はじめに片づけの心理法則で「人生の大逆転」が起こる!世の中には、幸福な人と、そうでない人がいます。いったい、両者の間にはどんな違いがあるのでしょうか?生まれ持った才能や環境の違いもあるでしょうが、実は、それよりもはるかに重要で決定的な違いがあります。それは、限りある時間やお金、体力や注意力といった自分のリソースを、人生において達成したい目標に集中できているかどうか、です。散らかった部屋の中で「あの書類、どこへやったっけ?」と探しものをしたり、毎朝ぐちゃぐちゃのクローゼットを開けて着ていく服に迷ったりしていたら、やりたいことをやる時間はどんどん減っていきます。散らかった環境の中で作業をしても、人間は集中できないのです。仕事で成果を上げることも、新しいことを学ぶことも難しいでしょう。どうでもいいモノであふれた環境で暮らしていると、しだいに自分がどんなモノを求めているのかわからなくなり、大切なお金を無駄遣いすることにもなります。幸福になりたければ、限られた人生を本当にやりたいこと、本当に大事なことに集中するべきなのは当然です。それを邪魔しているのが、多すぎるモノや情報であり、それらが取り散らかった環境です。だからこそ「片づけ=自分のリソースを目標に向かって集中できる環境をつくること」は、あなたが幸福になるために必須の作業なのです。片づけは、大切なことに使える時間やお金、体力や注意力を最大化します。これを言い換えれば、自分の人生を思い通りに操れるということです。片づけで自分を取り巻く環境をつくり変えれば、幸福な「人生の大逆転」が起こるのです。たとえば、英語を身につけて転職しようと決意した人が2人いるとします。1人は片づけられない人、もう1人はいつも片づいた環境を保てる人です。片づけられない人が仕事から帰ると、待っているのは散らかった部屋です。足の踏み場もない床、物置と化したデスク、流しは食器であふれそう……。こんな環境で、英語の勉強をする気になれるでしょうか。散らかった部屋を見ているだけでぐったりして、「今日は疲れたし、勉強は明日から」と思ってしまわないでしょうか。一方、片づけられる人はどうでしょう。帰宅すると、きれいに整頓されたデスクを中心とした居心地のいい環境が待っていて、すぐに勉強に集中することができるのです。同じように「人生を変えよう」と決意した2人のうち、どちらに幸福な変化が訪れるかは明らかです。片づけが人生を変えるとは、こういう意味です。もう一度、確認しておきましょう。本書は、部屋がきれいになることをゴールにした本ではありません。片づけることによって、人生を最大化し、幸福を手に入れるための本です。この目的からすると、片づけに多大な労力を取られるのでは本末転倒です。したがって、一度片づけたら、二度と元に戻らない片づけの技法を伝授します。すべてのノウハウに心理学や脳科学をはじめとする科学的根拠があることは、これまでの私の本と同様です。本書の展開と内容を、ここで簡単に説明しておきます。■第1章自由な時間が増える!片づけの基本・3原則最初の章では、無理なく片づけができるようになる3つの心理学的原則を説明します。基本的な考え方を知らずに片づけにとりかかることは、無駄な努力の元であり、挫折の原因です。この章で、①3択の原則②初速最大化の原則③ローコスト管理の原則という3つの原則を通じて、片づけとは何なのか、なぜ人生を最大化できるのかをしっかりと理解してください。■第2章心理的片づけで得られる5つのメリットこの章では、片づけによって得られるメリット=人生の最大化を、より具体的なイメージで説明します。なかなか片づけのモチベーションがわかない、という人は、この章から読んでみるのもいいでしょう。■第3章迷わずに捨てる!モノが勝手に減っていく7つの質問この章から、いよいよ本格的なテクニックの伝授に入っていきます。片づけの最大の障害である「なかなかモノが捨てられない」というマインドを一瞬で変える思考法を7つ紹介します。これを実践することで、家の中のいらないモノは一掃できるはずです。
■第4章これで二度と散らからない!毎日の片づけ習慣7いくら家の中がきれいになっても、それを維持するために多大な時間と労力がかかる方法では意味がありません。この章では、いったん片づいたら、二度と片づけをしなくて済むようになる日常の習慣を伝授します。■第5章理想の部屋をつくる!エリア別・片づけの鉄則5この章では、ここまでに紹介した片づけの技法を応用して、「デスク」「カバン」「クローゼット」「収納」という場所に特化したテクニックを紹介します。特に片づかなくて困っている場所がある人におすすめです。■第6章スケジュールの片づけ時間を最大活用する7つのテクニック本書の目的は、人生の最大化です。ゴールは部屋がきれいになることではなく、本当にやりたいこと、大事なことに人生のリソースを集中することです。そこで、ここまでに学んだ片づけのテクニックを時間管理にも応用しようというのがこの章です。ある意味では、片づけで人生を変えるための最終ステップを学ぶのがこの章だといえるでしょう。■第7章迷わない人生を生き、人生を最大化する8週間プログラム最終章では、本書のやり方にしたがって、8週間で人生を変える片づけのモデルプランを紹介します。この本で学んだことをどう実践するか、具体的なガイドとして役立ててください。これまで片づけを苦手としてきた人にこそ、本書に紹介する「正しい片づけ」を実践したときの効果は劇的です。人生を変える最後の片づけを、さっそくはじめましょう。メンタリストDaiGo
人生を思い通りに操る片づけの心理法則目次
はじめに片づけの心理法則で「人生の大逆転」が起こる!第1章自由な時間が増える!片づけの基本・3原則Introduction片づけの「本当の目的」とは何か?原則1片づけで人生の迷いがなくなる!「3択」の原則原則2とりかかるまでの時間を最短にする「初速最大化」の原則原則3時間があふれだす!「ローコスト管理」の原則第2章心理的片づけで得られる5つのメリットIntroduction片づけで、人生はどのように変わるのか?メリット1片づけで「よりよい未来」が選べるメリット2片づけで頭脳労働に集中して「価値ある仕事」ができるメリット3片づけで「いいモノ」「大切なモノ」を使いやすくすると幸福度がアップするメリット4片づけで「空間+時間+気持ち」のゆとりができるメリット5片づけでコンパクトに生活し、「居住環境」を思いのままに選択する第3章迷わずに捨てる!モノが勝手に減っていく7つの質問Introduction捨てられない人は、どうすれば捨てられるのか?
質問1「いったん捨てたとして、これを買い直すか?」本当に必要なモノがわかる(買い直し思考)質問2「長期旅行に持って行きたいモノか?」必要なものを自然に選べる(トラベラー思考)質問3「誰かが買ってくれるとしたら売るか?」売ってもいいなら不要品(ネットオークション思考)質問4「あの日に戻れたとして、やはりこれを買うか?」購入日にさかのぼって考える(タイムトラベル思考)質問5「お金が無限にあったら、本当にこれを買うか?」無駄なモノを買わない(大富豪思考)質問6「これを何回我慢すれば、ほしいモノが買えるか?」我慢がつらくなくなる(ほしいモノ変換思考)質問7「3年、5年、10年経っても必要か?」いったん過去にさかのぼり未来を見通す(ロングスパン思考)第4章これで二度と散らからない!毎日の片づけ習慣7Introduction二度と片づけなくていい部屋をつくるには?習慣11イン2アウト習慣2一日一与習慣35秒以内に元に戻せるルール習慣46割収納ルール習慣5数量限定習慣6写真暗示習慣7自然に片づく小技の活用第5章理想の部屋をつくる!エリア別・片づけの鉄則5Introduction気になる「あの場所」の片づけ方は?鉄則1仕事・勉強がはかどる
「デスク」整理鉄則2開けた瞬間に超集中!最強の「カバン」整理術鉄則3意志力を最大化する「クローゼット」のルール鉄則4自然とモノがなくなる「収納」の選び方鉄則5二度と散らからないための「買い替え」のコツ第6章スケジュールの片づけ時間を最大活用する7つのテクニックIntroduction人生を最大化する「時間の管理法」とは?テクニック1「午前のアポ」「午後の集中」を捨てるテクニック2時間の「使いみち」を先に決めるテクニック3疲れの元凶「やり残し仕事」をなくすテクニック4マルチタスクの「ながら状態」を脱出するテクニック5スケジュール帳を「真っ白」に近づけるテクニック6スケジュール帳に「評価」を記録するテクニック7「時間」より「行動」の管理にフォーカスするColumnGTD――「やり残し」「やりかけ」を速攻処理するテクニック第7章迷わない人生を生き、人生を最大化する8週間プログラムIntroduction「人生が変わる8週間」を体験しよう!第1週→第2週
自分を見つめる第3週→第4週モノを絞って生活してみる第5週→第6週いらないモノを捨てる第7週→第8週新しい人生を味わい、挑戦するおわりに何もない場所で感じ、考え、楽しむことの大切さ
第1章自由な時間が増える!片づけの基本・3原則
Introduction片づけの「本当の目的」とは何か?片づけをしよう、と決意したものの、いったい、どうやって片づければいいのかわからない……。片づけができないという人は、たいていの場合、このスタート段階で足踏みしているのではないでしょうか。この足踏み状態から実行に踏み出し、しかもうまくやってのけるには、まずは「片づけとは何なのか」を知る必要があります。片づけには当然ながら目的があります。その目的を達成できなければ、時間と労力をかける意味はありません。何のために片づけをするのかといえば、自由な時間を増やし、人生を最大化するためです。クローゼットの中の服を減らせば、「どっちの服を着ようかな?」と迷う時間はなくなります。部屋が片づいていれば、「あれ、どこにしまったっけ?」と探しまわる時間もなくなるでしょう。服がたくさんあればクリーニングに出したり、洗濯したり衣替えをしたりといった時間が余計にかかります。小物を棚に陳列し、ときどきホコリを取ってやるメンテナンスの時間も馬鹿になりません。こうした管理コストも、モノを減らせば必要なくなります。迷う時間、モノを探す時間、管理する時間を減らして、そのぶん自分がやりたいことを実現できるようにする。これが片づけの本当の目的なのです。ですから、部屋の中が整ったように見えても、片づけが成功したとはいえません。自由な時間が増えなかったり、かえってメンテナンスのための時間や労力が増してしまったりするような片づけに意味はないのです。家の中はきれいに見えるけれど、その状態を保つために毎日掃除ばかりしている、という生活を送りたいとは誰も思わないはずです。では、自由な時間を増やし、人生を最大化するための片づけは、どうすればできるのでしょうか。原則は3つです。①「3択」の原則②「初速最大化」の原則③「ローコスト管理」の原則この3つのルールを意識して片づけをすれば、収納や整理、掃除といった具体的な片づけのテクニックで悩む必要がなくなるのです。収納を工夫したり、大量のモノを整理したりする必要が、そもそもない生活になるからです。この章では、まずは片づけの基本である3つのルールを理解してください。これだけで、あなたの片づけに対する考え方は劇的に変わるはずです。
原則1片づけで人生の迷いがなくなる!「3択」の原則選択肢を3つにすると、即断即決ができる!最初に説明するのは「3択」の原則です。私たちが何かを選ぶとき、決断するとき、迷わずに即決できるのは、いくつくらい選択肢があるときでしょうか。結論からいうと、人間は選択肢が3つ以内でないと即決ができません。人間の認知能力には限界があります。普通の人が頭の中できちんと認識して、きちんと比較できる選択肢の数はせいぜい3つが限度です。それ以上になると、どれもよく見えたり、どれもピンとこなかったりで、なかなか決断ができなくなってしまうのです。ですから、レストランのコースはたいてい「A・B・C」「松・竹・梅」といった3択になっています。映画や小説などで人の心を動かす名作とされているものに3部作シリーズが多いのも、人間にとって3という数字が認識しやすいことと関係しているのでしょう。もちろん、迷う時間をなくして即決できるようにするためには、3択よりも1択が理想的です。選択肢がそもそもそれしかない、という状態になっているに越したことはありません。しかし、選択肢をあらかじめ1つに絞っておく、というのは難しいでしょう。たとえば、仕事に履いていく靴を1足だけに絞れといわれたら、その1足を選ぶためにかなり悩まなくてはいけなくなります。これでは本末転倒です。そこで、現実的な片づけのルールとしては、とりあえず、あらゆる行動の選択肢を3択まで絞っておくことにします。3つの中から1つを選ぶことによって、即決・即行できるような環境にもっていくことを片づけのルールにしましょう。行動の選択肢は、モノの選択肢に直結します。仕事に履いていく靴の選択肢を3つに絞れれば、それ以外の靴は捨てることができます。バッグの選択に迷ったり、「あのバッグどこにやったっけ?」と探しまわることの多い人は、お気に入りの3つのバッグに絞って、あとは処分してしまいましょう。やたらと大量の英語教材を買い込んでしまったけれど、全然活用できないという人は、とりあえずマスターしたい3つの教材に絞って、あとは売ってしまえばいいわけです。いろいろな行動に3択の原則をあてはめて選択肢を絞っていくことで、選択に迷う時間を最小化していくことができるのです。「モノが捨てられない」問題の正体とは片づけに悩む人というのは、例外なく「なかなかモノが捨てられない」という問題を抱えています。行動の選択肢を3つに絞ることは、この問題を乗り越えるためのポイントになります。そもそもなぜ、私たちはモノを捨てられないのでしょうか。モノが捨てられないという心理を分析すると、3つの心理効果が働いていることがわかります。①選択回避の法則②損失回避の法則③保有効果この3つの心理効果が、散らかった家、あるいは頭の中が迷いだらけの生活、さらには「やらなくてはいけない仕事がいっぱいあるのに、どれ一つ手をつけられない」といった状態をつくり出しているのです。それぞれについて説明していきましょう。1つめの選択回避の法則というのは、すでに述べたように、選択肢が多くなりすぎると人間はモノを選べなくなる、ということです。2つめが、損失回避の法則です。簡単にいえば、人間は自分が損をすることを非常に恐れる存在だということです。基本的に、人間は失うこと、何かをなくすことに苦痛を感じます。モノを捨てることで家が片づき、より価値のある生活が手に入るんだ……といくら言われても、手に入れる喜びより、失う怖さのほうが大きいのです。3つめは、保有効果です。これは、自分が一度所有したモノに、より高い価値を感じてしまうということです。保有効果がどう働くかについて、こんなおもしろい心理実験が行われています。①被験者に花瓶を見せて、「いくらで売れると思いますか?」と質問する②おなじ花瓶を被験者にプレゼントしてから、「もし、私がその花瓶を買い戻すとしたら、いくらだったら譲ってもいいと思いますか?」と質問する
この2つのパターンを比べると、①の被験者がつけた値段の平均値よりも、②の被験者がつけた値段の平均値のほうが高くなったというのです。人は自分が所有しているモノの価値を高く評価する、ということが実験で裏づけられたわけです。この保有効果は、持っているモノがどれも価値があるように見えて選ぶのが難しくなること(選択回避の法則)にもつながっていますし、持っているモノを失うのを恐れること(損失回避の法則)ともつながっています。以上の3つ――選択回避の法則、損失回避の法則、保有効果が働くと、人間は持っているモノに対してどのような態度を選択するでしょうか?答えは明らかでしょう。現状維持です。今まで通り、モノを保有し続ける。モノを捨てることができない。結果、散らかった部屋は散らかったまま、迷いだらけの生活も今まで通り――ということになります。これをまとめて「現状維持の法則」といいます。「モノが捨てられない」問題の正体は、現状維持の法則なのです。これをいかに乗り越えるかが、片づけのポイントだといえるでしょう。
実は、ビジネスの世界では、誰もが自然に現状維持の法則を乗り越える工夫をしています。前述のように、レストランがコースをいくつか設定するのもそうですし、たくさんあるメニューの中からいくつかを「本日のおすすめ」として黒板に書き出しているお店もよく見かけます。自社のサービスや製品のリストを顧客に渡して「お好きなものを選んでください」と言う営業担当はいません。顧客に合わせて、1つから3つくらいのプランを提案するはずです。これは、社内で企画を提案するときも同じでしょう。現状維持の法則を避けて、誰もがこうしたビジネスの手法を取っているのです。ところが、自分がするべき行動を選ぶとき、何を所有するかを選ぶときとなると、私たちは常に大量の選択肢を頭に置いてしまい、結果として現状維持をしてしまっています。だから捨てられない、片づけられない、ということになるわけです。この現状維持の法則を避けるため、選択肢を3択までに絞ることが必要なのです。Point選択肢を絞り込むと、勇気ある決断ができる。現状維持を捨て、本当にやるべき行為に集中しよう。
原則2とりかかるまでの時間を最短にする「初速最大化」の原則どうすれば、迷わず、最速で作業にとりかかれるか?自由な時間を増やし、人生を最大化するための片づけの原則の2つめは、「初速最大化」の原則です。これは、次の行動にとりかかるまでの時間を最短にする、ということです。学生時代、勉強にとりかかろうと思ったら部屋が散らかっているのが気になって、片づけをはじめてしまった、という経験は誰にでもあると思います。職場のデスクまわりに書類の山が積み上がっていて、仕事をやる気がしない。「もっと片づいていれば集中できるのになあ……」と、ため息をついている人も多いでしょう。こうした心理は、勉強や仕事からの逃避という側面もあるでしょう。しかし、散らかった環境が集中を妨げていることは間違いありませんし、カフェや自習室のように、やるべきことにとりかかりやすい環境があるのも間違いありません。片づけとは、やるべきことにとりかかりやすい環境をつくる、ということでもあるのです。これを目指すのが初速最大化の原則です。では、やるべきことにとりかかりやすい環境とはどんな環境でしょうか。1つめは、必要なモノが手に取りやすい環境です。たとえば、毎日仕事で使うノートパソコンを引き出しの奥深くにしまい込む人はいないと思います。毎日ジムに行きたいのに、トレーニングウエアはクローゼットに、シューズを物置に、タオルはタンスに……としまっておくのは得策ではありません。ジムに通いやすくするためには、道具を一式揃えて玄関に置いておくのが正解、ということはわかりやすいと思います。このように、行動のために必要なモノを手に取りやすい場所に置いておく、ということは、初速最大化の第一歩です。2つめは、手順を減らすことです。私は「ニコニコ生放送(*巻末1)」で心理学をベースにさまざまなノウハウの動画配信をしていますが、最近はiPhoneのカメラを使っています。以前は配信をするたびにパソコンを起動して、カメラを取りつけて、マイクを接続して、という準備が必要だったのが、iPhoneを取り出すだけで配信できるようになりました。すると、圧倒的に配信がしやすくなり、いつでもどこでも気軽に配信できるようになりました。また、講演などで情報整理に使うマインドマップづくりも、アプリを入れてiPhoneからできるようにしました。すると、アイデアを思いついたらすぐに手元でメモを取れるようになったので、マインドマップは質的にも量的にも圧倒的に向上しました。それでいて準備にかかる時間は短縮できています。このように、ある行動にとりかかるための手順を減らすと、その行動から生まれるアウトプットが向上し、時間が短縮できるのです。初速を最大化したいなら、まずモノを減らせ!逆にいうと、仕事になかなかとりかかれない、仕事をはじめるまでに時間がかかる、といった悩みを持っている人は、とりかかりまでのステップが多すぎるのではないか、と疑ってみる必要があります。そうした悩みを持つ人は、大抵の場合、仕事をするために必要なモノ、揃えなければいけないモノが多すぎるのです。以前の私を例にとれば、動画配信をするためにはパソコンとカメラとマイクを揃えなければなりませんでした。けれども「あれも必要」「これも必要」「そういえばあれも」……とステップを増やせば、すぐに時間がなくなってしまいます。いわゆる「カタチから入る人」が結果を出せない原因とは、ある行動をするためにはこれこれのモノを揃えなければいけない、という思い込みで、むやみにとりかかりまでのステップを増やしているからにほかなりません。とりかかりのステップを減らし、初速を最大化するためには、モノを減らすことが重要なのです。
原則2とりかかるまでの時間を最短にする「初速最大化」の原則どうすれば、迷わず、最速で作業にとりかかれるか?自由な時間を増やし、人生を最大化するための片づけの原則の2つめは、「初速最大化」の原則です。これは、次の行動にとりかかるまでの時間を最短にする、ということです。学生時代、勉強にとりかかろうと思ったら部屋が散らかっているのが気になって、片づけをはじめてしまった、という経験は誰にでもあると思います。職場のデスクまわりに書類の山が積み上がっていて、仕事をやる気がしない。「もっと片づいていれば集中できるのになあ……」と、ため息をついている人も多いでしょう。こうした心理は、勉強や仕事からの逃避という側面もあるでしょう。しかし、散らかった環境が集中を妨げていることは間違いありませんし、カフェや自習室のように、やるべきことにとりかかりやすい環境があるのも間違いありません。片づけとは、やるべきことにとりかかりやすい環境をつくる、ということでもあるのです。これを目指すのが初速最大化の原則です。では、やるべきことにとりかかりやすい環境とはどんな環境でしょうか。1つめは、必要なモノが手に取りやすい環境です。たとえば、毎日仕事で使うノートパソコンを引き出しの奥深くにしまい込む人はいないと思います。毎日ジムに行きたいのに、トレーニングウエアはクローゼットに、シューズを物置に、タオルはタンスに……としまっておくのは得策ではありません。ジムに通いやすくするためには、道具を一式揃えて玄関に置いておくのが正解、ということはわかりやすいと思います。このように、行動のために必要なモノを手に取りやすい場所に置いておく、ということは、初速最大化の第一歩です。2つめは、手順を減らすことです。私は「ニコニコ生放送(*巻末1)」で心理学をベースにさまざまなノウハウの動画配信をしていますが、最近はiPhoneのカメラを使っています。以前は配信をするたびにパソコンを起動して、カメラを取りつけて、マイクを接続して、という準備が必要だったのが、iPhoneを取り出すだけで配信できるようになりました。すると、圧倒的に配信がしやすくなり、いつでもどこでも気軽に配信できるようになりました。また、講演などで情報整理に使うマインドマップづくりも、アプリを入れてiPhoneからできるようにしました。すると、アイデアを思いついたらすぐに手元でメモを取れるようになったので、マインドマップは質的にも量的にも圧倒的に向上しました。それでいて準備にかかる時間は短縮できています。このように、ある行動にとりかかるための手順を減らすと、その行動から生まれるアウトプットが向上し、時間が短縮できるのです。初速を最大化したいなら、まずモノを減らせ!逆にいうと、仕事になかなかとりかかれない、仕事をはじめるまでに時間がかかる、といった悩みを持っている人は、とりかかりまでのステップが多すぎるのではないか、と疑ってみる必要があります。そうした悩みを持つ人は、大抵の場合、仕事をするために必要なモノ、揃えなければいけないモノが多すぎるのです。以前の私を例にとれば、動画配信をするためにはパソコンとカメラとマイクを揃えなければなりませんでした。けれども「あれも必要」「これも必要」「そういえばあれも」……とステップを増やせば、すぐに時間がなくなってしまいます。いわゆる「カタチから入る人」が結果を出せない原因とは、ある行動をするためにはこれこれのモノを揃えなければいけない、という思い込みで、むやみにとりかかりまでのステップを増やしているからにほかなりません。とりかかりのステップを減らし、初速を最大化するためには、モノを減らすことが重要なのです。
といっても、ミニマリスト的な発想で、とにかくモノを減らせばいい、というわけでもありません。あくまでも、初速を最大化するために、ステップを最小化する、という目的を忘れないことです。またしても動画配信の例でいうと、私はiPhoneを固定するための小さな三脚を使っています。三脚などないほうがステップは減るじゃないか、と思われるかもしれませんが、三脚がないと、iPhoneをよい角度で固定するために四苦八苦するという手順が増えてしまうのです。三脚があれば、そこにポンとiPhoneを置くだけで配信をはじめられます。このように、初速を最大化するために、最適なところまでモノを減らす、という発想が大事なのです。心理学者ショーン・エイカーの「20秒ルール」とりかかりまでのステップの数と同時に、とりかかるまでの時間も意識しておきましょう。これについては、アメリカの心理学者ショーン・エイカーがハーバード大学で行った研究による「20秒ルール」という鉄則があります。人間は、とりかかるときに必要な時間を20秒短縮するだけで、それを習慣化できる。逆に、20秒余計に時間がかかるようにするだけで、習慣をやめられる――。これが20秒ルールです。つまり、いつも先延ばしにしてしまう仕事があるなら、それにとりかかるために必要な時間を20秒減らす工夫をするだけで、いつでもすぐにとりかかれるようになるのです。手順を減らす、とりかかるために必要なモノを減らす、という際には、20秒だけ時間を短縮するにはどうしたらいいか、と考えてみるのも一つの手でしょう。「アフォーダンス」をデザイン初速を最大化するような環境は、行動しやすい環境ということです。このような環境をつくるためには「アフォーダンス」をデザインするという発想も有効です。アフォーダンスとは簡単にいうと「環境が行動を既定している状態」のことです。たとえば、目の前に椅子があったとしたら、あなたが取る可能性のある行動は、座ることでしょう。椅子が折りたたみ式なら、持ち運ぶこと。目の前にドアがあったら、押すこと。引き戸だったら、引くことでしょう。このように、「なんとなく取るべき行動がわかる状態」がアフォーダンスです(最近では「シグニファイア」と呼ばれる場合もあります)。このアフォーダンスを利用して、その環境に置かれた瞬間、何の行動を取ればいいのかということが一発でわかるようにしておくことで、とりかかりを最速化することができます。たとえば、読破したい本があるのなら、机に座って「今日はどの本を読もうかな」と迷うような環境にしておいてはいけません。前日のうちに、読みたい本を机に置いておく。すると、机に座った瞬間に「この本を読むんだった」とわかる。これがアフォーダンスのデザインです。「その場所でどんな行動をするか?」で決めるアフォーダンスデザインという考え方は、片づけでモノの配置や部屋の構成を決めるときに役立ちます。その場所でどんな行動をするかを決め、そのために必要最低限のモノを置くようにする。逆に、使わないモノ、注意をそらすようなモノはどんどん減らしていくのです。私の場合でいうと、仕事場に設置した図書室は読書と動画放送にしか使いません。ですから、ここには本以外には机と椅子しか置かないようにしています。やはり仕事場にあるソファーは、昼寝用と決めていますから、その周囲には昼寝の邪魔になるようなモノは一切置かないようにしています。このように、そこで何をするか、という観点からモノの配置を決めていくと、極端にいえば、行動に関係ないモノはすべて処分できることになります。モノを選別するときに、使うか、使わないか、という基準ではなく、「自分が人生の中で強化したい(もっとしたい)行動に関与するか、しないか」という基準が生まれるわけです。付箋を貼ってみるデスクは勉強と仕事をする場所、と決めたとしても、ついついパソコンで動画を見てしまったり、忙しいからといってそこで食事をしてしまったりしがちです。「ついつい」を繰り返しているうちに、モノがあるべきでないところに置かれ、必要のないモノが増えて、部屋が散らかっていく……とはよくある話です。そうならないために、場所と行動との結びつきを強化しましょう。この場所ではこれしかやらない、という強固な習慣を築くのです。これには簡単で効果的な方法があります。大きめの付箋に、太いマジックで「この場でやるべき行動」を書いて貼っておくのです。たとえ
ばデスクでは勉強か仕事しかしない、と決めたら、勉強仕事などと大きく書いて、目の前の壁にでも貼っておきましょう。ちょっと恥ずかしい、あるいはバカバカしいと感じられるかもしれませんが、付箋による習慣づけの効果は絶大です。それもそのはずで、もともとこれは発達障害などで物事の習慣化が難しい人たちのための治療法として編み出された方法だからです。家の中のあらゆる場所にこの付箋が貼ってあると、それだけで「何をしようかな」と迷うことがなくなります。行動にとりかかるスピードが速くなり、何よりはじめる前の面倒くささを感じなくなります。そして、モノはそれを使うべき場所にあるという状態を常に保てるようになるのです。さっそく付箋を買ってきて、その効果を実感してみましょう。おすすめなのは、全面に接着剤がついている強粘着タイプの付箋です。Pointやるべきことに、すぐにとりかかれるような環境をつくる。モノや手順を減らし、パフォーマンスを上げよう。
原則3時間があふれだす!「ローコスト管理」の原則「管理コストの高いもの」を減らす片づけで自由な時間を増やし、人生を最大化するためのルールの3つめは、ローコスト管理の原則です。片づけでいらないモノ、処分するモノを決めるときの基準はいろいろあります。一般的なのは「これからも使いそうなモノ・使わなそうなモノ」に分けること。ベストセラーとなった『人生がときめく片づけの魔法』の著者・近藤麻理恵さんの「ときめくモノ」を残す、というやり方も有名ですし、ミニマリストのようにとにかくモノは減らせば減らすほどいい、というのも一つの考え方でしょう。では、「自由な時間を増やす」「人生を最大化する」という、本書における片づけの目的から見て減らすべきモノとは何か。それは、管理コストが高いモノです。特に、管理にかかるコストが高いモノ――整理に手間がかかったり、メンテナンスが面倒だったりするモノを減らすことで、大きな時間が生まれるのです。管理コストの高いモノの典型としては、衣類が挙げられます。たとえば、服が100着あったら、全部を常にクローゼットに並べておくわけにはいきませんから、衣替えをしなくてはいけません。プラスチックのコンテナに服を入れたり出したり、クローゼットから服を出したり入れたり、並べ替えたり、モノによってはクリーニングに出したり、それをまた取りに行ったり……衣類の管理には膨大な時間が取られます。この時間を、自分を成長させるため、あるいはお金を稼ぐために使ったら、いったいどれだけの価値を生み出せるでしょうか。好きなこと、やりたいことに使ったら、どれほど幸福度が向上するでしょうか。そう考えると、ローコスト管理戦略の重要性がわかります。片づけをするときには常に、「このモノを取っておくことによって、どれだけ管理コストが増えるだろうか?」と考える必要があります。時間とか労力を奪うモノを減らすことによって、非常に合理的な片づけができるのです。そう考えると、片づけのノウハウとしてよく紹介されている「小物を見やすく整理する分類法&収納法」とか「衣類をコンパクトに収納するたたみ方」「100円ショップのグッズを組み合わせてクローゼットを有効活用!」とかいったテクニックは、私たちには必要ありません。片づけで人生を変えたいのなら、管理するのに細かい手間がかかるようなモノは、まとめて捨てるべきなのです。モノの管理に多少の時間がかかるくらいいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、仮に1日に10分を使ったとしても、年間で約3600分です。丸2日半を費やしていることになります。リターンを生まないモノは捨てる、買わないそして、もっと強烈なのが、探しものにかかる時間です。ビジネスパーソンが探しものに費やす時間は「年平均150時間」といわれます。ある分野について、ひと通りの知識を持つ専門家になるためには1000時間が必要ともいわれますから、過去7年分の探しものの時間がなければ、ビジネス上の得意分野をもう1つ増やせていたかもしれない、ということになります。こう考えれば、モノの管理コストが馬鹿にできないことがわかるでしょう。さらに、コスト計算の考えをもう一歩進めて「投資効率」を考えてみることも片づけには有効です。持っていることでお金や時間、感動といったリターンを生まないモノは捨てる。あるいはそもそも買わない、と決めておくのです。それを買うことによって、自分の資産が増えたり、時間を節約できたりするモノ、いわゆる「元が取れる」モノは買ってもいいでしょう。そういった数値に表せるようなリターンがなくても、持つだけで感動できるようなモノ、あるいは体験にお金を払ってもいいでしょう。「これに時間とお金を投資してもいいか?」という観点を持っておくと、余計なモノを増やすことを避けられるのです。「固定費」の削減でお金と時間を取り戻せ!管理コストには、「固定費」もあるのを忘れてはいけません。ビジネスにおける固定費とは、人件費とかオフィスの家賃といった、有効活用していてもしていなくても出ていくお金のことです。その一方で、片づけにおける固定費には、お金だけでなく、固定費的な「時間の支出」も含まれます。たとえば、服をメンテナンスするための洗濯。これには洗濯機を買ったときの代金やメンテナス費用、洗剤や水道の代金に加えて、毎日の洗濯に費やしている時間も含めて考えます。この固定費を減らせないか、と考えてみるのです。最近増えてきた洗濯の代行サービスは、一人暮らしで月に7000円程度、あるいは大きな袋に洗濯物を詰められるだけ詰めて1回150
0円程度から依頼できます。この値段で、宅配業者に洗濯物をあずければ、洗濯してきれいにたたんで返してくれます。(ハーバード大学での研究でも時間を買うと幸福になることがわかっています)もしもあなたがこのサービスを利用すると、まず、洗濯機を買わなくて済みます。すでに洗濯機はあるという場合でも、引っ越しをするときに洗濯機を運ぶコストが必要なくなります。また、カビやすい洗濯槽を定期的に掃除する面倒な手間もなくなります。このように、「取られても仕方ない」とされている時間やお金を減らせるわけです。何よりも大事なことは、浮いた時間で、自分の能力を高めること、ビジネスのパフォーマンスを高めて成果を出すことです。私の場合なら、ニコニコ生放送や講演を1回やる時間で、どれぐらいのお金を稼げるかを基準に考えます。すると、洗濯のようにモノの管理にかかる時間を考えるとき、自分でやるのが得か、お金を払って頼んだほうがいいかがわかります。このようにして、モノの管理コストの固定費的な部分を削っていくのです。こうしてローコスト管理の原則を進めていけば、そこで生まれる時間は膨大なものになります。まさに、時間があふれだす、という感覚を味わえるでしょう。繰り返しますが、片づけの大きな目的は自由な時間を増やし、人生を最大化することです。整理や掃除に時間と手間をかけて、人生を消耗するような行為を片づけとは呼びません。このことを改めて確認しておきましょう。Point管理コストを減らし、自由な時間を生み出そう。探しものや、リターンのないモノは、莫大な損失だと気づこう。
片づけを実行し、人生を変えるための方法論は、基本的にはここまでに紹介した3つの原則ですべてです。ですから、ここまで読んで「わかった、もう迷わずに片づけができる」という人は、本を閉じて早速片づけを開始してもいいでしょう。実際には、3つの原則に基づいた片づけで、どう人生が変わるのか、いまひとつイメージがわかない、という人も多いと思います。そこで、次の章では、より具体的な片づけのメリットを説明していきたいと思います。
第2章心理的片づけで得られる5つのメリット
Introduction片づけで、人生はどのように変わるのか?前章で見たように、片づけは人生を最大化するためのスキルです。正しく片づければ、部屋の中がすっきりするだけでなく、迷いがなくなって、やりたいこと、価値の高い活動にリソースを注げるようになるのです。片づけは、家の中を変えるのではなく、人生を変えるわけです。といわれても、特にこれまで片づけを苦手としてきた人は、「片づけで、人生がどのように変わるのか?」をイメージしにくいと思います。この章では、片づけによって得られる5つのメリットを説明していきましょう。メリット1:片づけで「よりよい未来」が選べるメリット2:片づけで頭脳労働に集中し、「価値ある仕事」ができるメリット3:片づけで「いいモノ」「大切なモノ」を使いやすくすると幸福度がアップするメリット4:片づけで「空間+時間+気持ち」のゆとりができるメリット5:片づけでコンパクトに生活し、「居住環境」を思いのままに選択できるやっぱり片づけは面倒くさい、と感じている人でも、この章を読み終える頃には早く片づけにとりかかりたくてたまらなくなるはずです。
メリット1片づけで「よりよい未来」が選べるいらないモノではなく、必要なモノに目を向けよう片づけをするとなると、たいていの人はまず、捨てるモノを選びはじめます。片づけが滞るのは「捨てるべきか、残すべきか」で悩むからですし、「片づけられない人」は「捨てられない人」であることが多いものです。したがって、いわゆる片づけ本の多くは読者の関心を得るために「いかに捨てるか」を見せ場としています。こうして片づけ本は、いかに捨てるモノを選ぶか、というノウハウについて語る本が多くなるわけです。けれどもここで、考えてみてください。新聞を読むとき、あなたはパッと見て気になった記事、おもしろそうな記事、読みたいと思った記事を選んで読んでいくはずです。そうではなく、読む価値のない記事、読みたくない記事を選んではバツをつけていって、読まない記事をすべて削除し終わってから、生き残った記事を読む、という人はいないでしょう。あるいは、おいしいイタリア料理が食べたいと思ったとき、あなたは評判のいいレストランをネットで探すと思います。「まず、絶対に行ってはいけないイタリア料理店のブラックリストを作ろう。だから評判の悪い店から検索する」という人はいません。新聞にバツをつけていったり、評判の最悪なレストランから検索したりする方法は、まさに見当違いの合理的ではないやり方です。目的にたどりつくまでに余計な時間がかかるばかりでなく、気力が尽きてしまうからです。ところが、片づけをしようとするとき、ここで挙げた例にそっくりなことをはじめてしまう人は少なくありません。片づけ本を懸命に読んで、自分にとって大切なモノ、自分がよく使うもの、必要なモノ、いつも手元に置いておきたいモノ……を選ぶのではなく、いらないモノ、もう使わないモノ、捨てていいモノを選ぼうとするのです。これは目的を誤った、見当違いのやり方だ、と気がつかなくてはいけません。本来の片づけとは、大事なモノ、持ち続けるモノを選ぶことです。必要なモノをまず選んでしまえば、それ以外は自動的に捨ててもいいモノということになります。つまり、捨てるべきモノを選ぶ技術などいらないのです。そして、これから持ち続けるモノを選ぶということは、未来を選ぶことでもあり、人生を選ぶことでもあります。最初から、いらないモノに目を向けるのはやめましょう。むしろ、片づけを必要なモノに目を向ける練習の機会にするべきです。片づけによって、理想の人生、よりよい未来を選ぶことができるのです。(片づけを成功させるために「捨てる方法」を学ぶことは大切です。けれどもそれはもっと後の手順で実行する行為です。第3章で説明しますので、まずは「大事なモノ」にフォーカスすることからはじめてください)「ちょっといいモノ」に要注意!本当に必要なモノ、自分にとって本当に価値あるモノをまず選んでしまえば、それ以外のモノは捨ててしまえる……はずなのですが、難しいのは、現代社会には「ちょっといいモノ」がたくさんあるということです。1回着ただけで似合わないと気づいたセーターは、自分にとって必要なモノでなくても、価値がないわけではありません。それなりに価値のある、ちょっといいモノです。こういうモノが厄介なのです。なぜなら、ちょっといいからといって残しておくと、モノが増えて、本当にいいモノがわかりにくくなってしまうからです。対策としては、「ちょっといいモノ」を「すごくいいモノ」に変えることを考えましょう。たとえば、場所がかさばって使わなくなってしまった大画面ディスプレーは、まだまだ新しく、ちょっといいモノです。ちょうどPCのディスプレーを買おうと思っていた友人にあげれば、喜ばれるでしょう。自分にとってちょっといいモノは、誰かにとってはすごくいいモノです。誰かにあげてしまう、というのは、ちょっといいモノをすごくいいモノに変換する方法の一つということです。私はとにかく本をたくさん読みます。中には、一度目を通したらもう手元に置いておく意味はない本も少なくありません。私にとって、本棚に置いておきたい本とは最新科学の本や論文と、長く生き残っている古典だけと決めているからです。現代においては、科学的情報は9か月で2倍になるペースで増加し、一般的な知識は年15%、テクノロジーは年30%が時代遅れになるといわれています。つまり、新しい知識を常にインプットし続けなければ、5年も経過してしまえば、使える知識はほとんど残らないということ
です。長年の時代の変化に耐えた古典や名著でない限り、古い本は基本的にはあまり役に立たないのです。このように科学的に時代遅れになってしまった本でも古本屋さんに引き取ってもらうと、中にはいい値段が付くものもあるので、新たな本を買う資金になります。不要な本を処分して空いた本棚のスペースに、必要な本を新たに入れることができれば、ライブラリーの価値が高まるわけです。このように、自分には必要ないちょっといいモノを、自分にとってすごくいいモノに交換するという、より直接的な変換も可能です。スケジュールも「いいモノ変換」ができるちなみに、いいモノ変換のメソッドは、モノだけではなく、スケジュールの片づけにも応用できます。たとえば飲み会に誘われたとします。すぐにOKするほど行きたいわけではないけれど、スケジュールは空いているし、断るのも惜しい気がする、という程度の誘いは、ちょっといいモノです。迷うくらいなら断る、というのもいい判断ですが、ここで「いいモノ変換」を試みましょう。誘われた飲み会を断ることで空く時間に、本当に会いたい人と会う時間、心から参加したい場に行く時間に変換する工夫をしてみるのです。しばらく会っていなかった親友に連絡して誘ってみたり、以前から興味があったジムの体験入会の予約を取れないか試してみる、なんていうのもいいでしょう。こうして、その時間を「すごくいいモノ」に変えられれば、飲み会を断った時間を最大限有効に活用できることになります。モノだけでなく、時間の扱い方にまで視野を広げて考えてみると、片づけは生き方を選ぶことであり、未来を選ぶことなのだ、ということがより実感できるのではないでしょうか。長期的視点が持てる「頭の中の片づけ」生き方と未来を選ぶのが片づけなのですから、判断をするときには長期的視点が欠かせません。長期的視点は、冷静で深い思考から導かれます。頭の中が混乱した状態にある人は、たいてい短絡的で目先のことにとらわれた判断をしてしまうからです。そう考えると、片づけをするときに必要なのは、まずは頭の中を片づけることだとわかります。つまり、散らかった部屋を見渡して、いきなり自分にとって必要なモノを見極めようとしても無駄なのです。そこで、片づけの第1ステップとして、頭の中を片づけることからはじめましょう。片づけは、手を動かす作業からはじめるのではなく、「自分はどんな人生を送りたいのか」「自分が本当にやりたいことは何か」「自分はどんな未来を望むのか」を思考することからはじめなくてはいけないのです。でも、こんな散らかった部屋で、落ち着いて考えることなんかできないよ――。もしもそう感じたとしたら、あなたは片づけのセンスに恵まれています。その通りです。余計なモノが散らかった部屋で、頭の中を片づけるような透徹した思考を働かせるのは無理なのです。落ち着いて考えるためには、部屋を出て、どこかきれいに片づいた場所に出かけましょう。公園の広場、おしゃれなカフェ、静かな図書館など、お気に入りの場所でかまいません。余計なモノがない場所に出かけて、頭の中を片づけるのです。未来がはっきり見えてくる!思考の3つのツールでは、頭の中を片づけ、人生と未来を選ぶ思考のために、具体的に何をすればよいのでしょうか。いくつかの思考のツールを紹介しておきましょう。ここでの考え方のポイントは、できるかぎり具体化すること。具体的にイメージしないと、片づけの基準にはなりません。具体的であればあるほどいいのです。■ツール①「理想の一日」を考える理想の一日というのは、「毎日こんな生活ができたら最高に幸福」と思える一日です。その一日の中に登場するモノは、あなたにとってどうしても必要なモノ、ということになります。理想の一日を具体的にイメージするためには、紙とペンを使いましょう。実際に、朝起きてから夜寝るまでの行動を時系列で書き出してみるのです。まず、線を引いて紙を「朝」「昼」「夕方・夜」の3つに分割します。一日の行動を時系列で書き出すといっても、1時間刻みで区切ったりはしません。そういう考え方をすると、どうしてもスケジュールを詰め込む感じになり、ゆとりが失われて楽しくなくなってしまうからです。理想の一日を考えるときには、自分を楽しませながら考えなくてはいけません。思い描いたときに楽しくない理想では、実現する気にならないからです。さて、紙を3つに区切ったら、それぞれの枠で何をするかを書いていきます。理想の一日の中で、自分がどんな行動をするかを書き出していくのです。朝起きたら、まずコーヒーを入れて飲む。瞑想をする。散歩に行く。帰ってきたら英語の勉強をする……というように、理想の一日に含まれる行動を全部書き出しましょう。それが終わったら、今度はそれぞれの行動に必要なモノを書き出していきます。たとえば、朝、コーヒーを入れるためにはコーヒーメーカーが必要。散歩をするために部屋着兼用のラクな服がいる。午後にジムに行くと
したら、そのためのトレーニングウエアも必要。瞑想が理想の一日に含まれるなら、スマートフォンと瞑想用のアプリも必要でしょう。こんな具合に、あなたが理想の一日で必要とする道具をすべて書き出しましょう。こうしてリストアップされたモノが、あなたの理想の一日に登場するモノ、あなたにとって本当に必要なモノなのです。逆に、このリストに登場しないモノは、いくら便利であったとしても、本当はあなたにとって必要なモノではなく、捨てるべきモノと判断できるわけです。この方法の発展として、「理想の一年」を考えることも有効です。たとえば、夏は登山、冬は釣り、と季節ごとに違う趣味を持っている人もいるでしょうし、仕事の繁忙期と閑散期でライフスタイルがまるで違う人もいます。理想の一日に加えて、理想の一年もイメージすることで、必要なモノとそうでないモノを見極める基準をさらに明確にすることができます。
■ツール②「何をしているときが一番楽しいか」を考えてみるいきなり理想の一日をイメージするのは荷が重い、あるいはしっくりくるイメージが浮かばない、という人は、「何をしているときが一番楽しいか」と自問してみてください。ここで、「ゴルフをしているとき」という答えが出たとします。そうしたら、次に「じゃあ、それだけをやっていたいか?」と重ねて自問しましょう。もちろん、好きなことだから、それだけやっていたい、と答えられる人は、それだけゴルフが人生にとって大事なことなのですから、ゴルフを中心にした一日をそこからイメージしていけばいいでしょう。しかし、ほとんどの人は、「いくら好きだといっても、そればかりやっていたいわけじゃない」と思うはずです。では、他に何をしたいのかと考えると、週末はたしかにゴルフをしたいけれど、仕事帰りに映画を観るのも至福の時だし、家で料理を作ってビールを飲むのも楽しいし、仕事だってお客さんに喜ばれたときはやりがいを感じる……と、やりたいこと、大切なことが見えてきます。こんな感じでイメージが固まってきたら、そこから改めて理想の一日をイメージしてもいいですし、浮かんできたやりたいことに直接、必要なモノを結びつけてもいいでしょう。■ツール③「アラーム」で1時間ごとに一日の行動と思考を記録する何もないところからのイメージが苦手な人もいると思います。そんな方におすすめなおもしろい方法があります。これは、もともとは習慣的思考から逃れるために行われるエクササイズとして考えられた方法です。携帯のアラームを1時間に1回鳴るようにセットします。アラームが鳴るたびに、今、どこで、何をしているかをメモします。手帳を使ってもいいですし、携帯のグーグルカレンダーを使うのも便利です。このメモのポイントは、どこにいるのか、何をしているのか、に加えて、もう1項目を加えることです。「そのとき、別のことを考えていなかったか」を記入するのです。たとえば、アラームが鳴ったとき、会社で打ち合わせをしていたとします。そのとき、別のことを考えていなかったか、と考えてみると、たしかにゴルフのことを考えていた。ここまでを記録するわけです。1時間ごとに自分の行動を記録していくと、色々なことがわかります。1週間ほど記録できればベストですが、一日でも効果はあります。何かをしていたとき、他のことを考えていた。つまり、心がマインドフルで充実した状態ではなかった。こういう状態にあるときは、現在の行動に対しての満足度が低いということがわかっています。何かをしながら別のことを考えていたとしたら、少なくとも、そのとき、その場所で、それをすることは自分にとって本当にやりたいことではないとわかります。また、考えていた別のことの中には、本当にやりたいことの答え、あるいはヒントが隠れているはずです。それを見つけましょう。なお、この方法でも、記録を見返しながら考えるときには、片づいた部屋やお気に入りのカフェなどでリラックスして、楽しみながら考えるようにしてください。以上の3つの思考のツールから、自分にしっくりくるモノを選んでもいいですし、同時に行ってもいいでしょう。いずれにしても、最終的には「すべての時間を自由に使えるとしたら、どうしたいのか」を具体的に、楽しく考えること。そうすれば本当にやりたいことと、そこで必要なモノが見えてきます。Point捨てるモノより持ちたいモノを選び、未来をデザインしよう。「ちょっといいモノ」にだまされず、価値を見極めよう。
メリット2片づけで頭脳労働に集中して「価値ある仕事」ができる「新しいこと」を発想する環境を手に入れる片づけで得られるメリットの2つめは、モノはもちろん、情報や予定を減らすことによって、頭を使って考えることに集中できるようになる、ということです。人間の仕事のかなりの部分は、近いうちにAIに取って代わられるといわれています。オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授によると、日本では、49%の仕事が、AIに取って代わられるという予想もあります。こういう時代に生き残る「価値ある仕事」とは、人間らしい能力を一番使える仕事。つまり、新しいことを発想するオリジナリティにあふれた頭脳労働です。モノが多いことや、散らかった環境が、いかに人間の注意力を奪い、探しものや迷いによる時間のロスを生むかはここまででも述べてきました。だからこそ、片づけによって集中力と時間を手に入れ、頭脳をフル活用できることには大きなメリットがあります。「減らす片づけ」で気をつけること思考のための集中力と時間を最大化する、というメリットを得るためには、片づけで陥りがちなワナに気をつける必要があります。本書でもこれまでに何度か触れていますが、最近、最低限の持ちもので生活する「ミニマリスト」と呼ばれる人々の考え方が注目され、その片づけのノウハウも雑誌やインターネットなどで頻繁に紹介されています。たとえば、私が最近目にした、あるミニマリスト系のブログでは、洗濯機を捨てて、洗濯板とタライで洗濯をするようにした、と書かれていました。たしかに、洗濯機は場所を取るし、捨ててしまうのはいい手だとは私も思います(第1章の『「固定費」の削減でお金と時間を取り戻せ!』参照)。しかし、その代わりに洗濯板を使うというのはどうでしょうか。洗濯板で衣類を洗うのには相当な時間がかかってしまいます。せっかく洗濯機を捨てても、そのせいで時間を取られてしまうのでは、集中力と時間を手に入れるという片づけのメリットはなくなってしまいます。もちろん、洗濯板を使うのが楽しくてやるとか、洗濯板の研究をライフワークにしたいという人が、こういうライフスタイルを選ぶのはいいと思います。あくまでも、時間と集中力の最大化という目的からすると本末転倒ということです。これに対して、洗濯機を捨てる代わりに、洗濯代行サービスを使うというのは、時間と集中力を手に入れる効率的なやり方だということになります。片づけというと、何を捨てるか、何を減らすか、どれだけ減らせるか、に意識が向きがちですが、「減らすこと」「捨てること」が単なる目的になると、かえって片づけのメリットが失われてしまうことがあるのです。この「減らす片づけ」のワナには気をつけたいところです。減らすことが目的ではなく、時間や集中力を増やすことが片づけの目的なのですから。リース契約で管理コストを節約たとえば私は、スマホやタブレットをすべてリース契約にしています。電子機器を管理したり、買い替えたり、契約したりといったことにはたしかに時間を取られますし、しかもこれ以上ないほどに無駄な時間ですから、スマホなんて持たないというミニマリスト的な考え方もありうるでしょう。しかし、この本でもスマホの機能を使うノウハウをいくつも紹介していることからもわかるように、使い方によっては時間と集中力を増やすために役立つ便利な道具が存在することもたしかです。この点、リース契約のスマホやタブレットは、落としてディスプレーが割れてしまっても翌日には新品が届きますし、年に1回、新しい機種に交換してくれるオプションもつけられるので「そろそろ買い替え時かな」とか「次はどれにしよう」とか迷うこともありません。自分のモノではないので、管理に気を使うこともなくなります。しかも値段も安い。こうなると、時間や注意力を奪われることなく、スマホやタブレットの便利さだけを享受できるわけです。「アウトソーシング」を賢く使う洗濯代行サービスの話が出たので、有料サービスの賢い使い方についても、ついでに述べておきましょう。海外旅行に行くとき、私は1泊10万円くらいの部屋をよく使います。「お金があっていいですね」と言う人もいますが、別に贅沢をしたい
わけではありません。海外で安い部屋を取ると、Wi-Fi環境が未整備という場合があります。そういう部屋に泊まってしまうと、ニコニコ生放送の動画配信ができません。私の配信では、1回あたり20~50人くらいの新規入会があります。動画配信の機会を1回失うということは、そのぶんの入会の収益を失うことです。それを考えると、多少高くてもWi-Fi環境の整った部屋に泊まるほうが得なのです。片づけにおいては、お金を払ってアウトソーシングすることが有効な場面はよくあります。その代表が洗濯代行や家事代行でしょう。しかし、「それはわかっているけれども、自分でできることにそれなりの金額を支払うのは抵抗を感じる」という人も多いと思います。お金を払ってサービスを受けると考えたとき、お金を失うということのほうに意識が向かってしまうのです。これもまた、保有効果や損失回避の法則と似た心理でしょう。たしかに、無駄なことや割に合わないサービスにお金を払う必要はありません。しかし、お金を払うことによって得られる時間や集中力、そこで自分が生み出す価値を計算すれば、かえって得になることもあります。お金を払うことによって、自分が何を手に入れられるかを考える。これがアウトソーシングをうまく使うための考え方だと覚えておいてください。Pointモノを減らし、より重要な「頭脳労働」に集中しよう。何がメリットで、何がデメリットか考えよう。
メリット3片づけで「いいモノ」「大切なモノ」を使いやすくすると幸福度がアップする所有ではなく、使用が幸せを生む基本的に、モノは持っているだけでは楽しくありません。私は本が好きですが、本を読むという行為がなければ幸福は感じません。ギターが好きな人は演奏するときに幸福を感じ、料理が好きな人は新しい鍋を買ったら、それを使って料理を作って食べるときに幸せになれるわけです。買ったモノをただ飾っておくのが楽しい、という人もたしかにいます。クラシックカーのコレクターは、やたらに車を乗り回したりはしないでしょう。しかし、そういう人でさえ、「コレクションとして飾る」「人に見せて自慢する」「ひとりでしみじみと眺めて楽しむ」といった使い方をしているのです。「モノは所有することでなく、使用することによって幸福を生む」が原則です。片づけには「大切なモノ、好きなモノが使いやすくなる」というメリットがあります。本が多すぎて、ダンボール箱に詰めて押入れにしまったり、貸し倉庫に預けていたりすると、読みたい本を読みたいときに読むことができません。どこかにあるはずだけれど、本が多すぎて見つからない場合も同様です。こういう場合、しまうよりも、使うことにフォーカスすることです。本棚に並べられる量まで蔵書の数を絞る。それによって、お気に入りの一冊をいつでも手に取れるようにすることが幸せを生むわけです。取り出しやすさ優先で片づけるこうした事実を踏まえると、「幸せになれるモノにアクセスしやすい環境」をつくることが片づけのポイントだとわかります。つまり、片づけでは「取り出しやすさ」を優先するべきです。まず、探さなくては取り出せないとか、どこにしまったかわからなくなるというのは論外。置き場所は使う場所のすぐそばに決める。使用頻度の高いモノほど身近に置く、といったことにも気をつけましょう。実は、こうした考え方は、誰しもある程度は実践できています。スマホを物置にしまい込む人はいないでしょう。それどころか、家にいるときでも、いつも手近に置くようにしているはずです。使えば使うほど幸せが増すようなモノについては、これと同じ考え方で配置を決めていけばいいのです。何を捨てるかを考えるのではなく、もっと使いたいモノ、いつも使いたいモノをどう配置するか、という発想で片づけをしていくようにしましょう。すると、使わないモノ=捨ててもいいモノは自動的に見えてきます。Pointモノは「持つ」より「使う」ことに価値がある。取り出しやすい環境をつくり、幸福度を高めよう。
メリット4片づけで「空間+時間+気持ち」のゆとりができる無駄な「目標」も片づける片づけでのメリットで一番わかりやすいのは、何といっても「ゆとりある空間と時間」、そして「気持ち」でしょう。片づいた環境では、探しものをする必要がありませんし、そのために時間を浪費することもありません。好きなモノだけがある空間で、好きなことに時間を使える、ゆとりある生活ができるわけです。そして、片づけることでゆとりが生まれるのは、モノだけではありません。長時間労働が問題になっていることもあって、最近は「時短」と称し、なるべく早くたくさんの仕事をこなすというコンセプトのビジネス本が流行っています。けれども私は、本当にゆとりある幸福な生活を目指すのであれば、「仕事のスピードアップ」というやり方とはまったく別の方向を目指すべきだと考えています。スピードを上げるのではなく、やることを減らして集中すべきなのです。たとえば、忙しいビジネスパーソンを中心に、速読を身につけたいという強いニーズがあります。ここで私の考える〝最高の速読〟とは、読まない速読です。本の最初から最後まで、愚直に目を通してはいけません。まずは読む価値のある本か、ない本かを即座に判断し、読むべき本に時間を集中して使えるようになることです。どうでもいい本を自分の周囲から追放し、本当に自分に必要な本を、ゆとりを持って読むことが必要なのです。また、目標も、減らしたほうがいいものの一つです。向上心があるのはいいのですが、やたらにたくさんの目標を立てたがる人がいます。当然のことですが、目標が多くなればなるほど集中力は分散しますから、成果が出づらくなります。たくさんビジネス書を読んで、セミナーにも通って、精力的に頑張っているように見えて、ちっとも成長しているように見えない人というのは、目標が多すぎて集中力や時間を分散させてしまっている。だから変われないのです。もしも10万円、自由に使えるお金が不意に転がり込んできたら、誰もがその10万円を「前からほしかった何か」を買うために使うと思います。ところがその際に、時間や労力、集中力の使い方がわからないあまり、10円の小さなチョコを1万個イッキ買い、といった極端な使い方をしてしまう人が多いのです。やたらにタスクを増やして全部こなそうとする人、むやみに本を買い込んで速読しようとする人、目標を次々に立ててどれも達成できない人は、みんな自分にとって「本当に大事なこと」がわかっていないため、この状態に陥っています。そこから脱するためにも、自分にとって本当に必要なものを選ぶという片づけの発想が必要なのです。片づけは最高の意思決定トレーニングその意味で、散らかった部屋を片づける狭義の片づけは、人生のあらゆる場面で役に立つ意思決定のトレーニングになります。たくさんあるモノの中から、何が重要なのかを決めて、自分で確信をもって選び取らないといけないのが片づけです。未来はどうなるかわかりませんから、意思決定には不安がつきまといます。そのため、「もう使っていないバッグだけれど、いずれアウトドアに出かけるときには必要になるかもしれない。一応残しておこう」。こんなふうに考えてモノを捨てられない人がいます。必要になるかもしれないから残しておく、とは結局のところ、不要なものを環境に選ばされているだけです。環境に選ばされている人は、自分で意思決定ができないということですから、まわりに流される人生を送ることになります。何を持つかを自分で選べない人が、ビジネスにおいて正しい選択ができるはずがありません。誰と付き合い、どんなキャリアを歩むべきかを選ぶこともできないでしょう。流される人生でいい、と思っている人はそれでもかまいません。そうではなく、自分で人生を選びたいと考えるなら、まずは片づけでしっかりと意思決定ができるようになることです。「これを持ってキャンプに行くくらいなら新しいのを買うし、キャンプに行くくらいなら自分は海外旅行に行きたい。だから、もうこのバッグはいらない」こんなふうに自分で決断を繰り返すことで、意思決定力は磨かれていきます。片づけは、意思決定のトレーニングとしても活用できるのです。Point
仕事のスピードアップではなく、やることを減らそう。片づけで、大事なモノと目標を選び取ることができる。
メリット5片づけでコンパクトに生活し、「居住環境」を思いのままに選択する同じ家賃で、より利便性の高い場所に住める厳選したモノだけを持ってコンパクトな生活をするようになると、思わぬメリットも生まれます。モノが少ないと、狭い部屋でも快適に過ごすことができます。だから、高い家賃を払って広い家を借りなくても、コンパクトな空間で満足して暮らせるのです。狭い部屋でよければ、便利な都心部など住宅コストが高い地域にも住めるようになるなど、居住環境を選ぶ自由度が上がります。これが人生に大きなインパクトをもたらします。アメリカの都市経済学者、エンリコ・モレッティのアメリカでの研究によれば、住むところがその人の年収に大きな影響を与えるといいます。本をたくさん持っていてもローコストで引っ越せる理由住む場所を変えることで得られるのはお金だけではありません。より自分の理想に合った人間関係、生活環境が手に入ることはわかりやすいでしょう。たとえ大都市に住みたいとは思わなくても、コンパクトに暮らしているほうが居住地を選びやすく、移動しやすいのは言うまでもありません。たとえば、服をハンガーラック1つぶんにしておけば、引っ越しのときにはラックごとカバーをかけて運んでもらうだけで終了です。私は本だけはたくさん持っています。だから引っ越しのときに手間がかかるかというとそんなことはありません。棚にある本を順番に段ボール箱に詰めて、番号を書いておく。新居では、番号順に棚に戻していく。これだけです。本が詰まった箱はとても重いので、引っ越し会社の人は大変だと思います。しかし、多くの会社の料金計算は箱1つにつきいくら、というのが基本なので、箱の中身が重い本だからといって割高になるわけでもありません。何か夢中になる趣味を持っている人、コレクター気質のある人でも、分野を1つ(私の場合は本)に厳選しておけば、十分にコンパクトな生活といえます。すると、引っ越しのときにかかるお金や手間を最小化できるのです。片づけによってコンパクトな暮らしを手に入れることは、どこに住むか、それによってどんな人生を選ぶか、という選択肢を大幅に増やしてくれるわけです。Point部屋を片づければ、年収もアップさせることができる。コンパクトに暮らすメリットは、移動の手間とコストの低さ。
第3章迷わずに捨てる!モノが勝手に減っていく7つの質問
Introduction捨てられない人は、どうすれば捨てられるのか?これまでの章で、何を持つべきか、何を捨てるべきかという片づけの基準をある程度、持つことができたと思います。次は、その基準にしたがって、いかに片づけを実行するかが問題です。簡単にいうと、「そうはいってもなかなか捨てられない」という人が、具体的にどうすれば捨てられるようになるのか、という話です。前章で述べたように、本当に必要なモノ、大切なモノがわかれば、それ以外は「捨てるべきモノ」と判断できるはずです。ただ、判断できたとしても、いざ捨てるとなると抵抗を感じてしまうのが人間の(特に、片づけを苦手とする人の)心理です。これを乗り越える実践的なノウハウが必要なのです。この章では、捨てられない人が捨て体質になれる思考法として「モノが勝手に減っていく7つの質問」を紹介していきます。質問1:「いったん捨てたとして、これを買い直すか?」(買い直し思考)質問2:「長期旅行に持って行きたいモノか?」(トラベラー思考)質問3:「誰かが買ってくれるとしたら売るか?」(ネットオークション思考)質問4:「あの日に戻れたとして、やはりこれを買うか?」(タイムトラベル思考)質問5:「お金が無限にあったら、本当にこれを買うか?」(大富豪思考)質問6:「これを何回我慢すれば、ほしいモノが買えるか?」(ほしいモノ変換思考)質問7:「3年、5年、10年経っても必要か?」(ロングスパン思考)この7つの質問は、片づけをするときに使える実践的なツールです。自分の感覚に合いそうなモノを3つ覚えておいて、実際に片づけながら「これ、捨てようかな?でも、ちょっと惜しいな」などと迷ってしまったときには思い出して自分に問いかけてみましょう。それによってどれだけ捨てやすくなるかを体感してください。
質問1「いったん捨てたとして、これを買い直すか?」本当に必要なモノがわかる(買い直し思考)迷ったら、捨てた後のことを想像してみる1つめは「買い直し思考」についての質問です。これは、捨てるかどうか迷ったときに、捨てた後のことを想像してみるというものです。捨てるかどうか迷うモノ、なかなか捨てられないモノがあったら、いったんそれを捨てたと想像しましょう。その上で、「これを買い直すかどうか?」と自分に質問するのです。長い時間をかけてコレクションしたモノのように、捨てられないモノがたくさんある場合には、それらを全部まとめて処分したと考えてみましょう。そして、「このうち、買い直すのはどれか?」と自問するようにします。このように自問自答して「これは確実に買い直す」と言えるモノがあったとしたら、それは本当に大切なモノ、必要なモノだから残せばいいのです。ただ、実際にこの質問をしてみると、ほとんどのモノは買い直さないという結論が出ることが多く、結局、捨てられるようになるはずです。片づけのとき、「これを捨てるべきか、捨てざるべきか」と自分を問い詰めてしまうと、どうしても現状維持の法則が働いて捨てにくくなってしまいます。これが、「わかっていても捨てられない」理由です。買い直し思考は、いわば、思考をひっくり返すことによって、保有効果と損失回避から逃れる方法です。もう捨ててしまった、という前提で考えることで、捨てるかどうかの判断を抑制する。その上で、買い直すくらい大事なモノを選ぶわけです。私の場合は、買い直し思考を使って本をポンポン捨てられるようになりました。どんな本にも1つくらいはおもしろい部分、ためになる部分がありますから、どれを捨てるかと考えると、「どれも捨てがたい」と思ってしまいます。ところが、蔵書を全部捨てたと考えると、買い直したい本は科学書や古典などに限られることに気づきます。そうして、それ以外の本はどんどん処分できるようになったのです。私にとっての本のように、心から好きなモノであっても、買い直し思考を使えば捨てるべきモノは捨てられます。コレクションを整理したい、圧縮したいと考えている人は、「全部捨てた」と考えてみるのがオススメです。クローゼットの前で「ここはお店だ」と考えてみる多くの人にとっては、買い直し思考が特に有効なのは衣類の片づけでしょう。クローゼットやタンスの中は、たいてい大量の衣服がぐちゃぐちゃに詰まっているものです。この中から「どれを捨てようか」と考えはじめたら、いつまでたっても捨てられないのは当然です。そこで、買い直し思考のちょっとした応用形を使います。「ここはお店だ。服を売っているお店だ」と自分に5回くらい言い聞かせてください。それから、そこにある服のうち、自分が買いたいモノだけを選んでいくのです。これを試すと、劇的に衣類が減ります。もしも、ぐちゃぐちゃのクローゼットの中を見て、「どれも買いたくない」と思ったのなら、それはそれでOKです。今持っている服を全部処分して、本当にほしい服を買い直せば確実に半分以下にはなるでしょう。Point
捨てられないときは、「買い直したいか?」と問いかけてみる。ゼロベースで、本当にほしいモノを選び直す。
質問2「長期旅行に持って行きたいモノか?」必要なものを自然に選べる(トラベラー思考)それは、長期旅行に持っていくほど必要か次の「トラベラー思考」の質問も、やり方はきわめて簡単です。自分が3か月以上の長期旅行に出かける準備中だとします。目の前には荷物を詰めるためのトランクがあります。今、捨てるかどうか迷っているモノは、このトランクに詰めたいでしょうか?「これは旅行に持って行きたいモノか」「一緒に旅したいモノか」と自分に問いかけてみるのです。このとき、本当に大事なモノなら、ぜひともトランクに詰めたいと感じるはずです。「特に必要ない」と思えたモノは、実は自分にとって必要のないモノだった、と気づけるわけです。よりリアルに考えるために、実際にトランクを用意して、長期旅行に持っていきたいモノを詰めてみるというのもいいでしょう。自分が生きていくのに必要不可欠なものが意外と少ないということがわかるはずです。この思考法を試してみると、「自分が本当に大事にしていたモノって、たったこれだけだったのか!」と驚くはずです。旅行は片づけを加速するチャンストラベラー思考を最大限活用するための方法として、実際に旅行に出てみるのもおすすめです。実は、旅行から帰ってきた直後は、部屋が最も片づくときです。旅行中は、普段は味わえないような楽しい経験をたくさんします。それだけ楽しい時間だったにもかかわらず、今、目の前にある持ちものはトランク1個分だけなのです。この経験から、人は「モノが少なくても楽しく暮らせるんだ」「モノを減らしても怖くないんだ」「むしろ、モノが少ないほうが楽しめたじゃないか」といったことを自然に学べるのです。旅行をすることの意義とは、何といっても経験が増えることです。そして、それと同じくらいに、自分は意外と必要でないモノを抱えていた、と気づけることも重要なのです。ですから、「旅行をするつもりで考えるなんてまどろっこしい」、と考える人ほど、ぜひ一度、できるだけ長い旅行に出かけてみてください。それも効果的なトラベラー思考の使い方です。また、近々引っ越しを控えている人もチャンスです。予算や時間が限られている場合が多いので、引っ越すときには持っていくモノと処分するモノを選ぶことになります。ここで「わざわざ新居に持って行きたいモノか」という「引っ越し思考」を働かせるようにしましょう。引っ越しで片づくのは当然じゃないか、と思われるかもしれませんが、そういう人に限って、なんとなく持ってきた荷物が段ボール箱に入ったまま物置に積み上がっていたりするものです。あくまでも大事なのは、引っ越しという機会を利用して自分で選ぶことです。トラベラー思考にせよ、引っ越し思考にせよ、「本当に持って行きたいモノか」と自問自答して選択することを忘れないようにしてください。Point
旅行中もそばに置いておきたいかで見極める。引っ越しや旅行は、必要なモノを厳選するチャンス。
質問3「誰かが買ってくれるとしたら売るか?」売ってもいいなら不要品(ネットオークション思考)捨てにくいモノの片づけに効果あり!ヤフオク!やアマゾンのマーケットプレイスなど、個人がネット上でモノを売れる仕組みは以前からありましたが、最近ではさらに便利でとっつきやすいサービスが次々に増えてきました。これらを活用するのが、「ネットオークション思考」の質問です。ちょっと捨てにくいモノ、捨てるのは惜しいと感じるモノがあったとき、「これを誰かが買ってくれるとしたら売るか?」と考えてみましょう。捨てることに損失回避の法則が働きやすい人、つまり損に敏感な人でも、売ってお金をもらえるとなれば「それなら手放そう」と考えやすくなります。買ったのはいいけれどあまり着ていない服などは、「ほとんど新品なのに、捨てるなんてもったいない」と思ってしまいがちです。ところが、売れるとなると急に手放しやすくなります。一方、たとえお金を積まれても、ぜったいに売りたくないモノもあるはずです。それは何度も読み返している愛読書かもしれませんし、何度も修理しながら履き続けている靴かもしれません。私の場合でいうと、猫の絵を描いてもらったお気に入りのマネークリップは絶対に売りません。本でも、気に入った本には書き込みをするので、世界に一冊しかない、自分だけの本になっています。たとえ新品がすぐに手に入る本だとしても、自分だけの一冊は売りたくありません。ここに、ネットオークション思考の真の狙いがあります。いらないモノを手放しやすくするのと同時に、絶対に売りたくないモノだけに囲まれた生活が実現するのです。これは、お金では手に入らないモノに囲まれた生活と言い換えることもできます。こういう生活を送る人は、間違いなく幸福でしょう。「これを誰かが買ってくれるとしたら売るか?」と考えて、「売る」という答えが出たモノについては、実際にネットオークションで売ってもいいですし、売る以外の方法で処分するのにも抵抗を感じなくなるはずです。本などは寄付もできますし、ユニクロのように自社商品のリサイクル、リユースをしている企業もあります。もちろん、誰かにあげてしまうのもいいでしょう。メルカリ、ブクマ!、代行出品サービスなども使えるツールたとえばメルカリなどのサービスなら、利点はいらないモノを売るときに、スマホを使って手軽に出品できるところです。売りたい商品をスマホで撮影し、出品。商品が売れて支払いを確認したら、商品を発送する、という手軽さで、手間がかからず、時間を取られなくて済みます。税務的にも、洋服や生活用品を売却した収入は譲渡所得となり、一定金額を超えなければ、基本的に課税されません。ですからメルカリは、時間と税金のかからないサービスといえます。このメルカリ以外にも、使えるサービスはいろいろあります。たとえば、サマリーポケットというトランクサービスは、1箱単位で荷物を預けられるだけでなく、預けたモノをヤフオク!に代行出品し
てくれるサービスもあります。もちろん、手数料は取られますが、自分で売るのは面倒くさいという人におすすめです。本をまとめて売るなら、宅配便で無料集荷して査定、買い取りをしてくれる古書店が今はたくさんあります。自分でブックオフに持っていくよりラクですし、査定額も高めですから活用しましょう。個人的におすすめなのは、ブクマ!という本のフリマアプリです。本のメルカリだと思えばいいのですが、このアプリでは買い手が本を探している人たちなので、比較的マニアックな本でも相応の価格で売れたりします。1つ注意するべきことは、モノを売るおもしろさにハマりすぎないことです。メルカリにしろ他のサービスにしろ、モノが売れて多少なりともお金が儲かるのは楽しいものです。写真の撮り方や説明文を工夫するのも、やってみるとおもしろくなってきます。そのため、ついつい手間と時間をかけすぎてしまうことがあります。しかし、片づけによって人生を最大化する、という目的からすれば、わずかなお金と引き換えに時間を大量に消費してしまうのでは本末転倒です。もちろん、いずれ自分で本格的に商売をやってみたい、そのための練習も兼ねてまずは自分の持ちものを売るのだ、といった目的がある人なら話は別です。そうでもない限りは、時間と労力の投入は最小限にすること。その意味では、売ってもいいモノ=いらないモノだと判断できたら、人にあげてしまうのが一番手っ取り早いでしょう。Point買い手がいるなら売りたいかどうかで決める。豊富なツールを利用し、より快適な生活を手に入れる。
質問4「あの日に戻れたとして、やはりこれを買うか?」購入日にさかのぼって考える(タイムトラベル思考)本当に必要なモノがわからなくなった人への質問「タイムトラベル思考」は、あるモノを買ったその日にタイムトラベルしてみる質問です。「もし、あの日に戻れたら、自分はこれを買うだろうか」と自分に問いかけるのです。もちろん、このタイムトラベルでは、現在の思考を持ったまま、購入日に戻ります。おそらく、捨てるかどうかを迷うくらいの価値しかないモノなら、ほとんどは「あの日に戻れたら、買わない」という結論が出るはずです。それだけでなく、「こんなモノを買うんじゃなかった」「これを買わずに、もっと有意義なお金の使い方をするべきだった」という後悔がこみ上げてくることも多いでしょう。エクササイズ器具やダイエット用品、美容器具、サプリメント……といったあたりは、この手の物件の宝庫です。もしも、あの日に戻れるなら買わない、というモノは、当然いらないモノです。けれども、怖いのは、そんなモノでもお金を出して買ってしまうと手放すのが惜しくなり、その価値を見誤ってしまうことです。これも保有効果の一種ですが、「お金を出して買ったんだから、これは自分にとって必要なモノに違いない」と人は考えてしまいがちです。買いものに失敗した自分を一度や二度、こんなふうに慰めるくらいならいいでしょうが、なかなかそうはいきません。本当はいらないモノを買い、「高いお金を出したんだから、これは自分にとって必要なモノなんだ!」などと信じ込むことを繰り返していると、しだいに本当にほしいモノ、本当に必要なモノが見えなくなってきます。そしてやがては、自分が何をしたいのかもわからなくなってしまいます。こうなると、部屋に無駄なモノがあふれかえるくらいでは済みせん。まさに人生を誤りかねない病です。ダイエット食品にお金をつぎ込み続ける人というのは、この典型例です。高価なダイエット食品には、本来は安く買えるサプリメントを魔法の薬のようにうたって余計な成分を加えて売っているような商品も大変多く、それでは効果が出ないのも当然です。それを買ってしまった自分の失敗を認めたくないから、「これはとても効果があるんだ」と自分に信じ込ませて買い続ける。自分は間違っていないことを証明するかのように、同じようなダイエット食品をまた買い込む、というわけです。これは、怪しげなセミナーやマルチ商法にお金を注ぎ込み続ける人とも共通する心理状態です。そんなことにならないためには、過去に自分がしてしまった、間違った選択を振り返ることです。そのための簡単な方法がタイムトラベル思考で、「あの日に戻れたら、これを買うだろうか」と自分に問いかけるだけでいいのです。失敗を認めて、後悔するのは愉快なことではないでしょう。けれども、自分にとって何が必要か、自分は何がほしいのかを見失う恐ろしさにくらべれば、どうということはないはずです。「もう買わないモノ」はNottodoリストに記録するかくいう私も、デジタル関連ツールについては、これまでかなり無駄な買いものをしてきました。特に、危うく買ってしまいそうになるのがケーブル類で、ときどき「もっと充電効率が高いケーブルがあるのでは」「もっとデータの転送が速いケーブルがほしい」といった欲望が噴き出して、大量のケーブルを買い込んでしまうのです。あまりにひどいので「突発性ケーブル病」と名づけたくらいです(最近は治まっていますが、油断すると再発するかもしれません……)。
私の場合はケーブルですが、ダイエット食品、化粧品、衣類など、つい自分が無駄な買いものをしがちな分野は誰にでもあると思います。そこで、タイムトラベル思考と組み合わせて行ってほしいのが、「もう買わないモノ」をリスト化すること。「あの日に戻れたら、もう買わない」というモノがあったら、それを処分するだけではなくて、記録を残しておくようにします。「これはもう買わない」というNottodoリストを作るのです。なぜいらなかったのか、なぜほしいと思ってしまったのか、も書き添えておけばベストでしょう。タイムトラベル思考によって過去に戻ることで、いらないモノに気づけるだけでなく、未来における買いものの失敗を防ぐことができるようになるのです。Point「あの日に戻れたら買うか?」を自問し、失敗も認める。そして「買わないモノ」を記録し、これからの買いものに生かす。
質問5「お金が無限にあったら、本当にこれを買うか?」無駄なモノを買わない(大富豪思考)自分にとって「一番いいモノ」を選び抜く方法「大富豪思考」の質問は、主にこれから買うモノを減らすためのものです。片づけが進んで、モノが減った段階で使うと効果的です。何かを買いたくなったら、「お金が無限にあったら、本当にこれを買うか?もっといいモノを買うのではないか?」と自分に質問してみましょう。この質問をすると、中途半端なモノを買うことが劇的に減ります。たとえば、手頃な値段で性能のいいコンパクトカメラが発売されて、ほしくなったとしましょう。では、自分が大富豪で、お金が無限にあるとしたら、そのカメラを買うでしょうか。いや、買わないはずです。いくらでも高級なカメラを買えるからです。あるいは、100円ショップで見つけたプラスチックのケースが、ピルケースの代わりとして便利に使えそうだと感じたとします。でも、大富豪がこれを買うかと考えてみると、「待てよ」となります。大富豪は100円のピルケースは使わないでしょう。このことからわかるのは、人はお金があるからたくさんモノを買うのではない、ということです。お金があって「いつでも買える」と思うと、心に余裕が生まれて人はモノをそれほど買わないものです。お金が少ないからこそ、人は衝動的に安いモノをたくさん買ってしまうのです。その結果、どうなるかというと、身の回りはモノで散らかり、集中力は低下し、仕事の効率が下がってしまう。すると、目的は達成できないし、したがって成功することもお金持ちになることもできないわけです。今すぐに大富豪になることは難しいですが、モノを買うかどうか判断する一瞬だけ、大富豪のように思考することは難しくありません。「お金が無限にあったら、これを買うか?」と自問するのは、「本当にこれは自分にとって一番いいモノなのか」と考えることです。そう考えると、お金を払う価値があるものはそう多くないと気づきます。大富豪は、中途半端なモノに魅力を感じない大富豪思考を習慣化し、常に一番いいモノを意識するようになると、中途半端なモノに対して魅力を感じなくなります。中途半端なモノとは、要するに、手の届きやすい値段だけれども、本当にほしいかといわれるとそうでもないモノのことです。中途半端なモノに囲まれた人生が望ましいとは誰も思わないでしょう。ただ、大富豪思考はかなり極端な思考実験ですし、ありとあらゆる買いもので「お金が無限にあったら、これを買うか」と考えていたら、買えるモノがなくなって生活に支障が生じかねません。ですから、次の2点に絞って、大富豪思考を発動するという使い方をおすすめします。●自分が無駄に買いすぎてしまう種類のモノ(洋服、文具など)●自分がつい無駄遣いをしてしまう場面(100円ショップに行ったとき、ホームセンターに行ったとき、カメラの専門店に行ったときなど)
中途半端なモノを買わなくなれば、無駄なモノは自然に減っていきます。自分の本当に好きなモノだけに囲まれて生活できるので幸福度は上がりますし、生活がコンパクトになり、前章で見たように、居住環境選びの自由度が上がります。実際に大金持ちが住んでいるようなエリアでも、コンパクトな物件なら借りられるでしょう。管理コストも含めて無駄な出費が減りますから、自分が本当にやりたいこと、価値ある経験(たとえば旅行)にお金を使えるようになります。もちろん、浮いたお金を貯めていけば、大富豪思考で思い浮かべた「自分にとって一番いいモノ」を買うこともできるわけです。この思考法の効果をさらに高めるために、中途半端なモノへの細かい出費を記録してみるのもいいでしょう。カードで買いものをする人なら、全自動で出費を記録してくれる家計簿アプリ(「マネーツリー」など)もあります。自分がつまらないモノにお金を使っている、という事実を客観的な記録として目にすると、さらに無駄な買いものは減っていきます。Pointお金が無限にあると仮定し、本当にほしいか問いかける。妥協をやめて、一番いいモノに囲まれて暮らそう。
質問6「これを何回我慢すれば、ほしいモノが買えるか?」我慢がつらくなくなる(ほしいモノ変換思考)「〇回の我慢」を意識して、本当にほしいモノを手に入れるこの「ほしいモノ変換思考」の質問も、前項同様、買いたいモノがあるときに使います。何かを買おうと思ったときに、「これを何回我慢したら、自分がほしいモノが買えるか?」と考えてみましょう。買いものを我慢するのがつらいという人も「〇回の我慢でほしかった時計が手に入る」と思えば、楽しみが勝って無理なく無駄な買いものを減らせるわけです。私がこれをよくやるのは、短い距離でタクシーに乗ろうとするときです。「ワンメーター乗って410円か。アマゾンで文庫本を1冊買えるな」と思うと、やっぱり歩こうということになります。変換に使うほしいモノを、価格の安いモノに設定すると、1回とか2回とかの我慢で結果が出るので、手っ取り早く効果を感じられます。逆に、まとまった金額に変換しやすいモノとしては、飲み会があります。1回飲みに行く費用が4000円だとして、10回我慢すると4万円ですから、それなりのモノに変換できます。10回程度なら、「あと〇回でほしいモノが手に入る」とカウントダウンしていくのも楽しめるでしょう。「二段階変換」で大きな結果を引き寄せるほしいモノ変換思考を、もう一歩推し進めた「二段階変換」も、ぜひ試してほしい方法です。これは、何かを我慢することによって何かが手に入る、という第一段階のいいモノ変換に加えて、手に入ったモノがさらに大きな結果につながる第二段階まで考えるというものです。たとえば先程の私の場合なら、タクシーに乗るのを1回我慢すれば文庫本が1冊手に入ります。文庫本が手に入ったら、今度はそこから得たアイデアやおもしろい知識を活用して、ニコニコ動画で配信します。前にも書きましたが、私のチャンネルでは、1回の配信でだいたい20~50人くらいの入会者がいます。平均して30人というところでしょう。会費は月額500円で、ニコニコ生放送ではチャンネル登録の平均継続年数は平均22か月といわれています。ということは、500円×30人×22か月=……と計算してみると、タクシーを1回我慢して手に入れた文庫本が、どれほどの価値に変換されたのかがわかります。このように、二段階変換を考えると、ちょっとした我慢が大きな価値を生み出すことを実感しやすくなります。すると、ますます我慢が楽しくなるわけです。自分に合った変換方法でOK!二段階変換思考を活用するポイントは、自分なりのやりやすい変換を見つけることです。私の場合は、個人で仕事をしているので、前述のようなビジネス上の利益への変換がやりやすい環境です。これに対して、会社勤めをしている人の場合は、自分のために使える時間や労力への変換のほうがわかりやすいことも多いでしょう。たとえば、前に挙げた飲み会の例でいえば、1回我慢するとそのぶんのお金が浮くわけですが、それに加えて、3時間くらいの時間を得る
ことができる。これを使って勉強をしたら、将来のキャリアにどんなプラスがあるか、と考えるのです。我慢してつくった時間、行動力を何に使おうか、どうやって自分の未来に役立てようか、と考えるのは楽しいものですし、しかも3時間ものボリュームがあるとなると、本当にワクワクしてくるでしょう。もちろん、楽しさやワクワク感といった感情は幸福に直結しますから、これ自体を変換の目的にしてもかまいません。たとえば、なんとなく同僚と一緒にランチに行っていたのを我慢してコンビニのご飯で済ませ、浮いたぶんのお金で好きな文庫本を買って読む。読書をしている時間が心から楽しく、幸せなら、それだけでも変換は成功です。その楽しさを忘れないようにして、常にほしいモノ変換思考を働かせるようにしていきましょう。「好ましくない使い方」を想像してみる逆に、好ましくないお金や時間の使い方をしてしまったらどうなるか、を考えてみるという方法も使えます。金曜の夜に飲み会に行って3000円と3時間を使い、翌日はせっかくの休日を二日酔いのせいでだらだらと過ごした上に、「行かなきゃよかった」と悔やんでいる自分……。そのときの感情を想像してみてください。これに対して、飲み会に行かずに、3000円で分厚い名著――たとえば社会心理学の名著、ロバート・B・チャルディーニの『影響力の武器』(誠信書房)を買って、週末を使ってじっくり読んだ場合にどれだけのものが得られるか、そのときの気分はどうかなどとも想像してみましょう。二日酔いの自分と週末読書の自分、両者を比較して、はたして自分はどちらを取るか、を考えてみると、何を我慢して、何に変換するべきかが見えてきます。もちろん、仲間とお酒を飲むことが心から楽しい、という人だっているでしょう。それはそれで結構です。本を買って読むよりもこの飲み会に参加したい、と感じられるのなら、それは参加する価値のある場であるということになります。大事なのは、なんとなくお金や時間を使うのではなく、自分にとって大切なことにリソースを投入すること。そのための、ほしいモノ変換思考なのです。自分なりの「ほしいモノ変換」のパターンを見つけられると、余計なことはしなくなりますし、節約のためのつらい我慢もなくなります。より価値の高いお金や時間の使い方を自然に選択できるようになっていくのです。機械的に変換してしまう手もあるほしいモノ変換思考の応用として、思考さえせず、機械的に変換してしまう方法も紹介しておきましょう。用意するモノは貯金箱です。これを玄関に置いておいて、帰宅したら財布やポケットの中にある小銭を全部入れることに決めてしまいましょう。つまり、所持金のうち千円未満の部分は全部貯金してしまうのです(余裕のある人なら、1万円未満は貯金、というルールにしてもかまいません)。これをやると、本当に、あっという間にお金が貯まります。毎日たくさんの硬貨を貯金箱に吸い込まれるのはきつい、と感じることで、つまらない買いものでお札を崩さなくなりますから、やはりお金が貯まります。ついでに、小銭を持ち歩かなくなって、財布の中が片づきます。私は、この方法で貯まった小銭は寄付するようにしています。ちょっといい気分になれるからです。つまり、帰宅したら小銭を貯金箱に入れる、という自動的で機械的な「ほしいモノ変換」によって、小銭をいい気分に変換しているわけです。あるいは、貯まった小銭を自己投資に回すのもおすすめです。週に1回、あるいは1か月に1回といったペースで貯金箱を開き、入っていた金額のぶんだけ本を買うのです。財布の中に入っていたらつまらない買いものに使っていたかもしれない小銭を、読書という自己投資に変換できるわけです。貯金箱一つで機械的にできるこの仕組みは、「ほしいモノ変換思考」の威力を実感するのにうってつけの方法です。まずは、これから試してみるのもいいでしょう。Point我慢することで得られる利益を想像しよう。貯金箱で機械的に習慣をつくるのも有効な手。
質問7「3年、5年、10年経っても必要か?」いったん過去にさかのぼり未来を見通す(ロングスパン思考)「買わなきゃよかったモノ」を思い出す最後に紹介するのは「ロングスパン思考」の質問です。何かほしいモノ、買いたいモノがあったとき、「これは3年、5年、10年経っても必要か?」と自分に問いかけます。はたしてそれは長い目で見て必要か、と考えるのです。こういうと簡単なようですが、実はこのロングスパン思考はなかなか難しいものです。3年先、5年先、10年先の自分、置かれている環境をリアルに想像するのは簡単ではありませんし、まして正確に未来を見通すことなど不可能です。そこで、ロングスパン思考を実践するためには、前に紹介したタイムトラベル思考と組み合わせるのが有効です。今から3年前くらいに買ったモノで、「あの日に戻れたら、自分はこれを買うだろうか」と考えたときに、「買わなきゃよかった」と思うモノがあるでしょう。けれども逆に、やはり3年前に買ったモノで「買ってよかったな」と思うモノもあるはずです。このような、「買ってよかったモノ」「買わなきゃよかったモノ」を、思いつくままに書き出していってみましょう。このリストアップ作業をしていくと、次のように、自分が必要としているモノ、そうではないモノの傾向が見えてきます。「万年筆は今でもよく使っているから、買ってよかった。でも、一緒に買ったノートカバーは、重いし邪魔だしで、あまり活用できていない。これは買わなければよかった……」「このカメラは結構高かったけれど、最近はスマホのカメラばかり使っている。iPhoneの性能がどんどん上がっているから、外で仕事に使うつもりだったノートパソコンとワイヤレスマウスも必要なくなってしまった。これも買わなければよかったモノだな……」こんなふうに考えていくと、「自分は使いやすくて気軽に持ち運べるモノ、フットワークよく使えるモノを必要としているんだな」という傾向が、なんとなく見えてきます。価値観、思考のクセ……自分を知るためのトレーニングそうすればしめたものです。何かほしいモノがあったら、「自分にとって必要なモノは、フットワークが重要だ」という基準を持って、「はたしてこれは、3年後、5年後、10年後も必要なモノか?」とロングスパン思考を働かせることができるのです。後は、財布を買うときだろうと、クルマがほしくなったときだろうと、あるいは住まいや人間関係を選ぶときだろうと、すべての場面で自分なりの基準にしたがってロングスパンでの判断ができるようになるわけです。このように、必要なモノを選ぶプロセスを通じて、自分の価値観や、モノを選ぶときにとる思考のクセ、成功や失敗の傾向、といったものを深く掘り下げることができる、これがロングスパン思考のいいところです。過去を振り返り、未来を見通す過程で、自分について知ることができるのです。その意味で、ロングスパン思考は、最後に挑戦するのがふさわしい、やや上級編の思考法だといえるでしょう。多少の手間はかかりますが、じっくり取り組む価値は間違いなくあります。Point過去にさかのぼり、自分の価値観や思考のクセを知る。
自分を知り、ロングスパンで要不要を見極めよう。
第4章これで二度と散らからない!毎日の片づけ習慣7
Introduction二度と片づけなくていい部屋をつくるには?第3章までに説明したことで、どうやって片づけるか、という基準と方法はつかめたかと思います。すでに片づけをはじめている人もいるでしょうし、もうかなりモノの選別が進んでいる人もいるかもしれません。ここで一つ、注意しておかなければいけないことがあります。部屋を片づけていったんは整理された状態にしても、その状態を保つために、今後も定期的に片づけなくてはいけないのでは意味がないということです。片づけ自体が楽しい人は別ですが、私たちにとって、片づけの目的はあくまでも人生を最大化すること。モノを探したり、たくさんのモノに囲まれて迷ったりすることで、時間と集中力を浪費しないように気をつけるべきです。ですから、今後も片づけ続けなくてはいけないようなやり方はNGです。一度片づけたら、もう二度と片づけなくていいようにするべきなのです。そこで、本章では、いったん家の中が片づいたら、その後はどのように生活をすれば二度と片づけなくて済むのか、を説明していきます。二度と散らからないための片づけ習慣は、次の7つです。習慣1:1イン2アウト習慣2:一日一与習慣3:5秒以内に元に戻せるルール習慣4:6割収納ルール習慣5:数量限定習慣6:写真暗示習慣7:自然に片づく小技の活用なお、二度と部屋が散らからない習慣、といっても、片づけが終わらなければ実行してはいけないということではありません。片づけの最中に、できるところからこの習慣を実行することで、片づけはさらにはかどります。この章で紹介する7つの習慣をしっかりと身につければ、もう部屋が散らかることはありません。大規模な片づけもする必要はありません。それどころか、部屋にあるモノは自分にとって最適なところまで勝手に減っていきます。面倒な片づけは二度としなくて済むように、ここで7つの習慣をしっかりと身につけましょう。
11イン2アウト勝手にモノが減っていく驚きの方法!最初に紹介するのは「1イン2アウト」。文字通り、1つ入れたら2つ出す、という習慣です。無駄な買いものをしなくなったとしても、自分にとって本当に必要なモノを手に入れることは当然あります。何かモノを1つ手に入れたときには、入れ替わりに2つのモノを処分することを徹底しましょう。私は、新しいモノを買ったときには、すぐに家の中に入れたり、使ったりはしません。たとえば通販で買ったTシャツが届いたら、まずは玄関に箱に入れたまま置いておきます。そして、家の中を見回して、処分できるモノを2つ見つけて、実際に捨てるなり売るなり人にあげるなりする手配ができたところで、ようやく新しいTシャツを家の中に入れて使いはじめるのです。このようにして1イン2アウトを実践すると、モノが増えることはありません。それどころか、自然に減っていくのです。1イン2アウトのメリットは3つあります。まずは、今ここで言ったように、モノが勝手に減っていくこと。この方法をすすめると、「1イン1アウトではダメなんですか」と質問されることがあります。入ってくるぶんだけ出せばモノが増えることは防げそうにも思えますが、やはりそれではうまくいきません。1イン1アウトでは、知らないうちに家に入ってくるモノには対応できないからです。本当に必要なモノを見極めて、慎重に買いものをしているつもりでも、人からもらうなどして、知らぬ間に家に入ってくるモノは結構な量があります。ですから、モノが増えない、勝手に減っていくという状態をつくるためには、1つ入れたら2つ出す、というバランスは絶対です。2つめのメリットは、買いもののとき、より慎重に購入するようになること。新しいモノを買ったら、今持っているモノを2つ捨てなくてはならないと考えると、さらに厳しい目で吟味するようになります。つまり、自分が持っているモノ2つを手放してもほしいモノかどうかが基準になるのです。すると、余計なモノを買うことはなくなります。3つめのメリットは、持ちものの機能が統合されていくことです。1つ何かを手に入れるごとに2つのモノを手放していくわけですから、新しく入手するモノは、単純に考えるとそれまであったモノ2つの役割を兼ねていないと不都合が生じることになります。たとえば新しいケーブルを買うなら、2種類以上の端子に対応しているタイプのモノを選ぼう、と考えるわけです。本書で提案しているのは、とにかくモノを減らせばいい、というミニマリスト的な生活ではありません。人生の最大化が目的なのですから、モノは減らしても、機能や生活レベルは落とさないようにしたい。その前提で1イン2アウトを実践していくと、持ちものがさまざまな機能を兼ねたモノに置き換わっていって、機能の統合が進んでいくというわけです。1イン2アウトの習慣は、さまざまな場面に応用が可能です。たとえば人間関係。新しい人間関係がはじまるきっかけは、常に存在しています。全部をうまくやろうと考えていたら、時間がいくらあっても足りません。そこで、1つ誘いや依頼を受けたら、2つは断る、というルールにすると、自分の時間を守りながら人間関係も育てていくことができます。要するに、3つのうち1つを厳選して受けるということですから、自分が特に価値があると感じる人間関係だけが自然に強化されていくことにもなります。
Point1つ買ったら2つ捨てることで、賢い買いものができる。人間関係に取り入れると、関係がブラッシュアップされる。
習慣2一日一与毎日、何か1つを人にあげる捨てる、売る、人にあげるなど、モノを処分する方法はいろいろあります。中でも、一番手軽で抵抗の少ない方法は人にあげることでしょう。捨てるのはもったいない、売るのは面倒、と感じる人でも、誰かにあげるのなら比較的簡単です。そこで、自分の持ちものを人にあげることを習慣化してしまうのが、「一日一与」のルールです。これも読んで字のごとく、1日に1つ、何かを人にあげましょうというだけのことです。あげるモノはなんでもいいのですが、相手がほしがらないようなモノは当然避けるべきです。使い古してあまりにも汚いモノとか、その人にとって使いみちのないモノをあげても仕方がありません。あくまでも、他人のためになるようなモノ、相手が喜んでくれるモノをあげるのです。毎日1つ、持ちものをあげるようにすれば、モノは確実に減っていきます。しかも、次に使ってくれる人がいるということがわかっていると、モノを手放すときの抵抗はグッと下がります。次に使ってくれる人を確保でき、心理的抵抗を減らせるのは売る場合も同様ですが、モノを売るのにはやはりそれなりの手間がかかります。フリマアプリやネットオークションがいかに便利だといっても、忙しくてやっていられないと感じる人もいるでしょう。この点、家族や友人、知人などにあげるというのはなんといっても手軽です(私も、いらなくなった服でかなりの量を弟にあげました)。「利他的行動」で幸福度はアップする手放すことの心理的抵抗が減り、モノがスムーズに減っていく、ということの他に、一日一与にはもう一つ、大きな心理的メリットがあります。それは、利他的行動による幸福度アップです。私の著書では繰り返し紹介してきたことですが、人は、もっぱら自分のためにする利己的行動よりも、利他的行動を取ったときに、より幸福を感じる、というのはアメリカで研究が進むポジティブ心理学における定説です。片づけは好きではない、面倒だ、と感じる人ほど、できれば楽しく片づけをしたいはずです。モノが減ってきれいな環境になっていくこと自体うれしいものですが、それに加えて、モノをあげることで人を喜ばせる、人の役に立つことの幸福感も味わえれば、片づけはさらに楽しくなります。また、幸福度の向上は判断能力や積極性の向上にもつながるということがわかっています。これを利用しない手はありません。もしかすると、「自分がいらなくなったモノをあげるなんて、ちょっと感じが悪いのでは?」「まるでゴミを押しつけてるみたいで……」といった心配をする人もいるかもしれません。それは杞憂です。むしろ、自分にとっての不要品が、誰かにとってのお宝であるケースは思っている以上に多いものです。ネットオークションなどで高値で取引される掘り出し物がまさにいい例です。以前、自分では使わないサイズの付箋をもらったので、仕事で会った編集者にさしあげたところ、「このサイズを仕事で一番使うんですよ」と喜ばれたことがあります。また、私は甘いものを食べないので、手土産でもらったハイカカオのチョコレート以外のお菓子はマンションのコンシェルジュの方にあげてしまうのですが、これも毎回喜ばれます。このように商品化されているモノなら、必ずどこかにはニーズがあるものです。モノをあげて相手を喜ばせれば、ときにはお返しがもらえることもあります。困ったときに助けてもらえることもあるでしょう(実際、マ
ンションのコンシェルジュさんにはいつもよくしてもらっています)。さらに、目に見える見返り以上に大切なことは、モノをあげることによって相手の信頼が得られることです。つまり、一日一与の習慣は、いらないモノを幸福感と信頼に変換できるのです。これほど効率のいい変換はなかなかないでしょう。Point毎日1つ、人にモノをあげて、手放すことに慣れる。「利他的行動」で、幸福感と信頼を手に入れよう。
習慣35秒以内に元に戻せるルールモノの置き場所を〝完全に〟決める次の習慣は、私が実践してみて特に効果を実感した「5秒以内に元に戻せるルール」、略称「5秒ルール」です。この習慣がつくと、部屋がすっきりした状態に保たれるのはもちろん、仕事がはかどり、ストレスが激減することに驚くでしょう(ですから、自宅だけでなく、職場のデスクまわりで実践してみるのもおすすめです)。5秒ルールは、あらゆるモノを、使ったら5秒以内に元の場所に戻せるように配置します。そのためには、使う場所のすぐ近くにモノを置かなければいけないことはすぐにわかると思います。掃除機を物置にしまっておいたら、掃除を終えて物置まで持っていくだけで5秒以上かかってしまいます。これでは面倒になってしまいますから、使う場所と置き場所を近接させておくことは重要です。しかし、それよりも大事なことがあります。それはモノの置き場所を〝完全に〟決めることです。たとえ使う場所と置き場所が近くても、「このへんの棚の空いている場所に置くか、壁に立てかけておく」といった曖昧な決め方では、どう置くかを迷っているうちにたちまち時間が過ぎていきます。5秒で元に戻すためには、きっちりと、完全に、置き場所を決める必要があるのです。また、置き場所をきっちり決めたとしても、あまりにギチギチの収納だと問題が生じます。わかりやすい例が本です。棚にびっしりと本が詰まっているために、一度抜き出した本を元に戻すときに四苦八苦した経験がある人は多いでしょう。本棚の前後2列に本が並んでいる場合などは最悪で、奥の列に本を戻そうとしたら前の列の本が雪崩を起こして片づけに何分もかかる、なんていうことも起こります。メイク道具などの小物類も、引き出しを開けた中のポーチにしまっておく、といったややこしい収納法だと、やはり5秒で元に戻すのは難しいでしょう。引き出しを区切って、小物を種類ごとに奥まで詰め込むのも同様です。そうならないためには、あまりにギチギチな収納、いわゆる「収納小物」を使ったややこしい収納などは避け、一目見てどこに何があるかわかり、さっと取り出せてさっと元に戻せるような、ゆとりある収納にする必要があります(この点は、次項の「6割収納ルール」でも説明します)。では、5秒で元に戻せるような置き場所を決められない、適当な置き場所がないモノはどうすればいいのでしょうか。もちろん、処分です。置き場所を完全に決められないモノは、部屋が散らかる原因であり、ストレスと手間を増やす元凶です。つまり、減らしたほうがいいモノなのです。このように、モノを増やせなくなる、さらに減らさざるを得なくなるところも、5秒ルールのメリットです。置き場所のないモノを置く「空っぽコーナー」を作る5秒ルールは、置き場所のないモノは処分する、という厳しいルールです。だからこそ効果は絶大なのですが、いきなりそれを徹底するのはきつい、と感じる人もいるでしょう。そこで、本当はこういうものはないに越したことはないのですが、というただし書きつきで、「空っぽコーナー」というバッファーを作ることにしましょう。玄関やシュークローゼットの中にスペースを作って、いったんそこに置き場所が見つからないモノを入れておくのです。もちろん、ここにいつまでもモノを置きっぱなしにしてはいけません。1日に1回は、このスペースにあるモノを点検して、捨てるなり、人にあげるなり、もしも正しい置き場所を決められるならそこに戻すなりします。そうやって毎日空っぽにするからこそ、空っぽコーナーで
す。空っぽコーナーは、5秒ルールで処分することになったモノだけでなく、普通にいらないモノ、捨てると決めたモノをとりあえず置く場所としても使ってOKです。大事なのは、とにかく毎日空っぽにすることです。ちょっとしたことですが、この空っぽコーナーがあると、片づけはスムーズに進むようになります。とにかくここにモノを置きっぱなしにしないことだけは気をつけた上で、活用してください。Point5秒以内に戻せるようにすると、ストレスが激減する。「空っぽコーナー」を利用して、置き場所を〝完全に〟決めよう。
習慣46割収納ルール収納するのではなく、飾る前項の「5秒ルール」を守るためには、取り出しやすく、しまいやすい収納にしなくてはいけないと言いました。では、どうすればそうした収納ができるのか。そのための方法がこの「6割収納ルール」です。モノをしまうときには、どうしてもびっしりとしまいたくなるものです。隙間なく、スペースを有効活用しているのが上手な収納だというイメージも根強くあります。そのため、「収納名人」と呼ばれるような人は、細かい区切りを使って引き出しに小物を詰め込んだりしがちです。しかし、取り出しやすく、戻しやすいという観点からすると、ぎっちりと詰め込むのは禁物です。モノとモノとの間に十分な隙間があるほうがいいに決まっています。そこで、スペースの6割しか使わないように収納することをルールにしてしまいましょう。本当は4割が理想なのですが、スペースの都合もあるでしょうから、6割はギリギリのラインです。たとえば棚にモノをしまうのであれば、隙間なく置いてしまうと10割使うことになるのでNGです。重ねたり、前後2列に置いたりすると、10割を超えてしまうので論外。実際、書棚や食器棚でこれをやってしまって使いづらい思いをしている人は多いでしょう。重ねたり詰め込んだりせず、適当な隙間を保ちながらモノを置いていくと、収納しているというよりはモノを飾っている、という感じになってきます。これはとても大事なことです。取り出しやすく、しまいやすいモノの置き方は、収納するのではなく飾ることなのです。お店の商品の陳列棚を思い浮かべてもらうとわかりやすいでしょう。たとえば、アパレルのお店の商品の並べ方は、6割収納ルールの見本です。ハンガーは適当な間隔をあけて並べてありますし、棚にはTシャツなどが種類ごとに数枚ずつ積んであります。お客さんが商品を見たいときにさっと取り出せて、ラクに戻せるようになっているのです。美しく商品を飾ることが、モノの管理のしやすさにもつながっていることがわかります。自宅の収納も、お店のやり方にならいましょう。モノをしまい込むのではなく、美しくディスプレーするという感覚で配置していくと、自然と6割収納ルールにのっとった収納になります。水まわりは4割収納で掃除をラクにまた、水まわりなど、特に掃除を頻繁にしなくてはいけない場所は、もっと厳しい基準で、4割収納くらいにしておくこともポイントです。トイレの床にモノがたくさん置いてあったら床を拭き掃除する気にはならないですし、風呂場にシャンプーなどのボトルが大量に並んでいるのは掃除が行き届かなくなってカビを生やす原因になります。6割収納なんて、家が広くて収納スペースがいっぱいあるからできるんだ……などと思うかもしれませんが、家の広さは関係ありません。真の問題は、家が狭いことではなく、モノが多いことです。今いる家で6割収納ができない人が広い家に引っ越したら、家が広くなったぶん、大量のモノをためこむだけです。家の狭さを言い訳にしてはいけません。Point取り出しやすさ、しまいやすさを考えたら、6割収納。水まわりは4割収納にすると、清潔で快適になる。
習慣5数量限定「ライフログ」を使って必要数量を知る5つめの習慣は、「数量限定」。どのくらいの数を持つかを決めることです。たとえば、所有する服の数を決めてしまうのです。片づけで悩んでいる人に、服を減らしたほうがいいとアドバイスをすると、「そこまでは減らせない。いつも同じ服を着ていると思われてしまうから」という声が上がることがよくあります。特に女性にはこうした考えをされる方が多いようですが、これについては、「あなたの自意識過剰です」とはっきり申し上げたいと思います。人間はそこまで他人に興味を持ちませんし、記憶力にも限りがあります。数日前と同じ服を着ていたとしても、ほとんどの人は気づきません。実際、今日会った人がどんな服を着ていたかさえ思い出せないでしょう。ですから、ファッションが趣味である人を除いて、服のバリエーションを増やすことに、ほとんど意味はありません。服をたくさん買ってしまう理由の多くは、自意識過剰によるものです。もちろん、職種やライフスタイル、ファッションに対する興味などによって、必要な衣類の数は異なります。そこで大事なのは、「自分はどれくらいの服を持っていれば幸せなのか」を見極めることです。たとえばTシャツなら、何枚あれば快適に生活できるでしょうか。夏場に毎日着るとして、週に1回は洗濯できる。だとすると、必要なTシャツの枚数は7枚。週2回洗濯するとしたら、3、4枚でいいことになります。こんな感じで目安を計算すればいいのですが、ここでも一応、毎日の記録を取り、自分がどれくらいの服を使っているのかを調べてみるのがベストです。Tシャツにデニムといったカジュアルな服で暮らす日は週のうち何日あるのか、スーツを着る日は何日か、部屋着のままで過ごす日はないのか、といったことがわかる「ライフログ」をつければ、必要な服の数を正確に知ることができるでしょう。私の場合でいうと、普段はTシャツとカジュアルなパンツで過ごす日が圧倒的に多い。講演などがある日でも、Tシャツの上にジャケットを羽織るだけで済ませることがほとんどだとわかりました。したがって、ジャケットを着るとき用のきちんとしたシャツは必要ない、とわかるわけです。服だけでなく、食器やリネン類など、毎日使うモノについては、同様の方法で必要な数を調べて、数量の最適化をすることができます。同じ機能のモノは3ついらない数量限定を実行するためには、いくつかのコツがあります。「同じ機能のモノは3つは持たない」というのはわかりやすいでしょう。たとえば、便座カバーを洗い替え用も含めて2枚持つのはいいとしても、3枚持つ必要はありません。普通のタオルがあれば、小さいサイズのフェイスタオルを別に持つ必要もないでしょう。ここで数量をかなり絞ることが可能になります。また、2つの機能を兼ねているモノを持つ、というのもおすすめです。最近、私が買ったモノの中で、特に気に入っている靴があります。執筆などの仕事がはかどることもあって、私は南の島によく旅行に行きます。旅先では歩きまわることが多いので、スニーカーのような歩きやすい靴が必要です。同時に、南の島ではやっぱりサンダルを履きたい場面もあります。
しかし、両方を用意していくのは面倒です。サンダルだけでもいいじゃないかという人もいるかもしれませんが、「スニーカーはOKでも、サンダルはNG」というレストランもあるので、困る場面が出てきます。なんとかスニーカーとサンダルの機能をまとめられないか、と探してみたところ、いいモノがありました。マリンシューズです。マリンシューズは一見するとスニーカーにしか見えません。ですから、普通にレストランなどにも入れます。それでいてスニーカーと異なり、メッシュになっているので海辺など水に濡れる場所でも履くことができます。水洗いすればすぐに乾きますし、通気性もいいので裸足でも問題なく履けるのはサンダル同様です。このマリンシューズなら、スニーカーとサンダルの機能を兼ねるので、一足持っていくなり、履いていくなりすればいいわけです(ちなみに、アマゾンなどで「ウォーターシューズ」で検索してもこのタイプの靴は見つかります)。このように、機能を兼ねるモノを持つと、数量を限定しやすくなります。「中3日を空けて1回使用」で服や靴を休ませる本書で繰り返し言っていますが、ミニマリスト的な「とにかく減らせば減らすほどいい」という考え方は不要であることは、この数量限定の習慣でも同じです。毎日洗濯をすれば服は1着でいい、タオルも1枚で足りる、とは私は考えません。モノには適正な分量があります。モノが減っても、そのぶん時間が減ったり、快適さが失われたりするのでは人生の最大化にはつながらないのです。毎日使う衣類やタオルなら、基本的には3つあれば、週に2回の洗濯で快適に生活できます。毎日洗濯するような無駄な労力と時間をかける必要はありません。さらに、会社に着ていくスーツ、それに合わせる靴などは4点ずつ用意するのがオススメです。スーツにせよ革靴にせよ、次回の使用まで、間に中3日を空けるようにして休ませる時間をつくると長持ちする、といわれているためです。すると、毎日着用する場合、次の図のように4点が必要になります。どうせなら気に入ったモノを長く使えるほうが生活の満足度は上がりますし、買い替えの手間も省くことができます。毎日使うモノについては、「3、または4」を基本的な数量と考えてください。
また、限られた数量のモノを使いまわすのですから、メンテナンスに手間のかからないモノを選ぶことも忘れないようにしましょう。私があまりシャツを好きでないのは、洗濯をした後にアイロンをかけなくてはいけないし、襟や袖口が汚れてきたらクリーニングに出さなくてはいけないしで、メンテナンスに手間がかかるからです。ですから、仕事でどうしてもスーツスタイルでなくてはいけない、という人は、干すだけでシワが伸びる形態安定シャツを選ぶなど、メンテナンスの手間をなるべく省くことを考えましょう。もちろん、料金と時間のコストを計算して、そのほうが得だと判断したらクリーニングを活用すればいいでしょう(第1章の『「固定費」の削減でお金と時間を取り戻せ!』参照)。その場合は、週に〇回クリーニング店に持っていく、という前提で必要な数量を決めればいいわけです。職場の服装のルールがゆるい場合や、普段着を選ぶ場合には、洗濯しやすい服を選ぶのがメンテナンスの手間を省くコツです。コートなどでも「つい、ファーつきを買ってしまう」という人は、それが本当に好きならいいのですが、メンテナンスの手間に見合うだけの満足度があるかどうかは考えたほうがいいと思います。片づくファッションのコツは「テーマ」を決めること衣類の数量を絞るためのコツをもう1つ伝授しておきます。クローゼットの中がすっきりする、余計な服を抱えずに済む、「片づくファッション」のコツとは何でしょうか。それは、自分のテーマを決めてしまうことです。あるブランドの服を、「〇〇の服だから」というだけで延々と買い続ける人がいます。あるいは、およそブランド品とみなされるモノであれば、統一感も何もなくやたらに買いまくる人がいます。こういった志向のある人は、自分が何を着たいのか、自分に合うのはどんな服なのかがわかっていません。だから、他人に評価されやすそうな服を片っ端から買ってしまい、クローゼットがあふれることになるのです。これに対して、いつもクローゼットやタンスが片づいていて、それでいて「おしゃれだ」と評価されるような「片づくファッション」を身につけている人はどうでしょうか?そうした人は、「自分がこういう服を着よう」というテーマを決めて、テーマに合致する服だけを買うのです。テーマの決め方は簡単です。もともとおしゃれが好きなら、自分が一番好きなスタイル、自分に最も似合うテイストを絞り込んで、それをテーマにすればいいでしょう。そこまで服に興味がない、という人なら、どんな自分になりたいかを考えるのがいいでしょう。憧れている人のスタイルを真似するのもいいですし、自分が仕事をしていく上で、どんな服を着れば強みになるかを考えるのも一つの手です。たとえば、私の知り合いに生命保険のトップセールスがいます。この人は、ネクタイはいつもピンクと決めています。スーツやシャツの色も、いつもほぼ同じ。まるで制服のように同じ格好をしているのです。そのおかげで、「あのピンクのネクタイの人ね」と記憶してもらいやすくなるので、セールスパーソンとしては大きな強みです。しかも、余計な服や小物をあれやこれやと買う必要もなくなりますし、服を買うときに悩む時間も減るわけです。私自身も、テレビに出はじめた頃には明確に服装のテーマを決めていました。まずはシルエットやパッと見た印象で視聴者に覚えてもらう必要があると考えたからです。そこで、色は青を基調にして、ドレープ調のふわふわした「変な服」を選んで着ていました。服の数を絞るのが難しいと感じる人は、まずは「自分はどんな服を着たいのか」を考えてみることをおすすめします。Point生活をチェックして、自分に必要な服の量を計算しよう。クローゼットが片づくコツは、服装のテーマを決めること。
習慣6写真暗示「片づいた状態」を写真におさめて飾るいったんきれいになった部屋を、そのままに保つ方法として有効なのが、「写真暗示(PhotoSuggestion)」というとても簡単なテクニックです。きれいになった部屋を再び散らかった状態にしないためには、少し散らかったとしても、すぐに元に戻せる仕組みをつくっておくことです。そこで、片づけが完了した時点で、理想的な状態にある部屋の写真を撮っておきます。スマホで撮影すれば十分ですが、ポイントは必ずプリントアウトすること。それを壁に貼っておくか、できればフォトフォルダーに入れて目につく場所に飾るのがベストです。一番きれいな状態をお手本として、常に見えるようにしておくのです。すると、少しでもモノが定位置からはずれれば、すぐに気づいて直すことができます。だから部屋が自然と片づいていくのです。誰でも、洗面所で鏡の前に立てば、無意識のうちに髪の乱れを直したり、顔や服に何かついていれば取ったりするはずです。身だしなみについては鏡という便利な道具がありますが、片づけには通常、こうした仕組みがありません。そこで、写真を使って、無意識のうちに部屋の乱れを正したくなるような暗示を自分にかけるのです。洗面所に入ればいやでも鏡を見るように、自然に目に入ってくるところに片づいた部屋の写真を置き、それとの比較で部屋の乱れに気づけるように仕向けていくのです。ちなみに、この写真暗示という方法は子どもに片づけの習慣をつけさせるのにも役立ちます。「片づけなさい」と言われてすぐに片づけるような子どもはめったにいませんし、「こんなに散らかして!」と叱るのに疲れている親御さんも多いでしょう。ところが、写真暗示を使うと、子どもはかなりの確率で部屋の片づけができるようになります。というのも、子どもの片づけができない最大の理由は、どう片づけたらいいのかがわからないためなのです。どういう条件を満たせば片づいた状態といえるのか。それを自分で考えることができるためには、かなりの人生経験を積むことが必要です。きれいに片づいた状態の「写真」というお手本があれば、子どもでも何をやるべきかがわかります。しかも、子どもは間違い探しや模倣が大好きですから、お手本にしたがって片づけをすることを一種のゲームのように楽しめるのです。もちろん、写真暗示のこうした効果は、片づけが苦手な大人にも働きます。写真を撮って飾るだけ、という本当に簡単な方法ですから、ぜひ試してみてほしいと思います。Pointきれいな部屋の写真で、自分を暗示にかけよう。子どもに写真暗示を使えば、ゲーム感覚で片づけができる。
習慣7自然に片づく小技の活用この章の最後では、二度と部屋が散らからない片づけ習慣のプラスαとして、いくつかのちょっとしたテクニックを紹介しておきます。①香りのコントロール散らかってしまいがちな場所には、石けんの香りのような清潔感を連想させる香りを漂わせておくと、それだけで散らかりにくくなる、という研究結果が報告されています。たとえば、リビングにモノを置きっぱなしにしがちならば、そこにアロマを置いてみるといいでしょう。自分なりに清潔感をイメージする香りを選ぶのがポイントです。②フォーカルポイント部屋の中で1か所だけ、いつでも完璧にきれいになっている「聖域」をつくっておきましょう。これがフォーカルポイント(家の中で注視される特別な場所)です。玄関でも、リビングの机でも、仕事や勉強に使うデスクでも、台所のシンクまわりでも、どこでも結構です。とにかく1か所だけ、「家中がこのくらい片づいていたらいいな」という理想の状態を常に保つようにします。いきなり家全体をきれいに保つのは難しい、という人でも、このくらいなら無理なくできるでしょう。不思議なことに、フォーカルポイントをつくると、家全体が常にある程度は片づいた状態になります。理想的な「聖域」があることで、人は無意識のうちにそこに合わせて家の中を整えようとするのです。③「ifthenプランニング」で掃除を習慣化最近、私が水まわりの片づけグッズとしておすすめしているのが、使い捨てのペーパータオルです。洗面所で手を洗った後、濡れた手をペーパータオルで拭きます。拭き終ったら、折りたたんで反対の面でまわりに飛んだ水滴や、石けんの泡などをさっと拭き取ってから捨てるようにします。台所のシンクのそばにもペーパータオルを置いておき、料理や食器洗いの後に手を拭いたら、ついでに調理ではねた油や水を拭き取ってから捨てます。このように、手を拭いたついでにペーパータオルで水まわりを簡単に掃除する、という習慣をつけておくだけで、かなりきれいな状態を保つことができるのです。これは、目標達成の方法として知られている「ifthenプランニング」の応用です。「もし、Xが起きたら(トリガー)、そのときはYをやる(タスク)」というふうに、条件を事前に決めておくことで目標を達成しやすくするというのがif(もし)とthen(そのときは)のプランニングなのです。これを利用して、毎日やることをトリガーとして、そのついでに掃除をするという習慣をつけてしまうわけです。ここで挙げた例以外にも、トイレを使ったら掃除する、洗面所で歯を磨いた後は鏡を拭く、といった条件を決めておくと、ついで掃除を習慣化することができます。かなり汚れてしまってから本格的に掃除をする、では意志の力が必要ですが、ifthenルールでいわば自動的に掃除をしてしまうようにすれば、負担になりません。
先ほどのペーパータオルのような使い捨ての掃除用品がおすすめである理由は、〝ついで掃除〟がラクになるためです。ただ単にモノを増やさないことを最優先するなら、1枚で何度も使える雑巾のほうがいい、ということになります。しかし、掃除のたびに雑巾を洗う時間をとられること、面倒くささから掃除のハードルが上がること、などを考えると得策ではありません。トイレに流せる掃除用の簡易スポンジや床を拭くシートなど、便利な使い捨て掃除グッズは積極的に活用しましょう。ついでに言っておくと、手を拭くタオルはどうしても不潔になりやすいものです。また、いくらきれいに洗濯してこまめに交換してあるとしても、他人の家に行って備え付けのタオルで手を拭くのは抵抗を感じる、という人もいます(私もそうです)。来客の可能性があるなら、洗面所のタオルは気持よく使ってもらえるものを用意しておくほうがいいでしょう。この観点からも、ペーパータオルの導入を強くおすすめします。私が使っているのは蝶プラ工業のペーパータオルケースです。ティッシュボックスと同じ形でペーパータオルを引き出せるもので、透明なので残量もひと目でわかって便利です。Point清潔な香りで、清潔な空間が保たれる。「○○のついでに××をする」と決めて、掃除を習慣化しよう。
第5章理想の部屋をつくる!エリア別・片づけの鉄則5
Introduction気になる「あの場所」の片づけ方は?第4章までは、片づけ全般に通用するルールや方法を説明してきました。ここからはエリア別に、より具体的なノウハウを紹介していきます。特に片づけに悩んでいる人が多い場所、片づけによる効果が高いエリアとして、次の4つを選んでみました。1:デスク2:カバン3:クローゼット4:収納さらにプラスαとして、5:二度と散らからないための「買い替え」のコツも、ここで説明します。
鉄則1仕事・勉強がはかどる「デスク」整理理想は片づけるべきモノが一切ない空間デスクは、「聖域」であるべきです。片づけるべきモノが一切ない状態に保たれているのが理想です。余計なモノが置かれていれば集中力を奪われますし、散らかっていたら仕事や勉強をはじめる前にまず片づけなくてはいけません。いずれにしても、知的生産性が下がってしまいます。特に、仕事の前にまずは片づけ、というルーティーンは、とりかかりを遅くするので絶対に習慣にしてはいけません。自宅の書斎でも、職場でも、デスクが常時きれいに保たれていることは、仕事や勉強がはかどるために絶対に必要なことなのです。「とりあえずボックス」で初動を早める何も置いていない、ただの広い空間が広がっている――。これが理想のデスクの状態ですが、実際はそうもいかないことが多いでしょう。仕事や勉強で使う道具は棚や引き出しにしまうとしても、処理しなければいけない書類があったり、本をたくさん買ってしまったりでモノが一時的にあふれることはあるはずです。そんなとき、片づけてから仕事をしようとするのはいけない、と先ほど書きました。仕事へのとりかかりが遅くなると進捗が悪くなり、処理しなければいけないタスクがたまって、どれから手をつけようという迷いが生まれ、時間がなくなり、片づけをする余裕もなくなり……という悪循環に陥ってしまうからです。それを防ぐため、前章でご紹介した「空っぽコーナー」と同様に、デスクまわりにあふれたモノを一時的に入れておく「とりあえずボックス」を作りましょう。机の上にあって邪魔なモノは、とりあえずそこに放り込んでしまう箱です。ここに邪魔なモノを移してしまえば、すぐに仕事や勉強にとりかかることができます。大事なのは、余計なモノをとりあえずボックスに入れたら、いったん忘れることです。机から箱に移しても、それが気になっていては作業に集中することができません。そこで、とりあえずボックスは目に入らないところに持っていってしまうのがいいでしょう。デスクまわりに余計なモノが入り込まないようにするのは難しいことだと思います。だとしても、とりあえずボックスを使うことで、毎回デスクを片づけてから仕事にかかる、という悪い習慣からは逃れることができるのです。
「アフォーダンス」の最適化:誰もがその用途をわかるようにやるべきことに集中できる環境をつくるためには、デスクではやるべき作業と関係のないことをしないようにしなくてはいけません。たとえば、デスクのパソコンで映画を観てしまうと、「ここは仕事だけでなく、映画を観るためにも使う場所なんだ」という意識が脳に植えつけられます。机に向かってもなかなか集中できない、という人は、こうした誤った習慣づけをしているのです。だからこそ、第1章(『「アフォーダンス」をデザイン』)で紹介したように、その場所で何をするかを決め、それに無意識でとりかかれる「アフォーダンス」のデザインが必要なのです。デスクまわりの片づけも、アフォーダンスの最適化という観点から行うべきです。私も、書斎のデスクで仕事をしていて映画が観たくなることがあります。けれども、その場でパソコンから動画サービスにアクセスして映画を観たりはしません。必ずパソコンを持ってリビングに行き、そこで映画を観ます。こうすることによって、デスクに向かったときは仕事や読書をする、そこで映画を観るなんて思いもよらない、という状態を保つわけです。そうはいっても、自分は意志が弱くて、ついついデスクでスマホをいじったり、ネットをだらだら見たりしてしまう……という人もいるでしょう。しかし、そういう人でも、トイレで食事をしないことに意志の強さを必要とはしないはずです。問題は意志ではなく、アフォーダンスデザインなのです。そこで、デスクで余計なことをしないようにするために、これも第1章で紹介した付箋を活用しましょう。その場でやることを書いて貼っておく付箋です。デスクの場合には「やっていいこと」を3つまで書いて、そのうちのどれかをやるという方式にするとうまくいきます。たとえば、●仕事●瞑想●日記をつけると書いておいて、デスクに向かったらそのどれかをやる、と決めておくのです。デスクでやることは3択ではなく、1つに絞ったほうがより集中できるのでは?と疑問を感じるかもしれません。すでに第1章でも紹介した3択の原則では、やるべきことが1つに決まっているよりも、いくつかのオプションから選択し、一つずつ終えていくほうが実行力が上がる、ということがわかっています。人間は自分が選んだものを価値が高いと感じるからです。とはいえ、あまりにも選択肢が多くて迷ってしまうのは本末転倒ですから、やはり3つ、あるいは2つくらいにしておくのがいいでしょう。
翌日に何をするか、一目でわかるように片づけるデスクは聖域ですから、その日の仕事を終えたらきれいに片づけるのは当然です。ただし、ここでいう「片づける」とは、必ずしも机の上にあるモノを全部しまうということを意味しません。もしも翌日やるタスクが決まっているなら、使うモノ一式を出して置いておきましよう。やるべきことが決まっていて、そのために必要なモノがデスクの上にあるのは、散らかっているのとは違います。むしろ、仕事へのとりかかりを最速化するための、最も片づいた状態だといえるでしょう。できれば、翌日のタスクに少しだけ手をつけて、途中の状態で置いておくとより効果的です。連続ドラマが〝いいところ〟で終わって次回への興味を引きつけるのと同じく、「ツァイガルニク効果」と呼ばれる心理効果が働いて翌日のとりかかりがスムーズになるのです。職場のデスクだと、機密保持上の理由で書類を出しっぱなしにするわけにはいかない、といった制約もあるでしょう。そういう場合は、一番上の引き出しを空にしておいて、やりかけの仕事をなるべくそのままの形でしまえるようにするといいでしょう。このように、次にやる仕事の道具を残すときのコツは、何をやるかが一目でわかるようにしておくことです。たとえば、翌日のタスクが「ある本の第3章を読んで、パソコンのソフトでマインドマップにまとめる」という作業だったとします。この場合、パソコンのあるデスクの上に本を置いておくだけでは不十分です。翌日、パソコンを起動して、とりあえず……という感じでメールチェックをはじめてしまう危険があります。この場合の正解は、本の第3章を開いて机に置き、パソコンはマインドマップ用のソフトを開いたままスリープさせておくことです。これなら、何をするべきかが翌日の自分に間違いなく伝わります。ここでも、アフォーダンスの最適化を使うわけです。シンプルさ=集中力いざ仕事にとりかかったら、集中力を高いレベルで維持して早く終わらせたいところです。集中力を生むのは〝シンプルさ〟です。できるだけモノがない環境が、集中力を生み出すのです。前述した「とりあえずボックス」を使うなどして、余計なモノは極力排除しましょう。それなりに片づけたつもりでも、作業にとりかかってみると、ささいなモノが注意力を削ぐことに気づくかもしれません。机のすみに置いてある未処理のレシート、スタンド式の小型のカレンダーなどです。集中力を削ぐ原因になるモノを見つけたら、その場で取り除きましょう。デスクまわりに関しては、モノが少なければ少ないほどいい、というミニマリスト的な考えで片づけてもいいと思います。充電器は玄関に設置気をつけていても、つい、デスクの近くに置いてしまいがちなのが携帯やスマホの充電器です。デスクで勉強をしているそばで携帯やスマホを充電していたら、気が散ってしまいます。通知を切っておけば大丈夫と思うかもしれませんが、「LINEがきていないだろうか」「着信があったらどうしよう」と、かえって気になってしまうこともあるでしょう。では、充電器はどこに置くべきかというと、玄関です。デスクに向かって仕事をするときはもちろん、食事をしたり、休んだりするときにも携帯やスマホは集中を乱す原因になります。寝室にそれらを置くと、睡眠の質は確実に低下します。こうした弊害を最小化するためには、玄関で充電するのが一番いいのです。もしも玄関にコンセントがない場合は、昼間のうちにポータブル充電器に充電しておいて、仕事から帰ったら玄関に置いてつなぐようにすればいいでしょう。これなら、携帯やスマホと充電器を靴箱の中に入れて、完全に目に入らなくすることも可能です。
スポットライトを使って集中力をコントロールする集中力をコントロールするには、デスクで使う照明にも工夫の余地があります。集中するための照明の基本は、スポットライトです。自宅で仕事や勉強をするときは、部屋の中の照明を切って、デスクの手元だけをスポットライトで照らしましょう。すると、光が当たっている狭い範囲だけに注意が向くので、集中力がアップします。また、帰宅後の時間をスポットライトだけの少ない光量で過ごすことは安眠にもつながるので、一石二鳥です。クリップなどでカーテンレールや棚に手軽に設置できるスポットライトは1500円程度で買えますから、早速導入しましょう。光の種類にもこだわりましょう。照明は色によって違った心理効果を生み出すことがわかっています。たとえば、蛍光灯のような青白い光は集中力をさらに高め、分析思考を強くします。これに対して、白熱灯系の黄色い光はアイデアを生み出すのに役立ちます。集中力が下がるぶん、いろいろなところに意識が飛び、考え方のバリエーションが出やすくなるからです。私はよく、アイデアを出したいときには行きつけのバーで考えたり、書きものをしたりします。これは、薄暗くて黄色い光が当たるバーの環境がアイデアづくりに最適だからです。環境づくりという意味で、香りを活用することもおすすめします。たとえばミントの香りは認知能力を高める効果がありますから、アロマをたいてみるのもいいでしょう。私のニコニコ生放送チャンネルでは肌に直接つけられるアロマオイルも作って紹介し、とても好評でしした(*巻末2)。こうした効果とは別に、デスクのまわりに特定の香りがあること自体にも意味があります。その香りをかぐことが集中のスイッチになるのです。デスクは実用性で選んではいけない!家で机に向かう時間が多い人なら、どんなデスクを選ぶかも悩むところでしょう。知的生産性を高めるには……と考えると、つい機能本位で選びたくなります。それでもいいですが、一番大事なのは、デザインがピンとくるデスクを選ぶことです。好きな家具デザイナーがいればその作品を思い切って買ってしまうのもいいでしょう。カフェで気に入ったテーブルがあったら、どこの製品か、お店の人に聞いてみるのもいいでしょう。誰でも、自分がいいと思うモノを持つと、できるだけそばに置きたいと思うものです。心から気に入っている道具は、できるだけ使いたいと思いますし、用がなくても触れたくなるはずです。その結果、作業もおのずと快適になり、机で集中できる時間も増えることでしょう。機能で判断するよりも、とにかく気に入ったモノを選ぶ。これは、デスクに限らず、家具全般についていえることです。デザイン重視で実用性が低い家具というのは、たいていモノをしまうところが少ないですから、そのぶんモノを減らせるという利点もあります。これについては、収納の項でも説明します。Pointデスクは、余計なモノが何も置かれていない「聖域」とする。実用性ではなく、心から気に入ったモノを選ぼう。
鉄則2開けた瞬間に超集中!最強の「カバン」整理術目をつぶっていても、どこに何があるのかわかるのがベスト繰り返し述べてきたように、片づけとは迷ったり探したりする時間を最小化し、注意力や集中力をマネジメントし、人生を最大化する行為です。集中力のマネジメントが必要なのは、家にいるときだけではありません。前項のように職場のデスクも片づけるべきですし、さらに言うと、外出時にも迷ったり探したりする時間を最小化できる環境を整えるべきです。そこで、カバンの整理をどうするかという課題が浮かび上がってきます。あなたと常に行動をともにするカバンの中を片づけることは、デスクの上やクローゼットの中を片づけるのと同じくらい重要なのです。カバンを使う場面として最も多いのは、仕事中でしょう。そのため、カバンの片づけも、デスクの片づけと基本的に同じ原則があてはまります。すなわち、モノの数はできるだけ減らし、迷わず、最速で作業にとりかかれるようにする、ということです。仕事中に必要なモノがすぐにカバンから出てこなくて焦った、という経験は誰にでもあるはずです。このように、カバンの中のモノをあれこれ探す時間ほど無駄なものはありません。目をつぶっていても、手を差し込んだ瞬間に、どこに何があるのかわかる。カバンの片づけのゴールはこれです。身軽さ=行動力の高さを重視するカバンは基本的に持ち運ぶモノであり、移動している状況で使うモノです。したがって、できるだけ軽くなくてはいけません。私は最近、外出時に持ち歩く荷物を大幅に軽くしました。バッグの中に入れるモノを極端に減らし、リュックを背負っていく場合でも、外側についているポケットにすべて収まるくらいにしたのです。そうすると何がいいかというと、フットワークが軽くなります。荷物が重くなれば、フィジカルな意味で足取りが重くなるのは当然ですが、それだけでなく、荷物の重さがメンタルに与える影響は思った以上に大きいのです。こんな実験があります。被験者にある心理テストを受けてもらい、その後の身体の動きを観察したものです。最初に部屋で行う実験では、被験者はクロスワードパズルのようなテストに解答します。ここで、一方のグループだけにお年寄りをイメージさせる単語を解答させ、もう一方には別の単語を解答させるようにします。その上で被験者を帰し、廊下の先のエレベーターまで移動する時間を計測したところ、お年寄りをイメージさせる単語を解答させたグループのほうが、1秒ほど余分に時間がかかったというのです。つまり、老いをイメージさせ、体力の衰えや身体の不自由を連想させるだけでも、人間の体の動きは変わるというわけです。荷物が重いということは、物理的に足取りを重くさせるだけでなく、重い、動きづらいというイメージによって行動力を制約することになるのです。荷物を軽くした私が、それ以来いろいろなところにフットワークよく顔を出すようになった理由はここにあります。カバンの軽さ、外出時の身軽さは、行動力に直結するのです。たいていのことはスマホでできるかつては、外出時の持ちものを減らすと、そのぶん不便になることは避けられませんでした。今は、そんなことはありません。いうまでもなくスマホをはじめとする電子機器の発達によってです。スマホさえあれば、たいていのことはできてしまいます。その結果、カバンの中身を減らして軽くするだけでなく、もう一段階上の身軽さも目指せるようになりました。カバン自体を持たず、持ちものを〝着て〟外出するのです。私が普段着として愛用している「タイパンツ」は、その名の通りタイが発祥のカジュアルウエアで、ゆったりした袴状のパンツを腰ひもで締めてはく、涼しくて動きやすい優れものです。このタイパンツには、大きめのポケットがついていて、財布と携帯くらいなら十分に入ります。スマホさえあれば、電子書籍も読めるし仕事もできることを考えると、もうカバンを持つ必要はありません。というわけで、最近ではカバンを持たずに手ぶらで外出することも増えてきました。出勤するとき、どのくらいの荷物が必要かは職種や職場環境などによってまちまちでしょう。しかしここで一般にいえるのは、移動中にやることは絞ったほうが集中できるし、一つの行動をするためのモノはさほど多くないということです。たとえば、英語の教材をたくさんカバンに入れて、ついでに学習用アプリもたくさんスマホに入っている、という人よりも、単語帳を1冊しか持っていない人のほうが通勤時間に集中して勉強ができる、ということです。モノをたくさん持ち歩いても、できることが増えるとは限りません。むしろ、迷いが生じ、フットワークが制限されることのほうが多いの
です。より多くのことをこなすため、持ちものを少なくしましょう。カバンはさらに軽くなりますし、人によってはポケットにスマホだけでの通勤も視野に入ってきます。一つ注意してほしいのは、持ち歩くモノを減らすついでに、スマホの中も整理することです。せっかくモノを絞り込んでも、スマホにゲームアプリなど余計なモノばかりが入っていたのでは、やるべきことに集中できません。アプリは本当にやりたいことに使うモノに限定して、スマホを取り出した瞬間に集中できるようにしておきましょう。迷いを減らすための「バッグインバッグ」カバンの中の整理というと、ポケットや仕切りのたくさんついた「バッグインバッグ」やポーチの類を使って、細かくモノを整理する人がいます。実は私も、一時期バッグインバッグにかなりハマって、あらゆる会社の製品を試してみましたが、結局自分には必要がないという結論に至りました。細かい整理が必要になるほど、たくさんのモノを持たないほうがいいと気づいたのです。とはいえ、誰もが私と同じようにできないこともわかります。仕事によっては、毎日かなりの量の荷物を持ち歩かなくてはいけない人もいるでしょう。たとえば、営業職で顧客に見せる資料を持参する必要がある人などです。そういう人にとっては、迷いを減らすためのツールとしてバッグインバッグはおすすめできます。ただ、たくさんのモノを持ち歩かなくてはいけないのに、翌日持っていくモノをそのつど揃えたり、忘れものがないかチェックしたり、あるいは2つあるモノのうちどっちを持っていこうかと迷ったり……といった手間がかかるのでは無駄が多すぎます。それを避けるために、用途別のバッグインバッグをあらかじめ用意しておきましょう。たとえば「普通の通勤用」「出張用」「プレゼンがある日用」「資格試験の勉強をするとき用」というように、目的に合わせた持ちもののセットを作り、それぞれを収めたバッグインバッグを棚に並べておくのです。こうしておけば、日によって必要なバッグインバッグを選び、カバンに放り込むだけで準備が完了します。バッグインバッグは、細かくモノを整理するための道具ではなく、あくまでも迷いをなくすために使うもの、と考えてください。カバンを開けたときの行動は「3つ」に限定繰り返しますが、中に入れるモノはできるだけ少なく、できればカバン自体が必要ないくらいにする、というのがカバンの片づけの理想です。カバンを軽くすることが、行動力と集中力を高めてくれるのです。もちろん、仕事などの事情があっていきなり極端にモノを減らすことは難しい人もいるでしょう。そこで、まずは「カバンを開けたときにする行動」を3つまでに限定することを目指してほしいと思います。外でカバンを開くときというのは、電車などに乗って移動するとき、カフェに入って休むときなど、ある程度決まった場面のはずです。そこでやりたいことを考え、1~3個までにしぼってみてください。自分がもっと強化したい、より多くの時間を割きたいと思っていることを選ぶのがポイントです。そして、たとえば「①英語の勉強をする②本を読む③ブログの原稿を書く」の3つに絞れたら、できるかぎりこの3つをやるための道具を、すぐに取り出せるようにカバンを整理しましょう。たとえ目をつぶってカバンに手を突っ込んだとしても、ほしいモノをすぐ取り出せる。そして、目移りせずに目的の行動にただちに集中できるようにしておく。これを、カバンの片づけの目標にしてください。Point目をつぶってもモノを取り出せるような配置にしよう。できるだけ中身を絞って、フットワークを軽くする。
鉄則3意志力を最大化する「クローゼット」のルールクローゼットをシンプルにするだけで人生は変わるアップル創業者のスティーブ・ジョブズが、普段からイッセイミヤケの黒いタートルネックばかりを着ていた、という話は有名です。服の選択肢を減らして迷いをなくし、管理コストを最小にすることで、やるべきことをやる意志力を最大化していたのです。ジョブズのように、いつも同じ服を着ましょう、ついては同じ服を100着買いましょう、とはさすがに言いません(自分はできる、という人はもちろんそれでOKです)。しかし、クローゼットをできるかぎりシンプルにすることは大切です。何を着ようか迷う際にかかる時間と意志力の浪費は、予想以上にあなたの行動にブレーキをかけます。こうしたリソースの減少をふせぎ、即断即決の行動ができるようにしたいものです。これは、おしゃれを楽しむなということではありません。第4章で説明したように、自分なりのテーマを決めて服の数を絞り込むこと、限られた服をフル活用することは、むしろ「おしゃれな人」という評価にもつながります。では、意志力を最大化するための、理想的なクローゼットの片づけとは何でしょうか。ここでは、そのノウハウをできるかぎり具体的に説明していきます。ハンガーの数を限定する意志力を最大化するクローゼットの片づけ、その基本はきわめてシンプルなルールです。それはハンガーの数を限定することです。タンスや衣装ケースに衣類を詰め込むのをやめて、衣類はすべてハンガーにかけておく。しかも、ハンガーの数を限定し、それ以上の服を持たないようにする。これだけで、クローゼットの片づけはかなりラクになります。ここで問題になるのが、ハンガーの数はいくつあればいいのか、ということです。私がおすすめするのは、1週間分の服を、1日分ずつワンセットにしてクローゼットの中にかけておけるようにすること。つまり、ハンガーは7つ必要です。もっと服を減らしたい、という人は、3日分のセットアップをつくって、3本のハンガーに吊るしておいて、3日ごとにローテーションすればいいでしょう。要するに、各ハンガーにそれぞれの日に着る服がセットでかかっていて、何を着ようかを迷わないようにしておくという仕組みです。1週間分のセットをつくるとして、ハンガーは7本。他に、特別な機会にだけ着る服や、夏や冬だけ着る季節物用のハンガーも必要だとして、最大で15本くらいが適切なハンガーの数でしょう。
「着やすい服」と「高級な服」に限定してセレクトするつぎに、限られたワードローブには、どんな服を選ぶべきでしょうか。これについては「着やすい服」か「高級な服」の、どちらかを選ぶことを原則にしてください。モノの数を減らし、大事なモノだけで自分のまわりをかためて幸福度と集中力を高める。この基本はクローゼットの片づけにおいても変わりません。特に、服を減らしたい場合には、高級な服と着やすい服を選ぶことがコツです。なぜかというと、高い服はたくさん買えないので、やたらに増えることがありません。着やすい服はいつも着るようになるので、たくさん持つ必要がないからです。高級な服と着やすい服だけを持つようにすれば、自然とクローゼットの中身は減っていきます。衣替えをしないクローゼットの片づけの話をすると、「衣替えはどうするの?」という質問を受けることがあります。これまでに説明してきたことで想像がつくと思いますが、衣替えは「しない」が正解です。衣替えは、あまりにも手間がかかりすぎます。クローゼットにある冬物を衣装ボックスにしまい、衣装ボックスから出した夏物をクローゼットに並べる。これだけで半日はつぶれてしまいます。前述したように、最大15本程度のハンガーなら、クローゼットに全部並べておくことができます。これならそもそも衣替えは必要ありません。服の数を最適化すれば、年に2回、面倒な衣類の入れ替えをしないでも済むようになるのです。「1イン2アウト」で無理なく減らすでは、実際にどうやって服を減らしていくかを考えたとき、いきなり服を大量処分するのは難しいと考える人もいるでしょう。また、これまでにも服を減らしたことはあるけれど、気がつくと元に戻ってしまっていた、という経験があるかもしれません。そういう人におすすめなのが、第4章で紹介した「1イン2アウト」の法則を使うことです。すなわち、新しい服を1つ手に入れたら、持っている服を2つ処分するのです。これで自然にクローゼットの中の服は減っていきます。また、「これを買ったら、持っている服を2枚減らさなければいけない」と思うと、買いものに慎重になりますし、そこまでしてでも手に入れたい本当にいいモノ、自分に合ったモノだけを買うようになります。オールシーズン着られる服、2WAYで使える服など、機能の多いモノを選ぶようにもなるでしょう。ただ服が減るだけでなく、賢く買いものができるようになるというのもこの方法のメリットです。
色を制限するとおしゃれに見える第4章で紹介した、ファッションのテーマを決めるというのも、服を減らすためには有効な方法ですが、ここでもう一歩進めてみましょう。特に、着る服の色を限定するのはおすすめです。これによって服を買うとき、コーディネートを考えるときに迷わなくなるだけでなく、おしゃれに見えて、なおかつイメージが定まることであなたのブランド力が高まるという効果まであるからです。3~5色、もう少しカラフルなほうが好みなら、それでも5~7色くらいの色で服を揃えてしまいましょう。色の選択は、「自分のテーマカラー+合わせやすい色」にします。私の場合は、青を自分のテーマカラーにして、あとは白、黒、グレーといった色に統一しています。また、女性の場合は赤系の色を取り入れたほうが魅力がアップするということがわかっていますので、うまく活用してください。持っている服の色が揃っていると、どれとどれを合わせても、ほぼ大丈夫なので、コーディネートのバリエーションが広がります。つまり、前述のように7つのセットアップをつくって1週間ローテーションさせたら、週末に服をシャッフルして別のセットをつくれるわけです。これなら、「服を減らすと、いつも同じ服を着ていると思われる」という心配(実際は杞憂なのですが)も解消できます。Point服の選択肢を減らし、意志力を最大化しよう。「着やすい服」か「高級な服」だけを選ぶ。
則4自然とモノがなくなる「収納」の選び方しまう収納をやめて、飾る収納にするはじめに言っておくと、私は「収納否定論者」です。物置や倉庫、棚といった収納スペースは、片づけにとっては基本的にはマイナスである。収納はいらない、と考えているのです。当たり前ですが、収納というのはモノをしまうようにできています。しまったモノは見えなくなりますから、必要なときに探す手間と取り出す手間が発生します。また、本来は不要な、処分するべきモノも、しまい込んでしまえば目に入りませんから、いつまでも持ち続けることになってしまいます。収納があるせいで、知らないうちにモノが増え、必要のないモノに生活空間を圧迫され続けることになるわけです。ですから、必要なモノだけに囲まれて、すぐに使えて、すぐに片づけられる生活をするためには、収納はないに越したことはないのです。唯一、しまい込むことに意味があるとしたら、悪い習慣をやめたいときでしょう。お菓子を見えるところに置いておくのではなく、棚の中にしまうだけで、食べる量が3分の1になったという実験結果が報告されています。というわけで、ここで私がおすすめするのは、しまう収納をやめましょう、ということです。しまうのではなく、飾る収納にするのです。この飾る収納を理解するためには、ホテルの部屋をイメージするといいでしょう。ホテルの部屋では、基本的にしまってあるモノはありません。タオルやバスローブ、洗面所のアメニティ、各種備品がすべて使いやすいように並べてあります。だからといって、モノが散らかっているわけではありません。完璧にきれいに管理されています。あれが飾る収納です。自宅での収納も、見やすく、使いやすく並べるという発想で行えば、飾る収納になります。たとえば、台所には扉つきのビルトインの収納がついていることが多いでしょう。ここに奥からぎっしり食器を詰め込んで扉を閉めるのは、しまう収納です。そうではなく、扉を開けたらお気に入りの食器がお店のようにきれいに飾ってあって、すぐに手に取れるようになっていればいいわけです。もちろん、飾る収納をするためには、スペースをたっぷりと使わなくてはいけません。また、きれいにモノを飾ってあるところに余計なモノが入ってくると、バランスがくずれてとても気になります。そのため、自然にモノは減るし、余計なモノは増えにくくなるというわけです。一般に、飾るモノとは思われていないモノについても、飾る収納は有効です。洗濯用の洗剤など、しまう収納だとついストックが多くなって場所をとりがちです。ところが、洗濯機のまわりに飾るつもりで置いておくと、意外なほど片づいて見えますし、余計な買いだめをしようという気にもならないものです。モノはしまうのではなく、飾る。これは収納の基本中の基本であり、モノを増やさないための奥義なのです。収納を減らす、そして増やさない収納スペースがたくさんあるということは、モノをたくさんしまえるということです。つまり、収納器具にはモノをため込んで増やす機能がある、ということになります。だとすると、部屋を片づけるためには、まずは収納を減らしてしまえばいい、と考えられます。片づけの第一歩は「収納器具の片づけ」から、というわけです。引き出しの多い家具や、クローゼットの中に入れる衣装ケース、机に置くレターケースなどはできるだけ捨てる。今後は収納場所を増やすようなモノは一切買わないようにする、ということにしましょう。モノを収納する場所を減らしましょうと言うと、「それでは大事なモノがホコリをかぶってしまう」と心配する人がいるかもしれません。そもそもが、よほど黄砂が激しい地域に住んでいるとか、古い砂壁の家に住んでいる場合は別として、ホコリの発生源は家の中にあるタオルや衣類などの繊維です。つまり、モノを減らせばホコリも減るということです。また、モノの量を減らした上で飾る収納をしておけば、掃除機をかけるのもホコリをとるのも簡単です。ホコリについては心配しなくて大丈夫でしょう。やる気を出させてくれる家具を選ぼう
デスクの選び方のところでも触れましたが、家具を選ぶときに実用性で選ぶ習慣はぜひとも卒業したいところです。実用性のある家具というのは、たいていの場合、収納力に優れています。収納は減らすことが片づけのためには正解なのですから、間違っても収納力のある家具を買ってはいけません。その代わり、家具の心理的な実用性を重視するのです。私の考える家具の役割とは、モノをしまうことではありません。集中力を最大化する雰囲気、環境をつくることです。嚙み砕いて言えば、気分が落ち着く、やる気が出るような家具を選びましょう、ということです。そうすると、家具を選ぶ基準は、自分の感性にあったデザインであったり、理想とする部屋の雰囲気と合致していること、となるでしょう。ですから、憧れの家具デザイナーやブランドの製品を買うことでも、人によっては気分が盛り上がって集中力発揮の効果が得られるのです。こうした心理的な実用性を基準に家具を選ぶ習慣をつけると、収納できる場所が次第に減っていきます。すると、部屋はさらに片づいていくのです。Point究極の収納術は「しまう」ではなく、「飾る」。収納する場所を減らし、自動的にモノを減らそう。
鉄則5二度と散らからないための「買い替え」のコツ日用品は少量の「いいモノ」をまとめ買いする自分にとって必要なモノだけに囲まれた生活を実現する過程では、モノを捨てたり、売ったり、人にあげたりしなければいけないのはもちろんですが、ある程度は新しくモノを買うことも必要です。ここで何を買うか、どう買うかを間違えると、せっかく片づいた部屋がまたしても散らかる原因になりかねません。いかにうまく買い替えるか、が問題です。そこで、この章の最後では、二度と散らからない人になるための買い替えのコツを伝授しましょう。まず、最大のポイントは、まとめて買い替えることです。ちょこちょこと買うのは出入りを管理するコストがかかるからです。いらないモノは全部処分して一気に買い替えれば、最も手間がかからず、その後の管理もラクです。特に、日用品や実用品については、まとめ買いをすると同時に、少量のいいモノに統一することを強くおすすめします。たとえばタオルは、ひとり暮らしなのに何十枚も持っているという人も結構いることでしょう。それも、ハンドタオルとバスタオル、フェイスタオルというようにいろいろなサイズがあるのではないでしょうか。これを思い切って捨てて、ハンドタオルとバスタオルの中間くらいの大きさの、質のいいタオルに統一してしまうのです。すると、枚数は少なくて済みますし、サイズが同じなら洗濯して干すのも、たたんでしまっておくのもラクです。「整頓された印象」が毎日を快適にするタオルを1種類に揃えて、きれいに畳んで置いておくと、それだけでまるでホテルの部屋のように整頓されて見えると思います。日用品を統一することで得られる整頓された印象、片づいている感じは、意外に大事です。ぐちゃぐちゃとした統一感のない環境で生活すると、人間の集中力は奪われるからです。落ち着いて、そのときやっていることに集中できる快適な住まいをつくるためにも、日用品は統一しましょう。タオルだけでなく食器類や肌着なども、少量のいいモノで統一することをおすすめします。統一感がもたらす快適さのお手本は、前項同様にホテルのインテリアです。旅行中に素敵なホテルを利用したなら、部屋の工夫を真似してみましょう。帰ってきてまだホテルの印象が残っている間に、日用品の買い替え・統一をしてしまうのがおすすめです。写真を撮っておいて参考にするのもいいでしょう。ホテル以外でも、家具や雑貨のお店のディスプレーで「片づいていて、きれいだな」と感じるモノがあれば、どんどんそのイメージを取り入れてみてください。あくまでも、少量のいいモノに統一、という原則は忘れないこと。買い替えが楽しいからといって、ついつい買い込み過ぎないように気をつけることです。Point買い替えは、一気にすることでコストをカットできる。少量のいいモノを揃え、ホテルのような統一感を手にする。
第6章スケジュールの片づけ時間を最大活用する7つのテクニック
Introduction人生を最大化する「時間の管理法」とは?ここで、もう一度確認しておきましょう。片づけの目的は、人生を最大化することです。つまり、迷う時間、モノを探す時間、管理する時間を減らし、そのぶん、自分がやりたいことをできるようにすることです。これまで紹介してきた片づけの方法は、すべて人生の最大化という目的に向けられています。モノを片づけることは、時間と集中力を生み出すことなのです。この章では、これまでに学んできた片づけのルールを時間の管理に適用した7つのテクニックを紹介します。●テクニック1「午前のアポ」「午後の集中」を捨てる●テクニック2時間の「使いみち」を先に決める●テクニック3疲れの元凶「やり残し仕事」をなくす●テクニック4マルチタスクの「ながら状態」を脱出する●テクニック5スケジュール帳を「真っ白」に近づける●テクニック6スケジュール帳に「評価」を記録する●テクニック7「時間」より「行動」の管理にフォーカスするこうしてモノを片づけるだけでなく、スケジュールを片づけることで、さらに時間と集中力を生み出すのです。これは、人生を最大化する片づけの最終ステップといえるでしょう。
クニック1「午前のアポ」「午後の集中」を捨てる頭を使う仕事は午前、単純作業は午後にスケジュールを片づけて時間を生み出すため、まず最初に実践してほしいテクニックは、午後の作業時間を捨てることです。人によって始動時間は違うでしょうが、12時までに実質的な仕事を終えてしまうのです。午前中のほうが集中力が高く、仕事もはかどるということは、誰でも実感として知っています。研究者によれば、朝には15分で終わる作業が昼にやると30分かかり、夜にやった場合には2時間かかるともいわれます。ビジネスハウツー本には仕事をスピードアップするためのいろいろな方法が紹介されていますが、最も確実なのは、午前中に仕事を終えてしまうように集中することです。ためしに一度、8~12時までの4時間で仕事を終わらせるつもりで行動してみてください。本気で集中すると、ほとんどのタスクがこなせてしまうことに驚くと思います。反対に、午後の時間をあてにして仕事をすることは、生産性を下げてしまう結果につながります。朝はまだエンジンがかからないからと、だらだらとメールチェックなどをし、昼食を食べたら眠くなり、そうこうしているうちにミーティングに呼ばれ、気がつくと日が暮れている……。ここから仕事に本腰を入れるとすると、朝なら15分で終わる仕事に2時間かけなくてはいけないことになります。これでは毎日残業になるのも当然です。ですから、午後の作業時間は、思い切って意識の中から捨てるべきなのです。もちろん、会社に勤めている人は午前で仕事を済ませて帰る、というわけにはいかないでしょう。午後の時間は、本気で仕事をする時間として考えない、と決めればよいのです。午前中に価値の高い、集中力を必要とする仕事を済ませてしまって、午後は単純な作業や雑用にあてるようにすればいいのです。午前中に他人と交流する仕事を入れない午前中だけで仕事を終わらせるためには、12時までの時間を誰にも邪魔されず、自由に使えなくてはいけません。そこで、午前中にアポイントメントを入れずに作業する必要があります。もちろん、お客さんがどうしても午前中に会いたい、と言っているような場合は仕方がありませんが、基本的にアポイントメントは双方が相談の上で、都合が合う時間に設定されるはずです。まずは「あいにく、その日の午前中はふさがっていまして」と言えるようになりましょう。社内のミーティングなら、「午前中に終わらせないとまずい仕事があるんです」と逃げる方法もあります。すべては工夫次第です。どうしても午前中にアポイントメントを入れなければいけない日があったら、思い切ってその日1日を捨ててしまう意識も大切です。「この日は、まともに仕事ができない」と割り切って、そのぶん、他の日の午前中だけで仕事を終わらせるスケジュールを組むのです。午後や夜の時間をあてにするより、むしろ効率的に働けるはずです。Point集中力の必要な仕事は、午前中に終わらせよう。
打ち合わせやアポイントメントは、午後に入れる。
テクニック2時間の「使いみち」を先に決める「本当にやりたいこと」の時間を最優先で確保する仕事を速くするテクニックや、残業をなくすためのノウハウは世の中に極めて多く流布していますし、タイムマネジメントのノウハウもまた同様です。しかし、タイムマネジメントについて語る人たちが案外見落としてしまいがちなのが「生み出した時間をどう使うか」ということです。残業を1時間減らせても、浮いた1時間はお金のように貯蓄しておくことはできず、別の何かに使うことになります。もしもこの1時間を無意味なことに使ってしまえば、タイムマネジメントの意味はなくなってしまいます。生み出した時間は上手に使わなければ消え去ってしまうのです。そこで、生み出した時間を何のために使うのか、それを作業の前に決めてしまいましょう。あるいは、まず、自分が本当にやりたいことを考え、そのための時間を確保してしまいましょう。その上で、残った時間でやらなければならないことを終わらせるようにスケジュールを立てるのです。たとえば、私がどうしてもやりたいことは本を読んで知識を得ることです。だから、本を読む時間は最優先で確保します。残りの時間に仕事の予定を入れていくのです。あるいは、仕事のできるビジネスパーソンがよくやるのが、夜の時間にプライベートの予定を先に入れてしまうこと。そうすると、残業するわけにはいかないので、仕事に集中でき、生産性が上がるわけです。ここまでに、片づけの出発点は、捨てるべきモノを探すことではなく、自分にとって大切なモノ、本当に必要なモノとは何かを見極めることとお話ししてきました。スケジュールを片づけるときも、出発点は自分にとって大切なこと、そのために必要な時間を決めることが大切です。目的もなくむやみに「時短」や「残業ゼロ」を目指す努力は、おそらく続きません。本当にやりたいことがあるからこそ、がんばれるのです。Point時間が余ったら何をしたいかを、前もって決めておく。自分にとって大切な予定から、スケジュールを埋めよう。
テクニック3疲れの元凶「やり残し仕事」をなくすその日のうちに仕事をやりきるための工夫時間がうまく使えていない人の多くに、「仕事をやり残すことが多い」という傾向があります。人間は、やり残したことを頭の中でずっと考えてしまう存在です。やり残した仕事は会社に置いてきたつもりでも、実は帰宅後もずっと頭の中に居座っていて、脳の力を消費していきます。そして、それが大きな疲れの原因になっていくのです。翌日も疲れがたまった状態で仕事に向かい、さっぱりはかどらずにやり残しの仕事が増える。そして、さらに疲れがたまる……という悪循環です。弊害はそれだけではありません。やり残しの仕事が多い人ほど「自分は忙しく働いている」と思ってしまうのです。たしかに、やり残しが多ければ抱えている案件は多く見えますし、前述した悪循環のせいでいくら働いても仕事が終わらないわけですから、そう感じるのも無理はないでしょう。こういう人が実際によく働いているかというと、残念ながらそんなことはありません。アメリカ人を対象にした研究では、「自分は週に60~64時間ぐらい働いている」と思っている人の実際の労働時間は平均して44・2時間ほどでした。さらに多く、「65~74時間ぐらい働いている」と思っている人の実際の平均労働時間は、実際には52・8時間でした。つまり、自分では働いているつもりで時間を過ごしていても、そのうち20時間ほどが、実質上は働いていない時間なのです。たくさん働いていると思っている人ほど、実際には時間を無駄に過ごし、効率が悪い人であるということになります。こうした勘違いが生じる一因として、やりかけの仕事が多いことによる疲れ、主観的な忙しさがあると考えられます。仕事で消耗することなく、効率よく働いて生産性を上げるためには、やりかけの仕事をなんとか捨てる方法を考えなくてはいけません。それができれば、自然に労働時間の短縮も可能になるのです。そこで、次にご提案するのがGTDというテクニックです。Pointやりかけの仕事があると、実際より忙しいと勘違いする。やり残しをやめて、作業はきっちり終わらせよう。
ColumnGTD――「やり残し」「やりかけ」を速攻処理するテクニックさて、やり残しの仕事をなくすノウハウ、といえば、デビッド・アレンの提唱しているGTD(GettingThingsDone)というメソッドが有名です。GTDの概要とは、次のようなものです。●頭の中にあるタスク――やり残していること、やりかけていることを徹底的に書き出してリストアップし、すぐにできるモノはただちに完遂する●すぐにできないモノはいつやるかを決めていく●次々に発生する新たなタスクも、ただちにやってしまうか、いつやるかを決める●その際に365日分のファイルやデジタルツールを使ってタスクを整理していく……といった内容です。GTDは、やり残し、やりかけの仕事を片づけるためのツールとして優れています。この方法でタスク管理をしていける人は、それで何の問題もないでしょう。しかし、私はGTDを全面的に取り入れてはいません。次々と新たなタスクが発生する中で、GTDの作法を一から十まで守りつつ、すべてをこなしていくことは現実的でないと感じるからです。では、どうすればいいのか。GTDで取り入れるべき部分は、右の概要の冒頭にある「やり残していること、やりかけていることを全部リストアップする」という作業です。これはぜひ、実践しましょう。すべて紙に書き出すのです。そして、リストアップしたタスクを順にこなしていくのではなく、どうしてもやらなければいけないことを選び、やらなくていいタスクを消すのです。実際に、リストアップされたタスクに〇をつけたり、×をつけたり(あるいは線を引いて消したり)していけばいいでしょう。この方法のメリットは、2つあります。1つめは、やるべきタスクを減らせること。2つめは――実はこちらのほうが大事なのですが――自分が何に〇をつけ、何に×をつけたかによって、やらなくていいタスクの傾向を知ることができること。×をつけたタスクを見ていくと、「なんとなく引き受けた頼まれごとが多いな」「英語の勉強の計画を張り切って立てたけど、もうぜんぜんやる気がない」といった、自分がやらなくてもいいタスクを増やしてしまう理由が見えてくるのです。こうした傾向を知っておくと、以後は同じ失敗を繰り返して無駄なタスクを増やすことがなくなります。結果として、やり残しの仕事も減っていくことになります。これこそが、GTDを部分的に取り入れてタスクのリストアップをすることの最大の効果なのです。
やるべきことの優先順位は「am/pm/n」でタスク管理やタイムマネジメントの手法では、やるべきことに優先順位をつけ、順位の高いタスクからやっていく、という方法がよく紹介されています。たとえばGTD用のアプリでも、1~5個までの☆をつけることで、タスクの優先順位を5段階に分けるようになっているものがあります。私もタスクの優先順位づけは行います。ただし、☆の数とか、ABCとランクをつけるとかいったことはしません。どうするかというと、タスクをam/pm/nの3種類に仕分けしていきます。前述したように、タスクをすべてリストアップし、〇をつけたものだけがどうしてもやらなくてはならないことです。ここで絞り込んだタスクに、am/pm/nの分類を書き込みましょう。まず、優先順位1位のタスクはam。これは、午前中にやるべきタスクです。テクニック1で説明したように、午前中は集中力が最大になる時間ですから、ここでは最も重要度の高いタスクに取り組むべきです。次に、優先順位2位のタスクはpm。午後に取り組むタスクです。ただし、私はここでいう午後には12~14時は含めていません。昼食後で眠くて仕方がない時間なので、単純作業や運動などをする時間にあてているからです。そのため、pmに分類した序列2位のタスクは集中力が少し復活する16~18時の間にやることになります。最後に、優先順位3位のタスクはnです。18時以降の夜に取り組みますが、実際には夜の集中力では大した作業はできません。夜に仕事をするのは諦めましょう、というのが私の基本的な考えです。ここに分類するのは、タスクの中でもかなり重要度の低いものということになります。
この方法でタスク実行の優先順位をつけると、これと同時に、いつやるかというスケジュールまでを決めることができます。スケジュールと優先順位づけは、連動させるほうが効率的です。また、単純に「どちらが重要か」「どちらを優先すべきか」といった順位がつけられない種類のタスクであっても、「より集中力を必要とするのはどちらか」とフォーカスすることで、おのずと優先順位は明らかになっていきます。
テクニック4マルチタスクの「ながら状態」を脱出する1つの仕事に専念する環境をつくり出す心理学者が「時間汚染」と名づけている現象があります。何かをするときに、同時に別のことをやったり、別のことに意識が向いたりして、目の前のことに集中していない心理状態です。要するに、食事をしながらメールをチェックするとか、家族との旅行中に仕事の進行を気にしているとか、電話で話しながらパソコンで文書を作成しているとかいった、忙しい人によくある「ながら」状態のことです。時間汚染が起きているとき、人間は安らいでいる感覚を得ることができません。これはストレスを高めます。集中力は当然失われ、仕事の効率は落ちます。その一方で、「忙しい」という感覚だけが高まって、自分は仕事をしているという錯覚に陥るのです。主観的に忙しいと感じるだけでなく、はたから見てもマルチタスク、つまり同時に複数の仕事をこなしている人は忙しそうに見えますし、「できる人」と評価されることもありがちです。しかし、これは完全な間違いです。作業を切り替える回数が増えれば増えるほど、作業効率は下がります。1つの作業に集中するためのアイドリングタイムが必要だからです。マルチタスクで仕事をこなしている人は、細かく作業を切り替えているわけですから、そのぶん効率は落ちて当然です。ある調査では、シングルタスクで1つずつ処理していく人に比べて、マルチタスクで仕事をする人は作業効率が50%も低かったという結果が出ているほどです。マルチタスクで朝から夜中まで仕事をしている人を見ると、つい「あの人、仕事をしているな」と思ってしまいますが、実際には、シングルタスクで着実に仕事をこなした人は、夕方にはすでに帰宅しています。マルチタスクは時間汚染を生むだけで、何もいいことはありません。とっとと捨ててしまうべき習慣です。マルチタスクによる時間汚染の習慣を捨てるためには、ライフログ(第4章の習慣5『数量限定』)を活用しましょう。第2章で紹介した方法と同じく、1時間ごとに携帯のアラームをセットします。アラームが鳴るたびに、①今、何をしているか②他のことをしていないか、他のことを考えていないかをチェックして記録しましょう。ライフログで客観的に自分の行動を振り返り、時間汚染が起きやすいのは、いつ、何をしているときなのかを認識しましょう。すると、何かをしているとき、別のことに注意をそらしそうになるのを止められるようになっていきます。Point複数同時進行の「ながら」状態は、「時間汚染」を生み出す。一つひとつ作業を片づけていくシングルタスクを目指そう。
テクニック5スケジュール帳を「真っ白」に近づける予定を入れず、できる限り「真っ白」なままにしておくやることが少なければ少ないほど、1つのことに集中でき、成果が出やすい。これは、持ちものを減らすこと、タスクを減らすことに共通する片づけの原則です。この原則をつきつめると、カレンダーに予定がなくて真っ白な状態、その時々でやりたいことだけに集中できる状態こそが理想的だということになります。もちろん、実際にはスケジュールを空っぽにすることなど、現代人には不可能でしょう。しかし、できるかぎりそれに近い状態を目指すことはできます。実際に、最近の私はなるべくスケジュールに入れる予定を減らすようにしていますし、特に1か月以上先のカレンダーはできるかぎり真っ白にしておくことを目標にしています。真っ白なカレンダーを目標にしておくと、それでもカレンダーに書き込まざるを得ないことは何かがわかります。どうしてもやりたいことはカレンダーから消すわけにはいきません。逆に、真っ白なカレンダーを目指したときに排除されてしまうような予定は、実はやらなくてもいいことなのです。モノを処分するとき、本当に必要なモノや大好きなモノはそもそも捨てるかどうかで迷ったりしません。スケジュールを立てる場合も、「行こうか、やめようか」「引き受けようか、断ろうか」と迷うことは、たぶん時間を割かなくてもいいことなのです。「予定のない時間」に何をやりたいのか?真っ白なカレンダーを目指すのはさすがに無理だ、という人でも、この考え方にもとづいて、スケジュールの作り方を根本から変えられる現実的な方法があります。それは、空いた時間に予定を配置する、という従来のスケジュール管理を捨ててしまうことです。人間には、空いているところに何かを詰め込みたくなる習性があります。収納が多いと、モノをため込んでしまうのもこのせいです。忙しい生活の中でスケジュール管理の考え方に慣れた現代人は、スケジュール帳の空白を見つけると、そこを予定で埋めたくなってしまうのです。しかし、人間にとって本当に必要なのは、何の予定もない時間です。空白の時間に自分と向き合い、自分は何をやりたいのかを自問自答すること。その作業を経た上で選択し、行動することで、価値の高い時間を過ごすことができるのです。スケジュールは空っぽであることが理想、というのはそういうことです。スケジュールの空白を予定で埋めてしまうのは、自ら選択の自由を手放し、そのときに本当にやりたいことをやる自由を捨てるということです。その危険性に気づく必要があります。特に注意すべきなのが、数か月先の予定です。翌日や翌々日についてなら、自分にどのくらいの時間が必要か、何をしたいかを考えることは難しくありません。「今週末はどうしても釣りに行きたい」と思えば、友達の誘いを断ることもできるでしょう。ところが、これが3か月後の誘いとなると、たいていの人はスケジュールが空いているからという理由で予定を入れてしまうのです。人間は、1か月以上先の自分がどれくらいの時間を必要としているか、何をしたいかを想像することができないからです。
安直に1か月後のスケジュールを埋めないそれを物語る心理実験があります。寄付のプログラムを2つ作って、それぞれどれくらいの寄付者を集められるかを比較したものです。1つめのプログラムは、GiveMoreNow(今すぐ寄付の増額を)と呼ばれるもので、寄付金は開始直後から上がっていきます。もう1つはGiveMoreTomorrow(明日から寄付の増額を)と呼ばれ、寄付金額は数か月後から上がっていきます。実験の結果、寄付金額がより多くなったのはGiveMoreTomorrowのほうでした。つまり、将来のこととなると人の判断は楽観的になるのです。これと同じことが、スケジュールを立てる場合にも起きています。数か月先のことだと、判断が甘くなってなんとなく予定を入れてしまう。そして、そのときが来たら予定でがんじがらめになって身動きがとれなくなってしまうのです。「今は忙しいけれど、3か月後なら」とスケジュール帳を埋めてしまう人は、3か月後にも「忙しくてやりたいことができない」と嘆くことになるでしょう。ですから、1か月以上先の予定でスケジュールを埋めることには、特に注意しなくてはいけないのです。何より、スケジュール帳の空白を埋める、という発想自体を捨てることです。スケジュール帳は真っ白に近いほど、やりたいことができる時間が増えるのですから。スケジュール帳は、できるだけ空白を残すように使うものと考えてください。Pointスケジュール帳は、埋めることより、埋めないことを重視する。1か月以上先の予定を入れるときは、慎重に。
テクニック6スケジュール帳に「評価」を記録する何をしたか?成果はあったか?スケジュール帳の使い方としては、もう1つ発想を変えるべきことがあります。予定だけでなく、評価も書き込むようにすることです。たとえば、打ち合わせの予定をスケジュール帳に書いたら、その打ち合わせが終わった後に、うまくいったかどうかを評価してみましょう。☆……期待以上の成果があった○……一応の成果があった△……成果なし。やる必要がなかった評価基準や表記法は自分で使いやすいように決めてかまいませんが、右のように3段階評価にすると使いやすいでしょう。また、細かく評価コメントを書くよりも、☆○△などのマーク記入のほうが継続しやすいと思います。ただし、失敗だった、予想と違う結果になった、というときには、なぜそうなったかを一言書き添えておくようにしましょう。後で見直して同じ失敗を繰り返さないためです。このスケジュールの評価を定期的に見直すようにすると、いろいろなことがわかってきます。私は最近、ネット広告の出演依頼を受けることがよくあります。何件かは打ち合わせをしたり、動画収録をしたりしたのですが、その評価を見直してみると△が多い。なぜかというと、拘束時間が長く、打ち合わせなどの回数も多くて割に合わない仕事だったからです。そこでこの評価をもとに、今後はこの手の仕事は断るか、あるいは報酬がいくら以上なら受けるようにする、といった対応の仕方が判断できるわけです。このように、スケジュール帳は行動のフィードバックのためにも使えるのです。仕事以外では、運動や勉強などの日課を評価するのもおすすめです。早起きして読書をしようと決心してスケジュールに入れたとして、いざ開始した途端に△マークが続くようなら、「朝一番だと頭が働かなくてうまくいかないのでは?それなら、読書の前に散歩をしてみよう」といったフィードバックを働かせることができます。Pointスケジュール帳には、「予定」だけでなく、「評価」を書き込む。「評価」をフィードバックして、今後の行動に生かそう。
テクニック7「時間」より「行動」の管理にフォーカスするやるべきこと、やらないこと――判断の精度を上げるここまで、片づけの方法論を適用したタイムマネジメントのテクニックを紹介してきましたが、実のところ、私は時間管理があまり得意ではありません。やるべきことをスケジュールにうまく組み込むような生活は苦手なのです。自分がやりたいこと、やるべきことを時間を気にせずに順番にやっていくという方法が、私の性に合っていると思います。ただし、時間の管理が得意ではないからこそ、行動の管理には気をつけています。綿密なスケジュール管理が必要になるのは、やることが多過ぎるからです。やらなくていいことをやらないようにすれば、行動が限定されて時間の管理の必要性は限りなく小さくなっていきます。考えるべきことは、いかに無駄な行動を減らすか、なのです。では、具体的にどんな行動を減らしたらいいのかというと、まずは比較的自由のきくプライベートから手をつけるのがいいでしょう。といっても、大切な友人や家族との時間を削れというのではありません。なんとなく付き合ってしまったり、後で「行かなければよかった」と思ったりしたような、瑣末なプライベートの行動を減らすのです。そのために、ここでも前述した☆〇△の評価を使いましょう。飲み会や友人との集まりに参加した後に、次の3段階で評価するのです。☆……参加してよかった。次の機会にもぜひ参加したい○……参加してよかったが、もう少し早く切り上げるべきだった△……参加する必要がなかったこの評価をある程度の期間続けると、誘ってくれる相手、参加者の顔ぶれ、集まりの性質などによって、適当な距離の取り方がわかってきます。たとえば、何度か一緒に遊んで☆が続いた相手なら、つぎに誘われたときもすぐにOKすべきです。大学の同期との飲み会は楽しいけれど、最終的に愚痴の言い合いになるので〇になりがち、とわかれば、今後は一次会で切り上げるようにすればいいでしょう。何度か△になった友人とは、積極的に関わらないほうがいいと判断できます。私が△をつけることが多いのは、芸能業界系の方からの「今日、空いてる?」という突然の誘いです。業界人がたくさん集まるし、つながりも増えるからというお誘いです。しかし多くの場合、誘われて集まってくるのは暇を持て余している「なんちゃってタレント」のような人ばかりになりがちです。そういう場に出かけていってだらだらと雑談をしていてもあまり得るものはありません。何度か参加して△の評価が続いたため、最近はこの手の誘いは断ることにしています。このように、瑣末なプライベートの行動は減らすべきですが、瑣末かどうかは行ってみないとわからないことも確かです。思わぬところで気の合う友人ができたり、仕事のチャンスにつながることだってあります。だからこそ、誘われたらとりあえず顔を出す、という主義の人も多いでしょう。とはいえ、それでは自分の時間がなくなってしまうことは避けられません。理想は、行くべきところに行き、行くべきでないところには行かないということです。その判断の精度を上げるために、プライベートの行動も評価をして記録を積み重ねることが大事なのです。Point飲み会や集まりに参加したら、「評価」をつけてみよう。「評価」をもとに、「判断」の精度を高める。
第7章迷わない人生を生き、人生を最大化する8週間プログラム
Introduction「人生が変わる8週間」を体験しよう!ここまで、6章にわたって、人生を最大化する片づけの考え方とテクニックを紹介してきました。最後のこの章では、本書の内容を実践するための指針として、8週間のプログラムを提示したいと思います。脳科学的に見ると、8週間というのは人間の性格が変わるために必要な期間です。マインドフルネスや瞑想といったワークが効果を表し、人生が変わったといえるくらいの変化が起きるのにはだいたいこのくらいの時間がかかるとされています。そこで、本書で紹介したテクニックを、各2週間ずつ、4つの段階に分けて配置し、無理なく効果的に実践できるプログラムを組んでみました。もちろん、気になったテクニックから試してみるというやり方でも効果は出ますし、すでに読みながら片づけを実践しはじめている人もいるでしょう。それはそれでまったく問題ありません。また、各段階を2週間で区切っていますが、日数をあまり気にせず、次の段階に進んでしまってもかまいません。一方で、どこから手をつけようか迷っている人、実際に片づけを進めていく手順をイメージしづらいという人もいるはずです。そんなときは、以下のプログラムを参考に片づけを進めてみてください。また、4つの段階ごとに、「やることリスト」をつけてあります。本書で紹介したノウハウをおさらい的に紹介したものですが、全部をやらなくてはいけないということではありません。各段階で何を目指すかをざっくりと理解した上で、具体的な行動の一案として、やりやすいものを試してみるといいでしょう。
第1週→第2週自分を見つめる自分が向かうべき「未来」を具体的、客観的にイメージする片づけの本質は、何を捨てるのかを決めることではなく、何が大事か、どんなモノを持つかを決めること。言い換えると、自分がこれから生きたい未来を選ぶことだと第2章で述べました。プログラムの第1期は、片づけにとって最も大事な未来の選択のために、自分を見つめる2週間です。ここで使うのが、第2章の「未来がはっきり見えてくる!思考の3つのツール」の項で紹介した、人生と未来を選ぶ「思考の3つのツール」です。①「理想の一日」を考える、②「何をしているときが一番楽しいか」を考えてみる、③1時間ごとに一日の行動と思考を記録する、のうちから使いやすい方法を選んで行い、自分が何をやりたいのか、そのために必要なモノは何なのかを見極めましょう考えるときには、カフェや図書館など、落ち着ける場所に行くことを忘れずに。まとまった思考の時間を取るのが難しいという人は、とりあえずライフログを取って、自分の行動と使うモノを記録するところからはじめるとやりやすいでしょう。また、瞑想をしたり、散歩をしたりして、自分と向き合う時間を増やすことも有効です。あくまでも、未来を選び、大事なモノを見極めるための2週間ですが、この間に「これは使わないな」「これは自分にとって必要がない」と明らかにわかるモノも出てくるはずです。当然ながら、それらは順次、処分してしまってもかまいません。やることリスト●カフェや図書館に行って、落ち着ける環境で自分を見つめる時間を増やす。ふさわしい場所がなければ、まずお気に入りの場所を探してみる。●未来を選ぶ。①「理想の一日」を考える、②「何をしているときが一番楽しいか」を考えてみる、③1時間ごとに一日の行動と思考を記録する、という3つのツールを活用しよう(第2章の「未来がはっきり見えてくる!思考の3つのツール」)。●余裕があれば、旅行に出かけてみる。限られたモノで生活しながら、自分を見つめる時間を増やせる。●ライフログを使って、自分に必要なモノの数量を把握してみよう(第4章の習慣5「数量限定」)。●自分の選んだ未来を参考にして、それにふさわしい服装や部屋のテーマ(第4章の『片づくファッションのコツは「テーマ」を決めること』)をイメージしてみる。
第3週~第4週モノを絞って生活してみる必要なモノを選んで、残りは見えないところにしまう最初の2週間で、自分の未来のために必要なモノがわかりました。次の2週間では、実際に必要なモノだけで生活してみましょう。といっても、本格的にいらないモノを処分するのはまだ先です。この2週間では、必要なモノだけを選んで、残りのモノは箱や袋に入れてしまいましょう。大きな家具なら、ポリ袋や新聞紙でカバーをかけるようにします。とにかく、いるモノといらないモノを区別します。そして、いるモノとして選んだモノだけで生活してみるのです。この生活をはじめて最初に感じるのは、「これだけのモノでも十分に暮らせるな」ということです。しばらく続けると、今度は「生活がすっきりして、快適になった」「心が落ち着いている」「なんだか毎日が楽しい」と感じるようになるでしょう。最初の2週間で自分にとって本当に必要なモノを見極めた上での選択なのですから、当然といえば当然の反応です。この2週間で、本格的な片づけへの準備は完了します。やることリスト●いるモノといらないモノを区別するとき、「モノが勝手に減っていく7つの質問」(第3章)を少しずつ試してみる。自分が実行しやすい質問を3つくらい見つけよう。●この段階でも、必要なモノだけを持って旅行するのは有効。●1週間分のワードローブ(第5章の「ハンガーの数を限定する」)を組み立て、それだけで生活してみる。●本格的な片づけの準備段階として、家の中で1か所だけきれいな場所=フォーカルポイント(第4章の習慣7の②「フォーカルポイント」)をつくってみる。●職場のデスク(第5章の鉄則1『仕事・勉強がはかどる「デスク」整理』)、カバンの中(第5章の鉄則2『開けた瞬間に超集中!最強の「カバン」整理術』)など、限られた時間で片づけられる場所は先に片づけてしまってもよい。●お店のディスプレーなど、飾る収納(第5章の鉄則5)のお手本を観察してみる。写真を撮っておく。
第5週~第6週いらないモノを捨てる実際に、いらないモノを捨てはじめるこの2週間で、家の中にあるいらないモノを一掃します。前の2週間で、すでにいるモノといらないモノの選別は基本的にはできているはずですが、いざ捨てるとなると抵抗を感じることもあるでしょう。そんなときには、第3章で紹介した7つの質問や、第5章のエリア別・片づけの鉄則を使って片づけを進めていきましょう。全部のテクニックを使おうとするのではなく、自分に合った使いやすそうなものを選んで実践してみること、実践しながら自分に合ったテクニックを見つけていくことがポイントです。この段階で、まとまった時間を取って一気にモノを捨てる人も多いと思います。つまり、大掃除的な片づけです。これをやるとしたら一つ気をつけることがあります。それは、午前中に終わらせることです。人間の決断力が最も高い時間帯は朝です。意志の力は前頭葉の体力のようなもので、朝起きたときがマックスです。そこからいろいろな選択をしたり、我慢をしたり、集中をしたりと、自分の心をコントロールすればするほど、意志力は消耗していきます。ですから、大量にモノを捨てる大掃除は、朝のうちに済ませなくてはいけないのです。朝から作業をはじめて、最初の2時間でどれだけ捨てる決断ができるかが勝負だと考えましょう。やることリスト●朝から片づけができる一日を確保して、スケジュールに入れる。粗大ごみ回収やリサイクルショップへの申し込みが必要なら、それも忘れずに。●本格的な作業に入る前に、第3章の7つの質問と、第5章のエリア別・片づけの鉄則を軽くおさらいしておく。●フリマアプリやネットオークションでいらないモノを売ってみる(第3章の「誰かが買ってくれるとしたら売るか?」)。●いらないモノを人にあげることに慣れよう。一日一与の習慣(第4章の習慣2「一日一与」)を確立できれば理想的。●大掃除が終わったら、「空っぽコーナー」(第4章の『置き場所のないモノを置く「空っぽコーナー」を作る』)を作って活用してみる。●ひと通り片づけが済んだら、写真暗示(第4章の習慣6「写真暗示」)用に部屋を撮影することを忘れずに。●片づいたときの気持ちよさを忘れないうちに、その部屋にふさわしい香りを選んで、香りのコントロール(第4章の習慣7①「香りのコントロール」)をはじめる。
第7週~第8週新しい人生を味わい、挑戦する片づけで生まれた時間で新たなチャレンジをはじめよう最後の2週間では、片づけが終わった新たな生活環境を、まずはじっくりと味わい、楽しみましょう。モノが減って、すっきりした部屋の中がどれだけ快適か。自由な時間や心の余裕がどのくらい増えたか。やりたいことにどれだけ集中できているか……。片づけによって起きた自分の変化、幸福感をノートに書きとめて、より深く味わうのもいいでしょう。この快適な生活を維持しようという意欲も自然にわいてくるはずですから、第4章の毎日の片づけ習慣を実践するのも容易だと思います。日用品の買い替えなどで、より理想に近い生活空間を整えていくのも楽しい時間です。また、片づけが人生にもたらすインパクトを実感できているこの時期に、第6章のタイムマネジメントテクニックを試してみるのもよいやり方です。片づけの恩恵を、人生のより多くの局面に広げていきましょう。こうして、あなたが目指す人生の最大化は着々と進んでいきます。最後に、この2週間でぜひ挑戦してもらいたいのが、やりたいことをもっと増やすことです。片づけによって生まれた時間や労力の余裕を使って、自分の新しい可能性にチャレンジするのです。本当はやってみたいのに、これまでリソースが足りなくて諦めていたこともあるでしょう。余裕のない生活の中では思いつきもしなかったこともあるでしょう。それを発見するために、今度はすっきりと片づいた自分の部屋の中で、大切なモノだけに囲まれた環境で、改めて自分を見つめましょう。この瞬間の楽しさこそが、片づけのゴールであり、あなたの新しい人生のスタートなのです。やることリスト●第4章の「毎日の片づけ習慣」を実践する。●特に、1イン2アウトのルール(第4章の習慣1「1イン2アウト」)、空っぽコーナー(第4章の『置き場所のないモノを置く「空っぽコーナー」を作る』)の運用はゆるくなりがちなので注意しよう。●片づけの思考法を、スケジュール管理や人間関係にも応用してみよう。第6章で紹介したテクニックだけでなく、自分なりの応用法も思いつけるはず。●付箋テクニック(第1章の「付箋を貼ってみる」)などを使ってアフォーダンスの最適化(第1章の『「アフォーダンス」をデザイン』、第5章の『「アフォーダンス」の最適化:誰もがその用途をわかるように』)をはかる。片づいた環境を、人生を最大化するためさらにブラッシュアップしていこう。●新しい環境で、もう一度、人生と未来を選ぶ思考を働かせよう(第2章の「未来がはっきり見えてくる!思考の3つのツール」)。第一段階で考えたことと比較すると、自分の変化に驚くかもしれない。片づけが人生を変える効果を実感しよう。●やりたいことに没頭しよう。もっとやりたいことを増やそう。「片づけは目的ではなく、人生を最大化するための手段である」ということを再認識しよう。
おわりに何もない場所で感じ、考え、楽しむことの大切さ2017年の夏休みを、私はイギリスのオックスフォードと南の島で過ごしました。リゾートではあるのですが、まだ開発が進んでいないこの島は、施設やアクティビティが充実した、なんでも揃ったリゾートではありません。人によっては、「何もない島だ」と言うでしょう。なにしろ、本土に帰るにも定期便はなく、前日にボートを予約しなくてはいけないくらいの場所です。岩と川、森と海しかないベトナムの島で、私が毎日やっていたことといえばトレッキングです。あとは、持っていった数少ない本を、すぐに読んでしまってはいけないのでゆっくりゆっくりと読むことくらい。なんて退屈な夏休みだ……と思われるかもしれませんが、私はこの島で暮らしている間、これまでに経験したことがないほど満たされていました。何もない場所だからこそ、人は見るものを無意識のうちに探します。一本の木が持つ美しさは、ベトナムの深い森の中でも、大都市の公園でも変わりません。けれども、モノと情報にあふれた都会でなんとなく木が目に入ってくるときと、森の中でじっと目を凝らして木を見るときとでは、感じ取れるものがまったく違います。トレッキングでは、垂直に切り立った岩を登っていきます。歩き慣れたガイドはひょいひょいと登っていきますが、私は「つぎに足をどこに置くか」「つぎにどこに手をかけるか」以外のことは何も考えられなくなります。これほど何かに集中できる瞬間は、普段の生活の中ではありません。そして、苦労して沢をさかのぼっていった先には、息をのむような美しい光景が広がっているのです。日々、島の中を歩きまわるうちに、私は新しい趣味を見つけました。石を積むことです。河原でも、海辺でも、そのあたりにある石を手にとって、バランスを取りながら高く積み上げていく。これだけのことに、時間を忘れて熱中するようになったのです。石積みは、ベトナムから帰った今もすっかり私の趣味になってしまいました。「何もない」島にいるのでなければ、石を積んでみようなどとは絶対に思わなかったでしょう。「何もない」環境に身を置かなければ、石を積むというだけの、何の生産性もない活動がこれほど楽しく心を満たしてくれると気づくこともなかったでしょう。「何もない」からこそ、人はより強く感じます。より深く考えます。そして、より多く人生を楽しむことができるのです。大量のモノ、情報を処理する能力で、人間がAIに勝てる見込みはありません。今後、その差は開く一方でしょう。けれども、「何もない」ところで感じ、考え、楽しむことについては、まだまだ人間に分があります。そこに、人間にしかできない仕事はあるのです。あふれるモノや情報に翻弄されたままでいることは、この人間らしい能力を失うことにつながるといえるでしょう。片づけは、あなたが未来を選び、つくる行為です。そして、もしかしたら人類の未来にとっても、重要な意味を持つことなのかもしれません。メンタリストDaiGo
■参照一覧*1ニコニコ生放送メンタリストDaiGoの「心理分析してみた!」http://ch.nicovideo.jp/mentalist*2メンタリストDaiGo監修「ニコアロマ」https://goo.gl/J6ehKC■参考文献『全面改訂版はじめてのGTDストレスフリーの整理術』(デビッド・アレン著/田口元監訳/二見書房刊)『年収は「住むところ」で決まる――雇用とイノベーションの都市経済学』(エンリコ・モレッティ著/池村千秋訳/プレジデント社刊)
メンタリストDaiGo(めんたりすと・だいご)慶応義塾大学理工学部物理情報工学科卒業。人の心を作ることに興味を持ち、人工知能記憶材料系マテリアルサイエンスを研究。英国発祥のメンタリズムを日本のメディアに初めて紹介し、日本唯一のメンタリストとして数百のTV番組に出演。その後、活動をビジネスやアカデミックな方向へ転換し、企業のビジネスアドバイザーやプロダクト開発、作家、大学教授として活動中。趣味は1日10~20冊程度の読書、猫と遊ぶこと、ニコニコ動画、ジム通い。ビジネスや話術、さらには恋愛や子育てまで、幅広いジャンルにおいて人間心理をテーマに執筆した著作は累計200万部を突破。『一瞬でYESを引き出す心理戦略。』(ダイヤモンド社)、『自分を操る超集中力』(かんき出版)、『ポジティブ・チェンジ』(日本文芸社)などヒット作多数。●メンタリストDaiGoオフィシャルウェブサイトhttp://daigo.me/●ニコニコ生放送/メンタリストDaiGoの「心理分析してみた!」http://ch.nicovideo.jp/mentalist
人生を思い通りに操る片づけの心理法則電子版2017年11月version1.0発行著者メンタリストDaiGo発行人鈴木昌子編集人吉岡勇編集長倉上実発行株式会社学研プラス〒141-8415東京都品川区西五反田2-11-8【お問い合わせ】http://ebook.gakken.jp/contact(電子出版専用)MentalistDaiGo2017本書の無断転載、複製、頒布、公衆送信、翻訳、翻案等を禁じます。学研グループの書籍・雑誌についての新刊情報・詳細情報は、下記をご覧ください。学研出版サイトhttp://hon.gakken.jp/
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