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第2章ロジカルシンキングなんてしている暇はない!

論理や分析より「ひらめき」が大事ビジネスでは、感情論ではなく、ロジックが大事だと言われます。

エビデンスにもとづいてロジックを積み上げ、理路整然と説明する。

いわゆる「できる人」というのは、早口でロジックをまくしたてる人、というイメージを持っている人もいるかもしれません。

ロジカルシンキングや論理的な話し方の本が人気なのは、おそらく大半の日本人が「自分は論理的ではない」と思い込んでいるからではないでしょうか。

そういうときによく言われるのは、日本人は論理と感情をうまく切り離せない、論理的に異論や反論を口にしても人格攻撃と受けとられかねないといったことです。

たしかに、ロジックを積み上げて、筋道立てて話をしないと伝わらないこともあります。

でも、論理的な思考法が常に有効なわけではありません。

むしろ、場合によっては、邪魔になることさえあります。

「論理」と似たようなニュアンスの言葉に「分析」があります。

データにもとづいて「A→B」「B→C」ならば「A→C」といったロジックを組み立てて結論を導く。

エビデンス(データ)にもとづいた精緻な分析は、頭のいい人たちの得意分野です。

結論のない分析は意味がないおもしろいのは、日本人は議論が下手と言われるわりに、分析がものすごく好きだということです。

「◯◯について調べておいて」と頼むと、とにかく細かいところまでよく調べて、色々検討してくれます。

ところが、どれだけ詳しく分析してあっても、結論がすっぽり抜け落ちていることがよくあります。

「よく調べてあるけれど、だから何?」と聞くと、「さあ?」という答えが返ってくるのです。

あることについて知りたいときに、まずグーグルで検索するのは当然ですが、ググって調べて分析して、それで満足してしまうのです。

なぜそういう意味不明なことが起きるかというと、何のために調べているか、目的がはっきりしていないからです。

本来なら、次のアクションをとるために現状を分析するわけですが、分析すること自体が目的になってしまう。

何のアウトプットにもつながらないなら、はじめからそんな分析はする必要はありません。

たとえば、上司から「出版業界のことを調べて」と言われて、いきなり市場規模や成長率、出版社別・分野別のシェア、ランキング上位企業など、基礎的なデータを調べ始める人がいますが、その上司がそもそも何のために出版業界のことを知りたいのかがわからなければ、どれだけ詳しくデータを集めたところで役に立つはずがありません。

出版業界に打って出るのか、雑誌広告を出したいのか、どこかの出版社の買収を考えているのか、業務提携したいのか、自社でメディアを立ち上げたいのか、あるいはただ本が出したいだけなのか。

目的が違えば、必要な情報はおのずから違ってくるし、誰かに話を聞いたほうが早いかもしれません。

目的を把握しないまま業界研究をすれば、どこまで調べたらいいかわからないので、時間もかかります。

締め切りまで時間がなくて、徹夜で分厚いレポートをまとめたのに、上司はちらっと眺めて、必要な部分だけをつまみ読みするかもしれません。

だったら、最初からその部分だけを調べれば済むわけです。

本当に必要な情報は、紙1枚でまとまるレベルかもしれないのに、目的がわからないままひたすら分析を続けるなんて、誰のためにもなりません。

時間のムダです。

何のための分析なのかそもそも、新しいアイデアを練るときに、詳細な分析というのは、本当に必要なのでしょうか。

これは、みなさんに聞きたいのですが、どこかから拾ってきた数値データを見て、何かおもしろいことを思いつきますか?アイデアを出したいときは、ただ数字を眺めるよりも、何かのヒント、考える糸口になるような、具体的な「もの」があったほうがいいと思いませんか?たとえば、雑誌の切り抜きや、自分で撮ってきた写真、気になるウェブサイト、巷で流行っているグッズ、最近読んだインタビュー記事、たまたま行ったレストラン、感銘を受けた一言、デザインが気に入って買った本……。

そういった種々雑多なものを会議室のテーブルいっぱいに並べて、みんなで知恵を絞ったほうが、間違いなくいいアイデアが出ます。

業界分析も実行計画を立てる段階では意味があると思いますが、少なくとも、最初のアイデア出しの段階で数値分析から入って、ユーザーがおもしろがってくれるような企画が出てくるはずがありません。

僕は様々な企業でイノベーションを起こすための研修も行なっていますが、クリエイティブな発想が求められるときに、精緻な数値分析はいらないどころか、かえって邪魔になります。

必要なのはひらめき、直感、研ぎ澄まされたセンスです。

コンサルティング業界でよく使われるSWOT分析(自社と競合の強みと弱み、事業機会、脅威)や思考のためのフレームワークは、すでに出たアイデアについて誰かに説明するときに有効なツールであって、アイデアそのものを出すためにそうしたツールを使っても、まずうまくいきません。

コンサルタントはアカウンタビリティ(説明責任)を果たすために、様々なツールを開発してきたのであって、起業家(アントレプレナー)やビジネスパーソンが最初のアイデアを着想するのは、それとはまったく別の種類の出来事です。

アイデアはふとした瞬間に突然降りてくるものです。

いつもの散歩コースを歩いていたとき、通勤途中や移動中の電車の中で、雑踏の中でふと立ち止まった瞬間、お風呂でボーッとしていたとき……。

そうした「ふとした瞬間」を意図的に起こすために、刺激となる材料を大量に用意します。

雑多な情報を一度に並べ、色々組み合わせてみて、ハッと思いつく。

みんなが自由に思いつきを口にしていくと、その言葉が刺激となって、アイデアはどんどん膨らんでいきます。

ひらめきの連鎖が起きるからです。

ひとりの頭の中で考えられることは限られます。

全員が一か所に集まり、その日のうちに必ず1個は実現可能な事業プランを出すと決めて、みんなで知恵を出し合えば、ひとりで考えるよりもずっといいアイデアが出るはずです。

クリエイティブな発想には集合知を活用せよ僕が行なっているアイデア出しのやり方を具体的に紹介しましょう。

研修でもよく取り上げていますが、やり方は難しいものではありませんので、新たなアイデア出しの方法として、ぜひ試していただけると幸いです。

アイデア出しはチームで行なうものなので、この作業も会議室に集まったメンバー全員で行ないます。

メンバーの人選ですが、たとえば新商品の企画やイノベーションを考える場合でも、企画部門の人間だけを集めるのではなく、エンジニアや営業、宣伝・広報、あるいは社内きってのガジェット好きや映画通など、バラエティーに富んだ人選のほうが化学反応が起きて、おもしろいアイデアが出やすいのでお勧めです。

発想のヒント(クルー)を大量に用意するまず情報に対する感度を高めるために、透明なラミネートカードやクリアファイルを用意して、そこに様々な写真、雑誌やカタログの切り抜き、紙に書いたキーワードなどを挟み込みます。

ファイルやカードがなければ、紙にプリントしただけでも構いません。

挟む素材は、ライバル企業の新商品、斬新な切り口の広告デザイン、街中で見つけたおしゃれなお店の写真、話題のテレビドラマの1シーン、肌触りのいい服の素材、最近ハマっているアプリやゲームの画像などなど、なんでもかまわないので、各自で持ってきてもらうとよいでしょう。

これを僕は「クルー(clue)」と言っていますが、アイデアをふくらませるときの糸口、きっかけとなる素材です。

これをできるだけたくさん用意します。

次はそれをみんなで見ながら、色々な組み合わせのパターンを考えてもらいます。

壁一面に張り出したり、床の上に無造作に並べたりして、みんなでそれを見て回ります。

テーブルと椅子は全部片づけて、自由に動き回れる空間をつくったほうが効果的です。

これとこれを組み合わせると、こんな商品ができるかもしれない。

こんなサービスがあれば便利そうだ。

こんなビジネスができそうだ。

新商品や新サービス、新規事業、新しい販促手法、広告デザインなど、テーマは集まったメンバーによって異なりますが、とにかく何か新しいアイデアをみんなで考えます。

研修では、1時間なら1時間と時間を区切って、必ず成果物を出してもらいます。

カオスをつくり出して頭を活性化する何百枚もクルーカードを用意するのは、カオスをつくり出すためです。

脳科学や高パフォーマンス心理学者であり、このワークショップを一緒に行なっているアラースター・プレンティスさんによると、人は混乱するときに脳波が活性化し、深層心理や無意識にある情報にアクセスできるそうです。

こうしてカオスを生み出すことで、無意識を活性化させ、新たなアイデアを生み出そうとしているわけです。

新しいアイデアは、ロジックを組み立てて、1だから2、2だから3、3だから4のように、筋道立てて生まれるものではありません。

繰り返しますが、筋道立てて考える必要があるのは、後から誰かに説明するためです。

論理がつかさどるのは「後づけの理屈」であって、ひらめきはロジックからは生まれません。

バラバラの数百枚のクルーカードの組み合わせは無限大です。

同じ組み合わせでも、人によって思いつくものは違います。

物理的なカードを用意することで視覚に訴え、身体や手を動かして組み合わせを考え、あえてカオスをつくり出すことで、猛スピードで頭を回転させ、ひらめきを起こそうというのがクルーカードの目的です。

組み合わせを考えたら、そのアイデアをホワイトボードなどに書き出してもらいます。

みんなが出した組み合わせの中から、話し合いによって、最終的に採用する案を1個か、2~3個にまで絞ってもらいます。

テクノロジーのトレンドもあるし、業界動向もあります。

実現可能性やコストの問題もあるでしょう。

いい面もあれば、悪い面もある。

みんなで知恵を出し合って、最後は少数の案に集約してもらいます。

とにかくアウトプットを出すまで続けます。

集合知こそクリエイティブな発想を生む僕は最大60人でこの研修をやったことがありますが、真剣に取り組めば、ものすごく盛り上がります。

上司も部下も、先輩も後輩も関係なく、みんながチームの一員としてどんどん意見を述べ、それが別の意見を引き出していく。

あちこちで議論の輪ができ、立ったり座ったり車座になったり、「◯◯さんはたしか、これ、詳しかったよね」と呼ばれて、2つのグループが合流したり……。

みんなでワイワイガヤガヤ話し合っていくだけで、自分ひとりではとても思いつかないようなアイデアがポンポン出てくるはずです。

コレクティブ・インテリジェンス、つまり集合知こそ、クリエイティブな発想を生み出す秘訣なのです。

そして、チーム全員で考えるからこそ、その後の展開が速いというメリットもあります。

誰かが考えたプランが上から降ってきて、命令どおりにそれをこなすのではなく、みんなで考えたプランを実行するわけですから、力の入り方が違います。

当事者意識を植えつけるまでもなく、最初から誰もが当事者なのです。

これは強いモチベーションにつながります。

また、話し合いの中で、自然と役割分担が決まってくるので、最適なメンバーで実行部隊を組むことができます。

Aさんチームはプロトタイプを何日までに作成し、Bさんは何日までに販売計画に落とし込み……のように、その場で締め切りとセットで役割分担を決めれば、すぐにでも動き出すことができるでしょう。

プロジェクトを推進するチームビルディングも兼ねた方法になっているわけです。

「ひらめき」は新しいつながりをつくることみんなで集まって知恵を出し合うというと、ブレインストーミングと近いものと思う人がいるかもしれませんが、何百枚ものクルーカードを見ながら議論をするというのが、根本的に違います。

クルーカードは、アイデアの種であり、ヒントです。

そこに統一感もないし、決まったルールもありません。

もしかしたら今回のテーマとは無関係かもしれない。

でも、そういう種々雑多なものを一堂に並べて、うんうん頭をひねって考えていけば、「あれ?」「もしかして!」とひらめく瞬間がやってきます。

一方、よくありがちなのは、自社や競合商品の売上データの推移や来客数、顧客単価、ウェブサービスならPV数やUU数などのKPI(重要業績指標)を並べて、そこから議論を始めようとすることです。

しかし、売上の数字をどれだけ精緻に分析しても、売上を上げることはできません。

売上を上げるのは、他社にはない、自社独自の商品であり、サービスです。

その元となるのは、ロジックではなく、思いつきやひらめきです。

数字やデータは「過去」について語ってくれても、「未来」を生み出すことはできないのです。

競合「分析」からは新商品は生まれない真面目な人たちが真面目な顔をして延々と議論をしていると、ちょっと息苦しくなることがあります。

たとえば、新しい清涼飲料水の企画を考えているのに、そこにあるのは、紙の資料とプレゼンを映し出したディスプレイ、そして手持ちのパソコンだけ。

こんな状況では、脳は刺激を受けません。

コンビニ向けの飲み物のアイデアを練っているなら、テーブルの上に、スナックやパン、おにぎり、お惣菜、漬物、スイーツなどが並んでいないとおかしいのです。

味覚や嗅覚を刺激して、脳をちゃんと働かせなければ、斬新な発想は生まれません。

コップやペットボトル、タンブラーなどの容器もあったほうが視野が広がるでしょう。

近くのコンビニや100円ショップに行けば、いくらでも手に入るので、そうしたものを味わい、匂いを嗅ぎ、手にとって試してみながら考えたほうが、いいアイデアが浮かぶはずです。

少なくとも、競合の商品を分析しているだけでは差別化はできません。

他社がやっていないことをやらなければ、結局、同じようなものをつくってしまうことになります。

一見、無関係のものをつなげることに価値があるみんなの意見を最終的なアウトプットの形に落とし込むときに、ひとつ注意してほしいのは、意見を集約するからといって、優先順位の高いものを共通項でくくってひとつにまとめるといったやり方は、この際、忘れてほしいということです。

たとえば、有望なアイデアが10個出たとします。

そこで分析モードに入ってしまうと、それぞれのアイデアから共通パターンを抽出して、そこに法則性を見いだしたりして、最終的なアイデアに落とし込もうとすることです。

一見、理路整然としているように見えるのですが、実は、そのアイデアが当初持っていた「熱」が失われ、結局、どこかで見たような案に落ち着いてしまうということがよくあります。

情報を集めて、意味のあるまとまりに分けるのが「分析」だとすると、「ひらめき」というのは、神経細胞があちこちでつながってネットワークをつくるように、一見バラバラに見える情報に、それまで気づいていなかったつながりをつくることです。

これとこれは似ているから同じカテゴリに入れて、共通点をくくり出すという頭の働きと、こっちにあるものとあっちにあるものを、なんとなくつなげてみたらビビッときたという頭の働きは、似て非なるものです。

クリエイティブな発想で求められるのは後者の働きですから、理詰めで分析を加えるのではなく、素材はあくまで素材として、無造作にほっぽりだしてあるのがいいのです。

ロジックが必要なとき、センスが必要なときマッキンゼー系の仕事術やプレゼン技術の本がよく売れています。

しかし、マッキンゼー系のコンサルティングは、もともと生産性向上や効率化、ムダをなくすシックスシグマなどから派生してきたもので、いってみればメーカー向けの発想が出発点になっています。

そのため、シリコンバレーでも日本でも、テック系のベンチャーの創業者を見てみると、マッキンゼーやボストンコンサルティンググループ(BCG)出身で成功した人は、実は、ほとんどいません。

自分でベンチャーを立ち上げるシーンでは、MBA的な知識よりも、センスや直感、実行力がものをいうからです。

込み入った技術的な問題は分析して解決できるため、ロジカルシンキングが使えますが、因果関係が把握できない問題を解決するときには、プロトタイプをつくってトライアル&エラーを重ねるしかありません。

したがって、コンサル業界から人を雇うようになるのは、事業が軌道に乗り、会社をもっと大きくしていく局面からです。

どちらがいい、悪いということではなく、求められている役割が違うということです。

グーグルでも、検索連動型広告を始めたときに、マッキンゼーやBCG出身者を大量に雇い入れました。

なぜかというと、誰がどんなウェブサイトを見て、何に興味を持っているか、どんなキーワードで検索しているか、パフォーマンス・マーケティングによって個人に最適化したターゲティング広告を展開するというのは、まさにデータ分析とロジカルシンキングの世界で、コンサルタントの得意分野だからです。

ユーチューブでの失敗ところが、2006年にグーグルが買収したユーチューブ(YouTube)については、検索連動型のターゲティング広告のノウハウをそのまま活かすことができませんでした。

文字検索とは違って、動画はクリエイティブで感覚的な領域なので、パフォーマンスを分析して理詰めで人間の行動を予測するマッキンゼー方式とは相性がよくなかったのです。

どんな動画がどんなタイミングで出ると不快と思わないのか、どんな動画なら受け入れられるのかといったことは、ロジックよりも、センスやひらめきがものを言う分野だったということです。

僕は「ポケモンGO」をつくったナイアンテック(Niantic,Inc.)の若いエンジニアとも友達ですが、ポケモンのささいな動きひとつとっても、人間が快・不快を感じるポイントは無数にあって、そこはクリエイターの才能に負っている部分が大きいと言うのです。

ユーチューブを見ているユーザーは、何かを手に入れるとか、これを見たら得をするといった具体的な目的があるわけではなく、流行っているから、おもしろそうだから、暇つぶしにちょうどいいから見ている人がほとんどです。

そういう感覚が優先される分野では、ロジックよりも直感を大切にしたほうがうまくいくわけです。

ユーチューブには、企業の公式動画もたくさんアップされていますが、ここでブランディングに役に立つのは、論理や知性に訴えるものよりも、感情に訴えるタイプの動画です。

そのため、論理に強いコンサルタントではなく、センスのいいクリエイターを集める必要があります。

集まった人たちには、あらかじめバイアスを持たせないように、あえて数字などのデータは見せず、制約をなくしたところからコンセプトを考えてもらいます。

そのときやるのは、まさに僕が研修でやっているのと同じ作業です。

様々な映像、写真、デザイン、プロダクトなどを並べて、お互いに刺激し合いながら、コンセプトを詰めていくわけです。

新しいものを創造するにはこのやり方が一番だと経験的にわかっているからです。

マネするだけでは差別化できないクリエイティブな発想が求められるのは、ブランド・コンセプトづくりにとどまりません。

新製品・新サービス企画、製品パッケージのデザイン、新規事業立ち上げ、販売チャネルの開拓、販促ツールの開発、広告デザイン、広報戦略、イベント運営といったものから、社内同好会の立ち上げ、社外オフ会の企画・運営、同じ部署の飲み会の幹事に至るまで、何か新しいことをするときは、必ずアイデア出しが必要です。

前例踏襲で、毎回代わり映えのしない飲み会は盛り上がりませんが、ちょっと風変わりな出し物やゲームを取り入れるだけで、いつもの飲み会が全然違ったものに様変わりするように、どんなささいなことでも、ひらめきひとつで、おもしろくなる可能性があります。

欧米で流行ったものをちょっとアレンジして日本に持ち込むだけで儲かった時代は過去のものとなりました。

インターネットが普及して、最新の情報がリアルタイムで入ってくるだけでなく、経済がグローバル化して、外国製品が直接、時間差なく日本にも入ってくるようになったため、欧米企業と同じことをしていては差別化できません。

日本企業にも自ら新しいもの、オリジナルなコンセプト、独自のイノベーションを生み出すことが、これまで以上に求められています。

だからこそ、日本企業でもコレクティブ・インテリジェンス(集合知)をもっと活用すべきなのです。

誰かひとりの能力に頼るのではなく、チーム全員で活発に意見交換してアイデアを出し合う。

グーグルでは、様々なプロジェクトが同時に動いていますが、ちょっとしたことでも関係者が集まり、さかんにミーティングを行なっています。

それは、集合知の威力を知っているからです。

企画会議にプレゼンはいらないここでみなさんに、自分の会社の「企画会議」や「コンセプト会議」の様子を思い浮かべてほしいのですが、あなたの会社では、みんなでワイワイ楽しみながらアイデア出しをしていますか?それとも、会議に参加する人たちが一人ひとり個別に企画書をまとめ、その場でプレゼンし、それに対して他のメンバーがコメントする形で会議が進行していますか?経営者に対する報告や、外部のステークホルダー向けの発表では、ポイントを要領よくまとめ、短時間で全体像をつかめるプレゼンテーションが有効なのは言うまでもありません。

しかし、アイデア出しの段階では、ロジックよりもひらめきが大事でした。

ということは、少なくとも、企画やコンセプトをつくる段階では、ロジカルなプレゼンはいらないどころか、かえって邪魔になるかもしれないということです。

プレゼン形式の会議は、発想が広がらない社内プレゼン形式の企画会議では、ひとりでコンセプトを練り、それを全員に配布する資料にまとめ、会議の場で説明します。

それに対して、他のメンバーがコメントを加え、最終的にGOサインを出すか、ボツにするかが決まります。

当たり前のように行なわれているこうした会議では、最終的なアウトプットの質は、最初に提出された企画の出来に大きく影響されます。

つまり、ひとりの人が頭の中で考えたことが、アウトプットの上限を決めてしまっているような状況です。

他のメンバーは、その企画の枠組みでしか考えないので、制約なしに、自由に発想することができません。

その分、ひらめきが生まれる可能性が小さくなってしまうのです。

時には、もう一度企画の出し直しを命じられ、それによって劇的にクオリティが上がるケースもあるでしょう。

しかし、次の企画会議が1か月後だったとしたら、どうでしょうか。

スピード勝負のこの時代に、1か月の遅れは致命的になりかねません。

ほしいのは「評価」ではなく「結果」プレゼン形式の企画会議を通じて行なわれているのは、実は、個々のメンバーの能力や企画の評価でしかありません。

本来、何のために企画会議をするのかといえば、質の高いアウトプットを生み出すためであって、評価するためではないはずです。

最終的に、よりよいもの、より新しいコンセプトができるなら、言い出しっぺが誰であってもかまわないし、よりよいもの、より新しいコンセプトを生み出すには、ひとりで考えるよりも、みんなで知恵を絞ったほうが手っ取り早いというのは、すでに何度も説明してきたとおりです。

そうであれば、企画会議のやり方を根本から変えたほうがいいのではないか、というのが僕の提案です。

たったひとりでアイデアを練り、企画の資料をつくる時間をなくして、アバウトなテーマだけを決めて、定期的に集まる。

あるいは、何か思いついたら、すぐに心当たりのある人たちに声をかけて、いきなり企画会議を始めてしまう。

そのほうが実りある結果が得られるのではないかと思います。

そして、それをまさに実践しているのがグーグルです。

グーグルは様々なアイデアをテストし、どんどん実用化する一方で、すぐに方向転換をはかったり、撤退したりする新陳代謝の激しい会社ですが、そうしたことが可能なのも、思いつきをすぐ形にするコレクティブ・インテリジェンスをうまく活用できているからだと思います。

繰り返しますが、分析が必要なのは、誰かに説明するためです。

経営者や起業家なら株主や取引先、ビジネスパーソンなら上司や取引先などのステークホルダーを納得させる場面では、ロジカルな説明やプレゼン能力は不可欠です。

しかし、そのことと、新しく何かを生み出すこととは、まったく別次元の話なのです

ひとりよりみんなで考えるひとりで考えるよりは、みんなで集まって話し合ったほうがいいというのは、この章を通じてずっと述べてきたことです。

では、一人ひとりの発想力を高めるにはどうしたらいいのでしょうか。

ヴァージン・レコードを皮切りに、ヴァージン・アトランティック航空、宇宙旅行のヴァージン・ギャラクティックなど、数々の事業を立ち上げてきたヴァージン・グループ会長リチャード・ブランソンさんは、伝説のシリアルアントレプレナー(連続起業家)として知られていますが、失敗も数多く経験しています。

一番有名なのはヴァージン・コーラです。

また、日本では今はなきCDショップのヴァージン・メガストアーズを覚えている人も多いのではないでしょうか。

ブランソンさんはまるで子どものように、なんにでも興味を持ちます。

そして、思いつきをすぐに実行に移すためのチームづくりが上手です。

自分の周りに、自分に足りない宝物を持っている人たちを集めてチームをつくり、そこに投資家の資金を呼び込むのです。

そのあたりの手綱さばきが抜群にうまい。

だから、次々と新規事業を立ち上げることができるのです。

でも、最初の出発点は、ブランソンさんの、おもしろいことならなんでも引き寄せる、抜群に情報感度の高いアンテナです。

ブランソンさんは冒険好きでも有名で、世界中を飛び回っています。

色々な情報に接しているから、あっちとこっちをつなげて「ひらめき」が起きやすい状況を自分でつくり出しているのです。

東京はアイデア出しのパワースポット実は、東京に住んでいるみなさんは、アイデア出しの面でとても有利な状況に置かれている、と僕は考えています。

僕は様々な国に行きましたが、東京はものすごく刺激の多い街だと思います。

よく整備された美しい街並みと、繁華街の路地裏のような猥雑な空間がすぐ近くに同居しているのに、違和感がない。

アートもファッションもサブカルも伝統文化も金融も行政も大企業も、全部ひとつの都市に集まっていて、電車の駅ごとに違った風景が広がっています。

こんなにゴチャゴチャと一か所にまとまった都市というのは、他ではあまりありません。

たとえば、東京の大手町は米国東海岸のニューヨーク、霞が関はワシントンDCで、ITベンチャーが集積した渋谷は西海岸のシリコンバレー、青山や六本木あたりはロサンゼルスにたとえることができそうです。

ところが、東京だと、大手町から渋谷まで地下鉄で30分ほどで行ける。

こんなに近くに、これだけ多様な文化が共存している都市はめったにない。

他にはニューヨークとロンドンくらいしか思いつきません。

タクシーや電車に乗って数十分も行けば、まったく違う刺激を受けとることができます。

アイデアを生むには、東京はすごくおもしろい都市なのです。

秋葉原のオタク文化や、原宿のカワイイ文化など、東京がアイデアの宝庫と言われて注目を集めているのは、理由があるからだと思います。

僕は札幌や福岡にも仕事で行きますが、やる気のあるベンチャーが集まっていて、すごく元気な街だと思う一方で、東京ほどのダイバーシティ(多様性)の広がりは感じません。

東京のゴチャゴチャした感じはやはりすごく魅力です。

違うタイプ・立場の意見を積極的に取り入れる会社の組織面でいえば、発想を豊かにするためには、多様な人材を採用するしかありません。

似たようなタイプの人ばかりの集団からは、同じようなアイデアしか出てこないからです。

実はグーグルでも、以前はある一定の学校から採用していたのですが、2013年から、採用の対象とする大学数を70校から300校に拡大しました。

国籍、性別、学歴、出身地ができるだけバラけた組織のほうが、発想が豊かになるのは、当たり前です。

海外の大学の卒業生をもっとたくさん採用しなければ、多様性は生まれません。

それには、年功序列で長く勤めた人ほどエライという現状をあらため、権限を大胆に現場に下ろして、誰もが力を発揮できる組織に変えていくしかないでしょう。

とはいえ、ただそれを待つだけでは時間がもったいないので、会議に他部署の人に積極的に入ってもらったり、アルバイトや派遣で来ている人に意見を聞いてみるなど、現状でもできることはどんどん取り入れていきたいものです。

まとめ□論理や分析よりも「ひらめき」を活かす□クルーカード(ひらめきの原点)を持ち寄って、みんなで考える□企画会議はプレゼンをやめて、みんなで考える場にする□別の部署や異分野の人の発想を借りよう

 

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