PART06組織の意識を整える
PART06のガイドラインチームで取り組む場合192大切なのは道具より意識193チームで情報を共有するメリットを知る194将来役立つ組織の記録、業務の記録195チームで取り組むから効果も大きい196文書管理の勉強会に全員で参加する197みんなで掃除することを習慣にする198チームのファイリング年間スケジュールを定める199仮置きは×、共有か捨てるか即決する200戻すときは例外なく元の場所に201各自が文書作成時に必要事項を記載する202全員でルールを守りファイリングシステムを維持するリーダーとして取り組むには203管理者として文書管理の役割を認識する204部門間に広げたい場合はトップを巻き込み、強制力を持たせる205実態を把握するため管理状態とメンバーの意識を調査206調査結果を評価する207改善目標を設定する208オフィスをきれいに保つ「リーダーの心得」209作成したファイル管理表を確認・評価する210維持するための仕組み作り成果を実感し、効果を波及させる211整理整頓で人件費を減らし、スペースの無駄をなくす212業務効率が上がったことを実感する213ファイリングシステムは組織の維持発展のためにおわりに
チームで取り組む場合192大切なのは道具より意識「せっかく自分がやる気になっても、チーム内の意識が低いままではうまくいかないのではないか」「上司でさえ、道具を揃えればそれでいいと思っている」オフィスで新たな整理術を構築しようとすると、そんな不安の声がよく上がります。
チームとして意識改革を行なわないことには、せっかく時間と手間をかけて作業をしようとしても成功させるのは難しいでしょう。
どのような業務であれ、成功のためには組織のメンバーの意識統一が重要です。
目標を共有することで、組織の全員が一丸となれるのです。
ファイリングによる文書管理を導入する際にも、同じことがいえます。
業務の内容と使い方に合った道具を揃えても、それだけでは目標を達成できません。
使い勝手のいい道具は、ファイリングのルールを守りやすくしてくれますが、ルールを守るには守ろうとする意識が必要です。
目標がはっきりしていて、それを全員が十分に理解していれば、自然とルールを守ろうという意識が働きます。
ファイリングによって文書管理をすることで、仕事の生産性が向上し、組織として良い結果を出せるようになると認識することから始めましょう。
そのうえで道具をルール通りに正しく使えば、道具本来の性能が発揮され、便利だと実感できるでしょう。
道具を揃えるより、まずは意識改革が必要です。
193チームで情報を共有するメリットを知るチームのなかには「自分が手元に抱えている書類をほかの人に見られたくない」という人もいるでしょう。
「自分が築いたネットワークで得た貴重な情報を、ほかの人に盗まれたくない」「せっかく努力して身につけたノウハウを知られてしまう」そんな理由が挙げられますが、抜け駆けして出世のチャンスをつかみたいという強い思いがそうさせるのでしょうか。
しかし、組織で働いている以上、おかしな話です。
貴重な情報もノウハウも秘密にしていたら、何も生み出せません。
情報は開示してこそ意味を持ちます。
同時に、「仕事が遅れているときに、いちいち上司に知られたくない」「トラブルが起きたことを伏せておきたい」といった理由で、書類を見せまいとするのも大問題。
取り返しのつかない事態にまで発展しかねません。
進捗状況を把握できてこそ、上司も大事に至る前に手を打つことができます。
オープンファイリングシステムを導入すれば、自分が席にいないときは同僚が代わって問い合わせに対応することができます。
情報を共有すれば、作業や業務も共有化できるようになるのです。
そうしたメリットを具体的に伝えることが、意識改革の出発点となるでしょう。
外出中に急に呼び戻されたり、休日に電話がかかってきたりといった煩わしさから解放されると説明すれば、乗り気でなかった人も聞く耳を持ってくれるのではないでしょうか。
194将来役立つ組織の記録、業務の記録自分が担当する案件の書類を自分個人のものであるかのように捉えてしまう人がいますが、それでは将来的に問題が起こりかねません。
組織のなかで働いているかぎり、仕事の書類は私有物ではありません。
ひとりで担当する案件であっても、「終わったからもう要らない」と勝手な判断で廃棄するのは問題です。
手元にある書類も組織の記録です。
企業としての歩み、業務内容を示し、社会的な活動を行なってきた記録となります。
法律などで保管を義務付けられていない文書であっても、将来必要となる可能性があります。
たとえば、社史などを編纂するとき。
どのような経緯で重要な事業が進められたのか、大きな経営判断に至ったのかなどを物語る貴重な資料となるかもしれません。
また、万一、業務上のトラブルが発生すれば、証拠として求められる可能性もあります。
訴訟を起こされたり、起こすことになったりした場合、担当者のちょっとしたメモが証拠になることもあります。
どのような経緯で問題の結果を招いたのかを明らかにするには、文書として残る記録が必要でしょう。
「そんな先のことや、万一のことまでいちいち考えていられない」という人には、まずオープンファイリングシステムに慣れてもらいましょう。
情報を共有化すること、その必要性を実感できるようになると、組織の記録であるという意識も働くようになるでしょう。
195チームで取り組むから効果も大きいチームのなかに整理が苦手で書類を積み上げている人がいると、「あの人がいるからファイリングシステム導入は難しいのでは」と消極的に考えてしまいがちです。
実際には、どこのオフィスにも片づけができていない人はいます。
それが致命的なネックになると見なしてしまうのであれば、ファイリングシステムの構築に成功することは難しいでしょう。
見方を変えてあきらめずに取り組みましょう。
まず、整理できていないということについて、当人がどう認識しているのか、確認してみてください。
もしかしたら「仕事はちゃんとしているのだから問題はない」と思っているかもしれません。
もしくは「いつも散らかしていて悪いけれど、うるさく言われないから大目に見てもらっている」と高をくくっているのかもしれません。
次に当人の意識を変えるために、周囲が期待の目で、常にしっかりと見ているのだと知らせることです。
顧客の視線と同じくらい同僚の視線を意識するようになれば、自分の机周りをきれいにしようという気持ちにもなるはずです。
周囲がきれいであれば、自分の机だけ汚くしておけないという心理が働きます。
せっかく皆がきれいに維持している共有棚を乱すこともためらわれます。
チーム全員で取り組み、整った環境をつくるという目標を共有し、行動に移すのです。
メンバーの誰も例外ではないと周知させ、自分だけ汚くしておけないと思わせることが考えと習慣を改めることにつながります。
196文書管理の勉強会に全員で参加するチームメンバーの意識を向上させ、どのような姿勢、考え方で取り組むべきかを学ぶには、文書管理やファイリングの勉強会に参加してもらうといいでしょう。
「ファイリングシステムを導入するなんて面倒なだけ」「今のままで十分だろう」そうした否定的な考えの人も、必要性や意義を基本から学ぶことで前向きになるでしょう。
「それなら、ぜひやろうじゃないか」「すぐにも取り組むべきだ」と考えを変えてくれるはずです。
勉強会としては、文書マネジメント、環境マネジメント、情報セキュリティマネジメントなどISO(国際標準化機構)の文書管理についての勉強会、また説明会などがあります。
ここで徹底したいのが、チーム全員で参加するということです。
「自分はもう十分に理解しているから必要ない」「自分には関係ない」そのようなことを言って勉強会を避ける人が出てきますが、そのまま放置すると後々大きな悪影響を及ぼします。
欠席した人が原因で文書管理に綻びが生じ、システムが崩壊しかねません。
そうならないように、全員参加を義務付け、確実に参加するように進めていきましょう。
197みんなで掃除することを習慣にする日頃、オフィスの掃除はどのようにしているでしょうか。
一般的に、規模の大きなオフィスビルや企業では、業者に任せきりにしているケースが多いようです。
「掃除は専門の人に頼んで、社員は仕事に集中する」といえば聞こえはいいですが、それだけではオフィス全体がきれいに片づいた状態を維持することはできません。
掃除を請け負う人は床を掃除してゴミ箱の中を空にしても、社員の机の上には手を出さないからです。
毎日清掃されていても、机の上や収納棚の混沌は、そのままの状態が続くことになります。
新たにオープンファイリングシステムを導入することを決めたら、メンバー全員で掃除する時間を設けるようにしましょう。
全員で行なうことができるように、揃いやすい時間帯にすることが大切です。
たとえば朝、仕事に取りかかる前の5分、10分を掃除の時間に充てるといったことが考えられます。
外出や離席の機会が多い日中は、ちょっとした空き時間を自分の机周りの片づけに充てるには有効ですが、全員での掃除には向いていません。
掃除のメリットを体感する「掃除なんて面倒なことをしたくない」という人には、掃除のメリットを説明し、まずは実践することでそれを体感してもらうといいでしょう。
整理整頓ができていれば仕事の効率が上がることは、ここまで繰り返し述べてきた通りです。
新たなファイリングシステムの導入にあたり、不要なものを廃棄し、机周りも収納棚もすでにすっきりとしていれば、その状態を継続させるということがモチベーションになるでしょう。
自分で掃除する習慣がつくと、散らかっている状態に居心地の悪さを感じるようになります。
そして、整理整頓に手がかからないように工夫する癖がつきます。
できるだけ散らかさないように、素早く片づけられるように常に意識して、モノをきちんと配置配列するようになるでしょう。
皆で掃除をすると、「あれ、〇〇さん、このファイル探してなかった?」「△△さんの机周りはいつもきれいですね」などと会話が生まれるようになります。
そうして、誰かの探し物が見つかったり、活発なコミュニケーションも期待できます。
198チームのファイリング年間スケジュールを定める組織として年間スケジュールを定めることも、チームの意識改革に役立ちます。
全社を挙げて取り組む際は、社長をファイリング推進委員長とするファイリング推進委員会、それにファイリング推進事務局を設置することは、PART1で説明しました(→こちら(*))。
ファイリング推進委員会がある場合は、同委員会が年度の初めに年間スケジュールを決め、各部署に通知し、指示や監督をします。
部署内のチームで取り組んでいる場合も、部門長、ファイリングマネージャーが年間スケジュールを定めてください。
ファイリングを「本来の業務とは異なる面倒なこと」のように思っている人も、年間スケジュールを前にすると「業務の一部として行なうべきこと」と捉えられるようになるでしょう。
オープンファイリングシステム運用のための年間スケジュールは、当然、全員参加が義務付けられます。
ファイリングシステムの維持管理のために必要不可欠であり、ルールをメンバーそれぞれが改めて確認することにもなります。
具体的には、PART1で紹介した「登録」「オキカエ」「廃棄」のキャンペーンを行ないます(→こちら(*))。
簡単にいうと、捨てるべき文書、廃棄の時期がきた文書を確実に捨て、一定期間の保存が必要な文書はオフィスから保存庫へ置き換え、ファイル管理表に登録していない文書を登録します。
そうするなかでメンバーの認識や理解に誤りがないか、十分であるかどうかをチェックしましょう。
199仮置きは×、共有か捨てるか即決する「整理とは捨てること」だと、ここまで繰り返し述べてきました。
チームの意識を改革し、オープンファイリングシステムを維持していくためには、捨てるものは日々捨てるように促すことも大切です。
なかには捨てるか否かの判断がなかなかつかない人もいるでしょう。
すると、「とりあえずの仮置き」が増えていき、ほどなくしてシステムが崩壊してしまいます。
以下のポイントをチームで徹底しましょう。
①書類はその日のうちに処理する処理の方法は「共有するか、捨てるか」。
このどちらかしかなく、その日のうちに決めて実行します。
共有する場合は、その業務の担当者か上司に提出し、自分が担当している場合はその業務の共有ファイルに保管します。
②書類を捨てるための時間を確保する情報セキュリティの面から廃棄に多少の時間がかかる書類は、少しずつ処分します。
1日の始まりか終わり、昼休みの後、仕事にひと区切りついたときなどと決めて確実に行ないます。
③いつまでも保留にしない「共有するか、捨てるか」上司の判断を仰ぐ必要があるとき、取引先の回答を待つときなど、即決できない場合は保留せざるをえません。
その場合も、保留してあることを忘れずに処理できるように予定に組み込むなど、いつまでも保留しないように気をつけます。
200戻すときは例外なく元の場所に「使ったものは元の場所に戻してください」口を酸っぱくして言っても、ふと気づくとファイリングシステムに乱れが生じて、最初のような使い勝手の良さが感じられなくなっていることはよくあります。
ファイルを元の場所に戻すことは最低限のルールです。
これを守れない人がいる状態は、必ず改めなければなりません。
ファイルは使って終わりではなく、元の場所に戻すまでが一連の仕事だと全員で認識を新たにしましょう。
戻さないと、ほかの人が必要なときにすぐに使えず、探しまわって時間を浪費するなど不利益を与えることになるという自覚を全員に促します。
放置されがちなファイルがあれば、戻しにくい環境になっていないかを検証することも時には必要です。
たとえば、よく使う書類が遠く離れたキャビネットに置いてあると、頻繁に取りに行くのが億劫になります。
「すぐにまた使うから」とつい手元にとどめてしまい、そのままになってしまうといったケースです。
戻しにくいファイルがある場合は、チームで話し合い、置き場所を再検討する必要があるかもしれません。
「完全に戻す」ことも徹底しましょう。
「だいたい、あの辺りだった」「この辺りだった」と、きちんと確認せずにボックスに放り込むのはルール違反です。
高い意識をそれぞれが持ち続けているかどうかが、そのまま整理整頓の状態に現れます。
201各自が文書作成時に必要事項を記載する文書は日々生み出されますから、チーム全員が高い意識で作成時から臨むことが重要です。
ファイル管理表を作成し、個々のファイルをどう扱うのかルールを設定し、ファイルの見出し表示を行なうことについては、PART5でも述べました。
全社を挙げての取り組みではなく、チームごとに取り組むという場合も、文書作成時から工夫をしましょう。
以下の情報は必ずファイルに記載してください。
・作成の日時・作成者と部署・廃棄予定日・保管場所誰がいつ作成したのかは最も基本的な情報です。
「よそに出ることもない書類だから」と思っていても、ほかの部署の人の手に渡らないとは限りません。
作成者自身も、作成日時を明確にしておくことで整理しやすくなります。
作成日時がはっきりしていれば廃棄時期もわかり、管理しやすくなりますが、廃棄予定日が明記してあればさらに扱いやすくなります。
ほかの人の書類で初めて見るものであっても、迷うことなく処分できます。
さらに、保管場所を記載してあれば、放置されていても元の場所に戻すことができます。
メンバー全員の意識が向上し、これらを確実にこなせるようになれば、各段に日々の仕事がしやすくなるでしょう。
202全員でルールを守りファイリングシステムを維持するファイリングシステムは、導入しさえすればうまく回っていくというものではありません。
導入よりも維持のほうが難しいのが現実です。
考えてみれば当然でしょう。
毎日毎日、何人もの人たちが書類をつくり、ファイルを取り出して使ったりするのです。
環境を変えたところでチーム全員がルールを守るべく意識していなければ、維持はできません。
最後に、もう一度、基本ポイントをまとめます。
①ルールに従ってオキカエ、廃棄をすること捨てなければ、文書は溜まる一方です。
オキカエ時期がきた文書は保存庫へ、廃棄すべき文書は廃棄します。
②ファイルに常に見出し表示をすること作成日時、廃棄予定日を明記し、それに従って捨てられるようにしておきます。
③ファイル管理表を漏れなくつくることファイル管理表をきちんと作っておけば、どんなファイルがあるのかその存在がわかるだけでなく、作成日時、廃棄予定日、保管場所も把握できます。
文書を新たに作成したり、外部から書類
を入手したりしたときは、すぐに登録することを徹底しましょう。
④扉のない什器で管理状態が見えるようにすること扉の付いた什器では、「閉めればわからない」「閉めておけばいい」という気持ちが働きます。
常にファイリングの状態をチェックできるよう、什器の中が一目瞭然になるようにしましょう。
6組織の意識を整えるリーダーとして取り組むには203管理者として文書管理の役割を認識するファイリングの活動は、関係する組織の全員で行なうことが絶対条件です。
書類の管理と使い勝手の悪さに困っている現場で、オープンファイリングシステムを導入しようとしても、管理者が無責任では定着しません。
現場のリーダーが「ファイリングシステムの導入や維持は自分の仕事ではない」と考えていては、なかなか先には進めないでしょう。
チームのなかでファイリング担当者を決めて、その人にすべて押し付けたところで、持続性のある活動は望めません。
管理者であれば業務の成果には責任があるのですから、責任者として自らの役割を認識し、正面からオフィス環境の改革に取り組むことです。
まずリーダーが意識を改め、何が重要であるかを認識し、メンバーを先導していくことが重要です。
新たなシステムを導入したばかりで、まだ定着していない期間は、管理者が意識して積極的にメンバーに働きかけてください。
ファイリングシステムの維持、継続のための方策を、業務の一環として位置づけ、そのための時間を確保することです。
ファイリングは全員が少しずつでも活動することで組織として大きな成果、効率アップを得られます。
その一方で、反発も必ずといっていいほど起こります。
管理者がリーダーシップを発揮することが必要不可欠です。
204部門間に広げたい場合はトップを巻き込み、強制力を持たせるファイリングは、係や課といった最小組織で取り組むことができますが、「全社的に統一したルールで管理する仕組みを整えよ」との指示がトップから出ることも少なくありません。
しかし、各部門のトップの間ではファイリングへの関心はさまざまで、温度差もあります。
「ファイリングなんて売り上げに直結しないから後回しでいい」「時間のあるときにやっておけばいい」「優先度は低いから、それよりもほかのことやってくれ」といった具合です。
その場合は、トップを巻き込んで参加することに強制力を持たせるのが有効です。
そして、リーダーとなった人には、現場とトップをつなぐ働きが求められるようになります。
ゴールを示し、そのために必要な手順やツールを示し、打ち合わせなどの意見交換の場を設け、進捗と成果をトップとミドルと現場に知らせることが必要です。
場合によっては、社内外のアドバイザーと連絡をとることもあるでしょう。
こうすることでうまく組織をコントロールする術を身につけていきましょう。
205実態を把握するため管理状態とメンバーの意識を調査オープンファイリングシステムを導入するにあたっては、まず実態を正確に把握することが重要です。
実際に導入してから「そんなことは想定していなかった」「こんな現状だったとは知らなかった」と、さまざまなことが次々と表面化するようでは、混乱してしまいます。
現状を事細かにすべて把握することは困難ですが、ファイリングの基本的な方針や大枠の内容について、途中で何度も大幅修正を繰り返すことだけは避けたいものです。
進むべき方向を見失って迷走することになりかねません。
問題はどこにあるのか、最終的にどのような事務改善目標を設定するのか、リーダーは現場の声に耳を傾けましょう。
【アンケートの実施】現在のオフィスの様子、ファイリングに対する意識、改善への意欲などを聞きます。
管理職と一般事務職それぞれに実施し、感じていることをありのままに記述してもらいます。
【ヒアリングの実施】部署特有の問題などアンケートでは見えてこないこともあります。
現場で実態を観察しながら話を聞くことも必要です。
【現状調査の実施】現在使っているファイル用具、什器とその整理状況、個々の机の上の状態などを調べます。
どのような書類がどれだけあり、誰の机がきれいで誰が散らかしているかまで把握します。
現場の声に耳を傾けることで問題点が浮き彫りになり、これらを整理することで答えが見えてきます。
206調査結果を評価する実態を正確に把握するための調査を行なったら、その結果を評価し、目標設定と改善計画づくりに役立てます。
アンケートの結果を単純に集計するだけでなく、個々の細かい記述にまでしっかり目を通してください。
どのような実態が見えてきたでしょうか。
個人で管理している書類の多さに驚くかもしれません。
情報の共有化へ向けて意識改革が進まないうちは抵抗があるでしょうが、個人で管理する書類の比率は全体の10%を目標とします。
そのためには、捨てられる書類は捨てることです。
保管する必要もないのに長期間にわたりとってある書類が、どれだけあるでしょう。
廃棄ルールが未整備のままでは、常に迷い、捨てられずに置いておくことになりがちです。
1日のなかで書類の管理にかける時間は、整理方法の標準化により減らせます。
それに伴い、書類探しにかかる時間も減ります。
書類探しに費やしている無駄な時間がどれだけあるか、単価と人数でコスト計算をしてみてください。
文書管理を進めれば、「探したけれど見つからなかった」という深刻な問題を防ぐことができます。
情報漏洩が起きても気づかない状況にないか、厳しい目で見直してください。
書類が増えないように工夫することも大切です。
慣例として配布している書類についても、本当に配布する必要があるのかどうか、一度見直してみましょう。
207改善目標を設定する実態を把握したら、リーダーとして改善目標を設定しましょう。
チーム内や社内だけでなく、顧客や社会に貢献できる目標を掲げることを意識するようにしましょう。
以下の3点を明確にしてください。
途中で壁にぶつかったときも、この3点に立ち返って本来の方向性を確認します。
【なぜ実施するのか】例/業務改善のため、認証取得を目指すため、効率化を図るため、情報セキュリティ対策強化の必要性からなど。
現状のワークフローやオフィス、机周りにどのような問題があり、どう改善するかを明確にします。
ISOなど認証取得が最終目的であれば、それに沿った内容、ルールにします。
【何を実施するのか】例/各人の机の上の状態、見出し表示のルール、ファイル管理表への文書登録、用具の統一、また対象とする部署、保存庫まで含めるのかなど。
誰が、いつ何をするのか具体的に定めます。
情報セキュリティが最大の目的ならば、クリアデスクにすることは必須です。
【持続性があるか】例/目標は高すぎないか、低すぎないか、便利になるか、ルールはシンプルか、チェック機能が働きやすいか。
高すぎる目標は脱落者を増やします。
当初の目的が達成される範囲内であれば、70点でもよしとしてできることから始めたほうがいいでしょう。
翌年、翌々年に到達度を上げていくほうが現実的といえます。
メンバーが便利と感じると持続しやすく、負担を感じるばかりでは反発が強まります。
導入スケジュールを定める目標が定まったら導入計画を立てましょう。
いつからどの作業を行ない、いつ運用を開始するかスケジュールを組みます。
認証取得や特定の法律への対応など厳守しなければならない期日がある場合は、それに合わせて作業を行なうしかありません。
自由に設定できる場合は、あまり急ぎすぎないこと。
各人の負担が増し、脱落する人が増えたり、表面だけで実態の伴わない状態になったりしがちです。
208オフィスをきれいに保つ「リーダーの心得」改善目標と導入計画が固まったら、どのような問題が起こりそうか、リーダーとしてあらかじめ想定しておくことです。
現場をいろいろな角度から見ると、予測がつくはずです。
それが確実にメンバーに実行してもらうことにつながります。
主なチェックポイントを挙げてみます。
・反発しそうな人がいるか?・上司は協力的か?・味方になってくれそうな人は誰か?・大きな図面や小さな伝票など、特に整理が難しそうなものはあるか?・重要文書と共有文書に分けられるか?差し替えが必要か?・忙しい時期に重ならないか?急に忙しくなったらどうするか?・作業場所をどう確保するか?・使いづらい用具をどうするか?統一できるか?・什器のレイアウトを変更すべきか?・書類が半分に減ったら空いた什器、スペースをどうするか?説明会を開く際の注意点起こりうる問題点を把握したら、説明会を開きましょう。
忙しい職場で説明会の時間をとり、新たな課題を出せば、表に出さなくとも反発は必至。
なぜ新たなファイリングシステムの導入を行なうのか、その必要性を訴えかけ、理解を得られるよう努めましょう。
そのためにも重要なのが、リーダー自身が計画と内容を十分に理解しておくこと。
頭の中でわかっているだけでは、現場にそぐわないこともあります。
できることは事前に実際にやってみて、何か矛盾や問題はないか検討するなど入念に準備してください。
限られた時間内で掘り下げて説明するのは難しいですが、具体的に誰が何をするのかは明らかにしましょう。
ここを抜きにすると、「話はわかったが、やるのは自分ではない」と思われて、なかなか作業が進みません。
209作成したファイル管理表を確認・評価するオフィス内の共有ファイルを管理するファイル管理表は、ファイリングシステムを維持し、今後も運営していくうえでカギとなる存在です。
しかしファイル管理表は、作成したあともはたして記載のルールが正しいのか、収納場所やファイル用具の使い勝手に問題はないか、などといった不安が出てきます。
顕在化していない不具合を浮き彫りにするために、作成後に一度「試行」を行ないましょう。
「試行」の実施方法は、次のように行ないます。
1.作成したファイル管理表を使用して「仮見出し」を作成して実際のファイルに表示します。
その際のチェックポイントは、登録年度に誤りがないか、年と期の選択基準を間違えていないかといった基本的な確認に始まり、ルールチェックの未実施、ルールの未適用、業務分類の記入漏れはないか、独自業務分類名の登録方法等を実際に使いながら確認して正します。
2.タイトル・サブタイトルの改行や縦横表示、収納ファイルのサイズ違い、項目の未表示などを正します。
3.ファイルの順列、キャビネットとファイルの表示不一致などを正します。
こうした試行をおよそ1か月から2か月の期間をかけて行ない、不具合を正していきましょう。
そして試行した結果をファイル管理表に反映して、オフィスの誰もが使いやすいファイル管理表へとブラッシュアップしていくのです。
また、並行してファイリングシステムのマニュアル作りも行なうことをお勧めします。
マニュアルにはファイリングシステムの運用方法のほかにも、気づいた点、皆の意見、その場その時の気付きを織り込むようにすると良いでしょう。
こうして全員が参加したファイリングシステムが完成します。
みんなで作ったものを誰か一人のせいで崩すといった事は、緩やかな強制力が働いて起こりにくくなるはずです。
210維持するための仕組み作りせっかく構築したファイリングシステムも、異動や組織変更によって、有名無実化することがあります。
たとえば、・組織の再編が多く、その際に文書が引き継がれないことで、ファイルを紛失する。
そのために、ある案件の過去の経緯がわからずに不利益を被ってしまう。
・ファイル管理担当者が別の部署に異動したため、ルール設定が曖昧になった。
といった不都合が出てきます。
これらは、環境が変化しても「維持できる仕組み」が整っていないために起こります。
解決する方法としては、①イベント化する特定の誰かに責任を負わせることなく、強制力を発揮できるのがイベント化です。
ファイルタイトル表示の新規作成や「オキカエ」、組織変更によるファイルの「移管」対応は、イベント化して組織のスケジュールに組み入れましょう。
正しく文書管理が実施されているかを監査項目に加えることで、忘れずに実施することができるようになります。
②ファイル管理表をメンテナンスするファイル管理表があれば、そこから管理ルールを理解することができます。
さらにイベント化により、ファイル管理表をメンテナンスすることを誰かひとりに任せず、全員で取り組むことで理解レベルの底上げにもつながります。
③全社統一のタイトル基準表をつくる組織横断するファイルタイトルの基準表をつくり、その基準で新たなファイルを作成する。
こうすることで、どの部署に異動しても同じルールでファイル管理ができるようになります。
とりわけ定期的に異動のある業種では有効です。
モデルとなるひな形があれば、それを参考に新しいファイルをつくることができます。
モデルとなるひな形をつくるには、モデルとなる部署のファイル管理表を基にするとよいでしょう。
全社でファイル管理表のコンテストをするのも一案です。
6組織の意識を整える成果を実感し、効果を波及させる211整理整頓で人件費を減らし、スペースの無駄をなくすファイリング技術そのものは難しくありません。
難しいのは継続、維持することです。
せっかく導入したオープンファイリングシステムを末長く運用していくには、各人がその恩恵に浴して成果を実感し、さらに意識を向上させることが重要です。
「最初は面倒だと思ったが、実際にやってみたら仕事がしやすくなった」「作業効率が上がり、残業が減った」といった声が上がるでしょう。
全員が少しずつでもファイリングの活動をすることで、組織が大きな成果を得ることも動機付けにつながります。
【人件費】・書類の減少によって探す時間や資料作成などの時間が短縮・書類の棚卸、廃棄などの作業効率がアップ・重複業務を整理、不要業務を廃止・机の上の整理による書類やモノを探す手間の排除【家賃など必要経費】・必要なスペースが減少し、フロア削減などが可能に・寄託する文書量の減少により外部倉庫のスペース減・書類の減少によって什器、ファイルのコスト削減【その他】・セキュリティ事故のリスク低減・業務の“見える化”、無駄の排除による効率アップ実践を通じてメンバーが経費節約に貢献できます。
いずれも働く人にとってもうれしいことだとわかるでしょう。
212業務効率が上がったことを実感するファイリングに取り組んだことで得られる効果や効能は、単に現場のなかだけで完結するものではありません。
組織の上層部、ひいては会社全体にまで効果が及びます。
もし、組織のトップや管理者が成果や効果を実感していなければ、ファイリングシステムがまだ全体に浸透していない可能性もあります。
そんなときは、たとえば、「発表会」を開催し、皆が楽しくファイリングシステムを共有できる場をつくるのも大切な取り組みです。
ファイリングだけでなく、すでに業務革新キャンペーンや改善提案キャンペーンなどを実施しているのであれば、その活動をしっかりとアピールしましょう。
ファイリングシステムやキャンペーンが、上層部を含んだ全員に浸透すれば、構築したルールも維持しやすくなります。
メンバー個人として実感する個人として実感する成果には次のようなものがあります。
・不要な書類が減り、書類を探す時間が減った・ファイリング作業を通じて部内業務を以前よりも広い視野で捉えることができた・文書の再作成をする手間が削減された・多くの事例から参考となる文書情報が選べ、それを基に新たな仕事をスピーディに進められた・書類の保管場所を聞かれることがなくなった・きれいになると汚せないという意識が生まれた成果を実感できれば、ほかの人のためにも拡げたいと思うようになるものです。
個人から組織への波及効果につながります。
自分以外のメンバーがどのような実感を得たのか知りたいときは、アンケートを取ることをおすすめします。
そして、共有できるように公開すれば、皆のファイリング意識もさらに深まるはずです。
213ファイリングシステムは組織の維持発展のためにファイリングシステムを組織に導入すると、次のような反響があります。
“書類探しにかける時間短縮を実現できるよう、ファイリングシステムを運用する仲間を増やして取り組みたい”“もともと会社にファイリングの文化がなく、書類整理の優先順位はとても低かった。
しかしファイリングシステムの導入を機に、部員全員への意識付けおよび最適化を続け、その重要性を根付かせたい”ファイリングシステムは、個人や最小限のチームだけでなく、会社を組織する各部が共通のファイル管理表を用いることで統一した管理が実現できます。
ファイリングの出発点が、係や課であったとしても、最終的には、全社で取り組むことができる再現性の高いものです。
結果、業務分類を見直すことで不要業務の削減や新規業務に取り組む余裕を創出できるなど、好循環を生み出すことができるようになります。
また、訴訟や監査の際に必要な証拠類を素早く提示できたり、書類が無関係な対外文書に混入するといった意図しない情報漏洩を防止したりと、さまざまな局面でのリスク回避にも大いに役立ちます。
おわりにいかがでしたでしょうか。
ご紹介したメソッドを通じ、「整理整頓」「ファイリング」の奥深さを体感いただけたことと思います。
そして、これらは決して侮ってはいけない、ということも知っていただけたでしょう。
私たち「キングジムファイリング研究室」が伝えたいのは、時間は有限であること、そしてその貴重な時間を書類や情報の煩雑さのために、いたずらに消耗してほしくないということです。
そんな思いから研究を重ね、200を超える「仕組み」を生み出してきました。
ひとつひとつを取れば些細な取り組みと思うかもしれません。
しかし、紹介したこれらの手法を余すことなく取り組み、それが会社全体へと浸透すれば、膨大な時間を取り戻すことができます。
ファイリングシステムを取り入れた企業様からは、「身の回りが整って便利になった」「文書が見つけやすくなった」という反響を多くいただきます。
ぜひ、本書を読んでいただいたあなたが、働く会社での「ファイリング活動」の第一人者として活躍してほしいと願います。
そして、人も組織もうまくまわりだしたことに「喜び」を感じていただけたなら、私たちにとってもこの上ない「喜び」です。
2018年12月キングジムファイリング研究室
参考文献「ファイリングは捨てることと見つけたり」野原順(株式会社キングジム)http://blogs.itmedia.co.jp/jun_nohara/※PART1の一部、PART2、PART4の一部、PART5、PART6の一部は、矢次信一郎(株式会社キングジム)著『ファイリング&整理術』(日本経済新聞出版社刊)を参考にした。
カバーデザイン:西垂水敦(krran)本文デザイン:イナガキデザイン本文イラスト:macrovector(fotolia)協力:矢次信一郎(株式会社キングジム)
“オフィスのプロ”だけが知っているキングジム人も組織もうまくまわりだす超整理術213キングジムファイリング研究室2019年2月1日発行©KingJimFilingKenkyushitsu2019本電子書籍は下記にもとづいて制作しました『“オフィスのプロ”だけが知っているキングジム人も組織もうまくまわりだす超整理術213』2019年2月1日初版発行発行者川金正法発行株式会社KADOKAWAKADOKAWAカスタマーサポート[WEB]https://www.kadokawa.co.jp/(「お問い合わせ」へお進みください)
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