的。つまり、お客さまと3名のホストの計4名で話をすることになります。ところが同じ時間帯にもうひとりの担当しているお客さまが来店されると、指名が〝かぶる〟という状況になります。他から指名を受ければ、担当ホストはそちらにも行って接客をしなければなりません。ホスト同士のチームプレーが求められるのはこのときです。他から指名されて担当のお客さまの席を離れた場合、そこにいるヘルプが接客を引き受け、場を盛り上げ、お客さまに会話とお酒を楽しんでいただく。担当ホストの〝ピンチヒッター〟としてお客さまのフォローをするわけです。指名を受ける担当ホストと、それを支えるヘルプ。ホストたちはお客さまを飽きさせず、がっかりさせないように、テーブルやチームの状況によってそれぞれの役割を引き受け、それを守って働いているのです。■何より大事な〝身内〟との協力体制№1の売上を誇る売れっ子ホストでも、ひとりだけでその売上を出しているわけではありません。むしろ、売れっ子であればあるほど指名の数も多いため、ヘルプにお客さまを預けざるを得ない状況も多くなるとも言えるでしょう。そこでヘルプが「自分の担当じゃないから」「○○さんが来るまでの場つなぎだから」と気を抜いた接客をしていては、当然、そのテーブルは盛り上がりません。お客さまはそうした空気を敏感に感じ取ります。結果、「つまらないから帰る」ということになりかねません。またそうした状況だと、お客さまは時間を長く感じてしまうもの。そんな時間が続くと、「指名しても、全然来てくれない」とクレームがついて、やはり怒って帰られてしまう――。これではいくら人気のあるホストでも思うような接客はできず、当然、売上も落ちてしまいます。自分が指名されたとき、自分が誰かのヘルプについたとき、いかにそのテーブルでチームプレーを意識できるか。そのためにもお客さまと打ち解ける以前に、まずは〝身内〟と協力体制をつくっておくことが重要なのです。そして自分が指名されたとき、後輩ホストに〝いいヘルプ〟をしてもらうという協力体制を築くには、普段からのコミュニケーションが不可欠です。自分が先輩だったら後輩の面倒をみる。閉店後に食事に連れて行ったり、悩みがあれば相談に乗ったり。かつて社員旅行で行ったハワイでは、5日間程度の滞在でしたが、スタッフの食事代だけで数十万円も支払ったのはいい思い出です。お店でも気にかけてフォローしてあげたり、ときには後輩の席にヘルプについて盛り上げ役を引き受けたり。お金のない新人ホストに生活費を貸してあげたこともありました。もちろん、最終的には個々人の資質や技量、キャラクターがものを言う世界ですから、ホスト同士はお互いにライバルです。しかし同時に、同じ店に所属し、その店を盛り上げていくビジネスパートナーでもあるのです。■数字を上げても評価されない理由私たちホストにとって「お酒を減らす」というのも重要な仕事。指名したホストのために、とシャンパンを1日に5本も6本も入れてくれるお客さまもいます。ときにはそうしたお客さまが同じ日に何人かいらっしゃることも。自分のために入れてくれたのだから喜んでいただくのが礼儀なのですが、当然ながらひとりで全部など、とても飲めません。礼儀とは言え、そんなことをしていたら本当に身体を壊してしまいます。ですから、そんなときはヘルプにも一緒に飲んでもらいます。お店が混み合っているときなどは、ヘルプだってあちこちのテーブルでお酒を飲んでいるのですが、それでもそこを少し分担してもらう。こんな部分でも他のホストの力を借りているわけです。一般企業でも同じだと思うのですが、自分だけが結果を出していればいい、自分が上げた成果は自分だけの手柄――こうした発想の人には、どれだけ仕事ができようが、数字を上げていようが、人が集まってきません。何かしらのピンチに陥ったとき、誰も助けてくれないでしょう。OneforAll,AllforOne.(ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために)――ラグビーの基本精神、チームプレーの姿勢を言い表す有名な言葉です。そしてそれはホストクラブでも同じこと。個人はチーム全体のために自己犠牲をいとわず、チームは一丸となって個人をサポートする――この姿勢の重要さは、同じテーブルについた「担当とヘルプ」という小さなチームにも、そのままあてはまるのではないか、私はそう考えます。人のことには知らん顔の〝できるけど、いけ好かない〟スタンド・プレーヤーと、チームプレーで貢献しつつ、そこから個人をアピールしていくプレーヤー。組織に必要とされるのは、これからの時代に生き残っていくのは、さあ、どちらでしょう。

■おわりに最後まで読んでくださってありがとうございます!著者として、こうして最後まで読んでいただくことはとても嬉しいことです。多くの本の中から本書をこうして手にとってもらえて、最後まで読んでくれた奇跡に感謝します。この本は人間関係に関して、実際に私が現場で使っている「技術」をまとめたものです。現代社会は、多くの悩みであふれています。中でも一番の悩みは「コミュニケーション」です。人生において、コミュニケーションの技術は欠かせません。これほど大事なことにもかかわらず、このことについて学校などで学ぶ機会はほぼないのです。だからこそ、こうした書籍で学ぶ効果は大きいと思っています。よろしければ、ぜひ一度と言わず二度三度読んでみてください。本書が、みなさんの人生において少しでもお役にたてたなら、これほど嬉しいことはありません。私のほうからひとつだけお願いがあります。本書の内容で、もし、「これは使える」というものがあったら、すぐに試してみてください。人生は行動で変わります。残念ながら本を読んだだけ、では変わらないのです。こうして本の中でみなさんに会えるのも、ホストとして結果を残せたのも、本を読んで行動したからでした。すべては行動したから変わったのです。さあ、すぐに動きましょう!最後に、本書の感想、応援メッセージなどいただければとても嬉しく思います。読者様からいただいたメールは、すべて目を通しています。最近は、こうしていただいたメッセージを読むのが、私の一番の楽しみです。たくさんのメッセージおまちしております!また、私のブログでは読者様のQ&Aコーナーというのをやっています。こちらはなかなか人気のコーナーで、たくさんの質問をいただいています。コミュニケーションの悩み、人生の悩み、異性の悩みなど、興味深い質問もたくさんいただけるので、最近はとてもワクワクしながらお答えしています。ジャンルは問いませんので、ぜひ質問してみてください。質問やメッセージは信長公式ホームページまで。http://www.rnobunaga.com/よろしければ、公式ホームページ内のメルマガにもぜひご登録ください。メルマガでは、ホスト流コミュニケーション、成功哲学、出版・イベント・講演情報など幅広くお伝えしています。講演やセミナーなども定期的に開催していますので、ぜひ会いに来てください。それでは、またどこかでお目にかかれますように。信長

信長(のぶなが)新宿・歌舞伎町のホストクラブ「ClubRomance」代表取締役。ビジネス書作家、講演講師、ラジオMCなど多彩に活躍。1979年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部卒業。学生時代から家庭教師、塾講師の傍ら、ホストの道に入る。当初は、体重90㎏以上で女性とまともにコミュニケーションができず、指名もゼロが続いたが、入店4ヶ月目で初めての指名を取ると一気に№1となる。その後、超人気店「ClubRomance」に移籍。現在まで、通算28回№1を獲得。著書に『歌舞伎町トップホストが教えるシャンパンタワー交渉術』(講談社)、『いい女はドMが9割』(カシオペア出版)があり、中国、台湾でも翻訳出版される。テレビやラジオの番組、雑誌にも多数出演。趣味は一人旅。公式サイトhttp://www.rnobunaga.com/Facebookhttps://www.facebook.com/nobunaga123ブログhttp://ameblo.jp/rnobunaga#

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