「整理・整頓」や「清掃」、「清潔」、「躾」それぞれ1つひとつの言葉は、すべて昔から家や、 学校で言われ、よく耳にしてきたものです。
これが、それぞれローマ字読みの∽璽コT ∽田「OZ・∽璽∽〇⊂・∽m天m「∽⊂・∽工「∽⊂バmの頭文字でSが5つ集まり『5S』となると、 1つの仕組みを持った活動名称となって現れてきます。
今では、日本国内の製造現場や事 務所、街中の工事現場や商店などでしばしば使われ、スローガンの垂れ幕などで目にする 機会も多くなってきました。
また、日本国内にとどまらず、今では海外の工場や会社など でも5S活動が行われ、5Sの本も翻訳され海外企業で大いに活用されています。
このような身近にある「5S」だけに、よく見かける光景は、「5S」をやること自体が目 的となり、「5S」本来の目的を見失ってしまう状況です。
こうなると、職場のあちこちに スローガンがベタベタと掲示され、「整理・整頓」の表示の前にドカンと置かれた不要物が ところ狭しと占領している様子も日にします。
要するに、ただ「5S」をやればいいんだという意識のもとで活動が行われ、「5Sだ」、 「整理。
整頓だ」と上司は言葉だけで部下に言い渡します。
子供の頃から聞いている言葉だ けに、すでに知っているはずだろうと、実際にこうしろ、ああしろ、という具体的な指示が あまり出されていないのです。
言い渡された担当者は、自分の頭の中だけで考えている「5
S」を、良いか悪いか判断がつかないまま、ついつい実施してしまいます。
それを見ている 上司も、上辺だけがきれいになった職場を見てついつい満足顔になり、やがて5S活動に 行き詰まりを迎える間に、活動自体も消えてしまうのです。
残ったのは理にかなっていな い表示や区画線で、チェックシートは放置され、通路や倉庫にモノがまた溜まってしまうの です。
いつしか従業員の心に現場や製品、ひいては人に対してまでも無関心がはびこり、気 の抜けた心のない作業を続けていくようになります。
そして、その会社自体も心のないお 客様対応をしてしまい、いつしか信用をなくしてしまうのです。
こうなると「5S」どころの問題ではなく、企業本来の目的までもが見失われ、会社自体 が整理されるはめになりかねません。
本書では、「5S」の目的と、整理・整頓。
清掃。
清潔。
躾についての各活動における具体 策を、テーマごとに手順に沿って解説しました。
これから始めようという企業はもとより、 すでに5Sを行っている企業、そして過去に活動を行った経験のある企業にとっても、もう 1度「5S」という活動を見直していただきたいという思いでまとめました。
目的のない活動に計画はない、計画のない活動に明日はない、明日のない企業に未来は ない、未来のない企業に夢はない、夢のない企業に人は集まらない。
こうして企業も自然 も淘汰されていくのです。
2006年2月 平野裕之 古谷誠
5Sってなんだろう
「5S」と言われてもピンとこない人も多いようです が、「整理・整頓」や「清掃」、「清潔」、「躾」ならば、それ ぞれ1つひとつの言葉はみな昔から家庭や学校で使わ れ、よく耳にしてきた言葉のはずです。
子供の頃から、 自分の机を整理しなさいとか、オモチャを片づけなさ いとか、食事の前に手を洗いなさいとか、思い出せばい つも身近に接してきた中身です。
他国の人に日本人は清潔だとか、几帳面という印象 を与えるのも、島国の日本で子供の頃から、整理・整 頓。
清掃。
清潔・躾を親から教えられ、そして自分の子 供へと言い伝えてきた結果です。
いわば日本文化の基 本の1つと言ってもいいのではないでしょうか。
これが、それぞれローマ字読みの∽m一翌、∽m「OZ、 ∽田一∽〇⊂、∽田天m引∽⊂、∽工「∽⊂バmの頭文字でSが5 つ集められ、『5S』となったのです。
そして、1つの仕 組みを持った活動名称となって登場しました。
子供の頃は、親や近所の大人から整理・整頓。
清掃。
清潔。
躾を繰り返し教えられてきましたが、大人にな るにつれ、もう自分でやりなさいと言い放たれ、いつし か忘れ去られてしまいました。
それが社会人になり、職場で再び「5S」となって現 れた整理・整頓・清掃。
清潔・躾と出会うと、「5S」な ど聞いたことがないとばかりにそっぽを向いてしまいま す。
昔から耳にし、聞き慣れている言葉なのに、周囲 から整理・整頓と言われると、そんな子供だましみた いなことはと敬遠し、そんなことはすでに実行してい ると思い込みがちなのです。
今では、日本国内の製造現場や事務所、街中の工事 現場や商店などでよく耳にしたり、ス回―ガンの垂れ 幕などで目にする機会の多くなった5S。
また、国内 にとどまらず、海外の工場や事務所でも5S活動が行 われ、5Sの本も多数翻訳され、海外企業で大いに利 用されている5S。
日本文化が海外に紹介されるよう に、5Sも文化として羽ばたこうとしているのです。
●整理・整頓。
清掃。
清潔・躾のこと ●国内にとどまらず、海外企業でも大いに利用さ れるようになつた

職場の5Sを チェックする
5Sが整理・整頓・清掃・清潔・躾であることがわか ったところで、身近で行われている5S活動を、自分 の職場に当てはめた時に、一体どのような状況である か、チェックをしてみましょう。
まず何に対して「5S」をチェックしていけばよいの でしょうか。
製造現場を動かしていくうえで必要とさ れる要素には、大きく分けて次の5つがあります。
① 人 生産に従事し直接付加価値を付ける作業者と、生 産が円滑に運ぶように管理業務を行う間接員とに、大 きく2つに分けられます。
② モノ 生産で取り扱う品物を指し、原材料、購入品、外注 品、仕掛品、組立品、半製品、製品、それに副資材な どがあります。
③ 機械 生産をするうえで、付加価値を付ける機械や設備を 指し、素材加工の機械設備、プレスや切削などの加工 機械、それにコンベア、電ドラといった組立機械などが あります。
事務所では、パソコンやコピー機、それにフ ァクシミリや電話などが含まれるでしょう。
④ 作業方法 同じ製品をつくるのでも実にいろいろなつくり方が あります。
その作業方法で、ダンゴ生産や平準化生産、 ロット生産や1個流し生産などの生産のやり方です8 ⑤ 情報 製造企業で急速に重要性を増してきたものに情報 があります。
モノをつくったり、処理業務を行ったり、 人が何らかの作業を始める際には、必ず情報が発せら れます。
そして、この情報は形を変え、紙になったり、 パソコンの中に入ったりして扱いが非常に厄介です。
以上の5つの要素に対して、5Sの切り回から整 理・整頓・清掃。
清潔。
躾を考えていきましょう。

職場の抵抗はこんなにある
5S活動を社内で実践しようとすると、製造現場や 事務部門、営業部門において、5Sに対するさまざま な抵抗と、それを裏付けするような固定観念が浮き出 てきます。
そのいろいろな抵抗群を‐2項目にまとめて みました。
題して「5S抵抗の十二項目」です。
抵抗一「今さら整理・整頓なんて」←5Sは″職場の 照れ″をまず取り除くことから始めます。
抵抗二「5S運動の委員長を、社長のオレがやるのか」 ← ″社長の自尊心″を捨て去ることが要求されます。
抵抗三「どうせすぐに汚くなるんだから」← ″職場の あきらめ″を根こそぎ取り去りましょう。
抵抗四「整理。
整頓なんかしたって、業績が上がるわけ ではない」← ″5Sの効果″を飲み込ませましょう。
抵抗五「そんなつまらないことで、とやかく言うのはど うも」←叱れない管理者は、躾のない職場をつくりま す。
″管理者の無関心″を徹底して排除しましょう。
抵抗六「整理・整頓なんて、すでにできている」← ″職 場の見栄″だけでは会社は真に良くなりません。
抵抗七「これだけ書類が散らかっていても、オレにはわ かるんだから」← ″事務の孤独″をオープンにして、 書類が誰にでもひと目でわかるようにしましょう。
抵抗八「そんなものは、 20年 も 前 に や っ た よ 」 ← 5Sは 流行ではなく、改革という畑の土壌づくりです。
抵抗九「5Sや改革は現場の問題だ」← ″間接部門の 無関心〃を改めるために5Sは全社的展開で行います。
抵抗十「忙しくて整理や清掃をやっているヒマがない」 ← 「忙しい!」と言う人ほどムダな動きが多いもの。
抵抗十一「お前に命令されてやるのはイヤだ」← ″職 場の感情のもつれ″が発生したら、時間をかけてその もつれを1本1本解きほぐしましょう。
抵抗十二「い―じゃないか、儲かってるんだから、オレ の好きなようにやらせてくれよ」← ″職場の身勝手〃 は、モノづくり全体のリズムを乱します。
●5S活動を始めようとすると、さまざまな抵抗が 生じてくる ●5Sとは改革という畑の上壌づくり

5Sでどんな効果が 出るの?
職場の抵抗は山ほど出てきますが、それは5Sをな ぜやるのかが理解されていない証拠です。
そこで、「5 S」はどのような効果をもたらすのかをみましょう。
効果1「切り替えゼロ」←多品種化 世の中のニーズには多品種化があり、切り替えが必 須です。
金型、治具、工具などを整頓をしておけば、 誰でも探し、準備することが可能となるのです。
効果2「在庫ゼロ」←問題表面化 諸悪の根源である在庫を、整理によって要るモノ、 要らないモノとにハッキリと分け、過剰在庫と過剰置 き場を排除することで問題を表面化させます。
効果3「ムダゼロ」←コスト削減 職場の中はムダの宝庫です。
在庫を持ち過ぎるムダ。
探す、よける、避ける動きのムダ。
取る、置く、運ぶ、 移し替える作業のムダ。
ムダがさらにムダを呼びます。
効果4「不良ゼロ」←品質保証 決められた場所に決められたモノを置き、そこから 決められたモノを取って使う。
そうすれば部品の組み 違いや治具の付け間違いによる不良もなくなります。
効果5「故障ゼロ」←生産保全 機械の掃除をしながら日々の保全業務を兼ねること で、可動率が向上します。
日々の手入れと点検で、故 障を未然に防ぎます。
効果6「停滞ゼロ」←納期短縮 整理によって今の作業に必要なモノ以外は出さず、 仕事の単位で資料を整頓し、納期を表示して順番に並 べることで納期遅れをなくします。
効果7「災害ゼロ」←安全第一 5Sのない職場では安全が確保されません。
安全第 一と唱える前に、5Sを実行します。
総合効果「クレームゼロ」←信頼性向上 5Sが徹底されて行き届いた会社では、5Sの効果 が現れ、不良や遅れなどがなく、結果としてクレーム も発生しなくなり、お客様からの信用が向上します。
●職場の抵抗は5Sの成果が理解されていない証 拠 ●総合効果はクレームが発生しなくなること

5Sは心のパロメーター
5Sと言うと難しく感じられ ますが、整理・整頓。
清掃。
清 潔・躾という1つひとつの言葉に は、子供の頃から身近に接して きたはずです。
朝起きたら「おは ようございます」、「食事の前に は手を洗う」、「使ったものは片付 ける」など、小さい頃から家庭で 言われてきた内容です。
また、 小学校に行けば自分の靴入れ、 ロッカーが与えられ、机などそ れぞれには自分の名前が書かれ てありました。
教室のクラス表 示は、廊下に対して直角に示さ れてあり、生徒が教室を見つけ やすく、工夫されていました。
それがどうでしょうか。
月日 が経過するにつれ忘れ去られ、 会社という別の生活環境になっ たとたんに、自分さえわかれば いいんだと表示もなく、またす ぐに使うからと言って治工具は 置き場に戻されないまま乱雑に 放り出され、どうせ誰かが掃除 するだろうと汚れ放題。
やがて職場には長年のアカが 溜まり、それは「ムダ」という姿 に変わって1人ひとりにのしか かってきます。
そこでは、付加価 値を生む「働く」という行為が少 なく、従業員にはムダと呼ばれ る「動き」ばかりが目立ちます。
このような職場、会社では当然 のことながら生産性は低く、在 庫ばかりが目立ち、作業者はあ ちこち材料や治工具を探し回る 始末です。
機械の故障や不良が 多発し、在庫で対応せざるをえ なくなり、資金繰りを圧迫する という現象を招きます。
管理部 門ではお客様への納期回答と、 協力企業への督促に追われる 日々が続きます。
企業運営の要素では、日で見 て確認可能なハード的要素と、 日で見にくいソフト的要素の大 きく2つに分けることができま す。
ハード的要素には「人。
モノo 機械・金」の4要素があり、ソフ ト的要素には「生産方法・販売・ 管理・技術」の4つがあります。
「5S」とは、このような企業 運営における各要素の状況を、 整理。
整頓。
清掃・清潔・躾を通 し、ハッキリと映し出すバロメー ターなのです。
要るモノか要ら ないモノか。
誰が見てもわかる か。
つねに清掃されているか。
不 必要なモノが溜まらない仕組み、 モノが乱れない仕組み、汚れな い仕組みはあるか。
決められた ルールは守られているか、など。
子供の頃から身近にあった5S だけに、そこで働く人の、職場 やモノに対する心のバロメータ ーとなることができるのです。
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