
この本は、そのような悩みや願望を抱える人たちに向けて書いた。本書のメソッドは、大きく2つに分かれる。
- ・「5時間快眠法」のメソッド(STEP1〜3)
- ・「朝5時起き」が習慣になるメソッド(STEP4)
5時間快眠法とは、短時間睡眠でも脳と体が満足し、スッキリ目覚めて、日中のパフォーマンスも最大化できる眠り方だ。できる限り睡眠の〝質〟を高め、これまで以上に、短く深く眠るコツを紹介する。

本書では、さらに、「朝5時起き」の技術にまで言及している。平均的な7時間前後の睡眠をとる人が、どう睡眠時間を削減していくか、医学的に正しい睡眠時間の削り方を、「朝5時起き」を事例に紹介する。
「5時間快眠法」によって、短時間で脳と体の疲れがとれるよう睡眠のクオリティを高めつつ、「朝5時起き」も習慣になる。
「5時間快眠法」と「朝5時起き」を実践すると、あなたの人生は大きく変わる。
「早朝10分の生産性は、夜の1時間に値する」など、「早起き」の効能は、誰もが知るところだろう。
しかし、これまでと同じ睡眠時間(7時間前後)で早起きを実践すると、早朝という貴重な時間を手にする代わりに、夜の時間を削ることになってしまう。
これでは、もったいなくないだろうか?結局、24時間の使い方は変わらない。また、無理に睡眠時間を削っても、日中に疲れが出たり、眠くなってしまっては意味がない。
結局のところ、夜は帰って寝るだけの生活となってしまう。どうせなら、朝の時間を有効に活用しながら、夜の時間もガッツリと楽しみたい。
「5時間快眠法×朝5時起き」なら、その両方を満喫できる。いつもの一日に、2つの余裕が生まれるのだ。

たとえば、これまであなたが夜0時に寝て、朝7時に起きていたとしよう。すると、朝5時に起きるには、夜10時に寝なければいけなかった。しかし、5時間で快眠できれば、これまでと同じ夜0時に寝ればいい。
生産性の高い早朝に仕事や勉強をしたり、健康的な朝食を食べて余裕のある朝を過ごしリフレッシュしたり、あるいは、健康のために朝のランニングを始めたり……それでも、夜の時間はこれまで通りに使える。さらにいえば、有意義な朝を過ごすことで、夜の時間の使い方も変わる。
朝の時間を有効に活用することで、いつもより早く帰宅ができ、家族との時間を多く過ごせるかもしれない。
また、朝の余裕が一日の心の余裕につながり、これまで何もする気がしなかった夜の時間を、趣味や友人との食事、読書や映画鑑賞などにもあてられる。
それが心のリフレッシュにつながり、翌日も朝から元気いっぱいに活動できる——。つまり、朝を変えれば一日が変わるのだ。あなたは、仕事や勉強のパフォーマンスを最大化できると同時に、プライベートも充実させられるようになる。
そしてこの一日が積み重なれば、あなたの人生は大きく変わる。あなたの人生を変える睡眠の技術が、この「5時間快眠法」と「朝5時起き」の技術なのだ。
ショートスリーパーになれば、早起きは習慣にできる
もしかするとあなたは、すでに睡眠時間を削ったことがあるかもしれない。だが、次のような理由で、断念してしまったのではないだろうか。
・目覚めが悪くて、とてもじゃないが続かなかった
・日中、眠たくなってしまい、本末転倒の結果に終わってしまった
しかし、安心してほしい。本書の「5時間快眠法」を習得すれば、睡眠時間が短くなっても、朝がつらい、疲れが残る、日中眠くて生産性が悪いといったことは起こらない。
短時間睡眠でも、目覚めよく、午前中から一日中高いパフォーマンスを発揮できる人を「ショートスリーパー」という。ナポレオン、エジソンなどもそうだった。
本書の「5時間快眠法」とは、このショートスリーパーになる技術を、医学的、生理学的に正しく伝えるものだ。
ただ単に睡眠時間を削ってよしとするのではなく、短い睡眠時間でも体の状態はよく、余裕をもっていろいろなことに取り組めるようになることが本書の目的である。
ただ、「そうは言っても、自分はショートスリーパーになれるのか?」という疑問を持つ人もいるだろう。心配はいらない。
本書を活用すれば、健康やパフォーマンスに影響を及ぼすことなく、あなたもショートスリーパーになれる。私は、20年間、睡眠専門医として多くの患者と向き合ってきた。
その中で、日本人の9割は、ショートスリーパーになれると確信した。本書は、その方法を体系化したものである。
睡眠の濃さは「時間」では測れない「睡眠とは時間の浪費にすぎない」かの有名な発明王であり、ショートスリーパーでもあったエジソンが残した言葉だ。
もちろんすべての睡眠に費やす時間が無駄かといえば、そんなことはない。人は、睡眠なしでは生きられない。しかし、いたずらに長いだけの睡眠に費やす時間の多くは「無駄」といえる。
そう断言するには、大きな理由がある。睡眠のよしあしは、「時間」だけでは測れないからだ。睡眠は、「時間」×「質」のかけ算で決まる。
つまり、質が高ければ、時間を削っても問題はない。あなたが、長時間眠らなければいけないのは、「質」に問題があるからである。
質が上がれば、これまで7時間眠らなければ満足できなかった脳と体は、5時間でも満足できるようになる。
たとえば、今のあなたが7時間眠らないと満足できない状態で、睡眠の質が50点だとする。すると、今のあなたの「時間×質」で測れる睡眠の満足度は、「7時間×50点」で350となる。
では、あなたの睡眠の質を20点上げてみよう。すると、5時間の睡眠でも「5時間×70点」で、満足度は同じ350となる。
このように睡眠の「質」が上がれば、これまで7時間必要だった人でも、5時間前後の睡眠で満足できるようになるのだ。これが「5時間快眠法」の考え方だ。

4つのステップで「ショートスリーパー」になるつまり、ショートスリーパーになりたいあなたが、まず見直すべきは睡眠の〝質〟である。
本書のステップは、冒頭でお伝えした通り、大きく2つに分かれる。まずは、その「質」を高める方法を伝える。
短い睡眠時間でも問題ない(むしろ、寝起きも日中もスッキリ、元気いっぱいになれる)睡眠の質を実現する「5時間快眠法」のメソッドだ。
「5時間快眠法」は、次の3つのステップから成り立っている。
- STEP1「即寝・即起き」の技術で、睡眠効率を高める
- STEP2睡眠の「質」を上げ、脳と体を劇的に回復させる
- STEP35つの「仮眠」で、一日中、疲れ知らずになる
この3つのステップをこなすことで、短時間睡眠でも、疲れなく、余裕をもって過ごせるようになる。そして次に、「朝5時起き」が習慣になる方法を紹介する。
STEP42か月で「朝5時起き」を習慣にするここでは、「医学的に正しい睡眠時間の削り方」に触れ、睡眠時間を5時間前後までコンパクトにする。
現状、7時間前後の睡眠をとっている人が、どう睡眠時間を5時間前後にするか、その方法を紹介していく。これら4つのステップを、具体的にどのように実現していくかについては、次の通りだ。
STEP1「即寝・即起き」の技術で、睡眠効率を高めるSTEP1では、睡眠に費やす「無駄な時間」をできる限り削ぎ落としていく。
無駄な時間とは、ふとんに入ってから眠るまで、そして起きてからふとんを出るまでの時間だ。まずは、実際に「眠るまで」と「起きてから」の無駄な時間を削っていこう。
ここで紹介する「即寝・即起き」の技術を実践すれば、
- ・ふとんに入って瞬時に眠れる
- ・自分が起きたい時刻に自然に目覚められる
- ・目覚めてすぐに活動できるといったことが実現可能となる。
これにより、「睡眠に費やす時間」に対する「実際に眠っている時間の割合」、つまり睡眠効率を最大化できる。また、即寝・即起きは、睡眠時間の削減だけでなく睡眠の質の向上にもつながる。

これについては、本編で詳しく説明する。
STEP2睡眠の「質」を上げ、脳と体を劇的に回復させるSTEP2では、「実際に眠っている時間の質」を上げる。
これまで7時間前後は眠らないと満足できなかった体が、5時間の睡眠で満足するには、実際に眠っている時間の「回復力」を高める必要がある。
これにより、短い睡眠時間でもスッキリ目覚めることができる。ここで紹介する内容は、決して難しいものではない。
- ぐっすり眠れる寝具の選び方
- 面倒くさがりでも超熟睡できるサプリメント
- 夏冬のエアコンのベスト設定
など、すぐに取り入れられる効果の高いものを厳選した。

STEP35つの「仮眠」で、一日中、疲れ知らずになるSTEP3では、グーグルやアップルなど、世界的な企業でも注目されている「仮眠」について言及する。
ここでは、一日中、元気いっぱいに活動するための5つの仮眠法を紹介した。数秒の仮眠、数分の仮眠、20分の仮眠など、あなたの仕事やライフスタイルに合わせて実践できる。また、仮眠の際のポイントも解説した。
より効果的に仮眠をとる方法や、仮眠の後に実践したいツボ押しなども紹介している。
STEP42か月で「朝5時起き」を習慣にする
ここまでの「5時間快眠法」のメソッドを活用すれば、あなたは短時間睡眠に耐えうる体質を手にしている。
最後のSTEP4では、いよいよ「朝5時起き」の習慣化に取り組む。
いつも7時間ほどの睡眠をとっている人が、睡眠時間を2時間削り、「朝5時起き」を実現するためのメソッドだ。
- ・週にどれくらいの睡眠時間を削れるか
- ・無理なく睡眠時間を削れているかどうかの簡単な確認法
など、これまでありそうでなかった、「医学的、生理学的に正しい睡眠時間の削り方」を紹介する。
ただ、睡眠時間を削り続けるのは簡単なことではない。どうしても、日々のモチベーションに左右されてしまうものだ。
そこでこの本では、人間の「行動」に焦点を当てた科学的技術「コーチング」のメソッドも取り入れながら、あなたの睡眠時間削減をより確かなものにする。
これら4つのステップを実践すれば、あなたはたった2か月で5時間の睡眠で満足できるショートスリーパーになれる。
夜0時に寝ても、朝5時から元気に活動できるようになるのだ。人が睡眠に費やす時間は、人生の3分の1といわれている。
睡眠専門医として、あなたが必要以上に睡眠に時間をとられることなく、より充実した日々を手にしていただければ、何よりの喜びである。
日本睡眠学会所属医師/睡眠コーチ坪田聡

PROLOGUE人は本当に「睡眠時間」を削れるのか?
睡眠時間を圧縮し、余裕のある毎日を手にする
睡眠は、自己流では削れない眠っている時間を「無駄だ」と感じたことはないだろうか。人間の平均睡眠時間は8時間。一日24時間だから、3分の1を睡眠に費やしていることになる。
仮に84歳で寿命を迎えるとすると、一生のうち28年分は、睡眠時間である。たった一度きりの人生。28年を睡眠にとられるのはもったいなくないだろうか。
本書の「5時間快眠法」とは、そんな人生の多くを占める睡眠時間をできるだけ短縮し、短時間睡眠でも、一日中疲れ知らずの体質を手にする方法である。
睡眠時間を、ショートスリープと呼ばれる「5時間前後」に圧縮し、体も時間も余裕のある一日を過ごす。これが本書の目的だ。誰しも、そうなりたいと願ったことが一度はあるのではないか。
この本を読んでいる人の中には、実際に睡眠時間を減らしたことのある人もいるだろう。
仕事が忙しいときに寝る時間を削って残業したり、早出をしたり、あるいは、早起きの習慣を身につけようと朝の読書会やサークル活動に参加した人もいるかもしれない。
しかし、どうだっただろう。
おそらく、体がだるくなってしまったり、結局は休日に寝だめをしてしまったりと失敗に終わったのではないか。
実は、やみくもに、急に睡眠時間を減らしたところで、それを維持するのは難しい。無理に体重を落としたダイエットのように、ほぼ100%、リバウンドがやってくる。
気がつけば、毎日の疲れはたまる一方である。無理な睡眠時間の削減は、日中の疲れや眠気、集中力の低下をもたらす。
睡眠時間を削って夜中まで仕事を頑張っても、翌日にその反動が出てボーッと過ごしてしまっては、生産性という面ではあまり意味がない。
このように、睡眠時間の削減が自己流でうまくいかないのは、睡眠が非常に複雑なものだからだ。
たとえば、一日に与えられている時間は平等なのに、適切な睡眠時間が人それぞれ違うことに疑問を持つ人も多いだろう。
毎日4時間しか寝ていないのに平気な人もいれば、9時間は寝ないと体力が回復しない人もいる。この時点で、日中活動できる時間に5時間もの差がある。
さらにややこしいことに、長く睡眠時間をとっても、目が覚めると疲れが抜けておらず、ふとんから出るのが名残惜しく感じることも実に多い。
長く眠ったからといって、そのぶん体力が回復するわけではないことは、多くの人がうすうす勘づいているだろう。このような複雑な「睡眠」と、私は、20年以上にわたって向き合ってきた。
- いったい人間はどうしたら、快適な睡眠をとれるのか?
- 睡眠時間は減らせるのか?
- 短時間睡眠で、より快適に過ごすことはできるのか?
たどり着いたのが、本書のメソッドである。
本書のメソッドを使えば、ほとんどすべての人が、短時間の睡眠でも満足でき、目覚めはスッキリ、日中も快適に余裕をもって過ごせる。
日本人の9割は「ショートスリーパー」になれる
ショートスリーパーになれる人、なれない人先ほど、本書のメソッドを使えば、ほとんどすべての人がショートスリーパーになりうることをお伝えした。
「ほとんどすべての人」がなれる、ということは、ショートスリーパーに「なれない」人もいるということだ。
残念ながら、日本人の1割ほどは、ショートスリーパーになるのが難しい。
世の中には、「誰でもショートスリーパーになれる」といったメソッドもあるが、それは違う、ということを睡眠専門医としてハッキリと伝えておきたい。
ショートスリーパーになれないのは、「ロングスリーパー」といわれるタイプの人である。
人間の睡眠タイプは、「ショートスリーパー」「ロングスリーパー」「バリアブルスリーパー」の3つに分けられる。
ショートスリーパーとは、睡眠時間が6時間未満でもアクティブに活動できる人のこと。日本人では5〜8%がこのショートスリーパーだ。
ロングスリーパーは、睡眠時間が10時間を超える人のことを指す。日本人の割合は3〜9%だ。アインシュタインもこのタイプで、毎日10時間以上眠っていた。
このロングスリーパーが、ショートスリーパーになれる可能性は極めて低い。
そしてもうひとつが、バリアブルスリーパーと呼ばれるタイプだ。ショートスリーパーとロングスリーパーのちょうど中間に位置し、睡眠時間が6〜10時間の人を指す。日本人では、全体の80〜90%がこのバリアブルスリーパーだ。
バリアブルスリーパーは、睡眠時間を削ったり延ばしたりしやすい。ショートスリーパーにもロングスリーパーにも、どちらにも転びうる。
白くも黒くもなる、変化しやすい(=variable)スリーパーという意味からこの名がついた。
あなたは、ショートスリーパーになれるか?本書は、このバリアブルスリーパーがショートスリーパーになるためのメソッドを紹介したものだ。しかし、自分がバリアブルスリーパーかどうかを把握している人はおそらくいないだろう。
あなたが、6〜10時間の睡眠をとれば、日中、午後2〜4時以外は眠気もなく(午後2〜4時に眠くなるのは、体内時計的には自然)、問題なく活動できるようであれば、バリアブルスリーパーの可能性が高いといえる。

また、「6〜10時間寝ても、どうもすっきり目覚められず、日中も頻繁に眠気がくる」「10時間以上眠らないと、すっきりせず、眠気がとれない」という人でも、次のチェックリスト項目のどれかに当てはまる場合は、ロングスリーパーというよりも普段の睡眠の質が影響している可能性が高い。
たとえば、私の患者さんでも、「長時間眠らないと体力が回復しない」と思い込んでいた人が、実はショートスリーパーだった事例がある。
彼の場合、夜、ふとんに入っても1時間以上寝つけない、熟睡できていない、それゆえ、10時間眠っても疲れがとれない……そういった状況が長く続いていた。
しかし睡眠にかかわる習慣を改善し、思い切って睡眠時間を短くしたところ、かえって体調はよくなり、日中の疲れも軽減されたのだ。これは決して珍しい事例ではない。
長く眠っている人も、その睡眠の質を見てみると、ふとんに入っても1時間くらい入眠できていなかったり、眠りに入っても途中で何度も目が覚めていたりということは少なくない。
いたずらに睡眠時間が長いだけで、実はショートスリーパーのリズムのほうが合っている可能性もあるのだ。
なお、チェックリストのどれにも当てはまらず、昔から10時間以上眠らないと日中の活動に影響が出ていたような人は、残念ながらロングスリーパーの可能性が高い。
また、睡眠の病気の可能性もあるので、STEP2「それでも改善しないときに疑いたい睡眠の病気とは?」を参考に当てはまるものがないかを確認してみよう。
「短眠」=「健康に悪い」という勘違い
睡眠時間は「練習」で短くできる先ほど述べたように、日本人の8〜9割はバリアブルスリーパーである。そしてバリアブルスリーパーは、「練習」次第でショートスリーパーになれる。それを証明する、ひとつの実験結果がある。
8時間前後の睡眠の人を対象に、睡眠時間を減らすことができるかどうかを調べたものだ。実験は、6か月後に平均5時間睡眠まで減ったところで終了した。
興味深いのは、その1年後に、自由な生活を過ごしていた実験参加者を調べてみると、平均6時間睡眠を保っていたことだ。
一度、短い睡眠時間に慣れてしまうと、それを長期にわたって維持できることが証明されたことになる。
睡眠時間が長くなればなるほど、寿命は縮むしかし、そうは言っても、「本当にそんなに簡単に睡眠時間を削っていいのか?」と疑問を持つ人が大半であろう。
ハッキリ言うが、「問題ない」。睡眠は長くとればいいわけではない。それどころか、長く眠るほど寿命が縮むおそれもある。
1980年代、アメリカで興味深い研究が行われた。100万人以上を対象に、睡眠時間と寿命の関係が調べられたのだ。結果は予想外のものだった。
最も死亡率が低いのは一日あたり6・5〜7・5時間の睡眠をとっている人で、7・5時間以上の睡眠時間をとっている人はそれよりも死亡率が20%以上も高くなったのだ。
研究を行ったカリフォルニア大学サンディエゴ校のダニエル・クリプケ博士は、「睡眠は食欲と似ている。欲望に任せてものを食べると、食べすぎて健康を害するように、睡眠も、眠たいからといっていつまでも寝ていると、体によくない」と見解を示している。
日本でも、同じような実験結果が出ている。
北海道大学の玉腰暁子教授は、40〜79歳の男女約10万人を、10年間にわたって追跡調査した。
対象者の平均睡眠時間は男性7・5時間、女性7・1時間で、死亡率が最も低かったのは、男女とも睡眠時間が7時間の人たちだった。そしてここでも、睡眠時間が7時間より長い人は、死亡率が高くなる傾向が示された。
睡眠時間が長い人の寿命が短くなる原因は、まだはっきりとは突き止められてはいない。しかし、その死亡率が高めに出ることは数字が語っている。
睡眠を「時間」だけで測るのをやめなさいこの実験結果から、「それならば人間にとって一番健康的な睡眠時間は、7時間前後ではないか」という声も聞こえてきそうだ。
たしかに「睡眠時間」という数字だけを見れば、その意見は間違いではない。しかし、ここで言いたいのは、睡眠のよしあしは単純に「時間」だけでは測れない、ということだ。
現に、男性に限っては5時間前後の睡眠が最も寿命が長いと結論づけた調査もある。
多くの人は、睡眠を「時間」で捉える傾向があるが、睡眠は「時間」と「質」のかけ算だ。
本書の冒頭で触れたように、「質」を最大限に高めれば、「時間」を短縮することもできる。あなたが、短い睡眠時間で満足できないのは、「質」が悪いからなのだ。「時間」と「質」。
この睡眠の両輪を意識すれば、短時間でも一日中アクティブに活動できる「ショートスリーパー」になることは可能だ。
あなたの睡眠の質を変える3つのステップここまでであなたがショートスリーパーになれる可能性があること、そして、「質」を高めれば、睡眠時間を削れることをおわかりいただけただろう。
そこでまずは、あなたの睡眠の質を、短時間でも満足できる内容に変革していただく。本書でどのように睡眠の「質」を改善していくかを改めて説明すると、次の通りだ。
STEP1では、「即寝・即起き」の技術を身につける。
ここでは、実際に入眠するまでの時間と、目覚めてから活動に入るまでの時間を短縮する。多くの人は、これらを合わせて20分ほどの時間を要している。これを短縮すれば、睡眠効率は格段に上がる。
STEP2では、睡眠の「質」を高め、短時間でも脳と体の「回復力」を高める方法を伝授する。
多くの人は、睡眠についてよく理解していない。睡眠中に我々の体では、どう体が回復しているのか、そしてその活動を高めるにはどうすればいいか、具体的な手法を交えて解説する。
STEP3では、一日中、疲れ知らずの体を手にするための「仮眠」について紹介する。
ショートスリープ実践中に起きる眠気への対処はもちろん、これまで以上に日中を快適に過ごすための、5つの仮眠とその実践のポイントを紹介する。
この3つのステップをこなせば、短時間睡眠でもすっきり目覚め、日中のパフォーマンスにもすぐれたショートスリーパーになれる。
それではさっそく、STEP1から睡眠の「質」を高めていこう。
STEP1「即寝・即起き」の技術で、睡眠効率を高める
毎日20分、あなたは「床上」でムダな時間を過ごしている
日々の「ムダな20分」を削ぎ落とす睡眠で大切な要素は「時間×質」だ。
ここから伝える、「即寝・即起き」の技術は、その両方を担う、あなたの睡眠変革にかかわる大切なスキルである。
「即寝・即起き」というと、次のような悩みを思い浮かべる人も多いだろう。
- ・ふとんに入ってからなかなか寝つけない
- ・朝、目が覚めても、いつまでもふとんの上でダラダラしてしまう
あなたも、同じような経験をしたことがあるかもしれない。このような、眠っているわけでも活動しているわけでもない時間は、はっきり言って無駄である。
多くの人は、これらを合わせ20分ほど損をしている。ひどい人は、1〜2時間それに時間を費やしている。これらを短縮すれば、睡眠効率は格段に上がる。
8時間ふとんにいて実際の睡眠時間が6時間よりも、6時間ふとんにいて実際の睡眠時間もほぼ同じほうが、効率がよいのは当然だ。
「即寝・即起き」ができると、睡眠の質が高まるこのふとんに入ってから眠りにつくまでの時間、そして目覚めてからふとんを出るまでの時間を、専門的には「床上時間」と呼んでいる。
STEP1では、この床上時間を縮めることを目標に、「即寝・即起き」の技術を紹介する。
「即寝」の技術は7つ。いずれも、ふとんに入ってから5分以内に入眠するための技術だ。
これらを実践することで、昼間の「活動的な脳と体」から、深く眠るための「リラックスした脳と体」へとスムーズに転換できるようになる。いつまでも寝つけないということは、もうなくなる。
「即寝」のメリットは、単純に睡眠時間を削ることだけではない。
「ふとんに入るとすぐに眠れる」という癖をつけることで体が眠ることに慣れ、ノンレム睡眠への導入時間が短くなるのだ。
ノンレム睡眠については、STEP2で詳細に説明するが、この導入を早くすると脳と体が急速に回復する。
「即起き」の技術は4つ。こちらは、目覚めてすぐに一日をスタートさせる技術だ。
「即寝」の技術とは逆に、睡眠中の「リラックスした脳と体」から、昼間の「活動的な脳と体」に瞬時に切り替える方法である。
起きなければいけないのにダラダラとふとんから出られない、朝に弱い、といった悩みはもうなくなる。
「即起き」のメリットも、睡眠時間の短縮だけではない。
「即起き」できる状態とは、目覚めた瞬間に体内の副腎皮質刺激ホルモンが十分に分泌されていて、心身ともに日中のさまざまなストレスに耐えうる準備ができているということ。
つまり、体内の「今日一日」に対する準備も、起きた瞬間に整った状態にできるということだ。また、「即寝・即起き」を実現すると、睡眠時間のコントロールもしやすくなる。
同じ時間にふとんに入っても、眠りにつくまでにかかる時間と、目覚めてから起床するまでの時間がバラバラだと、「実際に眠っている時間」に大きなバラつきが出てしまうからだ。
すると、日によってコンディションが大きく変わってしまう。
これは、STEP4で実践する「睡眠時間を削減する」際の大きな足かせとなる。
このように、「質」「時間」の両面の理由から、あなたがショートスリーパーを目指すうえで、まず改善すべきは、「ふとんに入ってから寝つくまでの時間」と、「目覚めてからふとんを出るまでの時間」なのだ。
即寝の技術①「刺激コントロール法」で、ふとんを見るだけで眠くなる
条件反射的に眠る技術を身につける
まずは、「即寝」の技術を紹介していこう。
ふとんに入っても、いつまでもダラダラと寝つけない……これは、睡眠にさける時間が少ない現代人にとっては、大きな問題である。
実はこの悩み、多くの場合、「睡眠空間」を整えられていないことに原因がある。ふとんが「眠る場所」になっていないのだ。
ふとんの上でゴロゴロしながらテレビを観たり、スマートフォンをいじったりすることが習慣になっている。
すると脳は、ふとんを「眠る場所」ではなく、リビングのソファーのような「ダラダラ過ごす場所」として認識してしまう。
「パブロフの犬」という言葉をご存じだろうか。
「エサをやるときにベルを鳴らす」という行動を続けると、犬はいつの間にか、ベルの音を聞くだけで「エサの時間だ」と思い、よだれを垂らすようになる。
これは「条件反射」という現象で、人間にも同じことが起きる。梅干しを見ると、唾液が出てくるのも、条件反射のひとつだ。だったら利用しない手はない。
「ふとんの上=眠るだけの場所」と条件づけをしてしまうのだ。
条件反射を利用し、「ふとんの上は、眠る以外に何もしない場所」とイメージづけをするこの方法は「刺激コントロール法」と呼ばれ、アメリカで30年ほど前に開発された。
ふとんを見ていいのは、寝るときだけふとんの上を「眠るだけ」の環境にするためには、「寝室には何も持ち込まない」ことだ。テレビもスマートフォンもパソコンも食べ物・飲み物もすべて持ち込み禁止。
そして寝る直前に寝室に入る。これを習慣づける。
もしもワンルームマンションに住んでいて、寝る部屋とふだん過ごす部屋が一緒の場合は、寝るとき以外はベッドにカバーを掛ける。
すると、夜にカバーを外して初めてふとんが見えることで、「ふとん=眠り」というイメージを強く意識づけできる。同様に、ふとんなら昼間はたたんでしまって、寝る前に敷く。
ソファーベッドなら、朝起きたらベッドを折ってソファーにするなど、日中の部屋と寝床を明確に区別すればよい。
眠れないときは、「ふとんから出る」
習慣を条件反射という意味では、眠れないまま、ずっとふとんにいることもよくない。
これを続けると、今度は「ふとん=眠れないところ」と条件づけられてしまい、不眠症になってしまう。
ふとんに入って30分以上眠れない場合は、まだ心身ともに「眠るとき」ではないと考え、思い切ってふとんから出よう。そして、次のことをしながら、眠くなったらふとんに戻るとよい。
ホットミルク、ハーブティーを飲むカルシウムが多く含まれる牛乳には、安眠効果がある。温めて飲むことで、心身ともにリラックスできる。
温かいハーブティーにもリラックス効果があるのでオススメだ。
クラシックやヒーリング音楽を聴くとくにモーツァルトやバッハの曲には、「1/fゆらぎ」というリラックスにつながる効果がある。
ストレッチをする
眠れない原因として「血行の滞り」がある。血行が悪くなり、入眠の際に下がるはずの深部体温が下がらず、入眠が妨げられているのだ。
そこで実践したいのが、次の「眠りのスイッチをオンにするストレッチ」。筋肉をゆっくり伸ばし、血管を収縮させることで、血行を改善できる。


ふとんの上でストレッチをし、いったん台所などで温かいハーブティーやホットミルクを飲む。そして気持ちが落ち着いたら、再びふとんに戻ればよい。
即寝の技術②睡眠薬に匹敵する「4つ」の香り
科学的に立証されている「香り」の睡眠効果香りには、人間の心理状態を変える効果がある。眠りやすくなる香りの研究も進んでいて、科学的な効果が証明されているものもいくつかある。
代表的なものは、次の4つだ。
- ・ラベンダー
- ・セドロール(シダーウッド)※ヒノキやスギの香り
- ・コーヒー
- ・タマネギ
それぞれの効果について説明していこう。
ラベンダー
人間を睡眠に誘う香りとして最も有名なのがラベンダーだ。最近では、医療機関や介護施設でも使われている。
英・ロンドンの老人病院での研究では、睡眠薬を常用している患者にラベンダーの香りを嗅いでもらったところ、睡眠薬なしでも眠りが深くなり、深夜の徘徊がなくなったという報告がある。
さらに、日中の眠気は減り、メリハリのある一日を送れるようになったという。日本でも研究が進んでいる。
大学生を被験者とした睡眠中の脳波実験で、大学生にラベンダーの香りをつけたふとんで眠ってもらったところ、ふつうのふとんで寝たときと比べて、深い睡眠をとれている時間が明らかに増えたのだ。
ラベンダーの香りは、眠りを確実に促す。
セドロール(シダーウッド)
セドロールとは、ヒノキ科やスギ科の樹木の香りに含まれる物質。ヒノキでできた浴槽に浸かると、ふつうのバスタブよりもリラックスできているように感じるのは、セドロールによるところが大きい。
針葉樹林での森林浴がストレス解消に効果的なのも、同じ理由だ。
大学生の被験者に、就寝2時間前から就寝2時間後までの計4時間、セドロールの香りを嗅いでもらった実験がある。
この実験で特筆すべきは、セドロールの香りを嗅ぐと、嗅がないときに比べて、ふとんに入ってから寝つくまでの時間が45%も短くなったという結果が出たこと。
これは睡眠薬の効果にも匹敵する数字だ。さらに、夜中に目覚める回数が減ったという結果も出ている。セドロールとラベンダーは、アロマオイルとして売られている。市販のアロマディフューザーを使って、寝室の香り環境を整えるとよい。
コーヒー
鎮静効果より覚醒効果のほうが高そうなコーヒーだが、香りを嗅ぐだけならば睡眠を促す効果がある。
コーヒーの香りを嗅いだときの脳波を調べると、リラクゼーションの指標であるアルファ波が多く出ていることがわかっているのだ。
ただ、豆の種類によってその効果は異なる。睡眠作用を高めるのは、グアテマラとブルーマウンテン。アルファ波を増やし、気持ちが落ち着いて眠りやすくなる。
タマネギ
過去に私が企画協力したテレビ番組で、いつも昼寝をしないで先生の手を焼かせている幼稚園児に、タマネギの香りを嗅がせ、眠るかどうかを調べたことがあった。
タマネギの香りがない部屋の園児たちはいつも通り眠らずに元気そのものだったが、刻んだタマネギを置いた部屋の園児たちは、ほとんどが自然に昼寝に入っていた。
実は、タマネギの香りに含まれる「硫化アリル」という物質には、気持ちを落ち着かせ、眠りを誘う効果がある。
硫化アリルはタマネギだけでなく、ネギ、ニラ、ニンニク、ラッキョウなど、独特の刺激的な香りを放つ食材に多く含まれる。
ただ、香りが強すぎるのは逆効果。タマネギを刻んで部屋に置く場合は、香りがするかしないかくらいの少量でよい。
即寝の技術③「モヤモヤノート」でふとんの中で考えることをやめる
悩みやイライラは、机の中にしまってから寝る仕事が終わった後も、移動中や家で会社のメールがチェックできてしまい、SNSで四六時中誰かとつながっている現代は、寝る直前までストレスを抱えやすい環境だといえる。
そのため、抱えたモヤモヤやイライラを消化できないままふとんに入り、いつまでも寝つけない人も多いだろう。
スパッと入眠するためには、ふとんに入る前に心のモヤモヤをすべて吐き出してしまうのがベストだ。
しかし、ただ「忘れよう」「考えないようにしよう」と思っても、なかなかうまくはいかない。そこで効果を発揮するのが「モヤモヤノート」だ。何も特別なものを用意する必要はない。準備するのはA4ノート1冊とペン。
このノートに、心から離れないモヤモヤや、今日あった嫌なことをすべて書き出すのだ。
- ・取引先から理不尽なクレームを受けて、反論できずに罵倒された。悔しい
- ・気になっている○○さんに恋人がいるかもしれない。指輪をしていたし、気になる
- ・親の介護のことを考えるとつらい。このまま仕事を続けられるだろうか
など、どんなネガティブなことでも、些細なことでもかまわない。あなた以外誰も見ないノートなのだから、思いのたけを好きなだけ書きなぐってしまえばいい。書き終えたらノートを閉じて、引き出しにしまう。
そのときには、「はい、今日はこれでおしまい」と、締めくくりの言葉をはっきりと声に出す。これによって、気持ちがすんなりと切り替わる。
人間は、頭の中にあるものを、いったん外に出さないと認識しづらく、理解できない。だから、頭の中のモヤモヤやイライラをノートに書き、アウトプットする。
そしてそのノートを引き出しにしまう動作も、「はい、今日はこれでおしまい」と声に出し、アウトプットする。
この二重のアウトプットにより、「あとは寝るだけだ」と自分に強く言い聞かせる効果が生まれるのだ。
すべてが終わったら、すぐふとんに入る。今日はこれでおしまい。明日のことはまた明日、考えればよい。
ノートはアナログ!デジタル厳禁
「モヤモヤノート」をつくるうえで重要なのは、必ず「紙に書き出す」ことだ。スマートフォンのメモ機能や、パソコンの使用はNGだ。
スマートフォンやパソコンの画面から放たれるブルーライトは、脳を覚醒させる効果がある。必ず、ノートに書き出そう。
即寝の技術④成功者だけが実践している「寝逃げ」の驚くべき効果
問題は「眠るだけ」で解決する夜に考えすぎてしまう人に、もうひとつ伝えたい技術、それは「寝逃げ」だ。
仕事が途中で行き詰まってしまったときや、明日までに解決しなければいけない問題がまだ解決していないとき、ふとんの中でも、その問題に考えを巡らせてしまうことがある。
しかし、ふとんの中で問題と向き合うより、「もう寝ちゃおう」と現実から逃げたほうが、解決策が思い浮かぶことをご存じだろうか。
この「寝逃げ」ともいえる行為は、決して「現実逃避」ではなく、科学的根拠のある立派な「問題解決手段」のひとつである。
眠るだけで問題が解決する。こんな夢のような機能が、睡眠にはあるのだ。
「寝逃げ」が大発明やノーベル賞を生んだあなたも実際に、「朝起きたら、解決策が急に思い浮かんだ」という経験があるはずだ。
実はこの現象は偶然ではない。
人の脳は、レム睡眠中、起きていた時間にストックした情報の中から、自分に必要なものだけを抜き出して再処理している。パソコンの「最適化」のようなものだ。
とくに大きな悩みがあればあるほど、この「最適化」機能は強くなる。
古い記憶が整理され、新しい記憶と結びつくことで、新たなアイデアが浮かぶのだ。これが「寝逃げ」のメカニズムである。
寝逃げをして新しいアイデアを生み出す手法は「追想法」または「レミニセンス」と呼ばれている。
発明家のエジソンや、1949年にノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士は、この手法を利用して難題を解いたといわれている。
ノーベル賞級の潜在能力を引き出すのが、この「寝逃げ」なのだ。寝逃げをうまく活用するためのポイントは2つ。
ひとつは「眠りに執着しない」こと。「寝逃げをするために、早く眠らなくては」と焦って眠れなくなってしまっては本末転倒だ。
もうひとつは寝る前に、「解決したいことをきっちり頭の中で整理する」こと。情報を手帳やノートに書き出してしまうのもいい。
起きているうちに情報を明確にすることによって、眠っているときの脳の最適化機能はより高まるのだ。
即寝の技術⑤「昼の神経」から「夜の神経」への切り替え方
なかなか寝つけない原因の正体ふとんに入ってすぐに眠れない大きな原因のひとつは、ストレスだ。
ストレスを抱える人は、自律神経がうまく働かないことで、入眠がうまくいっていない可能性がある。
自律神経は、心臓の鼓動や内臓の働き、さまざまなホルモンの分泌、血流など、自分の意志ではコントロールできない体の機能を司っている。
人間は自律神経の働きによってコントロールされているといっても過言ではない。もちろん、睡眠も例外ではない。自律神経には、2種類の神経がある。
体を活動的にする「交感神経」(昼の神経)と、体をリラックスさせる「副交感神経」(夜の神経)だ。
つまり睡眠に大きくかかわってくるのは、夜の神経である副交感神経ということになる。交感神経と副交感神経は、環境や脳内物質の作用によって切り替わる。
しかし、この「切り替え」がうまくいかないこともしばしばある。
ふとんに入ってもなかなか寝つけないときには、まだ自律神経のスイッチが昼のまま切り替わっていない可能性があるのだ。
体を活動的にさせる交感神経の働きにより、心身が興奮・緊張した状態のままなのだ。スムーズに眠りにつくためには、夜の神経である副交感神経にスイッチを切り替えなければならない。
深いリラックス状態を生む「腹式呼吸」自律神経のスイッチを切り替える有効な手段のひとつは「腹式呼吸」だ。
意識して呼吸することで副交感神経を働かせ、眠っているときと同じような深いリラックス状態に体をもっていくことができる。
腹式呼吸は、眠気を誘うだけではなく、睡眠の質を高める効果もある。毎晩の習慣にすると、質の高い睡眠も期待できるので一石二鳥だ。
次のように腹式呼吸を試してみよう。

⑥自分だけの「スリープ・セレモニー」をつくる
いつもの「儀式」が眠気を促す
夜、寝る前に必ずやる、習慣となっている行動を「スリープ・セレモニー」という。セレモニーという字面だけを見るとなんだか大げさだが、「歯を磨く」「トイレに行く」「パジャマに着替える」といった行動もスリープ・セレモニーのうちに入る。
要は、寝る前に必ずやる習慣はなんでもスリープ・セレモニーなのだ。スリープ・セレモニーは、スムーズに寝つくための効果的な方法となる。大切なのは、毎日、同じ行動を習慣づけている点。
決まったスリープ・セレモニーを行うことで、脳は「ああ、この行動に入ったということは、そろそろ睡眠に入るんだな」と意識づけられ、自然に眠気を促すのだ。
これも「パブロフの犬」と同じ原理である。
寝る前に何も考えずにできる作業をすでに多くの人がやっているように、「歯を磨いてパジャマに着替える」というのは最も一般的なスリープ・セレモニーだ。
「簡単な片づけをする」「ストレッチをする」「音楽を聴く」など、活動的な時間と「睡眠」という休息時間の間に、「何も考えずにできる作業」を挟むのはとても重要だ。
また、先ほど紹介した腹式呼吸を行うのも、有効なスリープ・セレモニーとなりうる。
軽い気持ちでも続くような、自然にできるスリープ・セレモニーをつくることができれば、少々、環境が変わってもスムーズに入眠することができるだろう。
即寝の技術⑦エスプレッソ2杯分の覚醒効果がある「あの行動」をやめる
仕事のメールチェックを〝朝〟にすべき理由
デジタル機器の画面から放たれる「ブルーライト」の悪影響は、あなたも耳にしたことがあるだろう。そのまぶしさやちらつきは、人間の目に確実にダメージを与える。
パソコンでの仕事が多い人に、眼精疲労や目の痛みを訴える人が多いのは、ブルーライトが原因だと考えられている。
最近の研究では、このブルーライトは、目に直接ダメージを与えるだけでなく、寝つきが悪くなる作用があることもわかってきている。
英・エディンバラ睡眠センターのクリス・イジコフスキ博士は、自身の研究で「デジタル機器のディスプレイから発せられるブルーライトが脳を刺激し、メラトニンの分泌をストップさせる」ことを明らかにした。
メラトニンは睡眠ホルモンの一種。その分泌がストップしてしまえば、眠くならないのは当然だ。そしてもちろん、メールの中身も大きな影響がある。睡眠を邪魔する最大の原因はストレスだ。
メールは新たなストレスや興奮材料を生みやすい。
イジコフスキ博士はこの点についても、「仕事関係のメールを見ただけで、エスプレッソコーヒーを2杯飲んだときと同じくらいの興奮状態になる」と指摘している。大変な濃度だ。
反対にいえば、朝のメールチェックは、活動的な脳に切り替えるために有効な手段だといえる。夜にメールを見ても、できることは限られている。メールは〝夜ではなく朝〟にチェックしよう。
即起きの技術①理想の目覚めが手に入る「自己覚醒法」
副腎皮質刺激ホルモンを上昇させる
ここまでの7つの「即寝」の技術をこなせば、あなたは、明日から無駄な睡眠時間を削り、睡眠の質も高めることができる。
そしてここから紹介する「即起き」の技術を身につければ、あなたは、睡眠で生じる無駄な時間を限りなくゼロにできる。
さらに、これまでのように「もっと寝ていたい」というストレスを抱えながら起きたり、起きてから数時間頭が働かないといった悩みともオサラバだ。
心地よく目覚め、起きた瞬間から高いパフォーマンスを発揮できるようになる。即起きの技術でまず伝えたいのは、「理想の目覚め方」だ。
あなたにとって理想の目覚め方とは、どのようなものだろうか?目覚めにおける一番のストレスは「もっと寝たい」ということだろう。
もっと寝ていたいのに、目覚まし時計で強制的に起こされる……耳元で鳴る目覚ましの音を「うるさいな」と思ったことは、誰しもがあるだろう。
「まだ寝ていたいのに!」「今起きようとしていたのに!」とイライラしながら目覚める……朝一番に感じるストレスは目覚ましの音かもしれない。
当たり前の話だが、自然に目が覚めるのが、人間が最も心地いいと感じる理想の目覚めだ。
毎日、休日のように目覚ましを気にせず、目が覚めたタイミングで起きられたらどれだけ幸せだろうか……と思う人も多いはずだ。
実はこれ、睡眠時間が短くても実現できる。人間は、「自己覚醒能力」という、自分が起きたい時刻に起きられる夢のような能力を持っている。
その能力をフル活用すれば、目覚ましなしで起きることができるのだ。
この自己覚醒能力については、目覚ましなしで起きられる人と、目覚ましがないと起きられない人を比べた興味深い実験がある。
目覚ましなしで起きられる、つまり「自己覚醒」できる人は、目が覚める1時間前から、心地よく目覚めるのに欠かせない「副腎皮質刺激ホルモン」の分泌が緩やかに上昇し始め、気分よく目覚めることができた。
一方、目覚ましで強制的に起こされた人の副腎皮質刺激ホルモンは上昇せず、目覚めの気分はよくなかった。
副腎皮質刺激ホルモンは、脈拍や血圧を上昇させて全身の細胞を活発に動かし、ストレス耐性を高める働きを担う。
自己覚醒能力の高い人は、起きる時間に合わせて副腎皮質刺激ホルモンを分泌し始め、目覚めてすぐ活動できるよう脳と体の準備を整えているのである。
つまり、自然な目覚めができるようになれば、心地よく起きられるだけでなく、すぐに活動できる準備が整った状態で起きられるのだ。
5時に起きたいなら、枕を「5回」叩くでは、目覚ましがないと起きられない人が、どのように自然に起きられるようになるのか。
方法は単純だ。
「何時に起きたいか」を強く思い描くだけでいい。それだけで、起きたい時刻に起きられるのである。嘘のような話だが、効果は実験でしっかりと証明されている。
この実験では、被験者Aに「明日、6時に自分で起きてくださいね」と伝え、時計のない部屋で寝てもらう。
一方、被験者Bには「明日、9時に自分で起きてくださいね」と伝え、時計のない部屋に寝てもらい、不意を突いて6時にたたき起こす。
被験者Bにとっては少々酷な実験だ。そして双方の副腎皮質刺激ホルモンの分泌過程を調べる。結果、被験者Aは、6時の起床に向け、4時30分ごろから副腎皮質刺激ホルモンが増えだした。
体が自然に、起きる準備を始めたのである。一方の被験者Bは、6時の時点でも副腎皮質刺激ホルモンの分泌は停滞したまま。
体が9時に起きるつもりになっているのだから仕方がない。そして6時にたたき起こすと、副腎皮質刺激ホルモンの分泌が一気に増えた。
予定していたよりも急に早く起きなければならなくなり、体がフル回転で副腎皮質刺激ホルモンを分泌させ始めたのだ。
酷な実験を課しておいてなんだが、あまりいい目覚めとはいえない。
つまり、「〇時に起きよう」と意識するだけで、その時間に起きるように体内時計を調整する機能が人間には備わっているのである。
もちろん、目覚まし時計のように時間ぴったりというわけにはいかないが、起きようと意識した時刻の前後15分程度であれば、自然に目覚めることはできる。
その精度を高めるためには、起きる時刻の数だけ枕を叩くのが効果的。5時に起きたいなら、1から順番に数字を声に出しながら、枕を5回叩く。これは記憶中枢に刻み込む作業で、自己暗示としては高い効果が得られる。
加えて、「自分は絶対に起きられる」と信じ切ることで、自己覚醒能力はより高まる。
最もストレスなく起きられる「目覚ましのかけ方」自分の「自己覚醒能力」のみを信じるのは不安かもしれない。そんなときは目覚ましを工夫して、ストレスなくスムーズに起きよう。
最もストレスなく、スムーズに起きるためには、自分の名前を録音したものをアラームとして設定するといい。
医者が患者の意識を確認するときに患者本人の名前を呼ぶのは、人間が自分の名前に大きな反応を起こすからだ。
これには、「カクテルパーティー効果」と呼ばれるものも大きく影響している。
カクテルパーティー効果とは、たくさんの人が雑談している場でも、自分が興味を持っている人の会話や、自分の名前、自分に関する話題などは聞き分けられるというものだ。
人間は耳で聞き取った音の中から、自分に必要なものを選択して聞き取る能力を持っているのである。
そのため、自分の名前を録音した音声は、単なるアラーム音より覚醒効果が高く、かつ小さい音でも脳が反応するためストレスは少なくて済む。
ぜひ、試してほしい。
即起きの技術②「「5分間二度寝」で幸せに目覚める」
二度寝がもたらす驚くべき効果一度目覚めた後で、もう一度眠りに入ってしまう「二度寝」。なんだかダラダラとしていて健康にもよくないように思える。
しかし実は、二度寝は悪いことではない。むしろ、心にとっても体にとってもいいことだらけなのだ。
目覚ましが鳴って起きたけれど、「今日は休みだから」と目覚ましを止めて二度寝する。とても幸せな気分だ。
こんなとき体内では、抗ストレスホルモン「コルチゾール」がたくさん分泌される。コルチゾールはストレス耐性を担うホルモン。
人間の体内では、目覚める1〜2時間前から急激に分泌が盛んになる。コルチゾールの分泌によって、心はウォーミングアップし、「今日のストレス」に備えるのだ。
二度寝をすることによって、コルチゾールの分泌はさらに続く。結果的に入念なウォーミングアップをすることになり、心は凹みづらくなる。
二度寝の効果はほかにもある。
二度寝をしているときの脳は、リラックス効果を促すアルファ波の影響が強くなり、脳内麻薬の一種「エンドルフィン」が分泌される。
エンドルフィンは、自分の好きな音楽や小川のせせらぎなど、心地よい音を聞いたときに多く分泌され、心身の緊張を和らげたり、ストレスを軽減したりする効果がある。
ただ欲望に任せて二度寝をするだけで、小川のせせらぎを聞くのと同じ効果があるのだ。お得そのものである。
絶対に守りたい「二度寝」のルール
しかし、いくら二度寝が心身によい影響を及ぼすからといって、何時間も二度寝をしてはいけない。
抗ストレスホルモン「コルチゾール」を最大限に分泌させ、かつ毎日の生活に影響のない程度の二度寝をするには、「二度寝は5分、一度だけ」というルールを守ることが重要になる。
二度寝を10分以上すると、それはもはや二度寝とは呼べないくらいの深い眠りに入ってしまうからだ。
目覚ましが鳴って目覚めたら、5分後にセットし直して、次のアラームでしっかりと起きよう。もちろん、あらかじめ5分差で2回セットしてもいいし、スヌーズ機能を使ってもいい。
そして、あくまでも「二度寝」なので、再び眠るのは「一度だけ」にとどめよう。三度も四度も目覚ましを止めて眠ってしまうのは、二度寝ではない。
朝は、「5分間二度寝」でコルチゾールやエンドルフィンの効果を最大限に得て一日を始めよう。
ちなみに「自己覚醒法」と「二度寝」は併用できる。
自己覚醒法で目覚めたあと、さらにアラームをセットして「5分間二度寝」をすると、より幸せな目覚めとなるだろう。
即起きの技術③寝起きの「アイソメトリックス」で、さらに目覚めスッキリ
寝起き1分、ベッドでできる一日に備える
運動「即起き」の技術を紹介しているのに矛盾するようだが、朝、目覚めてすぐに飛び起きるのは危険だ。
寝起きは、数時間横になっていたことで体がこわばっている。目覚めて急に起き上がったためにぎっくり腰になってしまった人もいるほどだ。
目覚めてすぐは、まず体をほぐし、体の隅々まで血液を巡らせ、体温を上げる必要がある。そのために効果的なのは、今注目されている運動法「アイソメトリックス」だ。
アイソメトリックスとは、筋肉の長さを変えずに、ギュッと力を入れる運動のことを指す。道具を使わず、筋肉への負担もかけずに、短時間で効果を得られるエクササイズである。
アイソメトリックスのポイントは、次の2つだ。
- 呼吸を止めない
- 動かす部位を意識しながら力を入れ、10秒間、動かさない
この2点を意識しながら、首や肩まわり、腰の筋肉を動かし、体を温めていく。
ここでは3つのアイソメトリックスを紹介する。
左のイラストを見ながらやってみてほしい。
この3つのアイソメトリックスは、直接動かす首や肩まわりの筋肉だけでなく、腰の筋肉にもいい影響を与える。腰の筋肉が硬くなると寝返りが打ちにくくなり、それが原因で睡眠障害に陥ってしまうこともある。睡眠の質を高めるという意味でも、寝起きのアイソメトリックスは重要だ。

即起きの技術④飲み会翌朝に有効な脳と体を強制的に起こす裏ワザ
残業の翌朝にも使える「即起き」の技術とは?
ここまでの流れをしっかりやれば、「即起き」は確実に身につくはずだ。
ただ、それでも前日に飲みすぎたり、予想外の残業があったりと、イレギュラーな事態で目覚めが悪いこともあるはず。
そこでここでは、脳と体に強制的にエンジンをかける2つの方法を紹介する。
朝シャワー
体を起こすには、体温と血圧を上げることが重要だ。
しかし、とくに冷え性や低血圧の人は、自分の力だけでは体温や血圧が上がりにくく、結果として体が活動する準備を整えにくい。
そこでオススメしたいのが、熱めの朝シャワーだ。
適温は40〜42度。
シャワーの刺激でエンジンがかかり、昼の神経である交感神経が活発に動き出す。
さらに、熱めのシャワーを浴びると、「ヒートショックプロテイン」というたんぱく質がつくられる。このたんぱく質が傷ついた細胞を修復し、免疫機能も高めてくれる。
甘いもの
チョコレートなどの甘い食べ物は脳の栄養となる。血糖値と血圧が上がり、それにつれて体温も上がる。また、バナナもよい。
バナナには目覚めを促すセロトニンの原料となるトリプトファンが多く含まれており、時間がないときは朝食代わりにもなる。
この2つを実践すれば、脳と体に強制的にエンジンがかかる。前日の睡眠環境が悪かった日には、ぜひ実践してほしい。
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