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ステップ 5導入 ~新人教育 ~成田離婚しないために ~

目次

1 成田離婚の原因と弊害

新人導入期が大切な理由

面接という名の「お見合い」で初めて出会った企業とパート・アルバイトが、雇用契約という名の婚姻届を出し連れ添うことを約束しても、まだまだ安心はできません。新婚旅行後、かつてよくいわれた「成田離婚」となる可能性があるからです。

成田離婚の原因は、お互いを深く知らないうちに、慣れない環境で行動を共にした結果、両者の心がすれ違ってしまうこと。新人パート・アルバイトの場合もこの“導入期”が大切で、より丁寧なマネジメントを心がけることが必要です。

導入期が大事なのは、このころのパートの心が、不安定なことが多いからです。新たに覚えることは大量に発生しますし、上司や周囲の仲間たちとの人間関係も作っていかなければなりません。

仕事を必死でこなしながらも、「これから先、自分に勤まるだろうか」「職場に溶け込んでいけるだろうか」などと考えているのが、この導入期というわけです。

新人が入社したときは、雇う側も「今度の新人はきちんと仕事をしてくれるだろうか」と思っているものですが、雇われる側も「今度の職場はどうだろうか」と揺れています。

つまり、まだ「ここで頑張るぞ」と決心するに至っていません。このタイミングで、「実際に始めてみたけど、とても無理だ」とか「ベテラングループに気に入られていないみたいだ」とか、「考えていた仕事と違うようだ」と思ってしまうと、行き着く先は退職です。

また、「三つ子の魂百まで」ではありませんが、この時期に行う新人導入教育は、今後の成長と戦力化を約束する、とても重要な役割を果たします。

ちなみに導入期の目安は、初出勤日からおおむね一週間 ~一カ月ぐらいです。

【事例】主婦パートが大手ファストフード店を五日で辞めたわけ

成田離婚は、行動を共にすることにより相手のことが見えたが、その表面的な部分で判断して、結論を急いでしまったことによっても起こります。パート・アルバイトの早期離職の原因も、これと同様のことがよくあります。

例えば大手ファストフード店を入社五日で辞めた主婦パートは、その理由について、店長のふるまいに驚いたからだ、と言い切ります。

「入社三日目の、お昼の一番忙しいときでした。私がサブで付いていた先輩パートが、ミスをしてしまったのです。それに気づいた店長が、突然、まるで怒鳴るかのように叱って。もちろん、ミスは注意されて当然です。でも、お客さまもいる前であれはどうかと思ったんです。正直、驚きました。ちょっと、信じられませんでした」

確かに、店長のこのふるまいは、お客さま商売の現場トップのものとは思えません。「五日で辞める決心をした」彼女の判断は然り、ともいえるでしょう。

しかし、たまたま、店長の虫の居どころが悪かったのかもしれません。年に一度しかない瞬間に、たまたま居合わせてしまった可能性もゼロではありません。ところが、店長にとっては三六五日分の一の確率も、勤務三日目のこの主婦パートにとっては、三日分の一となるのです。

この店長にも、「良いところ」はあったかもしれませんが、入社三日目の彼女は、三日間で得た情報をもとに、早々に判断し、退職を決意してしまったのです。

成田離婚が周囲に及ぼす影響

成田離婚つまりパート・アルバイトの早期退職は、組織に少なからず負の影響を与えます。これが続くと、「この間入った人、もういないの?」「え、また一週間で辞めちゃったんだ……」などとうわさになり、組織に動揺が走ります。

「何か問題があるのではないか?」と思うからです。これでは、他のパート・アルバイトとの間にあった相思相愛関係も、ゆるがされかねません。

しかし、パート・アルバイトにあっという間に辞められてしまって最もダメージを受けるのは、採用担当者や、そのパート・アルバイトの上司である正社員です。

採用しづらい職種や業種であればなおのこと、「一から採用のやり直しだ」「その間の仕事はどうすればいいのか」など、その徒労感たるや、はかり知れません。

2 新人パートの不安な気持ちを取り除く

「新人担当者」を決めよう

導入期を上手に乗り越えるために有効なのが、「新人担当者」を決めること。要するに、新人パートに付いて新人をサポートする、専任者です。新人担当者の具体的な役割は、次の三つです。

  1. 基礎的なOJTを行う
  2. 質問を受けたり、相談にのる
  3. 昼食などに誘ったり、仲間とのパイプ役となる

OJTとは、実際に仕事をしながら行う教育のこと(詳細は手軽で効率的な OJT )。新人パートは、忙しい職場に突然入り、圧倒されたり萎縮してしまう場合が少なくありません。

そんなとき新人担当者が決まっていて、何かと教えてくれたり「どんなに忙しそうでも、何でも気軽に聞いてね」などと言われていると、安心して相談できます。

こうした人がいるかいないかで、職場へのなじみやすさやスピードが、格段に違ってくるのです。新人担当者を決めたら、もちろん本人に打診します。その際、前述した三つの役割をきちんと説明し、了承を得ます。

OJTは、「いつ、どのように、何を教えてあげてほしいか」を伝えます。その他、新人パート・アルバイトに、積極的に「おはよう」などあいさつをしてあげてほしいこと。仲間との会話の輪に、さりげなく入れてあげてほしいこと。また、折に触れ「何かわからないことはある?」などと声をかけてあげてほしいこと、等を伝えます。

新人担当者に向く人、向かない人

新人担当者は、新人パートに与える影響が大きいだけに、人選には注意が必要です。具体的には、新人パートが担当する仕事の経験者か、その仕事をよく知っており、正しい仕事のやり方を身に付けている人。

また、仕事に前向きであり、コミュニケーション上手な人が適しています。こうした要件を満たしていれば、正社員でも先輩パートでもかまいません。

ただし、外出等が多く、一緒の時間をあまり共有できない人は不適当です。物理的にその役割を果たせないからです。その意味から、あまりに忙しい人も困ります。

聞きたいことがあっても、どうしても遠慮してしまい、声をかけづらいからです。適当な人がいなかったり、人数が少ない職場では、店長や経営者が新人担当者の役割を担います。ただ、前述のような理由から、適任とは言いかねる場合も多いでしょう。

「そうはいっても、うちのパート・アルバイトは皆、勤続期間が短いからなあ」 こう思った場合、多少の不安には目をつぶり、そうしたパート・アルバイトに新人担当者役を任せてみると、意外に良い結果が得られたりします。

新人の面倒を見ることで、先輩パート・アルバイトが劇的に成長することが多いからです。依頼する際は、「困ったら相談してくれればいいから」などとフォローした上で、「ぜひ、君にやってほしいんだ」という気持ちを伝えます。

3 決まりや基本は最初に共有

入社直後だから厳しく教える

新人パート・アルバイトに教育をする際、会社の決まりや、仕事の進め方、作業のやり方の基本などは特に、最初に厳しく教えます。

マニュアルや就業規則にあるようなことはもちろん、マニュアル化はされていないけれど皆が共通して行っており、それでスムーズに仕事が進んでいるような「不文律」「暗黙の了解事項」も、気づいたときに細かく伝えていくようにします。

入社したてのころは、教えることが多く、「細かいことは後でいいか」などと思いがちです。

また、「最初からあんまりうるさく言ってもなあ」など躊躇する気持ちが働きます。しかし、ささいなことこそ、最初にきちんと伝えることが大事です。

最初だからこそ、新人パート・アルバイトも、必死で覚えようと頑張ります。もちろん、伝えたこと、教えたことを、すぐにパーフェクトに行ってもらえるわけではありません。

でも、後になってそれらができておらず注意した際、「あ、そういえばそうだった!」と思われるのと、「聞いてない!」と受け止められるのは、大きな違いです。

例えば、事務仕事なら伝票の書き方や文具の取扱い、飲食店のフロア業務なら厨房に注文を通すときの言い方や、食器を下げるタイミングなど。

「ちょっとくらいいいか」「そのうち理解してくれるだろう」などと、放置してしまうと、後々後悔します。

こうしたことは、日が経つうちに、伝えづらくなるものです。

また、導入教育をおざなりにしたがために、新人パート・アルバイトが仲間から「あの人は仕事ができない」といった烙印を押されたり、「いつまでたっても新人以下」などと言われては本人が気の毒ですし、仕事を続ける意欲も失われます。

新人時代に徹底すべき三つの基本教育

仕事は、ある程度厳しく「手ごたえ」を感じてこそ、面白くなるものです。

また、実際、やる気のあるパート・アルバイトほど、教育次第で大きな戦力に育ちます。

そんな導入期の基本教育は、具体的には、「  意識付け教育」「  技能教育」「  マナー教育」という、三つのポイントを押さえて行います。

技能やマナーなど、個別具体的なノウハウ教育が「枝葉」の部分であるならば、それを行う理由や目的という「幹」であり「根」となるのが、 の「意識付け教育」です。

しっかり意識付けしておくことで、技能やマナー教育が効率的に行えます。

「お客さまのために、こういう理由で、このように作業します」「この手順で行うのは、不良品の発生率が低く、しかも手早く行えるからです」など、理由と目的を明確にした指導を、受け入れてもらいやすくなるからです。

働くこととは? CSとは? ~意識付け教育 ~

前項で述べた「三つの基本教育」の第一は、意識付け教育です。その際の柱となるのが、「働くこととは?」と、「 CS(顧客満足)とは?」の二つです。

というのは、パート・アルバイトの中には、「働くこと」に対する認識が甘い人がいるからです。学生など過去に勤務経験がなかったり、仕事のブランクが長い場合、これは、いたし方ないことです。

とはいえ、緩い気持ちで働いてもらっては、会社として困ります。「働くこととは?」に関しては、以下の三点を最初にしっかり伝えます。

パートも正社員同様、会社が売上を上げ利益を確保するための貴重な戦力として雇われていること

組織の一員として、期待される役割をきっちり果たしてほしいこと

そのために、本人がもつ能力を、最大限発揮してほしいこと

一方、 CSについて、最初にきちんと教えるのにも理由があります。第一に、商品やサービスが市場にあふれ、その品質に大きな差がなくなっている今、 CSは全社全員が意識すべき経営の基本だからです。お客さまにご満足いただき、お客さまに選ばれて初めて、自社の商品を購入していただくことができます。この積み重ねが業績です。

第二の理由は、パート・アルバイトは小売店や飲食店、その他さまざまなサービス業などの、「顧客接点」で働くことが多いからです。

CSについてしっかり理解し常に意識していれば、その一挙一動が「お客さまのためのもの」に変わってきます。逆に、 CSの概念をもたなかったら、すべてが顧客不在の行動となり、お客さまはあっという間に離れていってしまいます。

お客さまは、パート・アルバイトと正社員を区別してはくれません。この観点から、 CSこそすべての教育の土台といえます。なお、意識付け教育は、先輩パートや若手正社員などが日々行うだけでは不足です。

一度は店長や経営者などしかるべきポジションの人が講師となり、しっかり実施すべきでしょう。理由は、それだけ重要なことだからです。また、店長や経営者が「改めて」伝えることで、パート・アルバイトの受け止め方も違ってきます。

わが社流「正しいやり方」を身に付ける ~技能教育 ~

技能教育というと大げさに聞こえますが、例えばお惣菜屋さんならフライヤーの使い方やのり巻の作り方、一般企業の事務部門だったら、パソコンの使い方、書類作成の仕方などの教育です。

要するに「わが社における、基本的な作業の仕方」。つまり、最も効率的でミスや事故がなく、周囲との連携が図れるやり方です。技能を教える際のポイントは、以下の三つです。

  1. 仕事に必要なすべてのことを教える
  2. 簡単なこと、必要なことから順を追って教える
  3. 説明トークを工夫してわかりやすく教える

これらは「当たり前」のようですが、意外にできていません。

なお、複数の人が同じ仕事に就いている場合は特に、簡単でよいからマニュアルを作ってそれに従って教えると、効率がよく、教え漏れもありません。誰に対しても同じように教育できるため「不公平感」もなくなります。

「私は教えてもらっていない」「教えてもらってないことをやれと言われても困る」は、パート本人からよく聞く不満です。

心を教え、動作を教える ~マナー教育 ~

社員や店員のビジネスマナーに対するお客さまの要求レベルは、ますます高くなっています。ちょっとした対応のまずさや、笑顔や返事がないことが、すぐにお客さまの不満につながります。

マナー教育が、かつて以上に重要になっているゆえんです。実際のマナー教育は「心」と「動作」の両面から実施します。要するに「相手を慮る気持ち」と、「その気持ちを表現する動作」を、ともに教えていくのです。

「心」については、「自分がお客さまの立場だったらどうしてほしい?」「自分だったら、どうされたら不快に思う?」などと新人パート・アルバイトに問いかけて、常に想像力を働かせながら仕事をするように促します。

一方「動作」については、あいさつや笑顔、言葉遣い、電話応対、接客応対などを、場面別に教えていきます。その際、知識として与えるだけでなく、実際に「できる」ようになるまで、トレーニングすることが大事です。

「この場合のお辞儀の角度は三〇度」などの動作は、「相手に対する感謝やお詫びの気持ちを想像しながら、実際に行ってみる」ことにより、心身に刻まれます。

マナーは、いくら教えても、心がこもっていなかったり、職場で実行できなければ意味がありません。CS(雇客満足)を意識し、マナーある態度で働けば、お客さまから支持されたり、顔を覚えられたり、「ありがとう」といった言葉をかけられる場面も出てきます。それが「働く喜び」や「仕事のやりがい」に結びつきます。

新人導入教育のオリジナル手順書を作成する

導入教育は最初が肝腎、といっても、一度に全部はできません。順を追い、期限を決めて実施していくことが大事です。また、前述のようにパート・アルバイトは、正社員に比べて入れ替わりやすい労働力です。結果、新人が入るたびに、何度も同じ教育をすることとなってしまいます。

そこで、自社ならではの新人導入教育のやり方や内容について「オリジナル手順書」にまとめておくことをおすすめします。そうすれば、新人がいつ入っても、また誰が教えても、同じレベルの導入教育が実施できます。

なお、教える順番について、「働くこと」の意識付け教育と、職場のルールなど基本事項の教育は、入社当日に行うことが大切です。

一方、技能教育とマナー教育については、実際の仕事に必要なものから、段階を追って、順次伝えていく方が効率的です。意識付け教育のうち、「 CS(顧客満足)」については、入社一週間以内を目安に、一度しっかり伝える機会をもちましょう。もちろんそれで終わらせず、その後も「ことあるごとに」「いつも」意識させるように、工夫します。

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