1 上手なシフト管理のコツ
上手なシフト管理は相思相愛の要
パート・アルバイトのマネジメントは、勤務時間への配慮が重要なポイントです。特にパート・アルバイトがシフトを組んで仕事をしている場合、その管理こそ、相思相愛マネジメントの要とすらいえるでしょう。
というのは、パート・アルバイトの多くは、主婦や母、学生など、仕事以外にメインの顔をもつ人たちだからです。そんな彼らの最大の望みは、「自分の都合で働ける」こと。というよりパート・アルバイトの多くは「物理的に働けない時間が多くある」人たちです。
例えば、保育園のお迎え時間や、学童保育から子どもが帰ってくる時間に合わせて帰宅しなくてはならない人がいます。あるいは「小学生の子どもがミニ・バスケットのチームに入っていて、土日は試合の付き添いのためどうしても働けない」などという人もいます。
学生なら試験期間や、ゼミ活動、あるいは就職活動がピークを迎える時期などは、やはりそちらが優先されます。そうした個々の都合に配慮しつつ勤務時間を配分するシフト管理は、言ってみれば、家庭における家事分担のようなもの。どちらか一方に過度に負担がかかるようだと、不満噴出のもととなり、二人の仲は険悪になってしまいます。
これと同様、シフト管理も、誰かにしわ寄せが生じたり、あるいは一定の人ばかりが「おいしい思い」をするようだと、組織に悪影響を及ぼします。
シフト管理のポイントは、仕事の量や緊急度に応じた人の割り振りを、どれだけ効率よく行えるかです。特に営業時間の長い店舗、繁閑の差が激しい製造現場や飲食店では、シフト管理によって労務コストや作業効率、売上なども、大きく違ってきてしまいます。
実際、パート・アルバイトに「現在の勤務先でどのようなところが働きやすいか」をたずねると、回答者の七〇・九%が「勤務時間や勤務日を自分の都合に合わせられる」としています(複数回答)。
続く「職場の人間関係が良好である」の四〇・八%を、三〇ポイントも上回り、断トツです(平成二〇年版パートタイマー白書)。
予定が重ならない人を採用する
シフト管理が難しいのは、パート・アルバイトの休みの希望などが「ある日時」に集中してしまいがちだからです。といって、全員の希望を聞くことは、多くの場合不可能です。こうしたとき、会社としてパート・アルバイトにシフトの無理をお願いすることは、いたし方ありません。
しかし、一方で、無理強いが続いてパート・アルバイトの気持ちが離れてしまい、「ここでは働き続けられない」と思われてしまえば、行き着く先は退職です。
大切なのは「そうならないような対応策を講じる」こと。具体的には、「予定が重ならない人を採用する」ことになります。すでに採用のときから、シフト管理をも念頭に置いて情報収集し、選考するのです。
まず、採用面接の際、シフトの希望を細かく聞き、できるだけ希望が重ならない人を採用します。そのとき「いろいろな地域から採用する」「いろいろな年代の人を採用する」といった視点が奏効することがあります。
同じ地域に住み、子ども同士が同じ学校、あるいは同級生だと、運動会や父母会、遠足などの学校行事が重なるため、休みの希望が集中してしまいがちだからです。
また、年代が一緒だと、子どもの受験など大きな節目が、重なってしまったりします。たとえば乳幼児を抱えるお母さんはどうしても休みが多くなりがちですが、子どもがもう大きな人を採用することで、その穴をカバーしてもらいやすくなります。
一方、学生アルバイトの場合は、「いろいろな学年の学生」「いろいろな高校・大学、サークルの人」を採用します。理由は、主婦パートと同じ。一斉に「受験生」になったり、就職活動に入ったり、卒業してしまうといった事態を避けるためです。
さらに、学校やサークルまで同じだと、試験期間や学園祭、合宿などといったイベントが重なってしまうことにもなります。
パート・アルバイトを多能化する
シフト管理に柔軟性をもたせるためのもう一つの方法が、パート・アルバイトを「多能化する」ことです。多能化するとは、要するに「パート・アルバイト一人ひとりに、ある特定の仕事だけでなく、職場のさまざまな仕事に習熟してもらう」ということです。
例えば三人のパート・アルバイトを雇用し、経理・総務・人事の仕事を手伝ってもらっている場合、三人がそれぞれ経理も総務も人事も手伝えるように教育するのです。
多能化すると、突然の休みはもちろん、誰かが退職することになっても対応や引き継ぎが容易です。また、休みの希望が重なった場合など、パート同士の話し合いで、誰が休むか決めてもらうことが可能になります。
半面、多能化とは、働く側にとっては「仕事の負担が増す」こと、ともとらえられます。それを、快く受け入れてもらうコツは、できれば採用面接のときから、「いずれはこれとこれとこれの仕事をしてもらいます」などと宣告しておくことです。
面接時点では「まずは合格したい」気持ちが強いため、比較的すんなりと受け入れてもらえます。すでに働いているパート・アルバイトを多能化する場合は「できるだけ皆さんにお休みを取っていただきやすいように」など、多能化の目的が自分たちのためでもあることを、きちんと伝えることが重要です。
この「先に伝え」「納得を得る」行為をはしょってしまうと、新しい仕事に挑戦してもらうたびに「また新しいことを覚えるのか?」「賃金も上がらないのに仕事ばかり増える」などととらえられ、大きな不満に発展しかねません。
なお、取材した複数の会社で「多能化しローテーションできると、仕事内容が日によって変わるため、本人のマンネリ防止になるのもメリットだ」とも聞きました。
パート・アルバイトにも年次有給休暇はある
勤務シフトは、パート・アルバイトの休みも念頭に考えます。その休みの一つに、年次有給休暇があります。パート・アルバイトにも、年次有給休暇は発生します。
年次有給休暇とは、雇用された日から六カ月間(六カ月経過後は一年間)継続勤務し、決められた労働日数の八割以上勤務している労働者に発生する法律上の権利です。
この基準を満たしていれば、当然パートにも与えなければなりません。年次有給休暇の付与日数は、所定労働時間及び日数に応じて変わります。
所定労働時間や日数が少なければ、有給休暇の付与日数も少なくなります。パート・アルバイトと呼称されていても、正社員同様の日数や時間働いていれば、付与日数は正社員と同じになります。
具体的には、以下の三つのうち、いずれかに該当する場合、正社員と同じです。
- 一日の所定労働時間にかかわらず、週の所定労働日数が五日以上
- 一日の所定労働時間にかかわらず、一年間の所定労働日数が年間二一七日以上
- 所定労働日数にかかわらず、週の所定労働時間が三〇時間以上
年次有給休暇にまつわる決まりあれこれ
年次有給休暇は、パート・アルバイトが請求する時期に、請求する日数を、与えなければなりません。ただし、請求できるのは労働日。例えば、月・水・金曜の週三日勤務のパートの場合、年次有給休暇を取得できるのは、月・水・金曜だけです。
しかしながら、パート・アルバイトに休まれるとどうしても困るという場合、使用者には時期を変更する権利があります。例えば年末や年度末など、事業の正常な運営を妨げる場合です。
時給で働くパート・アルバイトが年次有給休暇を取得した日の賃金は、月給で働く正社員と違い、きちんと計算して、支払う必要があります。
具体的には、次の三つの計算方法があります。
いずれの方法を採用する場合も、就業規則等にあらかじめ定めておくことが必要です。
通常一日働いた分の賃金(例えば一日三時間勤務なら、三時間分の賃金) 平均賃金(月給、日給等により計算方法は異なる) 標準報酬日額(健康保険の標準報酬日額)※ただし労使協定が必要 なお、労働基準法の改正により、二〇一〇年四月以降、年次有給休暇のうち五日分は、時間単位での取得ができることになります。
これは、子どもの通院の付き添い等に対応するための改正です(労使協定が必要)。
2 パート・アルバイトの気持ちとシフト管理
コツは希望を聞く姿勢
シフト管理を成功させるための知恵は、もう一つあります。それは、常にパート・アルバイトと、「シフトの希望を聞く姿勢で」、接することです。
実際には、一〇〇%希望をかなえる必要はありません。というより、すでに述べたように全員の希望をかなえることは、土台無理な話です。そして、これが無理であることは、本人たちもよくわかっています。大事なのは、「気持ちの問題」です。
具体的には、毎月シフト希望表を提出してもらうなどし、「一人ひとりのパートに」「本人の希望を」「常にきちんと確認する」ことです。
その上で“この日は出てもらえないか”などと相談します。ただし「保育園の遠足で」「郷里から母が上京するので」など特別な場合については、できるだけ対応してあげるよう心がけます。
こうすることで、パート・アルバイトとの信頼関係を紡ぎます。「店長が困っているから助けてあげよう」「大変なときはお互いさまだ」「お客さまに迷惑はかけられない」などと、ごく自然に思ってもらえるような関係作りをするのです。実際、シフト管理上手なマネジャーは、たいがいこの姿勢で接しています。
公正・平等を意識する
なお、シフトの希望を勤務シフト表にまとめる際、公正・平等を心がけることも、とても大切です。というのは、希望の取り入れ方にばらつきが見えると、パート・アルバイトが会社や店長、上司に対して、不信感を抱いてしまうからです。
「えこひいきしている」とか、「私の希望はいつも全然通らない」といった具合です。公正・平等なシフト管理を実行するには、個々のパート・アルバイトに勤務希望を出してもらう際、できれば一定の制限を設け、これをルール化します。
例えば、一カ月ごとに次の一カ月の希望を提出してもらう、といったやり方で本人の希望を聞く場合、「土・日曜・祝日の休みは ◯回まで」などの決まりを作り、それに則った希望を出してもらいます。
こうすることで「声の大きな人」の希望が通りやすい、といった事態を防げます。なお、シフトに関連することとして、「突然の残業依頼」と「突然の勤務時間カット」を嫌がる声を、大変多く聞くことを追記しておきます。
具体的には「今日は忙しいからもうちょっと長くいてよ」とか、「今日は思ったより暇だから、もう帰っていいよ」といった依頼です。
「突然、今日は残れと言われても、幼稚園バスのお迎えの時間があるから無理なのに」「せっかく時間を空けたのに、突然帰れと言われて時給も支払われないなんて、約束破りだ」などの不満は、出て当然といえるでしょう。
【事例】「約束破り」が招いた悲劇 ~介護福祉施設に勤める主婦パートの例 ~
シフトに関する約束破りが、会社にとって悲劇的な結果を招いてしまった、こんな例もあります。介護福祉施設に勤務する主婦パートが、仕事が原因で腰痛を患ったときのこと。
家庭の都合もあり、「来月は、どうか週二日勤務にしてください」と施設長に直接頼んだ上で、それに応じた勤務希望を出していました。
ところが、実際に次月の勤務シフト表が配られ、それを見ると、自分の名前が通常どおり、週四日の頻度で記載されていたのです。その主婦パートは、驚きのあまり、目を見開いたといいます。
「あれだけ頼んだのに、何の説明も相談もなく通常のシフトにするなんて!」と怒り、しかしそれは、すぐにあきらめの気持ちに変わりました。
そして、次の勤務日に、退職届けを出したのです。施設長はびっくりし、当然引き留めにかかりました。その主婦パートの勤務が終わったあと、実に二時間も事務室で、とくとくと説得したといいます。
しかし、その主婦パートも、表面上は穏やかさを装いながら、決して引きませんでした。具体的かつ身体的な理由を提示して、わざわざ「来月は週二日に」と願い出たパートにすら、週四日勤務をさせようとしたほど人手が足りなかった職場です。貴重な人材に辞められてしまった施設長の落胆ぶりが、目に浮かぶようです。
休憩時間に関する決まり
休憩時間とは「労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間」です。パート・アルバイトにも正社員と同様に与えなくてはなりません。休憩時間は、働く時間に応じて以下のように定められています。
一日の労働時間が六時間を超える場合……少なくとも四五分間 一日の労働時間が八時間を超える場合……少なくとも一時間 このとき、一日の労働時間が六時間を超えなくても、昼食を挟む場合には、休憩時間を与えた方が望ましいとされています。
なお、休憩時間に関する注意点は、三つです。
必ず労働時間の途中に与えること(労働時間の前後に与えても、与えたことにはなりません) 休憩時間は一斉に与えること(運輸、物品の販売、理容、金融・保険、旅館・料理店など特定の業種を除き、原則として一斉に与えなくてはなりません) 休憩時間の使い方は労働者の自由(ただし休憩時間とはいえ拘束時間中であり、社内で休憩をとる場合には就業規則に定められた服務規律を守る必要があります)
パート・アルバイトにも休日が必要?
休日について労働基準法では、「少なくとも一週間に一日の休日を与えるか、四週間を通じて四日以上の休日を与える」ことを義務づけています(法定休日)。当然、パート・アルバイトにも適用されます。
しかしながら、一週間の労働日数が少ないパート・アルバイトの場合、例えば週四日や週五日勤務で働いているならば、改めて休日を与える必要はありません。
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