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第19章 失敗の法則

失敗は予期することもできるし、また受け入れることもできる。

たいていの会社はとかく物事を見限るよりも、何とか取り繕ってみようとする。 「この状況を救うために、もう一度立て直してみよう」というのが、彼らの方式であ る。 ミスを認めながらそれに対して何の手も打たないというのでは、あなたのキャリア に傷がつく。上手なやり方は早いうちに失敗を認め、損害を食い止めることだ。アメ リカン・モーターズは乗用車から撤退し、ジープに専念すべきであった。IBMは、 自分たちの過ちを認める何年も前に、複写機を見限るべきであったし、同様にゼロッ クスはコンピュータを見限るべきであった。 日本人は過ちを早期に認め、必要な変更を加えることができる国民のようである。 彼らのコンセンサスに基づく経営方式では、 いきおいエゴは排除される。多数の人間 が大きな意志決定のごく一部にしか加担していないので、職歴を汚すとみなされるよ うな傷はだれも負わない。言いかえれば、「だれの責任か」という厳しさよりも、「悪 いのはみんな」というもたれあいの下に生きる方が、はるかに楽である。 このエゴを埋没させた手法こそ、日本人をかくも情け容赦のないマーケッターに仕

立て上げている大きな要素である。日本人は過ちを犯さないのではなく、犯した時に はすぐさま認め、必要な手直しを加え、そしらぬ顔でまたやってくる。 大成功を遂げたウォールマートには、会社として失敗に対処することを可能とする、 また別の手法がある。それは、サム・ウォルトンの「構え、撃て、狙え」の手法と呼 ばれるものだ。そもそもは、彼の修繕癖が生んだ手法である。 ウォルトンは、だれしも射撃の度ごとに、毎回標的に命中させらにるものではない ということを、よく承知していた。だからウォールマートでは、だれかが新しい企画 に失敗しても、罰せられることはない。ウォールマートの社長はビジネス・ウィーク 誌上で次のように述べている。「もし何かを学び、その何かを試みれば、その人は何 かを得るはずだ。許せないのは、同じ過ちを三度犯す人間ぞある。」 ウォールマートが多くの大会社と違っているのは、同社がいまのところ、あらゆる 会社に侵入するおそれのある「私的配慮」という悪質な病原菌に冒された様子がない ことだ。マーケティング上の決定は、第一に、意志決定権者のキャリア、第二に、競 争状況ないし敵に与えるインパクトを念頭に置いて下される場合が多い。私的な配慮

と公的な会社の事情との間には、抜きがたい攻めぎ合いがあるのである。 この結果、リスクを冒そうとする者がいなくなる。(だれにしろ首を突き出すこと なく、新しいカテゴリーに真っ先に飛び込むことは難しい)。高給をはみ、定年まで あとわずかという上級幹部にとって、大胆な行動はまず無理である。 若手幹部でさえ、昇進の梯子を崩さないように「無難な」決定を下したがる。大胆 な行動を取らなかったからといって、首になった者はいないからだ。 アメリカの会社の中には、経営トップ層のだれかに私的な便益が及ばない限り何事 も行なわれない会社すらある。こうしたことが、企業のとりうる有望なマーケティン グ行動にひどく制約を加えるのぞある。 一つのアイデアが、基本的に妥当でないとい う理由からではなく、そのアイデアが成功したからといってトップのだれの個人的利 益にもならないという理由ぞ、却下されてしまうのだ。 私的事情という要素を排除する一つの方法は、その要素をオープンにすることであ る。スリIMでは「チャンピオン」システムという手法を使って、新製品とか新事業 の成功から利益を得る人物を公表している。スリIMのヒット商品であるポスト・イ

ット・ノートの成功は、このシステムがいかに有効に機能するかを示している。ポス ト・イット・ノートの功労者はアート・フライというスリIM社内の科学者で、発売 にこぎつけるまでに一〇年近くかかっている。 スリIMのシステムがこのように成果を上げているとはいえ、理想的にはマネジャ ーが、ある商品コンセプトを、それがだれの利益になるか、ではなく、そのメリット は何か、に基づいて判断できる仕組みが望ましい。 会社が理想的に運営さにるためには、ティームワーク、団結心、犠牲をいとわない リーダーの存在が不可欠である。こういうとすぐに思い浮かぶのは、第二次世界大戦 中のパットン将軍とその第二軍、および電撃的なフランス侵攻であろう。史上これほ ど短期間に、これほどの領地と捕虜を分捕った軍隊は存在しない。 それでパットンはどのような報酬を得たかといえば、なんとアイゼンハワー連合軍 最高司令官によって首を切られたのであった。

 

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