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Part3マネジメントの戦略

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Part3マネジメントの戦略

36ドイツ銀行物語

トップマネジメントの仕事と組織トップマネジメントとは権力か。ボスの別名か。特有の仕事というものはあるのか。

あるのであれば、それは何か。いかなる構造を持つか。トップマネジメントを確立したのはゲオルク・シーメンスである。

シーメンスは、一八七〇年から八〇年にかけて、ドイツ銀行をヨーロッパ最強の金融機関につくりあげた。彼はドイツ銀行の活動を分析し、それぞれの活動についてトップマネジメントのメンバーに責任を持たせた。

渉外関係、すなわち取引先や政府機関との関係についても分析し、それぞれについて責任を持たせた。もちろん、トップマネジメントにはキャプテンがいた。シーメンスがその役をつとめた。

しかし、特定の活動(たとえば債券発行の引き受け)や関係(たとえば投資先との関係)については、それを担当する者が直接かつ最高の責任を持って意思決定を行った。ドイツ銀行は全土にわたって、トップマネジメントのネットワークをつくりあげた。

各地の支店長は、法的にはトップマネジメントのメンバーではなかったが、実質的にはその一員だった。それぞれの地域において、取引先との関係について全責任を負った。ドイツでは大企業の多くがベルリン以外の土地にあった。

そのため彼らが、ドイツ銀行にとって中心的な投資や関係について直接の責任を負った。このような構造のもとで、銀行が半独立的な小国に解体することをいかにして防いだか。その答えが役員室の創設だった。

ドイツ銀行は少数の専門スタッフからなる役員室を持ち、トップマネジメントのメンバー全員に他のメンバーの行った意思決定と活動を周知徹底させるとともに、銀行全体の将来ビジョンの素案を作成させ、主な投資すべてについてフォローさせた。

教訓ドイツ銀行の例は、トップマネジメントのあり方について多くを教える。それは、トップマネジメントに特有の仕事が厳然として存在することを明らかにする。組織には、トップマネジメントの課題というべきものが数多くある。

だが、それらがトップマネジメントの課題であるのは、トップマネジメントがトップにあるからではない。法的な権力や権限を持つからでもない。事業全体を見ることができ、事業全体を考えて意思決定できる者のみが果たしうる課題だからである。

トップマネジメントには独自の構造が必要なことを教える。トップマネジメントは他のいかなる組織とも異質であり、独特の組織構造を必要とする。トップマネジメントには、独自のインプット機関、すなわち刺激と情報、思考を供給すべき独自の機関が必要なことを教える。

トップマネジメントへの情報世界中のあらゆる組織に情報の氾濫が見られる。報告や説明や会議が絶え間ない。そのほとんどは、現業のマネジャーのための情報である。組織内サービス部門さえ現業のためのものである。

それでは、いったい誰が組織の頭脳に栄養を与えるのか。誰がトップマネジメントにサービスを提供するのか。トップマネジメントが今日手にしているものは、現業のマネジメントが手にするものとほとんど同じである。

しかしトップマネジメントには、独自の課題がありニーズがある。トップマネジメントのニーズは、現業のマネジャーのそれとは異なる。

トップマネジメントが、主として、現在ではなく将来に、部分ではなく全体に関わりを持つ存在であるという一事からしても、そのニーズは現業のそれとは異なる。「われわれの事業は何か、何であるべきか」との問いに答えるには、現在の目標、組織、課題、情報とは異なる視角から事業を眺めなければならない。

シーメンスの発案による役員室は、あらゆる企業、あらゆる組織にそのまま当てはまるものではない。だがごく単純な小企業は別として、あらゆるトップマネジメントが、思考、刺激、疑問、知識、情報を提供すべき機関を必要とする。

いかなる組織といえども、その業績はトップマネジメントにかかっている。結局のところ、ボトルネックはボトルのトップにある。

組織内のあらゆる仕事のなかで、もっとも組織化することが難しいのが、トップマネジメントの仕事である。しかしそれは、もっとも組織することの必要な仕事である。

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