01マネジメントを成功に導く 7ステップ ◆ KPIテーマはマネジメントの成果と連動しなければならない 本章では、部門別の KPIテーマ設定のポイントを解説します。 その前に、あらためてマネジメントの全体像を確認しておきましょう。 マネジメントとは、「企業利益を生み出すために、与えられた経営資源(ヒト・モノ・カネ)をうまくやりくりする方法論」だと述べました。 その目的は、次の2つに集約されるといってよいでしょう。 ①業績を確保し、会社を継続させ、雇用を守ること。 ②顧客満足、成果配分を通じて社会の公器として貢献すること。 ①は会社及び従業員目線からの目的であり、 ②は投資家(株主)や社会からの要請であると言えるでしょう。 そして、この目的を達成するために、以下の7つのステップを実行していきます。【ステップ 1】経営資源である、ヒト・モノ・カネを、地盤にしっかり打ちつけます。【ステップ 2】全従業員が 8 S(整理、整頓、清掃、清潔、躾、整備、安全( Safety)、節電・節水)を徹底して、土台を強固にします。【ステップ 3】スキルの方程式 =「目標 ×スキル ×プロセス ×やる気」を実践します。全従業員が目標( KPI)を持ち、スキルアップを実践し、プロセスを改善し続けます。そしてモチベーションとしてやる気の出る評価制度を構築します。【ステップ 4】顧客満足の 3要素( Q:品質、 C:原価、 D:納期)という柱を立てます。【ステップ 5】知識を行動に変えることで、良質な商品・サービスを提供して顧客満足を獲得し続けます。【ステップ 6】顧客満足は企業利益をもたらし、その利益は、納税・配当・内部留保・決算賞与・再投資などの原資となります。【ステップ 7】継続的改善を繰り返します。 この7つのステップを実行し、成果を上げていくうえで鍵になるのが KPIテーマの設定です。ですから、 KPIのテーマは、それ自体が単独で存在するものでなく、あくまでも、 ●全社テーマ →部門別・階層別テーマ →個人別テーマ というトップダウンで連動して設定されるものであり、そのうえで、 ●個人別テーマ達成 →部門別・階層別テーマ達成 →全社テーマ達成 というボトムアップで結果が連動していく構造であることを、今一度確認して、部門そして個人のテーマを設定するようにしてください。
02目的/手段、結果/原因を分けて考える ◆どちらか一方ではいけない KPIテーマ設定のコツは、そのプロセス(活動)が、 ●目的か手段か ●結果か原因か を考えることが基本です。 1件の重大事故が発生すると、その 29倍もの軽微な事故が発生しており(でも報告されていない)、 300件のヒヤリ・ハット(個人が感じても話題にもならない)があるとされます。 これは「ハインリッヒの法則」と呼ばれますが、「目的」を 労災事故(重大事故): 0件 とするならば「手段」として以下の活動が考えられます。 ①労災事故(軽微事故): ○件以下(前年実績より減らす) ② 5 S・安全パトロール実施(サンプリングでのチェック) ③危険予知トレーニング実施(危険意識の共有化) ④ツールボックスミーティング実施(危険箇所の話し合い) ⑤ヒヤリハット件数の記録(ミーティングの結果) ただし、手段ばかり KPIテーマに羅列しても、それは努力したという活動(原因)であって、肝心の結果、すなわち、本来の目的を達したのか、そして、どのように管理会計と連動しているのかが抜けていては、効果測定ができません。 目的に設定しやすいのは、例えば次のような「金額」の目標値です。 この場合の手段は、件数や活動です。 ●目的クレームによる損失金額 ○円以下(機会損失含む) ●手段 ①クレーム件数半減(対前年比): ○件以下 ②工程内不良発見件数(対前年比): ○件以下/以上(これまで工程内不良をカウントしてない会社は、まず発見件数を増やすため〝以上〟) ③製品別検査基準の見直し(サンプリングか全数検査か) ④不良を出さないための工程分析( Q Cポイント)の実施: ○件以上 ⑤不良を発見するための検査技術の向上研修会: ○回以上 ⑥不良を出さないためのスキルアップ教育・技能研修会: ○ H以上 次項以降では、各部門について、さまざまなテーマ例を挙げました。【ミッション】を目的、【ルーティン】を手段として、お読みください。
03「直接部門」テーマ設定のポイント ◆「結果」だけを追求しない 直接部門のテーマ設定で苦労しているという話はあまり聞こえませんが、「結果とプロセス」は、密接に関連があることに注意すべきです。 例えば、営業部門において社長や営業部長が「結果がすべてである」と言い切ってしまうと、どうしてもプロセスがおざなりになり、「値引きして数量を稼ぐ」「与信管理はそっちのけで回収不能になった」「仕様変更が頻発する契約」などによって、短期的な成績に満足する営業部員が出てきます。そして、たいていそのような社員は、会社に定着しません。 プロセスをきちんと定量化し、改善をきちんとテーマに組み込むことが企業の底力となり、文化となります。
04「営業部門」テーマ設定のポイント ◆限界利益を念頭に置く 営業部門のミッションは、社内における直接部門として、何といっても損益分岐点以上の受注を毎月平均的に確保することに他なりません。 ここで重要なことは売上思考ではなく、限界利益思考であることです。 企業業績を支えるのは売上ではありません。 売上は必要条件ですが、限界利益が十分条件なのです。 さらに、人件費の平均 2倍以上の限界利益、さらに、直間比率( 8: 2)まで考慮すると「 1・ 25倍の限界利益 = 2・ 5倍の付加価値(限界利益)」を稼ぐことが求められます。 しかしながら、社長が売上至上主義だと、そのノルマ達成のために、利益は度外視して、値引きしてでも数量で稼ぐ営業マンが出てくるかもしれません。 営業部門に求められるミッションは、常に限界利益思考であること、そして年間において月次単位でなるべくバラツキのない安定受注をすることです。 営業部門長のミッションは、現在の経営資源(スタッフ)を最大活用して、新規開拓と継続顧客を維持することにバランスよく注力する必要があります。 そのためには、営業部門でのプロセスを振り返ることが必要です。 ここで受注プロセスを考えましょう。 例えば、「製品・サービス告知 →引合 →訪問 →仕様打合せ →見積作成 →受注 →納品 →検収 →請求 →回収」 というプロセスであれば、受注までの工程に従って、定量化できるテーマと目標値を設定してみましょう。 ここでは、ミッション(目的)とルーティン(手段)とに分けて考えてみます。 ミッションは各企業によって、経営方針、営業戦略、営業戦術から見た要求事項であり、管理会計に直結する内容です。 なお、営業戦略と営業戦術の違いですが、戦略が、経営資源を変えて取り組むべきことです。例えば営業所の新設、既存営業所の統廃合とか、営業人員の大幅増などが戦略です。 他方、戦術とは、経営資源を変えないで管理方法を変えることです。営業担当のチーム編成を変更したり、顧客別 ABC分析により、訪問回数・方法を変化させるなどです。 ルーティンは、通常業務の中で、定量化して取り組むべきものです。 テーマと目標値の例は 119・ 121ページのとおりです。 このとき「展示会を年間 2回やる」といったテーマ設定してしまうと、参加することに意義があるとばかりに、イベントテーマ(日程計画に従っての進捗管理)になってしまいます。 そうすると「計画 →準備 →会場手配 →試作品作成 →パンフの準備 →招待客リストアップ →当日搬出」に日付をいれたアクションプランができたか、できないかとなってしまいます。 あくまで、来店者数、アポイント件数、商談件数、継続フォロー件数などをテーマにすべきです。 ポイントとなるテーマについて、解説をしていきましょう。 ◆受注残管理 受注残とは、製造業などにおいて、受注をもらったが、まだ未着手、仕掛状態、完成はしたが納品・出荷されていない製品分の売価金額を言います。 設計開発型の業種でリードタイムが平均 1・ 5カ月( 2カ月未満で製品が完成する)としたら、工場の稼働率を下げないためには、受注残はどの月においても、最低で 2カ月以上に設定する必要があります。 ◆受注の平準化 平均月商 1000万円の製造業で、ある営業マンが新規顧客を開拓して、 5000万円の大型受注をしたとします。 営業担当は誇らしげですが、経理担当は慌ててしまうでしょう。変動費率を 50%としても、この受注を受けるために、通常よりも「 4000万円 × 50% = 2000万円」も多くの資金を調達する必要があります。これを運転資金と言います。 運転資金の使いみちは、先行して原材料・部品の購入、協力会社への部品製作の支払などです。受注してから完成まで時間がかかるうえ、納品・検収を考えると、回収(現金化)まで、下手をすると半年近くかかるケースもざらです。
仕入代金や協力会社への支払を遅らせるわけにはいきません。運転資金は立替資金です。借入金ならば当然金利も発生します。 生産部門も、通常品の生産に加えて、いきなり大型案件が飛び込んでくると混乱します。 小さな水槽で金魚を数匹飼っているところに、いきなり巨大な錦鯉を入れたら、水があふれて金魚たちは、外に流されてしまいます。製造部門や経理担当者にとって、何よりもありがたいのは、ばらつきではなく、毎月平均的な受注・売上なのです。 ◆失注分析会議 営業会議において、成功事例を研究することはもちろん大切ですが、やはり受注に至らなかった案件をより検討すべきです。 QCD( Quality =品質、 Cost =費用、 Delivery =引き渡し)のどれで負けたのか、何回アプローチしたのか、積算はどうだったのか、ライバルはなぜ受注できたのかなどを検討してください。 ◆交叉率 交叉率とは「粗利益 ×販売数量」です。限られた売り場スペースあるいは生産能力、仕入予算の中で、粗利益を最大化するためには、この交叉率の高い商品の品切れを防ぐべきです。
◆既存顧客への訪問件数 顧客名を横軸、平均売上高を縦軸として、順に並べると、たいていの会社は上位 20位が売上全体の 70〜 80%を占めるということがよくあります。これは「 2: 8の法則」とか「パレートの法則」とかと呼ばれますが、実際にあてはまるケースがほとんどです。 そこでこれを、もう少し細かく「 2: 6: 2」に分け、 ABCランクに読み替えて訪問をすると、より成果につながりやすくなります。 Aランクは最重要顧客であり、維持するために、担当を 2人体制にして対応を厚くし、営業部門長が 2週間に 1回は同行する。 Bランクは Aランクに引き上げるために、営業が少なくとも毎週訪問するなどといった具合です。 限られた経営資源(ヒト、時間)を有効活用して、最大限の顧客満足を得ることを考えましょう。 ◆見積回答日数 現在、 QCDのうち、 Qの品質と、 Cのコストについては、すでにギリギリのところまで、追求されている状況です。多品種小ロット化、新製品開発スピードの短縮化が進むなかで、 Dの引き渡し、すなわち納期やスピードが最重要視される傾向が強まっています。 したがって、客先から打診があったら、即積算・見積回答をするというのは有力な付加価値です。その際にも限界利益思考で動きましょう。稼働率が低いとき、付加価値をいくらかでも稼ぐことができれば、内部コスト(固定費)は無視して、損益よりもキャッシュフローを優先させるほうが有利な場合があります。
◆営業日報提出率 営業日報を書くことによって、付加価値を生まない時間を発見でき、客先別にどれくらい時間を割いているかの分析ができます。「日報はサラリーマンの納品書」です。これらを集計して、外出時間が長いのに、客先との面談時間割合が少ない営業マンは、スケジュール管理に問題があるか、よほど効率が悪いかです。 営業が付加価値を生んでいる時間は、客先との打合せ・商談時間であることを認識しましょう。
05「製造部門」テーマ設定のポイント ◆ QCDを達成できるテーマ設定を 製造部門のミッションは、企業の付加価値を生み出すために、仕様どおりの製品の必要量を「速く・安く・楽に・安全に」つくることです。 生産計画は、計画、手配、進捗が柱です。生産管理の要素である品質管理、原価管理、納期(工程)管理のプロセスは、定量化しやすいものばかりです。生産の三要素( QCD)が達成できるように、テーマ設定をしましょう。 その際、各工程(プロセス)ごとに、部分最適に陥らず、全体最適を目指せるようなテーマも忘れずに入れるようにしてください。 ◆製造原価率と限界利益率 この2つの指標はとても重要です。 製造原価は財務会計の指標で、1つの製品の「材料費・外注費・労務費・経費」を集計したもので、限界利益率は管理会計で、売価から変動費を引いたものです。 製造原価には、固定費たる労務費と経費が含まれています。内部コストが含まれていると考えると、値引き判断や受注可否、外注化の要否などの判定ができ、キャッシュフロー経営を推進することができます。 ◆非付加価値時間 非付加価値時間とは、文字どおり付加価値を生んでいない時間のことです。これも日報をもとに集計します。非付加価値時間は、生産管理上は、会議・打合せ、 5 S活動時間、アイドリング時間などです。 なお、日報フォームの設計上のポイントは、あまり細かく行動内容を決めないことです。日報を書くことは基本的に付加価値を生まないため、極力簡略化することが継続のコツです。
06「間接部門」テーマ設定のポイント ◆成果を数値化したテーマ設定を とかく間接部門のテーマ設定というと、イベントテーマ(アクションプラン)の達成度合いとなりがちです。 ですが、必ず期待成果を、数値化して織り込む必要があります。 ●給与計算目標「納期を守る。ミスはゼロ」 これでは、他部署から「そんなことは当たり前ではないか」と批判が出てしまいます。「給与計算コストを ○時間以内とする」など、コスト目標を取り入れるとよいでしょう。 また、他部署からの要求テーマも、必要によって取り入れましょう。 ●各部署の増員要求に応えるテーマ(製造部門では中途採用テーマにおいて、溶接経験者 3名、新卒 2名など) 目標値 100%:達成率は要求 5名中、 3名達成で 60%など 間接部門については、企業によって部門名称と職務内容が交錯していることもあるため、次項以降のサンプルを見て、部門名にかかわりなく、必要なものをピックアップしてください。 そもそも、間接部門の役割は何かを考えてみましょう。 それは、直接部門へのサービス提供による支援業務です。そのため、各部門に要求するテーマが多くなることもあります。社内でよく議論して決めていく必要があります。
07「人事部門」テーマ設定のポイント ◆リスク管理のテーマも設定する 人事部のミッションとはなんでしょうか。人的資源のアプトプットを最大化するため、優秀なメンバーの確保と教育でしょうか。実は、人事部門と言っても企業規模によって、その業務範囲はかなり異なります。 ◆労働生産性アップ 人事部の経営への貢献は、ヒトのモチベーションをあげることです。 1人あたりの付加価値を最大化できるように指標化して、直接部門への働きかけができるような部署になることが戦略的人事部への第一歩です。
◆人件費投資効率 最低 200%を目標にしましょう。そのための活動テーマを各部署への要求テーマとします。 ◆健康経営充足率 企業にとって、社員の健康問題は深刻なリスク要因です。長時間残業や過剰なストレスなどが原因で、管理職や稼げる社員が突然倒れたら大変な損失です。本人及び家族にとっても大変なリスクです。またそれをフォローするための仕組みづくりも重要となります。 また、見かけ上の健康だけでなく、どの企業にでも心の病を抱えている社員がいるようです。カウンセリングも大切ですし、物理的に健康診断受診を促すために、自己都合で受けない社員へのボーナスを減らすなど、半強制的にでも、未病のリスクを低減させることが会社経営にとっても重要なことではないでしょうか。 ◆ハイリスクアプローチ 健康診断結果判定で、リスクありと判断されたら、病院での診察を積極的に勧め、早期発見・早期治療を促す活動です。企業の健康保険組合においても、医療費の会社負担の増大がその財政圧迫原因となっていることもあり、推進を図りたい項目です。
08「法務・総務・財務・経理部門」テーマ設定のポイント ◆スタッフの教育訓練テーマは必須 総務などいわゆる間接部門は、自ら売上を上げる活動をする代わりに、直接部門が安心して職務遂行できるような環境を確保し、その業務活動を支援するために存在しています。 部門別損益計算において、間接部門は付加価値を生まないという考えもありますが、本当にそうでしょうか。 世の中には、経理や決算・申告を代行する「会計事務所」、融資など銀行対策を代行する「財務・金融コンサルタント」、あるいは、法律トラブルの防止と紛争解決のための「法律事務所」、給与計算や監督署・職安・年金事務所などの従業員関係の書類提出を代行する「社労士事務所」などが存在しています。 これらの専門家には当然報酬が発生します。社内の間接部門は、少なくともこれらのアウトソーシング企業に対する対価分以上の付加価値を稼がないと、存在意義が問われてしまいます。そのために適正人員を常に見極める必要性があるでしょう。 また、部門の性質上、ミスゼロが当たり前であるため、 0か 100%かという目標値を設定しがちですが、「ハインリッヒの法則」に基づいて、「ミス = 0」ではなく、「重大・軽微・ミスではないが手直しに 30分以上費やしたもの」「ヒヤリハット件数」や「自主確認項目」など、「氷山の下」を表現できるように、掘り下げてみてください。 さらに、個人的な事務作業が多いので、部門テーマとして、全員で業務の洗い出しをして、必要なフローチャートやマニュアルを作成して標準化し、複数のスタッフが同一業務をこなせるような教育訓練テーマは、必ず入れるようにしましょう。
09「研究開発部門」テーマ設定のポイント ◆ミッションはマーケティングとイノベーション 研究開発部門の使命は、マーケティングとイノベーションを常に意識した商品開発・サービス開発を通して、付加価値を稼ぐことです。 マーケティングは顧客ニーズを探り商品化するもの。イノベーションは市場自体を創造することです。 商品化するまでに時間のかかるものもありますが、他社との差別化を通して顧客満足を追求することが求められています。また、製品のライフサイクルが短縮化している現代では莫大なコストを掛けずに、ライフサイクルを少しでも延ばせるように、高付加価値戦略、市場浸透戦略などを駆使することも重要です。 最初に高付加価値でリリースして、その間に V A( Value Analysis =価値分析)や VE( Value Enjineering =価値工学)を実施して、同機能で価格を一早く下げて差別化を図るというのが、その一例です。
◆新商品の獲得限界利益 新商品開発には多大な時間がかかりあます。経費はもちろん、消費した人件費総額も研究開発費となります。では、その開発費はどこから回収するのか。もちろん、リリースした新商品の限界利益からです。 この目標設定をしないと、他部署から不満が出る可能性があります。望ましいのは開発期間と同程度の回収期間目標を設定すべきでしょう。 最近では、開発に 3年かかった製品が、リリース後ピークを迎えて、 3年後にはライバル等の出現もあって衰退するといった、製品のライフサイクルが短縮化しています。そのような状況も踏まえて設定してください。
10「設計部門」テーマ設定のポイント ◆事前準備と成果は比例する 設計部門では、営業と緊密な連携をとり、上流工程として、顧客ニーズや仕様をしっかりと受け止めて、デザインすること、出図日程納期を守ること、後工程の製造歩留を高める工程設計を行うことまでが求められています。既存製品のコストの見直し(材料費、加工費)なども期待される役割のひとつです。
経済設計も求められます。材料の規格品を意識した材料歩留の向上、生産設備の仕様を理解した製造歩留の向上、安定性・効率性を考慮した工程設計などです。デザインにこだわりすぎると生産効率が落ちる可能性もあります。 また、工程が多いとミスをする可能性が増えるリスクがありますが、品質面では有利な場合もあります。検査の効率性・工数も配慮しましょう。工程設計においては、製造部門や検査部門とよく協議して、全体最適を目指すことが重要です。 営業と同行して客先との仕様打ち合わせに参加することも重要な活動です。事前に要求事項をきちんと整理しておかないと、後で変更や手直しが頻発してコストアップと納期遅延の原因となります。事前準備と成果との因果関係は上図のとおりです。適当な打ち合わせで見切り発車すると、生産期間も生産時間も増え、利益が少なくなります。一方、事前準備をしっかりすると、結果的に成果(利益)も大きくなります。
11「購買部門」テーマ設定のポイント ◆コスト管理の要の部門 企業の二大コストは仕入と人件費です。その仕入をつかさどる「購買部門」は外部調達機能として、正しい資材・材料・部品をより安く、良いものを買うこと、並びにリードタイムの短縮、在庫管理、さらに Q CDに優れた協力会社の評価・選定、品質保証及び技術教育という多くの側面を持っています。 製造業の変動費率は、 30〜 50%程度と、多くの原価がかかっています。 年商 10億円の企業で、変動費率 50%であれば、なんと 5億円もの買い物をしていることになります。
この変動費率をもし 2%(ポイント)でも削減することができれば、 1000万円もの限界利益が増えます。購買部門は生産のコントロールタワー(指令搭)としてまさにコスト管理の要なのです。バイヤーとしてのプライドを持って、全体最適を目指すとともに、コストダウンを常に意識することが求められています。 この変動費の削減で、複数の購買先で価格を競わせる方法は、取引開始直後ならまだしも、限界があります。仕入金額や外注費の削減において、価格競争は限度があるのです。 計画購買として内示を出す。適正量の発注、不要在庫の削減などによって削減を図っていくことなどが、大切です。 在庫目標(安全在庫)を持ちそれを管理すること。発注方式においても、定量発注、定期発注を活用して、回転率を高めること。協力会社(外注)の技術指導や SCM(サプライチェーンマネジメント)により、相手方の効率を考えて互恵関係を築くことです。 在庫品は、製品在庫、仕掛品在庫、原材料在庫と区分別に識別するのはもちろんのこと、先入先出しの徹底によって陳腐化を防いだり、滞留在庫の早期現金化を促し、処分できなければ早めに廃棄して損切り(節税)することを経営層に提案することなどが求められます。
12「品質管理・品質保証部門」テーマ設定のポイント ◆4つのコストを削減する 品質管理や品質保証がきちんと機能していないと、不適合品が出荷され、そのクレーム対応やリコール対応など、大きな損失リスクとなり、企業の信用問題にかかわります。 品質管理とは、生産現場主体で不良を減らすボトムアップの活動で、安全な製品を顧客に提供することが目的です。 一方、品質保証は、トップダウンで対外的に品質保証体制の宣言をして、安全な製品を提供する仕組みづくりによって、顧客に安心を与える活動という点に特徴があります。 すなわち品質保証活動は全員・全部署参加が大原則です。 ISO 9001の認証企業の品質保証では、管理責任者が出荷停止権限を持つ必要があります。営業部門の責任者が務めることもできます。納期に追われて仕方なく出荷するようでは本来の品質保証とは言えません。経営層はこのことを理解し、人員配置を行う必要があります。 品質管理は検査だけをするのではなく、製品別・工程別・現象別・原因別の不適合データや図面公差などのデータを収集し、統計的手法などを使って分析し、各現場に提供して、改善を促す役割が期待されています。 品質保証では次の4つのコストを基本にして活動を考えます。 ①外部失敗損失(クレーム) ②内部失敗損失(工程内不良) ③評価コスト(検査コスト) ④教育訓練コスト(不良自体を出さない訓練) この4つのコストを削減する活動そのものが、 KPIのテーマになります。 とくに内部失敗損失を人件費まで含めて記録して定量化しないと啓蒙活動になりません。人件費は「 1秒 = 1円」で計算をします。
13「生産技術部門」テーマ設定のポイント ◆生産現場の支援につながるテーマ設定を 生産技術は単なる工場の便利屋さんではありません。間接部門として生産現場が効率良く、安心して活動できるような技術を提供する必要があります。 また購買部門と協力した外注指導などのように、その守備範囲は広いので、コストを考慮した活動が期待されます。 ここでおすすめの方法は、仕事のつど、社内の各部門に請求書を出すことです。レートは 1秒 = 1円でもよりのですが、金型修理について所要時間( 1時間 = 3600円)分の納品書、メンテナンスに要した時間を社内請求することで、メンバーのモチベーションを高めることができます。
14「生産管理部門」テーマ設定のポイント ◆品質、原価、工程を管理する 生産管理部門は、品質管理、原価管理、工程管理の中心的存在です。 個別原価の計画と実績原価の集計、工場内を仕掛品がスムーズに流れるような現場パトロールが必要で、常に納期遅れ、品質不良に目を光らせる必要があります。 改善活動を促すために、個別原価計算、ライン別損益、ラインバランス測定など、定量的にデータを測定し、情報提供するミッションがあります。 工程管理におけるポイントは、何と言っても「ボトルネック」の発見と解消です。ボトルネック工程をつかむことにより、他部署からの増員や設備投資の検討により、ラインバランス効率を改善することが、リードタイムの短縮につながります。
15「物流部門」テーマ設定のポイント ◆品質維持と物流の効率化を念頭に置く ロジスティックス部門は完成品を顧客に安全に届けることが最重要課題です。そのために完成品の品質維持に努めながら、物流の効率化も合わせて考える必要があります。 効率的なルート編成や積載効率、アイドリング、走行距離、燃費などをテーマに掲げて、環境対応についても、積極的に取り組んでいることを内外にアピールできるチャンスととらえてテーマ設定をしましょう。 なお、保管と保存とでは、その意味するところが異なります。 保管は、紛失・盗難を防ぐために物理的に識別管理することです。 保存は、製品の適合性を維持しながら保管すること(温度・湿度管理、粉塵対策など)です。
著者紹介堀内智彦(ほりうち・ともひこ)マネジメントコンサルタント埼玉県所沢市生まれ。日本大学理工学部土木工学科卒業後、上場企業の技師を経て、堀内経営労務事務所代表、株式会社グリップス代表取締役、日刊工業新聞社実務セミナー登録講師。「従業員も経営者も会社という一つの身体の中で生きている」というコンセプトから、リストラを否定し現状の経営資源を生かした人財育成型コンサルティング・ノウハウを開発。「企業ドクター・ホリコン」として、企業収益向上と赤字企業を短期間に黒字化することをライフワークとしている。公益財団法人日本生産性本部認定「経営コンサルタント」、特定非営利活動法人日本医療コンシェルジュ研究所認定「医療コンシェルジュ」、全国社会保険労務士会連合会認定「医療労務コンサルタント」、 ISO 9001(品質マネジメントシステム)、 ISO 14001(環境マネジメントシステム)、 ISO 27001(情報セキュリティマネジメントシステム)、 OHSAS 18001(労働安全衛生マネジメントシステム)各審査員資格取得、埼玉県社会保険労務士会会員など。著書に、『アナタの会社の埋蔵金(ムダ)を利益に変える本』(日刊工業新聞社)、『社長、その給与は払い過ぎ!』(あさ出版)など。カバーデザイン/ナカミツデザイン
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