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Chapter3賞与は、「半期の成果」に基づいて決定する

目次

賞与①賞与の額は、「半期ごとの成果」によって決まる

「配分点数」×「賞与単価」=賞与額

基本給は過去の実績で、手当は職責(課長、部長など)で決めるが、賞与は、「半期(上期、下期)ごとの成果」で決めます。

賞与の基準は等級ではなく、「グループ」です。武蔵野の賞与は、基本給比例配分ではありません。入社1年目の社員も、入社10年目の社員も、同一グループごとに相対評価で差をつけ、「半期、頑張ったほうがたくさん賞与をもらえる」しくみです。

成果に応じて、「S評価」「A評価」「B評価」「C評価」「D評価」に分け、賞与額を決めます(評価シートを使用し、社員の成績を点数化します)。

1グループから4グループまでは、「相対評価」です。同一グループ(職務)の中で、S評価(グループ全体の人数の5%)、A評価(20%)、B評価(55%)、C評価(15%)、D評価(5%)の割合です。

会社の業績にかかわらず、必ず、A25%、B55%、C20%の比率で差をつけます。社員が「10人」なら、まず、全体の上位25%の社員をA評価とします。すると「2・5人」なので、四捨五入して、3人をA評価とします。次にC評価を決めます。Cは20%で、2人がC評価。残りの5人がB評価です。

そして、A評価の中でもっとも成績の良い社員をS評価、C評価の中でもっとも成績が悪い社員をD評価にしています(S評価に該当する社員がいないときは、S評価はなし。その場合はD評価も出さない)。

こうして、業績にかかわらず、頑張った社員と頑張らなかった社員の賞与に差をつければ、業績が悪くても、社員のモチベーションを保つことができます。また、競争意識が働くため、緊張感を持って仕事に取り組みます。

賞与額は、「成績別グループ別配分点数表」によって決められた各人の点数と、「賞与単価(1点当たりの金額)」によって決まります(101ページ〔*〕)。

3グループの社員がA評価を取ると、配分点数は「280点」です。賞与単価(1点当たりの金額)が「1500円」とすれば、「280点×1500円=42万円」です。3グループでB評価だと、配分点数は「200点」、S評価は「400点」です。S評価とB評価の差は「2倍」になっています。

基本的に、成果を出した人と出なかった人では、「倍の点差」がつきます。S評価とD評価だと4倍SS評価とE評価だと8倍も差がつきます。

最初に支給総額を決め、賞与単価はあとから計算する

最初に「賞与の支給総額」を決めて、1点当たりの賞与単価は、支給総額から計算します(1点当たりの単価は、2001年までは同じでしたが、今はグループによって異なります)。

「株式会社凪スピリッツ」(飲食/東京都)の生田智志社長は、「賞与の総額を最初に決めるので、頭が整理される」と話しています。

「今までは、Aさんにいくら払おう、Bさんにいくら払おう、Cさんにいくら払おうと、個人の支給額を決めてから足し算をしたが、今は最初に総額を決めるので、予算を立てやすく、明快です。

当初は、総額をいくらにしていいのかわからず適当に決めたが(笑)、どのように賞与を配分しても、はじめに決めた額を超えないのはおもしろいと思います」(生田社長)会社の業績がよければ、支給総額が増えます。

支給総額が増えれば、1点当たりの賞与単価も上がり、賞与の額が増えます。だから社員は、会社のために頑張るのではなく、「少しでも多く自分の賞与を増やそう」という理由で頑張るわけです。

丸山自動車では、賞与のしくみを変えたことで、部門間の壁がなくなり「横の連携」が取れるようになったといいます。「1点当たりの賞与単価が上がらないと、賞与は上がりません。では、どうすれば賞与単価を上げることができるのかというと、会社全体の利益を上げるしかありません。

丸山自動車の業績が良くなれば、個人の賞与も上がる』ことを理解してからは、部門の壁を越えて、社員みんなが協力するようになりました。

これまでは『オレは車検部門だから販売部門のことは知らない』『オレは営業だから、サービスのことは知らない』といった対抗意識があったんです。

ですが現在は、『車検部門でも車の販売紹介の役に立てるのではないか』と考え、横の連携が取れるようになりました。個人の賞与額を上げるには、自分だけが頑張ってもダメで、会社全体が良くならないといけません。社員がそのことをわかってきたと思います」(丸山社長)

本部長以上の賞与は、絶対評価で決まる

幹部(本部長以上)は、数字が人格です。ですから、5グループ(本部長)以上は、絶対評価。本人自身の成績で評価します。比較するのは、過去の自分です。前年よりも業績が上がれば、「B」以下にはなりません。前年よりも業績が下がれば、良くてB評価(悪ければC評価)です。

「数字データと半期の自己アピールを提出し、役員会の『独断』で決める」と経営計画書に明記しています。ようするに、絶対評価は、社長の人事権と同じ。社長は、本部長に対して生殺与奪権を持っているわけです。普通の会社は「独断で決める」とは書けませんが、わが社は、「独断」というルールがある

佐藤義昭の賞与が、前期の20万円から410万円(約20倍)にアップしたのは、理由はともあれ、わが社の役員会が、佐藤の数字を「独断」で評価した結果です。

賞与②業績が良いときは幹部を優遇、業績が悪いときは幹部を冷遇

本部長でも、一般社員より賞与額が低くなることがある

わが社は、業績が良いときは、「幹部優遇(新人冷遇)主義」で、業績が悪いときは「幹部冷遇(新人優遇)主義」を基本とします。業績が良いときは管理職に厚く賞与を配分し、業績が悪いときは厳しく配分します。

・業績が良いとき/1点当たりの賞与単価を上げる

・業績が悪いとき/1点当たりの賞与単価を下げる(ただし、1・2グループの一般社員の賞与単価はできるだけ固定する)賞与単価の表(101ページ〔*〕)を見ていただくと、上のグループほど「賞与単価の最低額と最高額に幅がある」ことがわかると思います。上のグループにいくほど、「優遇と冷遇の差」が開くようになっています。

・3グループ750円~1800円(差は1050円)

・5/6グループ100円~2500円(差は2400円)会社の業績が悪く、

・5グループの1点当たりの単価/100円・1グループの1点当たりの単価/1250円とします。

このとき、5グループの本部長は、S評価を取っても、「100円(1点当たりの単価)×800点(配分点数)=賞与8万円」です。

一方、1グループの一般社員は、C評価を取っても、「1250円(1点当たりの単価)×70点(配分点数)=賞与8万7500円」になります。

A評価を取った本部長よりも、C評価の一般社員のほうが賞与額は高くなるのです。

新人が辞めるのは、賞与をたくさん払うから

会社の業績が良くても「新人を冷遇」するのには、意味があります。課長クラス(3グループ)以上の社員であれば、武蔵野のルールをわかっているから、「わが社には、天国もあれば、地獄もある」ことを承知しています。

だから、賞与額が極端に下がっても、文句を言いません。「今期は下がったが、来期は頑張ろう」と、半期ごとにリセットし、気持ちを切り替えることができます。

課長クラス以上の社員が「テレビを買うときにボーナス払いを使わない」のは、「ボーナスがありえないほど下がる可能性がある」ことを身をもって知っているからです(笑)。

ところが新人社員は、人事評価のしくみをよく理解していないため、「賞与が減ると文句を言って、辞めてしまう」ことになりかねません。

「減る」と文句を言うのであれば、最初から「減らさない」ようにすればいい。そのためには、会社の業績が良くても、極端に新人の賞与額を上げないことです。

業績が良いときも、悪いときも、「1点当たりの賞与単価」をできるだけ固定に、さらに、配分点数の差を少なくしておけば、賞与額が大きく下がることはありません。

6グループのA評価とB評価は、配点点数に240点の差があるが、1グループは40点しかありません。私は一度だけ、「会社の業績が良かったら、決算賞与を払う」と経営計画発表会の壇上で社員に約束したことがあります。

わが社の社員は俄然やる気を出し、業績を上げ、決算賞与を手にすることができました。ところが翌年、私は決算賞与を出さなかった。

社内は、ブーイングの嵐。つまり、社長は、安易に社員が喜ぶことをやってはいけないのです。

賞与③「4つ」の項目を点数化して評価を決める

職責下位の社員は「プロセス重視」、職責上位の社員は「業績重視」

わが社は「評価シート」(120~121ページ〔*〕)に基づいて、半期ごとに、A、B、Cと評価を決めます。

評価シートに評価項目が定められていて、次の「4つ」の項目で「点数」を付け、この点数を参考にしながら、個人の評価を確定します。

①業績評価点

②プロセス評価点

③方針共有点

④環境整備点

①業績評価点業績評価は、粗利益額と営業利益で算出し、対前年度比で点がつけられます。

②プロセス評価点仕事の基本行動・態度に関する次の「6項目」を評価します。

  1. 仕事の責任を自覚し、常にお客様第一の姿勢で仕事を行ったか
  2. 会社や上司の方針を十分理解していたか
  3. 仕事遂行上の工夫改善や能率向上に努めたか
  4. 上司や同僚との仕事上の報告・連絡・相談は的確であったか
  5. 幅広くレベルの高い仕事ができるよう能力の向上に努めたか
  6. 実行計画(個人)を常に意識して仕事を行っているか

職責下位の社員は「プロセス重視」、職責上位の社員は「業績重視」です。職責が低い人は、一所懸命やれば、良い評価を得られますが、職責が高い人はいくら一所懸命やっても、結果が出なければ良い評価を得られません。

4グループ以上は、業績評価点の配分が高いので、結果がすべてです。「毎日パチンコをやりながらも、数字を上げる社員」と「まじめに一所懸命仕事をしているが、数字を上げられない社員」では、前者が評価されます。

わが社の猿谷欣也。猿谷は出張に行くと、あるパチンコ店の近くにホテルを取って、仕事が終わったら、毎日パチンコを打ち続けていました。

それでも、数字を上げていたから、文句はありません。猿谷はA評価でした。ところが猿谷は、調子に乗りすぎた。あまりにもパチンコにのめり込みすぎて、今度はC評価に落っこちたのです。

その後、猿谷はどうしたと思いますか?パチンコ店から5キロ以上離れた場所にホテルを予約するようになりました(笑)。そして、真面目に仕事に取り組んで結果を出し、本部長になった。

「遊んでいて成績が上がった幹部」と、「一所懸命やって成績が上がらない幹部」では、「遊んでいて成績が上がった幹部」を評価する。これが武蔵野のルールです。

内勤部門はプロセス評価重視と思われがちですが、営業部門と同じで売掛金の回収・経営サポートのお手伝いなど、数字で評価されます。

わが社が重視するのは、能力の高さより「価値観」を共有すること

③方針共有点

早朝勉強会、政策勉強会、バスウォッチング、オリエンテーション、社員旅行など、「価値観を共有」するための勉強会や行事に参加した回数をポイントにします。

久保田将敬は前期はA評価でした。ところが社長賞を受賞した期はB評価に落っこちた。その理由は、「勉強会を2回サボった」からです(1回サボると3点減る)。

たかが「勉強会をサボったくらいで」と思われるかもしれませんが、「勉強会の参加回数を評価に連動する」のがわが社の決まりで、久保田も認めるしかありません。

①「お金よりも自分のやりがい」を大切にする「高い能力の社員」②「お金がほしい!」と不純な動機で働きながら、「他の社員と価値観が同じ社員」の2人がいたら、武蔵野に必要なのは、「②」の社員です。

わが社は、能力よりも、価値観(考え方)を共有できることを重視しています。能力のある社員を集めても、価値観が揃っていなければ、組織はバラバラになります。

武蔵野が庄司恭輔(2016年度の新入社員)を採用したのは、庄司と私のストライクゾーンが一緒だった(価値観が一緒だった)からです。

とんまなことをやるような人材でないと、武蔵野には合いません。飲み会で酔いつぶれて迷惑をかける。大歓迎です。人に迷惑をかけたことがないエリートはいりません。

価値観が揃っていると、「同じ優先順位で行動する」ことができるため、少しくらい能力が劣っていても、組織力を強化することが可能です。

高校野球の名門校で、1年のときからレギュラーを取っていた選手がいます。この選手の親が転勤して、甲子園予選で万年1回戦負けの弱小高校に転校したら、どういうことが起きると思いますか?レベルが違いすぎて、やる気を失います。

会社も同じ。会社のレベルよりも優秀な人材を採用すると、やる気をなくして辞めます。わが社のような中小企業は、戦力を分散して持っておけません。ライバルとの戦いは総力戦。だから、方針を共有し、社員の価値観を揃えておく必要があるのです。

④環境整備

点わが社は、毎朝、全社員に30分間の「環境整備」を義務づけています。環境整備とは、「仕事をやりやすくする環境を整えて備えること」です。

作業分担表に全員の担当が決まっており、その部分を30分間ピカピカに磨き込みます。環境整備は、業務時間内に行われるので、給料が支払われます。ボランティアではなく、強制です。

手順も決められています。また、定期的にチェックをして(4週間に1回の環境整備点検)、賞与評価に反映させています。

「株式会社松尾モータース」(自動車販売・整備/兵庫県)の松尾章弘社長は、武蔵野の人事評価制度を導入するにあたり、「営業から不満が出るかもしれない」と考えたそうです。

営業マンのインセンティブをなくして、営業も、サービスも、事務もすべて同じ賃金テーブルを使うようになれば、営業が納得しない可能性がありました。ところが、結果的には、不満を挙げた社員はいませんでした。

「わが社は、年間で1500台販売していますが、トップの営業マンは、ひとりで400台売るんです。インセンティブをつけず、400台売る人間も100台売る人間も同じ賃金テーブルを使い成績を評価することになっても、不満は出ませんでした」(松尾社長)

不満が出なかったのは、環境整備によって、社員の価値観が揃ったからです。普通の営業マンなら、「インセンティブはなくなるし、自分は400台売る実力があるから、この会社を辞めてほかに行く」と考える。

けれどこの営業マンは、「この会社でなければ、売上を上げられない」ことがわかっていた。だから、文句を言わなかったのです。

「彼が数字を出せたのは、松尾モータースの売るしくみとまわりのサポートがあったからです。彼はそのことを理解していたから、インセンティブがなくても文句を言わなかった。制度を新しくつくるときは、社員の価値観が揃っていたり、会社の文化ができていたりしたほうが定着しやすい。環境整備などの取り組みをして、社内のコミュニケーションを円滑にしておくと、人事評価制度は運用しやすくなると思います」(松尾社長)

業績だけで評価をすると、社員の評価が偏ってしまう

また、米沢牛黄木の黄木修太郎社長は、「武蔵野の人事評価制度は、業績だけで評価するわけではないので、使いやすい」と話しています。

「業績だけで評価すると、実績の足りない社員やキャリアの浅い社員は、どうしても評価が低くなってしまいます。ですが、勉強会に出るだけで方針共有点をもらえるし、整理整頓をするだけで環境整備点がつく。勉強会に出たり、掃除をするだけなら、キャリアが浅くてもできます。また、禁煙手当や安全運転手当なども、年齢や社歴とは関係なく、だれでも心がけ次第でもらうことができます。そう考えると、この評価制度は、若い社員でも評価してもらえる制度だと言えると思います」(黄木社長)

賞与④評価シートでは、「人」ではなく「人の行動」を評価する

数値化すれば、「人格」ではなく、「やったこと」を評価できる

評価シートは、社員の行動を数字であらわすための道具です。ファジーなモノは、数値化して評価します。上司と部下の評価面談で、評価シートを使って数値化することで明確にするのです。

社員が評価項目を自己採点し、点数の上にポストイットを貼って上司に渡します。次に、上司が採点をします。部下と上司で点数が違うときは、上司の点数を優先しますが、その際にかならず点数の違いを説明します。

以前、「2.プロセス評価」の中の「4.上司や同僚との仕事上の報告・連絡・相談は的確であったか」の項目で私に0点を付けられた西野興一、斉木修、上野朝之などは目が点になっていました。

実行しても、報告がないのはやっていないことと同じです。このしくみによって、ファジーなものが数値化できます。

「株式会社小田島組」(建築・土木/岩手県)の小田島直樹社長は、評価シートを取り入れたことで、「社員の指導のしかたが変わった」と言います。

「評価シートは、『行動を評価するしくみ』だと思います。評価シートを使って数値化するようになったことで、『人』ではなくて、『やったこと』を評価できるようになりました。

業績評価、プロセス評価、方針共有、環境整備の合計点が400点とします。この400点は、その社員の人格に対する評価ではありません。

『やったこと』に対する評価です。たとえC評価でも、上げた数字がたまたまC評価だけであって、人格がC評価なわけではありません。そのことがわかってからは、感情的にガミガミと怒ることがなくなりました」(小田島社長)

数値化すれば、人ではなく『こと』を叱ることができるので、「どうすれば点数が上がるのか」「評価を上げるには何が足りないのか」を具体的に指示できるようになります。

「A評価を取りたい社員には、『方針共有に関しては大丈夫だけれど、今のあなたの環境整備のやり方だと絶対Bにしかならない。

環境整備の点数をあと5点上げるとAになる可能性がある。ではどうすれば環境整備の点数が上がるのか』といったことを具体的にアドバイスできるようになりました。

前回の評価で、YさんとTさんは、業績評価点も、プロセス評価点も、方針共有点も同点でした。違ったのは、環境整備の点数だけ。

それもたった3点の差です。ですが、3点違っただけで、評価は大きく変わります。YさんはB評価で、TさんはD評価です。B評価とD評価では、賞与の額が30万円違います。

たった3点で賞与が30万円変わるのですから、社員も真剣に話を聞くようになります」(小田島社長)小田島社長は、人事評価制度を「行動を評価するしくみ」であると同時に、「社員に夢を持たせるしくみ」であると考えています。

「この間、30歳で課長になった社員がいます。課長だと年収は500万円くらいになります。岩手県では、30代の平均年収は370万円くらいなので、それに比べると、高給なほうです。

すると若い社員は、『自分もそうなりたい』と夢を持つようになって、その夢の実現のために『A評価を取りたい』と思うようになります。

社員が夢を持てるのは、とても大切なことです。頑張って成果を出しても報われなかったら働きがいがありません。わが社の社員が明るくて、イキイキしているのは、数字さえ残せば、きちんと評価してくれることがわかっているからだと思います」(小田島社長)

賞与⑤給与は「お客様」に感謝、賞与は「社長」に「ありがとう」

賞与は労働対価ではなく、利益の一部配分である

会社は、業績が赤字でも、社員に「給与(月給)」を支払います。給与の原資は「お客様」です。お客様が自社の製品やサービスを買ってくださるから、売上が上がり給与が払える。ですから社員は、お客様への感謝の心を忘れてはいけません。

では、「賞与」はだれが払っているのでしょうか。賞与を払っているのは、「社長」です。わが社では、「毎月の給与」と「賞与」を次のように規定しています。

・給与/労働対価

・賞与/利益の一部配分(業績によっては支給しないことがある)

お客様が賞与を払ってくださるのなら、会社の業績にかかわらず、賞与を払うことができます。ですが実際は、賞与を出せる会社と、出せない会社がある。賞与は、労働の対価ではありません。賞与は、成果(利益)の再分配です。黒字だから賞与を出せる。

利益が少ないときは、賞与ではなく「小与」になります。赤字が続いて利益が出なければ、分配することはできません。会社が黒字なのは、社長の腕がいいからです。

会社が赤字なのは、社長の腕が悪いからです。社長が「黒字にする」と決定し、決定が実現できるように幹部が中心となって実践する。

だから利益が上がり、賞与を出せます。ほとんどの社員は、「賞与がもらえるのは、自分が頑張ったからだ」と考えます。もちろん、賞与にはそういう側面もある。

しかしそれ以前に、「社長が頑張って会社を黒字にしたから」こそ、社員は賞与をもらうことができるのです。

私が社長になってしばらくの間は、賞与を出してもお礼を言う社員はひとりもいませんでした。それどころか、「額が少ない」と文句を言う社員ばかり(笑)。

ところが現在では、賞与支給日になると、社員、アルバイト、パートからたくさんのメールが届きます。「社長、賞与をありがとうございました!」社員が「賞与が少ない」と文句を言うとしたら、それは、「賞与は社長が支払うもの。労働対価ではない」ことを明確にしていない社長自身に責任があります。武蔵野の経営計画書は、「規定通りの賞与を受ける条件」について次のように明記してあります。

だから、わが社の社員は、仮に「賞与がゼロ円」になっても受け入れることができます。

【規定通りの賞与を受ける条件】※業績によって支給しないことがある。あくまでも成果(利益)の再分配

①会社が黒字で推移している

②正社員として6ヶ月間を経過している(支給日に在籍していなくても支払う)

③前年よりも粗利益額が上回っている

賞与⑥「賞与の額がもっとも少なかった社員」に賞与を袋詰めさせる

賞与は現金、手渡しで支給する

わが社は、「賞与は現金(万単位)で支給する。端数は口座振り込みとする」のが決まりです。

しかも、部長と課長の中で、「賞与の額がもっとも少なかった社員」が、「他の社員のボーナスを袋詰め」(賞与支給袋に現金を入れる作業)をすることになっています。

社長室に鍵をかけ、全社員の賞与の袋詰めをします。金額に間違いがないよう2回、3回とチェックを行います。

袋詰めをしながら「こいつがこんなにもらっているのか」「次は絶対いい評価をとってやる!」と思わせ、次の半期に向けての闘志を燃やさせるしくみです。

賞与の袋詰めをした社員の中で、会社を辞めた社員はひとりもいません。2回連続で袋詰めをした社員もいません。

悔しさを力に変え、次の大きな成果へとつなげています。賞与を手渡すときは、まず、いちばん金額が多い社員の賞与で受け取る練習をします。練習したら引っ込めて、「あなたの賞与はこっちです」と本来の本人の賞与を渡します。

そうすると、「いちばん金額が多い人の賞与と、自分の賞与の厚みの差を実感することになり、『いずれは自分も、厚みのある賞与がほしい!』とやる気を出す。

前回、もっとも多く賞与をもらった佐藤義昭の金額は「410万円」でしたから、厚みの差は歴然です。

賞与を全額奥さんに渡す社員は、出世できない

武蔵野の社員の中で、「もらった賞与を全額奥さんに渡す社員」は、その後、出世していません。

賞与を50万円もらったら、10万円を抜き取り、「40万円」だけ渡す。そして、抜き取った10万円を部下との懇親のために使う。「部下のために奥さんに賞与をごまかすことができる上司」は、出世します。わが社の総務は、賞与袋を1000円で売っています(笑)。

社員は新しい袋を買って、金額を書き換えて、奥さんに渡す。これが正しい賞与の使い方です。わが社のT部長は、結婚以来、ずっとこの習慣を続けていました。

ところが、「ネコババ」が奥さんの知るところとなった。奥さんは「夏の賞与は必ず明細と一緒に持ってきてちょうだい!」と激怒した。

T部長が賞与をごまかし続けてきたのは、感心できることではなかったかもしれない。しかし、感心できないことをするのが人間。

私は、T部長が新卒社員やパート・アルバイトと飲みに行き、コミュニケーションを取っていたのを知っています。T部長の稼ぎが彼自身の懐を潤さないのは、わが社にとっても困る。

そこで私は、T部長の自宅に、次のハガキを送りました。「このたびの賞与100万円は、家族の協力と、部下の協力と、キミ自身の努力によるものです。賞与はすべて奥さんに渡したようですが、キミを支えてくれた部下の労もねぎらいなさい。それをしなければ、今後の出世はあり得ません」ハガキを読んだ奥さんは大慌てで、T部長にこう言ったそうです。

「明日、貯金を下ろして渡してあげるから!」竹内英喜・井口直課長など、多くの結婚式の祝電に「○○さん、賞与の半分は小遣いにしてください。動機が不純だと男は頑張る。男は同僚や上司・部下との付き合いが大切です」と私は明記しています。奥さんがしっかりと守ってくれているのが嬉しいです。

その他の手当①/家族手当社員にとって最大の福利厚生は「年収が上がること」

手当を増やして、社員の年収を上げる

社員の福利厚生で、「わが社には、スキーをする社員が多いから、苗場のリゾートマンションを法人契約しよう」と考える社長がいます。

ですが、スキーをする人は苗場だけでなく、蔵王にも、志賀高原にも行きたいのです。だから、リゾートマンションを購入したところで、年に何回も使わない。お金をかけた割には固定資産が増えて、財務状況に影響します。

私は、福利厚生のためだからといって、リゾートマンションを所有しようとは思わない。「最大の福利厚生は年収が上がること」。これが私の基本的な考え方です。だから、「手当を増やして、社員の年収を上げる」ように尽力します。

小田島組の小田島社長は、意図的に手当を支給したり、不支給にしたりすることで、社員のやる気をうながしています。武蔵野の社員はみなお金が大好きですが(笑)、小田島組には、「僕、お金には困っていません」と殊勝なことを言う社員がいたそうです。

そこで小田島社長はどうしたか。その社員(Aくん)を「遠くの現場」に行かせた。「小田島組では、本社から遠くにある現場で働く社員に、月に5万円程度の手当を出しています。私は『お金には困っていない』というAくんを、1年ほど遠い現場に行かせて、毎月5万円の手当を支給しました。年間で60万円です。

すると、お金に余裕のあるAくんは、贅沢な生活をするようになった。1年たったあと、私はAくんを近くの現場に戻し、手当の支給をやめました。すっかり贅沢を覚えたAくんにとって、手当がなくなるのは痛いですよね。そうなると、頑張って仕事をして、評価を上げるしかない。Aくんは、ようやく本気になって仕事をするようになりました」(小田島社長)

その他の手当②/家族手当配偶者と子どもがいる社員には家族手当を支給

家族が増えるほど、ひとり当たりの家族手当を厚くする

配偶者と子どもがいる社員に、「家族手当」を支給します。子どもの手当は、「第4子」まで、「18歳」の誕生日を上限にします。

【家族手当】

・配偶者/5000円

・第1子/1万円

・第2子/1万5000円

・第3子/2万円

・第4子/2万5000円

※1グループと2グループ社員の子どもの手当は半額子どもが増えれば、それだけ育児にお金がかかるので、子どもの数が多くなるほど、支給額を厚くしています。

「奥さんと3人の子どもがいる3グループ以上の社員」なら、家族手当は「5万円」(5000円+1万円+1万5000円+2万円)になります。

家族手当が厚いから、この7年間で退職した管理職はゼロです。中途入社は、入社した年は、「奥さん」の分だけ。次の年は「奥さんと子ども1人分」、さらに次の年は「奥さんと子ども2人分」を支給します。

1年ごとに1人分ずつ増やしていくしくみです。いきなり3人分の手当を支払うと、不公平感を覚える社員があらわれます。

能力も勤続年数も同じ2人の社員がいて、「独身か妻帯者か(子どもがいるか)」の違いで、給料の額が最初から大きく変わってしまうからです。

第3子が生まれた社員には、「1、2グループ/30万円」「3グループ以上/50万円」を支給して、ささやかな少子化対策をしています。

家族に増減が生じたときは、「スピード決済」というグループウェアにて各自で申請します。ですから、家族がいるのに家族手当が支給されていないなら、それは「申請を忘れた」からであり、評価制度の勉強を怠った自分の責任です。

総務のせいではありません。会社は、ぶら下がり健康器ではないから、ぶら下がっていても給料は増えません。わが社の人事評価制度は、「勉強をしていない社員が損をするしくみ」です。

その他の手当③/禁煙手当禁煙すれば、年収が「60万円」アップ?

武蔵野は、喫煙者が管理職になれない

世間はいま、禁煙・嫌煙の流れに大きく傾いています。わが社もその例に漏れず、本社も、支店も、禁煙です。わが社は、喫煙者を管理職にしません。

喫煙者でも入社はさせますが、タバコをやめないかぎり、管理職にしません(勤務時間外も含めて禁煙が条件)。禁煙を勧める理由は、「健康が第一だから」です。

タバコに「百害あって一利もない」ことは医学的にも十分証明されており、副流煙は非喫煙者の健康まで害することがわかっています。内川大輔が、飲み会の席で「僕、課長になりたい」と言いました。そこで私はこう言った。

「おまえは課長にならなくていいんだ。死ぬまでタバコを吸ってろ!」内川は翌日から、タバコをやめた。かつての武蔵野は、管理職の85%が喫煙者でした。私は、悪癖をやめさせるために、「禁煙手当」を支給することにした。

「禁煙する」と宣言した社員には、即座に30万円支給する。その後、1年間吸わなかったら、さらに30万円払う。禁煙するだけで、年収が「60万円」アップする夢のしくみです。

もともと喫煙していなかった管理職には別途、手当を支給しました。ところが、武蔵野の社員はレベルが高い。だれひとり「禁煙する」とは言わなかった。

喫煙者同士の鉄の結束です。お金がもらえるからとホイホイタバコをやめるほど、ヤワな社員はいませんでした。最初に禁煙に踏み切ったのは、妻の入院でお金が必要になった内野伸一課長でした。

その後、「禁煙、禁煙」としつこく連呼する私に根負けして、幹部がひとり、またひとりとタバコをやめていったが、最後までやめなかった最古参の社員がいます。狐塚富夫です。

そこで私は、狐塚の名刺の肩書きに、こう入れた。「部長(タバコをやめたら)」ところが、です。こんな恥ずかしい名刺を持たせても、タバコをやめようとしません。

私は、狐塚の奥さんの誕生日に合わせて、次のようなメッセージを書いたハガキを狐塚に送りました。「おまえがタバコをやめたら賞与が30万円増える。課長から部長になれば、手当も、賞与も増え、100万円以上収入がアップする。奥さんの誕生日にブルガリのネックレスをプレゼントできる」効果なし。

狐塚はタバコをやめる素振りをまったく見せません。しばらくして、安曇野での研修を終えたときです。私は狐塚を捕まえ、声をかけました。

小山「おまえ、今日は何の日か知っているか?」狐塚「いや、何の日かわかりません」小山「今日はオレの誕生日だ」狐塚「おめでとうございます」小山「おまえはオレにずっと世話になっているだろう。

病気したときとか、結婚したときとか。だから、プレゼントを寄こしなさい」狐塚「そうはいっても、今は何も持っていません」小山「いや、あるに決まっているだろう」狐塚「持っていません」小山「これからボイスメールで『禁煙します』と、全社員に向けて宣言しろ。

それがオレへのプレゼントになるから」こうして狐塚はようやく観念した。社員に禁煙を宣言し、ついにタバコをやめたのです。

違反をしたら「手当の3倍の額」を返金する

わが社の禁煙手当は、

・1および2グループ/年間10万円

・2・5グループ/年間15万円

・3グループ以上/年間20万円です。

しかし、違反をしたら、「手当の3倍の額」を返金するのがルールです。

丹智之部長は、「はい、禁煙します」と言って手当をもらったが、私に現行犯で2度目の逮捕をされました。「吉祥寺第一ホテル」の裏でこっそり吸っているのを私が見つけたのです。もうひとり、現行犯で捕まったのが、本多研です。

「本多が喫煙を続けている」という情報が私のところにも入ったが、状況証拠ばかりで物的証拠がなかった。そこで私は一計を案じ、現行犯逮捕する方法を考えた。

本多に「亡くなったお母さんに、お線香を上げさせてほしい。今からおまえの家に行こう」と声をかけ、本多の自宅を訪問した。ありました。タバコの吸い殻と、ライターがごっそり、30個くらい(笑)。現行犯逮捕です。

かばん持ちで同行していた「株式会社末吉ネームプレート製作所」(印刷/神奈川県)の沼上昌範社長は「ここまでやるのですか。私はまだまだ甘いです」と語った。タバコにまつわるエピソードは、まだまだあります。

私は社員との懇親会は「社長と飲み歩き会」を除き、二次会に参加しませんが、どうしても現行犯逮捕したく、丹智之(当時課長、現在部長)と、上岡佳之(当時課長、現在部長)、S部長を連れてキャバクラに飲みに行ったときのこと。

私は、「丹と上岡が隠れてタバコを吸っているのではないか」と疑っていました。そこで、罠を仕掛けることにした。お店の黒服に声をかけて、「タバコを吸う女の子だけ席につけてほしい」とお願いしたのです。

すると、女の子たちはバンバン、ガンガン吸ってくれた。当然、丹と上岡とSは吸いたくなったはずです。けれど、隣には小山昇がいて吸えない。

私は、丹と上岡とSがガマンできなくなったころを見計らって、トイレに立ちました。私はトイレが長く、社員もそのことを知っています。

一度席を立つと、たいてい「5分」は戻りません。丹と上岡は、「今がチャンス!」とばかりに、タバコに火をつけました。「3分あれば一服できる」と考えたのでしょう。「シメシメ」と思ったはずです。でも、私のほうが一枚上手でした。

トイレに行ったフリをして、2人の様子を監視していた。彼らがタバコを吸い出して、私は席に戻りました。彼らは私を見て、何と言ったと思いますか?「小山さん、ズルい」私はすぐに切り返しました。

「バカ。ズルいのはおまえたちだろう。手当をもらっているのに吸っているんだから」丹は1度目の現行犯逮捕でした。「禁煙させるために、お金と労力をかけるのはもったいない」と思われるかもしれませんが、私はそうは思いません。

会社の存続より、部署の成績より、「上司としての方針徹底」が優先です。でも社員の健康はもっと大切です。社員に禁煙させると決めたら、会社が潰れてでも禁煙させる。「小山が『やる』と言ったら、必ずやる」その姿勢を示すことも大切です。

その他の手当④/家族手当安全運転をした社員に「年間12万円」の手当を支給

交通事故を防ぐコストは惜しまない

わが社の事業の柱は、「ダスキンの代理店業務」です。配達や集金などで車を使い、社員は、自らハンドルをにぎってお客様のもとに向かう機会が多い。

車を使うことをやめるわけにはいかない以上、交通事故を未然に防ぐ必要があります。事故件数「前年対比20%減」がわが社の目標です。そこで武蔵野の経営計画書に、4ページにわたって「運転に関する方針」が明記されています。

「道路交通法を守る」「歩行者優先で安全運転する」「常に看板をかかげて運転していると肝に銘じ、安全運転をする」といった基本的なことから、

・雨の翌日は必ず洗車する

・ダッシュボードにものを置かない

・朝礼時「車両への挨拶」を行う

・本社を出る際は、左折禁止とする

・携帯電話はハンズフリーも禁止する

sなど、細かい規定を決めています。

そして、「運転に関する方針」を守った社員には、「安全運転手当」を支給します。

【安全運転手当】・年間12万円(社員)・年間6万円(パート/アルバイト)※勤続年数によって支給率を変更する社員の運転講習に力を入れて、入社1年未満の社員と配達中に違反・事故を起こした社員には、年に4回、安全運転講習会を開催して受けさせます。

わが社では「縁石に乗り上げた」とか、「車庫入れに失敗してボディをこすった」といった小さなものまで「事故」としてカウントしますから、かなりの数の社員がこの研修を受けることになります。

この安全運転講習会の経費は、相当かかりますが、「交通事故を未然に防ぐためのコストは惜しんではならない」と私は考えています。

その他の手当⑤/家族手当社員を辞めさせないために「特別手当」を支給

幹部社員が「持ち家」を買うときには、「最大100万円」を支給する

わが社は、「特別手当」として、該当者に次の「3つ」の特別手当を支給します。

【特別手当】①持ち家購入手当②永年勤続手当③帰省手当①持ち家購入手当10年以上勤続している「幹部社員(4グループ以上)」が持ち家を購入した場合、「持ち家購入手当」を支給します。

(6グループ)A評価以上/100万円B評価/80万円C評価/60万円(5グループ)A評価以上/80万円B評価/60万円C評価/50万円(4グループ)A評価以上/60万円B評価/50万円C評価/40万円ただし、支給には次の「2つ」の条件があります。

・事前に社長の許可を得る・購入する物件の所在地が本社から通勤1時間以内家を買うときに、どうして社長に許可を得る必要があるのか。

それは、持ち家購入手当が「社員を頑張らせるしくみ」のひとつだからです。C評価の部長が「家を買いたい」と言ってきても、私は許可しません。

「これこれこうすると、A評価が取れる。そうすれば、支給額は5割増しになる。評価が上がれば賞与の額も上がる。そうすれば年収が増える。それに、あなたが頑張れば会社の業績も上がる」持ち家の購入を考えている社員は、「できるだけ多くの額を支給してもらいたい」と思っています。

だから、一所懸命頑張る。許可が必要な理由は、もうひとつあります。社員が不動産業者と交渉するより、私が交渉すれば、例外なく安く購入できるからです。値引き額「100万円以上」は12人で、トップは久木野厚則の「350万円」。2位は上野朝之の「300万円」です。

「本社から通勤1時間以内」の物件にかぎっているのは、「通勤時間が長くなれば長くなるほど、仕事をする時間が減る」からです。体力的にも疲れる。だから1時間以内にしています。

普通は、貸し付けるケースがほとんどですが、わが社は支給します。だから、返さなくていい。貸し付けた社員が懲戒免職で退職しても、お金を返さないし、返してもらうならば管理も大変で、その手間を省くためにも気持ちよく支給します。

10年以上勤続した社員には「海外旅行」をプレゼントする②永年勤続手当5年、10年、20年、30年、40年勤続の役員および社員に手当を支給します(支給額は5年は5万円、10年以上は10万円)。

「永年勤続手当」は、個人の成績を問わず、「会社にいれば、だれでも表彰を受けることができる」ので、平等な手当です。

また、10年以上勤続の社員が、「海外旅行」に2人で行くときには、本人と、一緒に行く配偶者に、それぞれ「10万円」ずつ(計20万円)支給します。

「国内旅行」は支給しません。「海外旅行」は特別感があるので、奥さんも喜びます。この権利を行使しない場合は、繰り越すことができます。

勤続20年のときに、常務取締役滝石洋子は夫婦で40万円をもらいました。わが社の社員は噓がうまいので、「旅行に行った」と言いながら「行かない」ことが考えられる。

そこで「旅行の申し込み書」や「現地で撮影した写真」を提出し、「本当に行ってきた」ことを証明させます。

「親への感謝」を伝えに帰省した社員には、交通費を支給する③帰省手当

新卒社員が、入社後に「最初の給料」をもらったら、「親に挨拶に行く」のがわが社の決まりです。ゴールデンウィーク中に帰省して、「両親に感謝の言葉」を伝えれば、交通費を支給します。北海道・釧路出身の平岡佑理には、「釧路までの交通費は会社が持つので、実家に帰って親に挨拶をしてきなさい。

え?親が酒飲み?じゃあ手土産を買っていいよ。『魔王』(焼酎)でも買って、それを親と一緒に飲んでこい」と言って釧路に帰らせました。

また、別の社員が部長に昇進したときは、「実家に帰って、親に新しい名刺を見せてこい。その様子を写真に撮ってくれば、会社で費用を支払ってあげるから」と言って、実家に帰らせたこともあります。

親はいくつになっても、子どもの成長を喜ぶものです。けれど多くの社員は、親に感謝をしません。だから私は「社員自身にとって良いこと」を強制しています。

「会社が交通費を負担する必要はない」という意見もあるかもしれませんが、私は「会社が負担する」ものだと思っています。帰省手当は、社員を辞めさせないしくみのひとつです。

社員が「会社を辞めようかな」と迷って、親や兄弟に相談します。そのとき、もしかしたら、「おい、よく考えろ。

親に魔王を飲ませてくれる会社は武蔵野以外ない」「交通費を負担してくれるなんて、社員思いの会社だ」と家族が引き留めてくれます。

平岡佑理のお母さんは私のツイッターをフォローして応援してくれています。もし社員が辞めて新しく人を採用すると、交通費以上の出費(採用コスト)がある。そのことを考えれば、交通費や食事代を支払うくらい、安いものです。

給料体系勉強会を開催し、「10年後の自分の給料」を計算させる

ルールが「ある」からといって、ルールを「理解」しているわけではない社員にとって最大の関心事は、「自分の給料」です。お金は、命の次に大切なもの。

それなのに、「どうすれば、自分の給料が上がるのか」を知っている社員は少ない。

人事評価制度を明確にすれば、社員の不満はなくなる。

そう思って、経営計画書に「人事評価に関する方針」と「社員に関する方針」を明記していますが、それにもかかわらず、「給料が少ない」「賞与が少ない」と不満を口にする社員もいます。

なぜ、不満が出るのか?それは、「経営計画書を読んでいない」から。

ルールをつくっても、だれも読まない。

読まないけれど文句は言う。

経営計画書を読んで、自発的に勉強するような人材は、わが社にはいません。

以前、全社員勉強会で若手社員に、「10人の部署で、A評価は何人ですか?」と質問したところ、「3人」と答えられた社員はひとりもいなかった。

ルールが「ある」ことと、ルールが「周知されている」ことは、違うのです。

そこで武蔵野では、給料体系を勉強する「給料体系勉強会」を開催し、出席を義務づけています。

勉強会への参加は人事評価の対象(3回出席)になってます。

参加しないと賞与が下がる。

だから社員は、しかたなく出席する。

3回の出席の義務づけは、「1回参加しただけでは、理解できないから」です。

はじめてのことは、ちんぷんかんぷんで何を言っているかわからない。

けれど、勉強会は、社員がわかっても、わからなくても、やることが正しい。

そんな社員でも、自分の評価が出て、面談を受けて、人事評価を下されたあとに再度勉強をすると、「あぁ、そういうしくみになっていたか」と理解ができる。

給料体系勉強会では「10年後の自分の給料」を計算させます。

自分の基本給をベースに、人事評価が10年間「オールA評価」だった場合と、「オールC評価」だった場合の、10年後の給料の違いを計算します。

自分の給料で計算するので、全員が真剣です。

10年間、「オールA評価」の社員と「オールC評価」の社員では、給料に150%(1・5倍)の差が出ます。

累計で計算すると、「オールA評価」と「オールC評価」では「1000万円以上」も

違うことがわかります。

「努力したくない。

でもたくさん給料がほしい」はありえないでは、どうすれば「オールA評価」を取れるのか、どうすれば給与をたくさんもらうことができるのか。

答えは明白。

努力をするしかない。

基本的に、多くの社員が「働きたくない」「ラクして高い給料をもらいたい」と考えています。

これが正しい社員。

ですが、「ラクして高い給料をもらえる会社」など存在しません。

とくに若い社員は、そのことがわかっていない。

できるだけいい大学に入学したい。

でも、勉強したくない。

これは矛盾しています。

いい大学に入りたいなら、勉強をしなければいけません。

勉強をしたくないなら、それなりの大学でガマンしなければいけません。

「いい大学に入学できた」のは、それは「努力の証」です。

会社でも同じ。

努力なしではA評価は取れない。

「10年後の自分の給料」を計算すると「頑張れば、給料が増える。

頑張らなければ給料が増えるのが遅い」ことがわかる。

だからわが社の社員は、「たくさん給料がほしい」という不純な動機で頑張るわけです。

給料体系勉強会では、毎回テストを行い、「テストの点数がいちばん悪かった社員」が「次回の講師を務める」ルールです。

講師をすれば、嫌でも勉強します。

また、課長職以上になるには、給与体系を熟知していなければいけません。

2001年までは、課長昇格試験に、「賞与計算の実務」「昇給・昇格の実務」などが含まれていた。

部長の久木野厚則は3回も試験に落ち、やけ酒がたたり、一ヶ月の病院送りになっています。

どれほど営業成績が良くても、この試験に合格しなければ、課長にはなれません。

Column人事評価制度がない会社は、何から始めればよいのか?

「株式会社マイプレジャー」(通信ソリューション/三重県)の河内優一社長の会社には、人事評価のしくみがありませんでした。

株式会社武蔵野の「実践経営塾」(武蔵野のしくみのすべてを公開する経営者セミナー)に参加して、「人事評価制度」を学んだ。

賢い河内社長は武蔵野の「人事評価制度」をそのまま真似た。真似は最高の創造です。人材育成においてもっとも有効なのは、うまくいっている会社のしくみを、そのまま真似することです。

ですが、武蔵野の人事評価制度はレベルが高いので、丸ごと真似することはできません。そこで、「マイプレジャーで真似できそうなところ」だけ真似をします。

評価シート(120~121ページ参照〔*〕)

●社長や上司の主観で評価をすると社員はやる気をなくすので、業績評価、プロセス評価、方針共有(勉強会の回数)といった評価の項目を決め、点数化する。評価の項目が多いと面倒になるので、できるだけ少なくしておきます。

●この評価シートの点数を評価の目安とします。

基本給(49ページ参照〔*〕)

●武蔵野の賃金テーブルを真似て、基本給を決めます。中卒を「新卒」とし、Ⅰ等級1号俸にします。高卒はⅠ等級16号俸、専門学校卒と短大卒はⅡ等級2号俸、4大卒はⅡ等級12号俸とします。

●Ⅰ等級1号俸の金額は、最低賃金や所定労働時間を参考にして決めるか、武蔵野の賃金テーブル(65ページ〔*〕)の数字をそのまま真似します。

●ピッチ(1号俸でいくらの差をつけるか)も、とりあえず武蔵野の賃金テーブルに倣って運用をしてみて、あとで調整します。飲食業やレジャー産業は仕事に年齢差が出ないのでピッチを短くする。

号俸の上がり方は、相対評価の成績によって決めます(年間の成績がA評価なら5号俸上げる、B評価なら4号俸上げるなど)。

●武蔵野もはじめは「グループ制」を導入しなかったので、最初は「等級」だけで運用しました。

●等級に求められる能力や職務を定義し(Ⅲ等級は課長、Ⅳ等級は部長など)、資格要件を満たした社員は等級を上げます。

手当

●管理職(課長、部長、本部長など)に就いている社員には、管理職手当を支払います。

●そのほか、家族手当や安全運転手当など、必要に応じて手当を決め、支給します。

賞与(98ページ参照〔*〕)

●社員の半期の成績を相対評価し、一定の割合でS評価、A評価、B評価、C評価、D評価を決めます。評価は、評価シートの点数を参考にして決めます。

●賞与に使う総額を決定します。

●一点当たりの金額は最初は全員同じにします。

●賞与配分点数表(101ページ〔*〕)を使って、全員分の配分点数の総合計を算出します。

●賞与単価を計算します(賞与に使う総額÷配分点数の総合計)。

●賞与金額を計算します(賞与配分点数×賞与単価)。

社員が増えるまでは(目安は25人以上)、人事評価制度を社員に公開しません。なぜ公開しないのかというと、「優秀な人材が取れなくなる」からです。

あとから入ってきた新人のほうが高い給料だったら、既存の社員はおもしろくない。また、環境整備などの社員教育が行き届き、社員の価値観が揃ってから公開したほうが、不満は少ないからです。

公開しなくても、基準をつくっておけば、社員に対して「どうしてこういう評価になったのか」を自信を持って説明できます。

最初から正しい人事評価制度はつくれないから、不都合が生じてきたら、制度を変えていけばいい。

大切なのは、適当でも、根拠がなくても、手探りでも、よくわからなくてもいいから、とりあえず「ざっくりとした人事評価のしくみ」を決めて、運用してみることです。

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