とある会社の整理整頓ストーリー:デスク映えで定時退社続出!?残業が7割減った話カタシカタ®倉岡真希子
目次はじめに[その1]成長の場となる会社に出会う[その2]不意に差し出された1冊の本[その3]わたしの整理整頓が始まる[その4]会社の整理整頓へ発展!?[その5]思わぬ大反発に、続く小反発[その6]捨てる神あれば、拾う女神ある!?[その7]動き出す、まずはカタチから[その8]目に見える変化と効率アップ[その9]デスク映えからの定時退社[その10]明るい会社と充実した日々あとがき著者プロフィール
はじめに地方都市の卸会社のカスタマーセンター。地元では名の知れた会社に再就職した石井るいは、得意の英語を活かせる部署に配属になって意気込んでいた。しかし働きだすと仕事以外のことが、まぁいろいろと……一気に不満とストレスが溜まる中、友人に勧められた『オフィスの整理整頓』の本をキッカケに、仕事のシカタが変わりだす。彼女の中で何がおきたのか。徐々に周りも巻き込みながら変化していく、とあるオフィスの話しです。※本書は整理整頓のやり方ではなく、そこから得られる効果や、実現できることを疑似体験してもらえるようストーリーで綴っています。[ノウハウや整頓事例を紹介する内容ではないことを予めご了承ください]この本を選んでくださりありがとうございます。オフィスの整理整頓・カタシカタ®の倉岡真希子と申します。あなたが本書のタイトルに興味を持ってくださったのは、整理整頓が苦手だから?それともデスクワークをされているから?その両方、あるいは残業を減らしたいなどの理由でしょうか。では、これをどう思いますか?・パソコンの前でファイルや受信メールをよく探している・書類がデスクの上に平積みで、下の書類にはしばらく触れていない・まだ使える!という思いから、かすれるマーカーが捨てられない。使うときはストレスなのにこれは整理整頓が苦手なデスクワーカーの“あるある”です。共感された方も多いのではないでしょうか。ちなみに、わたしもやっていました……わたしは社会に出てからずっと事務職に就いていて、今も整理整頓の業務のほかに、社内の別業務の事務にも携わっています。
生まれながらのズボラで、幼いころから「片付けなさいっ!」と言われ続けてきました。母の期待には応えられないまま、整理整頓とは程遠いゴミ部屋の中で、わたしは健やかに育ちました。心身もズボラさも。[あ、ゴミ部屋はわたしの部屋だけで、実家はピカピカなんですよ]そのまま社会に出たわたしは『劣等感と残業』に苦しむことになりました。デスクの上は書類ミルフィーユ、引き出しはガラクタ箱、パソコンのデスクトップはファイル散乱。そして仕事が遅くて残業三昧……マンガに出てきそうな、分かりやすいダメ社員ぶり。でも自分の中では「忙しいから止む無く残業をしている」という認識でしかありませんでした。そしていつも「この仕事がひと段落したら整理整頓しよう」というタスクが残っていました。さぁどうでしょう?あなたも思い当たってザックリ刺さっていませんか?分かりますよ~。ひと段落するときなんて来ないですよね、次から次に仕事が降ってきますもんね。でも、安心してください。少し時間はかかるかもしれませんが、整理整頓はできるようになります。そして、それを糸口に仕事のシカタも変わります。その証拠に、今のわたしからは劣等感という3文字は消え去り、ビフォーアフターで残業を3分の1まで削減できました。「いや、いや、いや……」疑っていますか?そうですよね、これだけ聞いたって信用できませんね。でも、とってもとっても忙しい人たちが克服されていく様子を、わたしは側で見てきました。実際のその様子を、本書では実話に基づいたフィクションとして綴っています。登場する会社や人物は、わたしが訪問した企業やお会いした人たちがモデルです。整理整頓は地味な脇役業務。でも主役の本業を押し上げる凄いチカラを秘めている。言い換えれば、あなたの追い風となってくれる業務です。仕事が早くなり、残業が減り、周りからの評価があがる。
そのことが自信となり、さらに無敵なスパイラルを成していき、結果的に本業で成果を上げられるようになるのです。整理整頓することで得られる素晴らしい効果を、ここから先の本編でご確認ください。そして、このストーリーに触れることで「じぶんのために整理整頓してみようかな」「本当に残業が減らせるなら取り組んでみようかな」そんな気持ちがあなたの中に芽吹いたら、うれしいなぁと思うのです。ここでお知らせがあります。プレゼントをご用意しました。オフィスの整理整頓チェックシートお受け取りの方法は”あとがき“にて紹介しますので、ぜひ最後までお付き合いください。※1本書は脚色しており、登場人物、団体名等は全て架空のものですが、筆者やモデルの趣味嗜好が反映しています。そこに気がつかれたときも、あくまでフィクションとしてお楽しみいただけたら幸いです。※2本編に掲載している写真は、今回モデルとなった会社様のものではございません。
[その1]成長の場となる会社に出会うわたしの成長の場となった、この会社は、株式会社シミズという。札幌の卸会社で、地元では名が知られている。そこのカスタマーセンターへ、導かれるように再就職をした。「英語を話せる社員さんが一人辞めるんだって」社員募集の記事を表示させて、友人の優子がスマホを差し出してきた。前の仕事を辞めて2ヵ月。失業手当がもらえている間に、次の仕事を決めたくて焦っていた。つなぎでも何でもいいから仕事に就かなければ……高望みはしていなかったのに、まさか英語を活かせるなんて!留学経験もあり、英語を使うことが楽しかったから、迷うことは何もなかった。「やっぱりなんか暗い…」心の声を口走りそうになり、わたしは慌てた。面接の日以来、このオフィスに来るのは2回目なのだが、何か重たさを感じる。「おはようございます。仕入課発注係に配属になった、石井るいです」受付で挨拶をすると、面接をしてくれた田中次長のデスクの前に案内された。田中次長は笑顔がやさしくて話しやすい。でも仕事になったらバシっと決めるんだろうという印象を、キレイな身なりから受ける。挨拶を終えるとすぐに、仕入課の栗原課長を紹介してくれた。「おぉ、石井さん。仕入課長の栗原です。ようこそカスタマーセンターへ。英語が得意なんだってね。わたしは全くダメだから、よろしく頼むよ」
栗原課長はカラダと声が大きくて、元気という文字が似合う。人に警戒心を与えない天性を持っていると思った。その後は栗原課長が、課のメンバーを紹介してくれ、仕事の説明などもしてくれた。カスタマーセンターは、2課4係で構成されている。仕入課が庶務係と発注係で8人、受注課が1係と2係で9人、ここに所長と次長を加えて19人の組織だった。オフィスにはいつも栗原課長の陽気な声が響いている。ムードメーカーであることは1日目から分かった。「小島さん、3ヵ月くらい前にあったクレーム、あの資料どこにある?」「小島さん、来月のプレゼンデータ、どのフォルダに入れた?」「小島さん、テプラのカートリッジちょうだい」小島さんは仕入課庶務係の女性社員。正直あまり要領は良くなさそうで、いつも余裕がない。指示には忠実に従う、感じの良い人なので上司からの受けは良さそうだ。だから、いつも探し物をしている栗原課長に、助けを求められては仕事の手を止め、一緒に探してあげていた。でも実は、小島さん自身も整理整頓は苦手らしい。たしかに、パソコンのデスクトップはファイルでいっぱいになっているし、デスクの引き出しや、個人ロッカーは雑然とモノが押し込まれている。「見えるところだけキレイにして、引き出しとかに何でも突っ込んで隠しているから、そこを見られると恥ずかしいんだ」小島さんは、ばつが悪そうに続けた。「共用部分の文具や備品の管理は庶務係の仕事だから、頑張って見えないところもキレイにしているつもりなんだけどね。でも栗原課長にいつも聞かれるの」栗原課長だけでなく他の社員たちも、共有部分の管理を小島さんに丸投げで、探し物で困ると小島さんに聞いていた。誰もが、共有部分は守備範囲外とばかりに非協力的で、下手に火の粉がかからないよう忙しそうに振舞っている。「このスタイルでずっとやってきたから」という暗黙の意思さえ感じる。各々のデスク周りやパソコンは、キレイに管理している人もいれば、雑然な人もいてバラつきがあった。ちなみに雑然チャンピオンは、栗原課長で間違いない。わたしも他の社員と同様に、共有部分の管理には関わらないようにした。気にはなるが、どんどん業務量が増えていたのが理由だった。振られる仕事は何でも引き受けたし、英語が絡む業務は人に頼れなかったから。
気がついたら、ほぼ毎日残業をしていた。
▶︎共有部分(保管庫)が、壊れたものや、事務室で邪魔になるものを押し込めるだけのスペースになった事例。「正直近づきたくない場所」と社員たちが言う。
[その2]不意に差し出された1冊の本日中は電話や来客対応がどうしても多くなる。小島さんが不在のときは、栗原課長や他の社員の探し物にも付きあわされるようになった。必然的に残業をして、事務的な仕事を夜にまわすようになる。ある日、いつものように残業をしていると、田中次長に声をかけられた。「毎日のように残っているけど、大丈夫?一人で抱え込んでいない?」大丈夫だと答えると「慣れてきたら、もう少し効率的になるかな?」その言葉にハッとした。そうか、効率とか考えないで目の前の仕事をただガムシャラにやっていたけど、もっとやり方を考えたほうが良いのかも。とは言っても、何をどうすれば良いだろう……再就職後、はじめての連休。真ん中の休日に優子とランチに行くことになった。優子は高校の同級生だけど、実は高校生のころはあまり話したことがない。卒業してから、共通の友達と3人でごはんを食べたことがキッカケで、距離が縮まった。社交的で友達が多く、しばらく連絡を取っていないと「元気?」ってLINEをくれる。今では2人で会うことも増えた。「久しぶり〜、うゎ、疲れた顔してる!あの会社、大変なの?」会社の人以外と会うのは久しぶりだったから、優子の声が身体に沁み渡った。「まぁね、毎日残業してる。でもだいぶ慣れてきたよ。優子は?」待っていましたとばかりに、優子はカバンの中をゴソゴソ探った。「わたしね、この本を読んで会社のデスク周りとか整理整頓したんだ」
一冊の本が差し出された。「オフィスの整理整頓?優子が?」優子は細かいことが気にならない大雑把な人で、整理整頓とか地味で細かい作業を嫌う。少しくらい散らかっていても死なないでしょ、くらいの人なのだ。「この本に書いてあることをマネしてみたら、劇的に仕事の効率が良くなってさぁ!」優子の口から『効率』という言葉が出てきてドキッとした。「オフィスの整理整頓と仕事の効率って、何か関係あるの?」「ある、ある!もう直結だよ。るいも読んでみなよ」もしかして今が読むタイミングなのかもしれない。だって優子が生き生きと輝いて見えたから。わたしはその本を借りた。本の表紙を飾っている写真は、オフィスという場所の常識を覆すものだった。「これを読めば、こういうデスク周りになるの?」手が勝手にページをめくっていた。表紙の写真と同様、インパクトのある写真がたくさん掲載されている。仕事がしやすそうで、これぞ整理整頓というものばかり。見事だった。でも一番の衝撃は、写真以外の部分にあった。『なぜ整理整頓をするのか、それによって何がもたらされるのか』考えたこともなかった。『散らかっている=悪』と教育されてきたから、わたしにとって整理整頓は、正義そのものだった。だからそのことについて、深く突き詰めたことがない。著者の人柄も手伝って、整理整頓がいかに自分を豊かにするかを、心の奥の奥でかみしめた。もうじっとしていられない。本の中で紹介されていたファイルボックスを、買いに走っていた。
▶︎こんなオフィス、憧れますよね。
[その3]わたしの整理整頓が始まる連休明け、少し早めに出勤して、デスクの上の書類を見直した。「これなんだっけ?」「あ~、価格改定のときのお知らせか。なんで取っておいたんだっけ?」「分かった、ここにじぶんのメモがあるからだ。もう情報古いし。要らないな」じぶんの中で起こる会話にどっと疲れた。でも気がついたら、書類の量が半分に減っていた。わたしは準備してきたファイルボックスを、張り切ってデスクの上に並べた。そして、これからも使う書類だけを収めた。「おぉ〜スッキリ~~!ここだけ輝いて見える!!」どれだけの時間、眺めていただろう。もうウットリだった。「おはよう。今日は早いね」松村係長だ。同じ仕入課の庶務係長(小島さんの直属の上司)で、仕事で関わることが多い。感覚や考え方が似ていて、よく仕事の相談をする。同じ転職組でもある。釣りが趣味で、夏は日焼けをして真っ黒になってくる。「あ、おはようございます。ちょっとデスク周りを整えたくて」「お、ほんとだ、なんかスッキリしたね」予想外の答え、という顔だった。「友達から『オフィスの整理整頓』の本を借りたんです。で、早速実践してみたくて」「整理整頓?へー、そう言えばウチの妻もそんなような本を読んでいたなぁ」松村係長の言葉が終わる前に、わたしは本を差し出した。「お貸しします。ぜひ読んでみてください」そこへ小島さんが、始業のベルと同時に駆け込んできた。
「おはようございます。ギリギリ間に合った~」「……あれ?るいちゃんのデスクの上、なんかキレイじゃない?」そう言ったと思ったら、松村係長が視界に入ったようで「うわっ、松村係長また焼けました?もう焦げているじゃないですか!」「相変わらずギリギリの出社だな。まず息を整えてから話せよ」松村係長と小島さんは年齢が近く、いつも互いをイジり合って楽しそうだった。「子どもが忘れ物をして一緒に取りに戻ったんです。遅刻しちゃうと思って猛ダッシュしたから」汗を拭うヒマもなく席に着く小島さん。心拍数がまだ下がっていないのが伝わってくる。「朝から賑やかだな。よし朝礼やるぞ~」栗原課長の一声で、通常の業務が始まった。デスクの上を整えたわたしは、次に引き出しの中や、パソコン内のデータの整理も始めた。パソコンは、本当なら共有フォルダにファイルを格納しなくてはならないが「とりあえず」と、ついデスクトップに置いてしまう。言い訳のようだが、共有フォルダ内があまりにも無秩序で、積極的に活用したいと思えない。そんな中に放り込んだら、埋もれてしまって探す手間が増えるだけだ。しかし、いつかは誰かが着手しなければいけない。隣の受注課1係の共有フォルダ内が完璧に整っているのを知っているから、実は焦りもある。これだけ整備されていたら効率的に仕事ができるだろうと想像ができ、密かに羨ましく思っていた。ただ、ここに着手するのは非常にハードルが高い。だから今は一旦、自分が関係する業務のフォルダだけを軽く整えた。これだけでもデスクトップから無数のファイルが無くなり、とてもスッキリした。優子に借りた本に書いてあった通り、整えたことで効率がよくなったと思うし、考え方やモチベーションが明らかに変わった。ほんとうに快適で仕事がスムーズだった。もっと正確に言うと、今までの状態が当たり前で何も疑問はなかったけれど、快適になったことで、実は今までの状態が非効率だったんだと気がついた。
慢性的にしていた残業も、忙しいときだけ残るというメリハリがついてきた。身の回りが整ってきたので、今は共有の棚にある担当業務の書類に着手している。ここが整えば、かなり効率アップが期待できる。松村係長も本を読んだそうで、面白かったと言ってくれた。手軽にできそうと感じたことを早速やってみたら、書類を探さなくなったと喜んでいた。それで共有の棚の整理も、今手伝ってくれている。
▶︎ファイルボックスを使って、日常的に使う書類を整頓した様子。インデックス付の”仕切り板”を挟むことで、探さないし、しまいやすい。
[その4]会社の整理整頓へ発展!?その日は月初の業務がひと段落したので、松村係長と作戦会議をしていた。そこへ田中次長が、明らかにご機嫌なオーラを放ちながら近づいてきた。「2人ともデスク周りがキレイになりましたね。残業している姿を見ることも減った気がしますよ」「友人に借りた整理整頓の本を読んで、実際に取り入れてみたんです。松村係長も興味を持ってくれたので、共有棚の整理整頓を手伝ってもらっていました」すると田中次長。少年がいたずらを思いついたような、キラっとした瞳で話しだした。「実はわたしが課長のころ、5S※の導入を当時の次長に提案したことがあって……。その当時から事務所はこんな感じでしたからね。絶対効率が悪いだろ!とずっとモヤモヤしていました」田中次長は話しを続けた。「でも全く取り合ってもらえなくて、提案書だけが今も虚しく残っているんです。だから2人がその気なら、このカスタマーセンター全体の整理整頓活動を、今しっかりやりたいと思っています。そのリーダー役をやってみませんか」※5Sとは整理・整頓・清掃・清潔・しつけの頭文字。企業の環境改善として注目されている。正直、こんな大きな話しになるなんて思っていなかったし、入社1年目でそんな大役……仕事でありつつ、趣味のように楽しめていた部分もあったから、これまで取り組んでこられたけど、カスタマーセンター全体となったらそうはいかない。一瞬譲り合うような沈黙があったあと、松村係長が言った。「自分の担当書類を整えたら終えるつもりだった?石井さんのことだから、受付カウンターも、文具や備品も、ってどんどん気になるんじゃない?」たしかに……。まさにその辺りは、とても気になっていた。「失敗したとしても、きっと今より事務所はキレイになるよね。逆にこのチャンスを逃すほうがもったいないよ」「わたしにできるかな?」「また残業が増えちゃうな」など、いろんな感情が渦巻いて混乱したけど「やってみたい!」が優位であるのは自覚できた。逆に1年目だからこそ、できることなのかもしれない。この環境に違和感を持っている今だからこそ。「焦げた顔して、良いこと言いますね」って小島さんなら言うかな、と思いながら松村係長の顔を見た。そして引き受けることに決めた。
こうして、わたしがリーダーとなり、松村係長が補佐役で、正式にカスタマーセンターの整理整頓活動が始まった。ですが、全員の気持ちが同じほうを向いている訳ではなかった……最初に抵抗を見せたのは、栗原課長だった。役職者には田中次長から先に説明をしたそうだが、そのときひどく反発していたと聞いた。「個人レベルで身の回りをキレイにすることに口を出す気はない。どうぞご自由に。でも、それを全員に強要するのは賛成できない。完全に業務外の仕事だ。雑然としているように見えても、本人はどこに何があるか把握できていて、その状態が良いという人だっている。共有の場所だって、昔からこうしてきて、これにもう慣れきっている。下手に変えられると業務に支障が出る」栗原課長らしからぬ興奮っぷりで、加速した勢いは止まらなかったそうだ。「皆んな、日々の業務で手がいっぱいだ。残業もしている。どこに整理整頓なんかに費やす時間があるんだ。そんな時間があるなら休ませてほしい。あるいは別の手当てでももらわないと割に合わない。わたしなんかは老体にムチを打って仕事しているんだ」いつもはおやじギャグを飛ばして、笑わせたり、しらけさせたりする、陽気な58歳の栗原課長。デスク周りは書類で溢れていて、そこに手をつけるのは大変な作業になるだろう。このまま2年後の定年退職を迎えたい気持ちも分かる。でもまさか、そこまで抵抗するとは思っていなかった。わたしたちが身の回りを整えていたときも「頑張っているな!」なんて声をかけてくれていたのに。
▶︎こんなデスク周りだと、たしかに作業は大変かもしれないけど……
[その5]思わぬ大反発に、続く小反発最終的に、田中次長が栗原課長を説得したそうだ。5Sを導入している会社のオフィス写真を見せ、それによって経費削減を実現したこと、さらに売上もあげている事例を紹介したらしい。そして「若い社員が頑張ろうとしていることを応援しよう」と。理解はしたものの納得はしていない様子の栗原課長。まだ燻っているのが見て取れる。「栗原課長が管理している後ろの棚ですが、わたしたちには判断できない書類なので、一度ご確認をお願いしたいです」わたしがそう言うと「はいよ」と、パソコンから目をそらさないまま、空返事が返ってきた。この会話を終わらせるためだけの返事であることは明らかだった。つい、ため息が漏れる。その様子を自席から見ていた松村係長が、黙ってうなずいて見せた。「焦らず長い目で取り組もう」きっとそう言ってくれたのだろう。「あ、小島さん、今大丈夫ですか?」湯気のたつコーヒーカップを、ふーふーしながら席に着こうとしている小島さんに声をかけた。「うん、大丈夫だよ」この時点では、いつものやさしい小島さんだった。「この前、田中次長からも説明のあった、カスタマーセンターの整理整頓について相談があって。小島さんの担当業務に関する書類が、柱側にあるキャビネット2つに入っていますよね。あそこの整理をお願いしたいんです」「整理って何をすれば良いの?あの状態で整理しているつもりなんだけどな」小島さんの表情が少し歪んだのが分かったけれど、続けた。「古い書類が多いと思いますが、見ることってありますか?事務所の中央の位置に置かれていますが、ここにある必要ってありますか?」小島さんの答えを待っていると
「小島さん、3番にお電話です」「今日もきたか……。るいちゃん、ちょっとごめんね」小島さんは受話器を取った。「あ、ごめんなさい!今日はおばあちゃんの家に帰ったんです。連絡するのを忘れていました、申し訳ありません。え、携帯に?気がつかなかった。お手数おかけしました……」小島さんには小学1年生の男のお子さんがいて、夕方になると、小学校や学童保育所、習い事の先など、いろんなところから頻繁に電話がくる。そして、そのほとんどに詫びている。詳しくは分からないが、グレーゾーンというものらしく、いろんな意味で少し凹凸のあるお子さんらしい。電話を終えた小島さんは、下を向く髪の毛に隠れて表情は見えなかった。けれどパッと顔をあげて「るいちゃん、ごめんごめん、書類の話しね」小島さんの中で、母から仕事をする人に、スイッチを切り替えたのが分かった。一瞬の間があってから、「るいちゃん……。るいちゃんや松村係長にはほんと申し訳ないんだけど、正直、積極的にその活動に関わる余裕がないの」疲れた顔の中にイライラを隠しながら、小島さんは続けた。「目の前の業務をこなすことだけで精一杯なんだよね。しかも残業をしてやっと。ほんとは残業しないで子どもの迎えに行きたいけど、それもできないでいるのが現状なの。るいちゃんたちの足を引っ張らないよう努力はするけど、わたしにあまり期待しないで」そして冗談っぽく、だけどきっと本音で「今のままで良いとは言えないけど、ずっとこれで成り立ってきた訳だし……このままでもアリなんじゃない?」栗原課長だけでなく、小島さんからも。この二人から抵抗されるのは予想外すぎて、ショックが大きかった。
▶︎全員で同じ目的意識を持って進むって難しいんだな……。こんな状態でも成り立っているなら放置で良いの?
[その6]捨てる神あれば、拾う女神ある!?わたしたちの活動は完全に停止した。業務が忙しいというのもあるが、快く協力してくれると思っていた栗原課長と小島さんの抵抗が響いていた。優子にあの本を借りたときの高揚感が、今はない。松村係長も忙しいことを理由にしてくれているが、わたしの本音を察してくれているのだと思う。田中次長も停滞している様子を知りつつ、発破をかける意味で近況を聞いてくる。このところ遅くまでの残業が続いていたわたしは「今日はほどほどで帰ろう」そう思って帰り支度をはじめた。そのとき、京子さんが近寄ってきた。京子さんは受注課1係のクールビューティな先輩。業務に関すること以外で話したことはない。絵に描いたような『仕事ができる人』で、彼女の身の回りも、立ち居振る舞いも、全てにおいてムダがない。正直なところ近寄りがたい存在なので、ちょっと緊張した。「お疲れさまです。残業なんて珍しいですね」「例のメーカーの欠品のことでね。今受注課は悪い意味でお祭り状態」京子さんはそう答えると、ムダな会話はしないとばかりに本題に入った。「カスタマーセンター全体の整理整頓活動、煮詰まっているの?」オブラートに包まれることはない、ストレートな質問だった。「はい、この通り残業続きで。なかなか……」言い訳だと見透かされているだろうと思いながら答えた。「わたしの知人が社長をやっている会社なんだけど、5S活動に力を入れているの。会社見学させてくれるらしいけど、行ってみる?」突然のこと過ぎて一瞬内容が入ってこなかった。でも無意識レベルで「はい、ぜひ行きたいです」と答えていた。
シミズのカスタマーセンターから、車で2時間ほどかかる街にその会社はあった。田中次長、松村係長、京子さん、わたしの4人で訪問した。小島さんも誘っていたけれど、お子さんのクラスでコロナ感染者が出て、学級閉鎖になったためお休みとなった。会社の玄関に入った瞬間「え、きれい!」と思わず声をあげてしまった。オフィスはどうなっているのか、案内を待てずに中を覗き込む自分がいた。オフィス内はとても明るかった。それは陽の光や照明のせいではない。そのときに思い出した。面接や入社の日、カスタマーセンターに感じた『暗さ』を。こういうことなのか!社長の森本さんはとても穏やかな人で、5S活動を取り入れた経緯や、その効果をとても丁寧に話してくれた。目標としたのは『お客さま第一の社内改善』だったそう。その結果、今では「森本さんの会社みたいにしたい」「こんなキレイな会社さんに仕事をお願いしたい」とお客さまに言われるそうだ。オフィス以外にも倉庫やトイレなど隅々まで見学させてくれた。社員じゃなくても、どこに何があるか分かるくらい整理整頓されている。「以前は、勤務年数の長い社員にしか分からないことが多かったんですよ。その社員が不在のときは、わざわざ電話して聞いたりなんかして。その非効率な状態を何とかしたいとずっと思っていたんです」森本さんは、やさしく続けた。「うちの会社もそうでしたが『なんとかしなくちゃいけない』これは社員の皆んなが、口に出さなくても意識の中にあると思うんです。もし思い悩んでいるんだったら今やりましょう。まずはカタチから入ってみてください」優子から借りた、あの本を読んだときと同じ気持ちになった。実際の5Sの様子はとても参考になり、見習いたいことばかり。でも一番心に響いたのは、目に見えない部分に対してだった。オフィスの明るさや清潔感、森本さんの考えや思い。そして、それを伝えるやさしい言葉選び。なぜ整理整頓をするのか、それによって何がもたらされるのか。今一度考えようと思った。「カスタマーセンターもあんな風にしたい!」帰りの車中でも興奮が止まらなかった。
「小島さんにも見せたかったね」松村係長の言葉で、夢から現実に戻った。そう、栗原課長や小島さんにも見てほしかった。たくさん写真を撮ったから、それを見てもらおう。そうしたらきっと理解してくれる。そう願いながら帰社した。
▶︎文房具のストック事例。スペースもストック数も必要最低限にしている(森本さんの会社モデルの事務所)
[その7]動き出す、まずはカタチから栗原課長も小島さんも、積極的に写真を見てくれた。小島さんは見学に行けなかったことをとても残念がっていた。「オレも後ろの棚の書類、整理整頓するか」栗原課長はパソコンから目を離し、わたしたちへ見直ってから、いつもの陽気な感じで言った。「で、リーダーたちの進捗状況はどんな感じなの?」栗原課長に聞かれて、言葉に詰まった。「森本さんの会社のように明るく清潔にしたい、と思っているのですが、どこからどう着手すれば良いか……。これから松村係長と相談します」すると横からクールな声が入ってきた。「まず今困っていることを洗い出さないと。その上で、それをどう改善したいか考える。オフィスの平面図を手書きでいいから描いてみるといい。改善点が分かりやすくなるから」「え、京子さん、なんでそんなスラスラと!」驚いて思わずタメ口になった。「前の会社が5Sを導入していたの。いろいろやらされたからね。言いそびれていたけど、森本君はそのときの後輩だから」さらに驚いていると、クールな京子さんがよりクールな口調になった。「森本君も言っていたけど、カタチから入るのは大事だよ。そして、この活動をやるにはトップが決意しないとできない。森本君は早くに決意していた。ウチも田中次長の意志が固いから大丈夫だよ。いろいろ摩擦もあるかもしれないけど、大丈夫!」京子さんの「大丈夫」という言葉に泣きそうになりながら「動き出そう、今ならできる!まずはカタチから」そう強く思えた。そして、京子さんにアドバイスをもらいながら、停止状態だった整理整頓活動が再スタート。わたしたちも行きついたのは、お客さま目線だった。『お客さまを待たせない。来客への対応がスムーズにできるオフィス』もちろん効率的に仕事をすることも重要なので、近年、様々な業種で採用されているフリーアドレス※にすることも視野に入れている。
※フリーアドレスとはオフィスの中で個人の席を決めずに、ノートパソコンなどを活用して自分の好きな席で働くワークスタイル(オフィス空間を有効活用でき、部署を超えたコミュニケーションが取りやすくなる)そういう仕様に変更もできるよう、デスクは引き出しのないタイプに買い替えることになった。その代わりに個人ロッカーを導入して、パソコンや今まで引き出しに入れていた個人のモノをしまえるようにする。そのほかにも、不要な書類や、古くて使い勝手の悪い収納什器を処分することになった。買い替える物が明確になり、年度内の予算で購入することが決まる。すると必然的にレイアウト変更の実施日が決まり、その日に向けて書類や備品の見直しが始まった。ここまでくると、各々も覚悟が決まった様子で、栗原課長は休日出勤をして書類の整理をしたそうだ。でもあとから言っていた。「課長という立場でなかったら、もっと抵抗したかった」と大笑いしながら。小島さんは、なかなか着手できないでいた。レイアウト変更の2日前になって、やっと個人の持ち物の整理を始めていた。引き出しの中からは、賞味期限が過ぎたカピカピのひよこが出てきたり、失くしたと思っていた備品の取説が出てきたり、盛りだくさんの様子。「これ食べます?」と松村係長にひよこを差し出し、「それ、俺の東京出張の土産だろ!」と怒られ、2人にとっての気分転換が楽しそうだった。そしてレイアウト変更日の前日の夕方に、やっと庶務係として担当している、備品や文具などの共有スペースに着手していた。庶務係の3人と、わたしも手伝って、最終の電車までになんとか終えた。
▶︎掃除用具(左)備品(右)。扉を取り外し一目瞭然(森本さんの会社モデルの事務所)
[その8]目に見える変化と効率アップレイアウト変更当日。誰よりも先に作業着に着替えてスタンバイしていたのは栗原課長だった。「よ~し、何から始めればいい、リーダー」「ちょっと待ってくださいよ。落ち着いてください」松村係長が栗原課長をなだめている横で、田中次長も作業着と軍手姿で指示を待っていた。松村係長は仕切り上手なので、この日の監督をお願いした。1階の事務所のレイアウト変更のほかに、給湯室、3階の書庫と資料室も、不要なものを処分し、整理整頓するスケジュールだった。わたしは作業部隊の中で、昨夜の残業で死にそうな小島さんと、どんなときでもクールビューティな京子さんと一緒に、3階の書庫と資料室を担当した。松村係長の見事な采配で、全ての社員が参加しレイアウト変更は無事に終わった。コロナ禍でなければ打ち上げをしたいところだが、そこはぐっとガマンガマン…翌日からオフィスの景色が変わった。目標としていた『お客さまを待たせない。来客への対応がスムーズにできるオフィス』がついに実現。受付カウンター周りが見違えるほど変化した。実際にお客さまを迎えると、その効果をさらに実感することとなる。今まではお客さまにお渡しする書類が、受付カウンターから少し離れた場所にあり、10歩〜20歩ほど歩いて取りに行っていた。それから「この辺だったかな?」と目的の書類を探す。5秒くらいで見つかるものもあれば、たまにしか出番のない書類には20秒ほどかかることもあった。そしてまた10歩〜20歩かけて受付カウンターに戻る。時間にすると30秒程度ではあるが、待たされるほうの体感はもっと長く感じるだろう。また、仮に10組のお客さまにこの対応をした場合、30秒×10組は5分のロスになる。
今までこうやって、何も価値を生まない非生産的な動作に、1日何分も費やし、お客さまを待たせてきた。今回のレイアウト変更では、受付カウンターの真後ろに、頻繁に使う書類棚を移動したため、振り返って1歩足を出すだけで済む。また棚の引き出しのラベルを、色と文字で探さない工夫をして、すぐに取り出せるようにした。その結果、お客様をほとんど待たせることがなくなった。変化に気がつくお客さまもいて「スッキリしましたね」と声をかけてもらえることもあった。ほかにも、複合機とコピー用紙を離れたところに置いていたが、側に置くよう配置換えをしたことで、用紙の補充にもムダな歩数と時間を費やさなくなった。
ただ、最初の2週間くらいは「あの書類はどこにいった?」「あの備品は捨てたのか?」など、あっちこっちから声がかかり、なかなか仕事に集中できなかった。このような課題はまだまだあるけれど、とりあえず今は達成感で満たされている。森本さんも京子さんも「これで終わりではない。ここから少しずつ改善を繰り返していくんだ」と教えてくれた。そして、今回の整理整頓活動で驚いたのが『処分のコスト』。備品などの処分にコストがかかるのは覚悟していたけれど、書類に対するコストを甘く見積もっていた。正確には、予想をはるかに上回る書類がゴミとなった。これは本にも書いていないし、森本さんからも聞いていなかったことなので、経験することで得られたこと。このことは今後のデジタル化を真剣に考える機会になりそうだ。
▶︎過去数年分の書類を見直し、処分を決めた
[その9]デスク映えからの定時退社レイアウト変更から8ヵ月が経った。まだ配置が定まっていないモノがあったり、未だに「あの書類はどこにいった?」と聞かれることもある。これは少しずつ改善していくとして。効果も出てきている。カスタマーセンター全体で、明らかにムダな事務作業が減った。窓口カウンターと同様に、モノを取りに行ったり探し物をする時間である。ムダな動作が、ちりも積もれば山となっていた証拠だ。働く環境が改善したことで、各々の考え方やモチベーションも変わったように見受けられる。それによりコミュニケーションが増え、ケアレスミスが減ったようにも思う。そして、終業時には全員がデスクの上のモノをロッカーにしまって帰る。これが見事に定着した。そのときの事務所の景色は圧巻で、まさに『映え』ていた。庶務係に丸投げだった共有スペースも、ひとりひとりがキレイに使って戻すことを意識するようになった。変化があったのは、もちろん、あの人たちも。まず栗原課長。小島さんやわたしを呼ぶ回数が減った。そう、探し物をしなくなったのだ。栗原課長の探し物に付き合わされ、仕事の手を止めることが無くなった。でもおやじギャグは健在で、いやパワーアップして、違う意味で手が止まることは続いている。そして一番変わったのは、小島さん。いつもデスクの上には、書類が山積みになっていたのが、今は進行中の書類しか載っていない。ファイルの方法を少し工夫したら、溜めずに直ぐ綴じるようになったそうだ。また、処理を忘れないようにと、何でも目に入る場所に置いていた書類を、優先順位をつけて色分け保管をするようにしたら、デスク上の山が消えたとのこと。同様にパソコン内のデータも、庶務係の共有フォルダを整理。保管ルールを決めるなどの工夫により、どんどん仕事を早くこなせるようになったと言う。
その結果、働き方に大きな変化が!お子さんの迎えを家族やシッターさんなど誰かしらに頼み、平日3〜4日は残業、加えて土日のどちらかも出勤していた。それが今は週に1日、多くても2日、平日の残業だけで済むようになった。そのビフォーアフターの残業時間を比較すると、なんと7割も減ったというのだ。でも実はこれ、小島さんだけではなく、わたしや松村係長、ほかの社員も同様で、カスタマーセンター全体では平均6割減を達成した。定時で退社できるようになった社員が続出しているのだ。これは単に探す時間やムダな動作が減っただけではなく、整理整頓を日々意識することで、判断力がついた結果であった。モノの要る要らないを判断しているうちに『決断』が早くなり、必然的に仕事(の判断)も早くなったから、このような結果を生み出せた。定時で退社できる日が増え、お子さんを自分で迎えに行けるようになった小島さんは、夕方の電話に詫びることが減った。うまく両立できるようになって安泰かと思っていたが、次の3月で退職すると聞いて少し驚いた。「会社には優秀なるいちゃんや松村係長がいるし、わたしの今の業務は誰にでもできると思うんだ。でも、あの子の母はわたしだけだから」小島さんは続けた。「今回のような成功体験を、今度は子どもと一緒にゆっくり成し遂げてみたいと思ったの。今そうしないと、母としての人生をきっと後悔しちゃうから」そして「家の中も、だいぶぐちゃぐちゃなんだ。だから今度は自宅の整理整頓をして、効率よく家事ができるようにする。そして子どもとの時間を目一杯楽しめるように、頑張ってみる」そう言って笑っていた。
▶︎どちらの『デスクトップ』も収納場所ではない。だからモノは置かない。
[その10]明るい会社と充実した日々今日も京子さんは変わらずクールビューティ。今回の活動のおかげで距離が近くなり、お茶目な一面も知るようになった。でも油断するとムダな会話をバシッと切られるので、緊張感を持ちつつ、今もアドバイスをもらっている。田中次長はずっと5S活動を推進したかったから、やっと点と点が線になったと喜んでいる。まだある課題に対しては、やはり近況を聞くカタチで発破をかけてくれる。ありがたい。松村係長と、わたし石井るいは、この活動を常に気にかけつつ、業務が忙しくて、いっときほど時間をかけられずにいた。先日、外勤から戻った松村係長と、2階の会議室から戻ろうとするわたしは、オフィスの前で偶然会った。「お疲れさまです。本社で会議でしたっけ?」「そう、あのメーカーの件でね。そうそう、総務課長にオフィスのこと褒められたよ」久しぶりに整理整頓活動の話題になった。「頑張った甲斐がありましたよね。2年前の暗くて重い空気感がもう思い出せないです」「あ、やっぱりそう思っていた?ボクも入社したときは、あの暗くて重い感じがイヤだったよ。お客さんに指摘されたこともあったよね。今は空気ごと清潔感が出たよね」カスタマーセンターを『暗い』と感じていたことは、あえて松村係長と話したことはなかったけれど、同じことを思っていたんだな、もう2年前かぁ。そんなことを考えながら自席に戻った。ちなみに今、わたしを忙しくさせている業務は、ニュージーランドの企業との取り引きだ。整理整頓の話しばかりだったけど、英語を活かした責任のある業務をさせてもらっている。忙しくて残業が続くこともあるけど、以前のようにただガムシャラに非効率な、ムダな残業はしていないと自負している。整った快適な環境の中で、英語を活かして仕事ができるって最高に楽しい。1冊の本を読んだことをキッカケに、1人で勝手に始めた整理整頓活動が、こんなカタチを成していくことは想像していなかった。
効率的なオフィス、社員ひとりひとりの新しい考え方や習慣、社員間やお客さまとのより良い関係性。改めて振り返ると、夢のような事実だ。誰かの役に立てたこと、そしてこの達成感は理屈抜きで嬉しい。何か大きな目標を立てて動き出したのではなく、自分のために目の前の小さなことをやっていたら、いつの間にか会社に小さな『さざ波』が立ちはじめていた。その『さざ波』を大きくしてくれた先輩、上司たちの背中。途中ちょっと苦い思いをした経験。それらは大きな教訓として魂に刻まれた気がする。人として、社会で生きる者として、何よりもわたし自身が一番『整った』と思っている。導かれるように再就職した、この会社には何か強い縁を感じる。優子にもほんと感謝だな。わたしの成長の場となった、この会社は、株式会社シミズという。きっとこれからも、シミズとシミズの人たちと成長していくだろう。
あとがき最後まで読んでくださりありがとうございます。かなり脚色をしていますが、シミズのモデルとなった会社は、今とてもキレイに整っています。組織全体が変わることは簡単なことではありませんが、挑んだ先には挑んだ者にしか見えない景色があります。その景色を得ることで、会社としても、個人としても、必ず利益が生じます。会社なら、売上アップ。キレイな会社はお客さまから選ばれます。信用されます。また、コストダウンも実現します。在庫過多を防げたり、人件費の削減につながった会社もあります(社員1人あたりの月平均残業時間が減った)。社員の皆んなで話し合いながら進めたことで、チームワークがより良くなった事例もあります。個人なら、効率よく仕事ができるようになったことで、残業が減り、心にゆとりができ、そして疲れにくくなったと話している人がいました。そんな余裕はプライベートも充実させます。趣味の時間や家族との時間が増える。そうなるとご家族からも喜ばれるそうです。これらは全て、多大な経費をかけたとか、特別なソフトを導入したなどではなく、整理整頓という誰にでもできる行動を促したことで得られたのです。最初は小さな変化かもしれません。しかし、考え方やモチベーションが変わったり、判断力が養われることでどんどん加速していきます。ひいては人生そのものにも良い影響が出てきますから、そんな自分を楽しみに挑んでほしいと思うのです。実際に変化をとげられた人たちを、近くで見てきたわたしが言うのですから、どうぞ信じてみてください。もし目の前の雑然とした光景にモヤモヤしているなら、石井るいさんのように、自分一人からでも実践してみてください。「20%の人が変わると組織は動く」と言われています。あなたひとりが変わることは組織を動かす一手となります。ドミノ倒しのように、あなたの手からオフィスに整理整頓が広がっていくことを願っています。最後に、これはある方の本に綴られていた言葉です。『明日を変えるためには、今日を変えるしかない』
いくつになっても成長はできます。今日を変えることで「自分もこの歳になって少しは成長できたなぁ」なんて、自分のドラマの1ページが増える。もしも本書がそこに一役買えるなら、とても嬉しいです。最後まで読んでくださったあなたへ、プレゼントがあります。■プレゼントオフィスの整理整頓チェックシート(スプレッドシート)効率的なオフィスを維持していくためのチェックシートをご用意しました。あなたのオフィス用にカスタマイズしてお使いください。プレゼントの受け取りは、LINE公式アカウントからお願いします。心をこめてお送りいたします。[プレゼント受け取りの手順]①こちらをクリック②ラインで開く③『追加』をタップ④『トーク』に「シート」とだけ入力して送信(「」も不要、文字の前後にスペースも入らないようご注意ください)これであなたのトークにプレゼントが届きます。■掲載写真の協力㈱北日本消毒さま、ほか3社(モデルの会社ではありません)
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