はじめに
「5S」とは、「整理・整頓。清潔・清掃。しつけ」を表し、改善。改革活動の第一歩と言われていることは、皆さんすでにご存じかもしれません。
5Sというと、要らない物を捨てて、きれいに掃除し、片づけることだと思われがちです。
しかし、本当の5Sとは、職場で発生しているさまざまなムダを排除して、業務効率の良い職場づくりを推進することです。
また、ほとんどの方は、「5Sは、工場とか建設などの作業現場を対象とした活動」と思っていないでしようか,・確かに、建設現場には「5S推進中」などと書かれた垂れ幕がよく掲げられています。
しかし、最近は、事務所においても5Sに着目している企業が多くなってきています。
環境変化が厳しい昨今では、管理・間接部門である事務所にも、コストを切り詰め、業務の成果を最大限にあげることが求められるようになってきました。
これを実現するために効果的な改善。改革活動が、事務所の5Sなのです。事務所にはたくさんのムダが潜んでいます。皆さんの職場を見渡してみてください。
机の上には山積みの書類、引き出しの中には赤のボールペンが3・4本、消しゴムも2・3個、キャビネットの中は物で浴れかえっていませんか?まさしく業務停滞のムダ、経費のムダ、スペースのムダです。
著者の所属する中部産業連盟では、管理・間接部門の改革を実現する「事務所の5S」を取り上げ、セミナーなどによる普及活動や、各社と一体となって5Sの導入と維持定着化に励んでまいりました。
本書では、著者が15年間100社以上にわたるコンサルテイングを通じて、企業の皆様と一緒に生み出した5Sのテクニックや具体的な進め方、維持定着化のポイントなどを解説しています。
また、各企業のお許しを得て、成功事例を紹介させていただきました。皆さんが実際に5S活動をしていく中で、必ず参考にしていただけるヒントがあるかと思います。
著者のコンサルテイング先の多くは、ハイレベルな5Sが維持定着しています。明るく、いきいきとした雰囲気の中で、ムダのないしくみが確立し、お客様に感動を与える職場に変身を遂げています。
事務所の5S活動を進めていく中においては、推進メンバーの方が個性的で、自己主張が強かったり、大変保守的であったりする場合が少なくありません。
5Sの導入や推進には、業務とは違った難しさがあります。
本書では、実際の事例を評価、反省した中で体得した、「どうしたら5Sを円滑に導入。推進できるか、その留意点。ポイントは何か」「5Sを維持定着させ、企業の発展に寄与できるようにするためには何が必要か」など具体的なノウハウとともに、事務所の5S活動の進め方について説明いたします。
現在、事務所の5Sに取り組まれている方や、これから取り組もうとされている皆さんの参考にしてくださいましたら、幸いです。
また、現在の事務所の雰囲気、仕事のしくみ、さらには成果に不満を持っている方々にも読んでいただきたいと思っています。
2012年4月一般社団法人中部産業連盟小林啓子
事務所の5Sとは?
●正しい5Sの基礎知識
5Sは、整理をして清掃することだと思っている管理者が少なくありません。
「得意先や会社の幹部が明日来るから、とりあえず事務所をきれいにしろ」との指示で、あわてて床に放置されたダンボールや、机の上の雑然とした書類をダンボールに積め込み、扉のついたキャビネットの中に押し込んで、見える範囲だけを片づけて掃除します。
しかし、しばらくするとまた元の雑然とした状態に戻ってしまうことでしょう。
5Sを成功させるためには、5Sの定義と目的を理解し、正しい推進手順で進めることが大事です。
5Sとは、次の5つのことを示します。
整理(∽m一刀一)‥…要る物と要らない物とを区分けし、要らない物を処分すること
整頓⌒∽m「Oz)……必要な物がいつでも誰でも使用できるように、所定の場所にきちんと置くこと
清掃⌒∽m一い○⊂)……身の回りの物や職場をきれいに掃除すること
清潔⌒∽m天m「∽⊂)……誰が見ても誰が使っても不快感を与えないようにきれいに保つこと
しつけ(∽工「∽⊂〈m)……職場のルールや規律を守ること
●5Sの目的は効率の良い職場環境づくり
事務所の開設や引越し時には、比較的物は少なく、どこに何を配置したら効率良く仕事ができるかレイアウトを考えて什器や物が配置されますが、次第に必要な物の種類と量が増えていきます。
また、時の経過とともに使用しなくなった備品や読まなくなった雑誌、書籍も増えていきます。
使わなくなった物はそのまま放置されてしまうため、新しく購入した物は保管する場所がなくなって、あちらこちらに置かざるをえなくなり、必要な物がすぐに探すことができなくなってしまいます。
事務所の5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、しつけによって、このような事務所のムダをなくし、効率良く仕事ができる環境に変える活動です。

なぜ、5Sが必要なのか?
●周りを見渡せば、ムダだらけ?
現在、どの会社も厳しい環境の下で、全ての部門が徹底的なコストダウンや業務の効率化を求められていると思います。
それにもかかわらず、事務所を見渡せば、いろいろなムダの温床になっていないでしょうか?机の上には山積みの書類、引き出しの中は事務用品や書類が詰め込まれていませんか
っ・キャビネットの中は書類やパンフレツト、雑誌、備品、サンプル、何が入っているのか判断がつかない
段ボールなど物で流れかえっていないでしようか?背表紙が未記入で、どのような書類が収納されているのか判断できないファイルも散見されます。
机の下やキャビネットの上が段ボールや紙袋で占領されているようであれば、地震が起きたら人命の危機にもつながります。
●ムダをなくせば仕事が楽しくなる!
今、ようやく多くの会社が、書類を探すムダ、物を探すムダ、余剰在庫のムダ、コストのムダ、コピーのムダ、スペースのムダ、手直し修正のムダ、コミュニケーション不足によるムダなどといった、大量の「事務所のムダ」が経費増大の原因となり、さらにミスの発生やお客様への応対遅れなど業績にも大きな影響を与えてしまっていると気がつき始めました。
読者の皆さんも、これらのムダにはなんとなく気づいていたはずですね。
しかし、自分一人で改善できることではありませんし、それを提案する勇気と時間がなかったのかもしれません。
ムダは、お金にならない仕事です。
ムダな仕事のために時間を費やし、日々残業をする結果になっていませんか,・5Sでこれらのムダを取り除き、経費削減に貢献し、仕事がしやすい事務所づくりをしていきましょう。
また、5S活動は、「物の見える化」を実現します。「物の見える化」とは、事務所で効率良く仕事をするために、何が、いくつ、どこに保管されていたらよいかが、一日でわかるようになることです。
毎日出社するのが楽しみになるような職場環境に改善する手段として誰でも取り組めるのが、5Sの活動なのです。

ムダが一番多いのは個人机
●山積みの書類は要注意
事務所で特に業務のムダが発生しているのが、山積み書類の机です。山積みの机の引き出しの中は、さまざまな書類で浴れかえっていることでしょう。
机の下にもたくさんのファイルが置きっぱなしになっているはずです。
これらの書類は、まだ目を通していない書類、今処理している書類、中断してしまっている書類、回覧すべき書類、提出する書類、ファイルする書類、廃棄する書類など、さまざまな業務の状態のものが入り混じっています。
出張が多くて見る時間がない、ファイルする時間がないなど、山積みの状態になってしまう言い訳もあるかと思いますが、こうしたムダには問題がいくつも潜んでいることに気づいてください。
闘閥燻闘一お客様への対応遅れ問い合わせの電話があった際に該当書類を探せず、お客様をしばらく待たせた上、後でかけ直すことになってしまう……といった経験はありませんか,・ましてや、担当者が出張中だったりすると、周囲の人が対応できずお手上げです。
聞閣固脳一提出納期遅れ提出期限が先の場合、どうしても処理を後回しにしてしまいがちです。
結果、提出先からの督促であわてて処理をするため、チェックの余裕もなく、不備が発生して再作成を要求されたりしたことはありませんか?懸幅齋饉一重要書類の紛失山積みの書類の上にうっかり重要書類を置いてしまうことがあります。
重要書類が他の書類の中に紛れてしまい、必死に探した経験はありませんか?見つかれば幸いですが、再作成したり、再入手したりした苦い経験はないでしようか?
●書類の半分以上は捨てられる
一般的には、山積みの書類の半分以上は、廃棄してもよい書類とファイルすべき書類です。廃棄してもよい書類とは、清書済みの原稿、期限が過ぎた案内など、用済みの書類のことです。5Sに着手すれば、すぐに山は崩れるはずです。
個人机の整理の方法は、3章で詳しく紹介しています。

5Sの真の目的とねらい
●5Sの目的はきれいにするだけではない
事務所で5Sを実施する目的は、会社によってさまざまです。
たとえば、「社員増員のための個人机を入れるスペースを確保するために不要物を整理しよう」「大切なお客様が来社されるので、きれいにしよう」「事務所移転に伴い書類の整理をしよう」など、あるきっかけで5Sを行うことが多いのです。
しかし、それが一時的なものでは意味がありません。5Sは、事務所のムダをなくして効率良く、快適に仕事ができる環境を維持していく活動です。
その目的は、次のようなものがあります。
- ①業務の質の向上と効率化を図ること
- ②仕事を早く進めるようにすること
- ③ムダをなくすこと
- ④経費を削減すること
- ⑤事務所のスペースを有効に活用すること
- ⑥快適な職場をつくること
●5Sによって根づくリ
ーダーシップとチームワークまた、5Sにはさらなるねらいがあります。それは人財づくりです。5Sは、社口民が分担し、協力し合って行う全員参加の活動です。
その結果、必然的に取りまとめ役となる推進リーダー(詳しくは9章)ができます。推進リーダーは、活動を円滑に進めるために部員に働きかけ、励ましたり、褒めたりして仲間を増やし、協力を仰ぎます。もちろん、推進リーダー自身も率先垂範します。
自分自身の行動力も上がりますし、また、活動を通して仲間や上司、部下に対するリーダーシップを自然と身につけることができます。すると、次第にチームワークも良くなり、さまざまなアイデアや工夫が出始めます。
また、今まで話しにくかった人とも話しやすくなって、それまで気づかなかった能力を発見することもできるでしょう。
5S活動を通してリーダーシップやチームワークが養成され、会社の財産となる人が育っていくのです。

誰でもできる5Sの推進手順
5Sを思いつきやなりゆきで実施しても中途半端になってしまい、長続きしません。せっかく時間と労力とコストをかけて実施するのであれば、成果に結びつく活動にしたいものです。
5Sを維持定着させるには、次の手順にそって進めていくことが大切です。目耐圃輌事前準備5Sは、一人でもできます。
しかし、それでは個人机や自分が担当するエリアに限定されてしまい、真の5Sの目的が達成できません。
全員で5Sを進める体制づくりと推進エリアを決定します。9章をご確認ください。
目耐園〓教育全員が5Sの目的を理解し、スムーズに実行できるようにするために、5Sの知識とテクニツクを習得する勉強会を開きましよう。
目個圃口整理いよいよ5Sスタートです。まずは整理からです。
整理には「物の整理」と「書類の整理」があります。整理する場所は、主に個人机と共有キャビネットです。
はじめは個人机から整理します。整理のやり方は3章で解説します。目備囲暉物の整頓事務所がすっきりしたら整理が完了です。
次は物の整頓です。必要な物を最適な場所で管理できるようにします。
物の整頓の具体的な進め方は4章で説明します。
目籠園一清掃清掃は毎日実施されているかと思いますが、従来の清掃と5Sの清掃とは異なります。清掃の具体的な進め方は6章で説明します。
鋼砲囲欄書類の整頓(ファイリングシステムの構築)書類の整頓とは、ファイリングシステムの構築です。
ファイリングシステムの構築方法は7章で説明します。
目鷹脳“維持定着化清潔は、整理、整頓、清掃の「3S」を徹底的に実行することです。しつけは、維持定着をしていく力です。まずは手順1〜6の3Sから始めましょう。

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